1. シザーハンズ
《ネタバレ》 カラフルな田舎町に、ティム・バートンのゴシックで奇怪な要素が持ち込まれ、見事に融合した逸品。 人間と人造人間の違い、外見と内面のアンビバレントさ、複雑さを切なさへと昇華してみせる。 手が人を傷つけることもできるハサミでなかったら、もう少し違った結末になったのか。 違う世界のヒロインと出会わなければお互いに幸せだったのか。 それでも出会わなければ、雪を降ることも短いながらも一緒にいられた温もりもなかったかもしれない。 ジョニー・デップの個性なくして、この映画は成り立たなかった。 [地上波(字幕)] 7点(2022-10-19 12:29:14) |
2. JAWS/ジョーズ
粗製乱造されるC級サメ映画の原点であり頂点。 もちろん本作は亜流とは比べ物にならないくらい完成度が高い。 撮影時、サメの機械模型の不調により、サメはほとんど登場することなく、 出るか出ないかの演出と絶望的な状況が却って恐怖を際立たせていた。 パニックホラーの域を超えて、格調高さすら感じる。 これさえあれば他のサメ映画なんていらない。 [地上波(字幕)] 7点(2022-08-06 15:34:08) |
3. シェフ 三ツ星フードトラック始めました
《ネタバレ》 ジョン・ファブローって聞いたことのある名前だな、と思ったら『アイアンマン1&2』の監督だったとは。 3を蹴って、独立系映画で原点に立ち返る姿は主人公の姿と重なる。 監督・主演と聞くとどうしても独り善がりになるけれど、 嫌みには感じず、むしろ周りに好かれるあたり、監督の人徳が感じられる。 (でなければ、名優&大スターのカメオ出演など実現しない)。 邦題からロードムービーだと思っていただけに、フードトラックに至るまでの道のりはやや退屈で、 そのシーンも尺足らずなのでちょっと肩透かし。 もっといろんなところで、たくさんの人々と交流する姿を見ていたかった。 観賞後、無性にホットサンドを作りたくなったのは言うまでもない。 [DVD(字幕)] 6点(2022-07-05 23:29:20)(良:1票) |
4. 地獄の黙示録
コッポラが『ゴッドファーザー』を超えるために作ったはずが、撮影現場の混乱ぶりが凄まじすぎて、 物語の破綻ぶりとカオスがジャングルという地獄巡りに彩を添えているのが皮肉すぎる。 難解なのは言うまでもないが、強烈なインパクトも備えているので、 カンヌパルムドールを分け合った『ブリキの太鼓』に近いものを感じた。 終盤のカーツ大佐との対話でどうして眠くなってしまってしまうんですよね。 [DVD(字幕)] 6点(2022-06-08 22:50:36) |
5. SING/シング
人間を動物化させた『ズートピア』を思い出すわけだが、体躯を活かした社会派要素はなく、あくまでコメディとしてのスパイスなだけで、動物である必要があまり感じられない。コンテストに集う人間(動物?)模様も個別のエピソードを取ってつけただけで複雑に絡み合うことなく終わってしまった。駒のような扱いのキャラクターだらけ。歌声一点に押し切ったカラオケ大会として見れば悪くはない。でも何も残らないんだよ。 [地上波(字幕)] 5点(2022-03-14 22:15:45) |
6. シックス・センス
"衝撃の結末"と話題になったもののそれは装飾にすぎず、オカルトホラーと見せかけて、登場人物の葛藤と救済を描いた、真っ当なヒューマンドラマとして仕上げたところが良ポイント。その後、シャマランは変に奇をてらって、本作を超える佳作を未だ作れていない。多分に本質はあちら側で、偶然マッチした産物なのかなと思ったりする。 [ビデオ(字幕)] 7点(2021-09-30 22:43:25)(良:4票) |
7. シカゴ7裁判
《ネタバレ》 圧倒的情報量とスピーティーな会話劇で占める複雑な内容を噛み砕き、新たな証拠や事実が明るみになっていく展開にグイグイ引き寄せられる。「血が流れるなら、街中で血を流せ」。この言葉は受け取り方によって解釈が大きく異なるように"正義"に揺らぎが生じる。それは非常に主観的なもので、現在のアメリカの分断と重なる。リベラル寄りではあるが、決して良いところばかり描いているわけでもない。所属団体も思想も信念も一人一人違うし、裁判の目的も違う。出来すぎだとは思うが、日々戦死した兵士たちの名を書き連ねたリストが最終陳述で活かされ、思いが一つになる展開は見事だった。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-01-01 01:19:40) |
8. 市民ケーン
《ネタバレ》 『Mank マンク』の予習のため10数年ぶりに再見。初めは睡魔との闘いで印象に残らなかったが、今見ると愛着障害を描いた現代に通じるテーマだった。愛情の代わりに金は無尽蔵にあり、強大な権力もあった。それでも二人の妻も二人の親友も去っていったのは、こういうことをしたんだからという見返りが透けて見えていたからで、他人の心情を上手く汲み取れない不器用さがあまりにも悲しい。世間的には新聞王として持て囃されても彼の一部分でしかないし、関係者の証言も彼の一部分でしかない。あるのは、遺品が容赦なく焼却処分されるように、死んでしまえば忘却の彼方へ置き去りにされる虚無感だけだ。今でこそ珍しくない演出手法も当時は斬新で、実在の新聞王をモデルにしたのだから、このセンセーショナルさがオーソン・ウェルズの強大な野心と深く重なる。ドナルド・トランプはこの映画が好きだったようだが、現在の窮状を見るに大いなる皮肉を感じた。野心、野心、野心・・・。名を残すとはこういうことなのだ。 [インターネット(字幕)] 8点(2020-12-06 00:52:00)(良:2票) |
9. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 11対1の不利な状況からの逆転劇。密室の会話だけの展開なのにも関わらず、論理的に分かりやすく説明して相手を納得させるあたり、かつての敵を仲間として引き入れるジャンプ漫画的な熱さを感じるのは自分だけか。ゲームのように一つ一つクリアしていく没入感がある。ただ現実はゲームではない。一人の少年の人生が掛かっており、常にヘンリー・フォンダみたいな男がいるとは限らない。一周回って少年はクロかもしれない。それでも一つの疑問から議論し尽す姿勢こそ重要であり、それを放棄することもできる民主主義の恐さと脆さを体現した名作に間違いない。 [地上波(吹替)] 10点(2020-11-27 21:33:13)(良:2票) |
10. シャイニング(1980)
かつて143分版を見たことがあるが、テレビで再視聴。バッサリカットされているが、冗長的な部分が抑えられて却って見やすい。ホラーと謳われながら、思ったほど恐くは感じられなかったが、一方で演出と映像に狂気とも言える拘りを見せており、芸術的な領域にまで高めているのが名作と言われる要因か。随所に挟み込まれるペンデレツキの楽曲が効果的。たとえ親しい家族だとしても、人間何事も距離を置くのが肝心だ。 [地上波(字幕)] 6点(2020-07-08 22:37:31) |
11. シンデレラ(2015)
《ネタバレ》 誰もが知っている童話そのままに、最高の特殊効果と美術でどこまで限界に近づけるかを再現。短編で終わらせることもできる内容なだけに、原作破壊を最低限に留めた上で世界観の補強を行い、一人一人の行動に説得力を持たせている。憎まれ役のケイト・ブランシェットの奥に秘めた嫉妬と悲しみが映画に奥行きを持たせており、謀略が立ち去った王国でシンデレラはいつまでも幸せに暮らしましたになるとは限らない。それでも待ち受ける試練に心が凍りつくことなく乗り越えられるかもしれない強さをリリー・ジェームズが体現してみせる。 [地上波(字幕)] 7点(2020-04-25 11:16:37) |
12. 7月22日
《ネタバレ》 2011年7月22日に発生したノルウェー連続テロ事件を題材にした作品。報道では知ってはいたが、実際に映像化するとかなり衝撃的な内容で、爆薬の準備からウトヤ島の殺戮までを綿密に描いた冒頭30分の緊張感は圧巻。今までのグリーングラス監督なら事件そのものを切り取るが、本作はむしろ事件後がメインで、生存者ビリヤル、凶悪犯ブレイビク、彼を弁護するリッペスタッドの3人を中心に、静かに淡々とノルウェー国内を揺るがす断絶と波紋が広がっていく。竜頭蛇尾の構成に思えるが、娯楽映画ではないのは当然で、それでも後遺症とPTSDに苦しむビリヤルの慟哭、大義を掲げながらも実は何の取り柄もないブレイビクの驕り、プロとして職務を全うするリッペスタッドの苦悩が重く響き渡り、最後まで引き込む。これは考えされられる映画ではない。自由と民主主義のために守り抜くか、憎悪を憎悪で返す行為で国家を明け渡すかのどっちかだ。たとえ腸が煮えくり返っても、絶望して死にたくなっても、強く生き続けることがブレイビクに対する最大の"復讐"。現在でもブレイビク信奉者からの脅迫電話が被害者家族には絶えない。多様性の代償がこれならば、この事件と民主主義を揺るがす戦いは、ポピュリズム台頭の時代においてまだ終わっていないのだ。 [インターネット(字幕)] 7点(2018-11-03 20:17:29) |
13. ジャンゴ 繋がれざる者
《ネタバレ》 緊張感ある会話劇で観客を繋ぎ止め、激しいバイオレンスで爆発させる。それを除けば、タランティーノにしてはビックリするほど正攻法な映画で、小手先のテクニックに頼らずとも、もはや巨匠の粋に入っているほどの演出力と画の重厚さを証明させる。同時に若さゆえの鋭さがなくなって、ちょっと寂しい限りだが。我慢に我慢を重ねて、キャンディを撃ったのが同じ白人のシュルツであり、ジャンゴが止めを刺した黒幕が同じ黒人のスティーブンというあたり、善悪のステレオタイプに陥らないタランティーノの知性の良さが感じられた。とは言え、165分はとにかく長く、ラスト20分の仕切り直しはいらなかったような。クライマックスの銃撃戦で決着をつけて欲しかった。 [映画館(字幕)] 7点(2018-06-23 16:50:00) |
14. シッコ
「意見が偏っている」云々はともかくとして、日本の医療制度が如何に恵まれているか再確認できる。ただ、財源が確保できなくなったら、アメリカみたいになってしまう危うさがあり、国家に全体を委ねず、健康管理は可能な限り自分で徹底しないといけないだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2018-02-11 23:03:45) |
15. シュレック
ディズニーアニメに対するアンチテーゼ、お伽噺の型に囚われない自由な作りが記念すべき第一回長編アニメ賞に輝いた理由だと思うがただそれだけ。心に残るかと言えばまるで印象に残らない。シニカルとパロディで攻めている割にストーリーが薄い。モンスターに対する偏見と誤解、心の交流を描いているという意味では『モンスターズ・インク』の方が遥かに素晴らしかった。 [DVD(吹替)] 5点(2018-01-19 20:28:47) |
16. シューテム・アップ
《ネタバレ》 「多種多様なガンアクションをやってみたい」という中二病的発想を金かけて映画にしただけなので、中身や倫理はお構いなし。カラクリ屋敷に住む主人公が生ニンジン大好きだったり、黒幕がわざわざ前線に赴いて指揮するあたりがコミック的。B級の面白さがプンプンにおうのに何故か乗れないのは、ガンアクションだけ(一応のストーリーはあれど)ということと、終盤の拷問シーンでもっとB級に徹してもいいのに何故かリアルでそれで醒めてしまったかも。気軽に楽しめたいのに変に凝ってしまうと楽しめない。B級映画って難しい。 [DVD(字幕)] 4点(2017-11-03 21:41:01) |
17. シカゴ(2002)
《ネタバレ》 "All That Jazz"(なんでもあり)なシカゴに咲く悪の華。登場人物全員がほぼ悪人で共感性ゼロ。ロキシーの夫は唯一の善人であるが、あまりに情けなくて妻に不倫されても仕方ない気がする。無実の罪で縛り首になってしまった移民の女性もそう。この悪で華やぐシカゴでは善人が生きていくにはあまりに熾烈だ。そう、ひたすら強かで狡猾で悪を愉しんだものだけが生き残れる。我々もそうやって"愉しむ"のが本作の唯一の観賞法だ。ミュージカルは普段虚構として描かれ、夢が叶うや否や、現実のミュージカルで偽の機関銃をぶっ放すロキシーとヴェルマ。現実の悪と虚構の悪は表裏一体の鏡のよう。歪なアメリカンドリームを風刺した、アメリカらしいエンターテイメントの快作。 [映画館(字幕)] 8点(2017-04-28 20:55:06) |
18. しあわせの隠れ場所
《ネタバレ》 美談ならではの胡散臭さがある。「それならなぜ他の黒人も救わないのか?」と。少年の恵まれた体格を見るに、そういう打算もあったかもしれないし、キリスト教的慈善事業の背景も、日本では理解しがたい複雑な事情もあるだろう。何もしない第三者が偽善だとあーだこーだ叩いたところで、サンドラ・ブロック演じる母親は「やかましいわ」と一蹴する。それだけ肝の座った芯の強いヒロインを体現していて清々しかった。彼女がいなければ、この映画自体空中分解してもおかしくなかった。全体的に悪い映画ではないが、ああ取り上げられてしまった以上、あの家族が転落しないことを切に願うばかりである。 [DVD(字幕)] 5点(2017-03-09 22:40:43) |
19. 処刑人
《ネタバレ》 兄弟が執行する→現場に刑事が来る→刑事が再現・推理する 最初は新鮮に映えるもこう繰り返されるとテンポが悪く、冗長な印象が否めない。イケメンな兄弟が神の代行人として悪人を殺しまくる過激な設定は面白そうだが、ミスマッチなオープニングといい、スタイリッシュと勘違いしたキレのないアクションの数々にはタランティーノにも及ばない。ロッコがさらにテーマをややこしくさせているように見えた。詰め込み過ぎて贅肉ありすぎだ。エンドロールのインタビューで消化不良が頂点に達した。続編は見ない。 [DVD(字幕)] 2点(2016-10-05 00:37:39) |
20. 死霊の盆踊り
『時計じかけのオレンジ』のルドビコ式心理療法を追体験する映画。確かにこの映画は「気を失うほどに恐ろしい」・・・あまりのつまらなさに。 [DVD(字幕)] 0点(2016-08-29 20:05:50) |