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1.  赤い影 《ネタバレ》 
「なんてバカな死に方なんだ」。 この幕切れの台詞が面白すぎて、たとえネタバレと言われてしまおうがふれずにはいられません。 そう、この作品の主人公は最後に死んでしまいます。 極めて唐突でショッキングな死の訪れには呆然とさせられてしまいます。 この男、実はある能力に恵まれていたにもかかわらず、それに気づかずむしろそういった能力の存在に懐疑的な立場を持つ人物だったのです。 自分の持つその能力に気がついていれば、あるいはその能力の存在を認めていればこの死はさけられたかもしれないのにということで出てきた嘆きの台詞なのです。 自分で自分の正体に気づいていない系の先駆けとなる作品でしょうか。「エンゼルハート」や「シックスセンス」、「アンブレイカブル」、「ファイトクラブ」、「アイデンティティー」など、元祖といえるのはラヴクラフトの「インスマウスをおおう影」あたりの文学作品なのかな。 物語の最終盤で主人公と一緒に目が覚めるような感覚が楽しめる作品群です。 ところでロバート・デニーロも出ている「レッドライト」という作品が同じテーマを扱っていて、視点を変えただけの同じ作品と言ってもいいくらいです(言い過ぎ)。 だから、ははぁん、これは同じテーマの光と影ということで「赤い影」に対し「レッドライト」というタイトルにしたのかな、と思ったのですが。 実はこの「紅い影」というタイトルは日本だけのもの。原題はドントルックバックナウという全く違うものでした。 「レッドライト」の製作陣がこの映画の日本語タイトルを知っていてもじって付けた? それも不思議な気がします。 観光シーズンでないベニスを舞台にした寒々とした背景はなんとも魅力的です。 傑作。 この映画には謎にものすごくエロチックなシーンがあります。 でもこれが夫婦のセックスだということになると、まったく興奮しないのが不思議。 不倫ものやワンナイトものだとそれほど過激な描写がなくても興奮するのにね。 そりゃ映画が不倫ものばかりになるわけだわ。 お子様は見ないようにね。
[DVD(字幕)] 7点(2024-05-23 09:17:45)(良:1票)
2.  ラストコンサート
考えてみれば映画産業の斜陽化がいよいよ深刻になった1970年代って、映画館へ訪れなくなった観客を呼び戻そうとさまざまなジャンルが生み出された面白い時期だったんだな。 ヘイズコードが撤廃されて人の情動に訴えかける表現が比較的自由になったからということもあるかもだけど。 アメリカンニューシネマで若い世代を、 ロートルスター総出演のはりぼてディザスター映画やノスタルジア映画で古きよき時代を思い出したいオールドファンを、 政治や裏社会をジャーナリスティックに扱った映画でビジネスマンたちを、 それまではB級の素材でしかなかった子供向けテレビで放送されるようなSFやホラーやそもそもそれまで映画の題材にならなかったような子供の恋物語で子供たちを 懸命に映画館へ呼び込もうとしたわけです。 そんな中で今更こんなベタベタなメロドラマがウケるものかと思われながら大ヒットを記録したのが「ある愛の詩」。 ぼくは「詩」の文字を「うた」と読むことがあるというのをこのタイトルで初めて知りました。 難病悲恋ものはメロドラマの鉄板ネタとして今でもよく作られるのですが、この「ある愛の詩」以後類似の作品が何本も公開された覚えがあります。 この「ラストコンサート」もそんな中の一本。そろそろこのテーマの映画が飽きられはじめた頃の作品だったような気がします。 「小さな恋のメロディ」で見覚えた安心の日本ヘラルド映画のマーク。 この日本ヘラルド映画が配給だけでなく制作のために出資までした映画です。 出資が日本、スタッフキャストはイタリア、使用言語は英語、舞台はフランスというばかに国際的な映画でした。 日本が出資しているからなのか、60年代70年代頃の日本の少女漫画の雰囲気を強く持っている感じがします。 実際、この映画をわたなべまさこ、水野英子、本村三四子諸氏の絵柄で全く違和感なく脳内再生することができます。 20歳の女性が中年男性に一目惚れし積極的にいいよってくるという幕明け。 今見たら、これは男の妄想そのものじゃないかとフェミの人たちに攻撃されておかしくない展開。 でもこの映画が作られた頃の意識では女性から男性に迫っていくというのが、かえって女性の側の妄想であり憧れであったということもあるのです。 これは当時の少女漫画を見てみるといくつもの例を発見することができるでしょう。 だって男女平等だもン!みたいな。 現在の価値観で昔の作品を評価することの難しさを感じるところでもあります。 まあ、個人的な思い出補正を越えて見る価値がある映画かどうかは不明ですが、そこまでの話題作でもないのにDVDが売られ続けているというのはそれだけこの作品を求める人がいるということなのでしょう。 ヒロインが白血病であることは序盤で既に明かされていて結末は最初から分かりきっていますので、衝撃を受けることなく安心して泣くことができる映画だと思います。 涙を流したい時にはどうぞ。
[映画館(字幕)] 6点(2024-05-11 23:35:59)
3.  イニシエーション・ラブ
映像化不可能とされていた綾辻行人の「十角館の殺人」がドラマ化されるということで話題になっているらしい。 近年の日本のミステリーは叙述トリックを使用したものが多いので、基本的に映像化は困難なところをあえて映像化にチャレンジする映画人も結構いるようです。 そんな作品を観てみると、やはりこれは本当に映像化不可能だったんだなって感想になることがほとんどです。 イニシエーションラブは映像化に成功した希有な例とも言えるのではないでしょうか。 しかもその映像化を可能にしたテクニックというのが、たった一言、「俺あっちゃんのために痩せるよ(実際は、あっちゃんのところは役名)」を追加することだけだというのには目から鱗が落ちる思いでした。 やはり頭がいい人はいるものだなあ。 原作はこの作者さんの奇跡の一作ともいえる超傑作ミステリで、一時期書店やヴィレッジヴァンガードに行くたび平積みにされているのを目にしたもの。 つけられたポップには「最後の一行で全く違う物語になる」と書かれ、ぼくはそれに非常に興味をそそられて読みました。 実は原作の結末は考えオチと言えるもので、直感的に理解しにくいんです。 「最後の一行で全く違う物語になる」と聞かされて読んだはいいものの、その最後の一行の意味が理解できず検証サイトなどを探してやっと合点がいったという読者も多いでしょう。 スッキリと気持ちよく読み終われる小説ではなかったわけですね。 映画ではここのところを非常にわかりやすく直感的に受け入れやすく作られています。 しかも原作と違って爽快感のあるラストとなっています。 これも映画ならではの変更点で、映画と小説という違った二つの表現方法に見事に対応できた作品と言えるでしょう。 人が死なないミステリ(胎児を人であると解釈するならば別ですが)であり、さらに言えば犯罪が起きないミステリという点で非常に珍しい他に例を見ない作品と言えます。 2部になった構成を、原作ではカセットテープのA面B面になぞらえていて、これは作品のトリックを暗示していると同時に、カセットテープが全盛だった時代を想起させるノスタルジア文学の体裁を可能にしています。 映画もそんな時代感を出せていれば、もっと訴求力があったと思います。 自作のカセットを作ってウォークマンで聞いたりドライブの時にカーステレオでかけていたことを懐かしく思うかたも多いですから。 キャスティングについては、ぼくは文句はありませんが、違和感を感じる人がいるのも理解できます。 アイドルにはアンチのかたもいますからね。 原作を読んで意味がわからなかったというかたは、観てみてはいかがでしょうか。
[インターネット(邦画)] 6点(2024-04-02 14:18:50)
4.  アマデウス
モーツァルトと言う人がかなりの変人だということは、黛敏郎氏の「題名のない音楽会」で読んで知っていました。 これは同名のテレビ番組の書籍版なんですが、これに対応する回は見ていません。 ショーマンシップがあって偏向バリバリの黛氏なので、きっと面白い番組作りだったんだろうなと思い、見れなかったことを残念に思っています。 この番組は同じタイトルで司会進行を替えて未だに続いてますが、黛氏時代の過激さがどんどん姿をひそめていってただのオーケストラの出る番組というだけになってしまいました。 僕は進行役が武田鉄矢氏になったときにもう見るのをやめました。 一方で、モーツァルトは実は殺されたのだという話も昔から有名で、「モーツァルトの暗殺」なんて小説が出ていましたが、これ以前にもプーシキンの作品とかあるみたいです。 僕は高校生のころこれを組み合わせて、性格のせいで殺されてしまうモーツァルトなんていうお話を書こうかなと思っていた矢先に東京新聞の記事でピーター・シェイファーによる戯曲「アマデウス」が発表されたという記事を見て「ああしまった先を越されたか」と思ったものでした。 でも別に先を越されたも何もなくこの後も森雅裕氏の「モーツァルトは子守唄を歌わない」などの作品が出てきたのですから、まあ要するに本当に書く気なんかなかったわけですがね。 この「モーツァルトは子守唄を歌わない」はなんとベートーベンが探偵になってモーツァルトの死の謎を追っていくというミステリーで、ベートーベンがまるで安物のハードボイルドの探偵のような感じに描かれているという珍品です。 森雅裕氏はこの作品で江戸川乱歩賞を東野圭吾氏と同時受賞をするぐらいの大した作家さんなんですが、常習的に出版社の人と喧嘩をするために今ではどこの出版社からも作品を出してもらえないという豪傑らしいです。 モーツァルト絡みの人ってやっぱり変わり者が多いみたいですね。 この映画アマデウスの原作になったのは先述した舞台劇なんですが、こちらはほぼサリエリのモノローグで語られ、その合間に演者たちによるエピソードが演じられるという舞台です。 これを映画では、発狂して自傷を試みたサリエリに懺悔をうながすためにやってきた司祭にサリエリがことの一部始終を話すという形で物語が進められていきます。 ナレーションの多い映画は鬱陶しいのでこの変更は非常に良いです。 背景となるウィーンの宮廷がこれでもかというほど戯画化されていて面白いです。 特に皇帝のを演じたジェフリー・ジョーンズは最高です。 宮廷のお抱えの音楽家たちはサリエリを除いてみんな漫画からそのまま飛び出してきたような感じで楽しくなります。 でもこの人たちがそれぞれの思いでモーツァルトに意地悪するんですね。 嫌な奴らなんです。 サリエリのモーツァルト殺害の動機は、モーツァルトの才能への嫉妬と羨望。 才能は神からのギフトという考え方が根っこにあるから、まあ、日本人に想像できる範囲を超えています。 サリエリはどういう方法でモーツァルトを殺そうか思いつかないまま結局過労でモーツァルトを死に至らせてしまいます。 この過労死の直接の原因となるレクイエムの口述作曲がすごい! モーツァルトは何十段もあるようなスコアを口伝えでサリエリに頭に浮かぶと同時に伝えていくんです。これを書き留めるサリエリもただものではない! まあ実際にこんなことができただろうかというと難しかっただろうと思いますが、こりゃ過労死もするわと納得の情景でした。 映画の中でモーツァルトが「ここで一休みしよう」と言って作業を中断したところが実際に彼の絶筆である、とか、映画でこの口述筆記した部分は、レクイエムのほかの部分と違う五線紙が使われている(サリエリが持ち込んだ?)、とか音楽愛好家なら誰でも知っているようなモーツァルトにまつわるエピソードが全編に散りばめられていて、思わず「あー知ってる知ってる」という満足感で楽しめてしまいます。 モーツァルトの愛好家がどう思うかは知りませんが、格調高い一方、時には漫画的で面白いよくできた映画だと思います。
[レーザーディスク(字幕)] 8点(2024-03-05 22:55:27)(良:1票)
5.  激突!<TVM>
「いや激突しとらんやないかい!」というのが定番のツッコミであるこの映画。 まあ原題は決闘とか一騎討ちの意味だから、この場合の「激突」っていうのはスポーツ興行でいうところの「激突!因縁のなんとか対なんとか戦」みたいなノリでつけたんでしょう。 当時の映画配給会社はそういう感じの人が多かったってことなんですかね。 原作は数十ページの短編。 それをテレフィーチャーとは言え一時間半近くに伸ばしているので少々間延びした所が感じられるのは仕方がない。 しかもCMをところどころまたぐことを前提にして作られていると考えればサスペンスを維持するのは難しいと思うのは普通でしょう。 日曜洋画劇場で放映したときは二時間枠だったのでCM明けごとに数分ぶん巻き戻していたくらいだし。 しかし見てる側が少しだれそうになると姿を見せない相手が異常な行動をエスカレートさせたり、主人公の心理が追い詰められるアクシデントが次々と発生したりして緊張がますます膨れ上がるようにつくられています。 まさに緊張と緩和。 敵役の強さをインフレさせて読ませるバトルマンガの論理ですね。この辺りはうまいです。 だからご家庭のテレビでも最後までハラハラしながら見られたのです。 スピルバーグはこの作品の成功を元手についに劇場用映画「ジョーズ」で大ヒットをとばし、以後の大活躍につなげます。 ハリウッド映画が斜陽と言われた時期にこういう人が現れてくるというところ、歴史の巡り合わせの面白いところですね。 ネタバレはしたくないので(いやしてないか?)内容については触れないでおきますが、どんな異常者が出る映画を見ても「いや、こんな人間は本当はいないから」と言っていた父親もこの映画だけは「うーん」と唸って見ていました。 父は仕事で自動車を毎日使っている人間でしたから。 脇道へ逸れることができない高速道路で煽り運転にあったことがある人だったら本当に恐怖の感じられる映画だと思います。 日頃自動車を使っていない人にとってはちょっとピンとこないところがあるかもしれないですが。 何人もの人が死ぬけれども「実際はこんなことないよね」と思って見てられるホラー映画ではなく、明日現実に自分に降りかかってくるかもしれない恐怖を描いた映画です。 しかもそれを啓蒙や注意喚起みたいな交通安全特集みたいなものにせず、純粋な恐怖映画として作ったところ。 スピルバーグさんブレないですね。
[地上波(吹替)] 8点(2024-02-19 21:49:32)
6.  哀愁
美男美女による悲恋物語。 ルッキズム批判の現在のハリウッドでは作れない映画でしょう。 「哀愁」という日本語タイトルは、いささか微妙だと思います。 映画の前半部分は戦時の暗い世相ということはありますが希望の感じられる雰囲気で語られます。 時々コミカルな描写も挟まれるくらい。 だからこのタイトルはやや結末のネタバレという気がします。 まあこの映画が輸入された頃は 漢字2文字タイトルが流行りだったようなので、漢字熟語のリストから順番につけられていったのかも。 もしかすると他の映画が「哀愁」になってるってこともあったかもしれません。 お話は第一次世界大戦が舞台ですが、動員が格段に増えた第二次世界大戦以後同様の話が何本も作られています。 「シェルブールの雨傘」からロックオペラ「トミー」まで。 日本映画にも何度もリブートされています。 緩やかな反戦映画と言えるかもしれません。 「蛍の光」を三拍子に編曲したテーマ曲は、サウンドトラック盤が手に入らなかったため古関裕而氏が耳コピして楽譜にしたものが販売されたそうです。 今でもデパートなどの閉店時にこの「別れのワルツ」が流されるごとに小関氏側に著作権使用料が支払われているとかいないとか。 うまいことやったなあ。 そうそう通天閣で有名なビリケンさんもこの映画がもとですよ。
[DVD(吹替)] 7点(2024-02-16 01:08:24)
7.  アメリカ交響楽
原題は「ラプソディインブルー」。 ジョージ・ガーシュウィンの言わずと知れた代表曲。 大胆にジャズのイディオムを取り入れたセミクラシック楽曲で今もよく聞かれます。 「のだめカンタービレ」でもサブテーマ曲として使われていましたね。  僕が最初に聞いたバージョンは グレン・ミラーによるスイングアレンジでしたが、これもとても楽しい名曲です。 このアレンジでは原曲の冒頭大胆なクラリネットのグリッサンドがないのがやや寂しいですが。 とはいえこの原曲のオーケストラアレンジはガーシュウィン自身がしたものではないようです。 作曲は巧みでも編曲がやや苦手だったらしく彼のほとんどのオーケストラ曲はグローフェ他の人の手を借りたものだと言います。 その意味ではこの「アメリカ『交響楽』」 というタイトルはいささか的が外れていると言えるかも。 『交響曲』じゃないだけましかな。 物語中で交流があることが描かれているモーリス・ラベルは「オーケストラの魔術師」と呼ばれるほどの人だったのに、ガーシュウィンにオーケストレーションを教えてあげなかったのかな。 食えないじいさんだよね。 まあどちらも多忙な人だったということがあるのでしょう。 ガーシュウィンが亡くなって数年後に作られた映画ということで、生前に交流のあった当人が何人も出演している映像がとても貴重。 特に「スワニー」を歌ったアル・ジョルスンの映像は顔を黒塗りするという芸の性質上現在のアメリカでは事実上見ることが不可能でしょう。 日本のコンプライアンスは健全なのです。 長い指揮棒を振りまくるキングオブジャズ、ポール・ホワイトマンの映像も見られます。これはジャズとクラシックの融合が世に現れた 貴重な瞬間の再現なのです。 ショービジネスの分野から多彩な人材がクラシック音楽の変革を目指していく。 こんな時代がかつてあった。 それを教えてくれる映画です。 現在のクラシック音楽の世界というのがやや硬直し面白くないものに見えるのは何でですかね。
[DVD(字幕)] 7点(2024-02-16 00:57:49)
8.  メリー・ポピンズ
原作者と映像作品製作者の間のわだかまりで起こってしまったあまりに不幸な事件が毎日の報道を賑わせていますが、この「メリー・ポピンズ」もウォルトディズニーと原作者の間で葛藤があった作品として知られていて、「ウォルトディズニーの約束」という映画にもなっています。 トラバース女史の原作は 英国児童文学伝統のエブリデイマジックもの、日本で言えばドラえもんみたいなものです。 それに対して映画化されたこの作品はいかにもアメリカ的な家族再生の物語へと変えられています。  メリー・ポピンズが初めて訪れた頃のバンクス家は、 子供達のしつけはナニーに任せきり。 父親は仕事一筋。 母親は女性解放運動に夢中 というバラバラな家庭。 そこへメリー・ポピンズという異物が現れることにより最後には家族の結束が強まるという物語、いかにも分かりやすいアメリカンストーリーに変えられています。 今見ても面白いというのは、こうした普遍的な物語なのでということもありますが、原作が舞台としたであろう明治大正時代頃の女性啓蒙運動、映画が制作された1960年代70年代頃のウーマンリブ運動、そして現在のフェミニズムの動向と 見事にシンクロしていることです。  こうしたことが原作を映像化するということ、映像化された作品を時間を隔てた現在見るということの醍醐味であると言えるかもしれません。 内容的には短いエピソードの積み重ねで、芸達者な演者たちを揃えて愉快な寄席芸を見ているようです。 大らかなアメリカンジョークとブラックな英国ジョークが交互に 飛び出してくるところはまさにハイブリッド映画と言えそう。 この映画のひとつの売り物である実写とアニメの融合はディズニーが極めて初期のアリスコメディからやっているものなので技術的にはさすがに練れて安心して見られますが、ディズニーのあまり好きでない絵柄の時代の絵なのでちょっとそれは残念でした。 歌曲も数多くどれも親しみやすい名曲なのでミュージカル好きの人なら必ず気に入ると思います。 とても楽しい映画です。 原作にはまた原作の楽しさがありますのでどちらも別々に楽しんでみるといいでしょう。
[DVD(字幕)] 9点(2024-02-16 00:39:58)(良:1票)
9.  ヴィドック
おそらく同時期に上映されていたほかの作品と混同していたんだけど、中世あたりの人狼伝説か何かをもとにしたホラー映画だと思い込んでいた。 でもポスターのビジュアルが強烈に印象に残っていたので今回遅まきながら視聴。 そしたら全然違った。 舞台となるのは2月革命のころのパリ。 といってもパラレルワールドのパリだな。 謎を追いかけるミステリー作品でヴィドックは探偵の名前。 ところが物語の序盤でこの探偵は死んだとされており、炉の語の展開は探偵ヴィドックの最後の消息を伝記執筆を依頼されたと称する作家がたどっていく物語となる。 実はヴィドックは当時起きていた連続殺人事件の犯人を追っていたらしいのだ。 果たして事件の真相とは……。 最期に意外な犯人が発覚する。 途中いくつも手掛かりが提示されるからフェアといえばフェア。 でもスピリチュアルな要素を多分に含むストーリーなのでまともに推理する気もなく見ていた。 あんまりびっくりはしなかったな。ああ、そうなのかっていう感じ。 ビジュアルはとても興味深かった。 物語の展開も世界観もそれぞれのカットの構図も極彩色の劇画をパラパラとみているような感じ。 特に原作があるとは断っていないが、これはフランス流劇画バンドデシネの世界観をそのまま映画に置き換えた作品だと思う。 お話の内容が漫画的でやや幼稚で中二病的なのも、そう考えれば許される。 途中たびたび登場する不要と思われるインサートカットをなくしてもう少し短い上映時間にした方がよかったんじゃないかな。
[DVD(吹替)] 7点(2024-01-26 00:03:14)
10.  ユージュアル・サスペクツ 《ネタバレ》 
襲撃事件で生き残ったただ一人の男の証言だけに基づいて物語が語られる。 しかもその男というのが口八丁のペテン師だというのだから、もはや何でもありなわけで。 そりゃ嘘つき放題だよね。誰でもわかる。 「ありふれた疑惑」というタイトルが一番のネタバレかも。 犯人グループのリーダーが元悪徳警官で、警察はそいつがどんなに悪い奴か知っているがゆえに目を曇らされているってとこがミソ。 でもこんなに簡単にペテン師に騙される警察って、機能してるか? この手の映画で「この人が話しているのはみんな嘘ですよ」とネタバラシをするときの、日本人に見えない日本人を登場させるお約束が面白い。 事務所のガラス扉にわざわざ「成功」なんて漢字のステンシルを張ってたりするコバヤシなる悪徳弁護士。 どーみてもコーカソイドだよな。 「ライフ・オブ・パイ」に出てきた日本の大きな船会社の調査担当社員がスーツも着ていなければ態度も無遠慮だったり、ほかにもあったと思う。 こういうのって要するに日本人とはどういう人々かということが世界中に知られているから成立してるんだよね。 複雑な気分。 あとこの映画、冒頭部分で時系列がシャッフルされているのでその手の映画なのかなと思わされてしまい、シーンが変わるたびに「これはどこにつながるのかな」と考えながら見てたけど、何のことはない、冒頭以外は単純に順次進行でした。 余計なエネルギーを使わされてしまった。紛らわしいことをせんといてほしい。
[DVD(字幕)] 6点(2023-12-21 02:48:55)
11.  めぐり逢い(1957)
どこぞのどなたかが「不倫は文化だ」との名言を残されていましたが、これは全くその通りで、世界各国の文化的資産:英国の戯曲、イタリアのオペラ、フランスの文芸、ドイツの詩歌、日本の浄瑠璃歌舞伎、そしてもちろん米国ハリウッドの映画などでくりかえし扱われてきたのが「不倫」であります。 考えてみれば一人の女もしくは男の最初に出会った相手がその女もしくは男にとって最良の相手である保証はないんだし、あとになってから「ああ、この人と先にあっていればよかったのに」と思う人とめぐりあってしまうことは当然発生するわけです。 一度できてしまった人間関係を変えることには大きなエネルギーがいる。 そこがドラマになるわけです。 この映画の主人公の二人はダブル不倫の男と女です。 実世界ではスキャンダルであり、人々から軽蔑のまなざしを受ける出来事でしょう。 それを、息をのむようなロマンスに仕立て上げてしまうのがまさに文化の力です。 ロマンス映画は、燃え上がっている主人公カップルだけに感情移入して観ましょう。 不倫された側の人たちはただの背景として、心情を斟酌したりするべきではないのです。 でもなあ、この不倫された側のふたり、心変わりを聞かされてもつかず離れず女を見守り続けていた実業家の男はもちろん、3億ドルの資産家で篤志家の女の方も悪い人たちではないのでちょっとかわいそう。 この二人がくっつけばいいのにね。 交通事故、そしてすれ違いのあたりは今でも特に韓流ドラマなどで盛んにリブートされているけど、この映画の「天国にいちばん近いところを、あなたばかりを見上げていたの」なんて泣かせるセリフはこの映画だけのものでしょう。
[DVD(字幕)] 8点(2023-12-21 01:08:28)
12.  リリー
最近「ミセス・ハリス パリへ行く」も映画になったハリウッド流ファンタジー作家ポール・ギャリコ原作の映画化作品。 ファンタジー作家といってもこの人、出自がスポーツライターというだけあっていまいちファンタジーに振り切れてないところがあるんだけど、今のように映画でもテレビドラマでもアニメでもゲームでもノベルでもこってこてのファンタジーだらけになってしまっているなかではなんだかホッとできるような作風といえるかもしれない。 この作品の中で最もファンタジー要素といえるのは、たった一人の操作で人形があんなに細かい動作はできないだろ、って部分くらいだし。 わずか5巻の短尺もの、歌は「ハイ・リリー・ハイ・ロー」ただ一曲だけ。ダンスシーンも短いし断片的、華麗な群舞もない。 ダンサー出身のメル・ファーラーの面目躍如、かと思いきやあまり踊らないしレスリー・キャロンもあれ?いつものダイナミックなダンスは?って感じ。 これからMGMミュージカルを観るぞと意気込んでいるときには拍子抜けする映画かもしれない。 でもなんか観ててほっこりする。 これもやっぱりメイドインハリウッド。 ハッピーエンドがものすごくうれしくなる映画。 ただちょっと一人一人の心情の動きが複雑でわかりにくくなっているとこがあるのが難点。 心理描写はもっと単純でいいんだよ、みゅーじかるなんだから、って感じがしたかなあ。
[DVD(字幕)] 8点(2023-12-19 02:23:39)(良:1票)
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