61. アメリ
パリ・モンマルトルの魅力を最大限に引き出したポップな映像美とコミカルな内容とは裏腹に、 子供には見せられないような際どい描写も結構多め(実際そういう区域らしい)。 原作付きとは言え、奇人変人だらけなのもジュネ監督らしい。 この映画はオドレイ・トトゥの魅力によって大成功したと言っても良い。 可愛らしく、不思議で、至福に満ちたガーリッシュ・ファンタジー。 [DVD(字幕)] 7点(2019-05-16 19:25:50) |
62. ミックマック
武器輸出国のフランスだからこそ、思う部分はあるのだろうが、逆恨み当然のイタズラにしてはやりすぎな上、ターゲットの二つの武器会社には繋がりがないのでそれほど深みが感じられない。むしろ浅いからこそ、社会から爪弾きされた奇人たちが何を仕掛けてくるかコミカルに見ることができるかもしれない。深いメッセージなんてないのかもしれない。それでもジュネらしいポップな世界観が繰り広げられる中、イタズラの総仕上げがローテクすぎて楽しい。 [DVD(字幕)] 7点(2019-01-22 23:21:32) |
63. グラン・トリノ
タイトルからしてアクションもののように思えるが、 イーストウッドの映画とは思えない低予算で地味な人種問題ものだ。 それもアフリカ系ではなく、アジア系というあたりが珍しい。 暴力には暴力で応えてきた彼の代表作『ダーティハリー』シリーズのセルフパロディ要素がちらつき、 そんな老い先の短い男が不寛容の世界において最期の答えを提示する。 対立と交流を織り交ぜたオーソドックスな筋書きながら、重厚さを出しつつサラッとした味わいに、 イーストウッドの貫録と余裕が感じられる。 欠点も少なくないが、それでも許容してしまうような温かさがある。 [映画館(字幕)] 7点(2018-12-01 01:32:36) |
64. ミュンヘン
《ネタバレ》 イスラエル側の視点だが、パレスチナ側にも配慮した描き方。ターゲットの中には家族がいて、銃を下ろしてとなだめようとする人間がそこにいた。そして計画が座礁に乗り上げ、報復が報復を呼ぶ泥沼状態、そして離脱。安らぎであるはずの妻との性行為ですら、テロリストと同化して苦しみから逃れられない、そのカットバックが圧巻。当時まだ建っていた貿易センタービルが911を連想させるあたりはあざといが、報復は今でも終わらない消化不良感が後を引く。近年、アメリカの大使館をエルサレムに移転した際に、パレスチナ側に多くの死傷者が出た。和解されたと思いきや、当時のイスラエル首相が自国民に暗殺された出来事もあり、報復を止めるには根絶やしにするしか道が残されてないのか。当事者ではない以上、他人事でしかない、そんな厭世感が漂っている。 [映画館(字幕)] 7点(2018-10-13 08:23:57) |
65. ファインディング・ニモ
《ネタバレ》 2003年に製作されているとは思えないグラフィックの高さは言うまでもなく、全体の質は高い。ただ、ピクサーにしてはストーリーが弱い。ドリーの物忘れ設定はときどき煩わしく、水槽からの脱出劇がピークだった。スケールが大きいはずなのにほとんど海ゆえに画作りに限界があり、どうしても小じんまりに見えてしまうからか。子供を持つ親であるなら、違った見方ができたかもしれないが。 [DVD(吹替)] 7点(2018-06-23 15:28:13) |
66. 河童のクゥと夏休み
《ネタバレ》 家族向けに作られても、比較的シビアな描写も少なくないため上級生からだろう。長い時を経て目覚めた河童と少年の交流を描いたファンタジーと、人間社会の醜さを描いた現実が地続きで、クレしんの主人公が大人の世界に半分片足を入れたようなセルフパロディ感があり。ところが、中盤マスコミから狙われているのに、クゥを撮影したビデオを見せたら行動がエスカレートするのは誰も想像できるはず。問題提起を意識するあまり、無理矢理悲劇と泣かせに突き進むあざとさには辟易してしまう。それでも、その醜い社会に一度絶望しながらも折り合いを付けて、少年もクゥも前に進んで生きることを選んだあたり、『オトナ帝国』から『カラフル』まで原監督らしいテイストが一貫しているように見えた。「目先の問題だけを見て、足元にあるささやかな幸せを何故見ようとしないのだろうか」と。一度別れても、いつか再会できると信じてやまない。 [映画館(邦画)] 7点(2018-06-01 19:44:12) |
67. レミーのおいしいレストラン
《ネタバレ》 佳作だがモヤモヤする映画。というのも、レミーに助けられてばかりのリングイニが追いつめられて突如才能を開花するわけもなく、仲間のネズミが料理作りに協力する意外性を選んでも、どうしても衛生上の悪いイメージが頭をチラつかせる。それがばれて閉店に追い込まれるオチでカバーしているものの、偏見をテーマにするには強引さが否めない。ミシュランの呪縛から解き放たれて、新しいレストランを作っても、リングイニが変わるわけでもない、むしろレミーの寿命を考えるとハッピーエンドは雀の涙でしかないような。CGアニメであることを活かした縦横無尽、奥行きのあるアクションで魅せるし、評論家の心根を変えるほどのラタトゥーユの演出に説得力があるだけに、監督の交代劇で実績のあるブラッド・バードが全力でやったとしても、これが限界なのだろう。 [DVD(吹替)] 7点(2018-05-02 00:57:40) |
68. ベンジャミン・バトン/数奇な人生
《ネタバレ》 画に対するこだわりが随所に感じられるも、言わなければデヴィット・フィンチャーの映画だとはほとんど気付けないだろう。アメリカの現代史とリンクする点では『フォレスト・ガンプ』に近いが、ベンジャミンは表舞台に立つことはない。逆行していく男の人生をあたかも普通の人たちと同じように淡々と綴っていくだけだ。特に時間という概念が強調される。少しの誤差でデイジーには違った人生があったかもしれないし、互いの適齢期が交差したときに生じるささやかな日々ですら愛おしく感じる。だからこそ終盤、歳を取るごとに若者になっていくベンジャミンと老けていくデイジーの対比が孤独感を増していくようで切なかった。彼はいろんな人々に出会い、その人たちもどこかで影響を受けて、それぞれの人生を生きていく。時が経つに連れ、余韻という水が喪失感を埋めるように少しずつ心を満たしていく。そんな作品。 [DVD(字幕)] 7点(2018-03-31 20:57:04) |
69. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
《ネタバレ》 完結編なのにどうも物足りない印象を受けるのは、合戦シーンが二つの塔の焼き直しに見えてしまったことが大きく、指輪を捨てる顛末が霞んで見える。エンディングも監督が気に入っているからかどれも捨てられず、何度も見せられるような冗長さがあった。それだけ原作への思い入れが大きいということだろう。アカデミー賞の歴史において例外中の例外で、作品賞含めての総ナメということは、それほど実写映像化不可能と言われたファンタジー小説をあらゆる制約と困難を乗り越えて、最高の完成度で応えた功績を称えての"努力賞"だと言える。他の候補作で相応しいものがなかった運の強さもあるかもしれないが、常に多くの人の支持される映画は大衆迎合か否かなのだ。合計11時間以上の3部作の完全版を見てこそ真価が発揮される。そういう意味でこの点数。 [映画館(字幕)] 7点(2018-03-30 23:33:41) |
70. ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
《ネタバレ》 旅の仲間が不満だった人には「お待たせしました」と言える。3組に分かれることによって物語の単調さは避けられ、作中の世界観もより広がった。最大のハイライトは終盤の激しい籠城戦で料金の元はまず取れるくらいに迫力満点。一方、対比するようにフロドの影が薄く、案内人ゴラムとの張り詰めた三人旅で何とか持ち堪える。今作だけでも十分に面白いが、パーティーがバラバラに散らばったことで世界を救う旅をしている一体感が薄れてしまったことが個人的には一番寂しい。 [映画館(字幕)] 7点(2018-03-30 23:23:42) |
71. スラムドッグ$ミリオネア
《ネタバレ》 人口11億人、面積が日本の8倍以上を有するインド。 それだけ広いのだから、映画では描き切れない社会の暗部もカオスさも想像以上で、 熾烈な世界で必死に生き抜こうとする市井の逞しさは相当なものだ。 日本のおける深刻な悩みが小さく見える。 悪臭の立ち込めるスラム街を追われ、貧困ビジネスの魔の手から逃れ、生きていくためにあらゆる手段を総動員する。 この映画では"運命"と片付ける。 壮絶な体験を経て賞金とヒロインを手にした主人公と、ダークサイドに堕ちた兄と、薬品で目を焼かれた少年の違いは何なのか? 不条理を感じるも、自分を信じてがむしゃらに生きていくだけだ。 マサラムービーでお馴染みの歌と踊りがエンドクレジットで流れるのに底なしの陽気さが感じられないのは、 かつて宗主国だったイギリス人監督ならではのどこか醒めた視線がある。 良レビューにある通り、ゴミのように死んでいく現実と対比した、主人公の見た幻にしか見えない。 [映画館(字幕)] 7点(2018-03-02 18:34:48)(良:1票) |
72. デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!
デジモンをよく知らないため、登場人物たちの背景が分かり辛いが、まだネットが発達していない時代の先見性に、わずか40分で長編映画並みの濃度で描いた細田監督を評価したい。後にこれが『サマーウォーズ』になるのだが、あれぐらい贅肉が付かない方が丁度良いかも。原作付き、脚本家次第で傑作を作れると思うので、オリジナル作品より合っている気がする。 [DVD(字幕)] 7点(2018-02-11 23:16:42) |
73. 天使のくれた時間
《ネタバレ》 もう一つの人生を追体験して、「本当の幸せとは何か?」というベタな展開ながらも手堅い演出と演技で違和感なく見せる。「家族と過ごす中庸な人生が一番」と結論を下さず、空港のカフェテラスで一晩を過ごすラストが良い。それぞれ元の生活に戻ったかもしれないし、結婚しても二人の子供と賑やかな近所仲間が帰ってくるわけでもない。失った時間の大きさを痛感させられる、ほろ苦さが口に残る。邦題が秀逸。 [地上波(吹替)] 7点(2018-01-05 14:37:43)(良:1票) |
74. es[エス](2001)
《ネタバレ》 題材は違えど、日本の熾烈な労働環境に通じるものがある。閉鎖的で逆らえない上下関係に、普通の人間でも特別な力を持ってしまうと誰もがこうなりうる普遍さ。ムラ社会体質の少ないドイツなら、囚人役の感情が爆発してああいう結末になったかもしれないが(それでも非現実的)、日本ならもっと酷くなっていたはずだ。ショッキングな舞台装置の割に、御都合主義と、余計なエピソード(恋人の存在、研究員への強姦未遂)が目立つため佳作止まり。外の情報は一切断ち切って、ストイックに描いて欲しかった。 [ビデオ(字幕)] 7点(2017-12-20 21:19:31) |
75. 愛のむきだし
《ネタバレ》 2日に分けて視聴。それだけ変態と猛毒に満ちた237分は気合がいる。壮絶な描写の数々で、合間に挿入されるユーモアと主演の若手三人(特に満島ひかりの取り憑かれたような怪演)によって幾分見易くなっている。園監督特有の悪い意味での行き当たりばったり感は、本作に限ってはプラス働いている。壁にぶち当たり、時には廻り道をしながらもぶつかり合い、やっと真実の愛を手に入れた二人。圧倒的パワーの4時間を見届けた心地良い疲労感、そして、ゆらゆら帝国の連呼する"空洞"に自分自身の持っている虚無感と向き合うような余韻が残る。 [DVD(邦画)] 7点(2017-12-20 21:03:43) |
76. シークレット・サンシャイン
《ネタバレ》 見えるものが全ての人間にとって、信仰は救いになるのか? 息子を殺されたシングルマザーのシネは、自分を如何に大きく見せようと振る舞い、 その誘拐犯に対する赦しも優越感によるものである。 だが、犯人は信仰で既に赦され救われていた。 宗教に失望した彼女にとって、これほどの生き地獄はないだろう。 神はただそこにいるだけで何もしてくれない。 代わりに片思いのジョン・チャンが、壊れていく彼女の傍に何も言わず寄り添う。 神も仏もない不条理の世界において、俗物であろう彼の存在は生きていく上の"密陽"ではないか。 誰も目にも映らない小さな小さな希望。 死ぬことすらできなかったシネは彼の存在にいつ気付くのだろう? たとえ自分自身を赦せなくても、既に誰かから赦されているのに… 残酷な世界に淡く小さい陽光の差すラストカットが秀逸。 [DVD(字幕)] 7点(2017-10-31 00:58:56) |
77. クイルズ
《ネタバレ》 倒錯もののエロスと背中合わせの血生臭さが漂う。表現の自由のため権力に抗うサド侯爵によって、彼自身も周りの人々も狂わされて破滅に向かっていく。これは現在でも通じるテーマで、感化されて凶悪犯罪に至るきっかけを作った創作物ですら、醜悪な現実に影響されたかもしれないのに。サド侯爵は妄想と願望から醜悪な人間の真実を描いただけに過ぎない。しかし、見せる相手があまりにも悪すぎた。最後は当人の自己責任に集約されるのではないか。犠牲の代償として突っ切ったものだけが歴史を動かしていく。従来のイメージ、プライドをかなぐり捨てた役者陣の演技合戦に酔う。 [DVD(字幕)] 7点(2017-10-06 18:45:36) |
78. プレッジ
《ネタバレ》 真犯人捜しのサスペンスものに見えて、実は妄執に囚われているだけの、仕事以外に生き甲斐がなかった、引退した老刑事の悲劇。生活のために働くだけの人、家族を養うために私生活を犠牲にしてきた人を見るに、いろんな生き甲斐や逃げ場を持っていないと、行き詰って絶望してしまうのだろう。性格的に家庭が持てなかったと思うが、顧問として続けさせる道があったら違っていたのかもしれない。短い出演時間ながらもベニシオ・デル・トロの存在感が抜群。 [地上波(字幕)] 7点(2017-07-11 19:15:28) |
79. 息子のまなざし
《ネタバレ》 多くの親なら自分の子を殺した未成年が目の前にいたら迷わずに殺すだろう。 大抵のフィクションは復讐してはいけないと綺麗事を発してやめさせるが、 むしろ復讐に徹した方が観客に受けるし清々しい。 では、ダルテンヌ兄弟ならどうするか? 悪く言えば、言葉を濁してどちらかにジャッジを下すかはしない。 あまりにも居心地の悪い関係をじっくり映し出すことに専念する。 物語を映像で語り、少しずつ地図が出来上がっていく。 「あの少年はもしかしたら、俺の息子を殺したんじゃ…」 それを象徴するのがサッカーゲームであり、少年の独白である。 本当は殺すつもりはなかったとしても、彼を更生させて真っ当な家庭を築かせることが、 息子の人生を奪われた男にとって耐えられるだろうか。 結局復讐は未遂に終わるが、それでも少年が男についていくラストが胸を打つ。 たとえ無音の漆黒のエンドロールが流れ、想像の中で再び少年に手にかけるとしても。 [DVD(字幕)] 7点(2017-06-08 19:12:00) |
80. ソウ
「もしかして来るか、来るか・・・」と思ったら、予想通りの結末。凄いと思いつつも改めて考えればツッコミどころ満載。荒削りだけど若さ故の勢いもまた良作としての要素だろう。何度も見たいと思わせる深みとギミックがあれば8点くらい。ところが本作にはそれがなかった。残酷描写だけがエスカレートしていく2以降は見る気すら起きない。 [DVD(字幕)] 7点(2017-06-08 19:01:41) |