1241. スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと
《ネタバレ》 喜怒哀楽の激しいデボラのキャラが楽しい。 ティア・レオーニのような美女がこんなエキセントリックでコミカルな役をやるとギャップにやられる。 『天使のくれた時間』では理想的な妻だったけど、今回はその真逆。 全然悪気はないのだが独善的で無神経なところもあるので周りが振り回される。 家政婦として雇われた英語のできないフロールもやたら自尊心が強くて媚びることはなく、子供のことが関わると言いたいことをズケズケ言うものだから、間に挟まった夫のジョンがたまったものではない。 それでも悪人は一人もいなくて心根はみんな温かいので、ハートウォーミングなドラマで癒される。 貧しいヒスパニック系と富裕層のアメリカ人のギャップを浮き彫りにした社会派の側面も。 ただのコメディではなく、貧富の差や人種の違いからくる誤解や葛藤を巧みに描いた佳作。 シリアスなものをしっかり描いているからこそ、おかしみも活きてくる。 デボラはどうしようもないバカ女だけど憎みきれない。 娘のクリスティーナにエリート学校辞めさせるフロールは、親としての教育方針とはいえちょっとやりすぎ。 それでも娘が素直でいい子だから、反発しながらもちゃんと母の愛を受け入れる。 ただ、あの状況では子供なら友達のできた学校に執着してもう少しゴネるのが普通で、すぐに母に寄り添ったのは聞きわけがよすぎてリアリティに欠ける。 冒頭とラストにあるクリスティーナの大学入試の小論文は、その真っ直ぐな成長ぶりがうかがえて良い演出だった。 [インターネット(字幕)] 8点(2013-06-28 21:18:26) |
1242. 白い婚礼
《ネタバレ》 ジョニー・デップとの交際で知られるヴァネッサ・パラディの映画デビュー作。 家庭環境が悪く子供の頃から麻薬をやり、買うお金は体を売って稼ぐ。 そんな過去を持ちながら頭脳明晰な才女で男を狂わす小悪魔的な影のある女子高生。 自殺未遂を繰り返す母と同じように精神的には不安定で、不倫相手の妻に仲間を使って嫌がらせするなど過激な面もある。 少女のほうからアプローチがあったとはいえ、その教え子と肉体関係に溺れる中年教師がプロ意識の欠片もなく情けない。 結局、他の学校に異動させられ、妻とは離婚、教え子も死なせてしまう超バッドエンド。 主人公の中年教師がしっかりしていればこんなことにはなっていないんだから、異動じゃなくてクビにすべきで、フラストレーションは残る。 ヴァネッサに魅力はあるけど、主人公にまったくないのが痛い。 ストーリーはパッとせず、10代から歌手でアイドル的存在だったヴァネッサの貴重なヌードが頼りの作品。 日本のアイドル歌手、今でいうならAKBの人気未成年メンバーが同じような映画でデビューしたら大騒ぎになるだろうけど、フランスの話なのでピンと来ず、その希少価値が実感できない。 [ビデオ(吹替)] 4点(2013-06-28 21:15:56) |
1243. 鮫肌男と桃尻女
原作がマンガだけにそれぞれのキャラがとても個性的。 何種類もあるという大村崑のホーロー看板の話をする岸田一徳がいい味を出していた。 アクの強い作品で好き嫌いが分かれるだろうが、全編悪ノリしたアウトロー物語って感じ。 タランティーノは好きだけど、これはその粗悪品みたい。 特に笑わそうとしてる部分がほとんど合わなかった。 笑えないギャグ混じりのシーンをタラタラと見せられてると厳しい。 山田のキャラも狙いすぎてて引く。 冒頭とそれにつながる銀行強盗のシーンはよかったんだけど。 [ビデオ(邦画)] 1点(2013-06-27 22:06:05) |
1244. 火垂るの墓(1988)
夏に流される反戦アニメとして定着した感が。 学校でも鑑賞することが少なくないようだし、原作を採用している教科書もある。 野坂昭如自身の戦争体験が基になっているとはいうものの、実際は清太のような妹思いの兄ではなく、どちらかといえば足手まといでろくにかわいがりもせず餓死させている。 その贖罪で本当はこういう兄でありたかったとの思いもあって書いたようだが、現実の戦争はこの映画よりもはるかに殺伐としていたということだろう。 大人向けには、そちらの事実に基づいた映画を観てみたかった気もする。 本作は子供に見せるのには適しているが、大人ならあざとさが気になって食い足りないかも。 [ビデオ(邦画)] 6点(2013-06-27 22:04:38) |
1245. ゆりかごを揺らす手
《ネタバレ》 復讐にとりつかれた女の狂気がまとわりつくような怖さで、サスペンス性はたっぷり。 こういう逆恨みが一番タチが悪くて気持ち悪い。 加害者の女は自分を襲った不幸に逆恨みでもしなければ精神が持たなかったのだろうが、反吐が出そう。 事件を起こした夫を責めるのではなく訴えた女だけを責めるのは、浮気した男を責めるより相手の女を責める思考回路に少し似ているのかも。 女の憎悪の対象になりやすいのは、男よりも女のようだ。 ペイトンがクレアとの会話で、夫を殺された報いがあることをわからないように宣言し、緊迫感を高める。 知的障碍者の黒人ソロモンが、初対面でペイトンの本性を見抜いたようなシーンがおもしろい。 世話になっている家族を守りたいソロモンとペイトンの闘いが見ごたえある。 ソロモンに性的虐待の疑いがかかるように仕掛けるペイトンの謀略が恐ろしい。 思わず頑張れソロモンと応援してしまうが、まんまと騙されて勘違いするクレアもなんだかなぁ…。 仕掛けられたワナに片っ端から面白いように引っかかってるけど、無防備だから仕方がないのか。 サプライズパーティが台無しになったときの空気はすごかった。 喘息の発作を利用するなど手段を選ばないのが憎しみの強さを表わす。 ペイトンは結局憎悪の対象であるクレアの子供には危害を加えなかったけど、その理由が自分の失った子供を投影したようだから切ない。 狙いはクレアから夫も子供もすべてを奪い取ること。 単純に片っ端から殺そうとしなかったことが、この作品がB級映画に留まらなかった所以か。 つらすぎる現実から逃避して、二人の子供の母になった気分でいるときの幸せそうな表情が印象的。 登場人物のキャラと細かい心理描写が実に巧みで、よくできた脚本のサスペンス映画。 ソロモンが解決のキーになるのは前半でわかってしまうが、出てきたときは待ってましたの心境で、ソロモンの作った柵の伏線が効いていた。 この手の映画はストレスがかかるのでどちらかというと苦手なのだが、その中では出色の出来栄えだった。 [ビデオ(吹替)] 8点(2013-06-27 22:03:07) |
1246. ティファニーで朝食を
オードリーの代表作の一つなので期待したが、思わぬ凡作で拍子抜け。 ラブコメなのに、主人公ホリーのキャラにまったく魅力を感じないのが致命的。 原作者カポーティは主人公にモンローを熱望していたようだが、オードリーとこの役に強い違和感を覚える。 変な日本人キャラも面白くもなんともなく邪魔なだけ。 「ムーンリバー」だけは耳に残るがストーリーに盛り上がりもなく、名作とされていることが本当に不思議。 [DVD(字幕)] 3点(2013-06-27 00:47:30) |
1247. ある愛の詩(1970)
《ネタバレ》 白血病などの難病で死に別れる純愛ものは東西問わずにたくさん出ているが、こちらが本家本元的な作品か。 ベタだけれどしっかりとした構成で、そのパターンを踏襲した作品が少なくないことからも影響力の大きさがわかる。 ヒロイン役の女優がそれほど可愛くはなかったのがちょっと残念。 [地上波(吹替)] 7点(2013-06-27 00:30:49) |
1248. ラヂオの時間
《ネタバレ》 いかにも三谷幸喜らしい作品で、次から次へとトラブルが起こって引き込まれる。 おそらく脚本家として悔しい思いをした自身の体験からくるのだろう、次々と台本をわがまま勝手な理由で変えられるしまう怒りが滲み出ている。 放送事故レベルの中、アドリブで作品はなんとかうまくまとまったといった態だったけど、いやいやメチャクチャな出来損ないに終わってるから。 結局それで満足してしまう主婦作家はやっぱりプロではないし、ディレクターとプロデューサーの和解もとってつけたようで無理やり大円団にもっていった印象。 いつかみんなが満足するものをつくる――そんな日が来るのを信じていこうとする二人の会話だが、プロデューサーはそのためにやるべきことを何一つやっておらず、ただの現実逃避の言葉にしか聞こえない。 これでは明るい展望など持てるわけがなく、放送局で不本意な状況が今後もずっと続いていく様子が目に浮かぶ。 ラジオを聴いて放送局に駆けつけたトラック運転手も、あの作品で感動するなんてどんな感性だよって思うし。 途中のドタバタは面白かったのに、無理やりハッピーエンドにすべてを収束させたので尻すぼみになってしまった。 [ビデオ(邦画)] 6点(2013-06-27 00:29:15) |
1249. いまを生きる
《ネタバレ》 キーティングが内向的なトッドから詩を引き出す授業は秀逸。 いくら頑固親父に役者の道を反対されたからとはいえ、ニールの自殺は腑に落ちない。 それだけ父親の強固な支配下にあって抵抗できないことに絶望したのか、それにしてもそこまで追い詰められる出来事には見えない。 この追い詰められ感をいまひとつ出せなかったことが、死を選択する説得力に欠け、この映画の弱さになっているような気がする。 また、詩の朗読が夜中に集まってやるほど魅力的なのかが疑問で、そこに共感できないというのも感情移入を妨げる要素になっている。 それがクリアされていれば、更なる傑作になったような気がしてもったいない。 ニールの自殺は父親の責任が大きいと思えるが、親はその事実から目を背け、責任転化してスケープゴートを探している。 こうしたことは珍しいケースでもない。 客観的には親の責任に見える場合でも他を訴えて責任追及して事件を見聞きするが、もう冷静な判断ができなくなってしまうのだろう。 特に子供が死んだ場合、誰かの責任にしなければ気がおかしくなってしまうのかも。 気の毒ではあるが、厄介でもある。 スケープゴートになったキーティングの姿にやりきれない思いが募る。 保身に走った学校側や仲間をチクる生徒が腹立たしい。 キーティングの教えが何人かに通じたことは救いだが、あまりカタルシスはなくモヤモヤは残ってしまう。 [DVD(吹替)] 7点(2013-06-27 00:27:29)(良:1票) |
1250. モンスター(2003)
《ネタバレ》 シャーリーズ・セロンは『サイダーハウス・ルール』や『ディアボロス』の正統派美女イメージしかなかったため、まるで別人のようでビックリ。 すごい役作りで、ここまで醜く変身できることにプロの女優魂を感じる。 実話を基にした映画だが、その実在のシリアルキラーと面相がどことなく似ている気がした。 13の時から体を売っていた娼婦が、就活で相手にされず逆ギレするのが惨め。 子供の頃から愛に見放された人生で、同情すべき点がないわけでもない。 だからといって何人も殺していいわけがなく、被害者は下衆野郎だけでなく心やさしい妻子ある紳士も含まれていた。 その罪は本人も自覚があるのだろう、自分自身を許せず自分を愛することも大切にすることもできない。 だからこそセルビーが最後の希望だったわけだが、唯一愛してほしかった相手にも結局は裏切られてしまう。 救いのないラストは自業自得ともいえるが、最後までセルビーを責めなかった姿は哀れを誘う。 セルビーは罪を全部アイリーンに押し付けて、自分はまるで被害者であるような風なのが気に入らない。 アイリーンよりもこちらのほうが本当のモンスターに見える。 そう感じるように描かれているのは、シリアルキラーというモンスターを育てたのが周りの環境であり社会であるとのメッセージとも取れる。 ただ、環境が悪くともまっとうに生きている人はたくさんいるわけで、本人が選択を間違え続けたことは否定できなし、罪の正当化ができるわけでもない。 犯罪者は社会を憎み、社会のせいにして自らを正当化する傾向があるが、罪は罪だ。 責任転嫁を許さない前提があった上で、落ちこぼれや切り捨てをできるだけ生まない社会を考えることは、無駄ではないのだろう。 [DVD(吹替)] 6点(2013-06-26 21:49:04)(良:2票) |
1251. 転校生(1982)
一美は冒頭では快活な感じだったのに、入れ替わった後はなぜかなよなよした弱々しいキャラに豹変している。 こういうキャラのブレは基本的なことだけにすごく気になってしまう。 尾美としのりのオカマ口調も作り手のあざとさが強く感じられて違和感がある。 小林聡美はとても良かったし、男女入れ替わりものの元祖という価値もあるのだけれど。 大林監督とはどうも相性が悪いようだ。 [地上波(邦画)] 5点(2013-06-26 00:04:43) |
1252. 視線のエロス
主人公は下心丸出しに若い子にアプローチするただのエロ中年。 終始カメラワークが主人公目線で、不倫を疑似体験して楽しむように作られたかのよう。 二人の会話が妙にリアルで、微妙な心の変化や駆け引きに臨場感があって感情移入できる。 内容はあってないようなものだが、イザベル・カレが十分魅力的なので監督の狙いは成立している。 [ビデオ(吹替)] 5点(2013-06-26 00:03:05) |
1253. ストレイト・ストーリー
《ネタバレ》 老人が遠くにいる兄のもとへトラクターで駆けつけるだけの地味な話だが、なんだか癒される。 出てくる人物が人間味があって温かい。 鹿を何度もはねる車の女が気の毒だけど笑ってしまう。 その鹿をちゃっかり有効利用して食べてしまうアリヴィンの逞しさ。 ふっかけれらた修理代を理詰めで値切っていくのにも老人の知恵がうかがえる。 道中の出会いで、老人のこれまでの人生が見えてくる。 飄々として見えた老人にも、何十年にも渡って残っていたトラウマがあった。 味方の偵察兵を誤って射殺してしまったことを誰にも言えずに抱えて生きてきた苦しさが伝わってくる。 ずっと仲違いしていたストレイト兄弟が言葉少なにわかりあうラストが感動的。 [DVD(吹替)] 6点(2013-06-26 00:01:41) |
1254. みんなのいえ
《ネタバレ》 昔ながらの大工の棟梁と新進デザイナーの対立が、職人とアーティストの意地とプライドのぶつかりでおもしろい。 風水を持ち出す母もからんで、周りに振り回される優柔不断な主人公が気の毒なような情けないような…。 価値観の異なる人と一緒に本気で何かを作り上げたことがあると、あの葛藤と苛立ちはよくわかる。 どうでもいいと割り切れば妥協もできるが、そうするといい物が作れないというジレンマ。 方向性が違う人と組むのは難しいけど、化学反応を起こして思わぬ良いものができる場合も稀にある。 この映画ではその辺りのことをうまくストーリーに組み込んでいた。 ただ、こじんまりまとまった感があって、くすぐられはするけど魂を大きく揺さぶられはしない。 勝手に独断で間取りを変えてしまう父親は、良かれと思ってやってるだけにタチが悪い。 でも、こういう厄介な親って結構いるかも。 田中邦衛がこういう役にぴったりハマる。 妻役の八木亜希子もいい。 [地上波(邦画)] 6点(2013-06-25 23:59:58) |
1255. 風、スローダウン
《ネタバレ》 夢と現実の狭間で、バイクを取るか彼女を取るか。 よくある類のストーリーで、ハッとするような展開はない。 ヤクザの友達はたぶん鉄砲玉で死ぬんだろうなと早くから予測がついたし。 観ているこちらが気恥ずかしくなるほどベタなシーンやセリフが幾つも。 バイクに興味があるわけでもなく、笑えもしなければ感動もできず。 青春の夢と挫折を正面から描いていて、ラストはそれぞれの人生を精一杯歩いている感じで悪くなかったけど、そこに至るまでの過程が物足りない。 島田紳助はトークの頭の回転やプロデュース力には感心するが、脚本に関してはいかにも畑違いの素人っぽい。 [インターネット(字幕)] 2点(2013-06-25 23:59:02) |
1256. 歌謡曲だよ、人生は
昭和の歌謡曲をテーマにした11編の短編からなるオムニバス。 完全に企画ものだがアイデア倒れの感が。 一本平均13分なのでコントのようでもあるが笑えない。 映画とはあまり認めたくない気持ちになる。 これなら歌だけ聞いたほうがいい。 大杉漣、吉高由里子、高橋恵子ほか、出演者は多彩なのにもったいない。 唯一、妻夫木聡を主人公にした矢口史靖監督だけは、短い中に起承転結がしっかりしてサスペンス性もあり、他との力の差をはっきり見せつけた感じ。 [DVD(邦画)] 1点(2013-06-24 21:46:36) |
1257. キング・コング(2005)
《ネタバレ》 コングの他にも恐竜がいっぱいで、まるでジュラシックパーク状態。 これってコングのありがたみが減っているような気はする。 ただ、コングとティラノザウルス2頭との戦いは大迫力。 凶暴なコングが頼もしいスーパーヒーローに見えてくる。 ドリスコル一行が不気味な生物の大群に次から次へと襲われるのも悪夢のようで手に汗握る。 こんな恐ろしい生物がうようよいる島なら、ヒロインが一か八かコングにすがってしまうのも無理はない。 危機一髪でコウモリに助けられるなど都合のよい場面は散見されるが、エンターテイメントに徹している。 コングをクロロホルムで眠らせた場面から、次はニューヨークの劇場に場面が一気に飛ぶ。 オリジナルもそうだったが、どうやって船にあの巨体を運び、ニューヨークまで連れて行ったのかが謎。 鎖を引きちぎって暴れまくるコングに歩み寄るアン。 氷の上で滑って戯れるコングとアンが、デートを楽しんでいるかのようで微笑ましい。 エンパイヤーステイトビルから朝焼けを眺め、「美しい」というアンの表現を覚えていたコング。 そこには二人の確かなコミュニケーションがある。 ナオミ・ワッツも魅力的だったし、シリーズの中では一番おもしろかった。 [DVD(吹替)] 8点(2013-06-24 21:43:50)(良:2票) |
1258. 太陽がいっぱい
《ネタバレ》 リプリーとフィリップの間には貧富の差が大きな隔たりとしてあり、友情と呼べるものはない。 フィリップは傲慢な金持ち、リプリーは金目当ての貧乏人で、どちらにも好感が持てない。 ヨットでリプリーが本人を前に殺害計画を平然と話しているのが大胆で、嵐の前の静けさのよう。 フィリップもだんだん「こいつマジなんじゃ?」と危険を感じ始める様子がリアルで見応えがあった。 犯行は杜撰で、パスポートを偽造して声とサインを真似ただけで本人になりすます。 案の定、知り合いに出会ってバレた挙句に殺して行き当たりバッタリ状態。 指紋にも気を遣っておらず、これではあまり頭がいいようには見えない。 ところが、警察の捜査がお粗末で、指紋の鑑定がいい加減だから犯人を勘違いしてしまう。 時代が時代とはいえ攻防のレベルが低いので、犯罪ものとしては少し物足りない。 大金に婚約者とすべて手に入れて二人殺した罪悪感の欠片もなく幸福感で満ち足りている姿がふてぶてしく映る。 そんなリプリーに天誅が下るラストにはカタルシスがある。 ただ、主人公に肩入れできないとどうしてもインパクトが薄くなる。 アラン・ドロンの出世作だが、一時代を築いた正統派二枚目ぶりを発揮。 風情のある映像美とせつなく美しい音楽も堪能できるが、ストーリー自体は名作と呼ばれるに値するほどのものとは思えない。 [DVD(字幕)] 6点(2013-06-24 21:42:10) |
1259. いま、会いにゆきます
《ネタバレ》 この頃の竹内結子が一番いいかも。 どんな男でも落ちそうなくらいの魅力がある。 記憶を失っている澪が、巧の回想をなぞってもう一度好きになっていく過程が新鮮でキュート。 どうせセカチューと同じ程度のものだろうと思ってなめていたら、こちらのほうがずっといい。 純愛ファンタジーとして泣けてくるものがあった。 途中いろいろ引っかかった点もあったが、澪の日記ですべての謎がとけてスッキリ。 お互いにたった一人の相手だった二人の姿に感動。 ところが、ここで世間を騒がせた離婚劇が頭に浮かんでしまった。 作品世界に浸っていたのに現実は違ったんだよなと水を差された格好だけど、こればっかりは仕方ないし…。 [DVD(邦画)] 9点(2013-06-24 00:09:43) |
1260. ボーイズ・オン・ザ・サイド
《ネタバレ》 出だしはライトタッチのコメディかなと思ったが、本格的なヒューマンドラマに仕上がっていた。 レズビアンの売れない歌手、エイズに侵されている堅物のキャリアウーマン、暴力男の子供を身ごもっている恋多き女。 それぞれに問題を抱えた三人が、諍いを起こしながらも助け合っていく女の友情物語。 といっても同性愛もからんでいるので純粋な女の友情とは違うかも。 セリフやシーンの随所にウィットが感じられて魅せてくれる。 ロビンがジェーンに借りたヘッドホンをウェットティッシュで綺麗にしていたのは、決して嫌悪感や黒人への偏見ではなく、エイズの負い目と気遣いによる潔癖症を表わす伏線だった。 どこにも行くところがないと嘆くロビンに、それなら今いる場所に居ればいいと抱きしめるジェーン。 ロビンに対する母やジェーンの言葉は、優しさにあふれて癒しの力がある。 「もし私がウソを言ってたら不治の病で死んでもかまわない」 そう言って裁判でウソの証言をするロビンにも、自分の運命への諦観と二人への思いやりがあふれている。 赤ちゃんの誕生の一方で、エイズで死にゆく者がいる。 暗くなっても仕方のない重いテーマなのに、バカっぽくて行動の軽いホリーとバカみたいに真っ直ぐな警官エイブのカップルがいい感じで緊張緩和の役割。 生まれた子供が黒人とのハーフだったときのリアクションは笑える。 胸も露にホリーを演じているのが『E.T.』の子役ドリュー・バリモアだったとは、子供の成長の早いことに軽い衝撃。 パーティの様子をカメラが一周して誰もいなくなった部屋の空の車椅子を映すラストがいい。 三人が互いに影響しあって、価値観や生き方が微妙に変化しているのが巧みに描かれている。 タイトル通りに男は添え物でメインは女、明らかに男性より女性向きの内容だ。 [ビデオ(吹替)] 6点(2013-06-23 23:13:22)(良:1票) |