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タケノコさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 576
性別 男性
年齢 50歳
自己紹介 管理人さま、レビュアーのみなさま、いつもお世話になっております。

タケノコと申します。

みなさまのレビューをとても楽しみにしています。
( まるで映画のように、感動し、笑い、ときに泣きます )

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【製作年 : 2020年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  由宇子の天秤 《ネタバレ》 
インタビュイーを見つめる由宇子 (瀧内公美) の、まるで実験動物を観察する学者のような (冷たい) 眼差しが印象的。 まず、視聴者によって、映画のテーマ自体の受取り方が分かれそうな内容だ。 「罪」の重さについて。 報道することの是非や倫理観について。 正義と悪、その境界線の脆弱さ。 かいつまんで、犯した罪を後悔して苦悩する父 (光石研) 、悪意を以てそれを隠蔽しようとする由宇子。果たしてどちらの罪が重いのか、、それは天秤に乗せて量ることはできないけど、むしろこの映画は、インタビューや報道、そのどこにも映らないところにこそ「真実」は存在する、、至極当たり前のことを逆説的に語っているような気がします。 ちなみにですが、由宇子の「宇」の字が天秤 (の形) に見えませんか? はい、見えませんね (笑) でも、目に映ったこと、そこから感じたこと、それもまた人それぞれ。
[インターネット(邦画)] 8点(2024-01-25 12:25:27)(良:1票)
2.  そばかす 《ネタバレ》 
まず、テーマである「アセクシャル」について私見です。 例えば、他に趣味がたくさんあるから、一人でいる方が気楽だから、、要するに恋愛志向はあるわけですが、優先順位で並べると「恋愛は (今は) いいかな」という考えで、何年もそのまま独りって人も大勢いると思います。これって、アセクシャルに限りなく近いけど、別にそうでもない。でも、このまま周りに (アセクシャルと) 誤認される人も多そうだし、そもそも当の本人ですら自分自身がそうであるのか、考えたこともないケースが多いのではないだろうか? 個人的には、人それぞれ、色々な恋愛思考を無理やり「型」にはめて名前をつけるの、そろそろ止めにしませんか? って思うけど。 ちょっと脱線しましたが、、本作はまさにその核心を突いたような内容となっていて、いわゆるLGBTとはまた違う曖昧で複雑な感情に戸惑う、蘇畑佳純 (そばかす) を三浦透子さんが好演してます。 恋愛に興味が湧かない、、つまり余裕があるから本人の意に反して意外とモテてしまうわけで、冒頭の合コンからお見合いまで、グリグリすり寄ってくる男たちを、そばかすさんが素っ気なくもヒラヒラと身をかわしていく様子に笑えます。全体的に、冷めた彼女を取り巻くてんやわんやが面白可笑しくて、特に真帆の存在は、そばかすが「レズでもない」ことを強調する意味で、それだけでも必要なエピソードと思えました。 この映画は着地点をどうするんだろう? って観ていたけど、私は良い終わり方であったと思えます。 アセクシャル、それはとても曖昧、時に恋愛もする、それでいいじゃん。 北村匠海クンは最後に登場して、おいしいところ全部持っていきましたね (笑) それでは、、玉田真也監督、また次作を心待ちにいたします。
[インターネット(邦画)] 8点(2024-01-24 12:35:15)(良:1票)
3.  朝が来る 《ネタバレ》 
これは運命的と言うべきだろう、特別養子縁組という "縁" によって結びついた二人の女たち、、佐都子とひかりの物語。 まず、佐都子 (とその家族たち) が住むところ。都心にあるタワーマンションの高層階であり、たくさんの観葉植物に光が降り注ぐ光景は、まるで天空の一室のようだ。かたや、ひかりが住む (ことになった) のは、広島の似島にあるベビーバトン。その風景こそ美しいが、はるか船でたどり着いた最果て、眼前間近に海が迫るロケーションは、彼女にはもう逃げ場がないことを否応なしに連想させられた。 ・・・ここまで、やはり二人の境遇を比較せざるを得ない。裕福で愛する夫と子がいる、、それだけが幸せの全てとは限らないが、人生の残酷さをまざまざと見せつけられた気がした。 ひかりが彼と抱き合う場面は、奇跡的に美しかった。それは、二人の愛をキレイに撮し取っただけではなく、今、その瞬間が彼女の人生で最も幸福な一瞬であることを刹那的に予感させるからだ。 映画は彼女の元から去った者たちを追うことはなく、その人生から徹底的に排除したかのようだ。 思えば、ひかりがたどった道は「八日目の蝉」に登場した、ある女 (永作博美) の人生とよく似ている。そして、ある女は、本作では全く違った人生を送って幸せになっていた、、。これは、偶然じゃない。 八日目の蝉 → 朝が来る。 きっと、この二作の関係も「ベビーバトン」と同じなんだ。 本作のラストは、大切な人と一緒にいることだけが幸せではない、という (ひかりと朝斗君にとっての) ハッピーエンドである、と信じたい。でも、ひかり (蒔田彩珠) には他の映画でもいいから、次こそ本当に幸せをつかんで欲しい、、と切に願う。
[インターネット(邦画)] 8点(2024-01-17 22:32:54)
4.  もみの家
まず「登校拒否」について私見です。本人が学校に馴染めない、、もちろんそれが大きな理由ではありますが、ケースによっては、登校拒否して親を少し困らせてやろう、という、年頃反抗期特有の性悪なところも、全くないとは言えません。本作は、そのケースに近いと思っていて、もみの家に彩花 (南沙良) を預けるのは、建前上は、「あなたに合う学校に通いましょう」、しかし、母親 (渡辺真起子) の本音としては、一度親の元から離してみようか、、そのようにも見えました。 ちょっと脱線しましたが、、映画の内容としては、テーマこそ重たいですが、これは道徳の授業で上映したいほどの、清廉潔白であり誠実な映画であったと思えます。 野良仕事。 自給自足の食材を使った手料理。 富山県の春夏秋冬、大自然。 ここに集った仲間たち (←運命共同体) 。その全てが心が洗われるものであり、すでに心が「まっくろくろすけ」の私ですが、今では灰色くらいには戻った気がしています。 特に良かったのは、彩花の成長はもちろんですが、やはり彼女のご両親も真剣に悩んで考えて、結局は家族全員が共に成長していること。これは決して個人の問題ではなく、家族全体の問題、そう描いているところが秀逸だったと思えます。 その、ご両親役の渡辺真起子さん二階堂智さん、とてもよかったですね。そうそう、このお二人、「チチを撮りに」という映画でも夫婦役でご共演されてます。 チチを撮りに → もみの家。 この順番で鑑賞されたら、きっと幸せな気分になれることでしょう。 いいですか、チチもみ、チチもみ、この順番お忘れなく。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-10-10 17:02:41)(良:1票)
5.  ザリガニの鳴くところ 《ネタバレ》 
アメリカ南部の湿地帯という、不快であるはずのジメジメとした高温多湿の風景において、少女カイア (デイジー・エドガー=ジョーンズ) が天使のように降り立つと、不思議と天国のような美しさにも見える。 ここで、「調和」という言葉を思い出した。 舞台は1969年のノースカロライナ州。60年代の南部と言えば、まだまだ黒人の人種差別が厳しい時代であり、本作の舞台であるノースカロライナ州も例外ではない。この州に限って言えば、1960年代半ばにようやく黒人が選挙権を勝ち取ったばかりだ。本作の描写については、家族に暴力を振るい、孤独な少女を「ザリガニ女」と罵り、色恋沙汰で互いに殺し合う、それが白人たちであり、黒人は冷静でクール、そして温厚篤実に描かれていて、つまり人種差別 (の歴史) を自虐したような内容になっている。 とある殺人事件の物語、それを俯瞰的、歴史的、あるいは道義的に考察するならば、不要な者 (物) が淘汰されていき、必要な者 (物) が必要とされるだけの、あらゆる自然界の全体としては「調和」の物語と思う。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-08-12 11:05:52)
6.  1秒先の彼女 《ネタバレ》 
序盤、シャオチー (リー・ペイユー) とイケメン詐欺師のロマンスに心がときめき、彼にもらった弁当に涙ぐむ彼女の姿に、まんまともらい泣きしてしてしまった私はよいお客なんだろう (笑) この映画はざっくりと、前半のシャオチー編、後半のグアタイ編、とも言える二部構成となってます。前半は、二人の被写体 (シャオチーと詐欺師) がとにかくよく動く。シャオチーのせっかちで1秒早いフライング体質という設定、映画の撮り方もそこに同調していると思えます。(カット割りも多い) 後半は一転する。今度は1秒トロいグアタイのストーリーになると、カメラワークは落ち着きを取り戻し、ゆっくりな展開どころか、とうとう、時間まで止まる。 撮り方にこういう工夫がある上、おまけに映像美も素晴らしい。特にグアタイ編の、夕暮れの中、四方を海で囲まれた狭い道をバスが走っていく光景は実に幻想的。 二人の1日について、シャオチーが失った「1日」(24時間) は1秒生き急いできたこと、グアタイがもらった「1日」(24時間) は1秒遅れるように生きてきたこと、その帳尻合せと思っていますが、どうやら彼が長年彼女に認め続けた「手紙」や私書箱も要因の気がしてます。このあたり、まだモヤッとしてますが、ファンタジーだし感動に身を任せてそれでいいじゃん、、という良い意味での「ちから」(説得力) がこの映画にはありました。もちろん、何度か観て理解を深めたいとは思います。 主演のリー・ペイユーさんは、超美人ではなかったですが、恋することで段々と美しく輝きを増してゆきました。対するリウ・グァンティンさんは、その雰囲気から誠実さがにじみ出るよいキャスティングであったと思えます。 人よし、脚本よし、映像よし、そして「台湾」という国がよし。このオリジナリティーあふれる素晴らしい脚本は、お近くのパクリ主義の大国には決して真似できまい。 負けるな台湾、今のままでいつまでもいい映画をたくさん作ってほしいです。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-01-04 23:34:45)(良:1票)
7.  星屑の町 《ネタバレ》 
山田修とハローナイツの面々、、その中でも特に、でんでんと渡辺哲による「冷たい熱帯魚」の最凶極悪コンビに、いつもすぐに殺られるチョイ役俳優の有薗芳記という、このキャスティングに笑えてくる。歯を抜こうとするくだり、彼が二人に殺られるんじゃないかと (笑) 映画の作りとしては、低予算でかつ、「ムード歌謡コーラス」を題材にしたコメディタッチ、しかしながら、とても真面目に作られた映画であったと思えます。こういうオッサンたちが、例え場末であろうが、「これしかないから」と歌うことにしがみついて、生き残りに悪あがきするその姿に感動します。この仕事しかない、もうそれで生きていくしかない、、それは私ら中年サラリーマンとて同様。その業界を置き換えても、そこだけは共感できるから、すんなりと感情移入できたのかもしれません。 のんさんは歌が抜群にうまいとは言えない。(ゴメンね) だがしかし、それを補って余りある「声」そのものの良さがある。そして、歌ってる姿が「絵」になる、様になる。とても不思議ですねぇ、、平成世代の彼女の歌声から、ハローナイツのコーラスをバックに歌うお姿から、昔テレビで見ていた昭和 (歌謡界) の光景が懐かしく浮かんできました。 本作は歌 (選曲) もよかったけど、昭和歌謡界と「ムード歌謡コーラス」という文化に、嘘偽りなく深い愛情がございました。そこが何よりよかったと思えます。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-04-10 22:02:43)
8.  かそけきサンカヨウ
かそけき、とは古語の "幽けし" のことで、淡い、薄いといった意味なそう。サンカヨウは、白くて水に触れると花びらが透明になるという、珍しい植物。目立たないけど個性的、とか、静かなる自己主張、そういう隠喩として、また家族における「陽」の存在の例えとしても、うまい題名と思えます。また、志田彩良さんの透明感ある雰囲気と、淡くて薄い映像美の在り方も、本作のテーマをよく支えているように感じました。 ストーリーとしては、どこかで観たような家族のお話でしたが、終始居心地よく、観た後は優しい気持ちになれる、、それだけでよかった気がします。「お母さん、て呼んでもいい?」には、涙涙・・。 私にとって、かつての今泉監督と言えば (笑える) 恋愛映画の職人でありましたが、近年は家族ドラマを撮ることが多くなりました。しかし、本作の陽と陸くんの恋模様からして、「愛がなんだ」の今泉監督が時折顔を出すあたりは、まるでサンカヨウのごとく自己主張とお見受けいたします。これからも、監督を支持し、新作を心待ちにしています。 そうそう、自分史上一番古い記憶、これは書かねばなりません。時は1976年頃、当時住んでいた家の前の道路で (袋小路なので車は通らない) 、幼い私と遊んでくれた近所のおばちゃんたちの姿ばかりがボンヤリと浮かんできます。なぜか、母の記憶があまりなくて (笑) ではでは、これからレビューを書かれるみなさまの、自分史上一番古い記憶、楽しみにお待ちしております。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-04-03 12:24:40)(良:1票)
9.  ドライブ・マイ・カー 《ネタバレ》 
村上春樹氏の原作は読んでおりませんが、本作が各国の賞レースを賑わせているのは、まずは (日本人として) 喜ばしいこと。しかし、それはさておいても、率直に言って好きな映画でした。 ウィスキーとタバコの煙と、赤い車から漂うレトロ感。この映画のさりげなく懐古趣味なところ、良かったと思う。 ストーリーとしては、現実と妄想の狭間を漂う家福 (西島秀俊) が中心である前半はやや退屈ですが、存在感ある渡利みさき (三浦透子) の登場によって、ドラマが大きく動き出す。 家福とみさき、それぞれ苦しさや喪失感を抱えて、その重さを抱えきれずにそれでも生きていて。そんな二人による、人生のつかの間の「並走」。最後の二人の抱擁は、友情とも愛情とも違う、と思う。一人の人と人として、お互いに今まで本当にお疲れ様、、そしてこれからの人生の健闘を祈る、、。そういう含みのある、ひとまず人生の「ノーサイド」であり、ここが二人の長い旅路の分岐点 (別れ) に見えました。 思えば、映画全体に漂う「死」の重くるしさを緩和するように、海岸線沿いを走る赤い車のフォトジェニックな存在感がありました。その姿はいつでも軽快で、そして洒脱だった。 題名からして人生を車やドライブに例える含みはあると思うけど、私はただ映画の広告塔やイメージとして、この赤い車は大正解だったな、と。
[インターネット(邦画)] 8点(2022-03-21 14:19:48)
10.  コーダ あいのうた 《ネタバレ》 
冒頭、採れたての魚を売るために、漁港で父と兄に代わって交渉するルビー (エミリア・ジョーンズ) の姿。そして、汗も流せず、キレイな洋服に着替える間もなく、魚臭いまま学校へと向かう・・。彼女は優しいから顔や態度には一つも出さないけど、家族の「通訳」として多くを犠牲にしてきたであろう、若い彼女の半生を想像するだけでちょっと泣けてくる。 この映画の面白いのは、音楽の使い方。まず、学校 (合唱部) と家 (家族) を二つの音楽のスタイルに例えて、対比的に描いてる。学校がバークリー音楽大学を目指すほど芸術志向の音楽なら、彼女の家族たちは生き方そのものに「ロック」を感じさせる。 なぜって? 手話で風を切って下ネタを連発する彼らの姿、、これは少なくともオペラやクラシックじゃない (笑) この映画は「手話」を音楽に例えて、表現の一つのスタイルである、と言っているんじゃないかな。大切なのは、日本語、英語、、そして「手話」も同じで、それは "話し方" という表現であり個性だし、その人の心や本質はそれによって変わるものではない、ということ。もちろん、どういう人生を選んで、どういう歌を歌っても、ルビーはルビー、彼女が彼女であることにも変わりはない。 個性豊かな登場人物たちと多くの歌と音楽による、生き方と表現による人生のハーモニー、とも言うべき映画でしたが、むしろ見た目からは伝わらない「内面」にある本質、耳には聴こえてこない心の「声」、、そこを描いているところが素晴らしいと思えます。
[映画館(字幕)] 8点(2022-02-27 14:49:28)(良:1票)
11.  騙し絵の牙 《ネタバレ》 
※ネタバレございます※ レンタル中、二日連続で観ました。いやあ これは面白い。 原作含めて、大泉洋へのあて書き、というPRの時点からミスリードは始まっています。いかにも策士たる彼が主演ということ、表題も全部ひっくるめて「騙し」を匂わせて、でも実はテーマは騙しではない、という「騙し」の映画ですよね。 とある大手出版社の覇権争いの果てに、まさかの平社員? よもやの高野恵 (松岡茉優) が、全ての曲者たちを出し抜いちゃった、という爽快な結末。彼女には、彼らのような権力もなく、おそらく派閥に関心もなく、そして出世に対する策や野心もなかった。(と、思ってる) その代わり彼女には、誰にも負けない「本」に対する愛情と、出版という仕事に対する情熱があった。結局は、あるべき正しい「心」に勝利の女神が微笑んだ、という、根っこはシンプルな「サクセスストーリー」ということです。 脚本は完璧に近いが、、一つだけ。伊庭惟高 (中村倫也) は、アメリカで大きな仕事をしてきたわけじゃないですか? であれば、帰還した彼が東松 (佐藤浩市) に言い放った台詞は、「英語」にしたらなお面白かった気がします。一瞬、キョトンとする東松に向けて、もう一度日本語で言い直す、、この方がより刺激的だったと思う。もし、この脚本に「エンピツを入れる」ことができたなら、私がお願いしたいのはここだけかな (笑)
[インターネット(邦画)] 8点(2022-01-26 23:41:16)(良:2票)
12.  mellow メロウ 《ネタバレ》 
まず喜ばしいのは、最近は作風も変わりつつあった今泉監督が、原点回帰の (ユルくて愉快な) 映画を撮ってくれたこと。待っていました、こういうの。恋心な男女数名が、お花屋とラーメン屋と学校の屋上で、そしてたまに青木家で、好きだ、キライだ、愛がなんだと語り尽くします。ロケーションが限定されているという、さながら舞台劇でありながら、次の展開が待ちきれないという素敵な脚本。冒頭のラーメン屋の別れる別れないの押し問答、ここからすでにらしさ全開で。シチュエーションはシリアス、でも会話の内容はどこかピントが外れていて、そしてムダにだらだら長いのが確信犯的で笑えます。そしてそして、、今泉監督の信者にとっては、青木家の場面こそが真のクライマックスといえるでしょう (笑) ともさかりえたちの変態夫婦っぷりには、大いに笑わせていただきましたよ。ホントは笑っちゃいけないところだからなおさら。 (三人も笑いこらえて演技するの大変だったろ、これ) 女子高生三人の微笑ましい関係なども好きでした。・・にしても、三人という状況にやたら執着しますね、昔から。そしてお花と花束の使い方、初めから最後まで素敵でしたね。みんなギリギリでハラハラしましたが、その滑稽さは相手を想う自分の気持ちに正直すぎるゆえ、だからその気持ちを今泉監督は全て肯定します。そして、このフワフワっとした爽やかな気持ちたちにまだ名前がないなら、僕は "mellow" と呼びたい。 今泉監督よ、ありがとう。どうかこれからもたくさんの迷える気持ちたちを救いたまえ。
[映画館(邦画)] 8点(2020-01-20 17:43:16)(良:4票)
13.  ラストレター(2020) 《ネタバレ》 
ラストレター、それは25年という時間を越えて、「Love Letter」に認めた (最初で) 最後の恋文。 現代劇でありながら、頑なにインターネットやメールが登場しません。想いを込めて、手紙を書くこと。期待と愛を込めて、手紙を投函すること。首を長くして、手紙を待つこと。こんな気持ちが懐かしいけれど、廃れつつある今となっては逆に新鮮に感じるから不思議なものだ。岩井俊二監督は、直筆 (という行為) にいつまでもこだわり続ける・・。 そして、、あのトヨエツと中山美穂さんが、何ともやさぐれた役でご登場します。「Love Letter」の二人とは縁もゆかりもない役ですが、私はどうしてもあの茂と博子のその後の姿にも思えてなりません。 (でなければ、こんな役にあえてこの二人をペアで使う必要は全くない) 「お元気ですか? 私は元気です」 忘れられないあの感動から25年、振り返れば時間とはただただ残酷だった。 ・・いや違う、その逆かもしれない。きっと時間のおかげ、なんだろう。過ぎゆく時間とともに、その一瞬がいつまでも輝きを増すのだ、きっと・・。
[映画館(邦画)] 8点(2020-01-19 01:00:10)(良:1票)
14.  川っぺりムコリッタ 《ネタバレ》 
本作はご存知、荻上直子監督。 ご飯のうまそうな映画、、そこはブレることなく継承しながらも、人の描き方は過去作品からかなり変化が見られます。例えば、「かもめ食堂」「めがね」では、登場人物たちの過去を明かさず、あえて素性をぼやかすような作りでしたが、本作の彼ら (山ちゃん、島田さん) は過去の苦悩をみなに吐露していて、実に人間味のある描き方をしています。 そして、テーマである「再生」を意識したのか、出演俳優も (常連組から) 一新されているし、「川っぺり」は監督ご自身の新たなスタートでもある、、そういう意気込みを感じさせる映画でありました。 特筆としては、「死」にまつわるエピソードの数々、、そのインパクトが大きい本作ですが、死を感じてさらに生きる意欲、つまり食欲が湧くという、紛うことなき「食」の映画であることは間違いありません。 しかし、うれしいことに監督の売りでもある "ほのぼの感" はまだ健在であり、これは鑑賞直後よりは、後からジワジワと評価が上がってきそうな予感がしてます。 さてと、、イカの塩辛、買いに行こっと (笑)
[インターネット(邦画)] 7点(2024-03-11 22:34:17)
15.  マイスモールランド 《ネタバレ》 
本作は監督をノーチェックで鑑賞したのですが、サーリャ (嵐莉菜) の撮り方が優しく繊細だし、観終えた後にこれは女性の監督だろうな、、と予想した。当たっていた。抑制の効いた演出は、是枝裕和氏の制作によるものも大きいのだろうが、川和田監督としては、これが初めての商業長編映画のようで、これからがとても楽しみな監督が登場したように思う。 本作は「クルド難民」であり在日クルド人たちの物語ですが、サーリャ目線の青春映画に仕立ているので、重たいテーマでありながら、映画自体の間口はとても広くて、観せ方がうまかったように思えます。あのお父さんを主人公にしていたら、きっとゴリゴリのクルド難民映画になっていた気がしますよ (笑) そのお父さんですが、娘が男友達を家に連れてきたときに、一緒にご飯食べて行きなさい、と歓迎した。これは、クルド人は、日本人を差別しない、ということ。でもそのお父さんですが、娘が口紅をして出かけるようになったときに、彼にはもう会うな、と言った。クルド人だろうが、日本人だろうが、やはり "お父さん" は万国共通だ。もちろん、女の子が恋したらキレイになりたいのも、万国共通だ。 この映画を観ても、クルド難民の問題は何一つ解決されない、でも、彼らも本質的には、我々と何一つ変わらない普通の人たちじゃん、、ということを、私という一人の日本人が理解した。 しかし、私があのコンビニの店長だったら、やはり同じようにすると思う。だって、いくら彼らがよい人たちだとしても、不法滞在は「違法」だから。今度は私が捕まっちゃうから。 つまり、人間の問題よりは、その法律ってやつこそ、頭でっかちで変わることを知らない最も厄介たるものだ。 ・・と言いつつも、法律でコントロールしないと、この国は不法滞在者で溢れてしまって、本当に "無法地帯" になってしまうのだろうし、国と人と法律ったら、何でこんなにややこしいのか。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-12-18 23:28:58)
16.  アンダーカレント 《ネタバレ》 
原作未読です。 表題「アンダーカレント」とは、潜流という、表層部の海流と独立して海面下を流れる海流を指す。本作で言うなら、人間の心のうち、のことだろう。自分でも理解できないものを、それが他人だろうが、夫だろうが、なおさらわかるはずもないお話。だから、結論を求めずに、その展開を楽しむつもりでご鑑賞。 映画としては、メタファーに富んだ恋愛サスペンス映画、というところでしょうか。回想場面の多様がやや気になりますが、それはストーリー進行上、かなえ (真木よう子) の脳裏に一瞬だけ浮かんだ光景であり、凡庸な映画にありがちな説明不足を補うものとは異なるものでした。 その彼女が水の中に沈んでいく光景が本作を象徴します。その姿は洋服が膨張してお腹が膨らんでいるように見えて、まるで胎児を宿っているようにも見えました。これは、彼女の深層心理的な願望の現れなのかもしれませんね。 悟 (瑛太) は、彼女の元を去りました。本作中、嘘、という言葉が飛び交いますが、愛情を失ったのに、妥協や慰めで共にいること、いようとすること、それは偽りの愛だし、それこそが本当の「嘘」ではないだろうか。 ストーリーから話逸れますが、真木よう子さんの代表作は、「ゆれる」だと思ってます。本作は、消えた夫、現れた (謎の) 男、怪しげな探偵、、そんな三者三様の男にゆれる女の恋心、、といった様相で、彼女にとって久しぶりの代表作になりそうな気がしてます。 江口のりこさんとは「パッチギ!」の名コンビですね。あのお二人が (丸くなって) 十何年ぶりに再会したようにも見えて、私は密かに笑っておりました。 なお、本作にアクセントを加えていたのは、間違いなくリリーさん。その得体の知れない感じが、まさにお家芸であり、あそこでまさかのカラオケ熱唱には笑わせてもらった。歌は「裏切り者の旅」(笑) ちなみに、喫茶店 → カラオケBOX → 遊園地 → 海辺のドライブ、、って、サイレントで観たら、二人の不倫ドラマに見えるよね、これは。 その探偵に会う時は、なぜか美しく化粧していたかなえさん。女ごころは複雑ですかね。 そうそう、本作はご存じ今泉力哉監督ですが、澤井氏と脚本を共同執筆するようになってから、作風がシリアス路線に変わった気がいたします。近年では「mellow」「街の上で」が今泉監督個人による脚本ですが、この二作は笑いもあるし、個人的にはこちらの方がいいかな・・。例外的に本作で監督のこだわりが最も感じられるのが、銭湯。 靴屋、花屋、パン屋、古着屋、そして、風呂屋。 原作ありきとは言え、ロケーション設定については、「らしさ」を貫いていてうれしいところ。 会社、オフィス、、(つまり、サラリーマン、OL、社長さん、ね) こういう堅苦しいのは監督の映画では見たくないので、そこだけは、これからもよろしくお願いいたします。
[映画館(邦画)] 7点(2023-10-09 11:34:28)
17.  君たちはどう生きるか(2023) 《ネタバレ》 
まるで「千と千尋の神隠し」のように隠喩を散りばめた、「ラピュタ」のような冒険活劇、といった作風ですが、そこに戦火の混乱期という時代設定があり、まさに監督宮崎駿、人間宮崎駿の集大成、、と言えそうです。 その内容については、観終えたばかりの浅い解釈を書き並べても安っぽいし、それこそラピュタの方が、千と千尋の方が、、それを延々と書き並べても仕方がない。よって、本作を通して直感的に感じたことを一つだけ。 近年のジブリ映画は、宮崎駿監督 (個人) の哲学的思想が色濃く出ていて、あまり好きになれないところがありました。そこは、まさにラピュタを夢観たクリエイターたちの、歯がゆくも、手出しできない聖域であったと思います。しかし、最後と銘打つ本作を観るかぎりでは、ジブリはまた、ラピュタや千と千尋をやってもいいんだよ、、という、御大の置き土産であり、ありがたい「お言葉」のようにも思えます。 堂々と言うが、エンディングの歌は私の心には全く刺さりませんでした。最近の若いアーティストの歌全般、ほとんど心に響かないし、本作こそ、ユーミンでいいやん? って、心底から思った私は、はるか昔にその感性は取り残されているのかも。しかし、思うに宮崎駿が最後にこの「歌」だから、若い後進たちは、ユーミンに縛られることなく、誰に気兼ねすることなく、これからは好きな歌を自由に歌っていけるはず。 後進たち、クリエイターたち、、ジブリの栄枯盛衰を共に生き抜いた君たちへ。 そして、君たちはどう生きるか。 これは、"監督" 宮崎駿 、からの言葉です。
[映画館(邦画)] 7点(2023-10-03 23:21:46)(良:1票)
18.  MEMORIA メモリア 《ネタバレ》 
全体的に長回しが多くて、総カット数は少ない。だけどカメラがめまぐるしく人の動きを追うことはなくて、あくまで固定ショットとゆっくりとした移動ショットが主体。 舞台は南米のコロンビアですが、あえて観光名所的なところは外していて、どこか怪奇現象ドキュメンタリーのようなところがある。 ジェシカ (ティルダ・スウィントン) の風貌がどこかオカルト風なのも、うまいキャスティングではないだろうか。 そして、映画を包み込むような静寂の中において、ジェシカの脳内に響き渡る怪音、無機質な機械音、人間による楽器の演奏、、ありとあらゆる「音」だけが異彩を放ち、映画にリズムを与えているような節がある。 あの「音」が何に聞こえるかもそうだが、個人的には、この映画自体が「心理テスト」のようなものと思っていて、観た人それぞれの心が感じたもの、それが答えでいいと思ってる。例えば私なら、この心理テストから浮かんだのは、これはジェシカにまつわる輪廻転生と、その既視感 (デジャヴ) の物語。これは音によって導かれた、ジェシカの前世を巡る旅、と考えている。もしかしたら、ジェシカは、頭蓋骨に穴の空いた太古の少女の生まれ変わりなのかもしれない。だから、あの「怪音」は少女の頭蓋骨に風穴を空ける音か、あるいは、この化石を発掘した掘削機の音である、と私は勝手に想像するが、全ては憶測の域を出ない。(だが、そう考えることによって、この得体のしれないストーリーは、つじつまが合う気がしている) 魚の鱗を取る男のエピソードはこれから考えるとして、飛び立つ宇宙船の遊び心にはジャ・ジャンクー監督「長江哀歌」へのオマージュを感じた。 この世には、化学では説明のできない "何か" が存在すると思うし、そういう知的探究心のある方には強くオススメしたい映画ではあると思う。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-02-05 11:08:53)
19.  漁港の肉子ちゃん 《ネタバレ》 
さんまさんがプロデュースって、どこまで制作に携わってるかわかりませんけど、映画の内容だけで評価するなら、私はよかったと思いますよ。 肉子ちゃんのビジュアルと関西弁はアニメ映えするし、STUDIO 4℃による北陸の港町のキレイな風景に、美味しそうなご飯の数々も素晴らしい。 そして肉子ちゃんのキャラによるものだろう、親子ものの切ない話でありながら、ウェットなシーンでもなぜか賑やかで温かくて。でも、キクコちゃんが (肉子ちゃんの) 実の子ではない、というのは、誰がどこから見てもわかるので (笑) 、驚いた人いるのかなあ。 あと個人的には、最後に逃げられた (読書家の) だんなさん、どこかで再登場したら面白かったと思うけど。 トトロのオマージュは遊び心があって良し。しかし言っちゃあなんだが、肉子ちゃんのビジュアルとシルエットなら、トトロってよりはむしろ 魔人ブウ だよね (`O´)
[インターネット(邦画)] 7点(2023-02-02 21:49:50)
20.  前科者 《ネタバレ》 
※ネタバレございます※ まず映画が始まると、登場人物たちの名前や職業がいちいち字幕入りで紹介されることに戸惑います。(親切だけど、ちょっとわずらわしい) 続いて、登場人物たちを説明するための回想シーンが頻繁に登場し、早々に嫌気がさす。(できるだけ時系列で語るのが映画やろ) しかし、この親切丁寧な作りって、誰が観てもわかりやすく、例えば、受刑者の更生を目的として刑務所で上映することも想定しているかも、、そう考えることにして、自分を納得させることにしました。 ちなみに私ですが、保護観察官の存在は知っていました。しかし恥ずかしながら、「保護司」という職業を本作で初めて知りました。無報酬 (!) なので、職業という言い方は相応しくないかもしれないけど、本作を観たかぎりでは、その苦労や献身には本当に頭が下がる思いです。 映画としては、保護観察官との違い、保護司という民間ボランティアが抱えている問題、、そのあたりにはあまり触れることなく、犯罪関係者たちが織りなす (ありがちな) 感動系ドラマに終始してしまった気がします。まあ、そもそも題名が前科者、ですからね、、私が保護司 (というテーマ) にこだわり過ぎたのかもしれません。 あと、保護司 (阿川佳代) が任務中に元殺人犯 (工藤誠) と一つ屋根の下で牛丼食べたりする場面があったけど、ここはかなりハラハラして見てました。実際にここまでするものでしょうか。かりにも相手は人殺したことのある人だし、もし相手が元性犯罪者のケースなら、これはかなり危険なシチュエーションですよね・・。相手の信頼を得るためとは言え、自分の身を守るためにある程度の距離感は必要だろうな、と、個人的には感じた次第です。 出演者については、有村架純が見事な新境地で魅せたし、石橋静河の役も面白い。(最後まで誰かわからんかった笑) そして、、特筆すべきは、森田剛のキャスティングだろう。吉田恵輔監督の「ヒメアノ~ル」をまだ未見の方は、必ず先にそちらを観ることを強くオススメいたします。なぜなら、全く関連性のない2作ですが、(ヒメアノ~ルの) 彼には本作のように正しい人生をやり直して欲しかった、、と強く思えるような設定になっているからです。 「八日目の蝉」から「朝が来る」の永作博美さんも然り。 時に映画は、他作で罪を犯した "前科者" に対して、その報われなかった魂を救済することもあって、少しだけ幸せな気分にさせてくれます。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-01-24 00:16:49)
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