541. 天地創造
そのものずばりというか何のひねりもない(ひねりようがない)、旧約聖書のどストレート版。アダムとイブからカインとアベルからノアの方舟からバベルの塔から、言葉の解説では知っていたけど実はあまり分かってないものが、次々と実写として再現されていく。台詞は少なめ、むしろナレーション主体で、映画としては説明的に過ぎるという感は免れないのだが、それでもここまで「再現」に徹した姿勢は、やはり一本の筋を感じさせる。ノアの方舟の美術的なこだわりもなかなかのもの(撮影の昂揚した雰囲気まで伝わってくる)。アブラハムに入ったあたりから何となくだれてくるのが残念。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-07-29 00:47:30) |
542. ファントム・スレッド
デイ=ルイスにこんなにもオーラを感じない作品ができてしまったとはね・・・。やっぱりこの人は、歪んでたり、異形だったり、変態だったりする役でいてほしい。ヒロインにもさして魅力がないので、主人公がなぜそこまでのめり込むのかが分からない。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2020-07-22 00:48:02) |
543. ブレス・ザ・チャイルド
それっぽく盛り上がりそうでありながら、最後まで盛り上がらない。それは、せっかく天使だ悪魔だというのを入れ込んでいながら、通常のサスペンス・アクションの枠内をまったく出ていないからです。こういう話は、はったりでそういう要素をむき出しにしながら、しかもそれが一般社会に融合しているという高度なテクニックとバランスが必要なんですけどね。ヒロインをサポートするのも、刑事そのまんま(しかも真面目刑事顔のジミー・スミッツ)とかではなく、何らか宗教関係者を持ってくるべきでした。 [DVD(字幕)] 3点(2020-07-19 02:34:44) |
544. スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー
タイトルからして、華麗に空を駆け回る爽快なスカイ・アクションを勝手に想像していたので、あまりにも汚い画質にがっかり。途中で気分が悪くなりそうでした。主人公2人のやりとりも、どこかで聞いたようなものばかりで、わざわざこの2人を投入する意味がまったくありません。 [ブルーレイ(字幕)] 3点(2020-07-18 00:37:20) |
545. ダークナイト(2008)
《ネタバレ》 ヒース・レジャーのジョーカーが作品のイメージを何倍も強烈なものにしていることはいうまでもない。ただ冷酷で残忍なだけではなくて、その中に常に「人の心を操作する」という明確なコンセプト(?)が存在する。そして確かに、彼の手法は、手法としては成功している、というか、「そうされたらそうなっちゃうよなあ」というところを的確に突いてきている。しかし、彼を破ったのは、警察でもなければバットマンでもなく、顔も見えない向こうの船の人々を信じる「人の心」であった。そこで彼は自らの敗北を悟る(おお、これはあのメフィラス星人と同じパターンではないか。道理で彼が格好良く見えるはずだ)。人心の良識が復活すればバットマンは社会に必要がない。だから、主人公は最後に甘んじて悪役を引き受け、その決断に説得力が出る。単にキャラクターの造形に頼ることなく、そこまで突っ込んだ世界を作品として作りあげたというところを評価したい。 [映画館(字幕)] 8点(2020-07-12 21:58:15)(良:2票) |
546. クォ・ヴァディス(1951)
この頃の歴史大作って、セットと衣装にばっかり凝ってて肝心の中身は何もない、というのが多いのですが、何と意外に面白かった。●マーヴィン・ルロイ監督といえば「哀愁」や「心の旅路」を連想してしまいますが、この作品も思いっきりそっち寄りで、もはや史劇作品の皮を被ったメロドラマです。大体、最初のところで、「男が気になった女を何とかして落とそうとする」というだけのために1時間以上もかけています(笑)。そもそもロバート・テイラー自体、色恋(というかほとんど劣情に近い)に悩むロマンス中年にしか見えず、戦場をかいくぐってきた武闘派の軍人にはまったく見えません。●それにしてもデボラ・カー、どんな場面でも、正面のショットではしっかり照明が当たっている。何と美しいこと! [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-07-12 01:23:17) |
547. ハリーの災難
思いっきりネタ一発のシチュエーション・コメディであり、しかも舞台劇風に限られた場で同じような取り合わせの人たちがああだこうだ喋っている。よって、秋晴れの光景の中に直立不動で横たわる遺体というシュールな構図がもたらすインパクトも、だんだん薄れてきますし、進めば進むほど単調になっています。それにしても、シャーリー・マクレーンはこれがデビューだったんだね。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2020-07-09 00:49:34) |
548. 引き裂かれたカーテン
《ネタバレ》 前半は何とものんびりした雰囲気で、やっぱりヒッチコックは、ずれた人とか間が抜けた人とかの方が本領発揮だよなー、こういう真面目な正統派サスペンスは向いてないよなー、と思わせます。ところが博士との対決から脱出に移行するにかけて、まるで別映画のように分かりやすくスリリングになってきます(それはそれでヒッチコックらしくない、と言えば言えるが)。脱出に自転車!バス!という身近なツールでかえって生々しさを感じさせ、ただ単に「関係ない郵便局職員が何回も出入りする」というだけで危機感を醸し出す。この辺りの職人芸は見事なのですが、逆に敵警官があちこちで再三登場するのはかえってだれてしまいますし、劇場のシークエンスもむしろ凡庸でした。●「フライパンで膝のお皿を打つ」というのは想像するだけで痛そうだなあ。あれは利きそうだ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-07-08 00:44:20) |
549. 蜘蛛女(1993)
レナ・オリンが「ただ怖いだけ」で、しかもそれが人格的な怖さではなく超人ゾンビとしての怖さでしかないので、話に引き入れられる前提を欠いてしまう。したがって、あれだけの妻と愛人にもともと囲まれていたオールドマンが何で振り回されるのかも不明。あんなケバメイクでも可憐オーラを放っているジュリエット・ルイスに4点。 [DVD(字幕)] 4点(2020-07-07 00:40:34) |
550. キングの報酬
ギアの口ひげ、全然似合ってないなあ・・・。選挙参謀の専門家を正面から取り上げた映画なんてほかにはそんなにないと思うので、貴重な作品のはずなんですが、出来がこの程度では意味がありません。そもそも誰と誰がどう敵対しているのかも途中までよく分からないし、主人公の本来の凄腕・冷血ぶりがきちんと描かれていないのも、作品のテンションを下げています。邦題も趣旨不明。 [DVD(字幕)] 4点(2020-07-06 00:15:57) |
551. ティアーズ・オブ・ザ・サン
《ネタバレ》 中盤までの展開は実に感動的で、「この後は、命令違反のブルース・ウィリスは軍からも見捨てられて、ジャングルの過酷な環境と迫り来る敵軍の攻撃の中、部下を次々に失いつつも、瀕死の状態でモニカ・ベルッチを安全地帯まで送り届け、それを確認したところでひっそりと絶命するんだろうなー」と妄想に浸ってそれだけで泣きそうになっていたら、あのラストには少々拍子抜け。結局は軍隊様々なのか?と突っ込みたくなりました。大体、「彼はなぜ命令に違反したのか」が最大のテーマなのに、結局は所属する組織に助けてもらうのだったら、テーマの意味がないではないか。 [映画館(字幕)] 5点(2020-07-04 00:38:27) |
552. THE CLASH ザ・クラッシュ
《ネタバレ》 「轢いた相手をそのまま家まで運んでしまった。さあどうしよう」という一発ネタだけで最後まで押し切る気合と迫力と手際はなかなかのもの。ただ、それ以外にあまりにも何もないというのが、ちょっと物足りないかな・・・。職場の上司なんかはもうちょっと使いようがあったような気もするけど。あと、最初に意味ありげに出てくるカートをくれたおじさん、その後路上での一瞬以外は出てこないですよね?これも何かもったいないような。 [DVD(字幕)] 6点(2020-06-29 01:41:00) |
553. フリーソロ
とにかく主人公(対象者)がやっていることがとんでもないわけなので、それを素直に撮っていくだけで、希少価値も存在価値もあるドキュメントができてしまうのです。ただこの作品の場合、「何でこの人はこんなことができるのか?」と同時に、「そもそもどうやって撮っているのか?」という疑問(というか驚嘆)を禁じ得ないのですが、その撮り方についても適宜説明が入れられて、それもまたドキュメントの一部をなしています。いつしか最後は、対象者や支援者はもちろん、この作品に関わったすべての人に対する敬意が湧いてきます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-06-25 02:34:43) |
554. ビッグムービー
《ネタバレ》 設定はすごく面白いはずなのに、ネタがついていっていない感じ。大体、マーティンがやっていることが滅茶苦茶なのだから、マーフィの方はそれを「一般人の立場から」受けてこそ面白さが引き立つはずなのに、精神的に不安定になって宗教(?)に逃げ込むという受け方では、仕掛けが仕掛けになってません。主演二人の演技も、お互いに遠慮したのか、何となく腰が引き気味になっています。 [DVD(字幕)] 4点(2020-06-24 00:04:27) |
555. セレブリティ
いつも通り、喋りすぎ、動きすぎ、騒がしすぎ、説明しすぎの画面を並べているだけであって(ほかの作品ほど極端ではないとは思うが)、それによって何を言いたいのかが全然分からなかった。似たようなシーンが延々と繰り返されて、そのまま終わってしまっただけという感じ。 [DVD(字幕)] 3点(2020-06-23 00:37:07) |
556. ゾンビランド
こんなストレートでシンプルなB級ゾンビ作品に、こんな豪華な4人がキャスティングとは・・・と思っていたのですが、まだこの時期はアイゼンバーグとかエマ・ストーンはブレイク前だったんだっけ。それはともかく、全体的には、ゾンビのアクションその他が(つまりメイク以外が)基本的に人間っぽいので、あまり怖くありません。それにしても、ブレスリンちゃんは可愛い。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-06-22 00:54:45) |
557. ウエスタン
これだけ延々と引っ張りながら、終始緊張感を維持しっぱなしなのが凄い。例えば一瞬表れる全景シーンで、贅沢にエキストラや大道具を使いまくっていたりするのだが、それを調子に乗って全開したりはしない。大半のシーンでは、そのテンションを役者の内面にじわっと封じ込めている。つまり、それだけとてつもない表現意欲があるということ。 [映画館(字幕)] 8点(2020-06-21 22:22:15) |
558. 夕陽の挽歌
《ネタバレ》 老若のカウボーイの逃走と、それを追いかける兄弟となれば、いろいろドラマが湧いて出てきそうな期待をしてしまうのですが・・・特に何も起こりませんでした。とりわけ、ホールデン&オニールはまだしも、追跡の兄弟側のキャラがまったく立っていないのは致命的です。道中も何か目を引くようなことが起こるわけではなく、子犬とラバをめぐるやりとりが一番スリリングだというのは、やはりまずいでしょう。大作っぽくやろうとしてる音楽のしつこさも難点。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-06-21 00:17:53) |
559. クリミナル 2人の記憶を持つ男
ケビン・コスナーの極悪人役というのは、これまであまりなかった役柄でいい感じ。また、主人公の(中の人の)奥さんもほどよい落ち着きとほどよい色気があります。と、ここまではよかったのですが、まず、ゲイリー・オールドマンが、金田一シリーズの加藤武並に間が抜けているのがいかん。いくらほかの人が頑張っても、彼が出るとそこだけコメディになってしまいます。それから、ビリーの記憶が戻るというのも、瞬速のフラッシュバックの積み重ねだけではなくて、もう少し何かいろいろなかったのかな。あと、ロシア関係のあれこれが結局不要だったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-06-16 00:18:57) |
560. ブラックパンサー
《ネタバレ》 パンサーだというから、パンサーっぽいアクションを期待したんですが・・・。●国王の継承云々はまだしも、世界におけるワカンダの立ち位置がどうとか、紛争にCIAが絡んでくるとか、そんなん要るか?●ワカンダの地下(?)にある文明発達の風景とやらも、どこかで見たようなものばかりで、しかも一つ一つが何のためにあるのかも分からなくて、実に陳腐。●ヴィブラニウムとやらの機能や応用の詳細に踏み込んでいないのも、作品の底の浅さを際立たせている。あと、スーツは敵の攻撃を吸収してどうのこうのと最初に説明があったはずですが、それは何も効果的に使われていなかったような・・・。●つまり、せっかく骨子は面白くなるはずの構成なのに、ゴテゴテと人工甘味料満載のデコレーションを塗り立ててしまった結果、平凡になっているのです。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2020-06-15 00:33:15) |