901. 三人の名付親
《ネタバレ》 赤ん坊の世話が転がり込むくだりまでは、銀行強盗といえどどこかのんびりととぼけている雰囲気が良かった。 男三人、新生児を腕にてんやわんやのおかしさといったら。「赤ん坊の前でスペイン語をしゃべるな」「風呂に入れろ」「風呂よりミルクだろうが」と、「初めての赤ちゃん」あるあるオンパレード。特にベビーオイル(の代わりの車輪用グリース!)を塗ってやるとこ。あまりの赤ん坊の小ささ柔らかさに、男たちの幸せ笑いが伝播してゆくシーンはわかるわかる、と膝を打ちます。 しかし旅立った後はどんどん暗くキビシイ展開になってゆくのでたじろぐくらい。「死の影の谷を歩む」みたくなっちゃってるではないですか。見方によってはホラー並みに怖い。いっそのこと追っ手が早く来てくれえーと思った。 そしてさらにもう一段驚くことに、終盤はこれまた冒頭に戻ったみたいなあっけらかんとした明るさ。二人も死んじゃってるのになあ。このアッサリ感はちょっとどうなんだ。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-27 17:21:19) |
902. クロッシング(2009)
《ネタバレ》 ブルックリンの3人の警官それぞれの、ハードで苦い人生模様。三者三様の「交わらない」ドラマを交互に展開させてゆくのだけど、これが同時進行しつつも混乱を避けており、巧い脚本でした。三本の流れが最後にすっと一瞬交わる、そのセンスも心憎い。(ゆえに邦題はなんか大きなお世話に感じる) しかしここで邦題以上に問題なのがR・ギアである。鬱屈が澱のようにたまった人生の中でもがくD・チードルやE・ホークらの中にあって、(下手したら同僚警官らより)どうもギアだけが浮く。チードルは潜入操作官の苦悩を背負い、ホークは経済的困窮にあえぐ一方、ギアだけ明確に形となった筋書きを与えられていない。諦念に疲れたベテラン警官の役どころでいわば「ぼんやりした」苦しみなので設定的にも二人より不利なのではあるが。 チードルもホークも「重大な決断」に迫られて身を引き裂かれるような苦しみを体現する。特に、自分の卑屈さで自らの首を絞めるE・ホークのもがく様は鬼気迫る。部屋の酸素濃度が薄くなった。苦しいこっちも。 この二人の重戦車並の演技に比べたらギアは軽トラみたいなもんで、どうしてもあのぽかんとした顔つきがドラマから浮くのだった。ふだん軟派なイメージの彼にしては健闘はしており、ギアのみ主人公だったらまた別な仕上がりになったかもしれないけど、共演者が凄すぎた。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-05-27 00:17:06) |
903. グランド・ブダペスト・ホテル
きれいな映像に、さっさと展開する良すぎるほどのテンポ、どことなく常識とのズレを感じさせるシュールな感性等、おそらくこの監督にしか作れない世界観であろうと思う。ウマが合うか合わないか、ですな。私はコメディ部分のさじ加減にちょっと乗れなくて、特に終盤の雪山の場面はあまりにカトゥーン過ぎて興ざめしてしまった。それにこんなにもインパクト”強”の有名俳優ばかりってのも話のバランス的にどうなんでしょう。ジュード・ロウが主人公となって話を回してゆくんだな、と誰だって期待するわ。レイフ・ファインズがコメディもそこそこできる、って発見はできたんだけどな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-05-25 23:31:11) |
904. 山の郵便配達
《ネタバレ》 実直そのものの父親と、ラジオ音楽を手放さない現代っ子の息子プラス”次男坊”のわんこ。バランスのよいトリオが織り成す普遍的な親子の姿。父は大人になった息子に涙し、息子は背負った父の軽さに時の流れを知る。ベタといえばベタ。でも控えめな演出と広くて深くて圧倒的な中国の自然に中和された。 訥々と、村人らの素朴さを描きつつ、都市から帰ってこない若者と置き去りにされる祖母という現実や、親子で小声で役人批判をするといったビターな視点も交ぜてほのぼの一辺倒を避けている。 「いい話なんだろうなー」と予想しながら観て、やっぱり予想通りいい話で、なあんだと思いながらも涙が流れているのだった。ぐすっ。 [DVD(字幕)] 7点(2017-05-17 23:18:40) |
905. 残穢 -住んではいけない部屋-
《ネタバレ》 こけおどしを一切廃してリアリティ追究型に徹したジャパニーズホラー。鼻白むような演出はあまり無く、しんみりと怖い。でもいかんせん地味。 橋本愛が終盤に「自分が何を追っているのかわからなくなりました」と言っていたけど、うん私はソレもっと中盤から感じていたよ。遡ってゆくうちに場所も変われば怪談の「肝」の部分も変わっていっちゃって、炭鉱事故のくだりではもはやたくさんの赤ちゃんはどこへやら。これがリアリティと言われればそれまで。うーんでも正直怖がりたくて観に来たわけですから、もうちょっと盛り上げてほしい気もする。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2017-05-16 23:58:18) |
906. マッチポイント
《ネタバレ》 クラシックなオペラ歌曲にのせて展開するは現代のお話なれど、中身ははるか昔から繰り返されてきたであろう男女のいざこざ。不誠実な男と、責任を迫る女。ありがちな話がアレンにかかると「運」まで動員される。神の役回りはもちろん監督なんだが。大体神様が女好きだからねえ。 自分でも誰の立場で観てるのかちょっとわかんないまま、いつ男のハリボテがはがれるのかと変に手に汗握りながらの観賞だった。とにかく性格のひん曲がっている監督の手腕が凄いとしか。スカヨハ登場一発目のシーンからこの先の倫理違反は明白、「あれ?きのうの夕方お前を見たぞ」と証言する友人がやなとこで現われるしスカヨハはどんどんヒステリックになってゆくし、落とした薬きょうを「見せて」とウルサイ妻。小心者のワタシはまったく気が休まらない。極めつけは空に放り投げた老婆の指輪。欄干に当たって、そして「こちら側」に落ちる。もちろん思い出すのは冒頭の「運」のお話。ああ、そうなるのかと思いますよね。ついに引導を渡されるのかと。・・が、ところがなんですね。つくづく食えないジジイ監督だ。 ちなみにキャスティングも天才的に的確だ。ヨハンソン以外にも「育ちが良くて」「つまらない」妻E・モーティマー、温室育ちの坊ちゃん長男M・グード。うるさい割りに鈍感な義父母。駄目刑事。こわいほどにハマっている。やっぱり監督ただ者じゃない。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-15 23:56:52) |
907. チャイルド44 森に消えた子供たち
《ネタバレ》 描きたいことに焦点を絞ったらどうかな。なにしろ人権抑圧描写が圧倒的すぎて、旧ソ連社会のシステムが背景でなくメインになってしまっている。そのため迫害を受けるT・ハーディ夫妻の身の上にこちらの心配が寄ってしまうので、殺人事件がかすんでしまった。 英語であるという違和感を気にしなければ、役者は皆良い芝居をしている。ハーディもオールドマンも、人物造形において行間まで掴んだ仕事ぶり。粗の目立つ展開も役者の力でぎりぎり説得力を保った。 ・・とはいっても、やっぱりレオがこの連続殺人事件にこうも肩入れするのはなぜだろうと思わずにいられない。G・オールドマンのキャラクターも描き込む時間が少なかったせいで熱演も空回る。ああ勿体ない。 原作は未読。消化不良な思いを皆さんのレビューで補う、というのでは映画作品としてはよろしくないと思う。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-05-15 00:34:18) |
908. 赤ひげ
《ネタバレ》 一つ一つの人情話が庶民の悲哀や貧困の残酷に根ざしていて重い。けれどその重さを中和するのが三船赤ひげ先生の人間の深みであり、人の情けであり。清濁併せ持つ赤ひげ先生の魅力についてはもう言うに及ばず、三船敏郎の分厚さに唸るばかり。一番好きな場面はチンピラを片っ端からのしておいて、「医者がこんなことをやってはいかん」と大真面目に弟子に諭すところ。もう、参っちゃうなあ。 そしてこの映画、画力にも強烈な印象を受けました。山崎勉のエピソードでの風鈴の使い方。軒に並べられたガラスの輝きとその音色、その向こう、坂道で再会する男女。切ない美しさがもう、すべてこの1カットで語りつくされます。脳が痺れました。 子ども二人の話をこっそりと大人二人が盗み聞きするシーンの画も忘れ難い。布団が幾枚も並べ干されて仕切られた、劇場型な効果は抜群で、こちらも話を漏れ聞いた気分になり涙ぐむのでありました。 人物の造形、お話の濃さ、カメラワーク。どれを取っても一級品。ただ、少ーし長い、です。 [DVD(邦画)] 8点(2017-05-13 23:44:44) |
909. ラウンダーズ
《ネタバレ》 見どころはもちろん、緊迫のポーカー勝負の場面。ルールに詳しくなくても観る者をマットと一体化させて緊張を煽ってゆく演出がすごい。私は喉がからっからになりました。「マイク帰れ、帰るんだ!」とも叫びましたし。 悪友が巻き込んだトラブルをどう収めるのか、また将来をどう選択するのか、など主人公に課題を複数抱えさせ、きちんと全部回収した脚本も巧い。文句なしのラスト。温情溢れる老教授の存在は無くてはならないですし、プロのプレイヤーとしてクニッシュを置いたのも良い。彼は「欲を出さない」ことを基本理念に15年ものキャリアを誇り、マイクに”正しい”教示を与える。で、マイクは知っているのです。クニッシュも元カノも正しいということを。しかし才能を抱えるゆえに心の奥では「小さく稼ぐ」ことに納得がいっていない。敬意を抱く先輩プレイヤーの教えも、教授の示唆もマイクにとって逆に働くのが人生の綾というか、おもしろいなあと思います。 マット・デイモン、初々しいですねえ。賢いキャラがほんとにハマる人です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-05-10 23:55:00) |
910. 偽りなき者
《ネタバレ》 恐ろしくて恐ろしくて身の置き所無く感じられる辛い2時間だった。 以下は鑑賞中の気持ちの推移。 ・・あ?何言ってんのこの子。しかもこの園長やばい。専門家もやばい。園長、話聞きなさいよ。子どもは嘘つかないだ?つくわ。どうしよう立証できる術がないじゃないか。ちょっと、息子に暴力ふるうのやめなさいよどこが友人だ(怒)。なんだこの肉屋訴えてやるこんなとこで金輪際買い物しない(激怒)うわああ犬が。酷すぎる。なんなんだお前たちはあっ。 と、取り乱すワタシよりミケルセンはよほど冷静で、ぎりぎりの精神状態で理性的に良く耐えた。あの女児に怒りをぶつけることもしなかった。実に成熟した大人ぶりを憔悴した表情とともに見事に演じている。 人の世の恐ろしさを見せ付けられて気が休まらなかった。しかし、もしも自分がこの女児の親だったらルーカスを100%信じられるだろうかと考えると暗澹となった。・・さてどうしたら良いのだろう。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-09 17:48:19)(良:4票) |
911. トランスフォーマー
いやああー長い!戦隊ヒーローもののお話にこんな長丁場で付き合わされては。睡魔と闘うはめになったよこっちは。 なんといってもやはり映像技術は凄いですよね。あのクルマの構造パーツだけであんな高さのロボットになるんかいな、とそこは最後まで引きずったけども。 あと、ジョン・ヴォイト頑張ってるなー。すごくかっちょいい国防長官だ。彼がライフルを手にした場面が、個人的には一番アガりました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-05-09 00:22:37) |
912. SHAME -シェイム-
《ネタバレ》 性交シーンが多く、しかもどぎつくて不道徳とも感じかねないけれども、この話の根っこにあるのは心の飢餓に苦しむ男の孤独である。心が不安定だと依存症になる場合がある。人により、アルコールだったりギャンブルだったり。この男はセックスだった。 キャスティングが容姿端麗なM・ファスベンダーで正解だった。画が生臭くならずに済むし、見た目とのギャップの大きさも強く印象に残る。かなりきわどい性描写もこなし、X-MEN俳優で終わるまい、というあっぱれな役者根性の持ち主とみた。 妹シシーを配した脚本が巧いと思う。シシーは男の映し鏡。欠落しているものが同じなので、自分を見ているみたいでイライラするのである。二人とも孤独で、空っぽだ。 男にとってセックスは渇望を満たすための行為。愛の行為ではないので、好きな女のことはどう抱けばいいのか分からない。この場面は深刻だ。深刻さを解消できぬまま、後半には彼のセックスは自己破壊にも近くなる。 兄妹の生い立ちがどういったものなのか描かれず、つらいまま話は終わってしまう。 男にはセラピーが絶対に必要だ。まだ希望はあると思う。妹が死にかけた時、初めて人間らしく動揺し、男は泣いた。なんとかして、彼が苦しみから抜けられますように。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-05-07 00:22:27) |
913. ニック・オブ・タイム
《ネタバレ》 スタイリッシュ俳優ジョニー・デップを主人公に据え、画も綺麗な90年代の作品ながら、どこか80年代の野暮ったさを引きずるミョーな手触り。なんだろうこのヘンテコな感じは。 ギャングも海賊もできるJ・デップが今作では非力なおとーさんで、こんなに共感できるキャラクターのジョニデも珍しい。 何度がんばっても悪魔のように現われるウォーケンを知事の選対本部で見つけた時の、驚愕したジョニーのあほ面はまったくワタクシとシンクロしており、ハリウッドスターと同じ表情をするなど、実に稀有な体験でありました。 一般人の範囲内で精一杯奮闘するジョニデのMAXは知事に直訴の場面なのですが、それすら起死回生の一発とならず、(なんせ話しただけでしたな)主人公の一発大逆転を期待するこちらの思惑を外し続ける脚本。なんであんなにホテル従業員が協力的なのか、知事はなぜ警告されたのに手を打たないのか。そして何より皆がつっこむウォーケンへの「あんた自分でやりなはれ」 ・・等々、言いたいことはてんこ盛りなんだけど、結局でも面白かったような気がするんですよ。なんだろうこの変な感じ。 [DVD(字幕)] 7点(2017-05-02 23:39:16) |
914. 下宿人(1926)
観ていて、ほとんど映画史のお勉強という心持ちになってくる。頑張って観ているという感じだ。幸いストーリーがビフォー・ヒッチコック的なサスペンスなのでなんとか寝ずに観られたけれども。 びっしり抑揚無く背後に流れ続けるサロン音楽がぽろぽろぽろぽろ・・、これ結構苦痛。映画音楽というジャンルが確立されている現代に感謝だ。 心理描写はこなれていないし真実は取ってつけたみたいで脚本も粗い。同年代にはキートンやチャップリンといった傑作もすでに世に出ているのだから、この映画が退屈なのは「昔のだから」という訳ではなく、単に作り手の技量の問題か。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-04-30 23:24:01) |
915. パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間
《ネタバレ》 これまで目にしてきたケネディ暗殺事件関連のものは、その事件の真相を追うというテーマがほとんどでしたので、「事件に関わることを余儀なくされた一般市民」を描いたこの映画、ちょっと斬新でした。 狙撃された大統領は運び込まれるわ、その数日後犯人と目されるオズワルドまで搬送されるわで、パークランド総合病院は前代未聞の大騒ぎだったことでしょう。外来受付はきっとストップしただろうな。大統領側近も大変だ。専用機に棺が入らない。こんなことを想定するわけないだろう、と椅子を外しスペース確保に懸命になる彼らの胸中はいかばかりだったか。 他にも描かれるのは、動画を撮影していたアマチュア・カメラマン、オズワルドの家族ら。昨日まで一市民だったのが、歴史上の大事件に突然向き合うことになり、その日から人生の視点も微妙に変わっていったのだろうなあ。神妙な気持ちになります。 キョーレツな印象を残すのはオズワルドの母ちゃん。弟が犯人(とされている)上、母までああではオズ兄の立ち位置は大変キツイ。心から同情した。 オズワルド埋葬の際、兄が一人で穴を掘るのを見かねてマスコミ関係者らが自らスコップを手に手伝い始める。ここ、ちょっといい場面でありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-04-25 23:56:12) |
916. 穴/HOLES
《ネタバレ》 お話は変化球なのですが、男の子たちの演技が素直で良く、ストレートな青春&友情ものとして後味の良い作品でした。 矯正施設と聞くと(しかも穴掘り)、想起してしまうのはいじめや暴力、とつい暗くなりそうなのですが、そこはディズニーなので仲間の上下関係のシバキも若人のケンカ程度の描写で収まっております。安心です。 代々伝わる主人公ん家の呪い、その発端がかなりしょうもないです。曾々じいちゃんのうっかりでツキが無いなんて、後世の子孫は迷惑だなあしかし。 女強盗キッシングメアリーの伝説なども通り一遍ではなく厚みを持たせての挿話になっていますし、各話がうまいこと層になって頭に入ってくる脚本の力もなかなかです。 ちょっと変わった味付けの少年少女向けのファンタジーを明るくまとめるのに一役買ったS・ウィーバー、アークウェットら大人たちも良い仕事しました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-04-24 23:36:30) |
917. 脳男
《ネタバレ》 適度にグロテスクな内容といい、眉目秀麗な俳優起用といい、ダークな世界観に惹かれるティーンエイジャー向けの映画です。いい大人が「ほう」と唸るモノでは決して無いんだけど、漫画が実写化されたかのようなそこそこの安っぽさ~例えば所謂「豪邸」の画ヅラとか、爆弾が大病院のあちこちに配置されているくだりのあまりの手際の良さとか、主人公がキラキラしすぎて目が潰れそうだとか~、そういうのに慣れるとけっこう楽しめます。 冒頭では甚だ怪しい脳男氏の立ち位置が微妙に変わってゆく変化球的な展開は意外だったし、死を裁決することへの逡巡といった問題まではらんで、制作側は大真面目です。ラストの松雪逆転負けのエピソードはぴりっと締まって良かったと思います。 なんといっても生田斗真がこの「実写化」テイストの作品にぴったりです。このキャラクターは演技力は要求されないわけで、つまり容姿のみでキャスティングされたであろう彼。「俺は本格俳優になりたいからこんなのはやりたくない」と生田サイドが言わなくて本当に幸いでした。 「まあ俺は賑やかしだから」と判断しての江口のがちゃがちゃうるさい芝居と、いつでも大河風の本格演技を持ち込んじゃう松雪が、どちらもどうも互いにしっくりこない上、映画からも浮くのが惜しい。ふみちゃんも肩に力入りすぎ。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2017-04-22 23:55:27) |
918. 暗くなるまでこの恋を
《ネタバレ》 サスペンスが好きです。なので、導入部の”ほんとの嫁じゃない疑惑”らへんは、とてもそそられました。掴みはOK、です。 けれど、意外や話は失楽園へと突き進む。ちょっとがっかり。そりゃドヌーブは素敵ですけど、社会的地位や生活の糧を投げ打ってまで彼女にのめり込む、というにはベルモンド、やや「狂ってる」感が足りなかった。とはいえ、彼のそれまでの男っぽいイメージを覆すような「女に振り回される」弱さがチャーミングにも感じられ、ああこれはアラン・ドロンにはできない芸当だろうなーと発見できたりもしました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-04-19 22:59:53) |
919. わらの犬(1971)
《ネタバレ》 ”監督of暴力”のサム・ペキンパー、彼の筆致はキューブリックほど洗練されてなくて、人間の本質をむき出し且つぶちまけ型である。単に不快だから、という理由で目を背けて否定しては、ウソつきと言われそうだ。 陰気臭い田舎町と低所得風な労働者たち。そこへ乳首もはっきりわかるぴったりニットの若い嫁。すでに不穏な空気がこの冒頭だけで充満している。イヤな感じしかしない。 半世紀近くも前の作品だけど、女への暴行シーンや彼女の抱えるPTSDの描き方等、これほどショッキングで生々しく痛みを感じさせる作品は他に見た事がない。 猫を殺られても煮え切らなかったヘタレのD・ホフマンが窮鼠の如く、信条と真逆の暴力行為へと狂い出す、この凄まじさ。青白い額に汗を浮かべて妙に座った目つきで油を沸かす。ホフマンの嫁が幼なじみの男連中に気があるような素振りを繰り返すのもなかなかに不気味で気分が悪いのだが、やはりその地の出身者らしく「知的障害者を差し出せ」と暴力発言をするのだ。これにより完全に周囲を暴力で包囲されたホフマン、「二度と帰ってはこれない」地点まで行ってしまう。ああやっちまった。しかし、一番共感をできるのは誰あろうこの人なのだ。震撼するやら呆然とするやら。自分の暴力性まで暴かれた気分だ。こちらも冷たい汗でびっしょりだ。 [DVD(字幕)] 8点(2017-04-19 00:27:59) |
920. 誘拐報道
タイトルから「報道」を取っちゃった方が良いです。誘拐犯サイドの描き込みが圧倒的なんだもの。身につまされるような犯人側の経済的困窮、愚かさ、哀しさ。加えてショーケンと小柳の濃すぎる熱演。比べてマスコミ側は人ばかり多いけど、ドラマが発生せず盛り上がりも無くて、たった二人のショーケン・ルミ子夫婦に押されっぱなし。 今から見るとバブルに差しかかろうかという日本の世相が色々懐かしく、ちょっとイタイ。 ちょこちょことあんまり意味無く出てくる藤谷美和子の、いつも同じコート姿がやけに印象に残る。 ケータイの無い時代の恋愛ってどうやってたの?とネットに疑問が載る昨今ですが、そう、この美和子嬢みたいに彼氏の職場にまで電話をかけるのですよ時間構わず。って、そんなわけはない さすがに。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-04-17 23:42:45) |