161. 顔(1957)
《ネタバレ》 DVDジャケットがインパクト大。美しい岡田茉莉子が暗闇からにらみつけるような絵。ワタシ、昔の美人の女優さんを見ても、「ああ、お人形さんみたいだなあ」としか思わない、ありがたみのないヤツなのですが、本作の岡田さんは美しいと思いました。キャットウオークをウエディングドレス着て降りてくるシーン。すばらしい。笠智衆が田舎出身ののんびりはしているが、やり手の刑事をしているのも、なんか珍しくってお得感はある。でも、お話としてはどうなのか。ものの弾みとは言え、人が死ぬ場面から逃げた水原秋子が腹を決めて生きていくのではなく、なぜか野球選手と田舎で暮らそうとする。「顔」っていう大胆なタイトルが効いているとも思えない。冒頭、列車からまろび出る飯島や、塔から落とされる石岡(妄想)の処理など、妙な味はあるのだけれど、見終わった後、何だったんだろうという感じ。共感得られないと思いますが、ワタシのにとっては「死刑台のエレベーター」みたいな作品でした。 [DVD(邦画)] 5点(2022-02-25 13:24:04) |
162. 奇蹟のイレブン-1966年北朝鮮VSイタリア戦の真実-
《ネタバレ》 墨谷二中が、何かの偶然(というか、大会事務局のやり方に反発してボイコットしたチームが多かった)から、全国中学校野球大会に出場して活躍するような話。面白くないハズがない。視聴してなにより、屈託がない。プレーする北朝鮮チームは伸びやかだし、それを2002年に振り返るおじさんになった北朝鮮チームのメンバーもそれはもううれしそうに、ワールドカップのことを話してくれるんですよね。なんといっても、無条件におおらかに彼らを応援する英国人がうらやましい。生まれる前の出来事を、ドキュメンタリー映画にまとめようとする監督がでてくるんだもの。DVD付録の監督によるイントロダクションなんてのを初めて見ましたけど、本当にサッカーが好きだ、ってことだけで監督になったような人でしたよ。 [DVD(字幕)] 7点(2022-02-23 19:49:21) |
163. 無宿人別帳
《ネタバレ》 島抜けのくだりは、これは日本版の「大脱走」をやるのかとテンションがあがりましたが、さにあらず。どちらも1963年の作でした。同級生の「大脱走」と比べると無宿人たちに周到さがないのが残念です。ラストシーンの奉行所放火、無宿人対奉行所の総かがり戦は、デラックスなキャストに見合った豪華な演出なのかも知れませんが、そのため雑な決着になってしまっています。長門裕之演じるイヤなエリート小役人が良かったです。長門裕之のベストパフォーマンスだったと思います。■まんまと一人だけ生き残った彼がすべて起こった事柄の記録を書き換えてしまい、ちゃっかり江戸に赴任するようなやりきれない終わり方はどうでしょうか?松本清張的?□佐渡金山の世界遺産への推薦をきっかけに見ました。 [DVD(邦画)] 5点(2022-02-20 20:10:54) |
164. 怪獣の日
《ネタバレ》 怪獣のあとしまつについての映画です。今公開中の例のアレの評判は、本サイトや他のサイトでも知っています。大金かけて、豪華な俳優を擁して撮影された例のあの作品にとっては、本作が先行作品であるということが相当のリスクとなってしまったのではないでしょうか。若い監督が、無忖度で、緻密に練り上げたショートフィルム。30分で詰め込めるものは、全部詰め込んだ寄木細工の様な物語。今(22年2月13日現在)、YouTubeでCMなしで見ることができるのですが、せめてAmazon primeに昇格して欲しいと願う一作(そんな昇格あるか?)。オレにお金があったら、中川監督になんか撮ってほしい。 [インターネット(邦画)] 9点(2022-02-13 21:18:13) |
165. 香川1区
《ネタバレ》 うーん、興味深い。■もうこれは、正々堂々の、すがすがしいまでの「良いもん対悪いもん」の映画じゃないですか。赤勝て、白勝てにしなかった大島監督は、潔いと思いますよ。普通だと、「お互いの正義を懸けて戦った」みたいな語り口になるじゃないですか。両論併記というか(ちょっと違う)。■画面に現れる平井卓也候補者に、まったく輝くところがない。なぜ、こんなにもカッコ悪いんだ。動員かけられて集まった支持者のような人たちも、映画のカメラに写るのも憂鬱そうだ。■しかも、パーティーの件とか、高松市役所の脇の瀬戸ビルで行われていることなど、悪いもんのやり口は、もう犯罪的じゃないか(注)。■だが、一転して自転車に旗を立てて隊列を組む小川淳也候補者のやり方も、自民党のえげつないやり方を知ってしまうと、ホントにこれで良いのかと天を仰いでしまう。■とはいえ、小川候補勝利のシーンでは、小川候補自身より、それを喜ぶ支援者の姿に胸が熱くなり、娘のスピーチでは、一発でやられました。目の玉が熱くなる。■「なぜ君は総理大臣になれないか」の続編と思っていましたが、それとは趣が違う。登場人物は同じだが、別なテーマ「戦いとしての選挙」の作品として面白かったです。「問われたのは、一人ひとりの民主主義」というキャッチコピーの意味はそういうことなんだと解釈しています。■フィクションだったら、こんな勧善懲悪はご都合主義って言われそうです。選挙って本当にドラマチックなんだなあ。□(注)公開されて1月半以上たっているが、このやり口について、他のマスコミが後追い検証しないのも解せないなあ。これって、スルーして大丈夫なことなの?アウトでしょ。 [映画館(邦画)] 9点(2022-02-09 15:36:00) |
166. 総理の夫
《ネタバレ》 相馬総理の人間として品格、懐の大きさなど見るところはたくさんあったのだが、いくつか残念な点がある。今時、若い女性総理が誕生したのであれば、総理自身も自分の働き方も十分に配慮して、番頭役や右腕やらを何人も用意しておき、妊娠~出産は淡々かつ華麗にクリアしてほしかったです。つまり、あるべき姿のモデルになって欲しかったのですね。また、映画というよりも連続テレビドラマで見たい作品でもあったかな。いくらでもエピソードやイベントがありそうなネタですし、今の政治の状況を加味したりもできるはず。もっと長く見てみたいと言う気持ちはありますね。できれば、地上波ではなく、ネットのドラマでお願いします(無忖度でね)。 [DVD(邦画)] 5点(2022-02-02 16:47:57)(良:1票) |
167. 音楽(2019)
《ネタバレ》 かっこいい。かっこいいのは主人公の研二ではなく、この映画の盛り上がりシーンである坂本町フェスのアドリブセッション風の演奏をきっちり決めた本作の岩井澤健治監督。真っ向勝負だ。命かけてたんじゃないか。また、本作はあの伝説のミュージシャンMことモリタの物語の前日譚だったとオレは思うね。ディーゼル列車の変な匂いや田んぼを通ってくる風の蒸し暑さまで思い出してしまうような昔の地方都市描写も好き。いい映画だったなあ。 [インターネット(邦画)] 9点(2022-01-29 16:20:48)(良:1票) |
168. シリアル・ママ
《ネタバレ》 1994年の作であるなら、「フォレスト・ガンプ」や「スピード」の同級生じゃないですか。であるとすれば、この安っぽさは狙ってのことなのだと思いますが、ただ安っぽいだけだったと思います。気に食わない奴は攻撃対象ってママが一辺倒すぎるんですよ。ママの人格に緩急がない。冒頭のハエのくだりのような生理的に嫌な感じがもっとあると見応えがあったのでは(どんな見応えだ?)。悪趣味な映画だと聞いてましたので、ワタシ、気持ちが荒んだ今こそと、視聴に臨んだものですが、さっぱり気持ちが落ちていくばっかりです。悪趣味というより、つまらない悪ふざけを見せられたと思っています。 [DVD(字幕)] 1点(2022-01-26 21:35:42) |
169. バッド・ジーニアス 危険な天才たち
《ネタバレ》 カンニング映画といえば、コメディでわかりやすくバチが当たるものと思ってました。しかし、本作はサスペンスで、階級闘争ものなのですね。基本的には試験会場にこんなに挙動不審なやつがいればおかしいし、こんなに風呂敷広げちゃまとまらないだろう、結構無理スジと思って見てました。しかし、ラストシーンで悪役に変わったバンクを振り切ったリンは良かったので4点。…あ、いや。いっそ、善良だった彼も、ひ弱な金持ちだった彼らも、やさしい父親さえも踏み台にして、リンが駆け登っていくピカレスクロマンならもっと良かったかも。 [インターネット(字幕)] 4点(2022-01-25 19:53:10) |
170. のるかそるか
《ネタバレ》 ある男がラッキーとひらめきのおかげで、1日中競馬に当たり続ける映画。いろいろ苦難もあったけどハッピーエンド系でもなく、最後にしっぺ返しを食う系でもなく。とにかく、穏やかな天気の中、1日中競馬に勝ち続けるだけの映画(大負けをラッキーで回避するおまけもあり)。ある意味、こんなに予想外な映画はありませんでした。ポジティブに捉えようとするならば、なんかこう、むかし話のようなノンビリしたストーリーだったなとは言えるかもしれませんが、やっぱり面白くないよなあ。余談ですが、こんなに登場人物たちがマズそうにビールを飲む映画も珍しいよなあ。ジルジル飲むんだもん。ビールは、ガッといけよ。 [DVD(字幕)] 2点(2022-01-23 20:40:11) |
171. 神さまの言うとおり
映画というより、妙な趣向を凝らしたクイズ番組、謎解きバラエティを見ているかのよう。ものすごく面白いものを作ろうというより、あらかじめそこそこの売上目標で、今あるリソースを使いながら、原作漫画の読者層をターゲットに、観客が飽きないような工夫をしながら無難にまとめたようとしたみたいな本作。高級料理店の一品よりも、あるいはローカルで味わい深い町中華のメニューよりも、ナショナルブランドのファストフードが欲しいときにみるべき映画。いろいろなことがうまくいかなくて、見るのに体力がいる映画がきついときにはちょうど良いのではないかと思います(まさに、今日のオレ)。 [インターネット(邦画)] 4点(2022-01-01 20:13:29) |
172. 我輩はカモである
《ネタバレ》 つまらないんだ。翻訳の都合だとは思うんだけど、釈然としないダジャレ。ピンキーというキャラ。ハサミでいろんなものを切り落とすんだけど、それで面白いと思っているところが、近頃のバカッターと重なっちゃって不愉快。なんだよコレって思ってたところ、被った鉢に顔の絵を描いたシーンで笑ってしまいました。ラストシーン、歌ってる彼女にみんなで食べ物を投げるシーンでまた笑ってしまった。…不覚としかいいようがない。でも笑っちゃったからなあ。4点。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2021-12-26 19:32:47) |
173. ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。
《ネタバレ》 うーん。ワタシには、素人をダシに使って山師(製作陣)が電波少年やってる映画のように見える。もちろん、妹さん自らの希望で北朝鮮の姉に会いに行ってるのだと思うし、純粋に、北朝鮮での姉の友人である日本人妻のための行動だったのだと思うが、結果として、ヒドく日本人妻のことを傷つけてしまうような作品になっている。しかも、不必要に。作中でいってたじゃん。「うれしいのが半分。そうじゃないのが半分」。彼女たちが本当は求めてないようなことを、わざわざ日本の身内にアポなし(ホントか?)で相談しにいったり、ツイッターの「自己責任論者」まで見つけてきて、対立軸を作り出してあおって。他にもいろいろ考えさせられるような部分はありましたが(なぜ、北朝鮮の一市民は昔の心優しい日本人に見えるか、など)、なんかこの映画、オラは好きじゃないです。 [映画館(邦画)] 2点(2021-12-13 17:03:57) |
174. ペイ・フォワード/可能の王国
《ネタバレ》 まあまあ、面白い。けれど、やっぱり唐突な感じがする。唐突その1 なぜ彼はあのアイディアを着想したのか?(浮浪者とのやりとりがきっかけのようだけど)、唐突その2 どうして、あんなに老成した聖人のような感じにたどり着いたんだ(記者のインタビューのシーン)、唐突その3 なぜ、先生への善意が自分の母親と引き合わせることなのか、唐突その4 なんで死んでしまうのか。というか、監督は彼を殺す選択をしたのか。唐突な成り行きと道徳的なメッセージ。つまり、なんか寓話みたいなんですよ。現代を舞台にしたイソップというのがワタシの本作の解釈です。ココロには残るけど、なんかモヤモヤする。以下余談。「利他」という考え方なんだとは理解していますが、このアイディアを厳密に考えると、そう簡単に善意を受け取れなくなりますよね。善意のネズミ講が飽和した先には、相当窮屈な世の中があるようにも思われ。なんて考えてしまうのが、日本のロクでもないワタシです。 [DVD(字幕)] 6点(2021-12-08 20:22:54) |
175. Mr.ノーバディ
《ネタバレ》 うーん。正直言って、メチャクチャじゃないですか。娘のブレスレットが見あたらないことが発火点だったと思いますが、そんなキャラクターかなあ。いえ、娘がとっても大事なのはわかりますが、それで家族を危険に晒すほど我を忘れる主人公とは思えない。反撃を開始し始めてからは、多少ダメージを食らっても見ていて負けるような気がしない。好きなシーン(火曜日にゴミを出し忘れるところ、ラザニア作ると宣言するとき、自慢げなところ)もあるんだけど、冒頭の強盗シーン(ゴルフクラブで殴りつけなかった)のように、本当に「NOBODY(なんでもない人)」が、暴力に対して、合理的で最低限の対処を繰り返し、難局を抜け出すような話ならよかったのに、と思っています。漫画「マイホームヒーロー」の鳥栖哲雄みたいに。「Mr」つけた邦題もどうか。Mrつけたら、NOBODYじゃないだろ。あえてかもしれないが、そんな映画じゃなかったと思うが。原題は、普通名詞だったはず。【追記】ああ、なるほど。目隠シストさん、ワタシもアレっと思ったクチです。確かに作中、彼の経歴を調べて「存在しない人」という意味でNOBODYを使っているシーンがあります。ただ、冒頭の1週間の繰り返しは、まさに「なんでもない人」のシーンですよね。タイトルのNOBODYは2つの意味を持つものであり、その意味でも「Mr」 はいらないだろと思っています。 [DVD(字幕)] 3点(2021-12-07 06:08:58) |
176. ザ・ファブル 殺さない殺し屋
《ネタバレ》 面白い。今まで見てきた映画の中でも屈指の素晴らしいアクションシーン。駐車場のシーンも団地のシーンも、よくこんなこと考えて、しかもそれができると思ったな。アクション監督の横山誠氏の名前は覚えておこうと思う。ただ、佐藤(ファブル)の性格設定ってこれでいいのか。本作では、まるで聖人のようじゃないですか。いろんな物差しがぶっ飛んだ人格が、どうにかフツーを装っているのがファブルなんじゃないですか。かっこいいんだか、そうじゃないんだかわからない岡田准一・ファブルのいでたちは好きなんだけど。岡田准一さんは、こういう役をやりたかったんじゃないか。 [DVD(邦画)] 7点(2021-12-03 21:15:24)(良:1票) |
177. ゾッキ
みんなはそう言うかもしれないけれど、オレは結構、面白かったよ。という映画でした。 [DVD(邦画)] 6点(2021-11-25 22:41:38)(良:1票) |
178. バジュランギおじさんと、小さな迷子
《ネタバレ》 残念だが、これはいただけない。まず、シャヒーダーが率直に言ってかわいくない。いや、見た目は可愛いですよ。しかし、声は出せないけれど賢い設定(パワンの正直すぎる行動にダメ出ししていましたよね)だと思うので、大人が沢山自分のために大変な思いをしているのを理解していないワケはないと思うのですが、全くそれを思いやるような仕草なり、行動がない。健気だったり、いたいけだったりしないんですよ。ウソをつけない人物をいいように利用しているようにも見える。もっと言うと、たらし込んでいるようにさえ見える(ワタシ、人間が曲がってます?)。最初に言葉を発するのが再会した時に「お母さん」じゃないで、「おじさん」って。パワンはパワンで、「底抜けに正直な人」だそうですけど、単に意固地で頑迷に見える。彼が我を通しているうちに、周囲のものが諦めて、節を曲げたり、法を曲げたりばかりじゃないですか。ヘンテコな挿入歌「君は鼓動で、僕は心」とも相まって、ぐったりした映画だったなあ。 [DVD(字幕)] 2点(2021-11-21 21:53:18) |
179. 1987、ある闘いの真実
熱量の高い本作。血の濃い韓国の人たち。圧倒されて、また彼我の違いなど考えながら混乱してしまい、観賞後しばらく経ちましたが、ここにコメントをどう書いたらいいのかわかりませんでした。ただ、以下だけを残します。奇跡のようなこんなことが、今後、世界で起きるのだろうか? また起きると信じたい。奇跡は、きっと理不尽が嫌いに違いないから。「タクシー運転手 約束は海を超えて」がよかった人には、おすすめ。あの後の、韓国です。 [DVD(字幕)] 9点(2021-11-18 21:11:54) |
180. キャスト・アウェイ
《ネタバレ》 ああ、すごいいい映画でした。あれ、まだこんなに残り時間があるのに生還しちゃったとか思っちゃいましたけど、命懸けで還りついてからのその後がすごくいい。何を見ているのか分からない、それでいて潤んでいるようにも見える瞳。生きて帰ってきたけど、どこにも辿り着いていないようなチャック。何かもう心許ないラストシーン。ガチな墜落シーンやゴムボートのシーンも迫力ある。ケリーとの別れのシーンも相当いいぞ。真面目な映画だ。オラは好きだな。 [インターネット(字幕)] 9点(2021-11-14 20:44:12) |