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《ネタバレ》 いろんな意味で予想と違いました。まさに“狸にばかされた”って感じです。
かつての大正から昭和初期(戦前)を舞台にした清順作品と同様、美と享楽のためには暴力を愛することも厭わない「安土桃山」という時代設定は、やっぱりファシズムの臭いをそこはかとなく漂わせてたし、オダギリジョーの美しさを引き出すためにも、この耽美的な時代設定は正解だろうと思った。けれど、実際には、オダギリジョーは期待したほど美しくない。色気にも乏しい。それどころか、終盤になって美空ひばりが登場するやいなや、物語は、戦後=昭和的なヒューマニズムによって救済されて、前半部のファシズムの臭いなんてキレイさっぱり洗い流されてしまう。そして人の良い「狸ばかり」が巣食う戦後日本の、平和かつ人情にあふれた価値観が、高らかに肯定されつつ謳いあげられて、すっかりハッピーエンドなんですから、もう鈴木清順のことを「大正時代の人」なんて呼ぶことはできません。チャン・ツィイーの美しさがこんなにも「狸っぽい」なんて驚きです。まあ、キツネにばかされる陰鬱さに比べたら、狸にばかされるバカっぽさのほうが人情味もあって楽しいし、キライじゃありません。狸のおかげで、まるで日中戦争なんて無かったかのように思えました。それから、唐突過ぎるカットの割り方、羞恥心のないズームアップなどをあらためて見てたら、清順の映像感覚って、もともとポルトガルっぽいところがあるんだな、なんてことも思った。 【まいか】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-08-29 04:21:26)
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