1. 地獄先生ぬ~べ~
正直子どもの頃は「ジャンプから消えてしまえばいいのに…」とか思ってたけど、これはこれでいいマンガなのかもしれないと最近になって思えてきた。個性豊かな生徒が大勢いて、それぞれを主人公に配置できるという設定の強みがあり、ジャンプには珍しい一話完結型で連載が続いたタイプ。今文庫を立ち読みしたりすると、けっこうエグイ。見開きで怖い絵をドーンと見せる演出とか上手いし、哀しい話は今のジャンプでは珍しいくらい重かったりする。ていうか眠鬼……いろいろな意味で記憶に焼きつくマンガだった。いい意味でも悪い意味でもいい加減なところがあるから、完成度うんぬんをいえば苦しいところもあるけど、子どもの頃の思い出に残っているのは間違いない。良作? かもしれない。 7点(2008-05-31 20:46:48) |
2. りびんぐゲーム
《ネタバレ》 やきもきさせるエピソードを重ねつつ、最後にはどうにかなるんだろうなという予感が常について周るタイプの、安心して読めるラブコメ。良くも悪くも逸脱したところはない。絵柄が愛らしいのもあって読みやすかった。 6点(2008-05-20 15:08:45) |
3. 金田一少年の事件簿
《ネタバレ》 『占星術殺人事件』よりこちらを先に読まされてしまったクチなので、遠慮なく0点を付けさせてもらう。単純なトリックをアレンジして利用するくらいなら問題にはならないが、よりによってオールタイムベスト級の超名作のトリックを、そのまんま盗用するとは……バカか? どんな作品でも多少なりとも過去の作品の影響が見られるのは当然だが、これに限っては完全に一線を超えている。 しかもトリックの使い方が下手。ミステリのネタというのはそれ自体の出来と同じくらい、どう見せるかという演出方法が大切だ。島田荘司氏の小説ではあれほど衝撃的だったトリックが、どうしてこんなしょぼい話になるのだ。ほんとうにバカ。パクるにしても劣化し過ぎなんだよ。 シネマレビューの方でも0点をつけたことがないのだが、評価の範囲外ということで。オリジナルのネタの中にはよくできたものもあるし、『コナン』に比べれば荒も少ないだけに、残念ではある。 0点(2008-05-20 14:58:26) |
4. 多重人格探偵サイコ
《ネタバレ》 プロローグ的な最初の数冊は面白いが、SFの度合いが強くなっていくにつれてどんどんつまらなくなった。田島昭宇のスタイリッシュな絵柄は非常に魅力的だが、ストーリーは微妙。個々のアイディアは良いのだが、ろくに煮詰めないまま適当にお話に組み上げてみましたという程度のできに留まっている。また登場人物が全然生きていないので、全体的にスカスカな感じがして、読んでいて心を動かされることがあまりない。暴力的描写が話題になることも多いが、これだけ残酷なのにまったく痛みが伝わってこないというのは、すごいのかすごくないのか……。 6点(2008-05-14 07:22:20) |
5. I"s
絵は文句なしに上手い。とくに女性の体の一部に関しては業界一、むしろ作者はどこかしら心を病んでるんじゃないの? と心配してしまうくらいに上手い。そこはまったく否定できない。 ただ、こういった主役の男がこれといった必然性もないのに美少女にモテる感じのマンガは昔から苦手。そうした系統の作品にしてはまだ現実味があって話もしっかりしている方だとは思うけれども、やはり受け付けない。 4点(2008-04-23 01:31:18) |
6. 百鬼夜行抄
《ネタバレ》 ほぼ一話完結で、毎回毎回入り組んだプロットを組み上げているのがすごい。マンガなのに叙述トリックまで取り入れているという巧みさ。幻想ホラー風味ではあるけれど、個人的には恐怖のツボが合わない感じなので純粋にミステリとして楽しんでます。凛とした風情の画もなかなか。作者の浮世離れを反映してか、現代を舞台にしているのになぜか全然そんな気がしないという独特の空気感が面白い。 8点(2008-04-14 13:44:53) |
7. ブラックブレイン
知る人ぞ知る怪作。どこからこういった変態アイディアが浮かんでくるのか? なんでまたそれを作品として形にしようなんて血迷った決断をしたのか?? 異様に素人くさい絵柄のため、グロ描写の衝撃はかえっていい意味で半減しているが、エロい場面の効果は悪い意味で半減している。毎回毎回敵キャラの設定が秀逸(というか、なんというか)で、個人的には過激フェミニズム団体の敵が大好きだった。意外にもストーリーの骨子は普通の娯楽作なので、ある程度感覚のチャンネルを切り替えることができれば普通に面白いかもしれない。十年位前に一度読んだきりだけど忘れ難い、というか忘れたくても忘れようがない強烈なインパクトがあった。 7点(2008-04-14 13:12:03) |
8. あずまんが大王
古本屋で久しぶりに立ち読みしたら新鮮味がなくなっていてちょっと驚いた。作品自体が古びたのもあるかもしれないが、後続作品に与えた影響があまりにも大きかったせいだと思う。今みると絵柄にもちょい抵抗を感じる。 今評価すると6点だけど、当時楽しんだ分を考えると8点付けてもいいような気もするので間を取っておきます。昔はすごく斬新だったんだけどなあ。 7点(2008-04-12 23:19:58) |
9. め組の大吾
どこに行っても何かしらの災害に遭遇するご都合主義ぶりにちょっと笑ってしまうけど、題材の目新しさには目を見張った。でも同じ天才を主役にした作品でも『昴』とかに比べると主人公のキャラクターがいまいち、説得力を持っていなかった。レスキューの天才ゆえに抱えるジレンマも語られるんだけど、これまた微妙。わかり難く、感動しにくい。そこらのアクション映画でも敵わない救出シーンの迫力はすごかった。けれども人間ドラマとしては、正直たいして印象に残っていない。 6点(2008-02-01 01:26:55) |
10. るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
これも自分としては幽白に並んで青春の一作という感じがする。 明治時代の日本を舞台にして史実を織り込んで展開する割には、「なわけねーだろ」と突っ込みたくなるめちゃくちゃ荒唐無稽なネタが多く、またどうでもいいところでいちいち足踏みする展開のまだるっこしさも手伝い、読み進めるにつれてだんだん白けてしまった。しかしキャラクター造型の上手さや、作品のクオリティが安定していたことは否定できない。 とくに面白いのは主役の緋村剣心のほとんど二重人格的なキャラクターで、普段はとぼけているのが戦いとなると別人のように酷薄な雰囲気になる。目立った変化は眼光ぐらいなのだが、まるで変身ヒーローのように印象ががらりと変わるのだ。個人的には『ドラゴンボール』のスーパーサイヤ人に負けないくらい印象深い演出である。 7点(2008-01-19 01:24:36) |
11. 刑務所の中
映画版は刑務所生活をそのまま映しただけと批判されていたけど、これは花輪和一の偏執的な漫画で描かれるから面白いのであって、普通に実写映画にしたら退屈になって当然だ。この人の画は綿密で上手いんだけれど、なんてことのない無機物にまでどことなく生命感が通っていて、ちょっと気持ち悪くて、面白い。基本的にリアルな画風なのに、ところどころそのリアルな画風のまま比喩的な表現が入る。刑務所の現実をそのまま描いているんじゃなくて、花輪和一といういわば主観の変電機を通して組み替えられた、もう一つの世界を読んでいるからこそ楽しいのだ。 見沢知廉の『囚人狂時代』というやはり獄中生活を元にした面白い手記があるが、あちらの場合は刑務所内のとくに面白いエピソードがふんだんに盛り込まれているのに対して、こちらは丹念に刑務所の日常生活を拾い上げていく。衣食住に関しては案外快適そうだが、トイレに行くにも手を上げて番号を叫ばなければならない煩わしさや、大の大人が甘いものを渇望してあえぐ描写を見るにつけ、やっぱり絶対こんなとこには入りたくないなあと思わされる。画風に拒絶反応さえ起きなければ、なかなかに興味深い読み物だ。 7点(2008-01-12 03:20:19)(良:1票) |
12. 封神演義
おちゃらけたノリがどうしても好きになれなかった。普通に面白いんだけど。とくに登場人物が「このマンガの連載が~」なんてふうにメタ的な台詞を吐いちゃうのが、どうしても許せない。そういう要素があると真剣な下りでも白けて読んでしまうのは自分だけだろうか? あと作品の性質上仕方ないかもだけど、人の命が軽すぎる感じもいやだった。絵柄はとても斬新で面白いと思うのだけど、自分のなかではとても微妙な作品。むしろその後の完全にふざけきった短期連載作品のが、開き直った感じがして好きだったなあ。 6点(2008-01-08 14:28:12) |
13. ハネムーンサラダ
完成度がどうこうというよりも、絵や台詞に通う血の熱さが半端ない。仕事や恋愛に対して、社会常識すら無視してただ“ほんとうのこと”だけを求める男女三人が織り成す、異色の恋愛ドラマ。普通に考えれば男にとって都合のいいはずの状況も、二人の女性キャラクターそれぞれが持つなんとも手に負えない感じがリアリティを生んでいる。二宮ひかるという人は、めんどくさい女を描かせたら天才じゃないかと思う。 掲載誌がヤングアニマルなのもあってかエロい描写も多いんだけど、二宮さんの作品を読むと、セックスを抜きにして恋愛を語ることのほうが不自然なんじゃないか、と思わせられる。テレビドラマとかにするのは難しいだろうけど、下手な恋愛ドラマよりかはずっと重みがある。作者自身の心血を注ぎ込んだからこその、代表作でしょう。 8点(2007-12-16 18:55:00) |
14. さよならみどりちゃん
《ネタバレ》 一時期女性作家のマンガをたくさん読んだんですけど、これはとりわけ記憶に残っている作品のひとつ。南Q太さんのマンガって短い台詞と大ゴマ(手抜きとかじゃなく)で、独特のテンポでもって進むのが面白い。さくっと描いているのにとても繊細で、暗いネタなのに能天気でユーモラス。 ダメ男に引きずられるように曖昧な関係を続ける主人公。いっちゃあなんだけど、ダメ男にはまる女の人って、自分自身もダメ女な部分があるよね。自身の根元がしっかりしてないから、自分に負けないくらいダメな男を見つけてよっかかりたがる。これはそんな主人公が一皮向けて、新たな一歩を踏み出すまでの物語。 理想が入る余地のまったくないリアルな作風で、でもそれだけにポップコーンを振りまくシーンの突き抜けた明るさが、とても爽快だ。 映画化作品は怖くて未見。シネマレビューの方を見ると平均は低いのにけっこう点数が散らばってたりして、悩ましいところだなあ……。 8点(2007-12-12 02:56:56) |
15. バキ
シンクロニシティによって、最強の死刑囚達がいっせいに脱獄して日本にやってくる――といういきなりトンデモ科学な説明で始まってびっくりしたけど、まあ普通に楽しめた。この辺りまでは。問題は『範馬』編で……。 もともと絶対ありえないネタばかりだったけど、催眠術だの「毒ガス」だの自由の女神が崩れかけるだので、いよいよ謎のファンタジーマンガと化してきた。電話ボックスのなかで戦っていたらボックスが逆さになった場面なんかは名演出(まあこれもありえないんだけど、ぎりぎり許せる)だったけど、それ以上の領域に踏み込むのは明らかに危険。誰も板垣さんを止める人はいなかったのかなあ? あと、外伝の『性』。何なんですか? 作者が心配です。普通に心配。 7点(2007-12-09 21:42:24) |
16. グラップラー刃牙
《ネタバレ》 最初は癖の強い絵柄に抵抗を覚えたけれど、なんとか慣れました。地下闘技場トーナメント編は、ベタだけどやっぱり面白かった。渋川VS愚地とか刃牙VS烈とか、格闘ものの面白さを極めた感があった。でもこのマンガ、刃牙の親父だの何だのが絡んでくると途端につまらなくなってしまう。理屈ぬきに無敵過ぎて、なんかもうすごいんだかアホ臭いんだかわからない。ジャック・ハンマーとの決勝戦とか、けっこうどうでもよかった。 7点(2007-12-07 03:04:42) |
17. ドロヘドロ
スタイリッシュな独自の絵柄と世界観がかっこいい。ものの肌触りまで伝わってくるかのような厚みのある画。かなり暴力的な描写も多いんだけど、ブラックなユーモアとキャラクターの愛嬌のよさが、殺伐とした空気を相当に和らげている。トカゲ頭のカイマンは強さよりもかわいらしいし、女性キャラがみんな驚くほどごつくてガンダムみたいに強いんだけど、なぜか普通にかわいく感じられる。アクションシーンは迫力があるし、心臓を象ったマスクなど、作者独特のセンスが随所で光る。作者が普通の少年マンガに影響を受けたというだけあって、普通にわかりやすくて一般受けしそうだと思うんだけど、そんなにメジャーでもないのかな? もっと知られてもいい作品だと思う。 8点(2007-12-03 00:54:08) |
18. ONE PIECE
《ネタバレ》 登録しといてなんだけど、苦手です。連載当初から、なにが面白いのかわからなかった。 少年ジャンプの悪しき伝統に乗っ取って、必要以上にバトルものの要素が濃い。お互いの技を見せっこして、結局は根性で敵の攻撃を耐え切って勝利という、駆け引きも何もあったもんじゃないパターン。毎回律儀に仲間の数と同数の敵キャラクターを用意して、全員を一対一で戦わせ、全員が勝つ。味方の側にはまず死人が出ないので、緊張感は薄れる一方。尾田さんには戦いを面白く描く才能が、欠けている。 人間ドラマを展開する力はあるし、ディティールにこだわった絵は見ていてとても楽しい。戦いの要素を減らして、もっと人間ドラマ、冒険物語としての純度を高めるべきだと思う。悪魔の実などの設定は浅はか過ぎるし、キャラクターの設定なんかはあとから足しているのが見え見えで白ける。ついでにギャグも寒い。 なんというか、尾田さんの他に脚本や設定に関するブレーンがいたなら、傑作になっていたと思う。 5点(2007-11-30 00:22:29) |
19. 狂死郎2030
徳弘さんのギャグは苦手なんだけど、これに関してはかなり引き込まれた。 たぶんセックスを前面に押し出したことが功をそうしたのだと思う。狂死郎と志乃はバーチャルリアリティの世界で出会って愛し合うようになるものの、どんなに求め合っても結局はバーチャルでしかなく、生身では触れ合うことができない。セックスはできるのに、満たされているようで満たされていない。快楽を重ねるごとに誤魔化せない寂しさと空虚感が積みあがる。お互いにさんざんひどい目に遭っても助け合うわけにも行かず、独りではないとわかっているのにどうしようもなく独りだ。だからこそ死地を乗り越えて志乃に会いにいく狂死郎の愛が、切実なまでに真に迫ってくる。大筋ではお涙頂戴のラブストーリーでしかないはずなのに強い説得力があり、ほとんど息苦しいほどだ。 下品なギャグがてんこもりだから楽しく読めるけど、実はとんでもなく切ないラブストーリー。これでシリアスタッチだったら読むのも辛かっただろう。徳弘正也以外には誰にも描けない、唯一無二の傑作恋愛漫画だ。 9点(2007-11-29 01:45:01) |
20. 敷居の住人
途中から作者の意識が変わったのが明らかに見て取れます。序盤は多田由美のものまねなどが見られて少々苦しかったりするんだけど、中盤からは俄然面白くなってくる。わかりやすく成長するでもなく、あーでもないこーでもない、とぐだぐだ悩んだり凹んだりする主人公を見ていると笑ってしまうんだけど、いたたまれなくもある。ああ、こういうのって思春期だよなあ。何気に自己中心的な女性陣の振る舞いにもリアリティがある。そうそう、精神不安定な女の人って本人は悪気はないんだけど、かなり残酷なことするんだよね。著者の出世作、まだ青い部分はあるとしても、やっぱり面白いです。 8点(2007-11-29 01:17:34) |