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《ネタバレ》 「あ、春」の最後でヒヨコを孵化させたように、この映画の最後でもカエルが冬眠から覚めます。しかしながら、そんな暖かいエンディングとは不釣り合いなほど、そこにいたるまでの物語にはただならぬ寂しさがある。黒沢清の「岸辺の旅」が本作を意識しているようにも感じます。
「雪の断章」にしろ「風花」にしろ、何故その原作を選んだのか、その動機がよく分からないのだけど、たんに個人の人生を描きたかったのではなく、むしろ物語の舞台である北海道に対する個人的な愛憎や、あるいはローカルな感傷や、あるいは鎮魂めいたものを表現したかったのじゃないかと思えてくる。開拓から「120年」というセリフが執拗に繰り返されたりしますよね。相米慎二にとっての(実質的な地元である)「北海道」が、何かとてつもなく寂しくて悲しい場所のように感じられます。 「翔んだカップル」や「台風クラブ」や「ションベンライダー」は純粋に"文体の面白さ"を語ることのできる映画であり、それゆえに評価が高いのだろうけれど、「雪の断章」や「風花」は"文体"という観点では語りにくい部分がありますよね。逆にいうと、相米個人の本質に触れる内容であればあるほど、純粋に"映画の文体"だけを追求することができなかったんじゃないかしら? わたしは「雪の断章」や「風花」について考えるとき、相米映画を"文体"だけで語るのは限界があると感じます(→この件については、黒沢の「岸辺の旅」との関係もあわせて、ブログのほうで詳述することにします)。 やさぐれた男女の物語ですが、美男・美女の主演ということもあって、映像だけ見るとまるでトレンディドラマのように"キレイ系"の作品に仕上がっているのは意外。美しい映画といえないこともないけれど、これも叙情が先行してしまった結果のように見える。なお、大友良英の音楽は「これでいいのかな?」と感じるほど主張が強かったですね。 【まいか】さん [インターネット(邦画)] 8点(2022-04-30 06:35:09)
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