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《ネタバレ》 ベネチアでは演出のほうが評価されましたが、この作品が優れているのはむしろ脚本だと思います。もともと黒沢清は「ジャンル映画」(要するに通俗映画)の作家を自称しているので、この作品も「サスペンス・ロマンス」の体裁で作られていますが、濱口竜介と野原位の脚本は「不可視のものを映像化する」という政治的な課題に取り組んでいます。
この作品が10年前の「金子論文」の発見に触発されたのは明らかですが、731部隊の「細菌戦」の真実はそれでもまだ全貌が闇に包まれています(映画が公開された2020年にも新資料が見つかっています)。したがって、この映画も「いまだ目に見えないもの」を描くという政治的な課題を負っています。主人公・福原優作の機密漏洩の企ては未遂に終わり、真実は闇に葬られたまま戦争が終わり、結局のところ、あのフィルムに何が映っていたのかも分からない。そういう物語なのですね。 黒沢の「ジャンル映画」としてなら7点、濱口と野原の「政治映画」としてなら9点。そのあいだを取って8点の評価にします。ただし、わたしが見た1月10日のNHK放送はおそらく「劇場版」でなく「TV版」なので、映像のテイストがいかにもNHKの歴史ドラマ風でした。「劇場版」だったら、演出に対する印象がもっと違うのかもしれません。 【まいか】さん [地上波(邦画)] 8点(2022-01-12 09:07:31)
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