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プロフィール
コメント数 210
性別 男性
ホームページ http://mixi.jp/show_friend.pl?id=8512182
年齢 49歳
自己紹介 映画は娯楽である。笑ったり泣いたり学んだり、空想という鑑賞時間を過ごす「芸術作品」である。実際に映画づくりを体験していない人間に、映画批評が出来るとは思えない。プロの批評家でもなく映画を作った経験も無いのだから、作品のシナリオや背景など、基本設定に理屈っぽくケチをつけるようなナンセンスな行為はなるべく止めにしたい。映画好きのハシクレとして、作家が作った作品を、素直に楽しみ、感動できる姿勢を何よりも大事にしたいと思う。

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1.  ショーシャンクの空に
希望を生み出すために必要な「強さ」、そして希望とは人間の強さそのものであることを思い知らされる映画。絶望するのにあまりに十分な19年の時間、現実から逃げず、ヒステリックに嘆くこともなく淡々と行動を重ね、自分を曲げずに環境に常に対応し、ついにドンデン返しの奇跡を成し遂げる。これこそ人間の強さの真骨頂。屋根の上でビールを退ける主人公のなんとも言えない表情、フィガロに心を解放され天を仰ぐ囚人達、この2つのシーンが大好きでいつも熱いものが込み上げて来る。刑務所の中という無機質な背景の中だからこそ、美しいものが引き立って見えるのだろうか。物語は余りに完成されすぎた結末を迎えるが、やりすぎの感は無く、腹の底からスッキリとした爽快感を覚える。ここ数年で唯一観て涙し、それから10年、随分色んな作品を観たが、いまだにこの映画の感動を上回る作品に出会うことができない。これからもずっと出会えないような気がしてならないのだ。
10点(2003-11-07 00:26:57)(良:4票)
2.  アマデウス ディレクターズカット 《ネタバレ》 
この映画の音楽は素晴らしい。オープニングの凄惨な絵の中で軽やかに始まる魔笛の序章、シーンごとの巧みな活かし方だけでなく、演奏そのものの質も個人的には大好きで、この映画以上に美しい「夜の女王」やフィガロの序曲を聴いたことがない。この映画の映像は素晴らしい。ひとつひとつの場面のまるで絵画のような美しさ、前半部分の華やかさとはまるで対照的な後半部分の寒々しい陰惨さが、没落していく孤独な天才のみじめな寂しさを際立たせる。……誰よりも一番惨めな思いだったのはサリエリ本人だっただろう。この彼の心情の描き方が実に見事。天才であるが故に世の中に受け入れられず、孤独であらねばならないアマデウスと、そんな彼に嫉妬する凡才。おとしめようとするたびに思い知らされる自分の無力さと、そんな彼に憧れていることを認めたくない彼の痛みが嫌というほど伝わってくる。……神の嘲笑に打ちのめされ、卑劣な手を使ってでも神の申し子を殺めようとした自分の罪を自覚している以上、彼は基本的に良心の人だっただろう。「汝らの罪を許そう」と皮肉げに笑う彼の心を理解できる人が居ただろうか。サリエリほどのストイックな努力もしていないけれど、神父と同じ「ただの凡才の一人」として、そんな彼にどうしても共感してしまうのだ。
[地上波(字幕)] 9点(2008-02-17 22:39:13)
3.  硫黄島からの手紙 《ネタバレ》 
この映画が、戦争映画として従来の映画と一線を画しているところは、徹底された戦争の客観視にあると思う。一方の悲惨や戦争犯罪を追いかけるのではなく、日本人が米兵に対して行うリンチ、米兵が日本人捕虜に対して行った処刑など戦時下の狂気の中で発生する残虐行為に加え、双方の立場の人間にも対等に、「愛する家族の存在」を描いている。……バロン西が捕虜の米兵の手紙を読んでいるところで思わず涙腺が緩んでしまった。「若造。お前はアメリカ人に会ったことがあるのか?」そりゃそうだ、戦時下で会ったこともない相手だからこそ敵軍として抽象的に憎めるのだ。相手にも自分達と同じ家族のある人間に過ぎないことをリアルに知ってしまったら、情も移ってしまうだろう。……下のレビューにも描かれていたように残念なのは、今までこんな映画を日本もハリウッドも撮る事ができなかったことだ。分っていながら誰もが踏み込むことのできなかった世界に、「父親たちの星条旗」に続いて見事に一歩を踏み出したクリント・イーストウッド監督に、心から敬意を表したい。……皮肉ではなく、この映画はまるで戦争映画撮影の教科書のようだ。物語はともかく、戦争映画を撮影するなら、この映画のような視点で撮影しなければならない。数年前に遊び半分で撮影されたとしか思えないような尻軽女のラズベリー戦争映画とは対極的だ(比較するのもイーストウッドに失礼だが)。今回、中国が国策からハリウッド撮影決定に成功した南京大虐殺の映画も、完成すれば目を覆わんばかりの歪んだ歴史認識が溢れていることだろう。芸術を国策に使い汚す人間には、イーストウッドの爪の垢でも煎じて飲めと言いたい。……たった一つ、どこの国にも立場を越えて共通していることは、これら先人達の累々たる犠牲の上に、自分達の享受している現代の豊かな生活があるという事実。でも栗林中将、常識であるハズのそんな事実を受け継がず、尊い歴史の犠牲となったあなた達への感謝の念すら忘れ去られていることを、他の国の映画に諭されなければならない現実があまりにも悲しいのです。
[映画館(字幕)] 9点(2006-12-30 00:11:14)(良:1票)
4.  シザーハンズ 《ネタバレ》 
物語の内容だけでなく映像も、まるで絵本をそのまま映画にしたような独特の美しさがある。ティム監督独特のこの映像の美しさには惹かれる人も多いと思うが、この作品に関して言えば、監督自身は映像美だけにこだわっていたわけではあるまい。ファンタジックな映像の随所に、彼の人間社会への痛烈な皮肉が込められている。一見可愛らしいが、よく見ると無気味な程に同じようなパステルトーンの家々、同じような単色の服装。旦那の車での出勤とともに町が目覚め、騒ぎだし、旦那の帰宅とともに皆家に帰る。一様に珍奇な髪型にこだわり、一様に興味の対象を探して彷徨う。これら映像全てが、主人公エドワード以外の人間のヒステリックな集団化を、極めて端的に象徴していると思う。人間のエゴの醜さを表現するために、まるで舞台のように余分な要素を一切省き、象徴的な部分だけをこれだけ見事に美しく映像化した映画も珍しい。友が出来たことを喜び、やがて忌み嫌われ、哀しみと怒りのままに人々のもとから姿を消したエドワード。何かを諦めたようにすたすたとボロ屋敷の階段を上がり、黙々とハサミを振るう彼のラストシーンの後ろ姿がなんとも切ない。愛する人をも傷つけてしまうハサミの手で、きっとあのまま、彼はいつまでも独り、街に雪を降らせ続けるんだろう。やり場のない哀しさと淋しさを創作意欲に変えて、いつまでも孤独に、氷の彫像を作り続けるんだろう。
[映画館(字幕)] 9点(2005-02-27 12:59:16)(良:2票)
5.  ピエロの赤い鼻 《ネタバレ》 
戦争が来るまでは普通に大人となり、普通に酒を飲み、普通に女を愛する平凡な一生を送っていた男たち。捕われ泥まみれの穴の中、エゴむき出しで罵り合った彼らも、やがて次に生まれ変わるものに思いを巡らす。そんな絶望の状況の中でひとりの兵士が与えた「笑い」という一筋の光は強さとなり、やがて彼らを生還へと導く。希望を持てと言うのは容易いが、希望を産み出すには、それだけの「強さ」が必要だ。映画の冒頭に「笑いは最強の兵器」という言葉が出ていたように、笑いとはその人間の「強さ」そのものであるということを教えられる。笑いとは人間だけが持っている行為だが、戦争という人間らしさを拒否される状況の中で、この人間らしさの象徴である行為を忘れないからこそ希望が生まれる。銃を下ろし、赤鼻をつけて上官に逆らったあの兵士は、銃以上に強さを持った人間らしい男であった。激しい戦争シーンも飛び散る血飛沫もないが、それ以上に人の強さ、戦争の哀しさ、笑う行為の尊さを、一市民や一平氏という一個人の立場から美しく人間臭く描いた秀作であると思う。
9点(2005-02-12 03:31:15)(良:1票)
6.  ニュー・シネマ・パラダイス 《ネタバレ》 
前々から評判を聞いていてやっと観た。確かに名作、素晴らしい映画だ。トトがアルフレードと分かれ故郷を旅立つ場面、年老いた母親がトトに昔の鍵のエピソードを語る場面、様々なシーンで涙が出てくる。映画に憧れた幼い日から、あの映画館が爆破され全ての郷愁が終わりを告げ、トトが自分の過去と決別する時まで、アルフレードはトトを思い、彼の人生を支え続けた。愛し合っていても幸せになれるとは限らない、故郷から旅立たねば本当の人生は見えてこない‥‥‥人生の拠点において、たとえ自分自身が愛する者に憎まれることになろうとも、愛する者を支え続ける。アルフレードの様な人間こそが、学の有る無しなんか全く関係のない、真の「人生の師」なんだなと思う。あの映画館の爆破は、彼がこの師から完全に卒業した瞬間なのだ。「このフィルムはお前にやる。そして、俺が保管しておく」遠い昔の約束どおり、自分の死後にトトに返したあのフィルムは、形見と言うよりも、アルフレードという先生が愛弟子に送った、自分からの卒業証書のようだ。誰しもの人生のどこかにある「人生の師」。自分自身もいつか、彼のような人の存在に気付く時が来るのかもしれない。イタリアの田舎町の画がとても美しく、音楽も素晴らしい。車の中での妻子持ちの既婚者とのキスは個人的に賛成できなかったが、できれば映画館で観たかったと思わせる大変良い映画だった。
9点(2004-12-05 03:52:00)(良:1票)
7.  グッバイ、レーニン! 《ネタバレ》 
登場する全ての人物が、みな温かさに溢れている。母を苦しませまいと必死の芝居を続ける主人公、それに自分の夢を重ねて手伝う友人、一生懸命に芝居を続ける近隣の人々。そして何よりも、母の愛。母は主人公からではなくララから壁の崩壊を知らされ、にもかかわらず映画は終始母を騙そうと演技を続ける息子の視点のまま、観ている観客は巻き込まれて主人公と一緒に芝居をし、淡々と最後まで進んでゆく。「素晴らしいわ」テレビの演説ではなく、一生懸命に自分に芝居をしている本人の姿を理解して微笑んだ母。彼の芝居は母への無上の愛のかたちであったことを、間違いなく母は理解していた。芝居であることを知っていたのを隠したまま死んでしまうことで、息子への愛に最大の形で報いた母の姿。それを最後まで知らない息子の姿が胸を打つ。最大の親孝行、そして最大の母の愛。なんて温かで、ユーモアに溢れた映画だろうか。
9点(2004-05-09 03:25:13)
8.  レオン/完全版
ロリコンだと冷めた目で観るひともいるのも理解できるが、この物語は「大人になり損ねた危うい大人」と、背伸びすることによる「心の危うさを持った少女」でなければ成立しない。物語の核となっているふたりの、ちょっとしたなにかのきっかけで崩れそうな脆く不完全で危険な匂いが実に美しく描かれていると思う。その美しさが淡々と進むシンプルな物語をドラマチックに見せ、衝撃的な結末へと観る側を引き込む。この作品の良さ、人が魅かれる理由というのは、狂気の名脇役ゲイリー・オールドマンもさることながら、主役の二人の「美しい危うさ」に尽きる。この映画こそ真のバイオレンス。単なる凄惨な描写に留まらない、物語全般に散りばめられた美しく風流な危うさと暴力。そしてエンディングと共に胸を打つ、まるでこの映画の為に作詞作曲されたかのようなスティングの「Shape of my heart」。やっぱりこの映画は大好きである。
9点(2003-12-10 01:08:06)
9.  ファイト・クラブ
ハリウッドでこんな映画がつくられたこと自体が驚き。物欲主義への世の中への痛烈な批判、作品そのものはむしろブラックコメディーに近い。自分の病んだ心が病人達と泣くことで癒されるあたり、この作品は人の心の弱い部分の芯、本質を実によく取らえていると思う。舞台はアメリカなのにブラピ演じるタイラーの思想はどこか東洋的。まるで自分の弱い心を覗かれてるようでドキリとさせられた。ファイトクラブの連中がやっていることは無論メチャクチャだけれど、単なる世の中への甘えた反抗ではなく、なにか納得できるものがあるのは何故だろうと考えてしまう。
9点(2003-11-11 00:10:44)(良:1票)
10.  天空の城ラピュタ
一切れのパン、ナイフ、ランプを鞄に詰めて出かける、未知の世界への旅。この映画こそファンタジーの王道、このジャンルにおいては世界に比類の無い作品だと断言できると思う。誰しもが幼い頃に憧れた夢の冒険、その要素全てがこの映画には集約されている。前に投稿されていた「さすらいの」氏、私もまったくあなたと同感です。 物語の終わりに近付くにつれて、たまらない寂しさを感じることができたのはこの映画だけ、願わくば10歳未満の時期にこの映画と出会いたかった。 オープニングのスラッグ渓谷の朝、響き渡るトランペット、これからきっと始まる大冒険を予感させるこのシーンを観ると、恥ずかしながら今も心がワクワクしてくるのだ。 個人的には帰路へとついた2人とドーラ一家がその後どうなったのか、エピローグをとても知りたいのだが、やっぱりそんな心残りのあるままに終わった方がいいのだろう。もし自分に子供ができたら、真っ先に見せたい、自分と同じようにまだ結婚すらしていないのにそんなことを考えてしまう人もいるのではないだろうか。この映画にはそれだけの純粋な夢とロマンがある。
9点(2003-11-07 01:41:52)(良:1票)
11.  サウンド・オブ・ミュージック
音楽はもちろん、物語も美しい背景も非の打ちどころなし、ミュージカルではまさに最高傑作。あらゆる意味で「豊かな映画」と題するのにふさわしい映画といえるのではないか。厳格なカタブツだった大佐とマリア先生はじめ、人々が合唱するエーデルワイスは最高。映画全体が永遠に決して色あせることのない絵画のようである。人間愛に溢れたこの映画の美しさがいつまでも語り継がれて行ってほしい。
9点(2003-11-07 00:52:05)
12.  イントゥ・ザ・ワイルド 《ネタバレ》 
昔、「生きている意味が分からない」とベトナムに出征し、片足と手の指を失ったアメリカの若者が居たそうだが。彼にとっての幸福とは、純粋な「生きているという実感」だったのではないかと思う。……いかに裕福な家庭や才能に恵まれていても、嘘まみれの社会や偽善的な家族の中では生きていることを実感できない。彼は何にも邪魔されることなく、純粋に「幸せ=生きている実感」を感じたかったんじゃないか。だから、自分ただ一人の命を純粋に向き合える環境、つまり「アラスカの大自然の中」を目指したんだと思う。……幸せも、生きている実感も、結局、自分一人だけでは実感できない。最後にそう悟れた彼の一生は、皮肉だけれど、幸せで悔いはなかったのではないか。木版に刻まれた、彼の最後のメッセージのように。 「世界中のみんなが、幸せでありますように。僕の一生は、幸せだった」
[映画館(字幕)] 8点(2008-10-19 23:39:16)
13.  フォレスト・ガンプ/一期一会
この映画が公開された当初、本が出版されて「ガンピズム」なる言葉が流行ったことがある。それがどういう意味だったかは知らないけれど、私にとっての「ガンピズム」、フォレスト・ガンプ主義の意味とは、ひとつのテーマしか考えられない。奇しくもこれと同じ時期に公開され、この映画の影に隠れてアカデミー受賞を逃した映画「ショーシャンクの空に」とこの「フォレスト・ガンプ」。この二つの映画に同じ強烈なテーマを強く通じるものを感じるのは私だけだろうか。……そのテーマとは「人間の本当の強さ」である。私にとっての「ガンピズム」とは、「強さ」の理想的なあり方に他ならないのだ。……人生に背を向けず、全てを受け入れて宿命に愚痴をこぼさずヒステリックに嘆くこともなく、自分の信念に忠実に強い意志を持続し、出会う人々から目の前の困難まで、全ての人生の出来事を「一期一会」として熱意を持って淡々と行動を重ね、ひとつ、またひとつ、人生を歩んで行く。なすがままに、あるがままに、ビートルズの「Let it be」という歌の歌詞も、このふたつの映画に描かれている「人間の本当の強さ」というものを表現しているように思えてならない。……何回観てもジェイミーだけは単に身勝手な女としか思えないのだけれど、それすらも一途に受け入れて人生を歩むガンプ。彼にとっては、幸福も不幸も、出会いも別れも、楽も苦難も、人生に起こるあらゆる物事が、大切に向かい合うべき「一期一会=人生で一度限りの大切な出会い」であり、それ以上でもそれ以下でもない。全ての人生を終える時、彼は胸を張って言えることだろう、「僕の人生は幸せだった」と。……ショーシャンク刑務所にブチ込まれ不幸の中を歩むアンディ、全ての人に愛され幸せの中を歩むガンプ。自分もこんなに強く生きることができたらいいのに!、この映画を観たり語ったりする時、いつもそう思わずには居られないのだ。
[ビデオ(字幕)] 8点(2008-01-06 03:41:42)(良:2票)
14.  鉄コン筋クリート
AKIRAを観た時以来のインパクトがあった。スピーディーなテンポ、確かなデッサンに裏打ちされた独特の構図、その空間を飛び回る子供たち。クロ・シロの心象表現も素晴らしく、どこか哲学的な台詞も変にクサくなくシラケることもない。原作は未読だが、おそらく極めて忠実に世界観を再現しているのではないだろうか。‥‥‥シロやネズミが話す言葉の数々は、現代社会にも存在する者達そのままの代弁だ。ひとつひとつの言葉が格言のように重みがあって心に染みる。久しぶりに見応えのあるアニメーションだった。
[DVD(邦画)] 8点(2007-07-24 00:59:14)
15.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
前を向いてマッチョ、右を向いてマッチョ、左を向いてマッチョ。2時間たっぷり暴れ回るマッチョな男達。ザラついたセピア色の油彩のような画面に、独特の濃淡で描いたこの映像は、なんという手法なのだろうか。裸の漢(おとこ)たちの闘争を描く舞台としては、誠に最適な手法だと思う。統率の取れた動き、舞踏の様な殺陣、騎士道や武士道とも異なる、東洋の繊細な美しさとは対照的な、無骨な肉体至上主義。‥‥‥もともと私は残虐シーンで飾り立てた映画は受け付けないタチだが、この映画は別だった。残虐の映像度をモノクロームの映像で軽減する手法は「シン・シティ」も同じだが、この映画は、全ての場面を映像と構図で美しく見せようとする作り手の熱意と意図が感じられる。これを実写そのままに見せていたら、それこそ観られたものではなかっただろう。この映像手法は、物語の多くを占める残虐な画面をすら芸術として魅せようとする、作り手の明確な意思表示、覚悟だったのかもしれない。ラストシーン、矢の中に横たわる男たちを俯瞰から撮影した場面は、まるで教会のステンドグラスのように見えた。‥‥‥ペルシャの王を中性的に描いたことで、この映画もまた随分バッシングを受けたようだが、そんな物語や歴史観など、作り手にとっては何と批評されようが関係なかったに違いない。描きたかったものは、躍動する肉体美と、全ての画面の魅力を倍増させる、この映画にはこの上なく適した映像美。そして、余計なモノを一切挟まないシンプルな物語。ただ作り手のこだわりだけに徹底された、良い映画だった。
[映画館(字幕)] 8点(2007-06-04 00:49:05)(良:3票)
16.  ブラッド・ダイヤモンド 《ネタバレ》 
物語の終盤、ショーウィンドウに飾られたダイヤモンドのネックレスの輝きが血に染まって見える。「白人がダイヤを欲しがるのは分かる。しかし、なぜ、アフリカ人同士が争わなければならないのだ?」たき火を見つめるソロモンが呟いた言葉が胸を突いた。‥‥‥ダイヤしかり、石油しかり、象牙しかり。先進国の都合によって、ただ愛する家族と穏やかに生きていくことだけを願っていた人々が引裂かれ、殺されていく。ラストの壇上に向かうソロモンを拍手で見ている人々や、それをエンターテインメントとして鑑賞している私は、そんなアフリカの悲惨な現実を受け止める資格があるだろうか。‥‥‥今までも数々のドキュメンタリーや映画で思い知らされてきたことだけど、所詮海の向こうの他人事と目を背けてしまう自分が嫌になる。そんな自分達に気付いても、何をしてやれる?その無力さに、ただただ虚しい気持ちになるだけだ。需要と人間の欲望ある限り、こんな悲惨は決して消えることはない、その厳しい現実。それでも、どんなキレイごとよりも、まずは行動。たとえ偽善でもイイから、まずは行動。できるだけのことは、やっていくしかないではないか。‥‥‥のっけから始まる血生臭い襲撃シーン、グイグイと画面に惹き付けられてしまい、テンポよく進む物語は2時間半の長丁場ながら観ている側を飽きさせない。この映画に至って、ようやくディカプリオは「タイタニック」の亡霊から脱する事ができたように思う。役柄が良かったのは勿論だが、無精髭を生やしたワイルドな演技はイイ味を出していた。
[映画館(字幕)] 8点(2007-04-15 23:09:46)(良:1票)
17.  武士の一分 《ネタバレ》 
現代版のクールな若者を演じることの多いキムタクのこと、時代劇の配役がどうなのか不安だったが、予想以上にハマり役で彼の確かな演技力が証明された気がした。「目が見えないと思って侮るな」と使いに追加の伝言を託すときの表情は、鬼気迫る凄みがあって素晴らしかったと思う。彼の自然な演じ方を、庄内弁の軽口に活かすあたりが大変上手い。剣道の経験があるから殺陣も変に美しくなく、実践的でサマになっている。現代風の役者を時代劇に起用するときに有りがちな、不自然な雰囲気がほとんど感じられなかったのが見事だった。……食い扶持を絶たれて飢えてしまうことになるかもしれないけれど、お咎めでお手打ちになるかもしれないけれど、目が見えないから果し合いしても勝てるとは思えないけれど、それでも譲れない、見得やプライドよりももっと深く、生命のやりとりに及ぶまで絶対に譲れない一線、それが「一分」。言うにはカッコイイけど、自分にあるかと言われれば、やっぱり、無いな。……倒れた病に伏した新之丞を見舞う、桃井かおり演じる以寧が家に上がりこむ時、その足袋の裏が生活に汚れている。そんな山田洋次監督独特のリアルな生活模様の演出に加え、奥方の壇れいや、徳平演じた笹野高史の演技も、キムタクに負けずに素晴らしいと思う。脇を固めた俳優陣と、主演のキムタクの息が噛み合った良い邦画だった。
[映画館(邦画)] 8点(2007-01-03 00:26:28)
18.  ホテル・ルワンダ 《ネタバレ》 
民族同士の争いには無縁の生活を送っている島国に育った私たちには、下のレビューにもあるように「『怖いね』と言ってディナーを続けるだけ」の人間でしかない。単なる集団ヒステリーでは片付けられない、凄まじい憎しみがあるのだろう。理想を説いて聞かせるだけの薄っぺらで能天気な平和論など、厳しい現実の前ではかき消されてしまう。……イラクに派遣されている米軍の目的が世界平和でなく石油の利権にあるように、大国が軍を駐在させているのは決して「守ってあげるため」ではなく、所詮利益目的でしかないのが現実だろう。……平和を語る理想より、手段はどうあれ救われるだけの現実にすがりつきたいのに、賄賂も、人脈も無い、助けも来ない。そんな極限状況の中で家族や人々をよく守りきったものだと思う。臆病者の私には決して真似できそうにないその勇気に敬意を表したい。
[ビデオ(字幕)] 8点(2007-01-01 16:52:40)
19.  007/カジノ・ロワイヤル(2006) 《ネタバレ》 
最近の007シリーズは、物語が始まって女が登場するや「もうエッチかよ!」というような脈絡の無いベッドインが嫌いだった(いくらセクシーな優男なのがボンドのキャラだといっても)……しかし本作のボンドは、色男でありながら骨太で硬派でマッチョで一本ビシッと筋が通っており、男から見てもカッコいい。007シリーズを全て観ているわけではないが、ボンドガールが裏切り者というのは他のシリーズにあったのだろうか?スパイのプロ意識から職務を遂行し、女性を愛し、やがてまた独りに戻っていく。本作だけ観ても、ひとつの作品として、十二分に楽しめる映画に仕上がっていると思う。カジノに掛けたオープニングのアニメのセンスの良さ、前半のアクション、後半の心理戦と物語の積み上げもひとつひとつが丁寧だ。……極端に現実離れした道具もなく、観ていて痛いほどのアクションの連続、手に汗握るポーカーゲームで追い詰められ、一瞬我を忘れてナイフを握る様子など、何よりボンドが非常に人間くさい。これが物語をとてもリアルに見せている。初代ボンドに匹敵するとの高い評価も頷ける、スパイ映画の原点のような映画だった。
[映画館(字幕)] 8点(2007-01-01 15:17:14)
20.  父親たちの星条旗
当たり前のことではあるけれど、戦争は「全ての国民同士」ではなく「国と国のご都合同士」がやるものなんだな、と思える作品でった。2部作の「硫黄島からの手紙」とは異なるアメリカ側からの視点だが、徹底的な戦争の客観視という姿勢は同じく一貫していた。国のために勝負の駒となるしかない兵隊の立場から、戦争の悲しさをよくもここまで描ききったと思う。…国のため、故郷のために戦い、力を尽くし、傷ついて帰った彼らを待っていたのは、戦争の現場を知らない役人や民衆からのご都合主義。彼らのやるせない気持ちが痛いほど伝わってくる。純粋に故郷を想って戦い傷つき死んでいった仲間達の、自分たちだけがその真実を伝えられるのに、国の都合の前でそれも叶えられない現実が悲しい。…国の為に尽くした人への畏敬の念を疎んじる。この映画と全く同じことが、現在の日本にはまだ続いている気がする。言葉だけの幼稚な平和主義や教育の前に尊い犠牲は封殺され、この映画を観た存命の旧日本軍帰還兵の方々は、何を思うだろうか。戦争の悲しさと一緒にイーストウッドが言いたかったのは、現代の社会の為に歴史の犠牲となった人々への畏敬の念、そんな気がしてならないのだ。
[映画館(字幕)] 8点(2007-01-01 01:22:02)
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