1. 遠い空の向こうに
実話を基に、宇宙を目指しロケット製作に熱中する少年たちを描く。何度も失敗を繰り返しながら目標に向かう主人公は、多くの失敗の上で発明・発見を成し遂げた先人の姿に重なる。ロケット打ち上げが成功した後、どこに落下?と思えば山火事発生。ぬれぎぬを着せられた少年たちが方程式で原因を探る展開が面白い。 ライリー先生や母親の理解がいいね。斜陽産業の石炭採掘で地中深く潜る父親と、未来に向け遠い空を目指す息子という対比の妙。青春映画として、家族の映画としての魅力だけでなく、社会性も織り込んでいる。ロケット失敗シーンの数々を観ると、ミサイルとロケットは同じ技術だなと痛感。ロケットと称してミサイル発射、ミサイル発射して侵略、テロと“自衛”の応酬でミサイル発射・・・技術の進歩がこれか?この頃特に考える。 全米科学コンテストは優勝までの経緯があっさり描写で少々物足りない。 廃れゆくものと伸びゆくものの対照で冷徹な現実を映しつつ、家族の愛情を浮き彫りにする。ブラウン博士は偉大な人だが「僕のヒーローじゃない」つまり「ヒーローは父さんだ」と、ホーマーの心の叫びが聞こえてくる。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-26 16:18:28) |
2. ナイト・オン・ザ・プラネット
《ネタバレ》 人生の交差点ともいえるタクシー内での一期一会。 【ロサンゼルス】 全く異なる世界の住人である女性同士の出会いがもたらす運命の行く先は…微かに残るアメリカンドリームだが、それを断るタクシー運転手の誇りに現代性をみる。 【ニューヨーク】 黒人と移民の出会いを通じて彼らに暖かな視線を送る。黒人のお節介なアメリカ人気質が良い雰囲気で、犯罪志向に走らない描写が良い。 【パリ】 アフリカ人同士の差別意識や、アフリカ移民と盲人というマイノリティ同士の出会いを描く。立場の違いで「ああ言えばこう言う」やり取りが秀逸。意見は違っても大きなトラブルに発展せず、敵意は見せないコミュニケーションが心地よい。盲人といえど対等な立場で皮肉も交える自然な会話が印象的。 【ローマ】 イタリア艶笑喜劇の悪い面を見せられているようで面白くない、マシンガントークも上滑り気味で全然乗れない、乗客の神父のように具合悪い気分で笑えない・・・・・以上の“ない”3連発。 【ヘルシンキ】 市井に生きる人々の不幸自慢(?)を赤裸々に描く。人生の悲哀を感じさせるがもうひと捻りほしかった。さりげなく”夜明けもある”ということが示されたのは好ましい。 総じて人生賛歌である。が、登場人物の喫煙シーン見せ過ぎには辟易。意図はわからなくもないが、(製作年を考慮しても)過剰なタバコ演出には違和感が残る。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-03-05 14:36:29) |
3. ラヂオの時間
コメディー・タッチの会話劇として、ユーモアあふれるセリフの応酬を楽しんだ。誇張とはいえ三谷幸喜の体験と重なるような、製作現場のドタバタぶりがいいね。突拍子もないアイディアが続出する展開は魅力だが、少々飽きてくるのが難点。 ドタバタが続く中、アナウンサー役並樹史朗の落ち着いた語りが滑稽味を醸しながら画面を引き締めており、心に残る。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2023-02-05 17:13:55) |
4. ザ・ロック
カーチェイスでやたらと物を壊す、派手に壊しまくってご都合主義のジェットコースター演出。 クライマックスは、いざ毒ガスミサイル発射という時に回避の決断。さんざんひっぱって最後は腰砕けかよ~。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2022-12-04 18:57:54) |
5. 御法度
幕末の京都を舞台に、むくつけき男どもの世界に入り込んだひとりの若者をめぐる物語。その妖しい魅力に波紋が広がる。新選組における男色を題材にした着眼点がよい。 耽美的な映像は素晴らしいが、出演者の演技が画面に融合していない。各々バラバラに演じて調和を欠く印象。俳優陣は力演ながら浮いている場面も。芸人はテレビで見るまんま。何よりも作品の核となる松田龍平の演技に難がある。周囲を惑わす中性的な佇まいを見せるためにはセリフを極力減らし、目力を活かして神秘性を強調した方が効果的な演出と感じる。好例として「ベニスに死す」のB・アンドレセンの存在感が思い出される。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2022-08-21 16:00:44) |
6. ナチュラル・ボーン・キラーズ
《ネタバレ》 “ロックな映画”で愛を語りたかったんだろうな。無軌道で刹那的で過激なことをやって………。 この手の映画はみな「俺たちに明日はない」の亜流に見える。あの作品との差別化を図り恋愛劇としてもブラック・コメディーとしても社会派としても尖がってるつもりだろうが中途半端な印象で、バイオレンスだけが浮き立つ。 刑務所でのインタビューが肝だろう。「すべての動物は必ず何かを殺してる」………人間も食べるもの(動植物)を殺めて生きている。言われなくても先刻承知。食うこと、環境破壊及び宗教まで持ち出して社会派ぶったセリフのやり取りにうんざりする。 かつてテレビで「なぜ人を殺してはいけないのか」としたり顔で語った輩を思い出し、この監督の偽善的な反体制ぶりが鼻につく。 [CS・衛星(字幕)] 0点(2021-08-15 15:17:44) |
7. めぐり逢えたら
《ネタバレ》 M・ライアンの魅力に尽きるラブ・コメディ。彼女の存在感が突出して他の出演者が霞んでいる。主役を美男美女にせず現代風のキャストで「めぐり逢い」をなぞった展開。どうしてもC・グラント、D・カーと重ねて観てしまう。結果、T・ハンクスは見劣りする。 飛行機の行き来を示す地図上での点滅等、ユーモラスなシーンもあるが序盤はあまり面白みが感じられず、「男と女は感受性のツボが違うのかなあ」と思いながら淡々と本作を観続けていたら、「めぐり逢い」と「特攻大作戦」の話が出て来て自分の思いと映画が見事にシンクロした。 「スターダスト」はじめ数々の名曲が洒落たロマンチック・コメディーを彩る。ラストのエレベーターを閉じるシーン、遊び心で男女のキスの絵にすればもっと洒落てたかも。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-11-22 14:44:31) |
8. クリムゾン・タイド
《ネタバレ》 長々と講釈を垂れるラムジー艦長は、いかにもな感じの軍人気質で自信家ぶりをみせる。対するハンター副長は冷静沈着。対照的な二人の人間性が物語を引っ張る。音楽は過剰で、アラバマ潜航時などのコーラスが時にうるさい。「眼下の敵」の話はいいとしても「スター・トレック」気取りやゴムの話、馬の話などマニアックな小ネタにこだわり過ぎ。 時節柄、艦長と副長の対立が現米大統領と前米大統領の関係に見えてしまう。……………おっと、現大統領と一緒にしては艦長に失礼かな。ミサイル発射の中止命令か発射命令かの判断がポイントで、不確かな情報でもイケイケドンドンはその後のイラク戦争にも通じるような感あり。 艦長復帰後の中止命令・核戦争回避の展開はほぼ予定調和で、最後は両者の顔を立てた形で事を収めた。曖昧な日本人の私としては、妙に納得。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-25 15:44:47) |
9. アダムス・ファミリー(1991)
全然笑えないし面白くない。印象として残るのは、C・ロイドの顔芸とオーバーな芝居が目立つ程度。 ハンドの活かし方も「墓場の鬼太郎」の“手”を見習って、もうひと工夫必要だと思うよ。 [CS・衛星(字幕)] 1点(2020-08-16 10:51:15) |
10. シコふんじゃった。
《ネタバレ》 大学相撲部を舞台にした青春コメディ。パロディ精神あふれる展開で笑わせ、考えさせてくれる。 正子が土俵上を横切った辺りから「女性が見えないガラスの天井を破る物語」が隠れているなと実感。背景には女性官房長官が総理大臣杯贈呈で土俵に上がれなかったという、女人禁制に対する風刺があり、最後の「私もシコふんじゃった」のセリフへ繋がる。清水美砂がいい味出してる。スマイリーをめぐる異文化衝突も面白い。勝ち進めば彼が土俵に上がるだろうと予感させる。 まわしと褌の話は面白いがくどい。竹中直人のオーバーアクションが興ざめで、彼と田口浩正は芝居をし過ぎの印象。本木は熱演。蹲踞の格好はサマになっているし、仕切りの時に足でサッと砂を払うしぐさなども絶妙。 猫だまし、ずぶねり、内無双等の技が相撲ファンの心理をくすぐる。さらに①相手の懐に潜り込む「岩風戦法」がうれしい②頭突きで腰砕けさせ勝つとは意外③リーグ入れ替え戦の最後の居反りはスープレックスを彷彿させる。これらのシーンを観て、久々に「映画と相撲とプロレスは共通のファンが多い」という説を思い出した。 主審のきびきびした動作が画面を引き締める。数多くの青春ドラマに出演した片岡五郎の起用に拍手!👏🏻 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-05-03 11:52:23) |
11. 踊る大捜査線 THE MOVIE
警察署を舞台にした群像劇で、「太陽にほえろ!」のアンチテーゼとして登場したテレビドラマの映画化。変な緩さは現実離れが目立ち素直に笑えないが、管理社会への風刺も交えたサラリーマン喜劇としてみればそこそこ楽しめる。 例の2本の映画へのオマージュ(?)はいただけない。流行のプロファイリングに便乗し、小泉今日子は不自然なパクリ演技と感じる。そして、わざわざセリフで「天国と地獄」とはご親切だ。アジトが見つかるのも安易で、スモークボールの伏線ありきで作った印象。 終盤の、室井による青島の搬送から敬礼シーンまで、感動押し売りが鼻につく。 [CS・衛星(邦画)] 2点(2020-01-12 11:54:03) |
12. 遥かなる大地へ
“アメリカに向かうアイルランド移民の大河的な物語”というより中途半端な中河ドラマという感じ。 新大陸に上陸後の主人公の悪戦苦闘は、自由・自己責任というアメリカの価値観を体現(といってもあくまで白人側の視点で)。拳闘とランド・ラッシュのシーンは迫力満点だが、土地取り競争への問題意識を持たない描き方は物足りない。現実にあったことを直視することは大事だが、その背景にも触れた方が良かった。「シマロン」(1960年作)からアメリカン・ニューシネマを経て世情は変わっているのだから。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2019-12-15 11:00:58) |
13. ミザリー
《ネタバレ》 只々K・ベイツの芝居が面白く、彼女の演技に引き込まれる。恐怖と滑稽さの塩梅が程よく、怖くて面白い映画。同じ原作者で、「作家が絡む、雪景色を背景にした閉鎖的空間での恐怖」という共通項を持つ「シャイニング」と連続で鑑賞したため、どうしてもK・ベイツとJ・ニコルソンの演技を比較したくなるのが人情。結果は彼女の圧勝だ。作品の出来も本作の方が良い。 K・ベイツは表情が豊かで喜怒哀楽の表現が実にうまい。豚の真似、汚いセリフ、愛嬌のある笑顔、時折見せる不気味な顔、投げキッス等、多くの場面が印象深く怖さを増す。癇癪持ちでストーカー的な“ドラゴンレディ”の狂気ぶりを怪演。 ミザリー(=みじめ)はポールの立場を象徴しており、必死にアニーのプッツンを抑えようとする彼の姿が痛々しい。J・カーンがK・ベイツとがっぷり四つの演技で恐怖と苦痛の姿を力演。足潰しのシーンは一番怖かった(痛そう)。 終盤、死んだと思ったアニーが再び襲いかかるシークエンスが「暗くなるまで待って」をなぞるようなもので、ある意味では安心できる展開だ。ミザリーを愛したアニーが豚の置物(アイロン?)でとどめを刺される皮肉な結末が良い。目をひん剥いた断末魔は、ミザリーを偏愛した後だけに、滑稽さが滲む。 「ナンバーワンのファンです」で締めくくる演出は、怖がらせ方としてはありきたりだが、映画全体の流れで見れば悪くない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-02-17 11:56:22) |
14. ユージュアル・サスペクツ
《ネタバレ》 すべてはラストシーンの「どんでん返し」に収斂されるが、それほどの衝撃はない。 ポイントはカイザー・ソゼは実在するか?実在するなら誰か?だろう。虚実ないまぜのヴァーヴァルの証言を映像で見せ、その名さえ意味を持たせようという演出のあざとさ。キートン射殺を誰がやったのか?ロープの束を見せるシーンがカギを握る。陰に誰かがいるのかいないのか思わせぶりだが、“ご飯論法”を使われたような後味の悪さが残る。 回想と嘘を織り交ぜた構成で、伏線をあちこちに張って観客を煙に巻く手法が優れた演出とは思わない。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2018-12-23 10:57:57) |
15. カリートの道
《ネタバレ》 ノワールの雰囲気はよく役者もハマっているが、全体的にテンポが悪く冗長感は否めない。長尺を詰めてテンポよくすればもっと引き込まれたろうに。 クラインフェルドが刺されても死なず、カリートの面会も警官のあっさり身体検査で実現等、ご都合主義が目立つ。クラブ・パラダイスからカリートが逃亡する間、のほほんと待っているマフィアもマヌケな展開。 コートを着たカリートがホームから列車に乗って逃走するシークエンスは、監督の敬愛するヒッチコック映画を思わせる。だが、妙にコメディまがいの印象で、ドリフのコントを観ているような脱力感を覚える。 「パチャンガがベニーに買収されて俺たちを見張ってる」・・・このセリフは伏線というよりネタバレだね。忠告を無視し、買収されたと知りながらパチャンガにゲイルを駅まで送らせるのは(文字通り)致命的だ。冒頭の回想でカリートの運命を認識済みとはいえ、同行させた時点でその後の展開が容易に想像できる。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2018-11-25 11:18:59)(良:1票) |
16. アウトブレイク
パンデミックを題材とした社会性にスリルとサスペンスを織り込んだ娯楽作。 細菌兵器のため町民を犠牲にするという軍の暗部も描かれ、国家の非情さ、冷徹さをマクリントックの行動が体現する。猿を捜す件は面白いが、現実に発見できるかは疑問。 為政者は常に情報を隠したがる習性がある。危機にあたっては「パニックを防ぐため」を口実に隠蔽し、理屈は後からつける。 ヘリの追跡中に人事評価する少将の姿は、保身と功名心、硬直した思考への痛烈な皮肉。追われる2人の会話は脚本が練れている。猿を撃つときのじらし演出やダニエルズが搭乗するヘリの爆撃回避も見ごたえがあった。ただし、終盤のヒーロー演出はちょっと違和感。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-04-08 14:17:16) |
17. Kids Return キッズ・リターン
物言えぬ多くの人を泣かせて“キッズがリターン”は虫のいい話。オイラだったら泣かされた側に心を寄せる。二人の主人公に共感はない。 青春期の苛立ちや迷いを軸に、無軌道→居場所探し→成長・成り上がり→挫折→再生のお定まりパターン。ボクシングと不良の組み合わせもステレオタイプで新味なし。つまらないネタを繰り返す漫才コンビの青春は逆に引き立つ(引き立たせたい?)。 最後の「まだ始まっちゃいねえよ」・・・強引な成り上がりで兄貴分のシマを分捕り、半殺しにされた奴が振出しに戻れるとでも?のうのうと自転車に乗るラストの展開は大甘。序盤の校庭シーンのリフレインで映画の主題に沿った場面だが、半殺しから立ち直りまでに脈絡が感じられない。 by く○屋の店員 [CS・衛星(邦画)] 2点(2018-02-12 11:39:12) |
18. ウォーターワールド
冒険譚としてはまずまずだが、製作の狙いや観客層のターゲットが曖昧で絞り込まれていない。ファミリー向けにしてはバイオレンス過剰だし、コメディ・タッチも中途半端。何より主人公に魅力がない。 劇中に登場する乗り物(船、飛行機、気球、ジェットスキー)の魅力をうまく活かしており、特に三胴船トリマランは装備が工夫されてカッコいい。ディーコンは憎らしいというよりマヌケで笑いを誘う。 クライマックスのバンジー救出場面におけるジェットスキー衝突は、長い間珍場面と思っていた。あれじゃあ少女を奪おうが失敗しようがどっちみち3台衝突は不可避でしょ、と。でもよくよく考えると、あくまでギャグと解釈すれば納得。要は「おバカな3人」なんだね。 弱点だらけだが妙に気になる映画。 [ビデオ(字幕)] 3点(2018-01-21 10:49:50)(良:1票) |
19. 死の棘
こんな演出も“あり”かな。劇中、わずかな時間に現れるハマユウの群落………花言葉が語る主人公のピュアな愛。 歌の歌詞に似た感想が偶然思い浮かぶ。 これも愛 たぶん愛 きっと愛 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-11-12 18:53:31) |
20. ソナチネ(1993)
《ネタバレ》 静謐な画面の連続が暴力を際立たせる。印象的な場面はいくつかあれど、“死”への態度がウソっぽい。乾いた暴力と、青を基調とした絵画の細切れのような画作りがかみ合わない感じ。音楽は映像とよく合っている。 随所にある遊び心は童心を感じさせるものの、花火の水平打ちは悪ガキどものバカ騒ぎを連想して不快。終始無言の殺し屋(南方英二)は間抜けで甘い展開。アニキ分の前でケンだけを殺せば復讐されるのは自明でしょ。 沖縄の青い空と海、マシンガン片手の敵方乗り込みも定型的。最後は「気狂いピエロ」を想起させる。一貫してフェルメール調かと思ったら、最後の最後はゴッホの「ひまわり」かい。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2017-10-01 17:03:40)(良:1票) |