1. アイ・アム・レジェンド
《ネタバレ》 「動」を紡ぎだすべきCGで、完全な「静」を描くという発想の転換が面白いが、その匙加減がまた秀逸。文明の崩壊から3年しか経過していないという設定にもよるが、ビルが大袈裟に倒壊しているわけでもなく、まだそこかしこに人間の生活感が残されている描写が、文明の恩恵をうけて育った観客の背中をうすら寒くさせる。文明崩壊の詳しい経緯は描かれないが、それはネヴィルという男の行動を観察すれば必要ないことに気付く。相棒を追って暗闇のビルに飛び込んだ主人公の呼吸の乱れは、人類がどういう終末を辿り、その過程で彼が何を見てきたのか、そして様変わりした街で生き抜いた3年がいかに困難なものであったのかを如実に感じさせる。また彼は、もう一つの敵と戦わなくてはならない。孤独と絶望という、自分との戦いである。精神的にも肉体的にも、常人よりかは格段にタフと思われる彼でさえ、自らの狂気に蝕まれるまいと、規則正しい生活をおくり、録画ではあるがニュースを見ながら食事を取り、無人のビデオ店へ律儀に返却に行く。以前の日常を絶やさないことで、ぎりぎりの精神を保っている。漂流映画ではないが、現代人が突然孤独な空間に叩き落されれば、錯乱するなと言うほうが無理がある。取り乱せば自滅し、待つものは死である。ネヴィルにしても、たった一度の錯乱が普段の用心を消し去り、敵の幼稚な罠を見落としてしまう。そしてそれが致命的な結果を招き、彼を支えていた最後の柱が折れてしまう。相棒との絆、主人公の孤独な戦いを緻密に描いた本作の最大の見せどころである。また、世界が崩壊の兆しを見せ始めた時に、妻に誓った言葉を後半に繰り返すシーンも印象的である。目の前で家族を奪い、自分に人類の終焉を見せた「神の意志」とやらに強い疑問を抱く男が自殺を選ばなかった理由は、空虚な「生」の中で無意識に何百万回も呟いたであろうその言葉であり、その言葉が現実となったことこそが「神の意志」だったことに気付くのである。彼はそれを未来に託し救済される。すこし駆け足だったようにも思えるが、実に巧いラストだったように思う。ノベライズをじっくり読みたい気分。ウィル・スミス、いい仕事しました。 [映画館(字幕)] 8点(2007-12-13 04:59:29)(良:3票) |
2. バイオハザードII アポカリプス
ジル可愛い♪ シエンナ・ギロリーっていいなあ、けどどっかで見たなぁなんて思っていたら、「タイムマシン」の彼女役のひとだったのね。やっと気付きました(調べろよ)。個人的にはセクシー&パワフルなジルが本作の目玉です。肝心のストーリーはシンプルそのもの。前作のようなトリックがないところが少し残念。そして設定は、規模と強引さがどんどん加速しています。超能力って。んなアホな! もはや「ゾンビに囲まれた状況からギリギリ脱出」とかゆーコンセプトではないのでしょう。ゾンビがあまり怖くなく、影が薄いと感じたのもそのせいかな!? しかしアクションの一つひとつは派手なので、観ている間に退屈することはありません。シエンナちゃんが次回作でも大活躍するように祈ります。タイムマシンで「あまりにも可愛い」とか書いてしまったので彼女にプラス1点! 6点(2004-11-26 17:30:44) |
3. ファインディング・ニモ
《ネタバレ》 ピクサーの連中、どうも小生の「泣きのツボ」を知り尽くしているような気がしてなりません。最愛の妻を失い、その形見であるニモを大切に育ててきた父、マーリン。これだけでもう涙ぼろぼろ。オープニングからいきなり泣いてしまった作品はこれが初めてです。安全第一だったマーリン、そんな人柄(魚柄?)からはとても信じられないような冒険談が大海原に広がってゆくところにもう、涙腺全開。親の愛は海より深し。世界がどんなに腐っても、これだけはきっと変わることはないでしょう。音楽も秀逸。今回もトーマス・ニューマン節が炸裂です。そして、なんといってもドリー最高! 口や頬やヒレが、いちばんよく動いてます。いい味出してます。煮込めばコクのあるダシが…(←違う。) ピクサーのCGアニメーションは、時として実写よりも雄弁に語りかけてくる気がします。それはキャラクターの「こころ」であり、「いのち」ではないでしょうか。卵をすくい上げるマーリンのやさしいヒレから、「慈愛」と「誓い」があふれています。声優の演技や質感が優れているCGアニメは他にも多々あるでしょう。しかし、キャラクターの心情をも饒舌に描き出すピクサー、やはりこの分野では一歩リードしている気がします。 9点(2004-07-02 20:50:03) |
4. ドーン・オブ・ザ・デッド
序盤からハイテンションな本作。細かい説明は一切ナシ。いいですねえ、こういうスタイル。「おめぇ、ゾンビ映画観に来たんだろ? 好きなんだし、説明いらねぇだろ?」という監督の声が聞こえてくる気がします。突然事件に巻き込まれる主人公の恐怖を、観客にも体験させる狙いもあるのでしょう。見事に映画の世界に叩き落とされてしまいました。目当ての半分はサラ・ポーリーだったのですが、ジェイク・ウェバーご登場という嬉しい誤算も(おお。ありがたや)。てか仕事選べよ! すんません、嘘です。オイシイところも持っていきましたしね。シャツが血で真っ赤なサラ・ポーリーもなんだかシュールで、ミョーな可笑しさを漂わせてました。いつかアメリカに住むことになったときには、銃砲店とショッピングモールが近い物件に住もうと誓います。 7点(2004-06-28 04:15:41)(笑:1票) |
5. デイ・アフター・トゥモロー
遠い未来に起こるはずの氷河期が、温暖化によって2、3日で発生してしまう恐怖。天気予報なら「明後日のNYは、雨のち曇り、降水確率は100-60%、気温-110℃(前日比マイナス90℃)、所によりスーパーフリーズ」といったとこだろうか。めざましテレビのチカちゃんに、いくら「あったかくしてお出かけくださいネッ!」といわれても、一体何人が生還できるだろうか(第一、海が凍っとるっちゅーねん)。ところで、この映画の評価の分かれ目はやはり「予告編でみた映像から、本編に何を期待したか」ということではないだろうか。摩天楼が崩壊してゆくさまをただ、息を呑んで見つめていたい人と、そこに熱い人間ドラマ(またはハラハラドキドキ冒険ドラマ)を期待した人。ちなみに小生は、不謹慎ながらも前者です。ID4で地を這うように大都市を破壊した炎が、今度は水に姿を変えた。エメリッヒもきっと、こういった大都市が崩壊して逃げ惑う悪夢をよく見て、夜毎うなされているんでしょう。間違いない。あと、トーキョーのシーンは笑いました。皆さん、あれは架空の都市ですよ、きっと。もうちょっと予算があれば、サムライとゲイシャを歩かせ、ビル間をとぶスパイダーマンのようなニンジャを合成し、背景にフジヤマと、山頂にはキンカクジを置いてたはずなんです。間違いない。 7点(2004-06-28 03:11:39)(笑:4票) |
6. ティアーズ・オブ・ザ・サン
「国際問題」と「戦争アクション」の間でフラフラしている映画である。ブルース・ウィリスもまた、「任務に忠実なプロ」と「人道主義な熱い男」の間でフラフラしている。人間ドラマにしても特殊部隊モノにしても、全てが中途半端なので、感動などは望むべくもない。また、登場人物たちにそれほど必死さも感じられず、感情移入もできない。いろいろとおいしい要素を詰め込んだつもりなのだろうが、空振りどころか矛盾さえ生じている映画である。画面重視の強引な空爆によって、命令違反を犯した意味さえも根こそぎ吹き飛ばしたような…。 3点(2004-05-08 04:21:37) |
7. プッシーキャッツ
う~わ~ レイチェルが可愛い~ 内容はティーン向けなので万人にはオススメできないのが残念。レイチェル好きにはかなりオススメ。劇中で流れてたプロモビデオが凄く良くできてたのが印象的。DVDのジャケ写のレイチェル、目つきがかなり怖いのも印象的(汗)。タラ・リードは声まで可愛い。彼女達にプラス1点! 8点(2004-05-08 03:15:51)(良:1票) |
8. マトリックス レボリューションズ
あまりにも説明不足で完結したこのシリーズ。もともとシンプルであったはずの物語を、ここまで難解にする必要がどこにあったというのだろう。映像を派手にする為の後付け設定や、意味のない登場人物、一見難解に見えるが結局は堂堂巡りな台詞の数々…。狐に化かされたような気分である。他のメディアで展開された外伝を見れば解けるのかもしれないが、もしそうだとしてもそれは劇場の観客をナメているとしか思えない。「それがこの作品のスタイルだ」などといわれても、劇場公開を軸としている以上、本作を映画として評価した際には極めて低い評価しか得られないだろう。とはいえ、監督兄弟は疲労や重圧に耐え、「マトリックス完結」という非常に大きな仕事を成し遂げた。常人には決して真似のできないことである。彼らにひとこと、おつかれさまでした。 5点(2004-05-08 02:47:18) |
9. 最‘新’絶叫計画
いやあ面白い。こういう観る人を選ぶ映画は、ハマればとことん笑えますな。大多数の日本人にはウケないブラックさが満載で非常に痛快です。誰かが言ってましたが、「良識を笑う」というのもたまには必要なんじゃないでしょうか。アンナ・ファリスも可愛いのに、開き直ってバカやってるところにプロ根性を感じました。惜しいのは、詰め込みすぎてストーリーがない&編集も荒いところ。前作もそうでしたし、製作側も開き直ってるんでしょうか。ストーリーを求めちゃイカンのは分かっているのですが、もしもこれが一つのまとまりをもった映画になれば、すごい作品になれる気が…。 6点(2004-01-29 02:12:27) |
10. マトリックス リローデッド
前作があれだけブームを作っただけに、期待がのしかかった続編はさぞ難しかったであろうと想像できるのだが、それなりに期待に応えていると思う。ザイオンのダンスシーンも、どのような所に押し込まれても生きようとする人間のエネルギーが十分に感じられ、作品のテーマをより強めている。小汚い&長いので間延びしましたが。カーチェイスも「マトリックス式」で満足でした。 7点(2004-01-29 01:39:51) |
11. ソラリス
うーん、結構期待してたんだけどなあ…。原作は未見ですし、前半はミステリアスな雰囲気に引き込まれて観ていたのですが、後半は理解不能でした。いや、ストーリーとかじゃなくて、もうあの感性が。映画的に用意されていた仕掛けの数々にもがっくり。先読みが苦手な俺にバレバレでどうする。凡人たる小生の頭では、天才の感性は理解できませんでした。 3点(2004-01-29 00:52:12) |
12. パーフェクト ストーム
さすがに実話だけあって、キャラクターたちはしっかりした存在感があり、服装などにも説得力がある。実話に忠実にあのラストを選んだということは、この作品は記録的なハリケーンの脅威をメインに描きたかったということか。その信念を具現化した波の映像には文字通り呑み込まれてしまうが、その割には主人公たちとリンクしない他の遭難者たちも登場し、全体的に散漫な印象を受けてしまった。しかしそれでも、実話特有の重みは感じられる作りであったことは確かである。 5点(2004-01-29 00:22:25) |
13. 追撃者(2000)
《ネタバレ》 レイチェル・リー・クック目当てという不純な動機が災いして…。ああ…。なんやコレ…。レイチェルも不憫な役やし…。「ワイのレイチェルになんさらしとんねんハゲー」とゆーところが、唯一感情移入できたところです。全体的に古臭いし、ヒネリもない。鑑賞後は気だるさだけが残ってなんともやりきれません。まあ超人的にタフで、でたらめなヒーローものよりかはリアリティがあってよかったのかもしれませんが。 かわいそうなレイチェルにプラス1点。 4点(2004-01-22 20:03:15) |
14. インビジブル(2000)
驚異のVFXに、もはやツッコむところはございません。主人公の悪行も人間らしさが出ていて、哲学的なテーマを含んでおりよいのではないでしょうか(さすがに殺人や婦女暴行は映画的な味付けでしょうが)。透明になった後も聖人君子な人間はまずいないでしょうし、そんな映画は必要ないでしょう。登場人物たちの、体力面へのツッコミどころが満載な気もしますが、エリザベス・シューが相変わらずキレイだったので楽しめました。ケビン・ベーコンも歳をとらない人だなぁ~。ヴァーホーヴェンの、独自のスタイルを追及する姿勢にも、ファンとして声援を送り続けます。 6点(2004-01-22 17:51:28) |
15. トゥームレイダー
原作モノだし、なんて期待しないで観たのが幸い、テンポもよくてあっという間に虜になりました。目をひいたのはララのおうち。あーゆー英国トラディショナルな雰囲気が大好きなので、「家をつぶすなー」などと思って観てました。二挺拳銃を再装填するシーンも、ララの手つきが手馴れててGood。カッコいいとはこういうことさ、的な。 7点(2004-01-20 16:26:41) |
16. スターリングラード(2001)
《ネタバレ》 エド・ハリス扮するケーニッヒ少佐が渋すぎる今作。あの猛禽類のような目にシビれた。少佐の人格者っぷりをあれだけ丁寧に描いておきながら、唐突に、しかも無理やり悪人にする脚本には手抜き感を否めない。監督曰く「資料がなく自由に解釈した」のなら、もっと観客の納得がいくやりかたはあったように思うのだが。ロン・パールマンがいい味出していたり、ジェームズ・ホーナーの音楽が秀逸だったために、悔やまれてならない。 6点(2004-01-20 14:59:18) |
17. スチュアート・リトル2
もうマーガロにメロメロ(スチュアート、ごめん)。飛行帽にゴーグル! ヤンキースの応援グッズ! 仕草も凝ってる! 水浴び中にファルコン登場! 両手(羽)で胸のあたりを隠してる!(胸ねーじゃんっ!) ちょっと欲を言えば、小鳥だから「歩く」よりも「跳ねる」メインにしてほしかった(跳ねてるシーンが少ない)。うちの鳥もこんなふうに喋ったらなぁ~。 7点(2004-01-20 14:26:51) |
18. ブラックホーク・ダウン
アメリカの自問自答、もしくは自己批判ともとれる今作には非常に意義があるといえる。上層部のエゴに付き合わされた若い兵士達の奮闘。彼らにはエゴイズムやイデオロギーはなく、自衛の為に銃を撃ち、仲間を守る為に戦った。ひねくれた見方ではなく冷静に見れば、彼らは野戦規定を遵守し、無用の殺戮は行っていない。(その描写自体がエゴだ、という意見があれば、それはもうこの映画云々を超えたハナシになってしまうが。) 戦争映画における「敵」の描写は相対的なものですし(歴史の教科書内では、あってはならんことですが)。キャストが豪華でチョト嫌味があったのかもしれませんね。誰も置き去りにはしないという、男達の強い結束を描いた映画として素直に評価します。 7点(2004-01-20 13:44:40)(良:1票) |
19. ワンス・アンド・フォーエバー
戦闘が終わり、報道陣に囲まれたハル・ムーア中佐のやりきれない表情。ヘルメットを目深にかぶり、独りで肩を震わす中佐の後姿。実際のフィルムでも、中佐はコメントの途中で言葉をつまらせていたが、彼の仕草が戦争という行為がもたらすものをすべて物語っているように感じた。実際の戦没者名が出身地とともにクレジットされるが、人間の名前というものがこれほど重く感じられる瞬間は、他にはない。 8点(2004-01-20 12:59:58) |
20. K-19
重い。そして深い。観終えた後は数時間、誰とも口をききたくなくなるくらいに。緊張の糸が終始、ぴーんと張り詰めたままだった。乗組員たちの、核や放射能に対する理解の低さや混乱もよく描けていたと思う。現代に生きる我々でさえ、核燃料や反応炉などを身近にかんじることはできない。皆、原子力発電所からの電力で日々暮らしているけれども、原子物理学に精通している人などは少数であり、知識があるような気がしていても実はそれは、書物や映画から得た二次的な知識である。あの時代、あの船に乗らざるを得なかった若者たちの数奇な運命を、考えさせられる映画だった。 7点(2004-01-20 12:15:00) |