1. ドッグ・ワールド
この作品は、石ノ森章太郎であったから描けた作品であろう。 犬が進歩し、2足歩行し言葉を得て社会を構築する世界・・・人間は言葉を失い犬よりも下等で犬の支配下におかれた世界・・・文明のあり方と人間の進歩をテーマにしたその内容は実は重くなりがちな内容なのだが、同テーマ内容の『リュウの道』のような重々しさはなく、犬が主人公のおとぎ話のような冒険活劇に仕上げっている。これは、一重に作者の年齢の積み重ねによる円熟さが影響していると考えられ、深いテーマ性に対して読みやすい作品となっており、隠れた名作であると思う。 そして、大きな評価はその主人公の犬たちの描写である。動物を生き生きとしたデフォルメ化したマンガ描写というのは、ディズニーかの影響とは言え、やはり、手塚治虫とこの石ノ森章太郎の二人の右に出る作家はいないであろう。 また、近年このような動物たちを主人公としたファンタジックな作品が受けいられないし、また、書き手も居ないであろう・・・というのは、やはりマンガ業界自体が産業化(売れる売れない・・・)に傾いている結果と思えさびしい限りだ。 9点(2008-01-30 15:18:28) |