1. 赤い航路
男女の愛を描いた作品は数あれど、こちらは強烈な印象を残す傑作です。オープニングのタイトルバックから引き付けられ、物語の展開に息をのみました。しかし、かなり「濃い」ので、あっさりしたものがお好きな方は胃にもたれるでしょう。 10点(2004-01-30 01:51:44) |
2. バーディ
私にとってこの映画との出会いは人生の中のいくつかの事件のうちの一つです。 反戦映画のようですが、実のところ、この映画においてベトナム戦争はそれほど大きな意味を持っていません。戦争は、主人公二人をそれぞれ狂気と絶望へと導く要因をわかりやすく表現するための暗喩です。この映画は、実際に多くの場面がそれに割かれているように、セックスと遊びに興味のある健全な青年と、鳥を愛するちょっと変わり者の青年との友情を描いた、底抜けに明るい、田舎町を舞台にした美しい映像の青春映画です。 次第にバーディを極端へと走らせる異常性の兆しは、むろん戦争に起因するものではなく、バーディ自身にもとから内在していたものです。 完全なる狂気に陥り心を閉ざすバーディと、戦争で負傷し心にも傷を負った親友との現在を描くシーンと過去の青春時代の対比が、映画に深い奥行きをもたらしています。後半は胸がしめつけられるような痛みをおぼえる筋立てですが、ラストのあのシーンが、この映画の本質を表象しているのではないかと思います。重いが、救いのある映画です。 10点(2004-01-22 00:14:36)(良:1票) |
3. ベティ・ブルー/愛と激情の日々
狂気に満ちた愛の姿に胸をえぐられます。すばらしい。ベティが家具を窓から全部投げ捨てて家に火をつけるシーン、映像が鮮烈に美しい。 10点(2004-01-17 01:28:26)(良:1票) |
4. ポゼッション(1981)
最高傑作。アジャーニが演じる、通常の感覚ではとても正視することができない極限の狂気には、吐き気を催すほどの強烈なショックを受けます。サムニールの演技もよい。二転三転するラストの展開は、心臓を鷲摑みにされるような哲学的感動をもたらします。見た後はしばらく立ち直れないでしょう。通常のお涙ちょうだい映画で泣きたがってる人は一生見ない方が無難。 10点(2004-01-14 00:39:43) |
5. フェイス/オフ
エンターテイメントとしては満点。顔が入れ替わるという着想はくだらなく見えるものの、映画はとてもスリリングであきさせませんし、追うものと追われるものの逆転という一種哲学的なテーゼを感じさせて、ガラスごしに二人が対面するシーンなどには戦慄を覚えます。緊迫感あふれる最高傑作です。 10点(2003-05-04 03:29:46) |
6. 悪い奴ほどよく眠る
黒澤の最高傑作はこれだと思います。何度かの転回がある筋の運び、三船の現代人としても真似してみたいサラリーマンとしてのカッコよさ、予想外なやるせない結末。それから、黒澤映画はみんなそうですが、脇役たちの鬼気迫る演技力。下っぱたちが精神的に追いつめられて狂気へ至る迫真の演技もみものです。西の正体がばれるシーンはぞくぞくします。 10点(2003-05-04 03:08:55) |
7. 怒り
《ネタバレ》 俳優陣の演技力の高さに引きずり込まれる名作。ベテラン勢はいわずもがな、宮崎あおいの演技がすばらしい。佐久本宝、広瀬すずも良い。殺人事件の犯人捜しというサスペンスの要素がこの映画の大きな外枠となっているが、実はそれはそれほど重要ではなく、同時並行的に描かれる3つの物語、犯人と疑われることになる3人を取り巻く人間たちのドラマが中心だ。逆にサスペンスとしてみると、ちょっと不自然な、こじつけ的なところがクローズアップされてしまう。その行動から見て精神病に罹患していると思われる真犯人が、それを隠して普段あれほど好青年な振舞を見せることができるものかは疑問だし、突然露呈される狂気は度を越していて、その狂気が単純に彼が理不尽だと考える社会の暗部に対する”怒り”だけに起因しているものとは思えない。また、信じていた人に裏切られたからといって、その相手を刺殺する行動に出る人間は稀だろう。 [DVD(邦画)] 9点(2018-01-02 22:20:39) |
8. ブレードランナー/ディレクターズカット<最終版>
哀愁漂う映像美に彩られた傑作。過去か未来か、東洋か西洋か、都会か田舎かわからない街の描写。常にしとしとと振り続ける雨。哀しみをたたえた登場人物たちの演技。レプリカントの運命は人間共通の哀感を表彰している。 [DVD(字幕)] 9点(2006-12-10 01:41:49) |
9. シュリ
《ネタバレ》 繰り返し見たくなる魅力的な作品です。一番特筆すべきなのはヒロイン、ミョンヒョンを演じるキム・ユンジンの演技でしょう。3人で食事に行き、快活にはしゃぐミョンヒョンは、全篇中そのときだけ、セットしたての違う髪型をしていて、この髪型のときの彼女はあまり魅力的でありません。食事の席で、彼女は彼らが追っている女の写真を見せられて動揺します。その後、雨の中を走ったので彼女の髪形は元にもどっています。そのあと、彼女はずっとこの髪型で登場するのですが、前髪が下りているので顔に陰影がつき、そのことが彼女の内心の葛藤と苦悩を、絶妙な表情を伴った演技とともに描き出しています。食事を作ったり洗濯物を干したりする一見幸せそうな彼女にも、どこかに陰りがあり、内奥の不安感が現れています。ジュンウォンの理解できない苦悩と突然のアルコール依存に陥る彼女が、ビルから走り出してきて抱き合うシーンが、この作品の中では最も秀逸です。次に秀逸なのは、もちろん、最後に銃を向け合うところで、カメラワークが絶妙です。撃たれて倒れこむ前に一瞬見せる彼女の、少しうなずくような仕草には様々な感情が集約されていて、どんな言葉よりも説得的でした。欠点としては、アクションシーンがやたら長く、ちらちらしてみづらいなどがありますが、そのことが気にならないくらい全体的には良い印象を抱いた作品でした。 [ビデオ(字幕)] 9点(2005-12-09 01:33:29)(良:1票) |
10. ターミネーター2
良いターミネーターと悪いターミネーターの死闘が手に汗握るシリーズ最高作。話もアクションも満足できる。なんといっても液体金属でできた最新ターミネーターの不気味さが強烈。第1作で泣きべそかいてたサラが突然筋肉もりもりの武闘派女優に変身、体を張った演技をみせてくれる。ターミネーターと子供の友情をからめたところも良い。シュワちゃんがシリアスな演技ながらとてもコミカルに見える。最後はとても哀しい。 9点(2004-10-25 00:27:27) |
11. キス・オブ・ザ・ドラゴン
最初から最後までふんだんなアクションシーンで決して退屈させない映画です。ジェット・リーの寂しげな表情がよいですね。小柄な東洋人が、白人と巨大な黒人を次々と倒していく様は溜飲を下げる思い。すかっとします。悪徳刑事の死に様はぐろいけど。 9点(2004-02-01 02:04:22) |
12. 猿の惑星
《ネタバレ》 これは歴史的な名作でしょう。子供の頃みてあのラストによって明らかにされる真実に深甚な恐怖を感じ、トラウマ化しました。脳手術されてしまう人間も恐怖だった。 [映画館(字幕)] 9点(2004-01-22 01:09:44) |
13. 身代金
発想が斬新。脚本がいい。子供が開放されたら、あと後日談だけになるのかと思ったら、それからまた二転三転ある。ゲイリー・シニーズの鬼気迫る演技が全体を盛り上げている。 9点(2004-01-19 02:31:07) |
14. エンゼル・ハート
主人公が徐々に追い詰められ狂気へといたる過程と絶望的な結末が心地よい(?)印象を残す佳作です。ミッキーロークが渋く決まっています。 9点(2004-01-17 01:35:30) |
15. 刑事ジョン・ブック/目撃者
ハリソン・フォードの演技としては最高傑作でしょう。タイトルからイメージするのとは全く異なる内容。決して刑事もの、サスペンスではありません。主人公の心の動きをハリソンが絶妙な表情で演じきっています。 9点(2004-01-16 00:48:14) |
16. セブン
ラストはどうでもよいが、いい映画です。降り続く雨と、うらぶれた灰色の都会、低いトーンの会話の中に織り込まれる猟奇的な事象の対比。一場面一場面にひきつけられます。 9点(2004-01-16 00:13:35)(良:1票) |
17. 七人の侍
3時間以上ありますが、はっきりいって面白いです。せりふは半分以上聞き取れませんが、細かいせりふなんか気にしないで見てください。この映画での三船は、性格設定は明確なものの、うるさすぎていまいちです。志村喬が最高のいい味を出しています。脇役の百姓たちが、どうみても百姓という強烈なキャラを打ち出しています。白黒の画面全体のすみずみから、圧倒的なパワーが押し寄せます。 9点(2003-05-04 03:16:20) |
18. 海にかかる霧
《ネタバレ》 漁での上がりが低迷して密航の手伝いに手を染める船長。無理やり付き合わされる船員たち。密航者たちを乗せたはいいが、予測不能の出来事が次々と起こり、先の見えない展開に。かなり無理やりなラブストーリーに、スプラッターが絡む、ジェットコースタームービーだ。船という密室での人間の狂気を描いた。船は、国家の縮小版でもある。エピローグはいい感じを出している。 [インターネット(字幕)] 8点(2025-02-24 16:53:52) |
19. 私の男(2013)
《ネタバレ》 冒頭30分人間関係がよくつかめず話に入り込めない。その後もたっぷりと間を取った映像が続く。花と淳悟それぞれの犯した二つの殺人が描かれる。東京に出てから淳悟の生活が荒廃し転落へむかっていく。今後も、花はしたたかに生き抜いていくだろうが、淳悟には破滅への道しか残されていない。見終わったあとには不思議な余韻が残る。そもそも淳悟は花をなぜ引き取ったのか。いずれ愛人にするという目論見が少しはあったのではないか。近親相姦を描いた作品と言われているが、淳悟と花に血のつながりはあるのか(実は「本当のお父さん」という設定なのか?)。花役の二階堂ふみ、中学生のときは中学生にしか見えないし、高校生のときは高校生にしか見えない(見た目も言葉遣いも挙動も)。中学生にこんなエロい演技させていいのかと思った。後半では大人の色っぽい女に変化しており、同じ俳優が演じているとは思えない。 [インターネット(邦画)] 8点(2025-02-11 16:07:36) |
20. ある男
《ネタバレ》 子供を難病で亡くし、離婚し、再婚した相手が事故死し、その相手が死後に正体不明の男と判明する、という不幸のオンパレードの女を安藤サクラが熱演。城戸夫婦も最初から不幸の香りがぷんぷんしている。生まれながらにして不幸を背負っている原誠を演ずる窪田正孝も熱演である。城戸が在日韓国人の子孫であること、ヘイトスピーチなどのエピソードは、とってつけたような感じがする。小藪、いい味出してる。いずれ自分が殺人者の孫であることを知るであろう女の子の将来が心配。なかなか見ごたえのあるドラマ。 [インターネット(邦画)] 8点(2023-08-13 19:22:27) |