501. セント・オブ・ウーマン/夢の香り
何を置いても曲のある退役軍人を濃厚に演じるアル・パチーノの存在感とそのパフォーマンスが素晴らしい。渋くカッコ良さを存分に魅せながら同時に人間の哀愁をまざまざと感じさせることにおいて彼ほど秀でた俳優は他にいないのではないか。アル・パチーノというと若い頃のギラギラとした雰囲気が印象深い人も多いと思うが、昨今ますますその磨きのかかった老獪さに尊敬の畏怖さえ感じる。クライマックスでは感動的というよりも、人間として身震いを感じた。 [ビデオ(字幕)] 8点(2003-12-13 20:59:43) |
502. グリーンマイル
触れ込み通りの感動的というよりも、ラストに集約される哲学的なストーリーが感慨深い。だから感動して泣く映画ではなく、ファンタジックなストーリーに裏づけされた人間の業を描いた映画と言える。 [映画館(字幕)] 8点(2003-12-13 20:41:26) |
503. 恋におちたシェイクスピア
観る前のイメージに反して非常にテンポの良いストーリー展開と小気味いいキャラクター陣が大いに楽しめた。主演のグウィネス・パルトロウとジョセフ・ファインズの雰囲気がとても文芸的で映画世界にマッチしていたと思う。演出、映像世界など映画自体の完成度も極めて高く、存分に満足できる娯楽文芸映画だった。 [ビデオ(字幕)] 8点(2003-12-13 19:46:08) |
504. ミッション・トゥ・マーズ
宇宙への無限性という、宇宙哲学を語る上では王道的な主題をクオリティの高い映像と共に見せつけてくる秀作であった。宇宙空間の虚無とか未知を精神世界のそれとリンクさせる展開は非常に興味深く、一生命体としての感慨深さを感じた。ティム・ロビンスが早々に消えてしまうのには残念だったが、極めて完成度の高い映画だったと思う。 [DVD(字幕)] 8点(2003-12-12 01:19:22)(良:1票) |
505. ハルク
アメコミのヒーローものを映画化した作品は数多いが、この「ハルク」ほど実写で撮る、生身の人間で描くという行為にふさわしいキャラクターは他にないと思う。それはやはり、このキャラクターの深く斬新な人間としての葛藤に他ならない。己の中での多大な苦悩と怒りと共に文字通り体を爆発させるその様は、映像化にふさわしいインパクトとドラマ性に溢れている。哀しいまでに膨れ上がり、超越した緑色の体が大地を疾走する姿は、衝撃という娯楽性をも超越し感動的ですらある。 [DVD(字幕)] 8点(2003-12-08 16:42:34) |
506. パーフェクト ストーム
災害パニック映画は大好きな私であるが、今作の完成度の高さは数ある災害映画の中でも随一でなかったかと思う。神の意志さえ感じそうな荒れ狂う高波のCGは圧倒的なクオリティの高さだった。何よりも私が感心したのは、今作のラストである。このラストこそ、最も災害を真摯に描いた結果だと思うのだ。 8点(2003-12-05 16:15:11) |
507. 雨に唄えば
有名すぎるほどの土砂降りの中でのダンスシーンは流石に素晴らしく、圧倒的な迫力があった。ストーリーに説得力やリアリティなんて皆無だが、それでもその映画世界に引き込まれる。これこそ映画の最大の魅力であり、娯楽映画のエネルギーであろう。 8点(2003-12-03 13:05:36) |
508. 現金に体を張れ
あらゆるクライムサスペンス映画の原点とも言えるストーリー展開は大いに楽しめた。40年以上前の映画でありながら、古めかしくなく、テンポの良い展開にスタンリー・キューブリックの先行性が感じられる。 8点(2003-11-30 14:20:54) |
509. カッコーの巣の上で
ストーリー的な評価は価値観の違いによって左右すると思うが、ジャック・ニコルソンの演技は凄かったと思う。彼の俳優としての根底の素晴らしさを見た気がする。ラストシーンには安易に感動できない問題の根深さが感じられ、映画として非常に味わい深い作品であることは間違いない。 8点(2003-11-30 14:13:35) |
510. サイコ(1960)
古き名作サスペンスにはあまり衝撃を感じないのだが、今作ばかりは別格だった。徹底的に張り巡らされた緊迫感は見事と言うしかない。色あせないこの緊迫感はやはりアルフレッド・ヒッチコックのサスペンス映画における極めて巧妙な映像作りによるものだと思う。今尚、この手の映画の手本となり、その追随を許さないこの映画のクオリティの高さに感慨深さを覚える。 8点(2003-11-30 13:47:51) |
511. ジキル博士とハイド氏(1941)
原作も完全には読んでいないし、映画版も観たことがあるのは今作のみだけど、今作は小説の世界観を忠実に表現できていると感じた。もう60年以上も前の作品で、映像的にはかなり古めかしいけど、それがすこしも陳腐ではなく趣向を凝らした映像作りには味わい深いものがある。この物語独特の緊迫感と恐怖感を見事に映像化している。 8点(2003-11-29 02:02:08) |
512. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
チープに見える映像とストーリーの中に、人間に対する本質的なブラックユーモアを巧妙に仕掛けている。ナンセンスな演出の中に潜む絶対的な問題意識が素晴らしい。鬼才の名にふさわしいスタンリー・キューブリックの傑作。 8点(2003-11-28 17:57:33) |
513. ザ・グリード
B級モンスター映画ファンとしてはたまらない出来栄えの映画だった。まずモンスターのキャラクター性が素晴らしかったと思う。船全体を張り巡らさんばかりのモンスターの造型は破天荒でユニークだった。B級らしいノリの良さも特筆すべき爽快感に溢れている。ラストの痛快感もすばらしい。「トレマーズ」に次ぐモンスター映画の傑作である。 8点(2003-11-26 13:23:15) |
514. ディープ・ブルー(1999)
“人喰い鮫”を描いた映画と聞いて世界中の誰しもが思いつくのは、もちろん「JAWS/ジョーズ」だろう。 しかし、人喰い鮫の“モンスター映画”とジャンルを更に絞るならば、今作はかの名作をも凌ぐ。 高校生の時に今作を映画館で観て、その想像を超えた面白さに驚いて以来、その考えは今なお揺るがない。 かの名作の存在に怯え、誰もビッグバジェットで同じ題材の映画製作に挑まなかった中、持ち前の大仰なエンターテイメント性を全面に打ち出し、挑んでみせた監督のレニー・ハーリンを褒めたい。 他のモンスター映画の傑作を見ても感じるが、誰が撮っても同じだろうと安易に考えてしまいがちなこの手の娯楽作品ほど、監督の手腕が大いに影響するもので、今作はまさにその顕著な一例だと思う。 遺伝子操作によって生み出された“マンガ”のように巨大で凶暴で利口なサメ自体のキャラクター性とビジュアルも凄いが、この映画で特筆すべき最たるポイントは、モンスター映画における「生き残りの固定概念」が通用しないということに尽きる。 その辺のモンスター映画であれば、映画の冒頭で登場人物が一通り紹介された時点で、誰が死んで誰が生き残るだろうということは何となく分かるものだ。 しかし今作は、誰がどの順番で死に、最終的に誰が生き残るという予測が立たない。 僕自身そうであったように、序盤のある人物の死に対して「え!いいの!?」と、大いに面食らってしまうハズ。 (特に1999年の公開時においては、あの人があのタイミングでヤラレるというのは反則にすら思えた) そして、いちいち登場人物たちの“ヤラレ方”が豪快なのも良い。 これが最も「ジョーズ」とは異なる部分かもしれないが、襲われそうな恐怖を感じさせることよりも、巨大な人喰い鮫に襲われるまさにその瞬間の迫力を優先している。問答無用に殺される登場人物たちも、“喰われ甲斐”があるというものだ。 そういういかにもモンスター映画の宿命的なB級ノリに相応しい豪快さが、この映画を何度も観たくなる最大の理由だろうと思う。 [映画館(字幕)] 8点(2003-11-26 00:24:08)(良:1票) |
515. スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
スター・ウォーズ旧三部作を一応は観ていても、あまりこのシリーズ自体に魅力を感じていなかった者にとっては、初見ではそれほどの面白味を感じることができない。だが、今回また見直してみると、作り込まれたエンターテイメント性は流石のクオリティを見せ、物語自体の深みも増して見えた。希望に満ち溢れて見えるアナキン坊やがふいに見せる一寸の“不安”や続編への伏線となる“懸念”もしっかりと描かれており、映画としての完成度の高さをうかがうことができた。 [DVD(吹替)] 8点(2003-11-25 14:55:34)(良:1票) |
516. ハムナプトラ/失われた砂漠の都
娯楽映画はハリウッドを中心に毎年大量に量産されているが、近年においてはもっとも「娯楽映画」という名にふさわしい映画ではないかと思う。もちろん広く見れば、今作よりも優れたエンターテイメント映画は数多いが、あえて娯楽映画という言い方に限定すれば、そのノリの良さ、展開の小気味良さを考慮して今作は極めて秀逸である。 8点(2003-11-25 14:22:29)(良:1票) |
517. レ・ミゼラブル(1998)
あまりこの映画は知られていないが、名作である原作をとても巧みに映画化した秀作である。暗く不穏な空気感が見事で、原作の濃厚さが映像から伝わってくる。配役も実によく、主役のリーアム・ニーソンはこういう大河的なドラマの主役をやらしたら右に出る者はいないと思う。敵対役のジェフリー・ラッシュの演技も素晴らしく、ラストの果て方は非常に鮮烈で印象的だった。 [映画館(字幕)] 8点(2003-11-18 11:40:48) |
518. ロスト・イン・スペース
未知なる宇宙を舞台にした漂流記で、ストーリーにしてもヴィジュアルにしても非常に娯楽性が高い映画に仕上がっている。宇宙で迷子になる家族に襲いかかる危機は絶望的であるが、ノリとテンポの良さで回避していく展開には爽快感と痛快感に溢れている。ラストも実に心地よく、是非続編を作ってほしいと思う。 8点(2003-11-16 18:09:04) |
519. 始皇帝暗殺
中国映画らしい映像の怒涛の迫力と美しさは見応えがあった。尺的には長かったが、ストーリーにメリハリが効いていたのでそれほど長さは感じなかった。コン・リーが美しく儚い印象的な存在感を残していたのに対し、男優陣は巧さはあったが華がなかったのが惜しかった。全体的には見応えの大きい秀作と言える。 8点(2003-11-15 01:26:43) |
520. 十二人の怒れる男(1957)
ほとんど密室で描きつくされているにもかかわらず、人間性の衝突による迫力が物凄い。物語の焦点は、事件に対する判決であるが、描いているテーマは真に迫った人間性である。その濃厚な脚本に、密室の暑苦しい空気感が加わり、文字通り密度の高い名作である。 8点(2003-11-14 23:53:31) |