141. 聖地X
《ネタバレ》 ポスター等のビジュアルイメージからガチなオカルト系ホラーを予想していた為、主要登場人物の死者数ゼロに少々肩透かしを食らいました。伝記、神話、民俗学、諸星大二郎系統とでも呼びましょうか。場所に由来する怪奇現象、いや奇跡に翻弄される人々のお話でした。一般的な死に対する恐怖ではなく、人智及ばぬ事象に対する畏れ。これもまたホラーには違いありませんが。 舞台は韓国。何故日本ではなかったのでしょう。それは日本国内にあのような場所は無いからです。勿論韓国にだって無いでしょうが、私は(日本人は)それを確認していません。そういう意味では、アメリカでもイギリスでもドイツでもいいのですが、韓国というチョイスがベストだった気がします。知っているようで知らないお隣さん。心が通じ合わないお隣さん。理解不能な聖地くらいあっても不思議じゃない気がしませんか。きっと日本国内で設定するなら離島になるのでしょうかね。海を渡れば別世界。離島住まいの私が言うのも自虐っぽいですけども。 それにしてもあの場所は凄い。まさに奇跡の土地。奇跡が起きるルールに気付いた主人公は大したものですが、全く悪用する気が無いことに驚き。私などすぐ金儲けに走るでしょうが、主人公は遺産で金に困っていないんでしたね。もっとも力を悪用するような輩には神様?からのお仕置きがあるのでしょう。ホラーともコメディとも付かぬ不思議な感覚のドラマでしたが、これはこれで面白かったと思います。珍味というやつです。 登場人物の中では緒形直人さんの味わいが抜群でした。如何にも怪しげながら、キーパーソンでも何でもないという。胡散臭いったらありゃしない。こんな空気感を出せる俳優さんは他に居ないのでは。かってトレンディドラマで主役を張っていた時より何倍も魅力的です。もっと重宝されていい役者さんだと思います。 [インターネット(邦画)] 6点(2023-01-29 12:24:09) |
142. 脱脱脱脱17
《ネタバレ》 鑑賞動機は祷キララさん。勝手に2代目水川あさみと命名していますが、何故か目の離せない女優さんです。演技が凄く上手いとか、見た目が好みとかいう訳ではないのですけど。『ファンファーレが鳴り響く』の後遺症の一種かもしれません。 さて前置きはこれくらいにして本題へ。本作の主人公は拗らせ2人組でした。ひとりは17年間高校から抜け出せないでいるノブオ。もう一人はかまってちゃん女子高生のリカコです。ノブオの方が一見重症に見えますが、引き籠りやニートの類ではなくちゃんとアルバイトをしていました。社会的に断絶していない所がポイント。拗らせ解消はキッカケ待ちとも言え、失踪という名の荒療治はノブオにとって「渡りに船」であったかもしれません。むしろ深刻な病状であったのはリカコの方かと。かまってちゃんなど珍しくもありませんが、彼女の場合は幼少期に負った心の傷が結構えぐい。治療せぬまま大人になろうものなら、人生台無しにする可能性もあったと思います。 学校は基礎学力を身に付けるだけでなく、社会的人格形成の上で効率的なシステムですが、閉鎖空間で価値観が偏るのが難点です。各々が様々な価値観に触れバランスを取らないと煮詰まってしまいます。そこで重要なのが「家庭」の役割。リカコは此処に問題があった訳ですから、一度家庭から解放され「別の風」や「違う水」に触れる必要があったのだと思います。彼女の失踪は危機管理的に正しく、野生の勘で効果的な治療法を選んだのかもしれません。だからといって「ストリップ劇場」は劇薬に違いなく、娘を持つ父親としてはこんな冷静な感想など現実には言えるはずもありませんけども。かくして2人はそれぞれ人生を前に向かって歩け出せた模様。男の方はかなり遠回りをしましたが、失った時間を悔いても仕方ありません。なるべく楽しく、笑って死ねる為に必要と思われる課題をクリアするのが人生の醍醐味。学校で出される課題よりずっと大変ですが、その分遣り甲斐があるというもの。ノブオにはこれから勇気を持って自分の人生と向き合って欲しいと願います。 青春ドラマとして王道のつくりで、この手の映画が好きな人にはお勧め。個人的には「ギターを背負った女子高生」と「学ランを背広に見立てるネクタイ中年オヤジ」の絵面に得も言われぬ「エモさ」を感じました。これぞ映画ならではの魔法であり、ロマンであります。 [インターネット(邦画)] 7点(2023-01-22 00:25:00) |
143. マイ・ブロークン・マリコ
《ネタバレ》 みんな大好き永野芽郁ちゃんの、永野芽郁ちゃんによる、永野芽郁ちゃんと奈緒ちゃんのための映画。そしてちょこっと窪田正孝さん。範馬勇次郎が背中に鬼を宿すなら、本作の芽郁ちゃんは眉間にアブドーラ・ザ・ブッチャーのデコを憑依させる神業をみせてくれました。カワイイだけの女優さんではありません。 遺骨となった親友との二人旅はまさに現実逃避の旅でした。実際、シイちゃんの精神状態はギリギリだったと思います。辛くなったら逃げるは有効なので、マリコさんがシイちゃんを窮地から連れ出したとも言えます。ただ、崖っぷちから逃げたつもりが、反対の崖に辿り着いたよう。ただし、こちら側にはクソ上司の代わりに救世主が待っていました。名乗る程ではない釣り男。神出鬼没に感じますが、彼はずっと影からシイちゃんを見守り続けていたのでしょう。一歩間違えればストーカーですが、下心が無いこと(本当はあったかもしれませんがおくびにも出さなかった)、差し入れのセンスの良さ、彼女の命を救った等数々の功績により本物語のMVPを受賞しました。シイちゃんの「大丈夫に見える?」に「大丈夫に見えますよ」の返し。このシーンがもう本当に堪らない。泣けて仕方ありませんでした。客観的にみれば、というかラブストーリーなら、これはもう運命の人に違いないわけですよ。でも全く進展する様子もなく、あっけなく別れるという。この一歩引いた感じがタナダユキ監督なんですよね。勿論このあとシイちゃんは彼に会いに行ったかもしれないし、行かなかったかもしれない。それは描かない(描く必要がない)美学を監督は持っているんだと思います。女は恋愛で生きるわけじゃないと。『百万円と苦虫女』や『ロマンス』でもその流儀は一貫していました。そんなタナダユキ監督が大好きなんですけど。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-01-14 08:46:52)(良:2票) |
144. N号棟
《ネタバレ》 キーワードは言わずもがな「生死の堺」です。教授にこの概念を問われた主人公は意識の問題と答えました。死んだ瞬間意識が無くなるから考えることに意味は無いと。デジタル的に1と0の関係と言い換えても良さそうです。おそらく無神論者(私も含む)の一般的生死感もこれでしょう。しかし本作では生死の堺が存在しました。それがN号棟。イメージとしては淡水と海水が混じり合う河口付近。アナログ的に捉えるなら1から0になるまでの途中の領域と言えましょう。 さてここで疑問が湧きます。なぜ主人公ほか2人はこの境界に入り込めたのかということ。N号棟は社会的には廃墟として認識されている場所です。住人は居ないはず。にも関わらず生活していた人たちは何者?死者でしょうか。あるいは生者だけど極めて死者に近い存在なので、通常は(社会的には)認識されない状態とか。いずれにしても普通の人は彼らに気づけないのだと思います。そこで物語序盤を思い返してみましょう。主人公は教授から飲み物をご馳走になっていました。N号棟住民から提供されていたマグカップと同じマグカップで。中身は「死にゆく者から搾り取った血」と推測します。生死の堺にいる者の血を摂取することで、境界に入りやすくする効果を得たのではないかと。男子学生にN号棟へ行くよう唆したのも教授だったと考えると辻褄があいます。教授の企みに学生はまんまと嵌まったわけです。 結末について。何時でも逃げ出せるチャンスがあったのにN号棟に留まった主人公にイライラ。結果、命を落としました。しかしあのまま逃げ遂せたとしてもハッピーエンドと言えるのかどうか。主人公は「死恐怖症(タナトフォビア)」に悩まされていました。もしN号棟の住人として、これから安らかな日々が送れるのだとすれば、これもひとつのハッピーエンドと捉えられるのかもしれません。N号棟のNとは代数のN。あなたのそばにも生死の境があるに違いありません。 ご指摘のレビュワー様もおられるように『ミッドサマー』を彷彿とさせる世界観で、独特の雰囲気がありました。それでいてきっちりオカルト。演出も冴えていたと思います。邦画ホラーの中では当たりの部類と判定します。何より筒井真理子さんの存在感が抜群。ベストキャスティングでした。 [インターネット(邦画)] 7点(2023-01-12 19:15:35)(良:1票) |
145. 怪奇!! 幽霊スナック殴り込み!
《ネタバレ》 監督、脚本、撮影『杉作J太郎』。制作、配給『男の墓場プロダクション』。この字面で何かしら察することが出来る御仁のみが本作鑑賞資格の第一ハードルクリアと考えます。日本人のうち何パーセントが該当するのでしょうか。間違いなく狭き門です。サブカル、アングラ、実話系与太話、紙エロス界隈に入り浸り、大事な何かを失った翼の折れた天使(エンジェルと読む)のみに許された「せめてもの慰め」とも言えましょう。J太郎氏以外のキーワードとしては「大槻ケンヂ」「みうらじゅん」「山田五郎」「安斎肇」あたりでしょうか。これらの名前にリビドーを感じるならば、多分あなた様も有資格者に違いありません。「リリー・フランキー」はどうかって?20年前ならいざ知らず今は屁の突っ張りにもならんですよ。なお、資格がある=鑑賞に適しているとは限りませんのでご注意ください。これはフグ調理師免許や野菜ソムリエと同じですね。資格を持っていても実戦で通用するとは限りません。本作のような玄人向け映画なら尚更です。「昨日宝くじを当てた」「只今禁固刑中である」「ツチノコを見た気がする」など極めて特殊な心理状態であることが、本作を面白がれる必須条件に加わります。決してサブスクの新着で見つけた程度の安易な動機で鑑賞してはいけません。限りある人生の貴重な時間を無駄にする大変危険な行為と知るべきです。寿命が一時間強縮まることをご覚悟なさい。 かくいう私も一応有資格者と自負しておりましたが、コンディションはごく一般的な正月呆けであり万全ではありませんでした。にもかかわらず命を賭したのは、あのタナダユキ監督が主演であったから。『モル』以来の女優バージョンを頂戴できて大変満足いたしました。相変わらずお美しい。周りの役者さんが見事に棒だらけだったのでポッキー畑の中に可憐な風ぐるまが一本立っているかのようでした。あれ?これって地獄絵図ですか。いえ、こういうのを乙な情景と呼ぶのです。本作を観ると如何に川崎実監督や井口昇監督が洗練されているか分かるでしょう。前述したとおり、本作を楽しめるのは極めて特殊な精神状態のときのみ。シラフで観たら多分この点数くらいです。 [インターネット(邦画)] 3点(2023-01-10 18:15:42) |
146. LAMB/ラム
《ネタバレ》 『まんが日本昔話し』ならぬ『まんがアイスランド昔話し』的寓話の趣き。室田日出男氏か市原悦子さんのナレーションで、ほのぼのテイストのアニメーションでも違和感無さそう。さしずめタイトルは『ひつじ坊や』ですかね。そういう意味では終始一貫してホラー様式を取る必要はなかったかもしれません。ハートウォーミングファンタジーを装いながら最後にズドンと落とすやり方もあったかと。オチは衝撃とか恐怖より、納得感が大半を占めました。 さて、本作で特筆すべき点は、台詞の少なさ、説明の無さです。たとえば「子どもを亡くした夫婦」という肝とも言える設定について作中言及していません。私は作品紹介の時点で予備知識を得ておりましたが、当然全ての観客がそうではありません。注意深く観察し想像力を働かせれば辿り着ける設定なのでしょうが、結構無茶な欲求だと思います。この「不親切さ」こそが本作最大の魅力。物語の余白は高級フレンチの白いお皿並みかと。思い切った脚本で観客を選ぶ映画だと思いますが、想像力を駆使して自分なりのサイドストーリーを組み立てて楽しむ趣向だとすれば、これはこれで面白いと思います。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-01-08 16:58:56) |
147. かがみの孤城
《ネタバレ》 一泊二日の家族旅行。子どもたちも久々の映画館でウキウキ。でも中1二女と小4三女の意見が割れたため、私は二女と本作を、長女と三女が『すずめの戸締まり』を鑑賞しました。結論から言うと特大の当たりを引きました!私自身の予備知識は原恵一監督で結構評判は良さそう程度。二女は原作既読だったそうで、本作鑑賞を譲らなかったのだとか。でかした二女よ。 完璧な脚本と演出で、数年に一本あるかないかレベルの傑作だと思います。もし少しでも興味がおありなら、何としてでも劇場鑑賞なさってください。政治家の答弁やビジネスシーンなどで耳にする、やや冷たい印象のあった「善処する」がこれほど胸を打つとは。数々の傑作名作が踏襲してきた映画のお約束が破られる驚きの結末にエンドクレジットが滲んだことは二女には秘密ということで。 ちなみに『すずめの戸締まり』組も満足したようで何より。小4三女に本作は少し早い気もするので、今回の家族分散鑑賞は大正解でした。 [映画館(邦画)] 10点(2023-01-07 12:58:04)(良:1票) |
148. X エックス(2022)
《ネタバレ》 『殺人鬼ファミリーものホラー』のレジェンド『悪魔のいけにえ』を範とする王道スプラッターを創ろうと思ったら、やはり70年代設定は外せないのでしょう。これもある種の時代劇。スマホ等簡易な通信手段が無い点も地味に重要なポイントだと思います。で、まさに時代劇に相応しいお約束展開に終始するわけですが、過激表現のレベルは最新基準だったようです。ナニのソレはコンニチしてなければ映してOKになったんですかね。あるいは昔通販で手に入れた夢のモザイク除去装置が今頃効いたのかな。よく分かりませんが。 A24ブランドのホラーらしい切り口としては「老人の性欲」に言及した点と考えます。この場合の性欲は「生への執着」ではなく「精神的に未熟」という意味合いが強い気がしました。前田日明風に言うなら、この老夫婦は究極の「コトナ」ってところでしょうか。あるいは超絶逆コナン君。リアルガチな老害でした。老人殺人鬼はギャップやインパクトはありますが、肉体的に脆弱なのが致命的。普通に戦えば若者が負けるはずがなく、不意討ちや騙し討ちが無くなった時点で物語はエンディングに向かわざるを得ませんでした。たとえば薬を使って若者の運動能力を奪うなど、加害者と被害者のパワーバランスを調整する工夫があっても良かった気がします。 [DVD(吹替)] 6点(2023-01-02 10:57:56)(良:1票) |
149. 大怪獣のあとしまつ
《ネタバレ》 クセスゴコメディの旗手・三木聡監督作品。庵野秀明監督のようなリアルシミュレーション路線の怪獣映画のはずないと踏んでいたのですが、まるで『シン・ゴジラ』のノリでビックリ。でもかの作品ほどシリアスでもなければ、リアリティを追求している訳でもありません。全体的に緩くテンポも良くありません。正直言って退屈しました。これが三木作品の味と言ってしまえばそれまでですが、何とも中途半端な印象でした。監督お得意のナンセンスならナンセンスなりに、しっかりコメディに振り切ればいいのに。世間の低評価も頷ける残念な仕上がりに思えました。極めつけはラスト。今までの努力を無にする筋悪の結末です。しかしエンドロールを眺めながら反芻するうちに奥底から旨味が溢れてきたような。『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』とは別物。というより真逆の立ち位置。『シン』シリーズが偉大なオリジナルへのリスペクトに満ちた『大人の遊び』とするならば、本作は空気を読まぬ『子どものツッコミ』に他なりません。「ウルトラマン、怪獣と戦ってくれるのは有り難いけど街中は避けてよね。迷惑だから。ついでに倒した怪獣の後始末もよろしく」なんて、如何にもませたガキの言いそうな台詞ではありませんか。かくいう私もそんなガキでした(恥)。これだけのために、わざわざ『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』の二番煎じという不名誉な迷彩を纏ったと。ある意味極めてハイブローな『お遊び』なのでは。やはり三木聡は一筋縄ではいきません。では何監督はこんな分の悪い賭けに出たのでしょうか。その答えはエンドクレジットに隠されていました。文化庁の補助金入り。要するにお上の意向が色濃く反映されていたのです。「大災害からの復興は滅茶苦茶大変なんだから。ほんと無理ゲーみたいなもんよ。政府に任せられても困るわけ。だからみんな、せめて税金くらい気前よく払ってよね」そう観客の深層心理に訴えかけていたのではないかと。その企みが見事に空振っている点も監督の計算に違いなく、そんな裏事情を妄想してニヤニヤするのが本作の正しい楽しみ方と考えます。ぱっと見三木聡監督らしからぬ作風ですが、これほど三木聡監督らしい天邪鬼な映画もない気がします。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-01-01 00:00:00)(良:1票) |
150. きさらぎ駅
《ネタバレ》 私も聞いたことがある有名都市伝説の映画化だそう。どう怖いかというより、如何に楽しく突っ込めるか感覚でしたが、いやはや思いの外面白くて驚きました。もっとも映像面は安普請にも程がありますし、設定の作り込みは甘いです。しかしながらプロットが素晴らしい!オチや後日談のキレ味も抜群でした。こういう「当たり」が含まれているから邦画ホラー漁りが辞められないんですよね。傑作とは言いませんが、良作だと思います。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-12-30 19:53:59) |
151. 劇場版 呪術廻戦 0
《ネタバレ》 原作マンガは未読ですが、二女が子ども時代の私そっくりのアニメオタクに仕上がっており、その影響から流行りのテレビアニメは大体リピート鑑賞している状態です。テレビアニメの呪術はファンという程ではないものの、結構面白いという認識です。 さて、本作は放送済みテレビシリーズの前日譚。主役は名前だけはよく聞く乙骨先輩でした。あの声で喋られると否応もなく碇シンジ君が脳内再生される世代でして。キャラクター造形的にも両者は似通っており、何より「アイデンティティの確立」というテーマまで同じ。皆さん同様すっかりエヴァンゲリオン感覚で観てしまいました。だから困ったとか、つまらないとは思わないですけども。悩み多き思春期の主人公は少年マンガの王道。悩んだ分だけ素敵な大人になってくださいな。 バトルシーンはハイクオリティで見応えあり。術式とか理解不足な点はあれど問題なく楽しめました。リカちゃんが思いの外可愛かったので消滅してしまったのは残念でしたが。テレビアニメ次期シリーズも楽しみにしてます。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-12-30 19:51:18) |
152. RUN/ラン
《ネタバレ》 (ネタバレしてます。ご注意願います) 途中ずっと着地点(主人公の望む結末)は何処だろうと考えていました。また彼女に迫っている危機の程度についても。「毒親」と一言でいっても、重過保護レベルから命に関わる虐待まで様々です。おそらく主人公も見極めが困難だったことでしょう。ただ警察に駆け込めばいいという話でもありません。母を憎んでいたわけでもありませんし、大学進学に親の援助は必須ですから。結果的に彼女が腹を括くるまでに要した時間で事態は悪化し、死ななくてもいい人が死にました。でもその責任を彼女に求めるのは酷な話。彼女はよくやったと思います。特に自身の命を賭した脱出法には痺れました。この場面が本作のハイライトです。自分を見捨てないと読み切った主人公の作戦勝ち。もっともそれ以外の選択肢もありませんでしたが。そういう意味で、彼女は母親の愛を信頼していたともいえます。いや愛というより歪んだ執着でしょうか。母親と思っていた女が実の親でなかったのは不幸中の幸いかもしれません。いずれにしても失われた人生は戻りませんけども。ラストはやり過ぎ感がなくもないですが、最近はきっちり報復するのがトレンドなのでしょう。胸糞アメリカ版『八日目の蝉』、恐いお話でした。 [インターネット(字幕)] 6点(2022-12-16 21:26:53)(良:1票) |
153. この子は邪悪
《ネタバレ》 例えば密室殺人ミステリーで、トリックのタネが壁抜け超能力だったら観客は怒りますよね。だから、もし犯人に壁抜け能力を付すのであれば、予め言い訳(説明)を用意するわけです。宇宙人とか、異世界設定とか、未来テクノロジーとか。現代ドラマで予告なしにいきなり超常現象を持ち出すのはNGです。というより、普通は「嘘」と認識されます。本作も同じ。魂云々かんぬんは犯人の戯言でしょう。それならそれで構わないのですが、どうやら本作の場合言い訳無しで「超能力」(というより魔術かな)を実在させたい模様。じゃなきゃタイトルまでホラになってしまいますから。はてさて困りました。せめてあの人に『家族愛。私の好きな言葉です』くらい言わせてくれたら、配給会社の垣根を超えた面白コラボとして甘んじて嘘を受け入れたのに。本作と比べると、2017年製作JP監督の某サスペンスの出来の良さが際立ちます。 [インターネット(邦画)] 4点(2022-12-13 19:20:23)(良:1票) |
154. リカ ~自称28歳の純愛モンスター~
《ネタバレ》 キャリー、ミザリー、エスター。タイトルが女性名のサスペンスホラーは傑作が多い印象ですが、果たして本作は? 副題は「自称28歳の純愛モンスター」。やはり「自称28歳」部分に目が行きますが、なんと「モンスター」部分がキーワードでした。009もビックリの加速装置に、スパイダーマンバリの壁面登り。モンスターは比喩表現ではなくリアルガチな怪物を意味しました。田中みなみさんの怪演が話題となった『M愛すべき人がいて』と同じ悪ノリ臭がしますが、ぶっ飛び加減は本作の方が遥かに上です。だから良いとは思いませんけど。サイコスリラーというよりブラックコメディという認識でよろしいかと。私はテレビシリーズ未見ですが、はじめからこんな奇天烈なドラマだったのでしょうか。困ったことに「シャッ」が耳から離れません。 最後に冒頭の問いかけですが、こと邦画サスペンスホラーにおいては『貞子』『シライサン』など女性名だから傑作なんて法則はありません。本作も、まあそういうことです。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-12-07 23:29:54) |
155. ベイビーわるきゅーれ
《ネタバレ》 気分次第で10点もあり得たくらい個人的にドストライクな映画でした。何と言ってもアクションがずば抜けて素晴しい。喩えるなら、ジャッキーチェンのカンフーにUWF系のグラウンドの攻防(俗にいうUの回転体)を融合させたような格闘ムーブに見惚れました。主要キャストでも躊躇なく唐突に殺されるお約束無視な脚本も素敵。主役2人のナチュラル過ぎる演技は賛否が分かれそうですが、キャラに合っているのでこれも味のうちでしょう。本当に痺れました。大好きです。しかし皆さんにオススメしたい傑作かというと些か躊躇します。例えばアクション好きな方であっても、好き嫌いが分かれそうというか。その辺りがアクションエンタメとして高い完成度を誇る『キック・アス』や『ファブル』との違いかと。とことんマニアック志向なのです。好きな人にだけ刺さればそれでよいという潔ささえ感じさせます。たとえば主役2人が銃を構えるパッケージデザイン(ポスタービジュアル)。全くぱっとしません。でもスクリーンの中で動く彼女らは凄く魅力的なのです。べつにアクションシーンでなくても。こうなるとプロモーションに問題があるのではと思ってしまいます。あまりに勿体ない話。エンタメは大衆に支持されてこそと思うのです。喩えが合っているかどうかアレですが、まるでAマッソを見ているような。本作が大衆性を身に着けたら鬼に金棒に違いありません。勿論魅力が半減する可能性も否定できませんが。さて続編の出来や如何に。正座してお待ちします。 [DVD(邦画)] 8点(2022-11-30 23:50:13) |
156. ノイズ(2022)
《ネタバレ》 「もし自分だったらどうしただろう。同じ過ちを犯したかもしれない」明日は我が身。観客にそう思わせればしめたものです。没入感、当事者意識。優れたサスペンスの必須条件です。これが映画におけるリアリティの役割と考えます。しかし脚本センスの無さが、肝心な場面で足を引っ張りました。意識のない男の胸を殴りながら『戻ってこい!』。医者が、いや織田裕二だから成立するのであって、誰が使ってもよい台詞ではありません。この瞬間リアリティが吹き飛びました。冒頭から丁寧に張ってきた「瘡蓋」の伏線も無効化です。観客が冷静になってしまったら、もう嘘は嘘でしかありません。『あんな状況で犯罪隠蔽なんてするわけないよね』『離島に対する偏見エグくない?』『追加で2人が死ぬ展開って流石に無理あり過ぎでしょ』ずっと醒めた目で観てしまいました。あと黒木華さんは本当に大好きな女優さんですが、本作のキャスティングには(指摘した方が悪者になるような)そこはかとない悪意を感じます。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-11-26 14:27:42)(良:1票) |
157. マスカレード・ナイト
《ネタバレ》 性善説を拠り所とする顧客至上主義(ホテルの正義)と、防犯や検挙のため性悪説をとらざるをえない警察の理論(警察の正義)。異なるイデオロギーの対立構図はリベラルと保守の関係を連想させます。まるで水と油。客の無理難題にノーと言わぬホテル、捜査のため客室への無許可立ち入りを正当化する警察。どちらも私の感覚では受け入れ難い態度であり、やはり極端過ぎる価値観は駄目だなと再認識しました。それでも新田と山岸はお互いを認め合っており、相反する立場であっても相互理解と尊敬があれば、歩み寄りは不可能ではありません。それが本作で提示される希望であり、メッセージでもあると思います。ただ前述したとおりどちらの価値観もそもそも許容し難いため、認め合ったところで大して感動できないのが辛いところです。 ミステリーとしては小粒ながらよく練られており見応えがありました。役者さんもバラエティに富んでおりお得感があります。そんなの中、飛び抜けていたのが麻生久美子さん。技量も存在感も素晴らしく、ひとり異次元の怪演でした。もともと好きな女優さんでしたが、今回私の中で株がストップ高を記録した程です。それだけにタレント兼業の役者さんが可哀想で。田中みなみさんも、博多華丸さんも決して下手ではないと思いますが、本作の麻生さんの前では見劣りするなというのが無理な話。配役の重要度に応じて演技レベルや役者の格を合わせないと、違和感が際立つので注意が必要だと思います。その点、木村佳乃さんの上手さも際立っていました。流石です。 最後に主役2人のロマンスについて。前作ラストで結構いい感じだった気がするのですが、その後進展は無かった模様。それで今回もラストでまた気のある素振り。別に恋愛は自由ですからご勝手にという話ですが、いい歳した大人がちんたらやってんのは正直見ていられません。だって撮影時の実年齢キムタク49歳、長澤さん34歳ですよ。それで彼女が帰国するのを待つって何を悠長なことを言ってんだか。20代で許される恋愛が30代や40代でも通用すると思ったら大間違いですよ。それともアレですか。キムタクの本命は中村アンなので、本当にただの食事の約束でしたか。いやはや勝手に盛り上がり興奮した自分が恥ずかしいです。私のような終身名誉童貞みたいな者が、イケメンイケ女様の高度な色恋沙汰に口出すような真似をして本当にすみませんでした。 [インターネット(邦画)] 5点(2022-11-19 18:24:34) |
158. パラサイト 半地下の家族
《ネタバレ》 主人公家族は身分を偽り富裕層一家に取り入りました。労働の対価として報酬を得ているものの、正当な見返りとは言い難いため確かに『寄生』とみなすことが出来そうです。宿主に覚られず、こっそり生き血を啜るのが寄生の本流でしょう。しかるに本ケースでは寄生者が宿主を殺害しました。寄生虫の中には宿主を殺す捕食寄生というものがあるそうですが、今回は違います。何も利益がありません。ただ感情のままに殺したと。理由は『自尊心を傷つけられたから』。これは半分正しく、半分間違っていると考えます。いくらプライドを傷つけられたにしても、普通なら一発殴れば済む話ですから。 父が凶行に及んだのには大きく2つ理由があったと思います。1つ目は『スイッチが入った』から。大量出血する我が子の姿を目の当たりにして、父の脳は「戦争」モードに切り替わりました。これはある意味当たり前の話。自己防衛は本能的にも社会的にも認められた権利。ただここで面白い現象が起きました。怒りの矛先は加害者ではなく富裕層一家に向けられました。ここで2つ目の理由『感情のすり替え』が登場します。いわゆる吊り橋効果に同じ。加害者に向けられるはずの殺意を富裕層一家に転嫁した訳です。普段から富裕層一家に対して負の感情を溜め込んでいたからこそ起きた「必然のすり替え事故」と言えましょう。身分と感情のすり替えが産んだ悲劇でした。富裕層一家にしてみれば、完全なもらい事故でお気の毒としか言いようがありませんが、サバを酢で締めもせず常時刺身で食べていたら、そりゃねえという話。ですから悲劇の理由を、貧富の差だとか社会システムの弊害だとかに求めるのはお門違いという気がします。単純に危機管理が甘かっただけ。寄生虫が疑われる食材は、きちんと処理しないと危険ですよという教訓と理解します。きちんと知識のある人が料理した刺身やお寿司を食しましょう。あとしっかり噛むのも寄生虫対策になるそうですよ。 [インターネット(吹替)] 7点(2022-10-08 18:46:07)(笑:1票) (良:1票) |
159. 秘密結社 鷹の爪 THE MOVIE4 ~ カスペルスキーを持つ男~〈OV〉
《ネタバレ》 劇場版『鷹の爪』は全て抑えているつもりだったのですが、ナンバリング4は劇場3作目のセルDVD特典にのみ収録されているOVだそうで、気づかないうちにスルーしていたようです。今回某サブスクで見つけて鑑賞いたしました。 お久しぶりの鷹の爪でしたが、その面白さは期待どおり。今回の主役はデラックスファイター。長らくベールに包まれてきた素顔が曝されるというレア回であります。まるでサングラス無しのタモさん、あるいは世を忍ぶ仮の姿の閣下のごとし希少性(嘘)。物語のフォーマットは『シェーン』や『タンポポ』の丸パクリ、もといパロディですから観易いですし、手堅く楽しめると思います。ドクズな不倫未遂を切ないロマンスにカモフラージュする演出テクニックもなかなか。尺も短いですし鷹の爪ファンなら観て損はないでしょう。ちなみにカスペルスキーとはセキュリティソフトの名称でした。要するにいつものタイアップです。そりゃそうだ。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-10-07 18:29:10) |
160. スモーキング・エイリアンズ
《ネタバレ》 普通ならタイトルは『スモーカーVSエイリアン』でしょう。あえて『スモーキング・エイリアンズ』=『喫煙する異星人』にしたのは、劇中提示されるエイリアン撃退法に加え"喫煙者の方こそ人じゃない"というキツめの暗喩、そして『ウォーキング・デッド』に対するオマージュも含んでいそうです。そう、物語の骨子はゾンビ映画そのものでした。立て籠もるのはスーパーではなく社食。銃の代わりがタバコ。ヘッドショットならぬマウストゥマウスで奴らを仕留めろ。幾ばかりかの風刺を含みつつも、設定、脚本、演出、演技、キャスティングなど全てのパラメーターが等しく小さな図形をつくる純然たるB級作品であり、正真正銘のバカ映画でもありました。この手の映画好きには好感度が高そう。かくいう私も大好物であります。元喫煙者の感染者にはタバコの煙が効き難いなんて無駄に芸が細かいところも素晴らしい。リアリティなど大事なところは全スルーしつつ、どうでもよいところに拘るのがバカ映画のバカ映画たる所以ですから。当然ながら面白くてたまらないという事はありませんが、ずっとニヤニヤ(半笑い)出来ました。バカ映画好き、ゾンビ映画好き、B級映画マニア、どれかに当てはまる方は観ておいて損は無いです。もちろん得もありませんけども。主演、2番手キャストに元セクシー女優を配したほか、我らが一番星・亜紗美嬢も特別出演されています。 [インターネット(邦画)] 7点(2022-10-06 17:49:32) |