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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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181.  肉弾鬼中隊(1934)
偵察隊のメンバーが単発で狙撃されていく際の簡潔であっけない音響が逆に怖い。  隊員達の間で交わされる対話は、故郷の家族のことであったり、 マレーシアの思い出であったり、12時間後に祖国英国を照らすだろう月の 美しさであったりするが、それらの回想場面は一切入ってはこない。 映画はひたすら現地現在進行形で進み、観客は俳優の表情や語りから その会話内容に思いを馳すことになる。  が、この人数でこの尺ではやはり無理があったか。 隊員個々のプロフィール描写も淡白にならざるを得ない。  砂漠に立てられた6本のサーベルの墓標も、欲をいえば逆光で撮って欲しかったところ。 やはり相応の尺を獲得してこそ、『七人の侍』の墓標は強烈な イメージとなったのだろう。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 6点(2014-09-05 21:12:19)
182.  プリースト判事
ここでのウィル・ロジャースは特に判事の業務を行うわけでもない。 トム・ブラウンとアニタ・ブラウンの仲を取り持とうと、 ゴルフボールを飛ばし、茂みの陰で一人芝居をし、飴を伸ばしと、 ひたすら具体的に行動する。二人を物理的に近づけるために。  その周囲を、ステッピン・フォチェットら味のある黒人俳優が 音楽的なイントネーションで語らい、歌う。  さらには、ヤギやアヒルや鳥たちも視覚と聴覚を賑わかし、 大合唱が大団円を盛り上げる。  そんな飄々としたウィル・ロジャースが暗闇の部屋にランプを灯すと、壁に 飾ってあった妻と息子らしき肖像写真が明りの中に浮かび上がり、 それを静かに見つめる彼の顔が写真の家族と重なり合う。  こうした何気ない静かなひとときのうちに、 彼が若い2人のために世話を焼く心中までが 滲み出てくるようで、愛おしい。    
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-09-05 17:06:21)
183.  剃刀の刃(1946)
タイロン・パワーがインドの山上で啓示を受ける。 物語的に肝心であるべき箇所で描写を怠り、 その悟りを口頭説明で済ませてしまうことで映画への興が醒めてしまう。  全般的に過剰気味の台詞と対話芝居の重視、そして徹底したパンフォーカスの カメラはきわめて舞台的な演出だ。 その上で施された映画的演出の一つが、アーサー・C・ミラーによる 縦横無尽のカメラワークだろう。  パーティ会場やレストラン、パブなど多彩なエキストラが多数入り乱れる 躍動的なモブシーンを後景に、主要人物が画面手前で会話をしている。 と、背後の群衆の中から不意にアン・バクスターやらクリフトン・ウェッブらが 画面手前に入ってきて話者が連鎖的に入れ替わっていく。 その嫌味なくらい統制のとれた人物の出し入れのタイミングとフレーミングが圧巻だ。  パン・フォーカスのシャープで密度の高い縦構図と、そこにさらに奥行きを加える 流麗な移動画面。 その背後の群衆の中から何時どのように主要人物を中心化させるのか、 手前の複数の人物をどう出し入れし、どう移動させて構図を決めていくのか。 そしてどこで俳優の表情芝居にクロースアップするのか。  物語映画でありながら、その説話展開以上に画面展開の緊張で見せていく映画である。  そのキッチリしすぎた段取り感がやはり仇ではあるが。    
[DVD(字幕)] 7点(2014-08-26 22:44:39)
184.  ラストミッション
西部劇への目配せからしてヘイリー・スタインフェルドを抱き上げる ケヴィン・コスナーはなるほどナタリー・ウッドを抱き上げるジョン・ウェインなの だが、スーツ姿への衣装変化と故ホイットニー・ヒューストンを抱え上げた 『ボディガード』も経由して重ね合せるなど、ポイントごとに 映画的感慨を刺激してくるのも悪くない。  父娘が『明日に向かって撃て』的に自転車を二人乗りする坂道や、 ラストの白い崖と入り江の別荘に至るまで 勾配や高低をドラマに活かしたロケーションの数々が印象的であり、とりわけ 父が娘に自転車を教えるシーンは高台から見下ろす街並みの景観と自然光あっての 情趣だ。  そして開始早々は彼女が主役かと思いこまされる、アンバー・ハード。 以降、思い出したように登場するのみでありながら、それでいて彼女の放つ妖しさ・ クールビューティぶりも鮮烈だ。  携帯の着信音のギャグなど、何とか携帯電話を映画的に活用しようとする意欲も買う。    
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-08-21 23:46:22)
185.  ノア 約束の舟
景観のショットは景観としてフィクスで抑えておけばよいのに、 CGには死角はないとばかりにあちらもこちらもとカメラが嬉々として飛び回る。 だから画面内の世界が小ぢんまりしたCG的箱庭スケールに堕してしまう。  合戦シーンの縦横無尽に「目移り」するカメラワークは、それだけで安っぽい。 CGをそのままCG的に提示してしまうセンスの無さは『ブラック・スワン』から まるで進歩がない。 自制を欠いたCG画面は単に無節操なだけの視点を生み、 無機質な物量に対する不感症を生む。 手作りミニチュアワークのほうが却って文化的な驚きと感動をもたらすだろう。  映画はただただ非映画的観念論議に明け暮れ、 また一方では虚仮威しの空虚なスペクタクルに堕する。  そして肝心な主人公一家の生活の細部は一向に描写されることはない。 労働でも娯楽でもいい、そうした暮らしぶりのディティールの積み重ねなくして 人間の描写はなかろうに。 そこから逃げている。     
[映画館(字幕なし「原語」)] 3点(2014-08-16 22:23:03)
186.  オール・ユー・ニード・イズ・キル
敵方の動きを想定した訓練機器に何度も激しく弾き飛ばされるスタントも トム・クルーズ本人がチャレンジしているのだろう。 その果敢なアクション魂が彼への好感度を一層高める。 重火器装備で動きやスピードが制限されかねないスーツを纏いながら、よく動く。  反復学習によって、練度を上げていく主人公のアクション。 その予測動作とリアクションの面白さを、例えば一連の長廻しショットの中で 捉えていくなどすれば、よりキートン的な活劇になっただろうに。 この映画では、それがカッティングのリズムの面白さに留まっている。  その意味で、火器としての見せ場も少ない上、 トム・クルーズの動きを鈍重にしてしまうスーツはさして映画に貢献していない。  その装備を外し、肉体アクションが弾むべきクライマックスが 大状況の物語の側に収斂し、失速しているのも惜しい。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2014-08-13 15:06:59)
187.  GODZILLA ゴジラ(2014)
人間ドラマ部分は、冒頭の家族のシーンをはじめとして顔面アップのくどい、 相変わらずの平坦な主流ハリウッド式画面が続く上に、怪獣映画の宿命的な理屈付け に費やされるのだが、ひとたび特撮シーンになると画面は俄然、密度と奥行きを増す。  退避区域に打ち捨てられた車両のドアミラーに、対岸の風景 つまりカメラの背後の画を映り込ませたショット。 または、バスの窓に映るゴジラの背鰭と、それをバスの中から見上げる子供たちと を重層化させたショット。etc. 反射物を利用して一つの画面空間に奥行きを生む工夫だ。  対峙する怪獣2体を、間に挟まれた人間が交互に振り返りながら仰ぎ見るショット。 津波に埋もれる街路から、次々と停電していくビルの窓を追いながら上昇し、 屋上から発射された照明弾を追っていくと、 左手に巨大生物の皮膚が黒光りしながら浮かび上がってくるショット。  これらはカットを割らずにカメラを持続的に移動させて空間を広げることで、 立体感と巨大感を生む工夫だ。 その持続的なカメラは、ゴジラの見得切りのタメと外連でもある。  ビル群や粉塵の演出は勿論のこと、海鳥をその周囲に飛ばせること、 チャイナタウンの瓦屋根や 赤い提灯を画面手前に配置しての構図取りなど3Dを意識した芸も細やかだ。  東宝特撮映画には必須の、火薬大爆破シーンも取り入れて抜かりない。  ドラマにかかわるわけでもない、退避地区の野犬や線虫。津波に追われる犬。 東海岸のコヨーテや海鳥など。役割がなくとも何気なく画面に現れる動物たちも 映画を単調にさせないアクセントとして気が利いている。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-08-02 14:09:43)
188.  とらわれて夏 《ネタバレ》 
幾度も挿入される回想シーンが、ケイト・ウィンスレットのものなのか ジョシュ・ブローリンのものなのか。 瞬間的に把握しづらいところがあり、また類似場面の反復でもあって 物語を停滞させている気味があるが、それもまた 登場人物を苛むとらわれのイメージを増幅させてもいる。  時代背景を仄めかす映画ポスター類も序盤でさりげなく提示されるのみ。 ラストに活かされるパイ作りのシークエンスも思わせぶりなところが まるでない。そうした慎ましやかさが好ましい。  大団円の後日談。2人が並び歩く一本道の脇に揺れているのは何の作物だったか。 柔らかい光の中に静かに波打つ枝葉の音。 このラストショットが圧倒的に素晴らしい。 グリフィス的原風景に万感の叙情があふれている。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2014-08-01 15:25:28)
189.  リベンジ・マッチ
折角のファイトシーンも俳優のシェイプアップも、 ロッキー完結編のインパクトの後ではかなり分が悪い。  トレーニングメニューや練習場所のロケーションも様々に趣向を凝らすが、 これもやはり二番煎じだ。  それでも随所に散らばるユーモアがいい。 それらの積み重ねが、逆にふとシリアスになるシーンを活かしている。 特にアラン・アーキンの軽妙な芝居が絶品だ。       
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-05-03 00:17:16)
190.  ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
権威を盾にするわけではないが、宮崎駿などは当然ながら解っている。 「(ロード・オブ・ザ・リングの)原作を読めばわかりますけど、 実は殺されているのはアジア人だったりアフリカ人だったりする。 それがわかんないでファンタジーが大好きって言ってるのは、馬鹿なんです。」 (『ダーク・ブルー』パンフレット)と。 原作など読まなくても映画を見ただけで解るが。 9.11を経て、なおも「ピュア」に勧善懲悪を楽しめてしまうような、 隠喩も解らぬ「馬鹿」な大人にはなりたくないものだ。  この、他種族を殲滅してメデタシメデタシという欺瞞的でうすら寒い大団円には 反吐が出る。 古典という権威に寄りかかり、単に原作を絵解きしただけの、単なる原作従属物。 A級ならA級らしく、現代世界への問いかけくらい含ませたらどうか。   おまけにこのダラダラと間延びした後日談はもはや拷問である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 0点(2014-04-05 22:43:51)
191.  LIFE!(2013) 《ネタバレ》 
映画がラストで裏方の功労者を賞賛するのなら、 その彼らの労働を前段で何らかの形で描写すべきだろう。  同様に、ラストで名残を惜しむ部下とベン・スティラーの対話を出すのなら、 その裏付けとなる二人の信頼と協働の関係もせめて描写しておくべきだろう。  そして肝心なカメラマンのショーン・ペンとの信頼関係が語られるのなら、 それは口先ではなくそれこそプロフェッショナルとしての 具体的なネガ現像処理の仕事の確かさによってであるべきだろう。   それらが見事なほどに端折られている。単に説明で済まそうとは虫がよすぎだ。 そこに、裏方仕事など描写に値しないとの作り手の考え方が露呈しているわけだが。   本作が冒頭から描くのは、主人公の同僚の女性に対する懸想だけであり、 会社のモットーやら、仕事への矜持やらは主人公の自己申告による 単なる説明台詞があるだけだ。  一見地味で、単調で、脚光の当たらぬnegative asset manager としての業務。  それを具体のアクションとして見せておいてこそ、 それを切り取った一瞬間の表紙写真がラストで 感動をもたらすのではないのか。 (そもそもマクガフィンを見せてしまう事自体、とてつもない野暮だが。) その抑えたタメがあってこそ、主人公の乗り出すpositiveな冒険の開放感が 引き立つのではないのか。  前半の派手な妄想の視覚化もインフレ状態で、逆に主人公の飛び出すロケーションの インパクトを相対的に弱めている。 彼が翻意してヘリに飛び乗る瞬間のエモーションも活きてこない。  映画的センスとやらを疑うしかない。  次第に魅力を増していくクリステン・ウィグが救いだ。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2014-03-28 22:34:52)
192.  アメリカン・ハッスル
冒頭の鏡に映った主人公とか、少年の割るガラスとか、クリーニングの衣装の波とか、 思わせぶりでありながら、なんら映画的な面白さにならない。  各俳優の既成イメージを逆手に取りましたといった、 これ見よがしの役づくりもあざといばかり。 選考の傾向と対策を抜かりなく踏まえたような「芝居合戦」とやらには辟易する。  冒頭のさわりから続いて早くも、主人公の来歴やら、二人の出会いやらのフラッシュバックへ。『ラッシュ』などもそう。近頃このパターンの何と多いことか。 ああ、時間の巻き戻しがまた始まったとうんざりする。 何故、この程度を現在進行形で語れないのか。 やるのなら、ウェルズやベッケルのような、必然性と意味のあるフラッシュバックで 一気に引き込んで欲しい。  無駄で無意味な時制弄り。  そんなところも、映画の失速の原因ではないか。  ロバート・デ・ニーロの登場からようやく締まる。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2014-02-27 15:17:52)
193.  クラブ・ラインストーン/今夜は最高
ニューヨーク夜景の空撮から始まって、その華やかな金髪とスパンコールの輝きを 伴いながら笑顔を振りまくドリー・パートン。 相方には、ギンギラの衣装でカントリーミュージックを熱唱する シルヴェスター・スタローン。  二人が演技以上の親密さで共演するステージシーンがそれなりに煌びやかでいい。  彼らの仲睦まじいツーショットを収めるためのシネマスコープサイズと云っても 過言ではない。  中盤の長閑なテネシーの場面でも、シネスコを活かした二人の配置と照明によって 印象的な画づくりをいくつか見せてくれる。  『オスカー』以降のコメディ演技にはどうにも無理矢理感があるが、 ここでのスタローンは音楽に、コメディにと果敢な意欲を見せる。 ほとんど無謀だが。 ともあれ心底楽しげに弾けているところが微笑ましい。        
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2014-02-17 20:49:00)
194.  曲馬団のサリー
ホークス『ハタリ!』の遥かな先駆けともなる小象のアクション。 迫力の白煙と放水の中で繰り広げられる列車と自動車の痛快アクション。 加えてキャロル・デンプスターが身体を張って懸命に走る、飛ぶ、よじ登るの クライマックスの大アクション。 そして随所に散りばめられたユーモラスなギャグに、華やかなダンスシーン。  その盛りだくさんのエンタテインメント精神も感動的だが、 それ以上にこの原初的アメリカ映画が胸を打つのは、 その快活なヒロインがふと垣間見せる、人を恋う孤独の表情だ。  南部のカーニヴァルにやってきたデンプスターが街中を一人で歩く。 誰のものとも知れぬ「母を悼む」墓石に彼女は一輪の花を手向ける姿が愛しい。 育ての親W・C・フィールズを慕い、幾度も抱き合い、全身で情愛を示す。 招かれた祖父母の家で、それと知らずに祖母と見つめ合い、触れ合うショットが美しい。  人を恋う、その普遍的・根源的なエモーションとアクションとの一体化が 強く心を引きつけてやまない。  ラスト、一人去りゆくW・C・フィールズに必死にしがみつくデンプスターの 見目はばからぬ懸命な身振りには涙、涙だ。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 10点(2014-02-13 00:42:32)
195.  ラッシュ/プライドと友情
ハワード・ホークスのように、プロフェッショナル達を描く。  初めてのレースシーンに流れる『GIMME SOME LOVIN’』の選曲と、 リアミラーを駆使したスピーディなカッティングは『デイズ・オブ・サンダー』の 故トニー・スコットへのオマージュかと思えば、そもそも音楽担当はハンス・ツィマー なのだった。  激しく煽られる芝生、土埃、雨飛沫といった対象物によって表現されるスピード感。 雨降る最終レース、スタート前の二人が交わす視線の交錯が印象深い。  そういえば、南波克行氏のロン・ハワード論でもかつて「水に飛び込む」ショット へのこだわりが指摘されていたが、このレース映画にも水への飛び込みが 抜かりなくワンシーン挿入されている。 ダニエル・ブリュールとアレクサンドラ・マリア・ララが結婚した夜のプールシーン がそれである。 そして、そこに繋がる二人の対話シーンが美しい。  窓外を見つめるクールなダニエル・ブリュールの胸部に ロン・ハワードがガラス窓を通して反射させるのは、 スピルバーグのような紅い炎ではなく、碧い水の揺らめきなのだ。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2014-02-11 17:17:01)
196.  恐怖のまわり道
スクリーンプロセスの多用などはいかにも予算の制約を感じさせつつ、 一方ではトム・ニールの電話シーンに交換手がそれを繋いでいくショットを律儀に 入れもする。 低予算映画ならば真っ先に削れそうなショットなのだが、この簡潔な長距離電話の描写が あってこそ、後の大陸横断ヒッチハイクの距離感が印象づけられることになる。 同時にその電話線もまた終盤に活きてくるわけで、巧い。  道中、最初の思わぬ悲劇。 黒い車体に降りかかる激しい土砂降りの雨が、それだけでその後に主人公が陥っていく 泥沼状況を予感させる。 助手席で眠っていたかと思われたアン・サヴェージが不意に目を開けて 運転席のトム・ニールを凝視する、それだけの動き、その無表情がなんとも恐ろしい。  レコード盤からドラムへと、円によってスムーズにフラッシュバックへとカットを 繋ぐなど、編集の工夫も随所で光る。  満載されたノワールの意匠と低予算ならではの美徳が、不思議な魅力を放っている。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-02-07 23:42:25)
197.  モロッコ慕情
テロリズムの蔓延るフランス占領下のシリア・ダマスカス。 シビアな政情を生きる男たちの面構えがいい。 ハンフリー・ボガートの居所をフランス軍に売る男は職業俳優だろうか。 脇役ながら、如何にも殺伐とした世界を生き抜いてきたというような 凄みを感じさせるしたたかな顔貌がいい。  リー・J・コッブの強面がそれに負けていないのもいい。  映画は夜のシーン、地下のシーンが中心となり、閉塞感を増す。 狭い路地や地下住居の設計が独特の闇を創り出し、異国の趣を漂わせている。 とりわけ、ゲリラ達との接触場所となるローマ時代のカタコンベの美術が素晴らしい。  
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2014-02-01 21:36:25)
198.  スージーの真心
密かに献身し慕っていた幼馴染みウィリアム(R・ハーロン)が他の女性との結婚を 決めてしまう。 溢れてくる涙を扇で隠しながら硬った笑顔を見せるスージー(リリアン・ギッシュ) の仕草がいじらしい。 そんな彼女の純朴でせつない表情・身振りの釣瓶打ちだがそれがまるで媚にならない。 単なる可憐さだけでなく、品位そして愛すべき愚かさといったものまで 豊かに表現しているからだろう。 グリフィスが彼女にひたすらクロース・アップしたくなるのも無理はない。  ハーロンの後をついて小道を歩くリリアンが、右足をふっと真横に蹴るような 仕草をする。そのあまりにも何気ないささやかな動作ひとつで、架空のキャラクターに 一気に魅力的な生命を吹き込んでいる。 彼女の自伝によると、やはりこのシーンの演技などは批評家にも評価されたらしい。  二人が並んで村の小道を歩いていく。並木がやさしく揺れ、道端で子牛が一頭寛いでいる。 この詩情あふれる1ショットの美にも打たれる。    
[DVD(字幕なし「原語」)] 10点(2014-01-26 02:06:04)
199.  条理ある疑いの彼方に 《ネタバレ》 
法廷内に据えられたテレビカメラが、審理の模様を中継している。 米国ならではの光景だ。 被告席に座るダナ・アンドリュースは彼に向けられたカメラを正面からじっと見据える。 彼を追い詰めていくのは、自らが捏造した状況証拠だけでなく、 マスメディアのレンズでもある。 『暗黒街の弾痕』のラストで、ヘンリー・フォンダを捉えるライフルの照準器のように。  映画のラスト、奥のドアへと退出する彼に、カメラのフラッシュが追い討ちをかける。 彼に浴びせられる、その唐突な白光が容赦無い。  予断を煽る新聞のセンセーショナルな大見出しや 儚く灰となる、証拠写真のネガ。  そこにメディアの危うさもまた浮かび上がってくる。 
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-01-25 23:56:24)
200.  呪いの家
夜の屋敷内、蝋燭の灯だけを光源とした照明設計が魅惑的な闇を創りだす。  その黒の中に白い影が亡霊のように浮かび上がる。  クライテリオン盤DVDはチャールズ・ラングJr.の モノクロームの美をよく引き出している。  巻頭の目眩く波間の空撮。 リスを追いかける犬のアクションによって家そのものをも演出していく手際。 女優陣を愛でるエレガントで艶やかなクロースアップ。 スクリーンプロセスと、緩やかな海風とボートの揺れとの見事なシンクロ。 その画面の充実ぶりはラストの夜明けの美しさまで一貫している。  萎れる花や、捲れる書物の頁など、慎ましい特殊効果もゴシックムードに相応しい。  崖から落ちかけるゲイル・ラッセルのロングショットには息を呑む。   
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2014-01-19 22:07:15)
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