41. セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん
実はギャグ漫画としては革命的といってもいいセンスだったのでは。発表後他作品に与えた影響もかなりのもの。自分のなかでは『行け!稲中卓球部』に並んで90年代の二大ギャグ漫画です。「めそ…」なんかはほとんどトラウマワード。 8点(2007-11-01 01:28:39) |
42. MIND ASSASSIN
短期間で連載終了してしまったのに、とりわけ深く記憶に刻まれている作品。人の記憶、または精神を破壊することのできる超能力者を主人公としたサスペンスで、繊細だけど力強い絵が印象的だった。 いくらでも広げようのある良いアイディアだったと思うのだけど、作者がデビューしたてのためかストーリーのワンパターンが目立ち、またジャンプらしからぬ大人向けの題材が多かったのもあって、人気を保ち続けることができなかった。しかし女性作家ならではの繊細な語り口が魅力で、連載当初から個人的なお気に入りだった。 充分な熟成を待たずに打ち切られてしまったのを残念に思う。大きな可能性を持っていた、惜しい作品だった。 6点(2007-11-01 00:22:36) |
43. ハッピーマニア
Amazonの紹介文に「一家に一本!読むユンケル!」なんて書いてあって笑っちゃうけどわからんでもないなと思う。 重田加代子、というもっそい普通の名前の主人公なのだけれど、行動力がすごいというかイっちゃってるというかもはやポジティヴとかそういう次元なの? という強烈な性格の持ち主。自分の寝た男がろくでなしだとわかったときの、「ギャー最悪! 走ってくる! ちょっとあたし走ってくる!」という台詞に笑った。凹んで部屋にこもるとかじゃなくて、走るのかよ。 すべてにおいてこんな調子なので、読んでいるこっちまで元気になってくる。なにしろダメ男を渡り歩く話なのに、タイトルが『ハッピーマニア』だもんな。同じような題材でも『だめんず・うぉ~か~』とは明るさが違う(後者も面白いけど)。ダメ男にひっかかるのを「不幸」じゃなくて「幸せを探すこと」としてとらえるなんて、常人の感覚じゃないって。 テーマが前向きなだけの作品ならいくらでもある。だけどこのマンガはひとつひとつのコマ、台詞に、太陽のように明るいエネルギーがごく自然に満ちていて、それがページを開けばあふれ出してくる。読んだだけでこんなに元気になれる作品なんて、そうそうできるもんじゃない。安野モヨコという人はほんとうに素敵な才能に恵まれていると思う。 9点(2007-10-30 17:10:18) |
44. HELLSING
特筆すべきは演出力の凄まじさ。ストーリーが込み入ってるとか感動的だというわけじゃなくって、ただただド派手。アドレナリンの迸るままに描いているのか、あまりにむちゃくちゃで、あまりにかっこいい。とくにロンドンでの戦いは壮絶で、中世の大虐殺を再現したかのようなありえない光景が広がる。こりゃー頭のネジがいくつもとんでないと描けないよ。麻薬でもやってるのか? バトルシーンでも普通のマンガみたいな知略がまったくなく、清々しいまでに小細工抜き、理屈抜き。説明すら抜き。それでいて面白さが薄れないのだから、まったくたいしたものだ。こんなタイプのマンガは他に知らない。圧倒的なセンスと表現力に脱帽。 8点(2007-10-30 01:34:03) |
45. 幽☆遊☆白書
小学生の頃大好きだった、思い出深いコミックです。最初の二巻くらいは淡々としていて、やがて普通のバトルマンガになったかと思うと、だんだんと暗い雰囲気が色濃くなり、終盤には現在の『HUNTER×HUNTER』に通じるような凄惨な作風が前面に出てくる。通して読むと作者の成長具合が目に見えてわかり、違った意味で面白い。当時はすごく好きだったけど、今読み返したらそんなでもないのだろうか? 7点(2007-10-28 18:10:49) |
46. 殺し屋1
《ネタバレ》 目を背けたくなるのと同じくらい、目を離せずにはいられなくなる――そんな苛烈な暴力描写が特徴的。作中の垣原の言葉を借りれば普通の人間は「S」と「M」の両方の要素を持っているわけで、自分のなかの両方の要素が反応しているからこんな矛盾した気持ちになるのかな? ただ、最後まで読んで不思議に思ったのは、結局作者がいちばんやりたかったのは何なのかという点。単なるバイオレンスアクションの割には途中妙に感動的な台詞があったり、ラストは蛇足としかいいようのないミステリー風味だったりと、やや歪な感じがする。九割方は単純な展開なんだから、最後までつっぱしればよかったんじゃないの? あるいは読んでいるだけで痛くなるほどの表現力があるんだから、暴力に関してもう少し突き詰めた考察を示してくれてもよかったとも思う。なんかどっちつかずな感じがするんだよなー。 7点(2007-10-28 01:38:42) |
47. 寄生獣
《ネタバレ》 視覚的なインパクトだけでも充分すごいのに、高い娯楽性もテーマの奥深さも持ち合わせている、という奇跡的な作品。 普通はアイディアからして単なるスプラッターホラーとなるわけで(それも悪くないけど)、ここまで普遍性のある物語を紡ぎだせるというのは驚くほかない。設定も構成も徹底的に考え抜かれた上で構築され、読み応えのある骨太の作品となっている。 個人的に印象深いのはクライマックス近くのパラサイト掃討作戦の、合理的かつ現実的な戦闘場面。クリーチャーを題材にした物語は数あれど、ここまで生々しく、リアリティを追求した例は珍しいと思う。 8点(2007-10-28 01:08:41)(良:2票) |
48. うしおととら
《ネタバレ》 つい最近読み終えたのだけれど、少年時代に読まなかったのが本気で悔やまれる。 とにかく、熱い。うしおはいかにも少年マンガ的な主人公に輪をかけたような性格で、明るくてバカで乱暴で、真っ直ぐで正義感が強くて、絶対にあきらめない不屈の意志を持っている。しかし典型的なキャラクターであるようでいて、不思議と厚みがあり、ひとりの人間としての存在感がある。台詞もまたびっくりするほどきれいごとばっかりなのだが、なぜか鼻で笑ってすませることのできない説得力を持っている。 これはきっと作者が、ほんとうに胸の底から湧き出てきた自分の“声”を作品に乗せているからだと思う。エピソードのなかには明らかにご都合主義のものも散見されるんだけど、それを許せてしまうだけのほとばしるようなエネルギーがある。作者が心血を注いで描いたものだということがはっきりと感じ取れる。 そして何よりラストに向けて収束していく物語展開が素晴らしい。当時全盛だった少年ジャンプの連載が編集部の意向でだらだらと延ばされていったのに対して、本作はあらかじめ予定されていた大団円を迎える。この最終回、涙をこらえるのは難しい。しかも作者があとがきで「このあと登場人物たちはみんな幸せになりました」と断言。これは反則だっ(泣笑)。 明日を信じること、人を信じること、正義を追い求めること。少年マンガのもっとも素朴なテーマを嫌味なく、完璧に昇華させている。こんなに強くてあったかくて、気持ちのいいマンガはない。 10点(2007-10-26 00:37:12) |
49. リバーズ・エッジ
たぶん人生でいちばん好きなコミック。描かれたのは十年以上前だけれど、これほど現代に特有の空虚さ、乾いた絶望感を的確に捉えた作品は他にないんじゃないだろうか。生きているということにリアリティがない感じというか、日常におけるあっけらかんとした絶望を巧みに描き出している。登場する少女、少年達には拠り所にできるようなものがまったくなくて、ただ痛みだけが確かなものであるかのようにすら見える。唐突に引用される詩の効果も抜群で、一度読むと忘れがたい。「平坦な戦場で生き延びること」、その難しさ。きれいごとを一切抜きにして、日々を生きていくことの意味を問う。ポジティヴなメッセージはほとんどないけれども、この切実さが、不思議と読む者に力を与えてくれる気がする。 好き過ぎてあまり語るとわけわかんなくなりそうだからここらへんでやめとくけど、間違いなく、大傑作です。 10点(2007-10-25 00:40:34)(良:1票) |