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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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81.  エドtv
前年公開の「トゥルーマン・ショー」の二番煎じとみなされて興業的にも批評的にも大失敗、ロン・ハワードの黒歴史と化している本作ですが、私は「トゥルーマン・ショー」よりも遥かに面白く鑑賞できました。本作では「トゥルーマン・ショー」に欠けていた点がほぼ完璧に補正されていて、メディア批判の映画としては超一級だと思います。。。 「トゥルーマン・ショー」の最大の欠点とは”「トゥルーマン・ショー」が面白い番組に見えない”という点でしたが、これに対し本作は①トゥルーマンを無理に拘束せずともテレビに出たがる人間はいくらでもいる、②視聴者が興味を持つのはハプニングとスキャンダル(清廉潔白なトゥルーマンのドラマなど面白くも何ともない)、この2点を徹底して深掘りすることで、「もしこんな番組をやっていれば、恐らく人気が出るだろう」という説得力を持たせることに成功しています。最初は「くだらない」と言っていた視聴者達が番組に対して徐々に関心を抱き始め、大人気番組へ成長していくという丁寧な描写はロン・ハワードならでは。次々と繰り出される"バラエティあるある"には笑わされるし、同時に考えさせられます。またエドが反撃に転じるクライマックスには適度なカタルシスがあり、脚本も演出も驚くほどしっかりしています。。。 三十路でフリーターのダメ人間だが、誰からも愛される可愛げを振りまくエド役にマシュー・マコノヒーは適任でしたが、このキャスティングも当時としてはかなりの意外性がありました。というのも、マコノヒーは弁護士(「評決のとき」「アミスタッド」)、神学者(「コンタクト」)等専らアカデミックな役柄を得意としており、ダメ人間を演じることは珍しかったからです。しかし本作は彼の個性を引き出すことに成功し、以後のマコノヒーは気の良いチャラ男を演じることが多くなりました。本作はキャスティング面でも成功を収めていたというわけです。
[DVD(吹替)] 8点(2012-06-25 01:18:06)(良:1票)
82.  トゥルーマン・ショー 《ネタバレ》 
「ガタカ」に続いて”人間の尊厳とは?”というテーマを扱っており、実にアンドリュー・ニコルらしい脚本となっています。空から落ちてくる照明器具、おかしなタイミングで挿入される広告宣伝、セットの裏で休憩しているエキストラ等の小ネタも面白く、脚本の仕上がりは上々です。問題に感じたのはピーター・ウィアーによる演出が堅過ぎたことで(当初はニコル自身が監督する予定だったが、ジム・キャリーが主演に決定したことで製作費が倍増し、監督経験の豊富なウィアーに交代させられた)、本来は毒のあるコメディであるべき本作が大真面目な人間ドラマになっています。。。 公開当時、本作はメディア批判の映画として評価されていました。これこそウィアーによる真面目な演出の結果なのですが、本作をメディア批判という視点で鑑賞するとあまりにも穴が多すぎます。万里の長城に匹敵する超巨大セットが組まれ、小国の経済規模に匹敵する製作費が投入されているという基本設定はあまりに荒唐無稽。クリストフにはテレビマンとは思えない行動が多く(ハプニングこそが視聴者を引き付けるのに、ハプニングが起こると放送を打ち切ってしまう)、そもそも「トゥルーマン・ショー」という番組がまったく面白そうではありません。これらの点が本作を中途半端な出来にしており、もしメディア批判の映画を観たいのであればロン・ハワードの「エドtv」をおすすめします。
[DVD(吹替)] 6点(2012-06-24 22:08:07)
83.  ニュートン・ボーイズ
登場人物に魅力がないし、目を見張るような見せ場もない。本作は完全な失敗作だと思います。才能あるリチャード・リンクレーターが監督を引き受けながら、メジャースタジオとの初仕事にあたってその個性を封印し、普通の映画作りをしたことが敗因だったと思います。それなりのキャストは揃っていたのだから、監督が腹を据えていればそれなりの映画にはなったはずです。
[DVD(吹替)] 3点(2012-06-10 02:22:52)(良:1票)
84.  グッドフェローズ
LAの裕福な芸術一家に育ったコッポラがマフィアの世界を荘厳に描く「ゴッドファーザー」を撮ったのに対し、NYの貧民街で育ったスコセッシが「チンピラなどは唾棄すべき人種だ」という考えで本作を撮ったのは興味深い事実。本物のマフィアの姿を見て育ったスコセッシが監督を担当したことが、本作の最大の強みとなっています。。。 虚弱体質で気の小さかったスコセッシ少年にとって、街を仕切るマフィアは死ぬほど怖い存在だったようです。大人になり映画監督になったスコセッシは、子供の頃に自らが感じた恐怖を観客に追体験させます。ジョー・ペシ演じるトミーこそがその恐怖の象徴。悪気ない一言にしつこく絡んでくる、些細な出来事がきっかけで人を酷く痛めつける、ヤクザ特有の理不尽な恐怖が見事なまでにスクリーン上で再現され、観客は身を凍らせるのでした。このアプローチはスピルバーグに似ています。極度の怖がりだったスピルバーグは、その強い感受性をスクリーンに再現することで観客に恐怖の追体験をさせましたが、本作もヤクザの怖さを追体験させているのです。本作はマフィア社会の描き方が素晴らしい等と絶賛されていますが、正直言ってそんなものは二の次。この映画が他のヤクザ映画よりも抜きん出ているのは、一般人がヤクザを見た時に感じる恐怖心を完璧に再現できていることです。”多くの人はテレビで戦争を見るのだから、カメラ越しの戦場映像こそが最もリアルに感じるはずだ”という理屈で撮られた「プライベート・ライアン」と同じ話で、”一般人がヤクザを見た時にどんな感情を抱くのか”という点に徹底的にこだわっている点が素晴らしいのです。。。 さらに、技術面でも注目すべき点が多数あります。絶え間なく流され続ける音楽、あることないこと話しまくりまったく途切れない会話、テンポの良い編集など、タランティーノやポール・トーマス・アンダーソンらに明らかに影響を与えているのです。本作にてスコセッシは驚くべき手腕を披露しており、これが彼のベストワークだと思います。 
[DVD(吹替)] 9点(2012-06-07 01:22:19)(良:2票)
85.  2 days トゥー・デイズ
90年代に数えきれないほど製作されたタランティーノフォロワーとしては極めて標準的な出来。悪くはないが、決して良くもないといったところです。本家タランティーノの強みとは、既存の映画作りの枠を無視して自由に物語を組み立てることにあるのですが、本作を含むタランティーノフォロワーは「タランティーノみたいな映画を作る」という点からスタートして自らを枠にハメており、そのことが最大の弱点となっています。。。 「パルプ・フィクション」を研究したと思われる本作の脚本は意外なほど丁寧に練られていて、当初は無関係に思われたエピソードがひとつに収束してゆく様はなかなか楽しめました。しかし良かったのはそこだけ。これまたパルプ・フィクションを意識したと思われる風変わりなキャラクター達を監督が扱いきれておらず、コメディパートではあまり笑えません(訛りのキツイ英語しか話せなかった当時のシャーリーズ・セロンがスウェーデン人役という苦心の果ての設定には笑いましたが)。これこそがタランティーノ症候群の罠であり、無理しておかしなキャラクターなど登場させず、監督の引き出しに合わせたキャラクター作りをやっていればよかったのです。
[DVD(吹替)] 4点(2012-06-07 00:30:07)(良:1票)
86.  サイコ(1998)
公開当時は散々な評価を受けた本作ですが、DVDに収録されているメイキングドキュメンタリーを観て納得がいきました。各文化には、シェイクスピアや忠臣蔵のように時代を越えて演じられ続ける”古典”というものが存在します。まだまだ歴史の浅い映画という文化においても将来的にはシェイクスピアに匹敵するような古典が登場し、それは同じ形を保ったまま何度も何度も演じられ続けることとなるに違いありません。本作の監督はその古典の第一号として「サイコ」を選び出し、他の文化では当然に繰り返されている”再演”という行為を映画にも持ち込んだのです。公開当時、本作は「完璧なものをなぜ作り直すのだ?」という批判に晒されましたが、その疑問は見当違い。完璧だからこそ「サイコ」を再映画化したのですから。。。 本作の製作にあたっての監督のこだわり方は異常で、脚本・装置プランどころか撮影スケジュールまでをオリジナルに合わせるという只事ではない執着を見せています。安易な改変を加えないことこそがオリジナルに対する最大の敬意であると考えたわけです。一方で必要性を感じる部分に対しては適度な修正が加えられています。例えば、オリジナルでは曖昧にされていたノーマンの性的倒錯が本作でははっきりと説明されていて、これによって話の通りが良くなっています。ノーマンのキャスティングに至っては大幅な修正が加えられていますが、これについてはリメイクならではの事情が反映されたようです。オリジナルのキャスティングは、好青年のイメージの強かったアンソニー・パーキンスにノーマンを演じさせることで後に明らかになるその正体の衝撃度を高めるというサプライズ的な意味合いが大きかったのですが、話のネタがとっくに割れているリメイク版ではそうした狙いは不要。そこで異常者っぽい風貌のヴィンス・ヴォーンにノーマンを演じさせることで、早い段階から彼の心の闇にフォーカスするという作りに変更したのです。この変更は”あり”だったと思います。。。 カラーになったことで画面は見やすくなったし、サラウンド化されたことでテーマ曲はシャープに蘇りました。こういった点でも再映画化のメリットは発揮されていて、今の中高生がサイコを見ると言い出したなら、私はオリジナルではなくリメイク版の観賞を薦めると思います。。。 とはいえ、本作のどこに6,000万ドルもの製作費が使われたのかは謎ですが。
[DVD(吹替)] 6点(2012-05-19 04:55:38)(良:1票)
87.  カリートの道
カリート・ブリガンテが麻薬帝国を築き上げるまでを描いた「カリートの道」と、服役後のカリートを描いた「それから」が本作の原作としてクレジットされていますが、映画で描かれるのは主に「それから」。”若き日のカリートを知りたければ「スカーフェイス」をご覧ください”という作りとなっています。やたら絡んでくる新興ギャングを邪険に扱うカリートに向かって、昔の友人が「なぜ奴を嫌う?昔のお前だからか?」と問う場面なんて、嬉しくて笑っちゃいましたよ。。。 安穏を求めるヤクザ者が、その意思とは裏腹に暴力の世界に引きずり込まれていくという物語はヤクザ映画でよく見るパターンであり、おまけに本作は特に捻りも加えていないためお話はあくまで紋切型です。紋切型ではあるのですが、デ・パルマの演出力とパチーノの演技力、そして背後に大傑作「スカーフェイス」を控えさせているという抜群の安定感により、この手の映画としては最高の仕上がりとなっています。ヤクザ映画に興味のない人であっても、本作は十分に楽しめるのではないでしょうか。。。 と、クォリティの高さは十分に評価するのですが、傑作にはなりきれていないという印象です。その理由は脚本にあって、個性的な演出や演技と比較すると脚本は月並みに感じられます。本作の脚本を担当したのはデビッド・コープという人物なのですが、この人は恐ろしくクセのない脚本家で、その仕事は常に可もなく不可もなく。個性や主張は極力抑え、オーダーされたものをオーダーされた通りに作るというもはや”業者”ともいえる脚本家であるため、脚本に力がないのです。例えば「スカーフェイス」にはオリバー・ストーン特有の訳のわからん勢いがパンパンに詰められていて、その爆発力が映画をグイグイと引っ張っていたのですが、本作にはそれがありません。このことが、本作を”よくできた佳作”の域に留めているように感じました。
[DVD(吹替)] 7点(2012-05-05 01:49:06)(笑:1票)
88.  プライド/運命の瞬間
公開時は高校生だったのですが、従軍慰安婦も南京大虐殺もバリバリに信じていた当時の私は本作の内容に激しく憤り、「こんな映画は駄作に決まっている。死んでも観るものか」と固く心に誓ったものでした。当時の日本は私のような心境の人間が圧倒的多数を占めていたようで(表現者であるはずの山田洋二までが「プライド」上映禁止運動に参加するという異常事態)、2011年のDVD発売までの10数年間、本作は封印作品に近い扱いを受けていました。しかし時代は変わるもので、「日本って言うほどは悪くなかったんじゃ?」という疑念とともに本作はシレっと復活。かつては「死んでも観るか」と固く誓った私もアッサリ誓いを撤回し、死んでもどころか10年そこそこで本作を鑑賞するに至ったのでした。。。そうして鑑賞しての感想ですが、これがなかなか面白いのです。理由は簡単、題材が面白すぎるのです。弁護側が提示した3000もの証拠は理由もなく却下され、一方で歪曲や捏造に溢れる検察側の証拠はロクに検証もされずにどんどん通っていく。ならばと弁護側が検察側の矛盾点を追及しようとすると、「後で答える」との返答で終わらされてしまうという理不尽にも程がある魔女裁判が繰り広げられたわけですから、これをドラマにしてつまらないわけがありません。開始から2時間は時間を忘れるほど映画にのめり込みました。しかし、物語が裁判を離れ、東条英機やパール判事のプライドにフォーカスするラスト40分に入ると、映画は一気に息切れを起こします。東京裁判のみで突っ切ってしまえば面白かったのに、インド独立運動などを入れてしまったために視点が分散してしまったのです(そもそも本作はパール判事の伝記映画の企画だったわけですが…)。とはいえトータルでは満足度の高い作品であり、本作を頭ごなしに否定する人は自分の目で映画を観ていない人だと思います。「東条英機を擁護するなんて言語道断」と思う人も、映画を見れば意見が変わるはず。日本の側に非があるのなら検察側はその悪事を淡々と暴いていけばいいだけなのですが、実際の東京裁判では検察側が日本の悪をまともに立証できず、判事と検事の超絶連携プレイで7人を絞首刑にしたという法の精神完全無視の結末を迎えたわけです。なお、監督・脚本を務めた伊藤俊也氏は東映労組の戦闘的な委員長として知られたバリバリの左翼。左翼の目で評価しても東京裁判は狂っていたというわけです。
[ビデオ(邦画)] 7点(2012-02-25 05:36:09)
89.  ブギーナイツ 《ネタバレ》 
撮影・編集は凝りに凝っており、技術的には非常にレベルの高い映画です。題材選びも面白いし脚本も素晴らしいので良く出来た佳作には仕上がっているのですが、惜しいところで傑作にはなりきれていないという印象です。この監督は登場人物を冷めた視点で描く傾向があり、傲慢な大富豪を描いた「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」ではその傾向が吉と出ていましたが、若者の成長物語でもある本作では、この冷たさが時にアダとなっています。監督自身がキャラクター達を愛していないのでドラマはエモーショナルな抑揚に欠き、劇中さまざまな事件が起こってもどこか平板な印象を受けるのです。本作で例外的に感情が爆発するのは主人公エディが家出をする序盤なのですが、これは監督自身の経験を元にしているため。監督は映画以外の物には関心を抱けない人物であり、そのため学生時代には成績も悪かったようなのですが、彼の母親はそれを許さず口汚く罵られる日々が続いたとか。そんな過去を主人公エディにも追体験させたため、映画全体から浮いてしまうほどにあの場面だけが突出して生々しいのです。。。 本編で注目すべきはダメ人間達の生き様です。オヤジであるジャックをはじめポルノ一家の面々は「自分達は映画という作品を作っているのだ」という一点に人間としてのプライドをかけています。自分達は監督・俳優であって、裸だけが売りの人間ではないというプライドを。しかし劇中劇を見ると、悲しいほどにこのプライドが滑稽に感じます。セリフはすべて棒読みだし、演出も編集もボロボロ。無能な人間が寄り集まって「俺達はダメじゃないんだ」と傷を舐め合っているようにしか見えません。エディは裸以外にも取り柄があるはずだと信じてポルノ一家を飛び出しました。性描写のみに特化したAVを撮れと言われたジャックは「俺はフィルムメーカーだぞ!バカにするな!」と激怒し、激しくこれを拒否しました。しかし、結局彼らは裸の世界に戻ってきます。他に生きる場所がないことを思い知ったからです。唯一、ドン・チードル演じるバックはポルノ業界から脱出することに成功しますが、それは神がかった幸運のおかげであって彼が無能であることに変わりはありません。一家が再集合するラストをハッピーエンドと見る向きもありますが、ポルノという閉じた世界に居場所を見出さざるをえないエディ達の姿は、むしろバッドエンドと考えるべきでしょう。 
[DVD(吹替)] 7点(2011-10-29 21:14:27)
90.  蜘蛛女(1993)
「映像化困難な傑作脚本」として7年以上もの間幻の企画とされてきた作品らしいのですが、本作はそんな困難な素材を上手くまとめています。究極の悪女モナ(我が国にも、男を骨抜きにする山本モナなる人物がおりますが)をいかに描写するかにこの映画の成否はかかっていたわけですが、その点で言うと本作はほぼパーフェクト。レナ・オリンのハマり具合は尋常ではないし、彼女を人ではなく妖怪として描くという振り切った演出も的を射ています。本作はジャックによる回想という形式をとっているため、モナが人間離れした活躍を見せても「彼女に人生を引っ掻き回された主人公にはこう見えていました」という方便を使うことが可能。脚本も演出もこの点を利用してやりたい放題やっており、その結果他に類を見ない悪女を作り上げることに成功しています。本作の監督であるピーター・メダックなる人物のことはよく知らないのですが、この人の演出は概ね良好であったと思います。悪女ものと言えば多くの作品が「氷の微笑」の影響に引きずられる中で、本作は独自の印象を持つ作品に仕上がっているのですから。
[DVD(吹替)] 7点(2011-05-28 19:57:03)
91.  サイダーハウス・ルール 《ネタバレ》 
この監督さんの映画作りはうまいので鑑賞中はそれなりに楽しめたのですが、この映画の根本的な主張にはまったく共感できませんでした。。。リンゴ農園で黒人労働者が住まう通称「サイダーハウス」には小屋のルールがあるのですが、実際にサイダーハウスに住んだことのない農園主が考えたルールなのでその内容はあまりにバカバカしいものでした。それに対して黒人労働者達は「サイダーハウスのルールはサイダーハウスに住んでる人間自身で決めるべきだろ」と言い出すのですが、それこそがこのタイトルの由来。そんなタイトルが示す通り、本作の登場人物達は好き勝手にマイルールを考え出し、もっともらしい言い訳をしながら生きていきます。トビー・マグワイア演じる主人公は「自分こそがこの孤児院にもっともふさわしい人間だ」と言って学歴詐称、医師免許偽造を働き、マイケル・ケイン演じる老医師は、お気に入りの主人公が兵隊にとられてはかなわんと彼の病歴を偽装し、シャーリーズ・セロン演じる若いお姉ちゃんは、「寂しがり屋の私を置いて戦地へ行った彼氏が悪いのよ」と言って浮気をします。どいつもこいつも言ってることがメチャクチャ、こんな自分勝手な人間ばかりでは世の中は成り立ちません。特にシャーリーズ・セロン演じるバカ女には「パール・ハーバー」のバカ女に通じる突き抜けた頭の悪さがあって目が離せませんでした。お国のため必死に戦っている彼氏がいるのに、安全な祖国で被害者面して平然と浮気。本作の当時上映には「シン・レッド・ライン」をお勧めします。ガダルカナル島で必死に戦っている最中に、祖国の妻に浮気をされたスタロス大尉の雄姿に注目してください。
[DVD(吹替)] 4点(2011-05-08 22:24:19)
92.  ジャッジ・ドレッド(1995)
本サイトにおける平均点がスタローン作品中最下位にしてアメコミ作品中でも最下位という、駄作の中の駄作との評価をいただいている本作ですが、私は好きです。世間で言われるほど悪くはないと思います。コミックで描かれる未来都市をまんま実写で見せた映像センスは評価に値するし(ありがちなブレードランナー風ではなく、あえてコミック風にダサめのデザインにしているところがミソ)、CGが十分に発達していない90年代半ばだからこその、実物大セットとミニチュアとCGとを組み合わせた職人技的なVFXを楽しむことができます。ホバーバイクによるチェイスシーンなどはテーマパークのアトラクションのような楽しさがあって、すべてがCGではないからこその絶妙な粗さが独特の味となっています。砂漠に住むミュータント一家の特殊メイクも素晴らしい仕上がりで、本作のスタッフは相当頑張っています。「プレイデッド」という低予算映画でデビューしたばかりのダニー・キャノンによる演出も悪くはなく、ドレッドの実力やジャッジ達の武装、メガシティワンの治安状況を冒頭のアクションでコンパクトに見せるなど、話のまとめ方を心得ていることには好感を持ちました。本作についてケチをつけるなら、脚本を練りすぎたことでしょうか。スタローン主演のアメコミ映画と来ればヒーローがバッタバッタと敵を倒す単純明快なアクション大作を期待するものですが、陰謀や裏切りを物語の核としてしまったためにバカバカしくも派手に盛り上がるという展開を作れていません。本作は映画化の話が持ち上がってから10年以上も試行錯誤された企画だけに、その過程で物語がややこしくなりすぎたようです。なお、現在はカール・アーバンを主演に迎えての再映画化企画が進んでいるようですが、こちらの脚本を担当するのは「28日後…」のアレックス・ガーランド。またしても複雑な物語になりそうです。
[レーザーディスク(字幕)] 7点(2011-01-29 21:52:53)
93.  白い刻印 《ネタバレ》 
精神崩壊寸前の人物を描かせると、ポール・シュレイダーは相変わらず良い仕事をします。ニック・ノルティ演じる主人公の姿がとにかく痛々しいこと。彼はみんなと、特に娘とは仲良くやりたい、尊敬される存在になりたいと願っています。しかし幼少期に父親から酷い虐待を受けたために人格が正しく形成されず、ちょっとズレた人、身近にいると面倒くさい人になってしまいました。冒頭に描かれる娘とのハロウィンでのエピソード、彼は久しぶりに会った娘を楽しませようと張り切っていたのに、無意識のうちにルーズな部分が出てしまって娘の機嫌を損ねてしまいます(「タクシードライバー」のデート場面とよく似ています)。この時の主人公は憐れなほどにいたたまれないし、一方で「変なことに付き合わされるのは迷惑」という娘の気持ちも理解できます。このふたりの間に漂う気まずい空気、これこそがポール・シュレイダーの真骨頂、他の監督ではなかなか出せない味です。そんな主人公はある事故の真相究明に乗り出すのですが、熱くなると我を忘れるという本来からの気質の上に、親権裁判、母親の死、自分を苦しめてきた父親との同居等々のストレスから正常な判断能力を失い、妄想に取り憑かれてしまいます。「みんな俺をバカだと思っているようだが、この事件さえ解決すれば俺は一躍街のヒーローとなり、すべての問題は片付く」。大統領候補暗殺にのめり込んだトラビスの如く、彼は妄想上の事件に向けて走り出してしまうのです。その出発点が「娘から尊敬されたい」という純粋な思いであり、父親からの虐待という不可抗力から人付き合いを苦手としてしまったという根本原因を踏まえると、本作の主人公が狂気に墜ちていく様はあまりに悲惨なものでした。本作は「タクシードライバー」をより普遍的にした物語であり、もっと評価されても良い作品だと思います。
[ビデオ(吹替)] 8点(2011-01-23 21:11:07)
94.  シンプル・プラン 《ネタバレ》 
地味だし見せ場もないものの最初から最後まで緊張感が持続しており、最高クラスのサスペンス映画だと思います。タイトルと同じく映画の内容もシンプルそのもので謎解きや派手なドンデン返しなどなく、描かれるのはジリジリとした駆け引きのみなのですが、この装飾の無さが正解でした。ライミは本作で新境地を開いたと言われていますが、閉鎖空間で登場人物が狂気に追いやられていくという点では「死霊のはらわた」と同様であり、異なるのは舞台の規模とストーリーテリングの切り口のみ。ライミは自身の手腕で扱いきれる企画を的確に選んでいたようです。もしこれが「ユージュアル・サスペクツ」のようなミステリーに比重を置く企画や、「セブン」のような高いビジュアルセンスを要求される企画であれば、ライミは完全な駄作を作っていたことでしょう。また、役者も素晴らしい仕事をしています。オスカーにノミネートされたビリー・ボブはもちろんの熱演なのですが、そんなビリー・ボブと比べると損な役回りである主人公ハンクを演じたビル・パクストンもかなり良いです。なんせ、この映画はハンクにかかっていたのですから。大金を目の前にして普通の人の判断力が狂ってしまい、小さなほころびを修正しようとしてとった行動が次の大きな穴を作ってしまう。そんな物語では、観客はハンクの行動や感覚に納得する必要がありました。決して同情はできないが、同じ立場にいれば自分も同じ行動をとるかもしれないという感覚を抱かせる必要があったのですが、そんな役柄にあっては、「凡人」を演じさせればハリウッド一のビル・パクストンが適任でした。この人が焦り、悩む姿は、まさに大事件をひとりで抱え込まねばならなくなった小市民のそれであり、演技の説得力が違います(誉めてんだか、けなしてんだか…)。。。以上のようにほぼ完璧な映画なのですが、唯一ケチをつけるなら、ニセFBIが現れるクライマックスが作品のテーマから外れていたこと。これだけは気になりました。簡単なはずの計画が人間の欲望や疑心暗鬼によって狂っていくという物語なのですから、ここで真犯人が現れてはいけないでしょう。焦ったハンクは彼を射殺するものの後に本物のFBIであることが判明し、いよいよ誤魔化せないレベルにまで犯罪が行き着いてしまうというオチの方が主題にかなっていたと思います。
[地上波(字幕)] 8点(2011-01-23 16:48:05)(良:2票)
95.  アンツ 《ネタバレ》 
製作から13年も経った今になってようやく鑑賞したのですが、「なぜこれをスルーしてきたんだ!」と後悔するほど心を奪われました。含蓄があり、笑わせ、そして燃える。私が映画に求めるもののほとんどが含まれた圧巻の80分でした(上映時間短っ!)。アリ社会を紹介する序盤、王女様との冒険とロマンスを描く中盤、将軍との戦いに雪崩れ込む終盤と3パートに分かれているのですが、どのパートも完璧な仕上がり。次々と舞台が移動するものの特に慌ただしさは感じさせず、すべてのパートが主人公Zの物語の構成要素として機能しているため映画全体には統一感があります。脚本の出来が恐ろしく良いのです。ハリウッドとは距離を置くウッディ・アレンによりにもよってアニメ映画の主人公役をオファーし(日本で言えば、田村正和にハゲヅラ被ってコントさせるぐらいのとんでもないキャスティング)、それを承諾させた脚本の力がこれです。サメとクマノミがお友達というふざけたディズニー映画とは一線を画す世界観。働きアリは仕事だけの人生に意義を求め、兵隊アリは隣国との間で死闘を繰り広げ、権力者はクーデターを画策する。戦場で出会った気の良い兵隊アリは世にも無残な死に方をし(小さいお友達が見れば確実にトラウマになります)、コメディリリーフと思われたアシナガバチは唐突に命を落とす。これは完全に大人向けの脚本です。アニメの枠を越えてしまったが為に一部では拒絶反応も起こっているようですが、映画としては非常に見ごたえがあります。。。世界一の映画監督スピルバーグをトップに迎え、「職業経営者から映画を取り戻す!」をスローガンに設立されたドリームワークス黎明期のラインナップは、それはそれは鼻息の荒いものでした。一般市民を巻き込みながらテロリストとアメリカ合衆国が死闘を繰り広げる「ピースメーカー」を皮切りに、スピルバーグのグログロ超大作「アミスタッド」「プライベート・ライアン」、子供を巻き込みながらオモチャが殺し合いをする「スモール・ソルジャーズ」、主要登場人物のほとんどが死ぬ「ディープ・インパクト」と、ネジのとんだ大作を連打します。そんな中で作られたのが本作なので、必然的に内容はダークでアダルトなものとなったようです。なお、本作の経験を経て娯楽性と毒のバランスをより洗練させたのが「シュレック」なのでした。
[DVD(字幕)] 10点(2011-01-21 22:43:49)(良:1票)
96.  シザーハンズ
小学生の頃にクラスの女子がやたらと「良い映画だ」と騒いでいたので試しに観てみたのですが、事前に聞いていた評判とは正反対のドロドロとした居心地の悪い印象を持ち、まったく好きになれなかった映画です。大人になった現在になって観返すと、その時に持った違和感の正体が分かりました。これは感動作でも美しい愛の物語でもない、グログロのドロドロの性根で作られた世間に対するうっぷんの塊のような映画なのです。ディズニー映画のようなファンタジーの殻を被ってはいるものの、その中身は「タクシードライバー」をはじめとしたポール・シュレイダー作品と大して変わりません。社会に適合できない若者がいったんは楽しくやっていけるかもという希望を持つが、その希望はあっさりと裏切られて孤独な生活に戻っていくという、何の救いもない暗い暗い物語。世間の冷たさとヒロインの薄情さが主人公を苦しめます。特にウィノナ・ライダーV3には怒りを覚えました。見た目は綺麗だし、エドワードの前では理解者として振舞ってくれる。しかし不幸な誤解から非難を受けることとなったエドワードの弁護はしてくれません。話すことに不慣れなエドワードは自分の口から事情を説明することが出来ない。だからこそ彼を泥棒に引き込んでしまったウィノナ・ライダーV3がみんなに事情を説明してあげねばならないのに、彼女はエドワードの盾にはなってやりません。事情が明らかになると自分や彼氏の悪事がバレてしまうから。二人きりになった時にだけ「エドワードごめんね」と言って良い人になろうとする様には虫唾が走りました。無意識のうちに人を傷つけながら自分では良い人だと思っている彼女もまた、エドワードを攻撃する街の人々とは変わらないのです。それを理解したからこそ、エドワードは彼女の思いを拒絶したのでしょう。。。しかし不思議なのは、本作がクリスマス映画の名作に数えられていること。これは「クリスマスを楽しんでる奴らなんか大嫌いだ!」という、もっともクリスマスに観てはならない映画なんですけどね。この映画の美しい外面だけを観てティム・バートンの真意を理解してあげない人もまた、エドワードを持てはやした末に追放した街の人々と同じなのでしょう。「スウィーニー・トッド」に対する批判がまさにそれでした。「怖い!気持ち悪い!こんなの観に来たんじゃない!」って、ティム・バートンは昔からこうでしたよ。
[DVD(字幕)] 7点(2011-01-19 22:20:02)(良:3票)
97.  ゴースト&ダークネス
精悍なヴァル・キルマーはヤバイくらいにかっこいいし(本作でラジー賞にノミネートとかウソでしょ?)、エキセントリックなハンター役のマイケル・ダグラスもハマっています。アフリカの大自然や橋梁建設場面のスペクタクルを捉えるヴィルモス・ジグモンドによる撮影、ジェリー・ゴールドスミスによる音楽も素晴らしく、この映画なかなか弾は揃っています。しかし、監督の無能によってこれらすべてが台無しに。この企画には並外れた演出力が必要であり、スティーブン・ホプキンスのような凡庸な監督には荷が重すぎました。見せ場における緊張感のなさは異常であり、作品のハイライトであるハントシーンよりも、つなぎのドラマパートの方が面白いというあんまりな状態となっています。技術的な制約によりタイトルロールである「ゴースト」と「ダークネス」の全身像をほとんど写せなかったというハンデは確かにあったのですが、写せないことを逆手にとって動物を動物以上のモンスターとして見せた「ジョーズ」という先例があるのですから、演出にはもっと頑張って欲しいところでした。
[レーザーディスク(字幕)] 3点(2011-01-17 21:38:20)
98.  レオン/完全版 《ネタバレ》 
はっきり言って蛇足な完全版です。劇場版は観客の想像に任せることで絶妙なバランスをとっていたのですが、完全版では描写がはっきりとしすぎてその味が失われています。マチルダがレオンの仕事に同行して人殺しを覚える場面など要らなかったし、レオンの昔話も不要でした。レオンに童貞臭さがあってこそマチルダとの恋愛が「ロリコン」にならずに済んでいたのに、過去の悲しい恋愛を持ち出してそれなりの人生を送ってきたことを明示されると、二人の関係性への解釈が大きく変わってしまいます。DVDやブルーレイの商品展開を見るとベッソンは劇場版を葬って完全版を主流にしたい様子なのですが、その判断は間違いだと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2011-01-17 21:35:52)(良:1票)
99.  レオン(1994) 《ネタバレ》 
1992年頃、リュック・ベッソンは「フィフス・エレメント」を映画化すべくハリウッドに渡っていました。しかし「フィフス・エレメント」は挫折し、異国の地において絶望を味わう中で書いたのが本作「レオン」の脚本なのでした。このような生い立ちのためか、本作は極めて感情的で攻撃的な内容となっています。あまりにストレートすぎて受け入れ難い部分もあるのですが、それでも映画としてはよく出来ています。冒頭のレオン登場シーンやクライマックスの攻防戦のキレは「素晴らしい」の一言だし、レオンとマチルダの微妙な関係の描写もうまいものです。身も蓋もない言い方をすれば「ロリコン」の一言で終わってしまう物語なのですが、それを脚本や演出の力によって美しい愛の物語に昇華しているのですから、これは並外れた仕事だと思います。細かい点では、トニーのレストランの片隅に毎日座っている老人の描写なども気に入っています。恐らく彼は引退した殺し屋であり、レオンの将来の姿なのでしょう。あらゆる関係性を断ち、社会に存在しないかの如く生きていれば、殺しの世界で生き残れたとしても最後はこうなってしまう。レオンはマチルダと出会ったことで命を失いましたが、孤独な殺し屋のまま生き続けることが本当に「生きている」ということになるのか?そんな問いを提示するアイコンを劇中に配置する、こういうのも演出力だと思います。また、役者選びも素晴らしい。評価は高いがマイナーだったゲイリー・オールドマンを一気にメジャーへと押し上げ、後の大スターであるナタリー・ポートマンをオーディションにて発掘しています。特にナタリー・ポートマンは素晴らしく、ジャン・レノやダニー・アイエロ、ゲイリー・オールドマンといった巧い役者を相手にしながら彼らを食ってしまうほどの存在感を披露。撮影当時12歳で、しかも映画には初出演というド新人ですからね。年齢の割には小さすぎる体だが、目つきだけは大人以上に鋭い。よくぞこんな逸材を見つけてきたものです。後のポートマンのキャリアを見ると、10代の彼女を使いこなせた監督はベッソンだけでした。ウッディ・アレン、ティム・バートン、マイケル・マン、ジョージ・ルーカスといった錚々たる監督達が彼女を起用しましたが、残念ながらその実力の半分も使いきれていませんでした。この点からも、本作におけるベッソンがいかにイケイケだったかが分かります。
[DVD(吹替)] 7点(2011-01-17 21:25:19)
100.  アメリカン・ヒストリーX 《ネタバレ》 
人種問題をテーマとした映画は多くありますが、いずれの作品も「差別は最低の人間のすること。みんなで仲良く暮らせる社会を目指しましょう」という結論ありきの物語で、時にうんざりさせられます。もちろん差別はよくないことなのですが、時に挑戦的なメッセージを投げかける芸術という世界にあって、判を押したように優等生の意見ばかりでは物足りなく感じます。そんな不満を持っている中で鑑賞したのが本作でした。公開時から非常に評価が高く、IMDBでは「タクシー・ドライバー」や「時計じかけのオレンジ」と肩を並べる程のスコアを獲得している作品だけに、他の映画にはない独自の切り口があるのではないかという期待がありました。。。そんな心境での鑑賞でしたが、期待は半分満足し、半分は裏切られたという印象です。この映画の特異な点は差別する側を主人公とし、その主張を大きく扱っていること。差別主義者デレクは有色人種に対する憎悪を喚き散らします。「黒人はいつまで被害者面するつもりなのか?」「社会を乱す元凶である不法入国者に税金で援助を与えるとは何事か?」。客観的に聞いてその主張にはある程度の説得力があり、アメリカ社会が直面している現実のある一面を言い当てているように思います。もしかしたら、口には出さないだけで多くの白人が腹の中では考えていることなのかもしれません。それを主人公にズバっと言わせてしまった点で、本作は価値があると思います。しかし、その後の処理には不満が残りました。家庭内で暴力を振るうは、有色人種の経営するスーパーを襲撃はのやりたい放題。「こんな主張をする奴はこの通りの最低野郎です」と言わんばかりの演出で、結局いつもの人種映画に戻ってしまうのです。主人公が改心する後半のドラマも面白かったのですが、社会派作品としてはあまりに月並みな展開で物足りなさが残りました。前半における主人公の主張を真剣に突き詰めれば意義のある内容になったのに、それをあっさり放棄して安全・安直な方向へと映画の舵を切ってしまったわけです。どうやら、人種問題の渦中にいるアメリカ人監督には超えられない壁があるようです。その点、アメリカ社会の外にいるヨーロッパ人監督が撮った「マンダレイ」などは人種問題の核心を突いていて、社会問題に対する考察という点で本作よりも意義がありました。
[DVD(吹替)] 6点(2011-01-14 21:37:47)
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