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《ネタバレ》 この映画は、ハンスというナチの悪役を抜きにしては考えられないものだと思う。もちろん主役であるイロナ、ラズロ、アンドラーシュの3人の男女の危うい恋愛関係と「暗い日曜」という呪われた歌の都市伝説がこの話の骨子であることは確かなのだが。でももしそれだけだったらヨーロッパ映画によくある甘くてアンニュイなストーリーが大戦前の暗い世相を背景につらつらと綴られる極当たり前の作品に終わったにちがいない。だけどこの映画には更に第3の男として(実際にはイロナには全く相手にされないのだが)ハンスが登場する。彼は征服者として当然傲慢であり職権を乱用してはどさくさに紛れて私腹を肥やすようなけしからん男。が同時にそれでいて女に相手にされなかったくらいで川に飛び込むようなナイーブな男でもあり、思い出の宝石を手放そうとするユダヤの夫人の涙にほだされてその宝石を受けとろうしないような甘いところ(これはひょっとしたら戦後の戦犯追及を逃れる手のひとつだったのかもしれないが)もある普通の男でもあるのだ。この彼のちぐはぐな描写がこの映画に奥行きを持たせる。人間って確かに権力をかさにきれば信じられないほど傲慢になるくせに、目の前の不幸にも無責任な同情心を見せたりする不可解なものだったりする・・・中でも一番不可解なのはあんなに酷いことしておきながら、80歳のバースデーを忌まわしい思い出のあの店で祝おうとしたこと。まさか彼だってイロナが今も生きていて彼に復讐を果たそうと虎視眈々と待っているのを知っていたわけではないのだろうけど・・・何故彼はやってきたのだろうか?もうろくして悪い記憶を全て忘れてしまっていたからか?それとも50年前の良心の呵責に耐え切れず謝罪のつもりだったのか?そういうサスペンス(?)的余韻も残してくれると同時に、表題「暗い日曜日」の暗く甘い旋律の恋愛ドラマのロマンティックな雰囲気も十分に楽しめる作品だということで、8点献上。
【ぞふぃ】さん [DVD(吹替)] 8点(2007-10-15 17:20:12)(良:2票)
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