1361. 恐怖ノ黒電話
《ネタバレ》 確実にタイトルで損をしている作品ですね。これじゃあ、クラシカルでオーソドックスな(古臭い)ホラーだとしか想像できませんですよ(非常に優れたアイデアのあるモダンな作品なのに…)。 敵の為すがまま、いつ、何をされるかも分からないと言う防御力ゼロの状況は、まるでサメ映画でサメが居る暗い海に放り込まれたかの様な極度の心地悪さを常時醸し出している。しかも、相手はサメではなくて悪辣で悪知恵のはたらく女サイコだという、実に不快で逃げ出したくなる様な極上のホラー具合だ。女サイコは(当然ながら)姿が見えず、終盤、一瞬姿が映りかけるもすぐ消えてしまう、という敢えて「見せない」恐怖の演出もまた秀逸だと感じる。ネガティブなラストも、過去を変えた弊害であることを含めてコレも好みではあるが、DV元旦那についてはラストで殺される以外にはあまり上手く使えていなかった様にも思う(奴が何をどうしたいのかがイマイチ分からないのも一因かと)。どちらかと言えば間違い無くシナリオは複雑な方であることもあって、ツッコもうと思えばツッコめる箇所も幾つか在る…とも言えるが、無理に気にするのも野暮であろう。結論、文句無しの優秀ホラーかと。 [DVD(字幕)] 7点(2020-04-13 21:52:02)(良:1票) |
1362. ゾンビプーラ
《ネタバレ》 ことホラーに関して言えば、時折ドマイナー国産の作品も輸入されるというのが結構楽しみなのだ(むかし『パキスタン・ゾンビ』とかゆーのすらありましたよね?本サイトで登録されているパキスタン映画は『パキスタン・ゾンビ』のみのようです)。気のせいかも知れないが、その手のはなんかゾンビ映画が多いよーな気もする(まあ説明不要だからかね)。 シンガポールを舞台にした映画は、多分観てはいるのだろうが、シンガポールに焦点を当てた作品というのはあんまし観たことが無く、本作を観たところ勉強になることが多々あった。 ①シンガポール人て、中国人より見た目が日本人に少し近い気がする(まあ、モロ中国人て人も多いけど)。これを見ると、日本人と言うのは黒潮に乗ってやってきたマレー系の縄文人と、大陸系渡来人とのハイブリッドなのだ、という事が少し理解できるような気もする。 ②シンガポールは言語が特殊。英語なんだけど、全く英語に聞こえない。調べると、どうもこれは"Singlish"というものらしい。ビジネスではこのシングリッシュが主流とのことだが、人口構成は圧倒的に中華系が多いので、彼らの普段使いは中国語であろう。海外輸出も視野に入れてシングリッシュで製作しているのかも知れないが、これは英語話者にも字幕なしだとハッキリ言って無理ですね。 で、内容はと言うと、非常にシンプルかつ局地的なゾンビ・アウトブレイクもの。軍事施設でゾンビが発生し、そこからの脱出がメインとなる話だが(どうも軍事施設の外は安全らしい)、そもそも一番ゾンビの発生に強靭であるべき軍事施設がこの体たらくというのはどうなのだろう(発生前もなんか色々とゆるーい雰囲気で、それもかなり気になるし)。まあ正直あまり観るべきモノの無い作品だったかなあと。 少し前にベトナムでも初のゾンビ映画が撮られたらしいが、日本では配給しないのだろうか。期待。 [インターネット(字幕)] 4点(2020-04-12 22:30:44)(良:1票) |
1363. 恐怖ノ黒洋館
《ネタバレ》 これ、全然ホラーじゃないですね。母と子の哀しく捻れた関係が呼び込んだ、一夜の不思議な出来事、と言うか。これにこの邦題はちょっと酷いな(製作者にとっても、手に取る我々にとっても)。 ただ、コンセプトには大いに共感しつつも、映画としては少し指摘しなければいけない点があるのも確かかと。 ①80分だが、これでもちょっと長すぎる。あと15~20分削るか、少なくとも前半にもう少し場を持たせる何らかの工夫、ないしエピソードを追加しないと。これだと正直、商業的な都合で無理に80分にしている様にしか見えない。 ②極めて微妙な所だが、化物の造形や、ラスト付近の説明がましい部分が、全体の志の高いつくりに比べると惜しむらく少しだけチープなのよね(好みの問題かも知れないが)。 でも、私は本作、実はすごく好きですけどね。掘り出し物。 [DVD(字幕)] 5点(2020-04-12 16:20:21) |
1364. デビルシャーク
《ネタバレ》 これは彼の『ジュラシック・シャーク』よりも更に酷いかもしれない。ストーリーは皆無に近く、サメの襲撃シーン(しかしサメのCGはただ単独で泳いでるだけで人と映ってるシーンは何と無い!という究極の手抜き)+よく分かんない憑依シーン(血糊被ってのたうち回ってるだけ!という至高の手抜き)の単調な繰り返しのみという何ともアホな構成。女優が妙にたくさん(無駄に)登場して水着までは見せてくれるが(せめてオッパイ出せよ)、揃いも揃って微妙なルックスという残念さ加減(タトゥー入れまくりな所を見ても到底プロには見えん)。私はこの映画に何を期待したのだろう。紛う事無き最低映画。 [DVD(字幕)] 1点(2020-04-12 10:15:27)(良:1票) |
1365. 恐怖ノ黒鉄扉
《ネタバレ》 色ボケクソガキ共が盛大に盛ってるところ、殺人鬼が参上して仕置きして回る、といういつものアレなのは全く以てそうなのだが、本作は複数監督によるアイデア持ち寄りの作品であり、まんま各シーンを寄せ集めただけなためにストーリーは(申し訳程度にも)無いも同然、というか流れ・繋がりというものがまるで存在せず、映画として全然統合できていない(ガキ共は各個撃破もいいところ)。率直に言ってここまで来るとこれは映画とは言えないレベルで、その意味では69分という短尺なのが勿怪の幸いな残念さ加減。 ただし、個々のショックシーンの出来映え・独創性自体は、全体の出来に比べれば決して悪くもない(のも幾つかある)。あくまでホラー映像クリップとして観るなら、本作にもいくぶんの観る価値はあるかと(だから映画としては3点だが、その観点で1点を加点してこの評価としたい)。 もう一点、本作はエロも(短尺な割には)比較的豊富なのだが、ひとりクリーチャーレベルで爆乳な女の子が乳放り出すシーンがあり、ここだけは超必見(というかこれは、一般映画では映しちゃダメなレベルでさーね)。 [DVD(字幕)] 4点(2020-04-12 02:48:19) |
1366. ムーンライト
《ネタバレ》 月の光。ある日陰者の人生に一筋差し込んだ、といった映画だが、内容は(無駄をこそげ落して)かなりシンプルかつスリムで、序盤と終盤はその割りにテンポが遅くも感じる。一方で、映像や音楽の美しさ・センスの良さは非常に見事と言えるクオリティ。どちらかと言うと雰囲気映画の部類だとも思うが(誤解を恐れずにハッキリ言えば、あんまり内容は無い様な作品、かも知れない)、その乾いた空虚さもやはりハイセンス。どっちにせよ玄人向きな作品かと。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-12 01:23:29) |
1367. 少林寺拳法
《ネタバレ》 少林拳は中国の武術であるが、「少林寺拳法」はれっきとした日本の武道であり、日本武道評議会に属する武道9団体のひとつである。本作は、その少林寺拳法を創始した開祖・宗道臣先生の一代記である。日本の武道なのに少林寺、というのは、開祖が戦中、特務機関員として中国大陸で任務遂行中に、各地の達人から技術を学んだことに由来している(らしい)。 後年の開祖は、武道を通して若者を教育し社会を正そうとした至極立派な人格者であるが、色々と聞くに、戦後直後は本作で描かれているような(相当に)荒っぽい熱血漢であったのも事実らしい。恐らく演じている千葉真一の感じも含めて、本作は(少なくとも前半は)割とリアルな線を突いている作品なのだと思っている(チンポコの件も、流石にここまではやらないと思うが、半殺し・腕の1本や2本ぐらいは普通にやりかねないと思っている)。 映画としては、任侠ものを時代相応のヤクザ映画ぽく思い切り血腥くしたという風だが、千葉真一はアクションも迫力も率直に出色と言える出来で、シンプルでコンパクトな内容とのバランスも含めて、この手の映画として決して出来が悪い訳では無いと思う。アクションについては、よく見ると実際の少林寺拳法の技術(稽古してる時の「型」は無論、アクションシーンの投げ技・極め技・受けからの突き蹴り等も)がふんだんに盛り込まれ、拳法経験者ならではの見せ場も豊富だと言える。 余談だが、開祖の高弟には実際に隻腕で、代りに錫杖を伝授されて大いに武名を馳せた人物が実在する。誠直也演じる友田のキャラクター造形に、このことが関連している可能性は大いにあると言えるだろう。 [DVD(邦画)] 7点(2020-04-12 00:04:18) |
1368. 恋におちて
《ネタバレ》 コンセプトが「100%プラトニック」という元ネタに比べると、今作は少しだけプラトニックを脱しかけ(未遂)てはいるが(2人の人間臭そうな人となりや時代・お国柄的に不自然でない程度にナニはしつつも)基本的には清純で、背徳感はやはり薄い。かつ、主演2人の演技の質や(特にいい歳こいて恋する乙女なストリープ)、脚本の出来自体は元ネタをもやや上回るかと。 ただ、個人的にはラストは元ネタ通りハッキリ別れて終わる方が良かった。束の間の恋は相手の悪い点が全く見えないからこそ美しいのであって、美しいまま終わるのが良いのだ。 [DVD(字幕)] 7点(2020-04-11 20:31:42) |
1369. インファナル・アフェア
《ネタバレ》 かなり面白いアイデアだとは思うが、粗さも目立つ。 ①10年の潜伏(埋伏)というのはリアリティ的には非常に微妙 (刑事側なんて確実に犯罪を犯さざるを得ない筈で、それであの頼り無さげなヤンが(ラウはともかく)10年もやってけてるのが想像できない) ②ラウは成り行き上善人になろうとしただけで、10年間の行状も含めて全く「正義」ではない (なのに、最後は勝ってしまう…完全に「正義」なヤンは良い所無しなのに) ③半年後にヤンの身分が明かされたなら、それを殺したラウが無事で済むのは何故なのか 等、疑問は多い。 正直ラウのカッコよさ(と悪さ)に引き込まれるようでないと(ヤンに同情しているようだと)疑問の方が勝ってしまうような気がする。アクションは在って無い様なもんだし、個人的には実は割と微妙。 あと序盤、ヤンもラウも俳優が若手から本チャンに目まぐるしく切り替わるので、ちゃんと観てれば分からなくもないが正直言って相当分かりにくい(ちゃんと観てなかった初見では「何何何?」だった)。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-11 20:26:41) |
1370. イースター・パレード
《ネタバレ》 ミュージカルとしては頭抜けて気に入っている作品で、4月には大体毎年観てる。史上最高の二大スター競演という豪華さも然ることながら、全編通してコミカルな描写も非常に楽しい。序盤、実はバリバリ踊れるガーランドがワザと頓珍漢なことをやって(完成度の低さを見せる完成度の高さ)アステアがアタフタするのからして実にコミカル。後半も程よく甘酸っぱいラブコメディで中々に心地好い。 しかし何と言っても本作の良さはダンスと歌の素晴らしさに在る。人類で唯一、地球の重力から解き放たれたアステアの華麗なステップは正に絶品。それについていけるガーランドはダンスの出来も上々ながら、彼女はとにかく歌がこれまた絶品(軽やかに歌い上げながらも奥行きのある歌声に聞き惚れる)。加えて、助演にアン・ミラーというこれも腕達者を起用する配役は、今観ると非常にゴージャスな上に役柄上でも適切であり、とてもグッド(中盤には十八番のタップダンスもタップリあってこれにも大満足)。ジンジャー・ロジャースに平謝りしつつ、このジャンルでは一番好き。 [DVD(字幕)] 8点(2020-04-11 19:15:32)(良:1票) |
1371. リヴァプール、最後の恋
《ネタバレ》 メインの2人は、それぞれ演じる俳優と大差の無い年齢であったようだ。つまりは本当に30近い年齢差があったということで、その点でもこれが非常にリアルな「質感」であるのだろう。アネット・ベニングは流石の大女優らしく(年甲斐も無く)色気を纏うのも自由自在で(『20センチュリー・ウーマン』で枯れ果ててたのとは大違い)、物質的には年相応に老け込みながらも鑑賞者の脳内イメージにはかなり若く映ると思う。実話とはいえ、一見は確かに無理のあるカップルながら、この妖艶で美しいグロリアならもしかすると…という意味でも、そこそこ話に真実味を持たせるのに成功している作品だと言える。 そして、それ故に本作の一番のキモであるふたりの愛にも、ひとつの真実が宿るように見えるのだろう。真実の愛、たとえ刹那的に重なり合っただけの人生だったとしても、過ごした時間の長さを超えて別れがそれを永遠にする、そんなこともあるのかなあ、と。個人的にはテーマ面でまあまあ共感できたし、その意味ではそこそこ心地好かった。 とは言え、出会って、愛し合って、別れて、でもそれは実は病気の所為で…そして再会したふたりを、死が分かつ(ジ・エンド)。と、僅々50文字で完璧に説明できてしまう内容の軽さは、率直に少し物足りない鑑賞後感を生んでいる(特に、ホントにただお別れして終わりなだけのラストには、正直拍子抜けた)。ことベニングに関しては、前述どおり個々の演技も相当に良質なのだけど。 [DVD(字幕)] 6点(2020-04-11 01:51:03) |
1372. 勝手にふるえてろ
《ネタバレ》 個人的にふと、一般小説原作の映画がここまで徹底的にコメディに振れるのは何故なのかと思って観了後に原作も読んだが、なるほど原作も映画のまんまなクレイジー女の暴走物語だった(小説だから流石に映画ほどテンションは高くないものの)。 一言で言えば本作は「とある奇人の生態を描いたコメディ」であり、その主人公の奇妙さは第一に「生きていくのに他人を必要としない」という点にある(ただし、この種の人々にとっても「生まれついての家族」は他人には入らないらしく、映画には無いが原作ではそこに関わる描写は存在する)。全てが自己完結する主人公は、年相応に恋愛経験が無いのを気に病みつつも、脳内彼氏との妄想生活を「私はいま恋をしてる」と自己認識することで万事OKだとなってしまう。根本的に、彼女は実在の「イチという実体」を人生に必要としていない。永遠の片思いと言えば聞こえは良いが、当たり前だがこれは決して恋愛(というか人間関係)とは言えない。 そのくせ、彼女は他人に虚仮にされることには非常に敏感だからこれが厄介である。ある種、この手の他人に興味が無い人間としては「青い」のだ(つまり、自分は他人に興味が無いから、他人が自分をどう思っていても気にしない、という域には達していない)。拗らせ系の人々ってのは長じるに連れてどこかに確実に「ワルさ」を身に纏い、その性悪さに由来する他者への攻撃性がこれも必然的なまでに芽生えてくる様に思うのだよね。他者への思いやり・配慮も希薄で、かつ思いがけない程に刺々しい様子は、率直に理解・許容不能なまでに「幼稚」だと感じられると言って決して過言ではない。 しかし、本作の彼女は、どうしようもなく幼稚で自己責任な絶望的状況において、最後に一本残った蜘蛛の糸にしがみつき、どん底までは堕ちていかないことを選択する。これは「踏みとどまる」物語なのだ。他者に興味が無く、他者からの興味にも興味が無いというのは、もはや社会的「死」を意味する。その意味では、本作は極めてポジティブかつ感動的な話だと思う。 そして、実はこの「あんまり他人に興味が無い人」というのがいまの日本社会には結構たくさん居るし(程度の差はあるけれども)、そういった人々の多くは遅かれ早かれやはり何処かで「踏みとどまる」経験を経ているのじゃないかと思う。その意味で、これも実は多くの人にとって共感可能な物語であるのだろう(もちろん、全くピンと来ないという人もモリモリ居るだろうことは認めつつ)。 以上、本作はそのテーマ面がわりかし良く出来ていると率直に感じているが、その上で、単純にコメディとしても近年稀に見る面白さであった(個人的にはここ数年の全てのコンテンツの中で一番「笑った」と言える)。随所に挿入される小ネタも然ることながら、松岡茉優の熱演がそのコミカルさの大部分を形成していたことは論を待たない。前述どおり共感できるかは鑑賞者次第だが、コメディとしてなら少なくとも観て損は無いかと思う。あくまで個人的には、色々と最高レベルにオススメ。 [DVD(邦画)] 9点(2020-04-11 01:34:33)(良:1票) |
1373. リング0 バースデイ
《ネタバレ》 なんつーか、日本版『キャリー』てな感じ。ただ、展開運びにはかなり無理繰りな感があるのと、前半が矢鱈と内容が薄くて退屈なのと、ショック描写がこれも非常に地味なのがとにかく大きな減点要素。仲間由紀恵はビジュアル的にはこれ以上無い程に適役だが、意図的な演出とは言えいくら何でも「貞子」感(霊的な感じつーか)が無さすぎて、個人的にはイマイチ。 [DVD(邦画)] 4点(2020-04-10 00:25:03) |
1374. ワイルド・アパッチ
《ネタバレ》 『ロンゲスト・ヤード』や『カリフォルニア・ドールズ』は熱闘とはいっても命の遣り取りではないし、『何がジェーンに起ったか』は女の映画だ。アルドリッチなら、やっぱ主役は漢だろ!とくれば(前時代的でスイマセン)、『北国の帝王』『特攻大作戦』『合衆国最後の日』とかよりは、私は本作の方が好きなのですよね(か、異色だが『飛べ!フェニックス』もかなり好き)。 アパッチVS騎兵隊という構図自体は非常に一般的な西部劇であるとも言えるが、展開は極めてリアルで深刻・シリアス全開で少し疲れる程の見応えが有る。ウルザナとマッキントッシュはいずれも、感情を表情に出さない。殺し合わざるを得ない互いの運命と、それがもたらす悲惨な現実の全てを「達観」し、目的に向かって淡々と仕事をこなしてゆく様は正に正真正銘の熟達したプロフェッショナルであり、両人とも実に格好好い。代わって怒りを前面に出してゆく若い指揮官が視聴者の感情を代弁する構図も、ありがちだが感情移入を容易にする優れたつくりだと感じる。西部劇としては文句無しに傑作の域。 [DVD(字幕)] 8点(2020-04-07 23:10:33) |
1375. 500ページの夢の束
《ネタバレ》 自閉症の女性を主人公に、彼女のささやかな挑戦を描く。決してハートフルなばかりでは無く、テーマに沿った種々の問題・困難もふんだんに描き込まれるが、あくまで本作はシリアスになり過ぎずに爽やかさ・明るさをメインに纏められており、テーマの割に観易い作品かと思う。個人的にはも少しだけ「ヘビー」な方が、こういうテーマの作品としては好ましい様にも感じるが、それこそ個人の好みの問題であろう。 とは言え、シナリオにそこまで秀逸なアイデアが有る、という訳でも無いかと。その代わり、主演のダコタ・ファニングの演技は色々と中々に絶妙で、その点が本作の最大の見どころなのは間違い無い。犬も可愛い。 [インターネット(字幕)] 6点(2020-04-05 01:48:48) |
1376. キッスで殺せ!
《ネタバレ》 アルドリッチ、大好きなのですよ。彼我の双方が死力を尽くす、正に死闘と言うべき争い。そしてそれがもたらす重厚なスリルの素晴らしさたるや。本作もずっと観たいと思っていた所、微妙に中古DVDの価格が下がっていたので、世知辛い昨今、少しでもテンションを上げてゆくために思い切って購入してしまった。 ただ、本作に関して言えば展開運びは決して巧みとも言えず、かなり終盤までグダグダと、かつ率直にイマイチよく分からない展開が続くのも事実。しかしながら、随所で冴え渡るお得意のヴァイオレンス描写に加え、非常に個性的なその他のシーンも多く(ヴァ・ヴァ・ブーンとか)、観ていて決して飽きが来るとかいう訳ではない。そして件のラストはこれまた非常に独特な一種のショックシーンになっており、これは確かに「名作というよりはむしろカルト」という類いの映画と言って間違いは無い。普通にそこそこ面白くもあるが、だいぶんマニア向けな作品かと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2020-04-04 23:00:37) |
1377. 毛皮のヴィーナス(2013)
《ネタバレ》 マゾッホ原作の劇中劇をオーディションという体で演じていくという(たったふたりの)会話劇。2人ともかなり(堂に入った台詞を)喋りまくるので、吹替の方が観易いかもとも思うが、この淫靡ながらのエレガントな雰囲気はフランス語でないと出せないだろうとも思う。その意味では、少なくともマゾッホの原作は読んでおいた方がよい映画であろう(本作のために態々読むかは別として)。 現実と虚構が次第に綯交ぜになってゆく展開はかなり繊細ながら個人的にはそこそこ興味深く観れたが、特にエロティック面では最初から最後までさほど過激なシーンも無く、全体としてもやや抑揚を欠く(特に「見た目」がほぼずーっと同じなのは少し気になる)。あと、女優は別に取り立てて悪いと言うつもりはないが、敢えて言えば、若い女優を起用することに何らの問題もない(ので、若い女優にすべきだ)と思う。冒頭のちょっと非常識なノリは、オバハンとしては若干イタイし。 [インターネット(字幕)] 5点(2020-04-04 18:04:44) |
1378. インデペンデンス・デイ: リサージェンス
《ネタバレ》 時節がら、とりあえずなにか人類が勝利する映画でも、という訳です。 しかし、これが絶妙にツマラナイ。なんというかとにかくテキトー・いい加減で軽~いなあ!とでもいうか、色々とあんまりちゃんと考えてつくってないよーな感じ。 全編に渡って色んな人があっちゃこっちゃで好き勝手やってるというか、どうもシナリオに筋が通っていない感じがするのですね。例えばそれは、人類が予想されるエイリアンの再襲来に対し、どうそれを察知してどういう戦略で迎撃・また護るべきものを防衛しようと戦略を立てていたのかがサッパリ見えず、結局場当たり的な対応・作戦に終始し、その結果やってることは前作と同じという、致命的な既視感に繋がっている部分とかですかね(まあ、これもまたイマイチ戦略性を感じられないのはエイリアン陣営も同じなのですが)。 一つだけ、終盤の怪獣映画な展開は少しだけ目新しく、そこだけはちょっと面白かった。ただこれについても、女王は絶対母船から出ちゃダメ!(当たり前)、としか言い様が無いですが。。 [インターネット(字幕)] 4点(2020-04-04 00:02:29) |
1379. ゾンビランド:ダブルタップ
《ネタバレ》 アポカリプス状況下で数年経過しているという設定だが、妙に暢気に文明崩壊な感じが無く、時の経過を偲ばせるのは女優二人の変貌ぶりのみである(男どもは意外なまでに全く変わり映えがしない)。 「お前誰?」状態で可愛げの欠片もないアビゲイル・ブレスリンはさっさとパーティから外し(なんでこんなに太ったの?)、代わりに可愛いだけの頭空っぽ女を追加して話を進めるのは個人的には悪くないチョイス。しかし、途中でよく分からない流れでいったん離脱して復帰したり、離脱中にはまたよく分からない流れで変な連中が出て来たり、展開運びは結構取り留めが無い。全体的にコメディ要素も明らかに前作よりは弱い(個人的には、前作もそこまで好きでは無いのだけど)。むしろ、アクション要素が中盤も終盤もそれぞれ結構よく出来ている様に思う(ゾンビ映画としては相当に派手)。 他方、エマ・ストーンは前作のギャル風味から転身して大女優らしく矢鱈と凄みが増しており、タラハシーよりもよっぽど迫力アリ。しかしそれでいて絶妙にコミカルな演技はやはり相当に上質で、今や何でも出来ちゃう最強女優とでも言えるのではないか(後半はあんま目立ってないけど)。 [インターネット(字幕)] 5点(2020-04-01 21:59:46)(良:1票) |
1380. アンダーグラウンド(1995)
《ネタバレ》 色々と映画を観ていると、稀にどうしようもなく「天才性」を感じさせる作品に出会うことがある。本作は特に(通常の辻褄を超えて展開し始める)後半は、もう殆どがその類いの「常人の才覚では撮れそうもない」映像となっている様に思う。 「何故、どうして」という点で全く常人の理解が追い付かない本作は、初見では十分に理解するのは難しいかもしれない(少なくとも私はそうだった)。しかし、そういった細かい点を超越して作品全体から迸る得も言われぬパワーとメッセージは、初見だろうが何だろうが多くの人の心に確実に響くであろうし、そして二度三度と観直すと本作もまた、細部まで精密につくり込まれた類稀な完成度を誇るクストリッツァの仕事だということが分かってくる。生涯に渡って何度も楽しめる、素晴らしい映画だと思う。 シーンとしてひとつ、空飛ぶ花嫁の結婚式は、全ての映画の中で私が一番好きなシーンだと言ってよいかも知れない(初めて観たときはやはり疑問と、そして感動と笑いが止まらなかった)。もう一つ、演技面ではどうやってサルにあれ程に上質な演技を仕込んだのか、そのうち聞いてみたい。 もう一点だけ、批判されることも少なくない本作のテーマ面について、私は監督の「歴史を肯定する」姿勢には賛意を表したい。人間と、人間の生業(としての歴史)は、全て多面的なものであると思っている。本作は決して、歴史の負の側面を虚飾で覆い隠そうという作品ではない。清濁併せ呑み、醜さもさらけ出した上で、ポジティブな側面を力強くかつノスタルジックに描いた本作は、テーマ面の表現についても傑出した作品であると強く感じている。 [ブルーレイ(字幕)] 10点(2020-03-29 02:37:06) |