41. アメリ
J・P・ジュネ監督独特のクローズ・アップの多用や凝りに凝った画面作りによる作品世界は、まさにファンタジー・ワールドそのもので、突如、彗星のように現れたアメリに扮する妖精のようなオドレイ・トトゥが、その夢先案内人として実に魅力たっぷりに演じてみせる。そして人間ってほんの些細な事で幸せな気分になれるということを、寓話でありながら実に細やかな描写の積み重ねで説得力をもたらせる事に成功していると思う。余談ですが、人形が一人旅をしてそれぞれ各地で撮ったスナップを送ってくるというエピソードは、確か実話にあったと記憶しています。 9点(2001-12-24 18:07:28) |
42. ブレス・ザ・チャイルド
オカルティック・サスペンスに刑事モノ的な味付けを施した作品で、悪魔や大量の鼠が登場するといったショック・シーンも用意されてはいるが、幻覚という意味合いもあってSFXはこれ見よがし的でなく、むしろ控えめなのが効果的だし、また好感がもてる。ただしストーリーとしては取り立てて新味はなく、ぎりぎり及第点といったところか。K・ベイシンガーの恐怖にひきつった表情がなかなか素敵で、まずは彼女のその美しさに救われたような作品だ。 7点(2001-12-14 16:46:36) |
43. ヤング・ブラッド
J・チェンも真っ青なアクロバット・アクションは冒頭からクライマックスに至るまで変わることなく展開され、それがこの作品のウリでもある。しかし主人公の本来の目的は、憎くくき親の仇を討つことではなかったか。それがいつの間にか恋人とフランスを救うことに重点が置かれ、単に悪人を懲らしめる恋に溺れた青年にしか見えない。これでは溜飲を下げようが無いではないか。 6点(2001-12-07 23:45:55) |
44. クイルズ
この作品は、世の中の常識や道徳といったものが人間の想像と表現の自由を奪うという、このサド公爵の時代から現代にまで延々と続いている問題を、芸術的かつ官能的に描いていく。人々に影響を与え続ける為に書くことに執拗に拘るサドは、衣服まで剥ぎ取られるが、それでもあらゆる手段を講じて諦めようとはしない。極めて貴族的・紳士的であるものの自らの死をもってでも抵抗し続けた、狂気というよりは偏執狂的な難しい役どころを、J・ラッシュが貫禄の演技で見せてくれる。一方で正常と狂気の間で苦悶する神父という役どころは、まさにJ・フェニックスのハマリ役で、右に出る者なし! 8点(2001-10-07 00:44:29) |
45. スコア
M・ブランドとR・デ・ニーロとの共演に、今、ノリにノッてるE・ノートンとくれば、観にいかない訳にはいかない。まさに、三者三様のキャラ通りの役どころで、ストーリーも実にオーソドックスな金庫破りモノとしてほぼ予想通りの展開で進行していき、それなりに良く出来ていて面白い。が、しかし終盤になるに従って細かい設定に無理や疑問を感じるのと、クライマックスの金庫破りはいくらなんでも大胆で強引すぎる。さらにラストのどんでん返しにも、もうひと捻りあっても良かったんじゃないだろうか。何かツメが甘いという印象は拭いきれない。 7点(2001-10-06 16:08:14) |
46. 夏至
ヴェトナムの何気ない日常生活から始まるこの物語。ここで戦争があったのが不思議に感じるほど、平和で幸せな家族の日々の営み。しかし一見何の隠し事もないかのような彼ら(彼女ら)にも秘密があり、悩み事を抱えている事がしだいに分かってくる。洋の東西を問わず、男と女の関係とは微妙で複雑だ。映画ではきっちりとした形でそれぞれの問題を結論づけないまま終わるが、それだけにその後の彼らの行く末が気になるところだが、ひとたび雨が降ると洪水のようになる街並みや人々の活気、主人公の女たちの艶めかしい会話や彼女らの色香といった、本来ストーリーとは関係のないような部分に魅力を感じさせてしまう作品だ。 8点(2001-09-09 00:40:09) |
47. 15ミニッツ
作品のテーマはリアリティがあるものの、いまひとつピンとくるものが無い。それは、久々に小気味いいポリス・アクションを楽しませてもらったという印象のほうが強いからなのかも知れない。そしてラストはやっぱりそ~こなくっちゃ、デ・ニーロが浮かばれないってもんだ。 8点(2001-06-03 18:01:14) |
48. チャーリーズ・エンジェル(2000)
いかに映像テクニックとはいえ、彼女たちの動き(踊りも含めて)の俊敏さ、しなやかさには驚くほかないし、またそれがすべてでもあるといっていい作品。とりわけアクション・シーンのテンポと切れ味の良さは水準を越えている。ところでキャメロン・ディアスはこの作品に出演する為に、かなりシェイプ・アップしたんじゃないかと思えるぐらい、一段と口がデカく見えたのは僕だけだろうか? 6点(2001-05-13 17:13:03) |
49. スターリングラード(2001)
いったいどうやって撮影されたのだろうかと思えるぐらい、ますます手の込んできた大スケールの戦闘シーンと、息詰まるような狙撃兵同士の個と個の闘いとがバランス良く構成されていて、ラストまで実に目が離せない。ジュード・ロウの本格的な主演は期待以上だし、いつもは激しい気性の役どころが多いエド・ハリスも、今回は最後までその表情を変えることなく不気味さを漂わせ、貫禄十分だ。ただ、ロウとワイズの濃厚なベッドシーンはいかにもJ・J・アノー監督らしさが出ているものの、作品全体のトーンからは少し違和感を覚えてしまう。 9点(2001-05-13 16:10:54) |
50. ザ・セル
冒頭から展開される、ダリを思わせるような幻想的でシュールな絵画的イメージの奔放さと、サスペンス・アクションの定石をきっちり踏まえた刑事モノの手堅い演出との融合が不思議な印象をもたらすという、極めて稀有な作品に仕上がっている。ターセムに監督として感心したのは豪華絢爛な脳内世界よりも、現実世界のとりわけ「セブン」を連想させるクライマックスの救出シーンにおける演出のきめ細やかさにある。 8点(2001-05-13 15:09:24) |
51. トラフィック(2000)
麻薬を扱った作品というのは我が国では外国とりわけアメリカほど身近な問題としての認識が薄いためか、切実な印象としては希薄だ。しかしドキュメンタリー的手法を用いたメキシコでのザラついた映像表現は、圧倒的な迫力で見応え十分。映像の力とはこういうことを指すのだろう。さらにデルトロの存在感は新しいタイプのスターを予感させる。それだけにM・ダグラスの麻薬中毒の娘とのエピソードがいかにも作り話っぽく見えてくるのが残念だ。場面場面の映像の厚みで勝負するタイプの作品だけに、細やかな状況説明は極力排している。その為ストーリー重視で鑑賞する人には不評かも・・・。 8点(2001-05-13 08:23:18) |
52. トト・ザ・ヒーロー
主人公トマは過去を引きずり、憧れ、想い出だけに生きているような男で、憧れのヒーロー・トトのように、自分を上手くコントロールできないでいる。しかしその彼も、ラスト、自らの死によりやっと人生の方向性を見つけたことで、天空から笑い続ける。悲劇的な話ではあるけれど、鼻歌まじりに語っている、その軽快さが見事であり、又、この作品の身上でもある。人生を台無しにした男であっても、最後に正しく生き終えることができるという教訓が引き出せて、これは正に素晴らしい敗者の物語と言える。 9点(2001-03-10 23:47:26) |
53. インビジブル(2000)
近年のテクノロジーの発達、特にCGやデジタル合成によって表現される映像は、例えばかつて不可能だと言われてきた“津波”とか“洪水”といったものが「パーフェクト ストーム」等に見られるように“パーフェクト”に可能になり、もはや再現不可能な映像は皆無とさえ思える。 そこで変身モノのジャンルでとりわけ透明人間を扱った作品には、ナチュラルな描写と表現方法が多様になり、これほど強い味方はないのである。 そういう意味では本作は完璧なほどの映像化に成功していると言える。但し皆さんが指摘しているように、K・ベーコンの性格づけやストーリー展開には不満が残るし、P・バーホーベンの相変わらずのグロっぽさには辟易してしまう。 7点(2001-02-28 00:38:55) |
54. スモーク(1995)
タバコ屋の主人を取巻く人々の様々なエピソードを、人情小噺風に綴っていく。そのしみじみとした情感がなんとも魅力的であり、さらに劇中語られる盲目のお婆さんとのエピソードが、エンドロールのバックに具体的な映像として表現されるという構成も実に面白い!W・ハートの煙草の吸い方一つとっても、妙に印象が残るような不思議な作品に仕上がっている。 8点(2001-02-24 23:08:27) |
55. バーティカル・リミット
「恐怖の報酬」の山岳レスキュー版といったところでしょうか。そのクリフハンギングぶりには一段と磨きがかかっている。ただ見せ場のためだけのアクションという気がしないでもない。クライマックスともいえる、向かい側の断崖への大ジャンプ・シーンは、最大の見せ場としてももう少しタメが欲しかった。どうせ成功するのは分っているんだから、もうひと工夫あっても良かったんじゃないかと思う。エンディングはMrs.Sozeさん↓に同感! 8点(2001-01-27 23:11:17) |
56. ダンサー・イン・ザ・ダーク
現実はザラついた淡白なカラーで、主人公の夢想はクリアな画調でカラーも美しく表現されている。が、しかし夢想シーンがあからさまに“楽屋裏”を見せつけているような手法(さほど珍しくもないが・・・)は、この作品にはあまり得策ではないように思う。身につまされると言う点では、以前観た「ロゼッタ」のほうが、よほど強烈な印象として残っている。それにしても全編がカメラの手ぶれ効果とやらで気分が悪くて、映画鑑賞どころではなかったのが正直なところ。この作品にこんな落とし穴があるとは・・・。そういう意味では二度と見たくない作品ではある。 7点(2001-01-07 22:06:44) |
57. パーフェクト・カップル
民主党の大統領候補を選ぶ予備選の話。その候補者たちが優位にたつためならば、相手候補のスキャンダルを暴くなど手段を選ばない。予想外の出来事に選挙参謀がどう対処していくかを実に面白おかしく描いている。それにしても邦題がよろしくない! 7点(2000-11-06 00:11:28) |
58. パトリオット
メル・ギブソンのイイ意味でのワンマン映画。強くて逞しい愛国者と父親像を見事に演じきってる。それにしてもR・エメリッヒ監督って成長したなぁ~って感じ! 8点(2000-10-19 15:06:33) |
59. カットスロート・アイランド
レニー・ハーリンの大活劇としてはそれ程出来のイイほうじゃないけど、ジーナ・デイビス(大ファン)の魅力でそれを補ってるって感じ。ただしマシュー・モディーンは明らかにミス・キャストで、映画のシーンみたいに“足を引っ張ってる”。 7点(2000-10-13 11:34:50) |
60. エアフォース・ワン
観終わったあといろいろと粗が目立つ作品ですが、観ている間はほとんどそれを感じさせない。やっぱり職人ベーターゼン監督の演出の巧さなんでしょうかね。それともハマリ役ともいえるH・フォードの演技を超えた、存在そのものに説得力があったからかも・・・。SFXに頼らなくても面白い映画はできるもんです。 8点(2000-10-13 00:57:34) |