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741.  あんにょんキムチ
21歳にして韓国の血に目覚めた監督、「だからそれが何なのよ」と言う妹、「ま、韓国って、暗いやな」とつぶやく父親、この三者のズレのおかしさ。ナレーションを妹にさせたのが正解で、自身を対象化し、映画をキチキチに息苦しくさせなかった。一世の祖父像が、伯母などへのインタビューを通して、複雑になっていくところがドキュメンタリーとしての面白さ。墓には日本名前を刻まさせ、正月の儀式は断固韓国風、とその複雑さが一世が生きてきたナマナマしさのあかしなのだろう。死に目に眠くて会いに行かなかった監督に「哲明のバカヤロー」と言って死んでいった祖父、その記憶が映画の原点。おそらくかつての差別がひどかった頃だったらもっと輪郭のキリリとした社会に向けたドキュメンタリーになっただろうが、現代では自分の心の違和感に向かっていく。その分、ドキュメンタリーとしての切実さは薄れた。なんで旅行の時もうちの一族はわざわざキムチを持参するんだ? というような、内向きのボンヤリした違和感を軸にした新しいドキュメンタリー。「あんたキムチ撮ってんの?」と親戚のオバサンに呆れられても、カメラをキムチに向けていく。
[映画館(邦画)] 6点(2008-10-21 12:12:04)
742.  男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 《ネタバレ》 
寅は柴又でこそバカ扱いされるが、地方ではけっこう人物として見られることもあり、そのズレは興味深い。本作では、松坂慶子が弟の死を知ったとき、彼女は「なんで知らしてくれはらへんかった」って会社の人に言うが、身内の者として付き添った寅は「いろいろ面倒を見ていただいてありがとう」と感謝を述べる。こういうちょっと相手と距離を置いた“公の場”では、とても世慣れて大人なのだ。でも酔った松坂が宿に来て寝てしまう“私の場”になると、とたんにオロオロしてしまう。このズレ。その前に松坂が「弟のことをなんて呼べばいいかしら」と問うのに対し「ヒデでいいんじゃないの、俺なんて家ではいつもトラとかトラちゃんだぜ」っていうところ、テレビで見てるとつい見過ごすとこだけど、映画館ではすごくウケてた。なんか、柴又の寅と世間での寅との違いが、本人が意識せずにクッキリと出ていた。松坂、恋人がいたんなら悲しくて酔っ払ったらそっち行けばいいのに、とも思うが、その恋人ってのはヒロシタイプの真面目男らしいので、こういう場の慰め役にはならないってことなんだろう。で弟の死を知る場を一緒に体験した寅のほうに行っちゃう。ここらへんが寅の重宝なとこであり、またつらいところだ。松坂はこのとき寅とどうなってもいいと思ってたんでしょ、恋人がいるのに、フラッと。早朝ソーッと宿を出てタクシーに乗る松坂の場が印象深いのは、そういう酔いから醒めて、芸者をやめようとここで決心したからなんだろうなあ。
[地上波(邦画)] 7点(2008-10-19 12:19:31)(良:1票)
743.  独立少年合唱団
香川照之っていいな、と思い出したのはいつからだったか、『犬、走る』のシャブ中の刑事は印象深かったが、これの香川も良かった。断念を秘めた情熱家、あるいは情熱を残した断念者。内側が複雑になっちゃってる人をやると、あのボーッとした表情がすごく生きてくる。これは過去の点検の話で、現在から見た70年代の点検、あの革命の気運は何だったのか、という問いかけ。世の中を良く変えていきたいという欲求は、なぜ空回りしてしまったのか。「骨まで愛して」を求めていた人々へ、ロシア民謡を歌いかけていたそのズレ。それが死のモチーフとどう絡み合っていくのかが、もひとつ不鮮明だったけど。歌が生まれる前の沈黙に耳を澄ますこと、しかし沈黙の後で必ず歌が生まれるとは限らない。歌は無意味だから美しいんだよ、だったかな。
[映画館(邦画)] 7点(2008-10-15 12:10:57)
744.  河童のクゥと夏休み 《ネタバレ》 
前半は『小鹿物語』『E.T.』の路線で、まあそうだろな、という方向に進んでいく。クゥの語り口が、なんとなく渡世人を思わせるので(「おめえさまたちにゃ世話になった」)任侠路線的に進んでも面白いのじゃないか、と思っていると、一家がマスコミに振り回され出し、おっ、一宿一飯の恩義で暴れ出すぞ、と期待高まり、怒りによって烏を爆殺し、さあいよいよ大魔神に変身か、空は曇りだし竜神は舞い、…しかしそれまでであった。かわいいクゥはかわいいままで保護され続けるのであった。自然はあくまで危険のないものなのであった。物足りない。どうもドラマとしても展開に雑なところが散見され、すぐに家族共有の秘密になってしまったり、手紙一枚で箱詰めにして送っちゃったり、ギクシャク。それでいてコンビニの店員との視線のドラマはていねいに描き込んでいる。なんか惜しい。まあ“オッサン”のシーンでは嗚咽してしまったけどね。
[DVD(邦画)] 6点(2008-10-13 12:18:45)(良:1票)
745.  セキ☆ララ
民族のアイデンティティの不安なんて、本当に現在切実なテーマだろうか(と言ってしまってから、こちらの認識不足で傲慢な発言になっているかも知れぬ、という心配がつきまとうのだけど、とにかく言わせて)。たとえば仕事一筋の人間が、会社の倒産で味わうアイデンティティの危機のほうが、現在ではキツいような気がする。ヤクザやカルト宗教の信者など強固な集団に属したがる人が跡を絶たないってことは、アイデンティティの不安はもう十分世の中に瀰漫し、多様化してるってことだろう。そりゃ在日の人たちは税金払ってて選挙権がないとか、もっといろいろ日常生活でも問題はあるだろうし、それを無視する気はないが、なんか問題設定が先走っていて、カメラが後追いしているような気がした。ルーツ探索という設定、AV嬢の故郷への旅、あるいは中華街、あるいは一世の父が一階で眠る二世AV男優の部屋と、アイデンティティのよりどころを最初から方向づけしてしまっている。もちろんそれらを裏切って、あっけらかんとしている彼らの表情も、カメラは捉えているのだけど。現代が踏み込んでいるのは、アイデンティティという故郷を蹴飛ばして、自由を優先する結果生まれた都市の時代だ。その反動の民族主義も勃興しているが、もう歴史はこういう方向に進むしか道はないと思う。なんて力む種類の映画じゃないんだけどね。この作品で一番良かったのは、尾道の昼の盛り場の閑散とした光景、蹴飛ばされた故郷の、老いた親のようなたたずまいが、けっこうジーンときた。
[DVD(邦画)] 6点(2008-10-11 12:19:08)(良:1票)
746.  日本の青春 《ネタバレ》 
『壁あつき部屋』や『人間の条件』ともつながる“軍隊の内なる暴力”のテーマを扱っていて、でも60年代後半という、剛直より軟弱へという時代の流れを感じさせるとこが、いま見ると面白い(映画で言えば任侠ものから寅さんへという時期)。武満徹の音楽もフォーク調。藤田まことが軟弱な人間の真率さを演じるが、やや哀感過剰気味、これが60年代末のトーンだ。元上官佐藤慶は、時代がどう移ろうともその時代時代をちゃんと生きているという自負があり、バーの一角での対決が、セリフ劇として見応えがあった。しかしそれがこの映画の限界でもあって、図式が整いすぎて、イメージが膨らむ余地が少ない。主人公が家に帰って終わるってのはどうかなあ。それが、家にしか帰るところがないという絶望や苦みでなく、まだ帰るところがあるというニュアンスでまとめられていた。それでいいのかなあ。奈良岡朋子がカワイイやつになってしまっていたけど、そのカワイさの束縛ってのもあるんじゃないか。
[映画館(邦画)] 7点(2008-10-09 12:14:21)
747.  壁あつき部屋
BC級戦犯の話。浜田寅彦って、単純な表現しかできない俳優と思っていたが、この映画では、とりわけ後半、素晴らしかった。申し訳ない。小沢栄太郎が「卑屈」とか「傲慢」を一対一対応で演じているのに対し、浜田はあらゆることを「思いつめる」人間を演じ、思いつめていながら、そこでは集中と茫然とが同居している。言葉で単純に表わせない心の状態を、体で表現する名演だったと思う。信欣三の壁にポコポコと穴が開く場もいい。あつい壁に穴が開いてもその向こうには自由ではなく罪が待ち伏せている、という追い詰められた感じ。戦争指導者もつまりは犠牲者だった、という現在もある粗雑な思考は、こんな頃からもうあったのだな(公開は56年だが製作されたのは53年)。
[映画館(邦画)] 7点(2008-10-08 12:11:42)
748.  からみ合い
なにせ『人間の条件』と『切腹』の間に作られた作品なんで、どんなかなあ、という興味があった。遺産をめぐりニセの跡取りを作ったりするだまし合いの話で、もっとコメディタッチにしたほうが収まりがいい題材だったかもしれないが、そこは小林正樹、そして重厚な大作の間の作品、正攻法で攻めてくる。これはこれでいいのだろう。重々しさというのも、そういうものがまったく尊重されなくなった現在から見ると、美点である。話のほうより、美術の戸田重昌の仕事が記憶に残っている。中央に水槽があり奥に二つ扉がある左右対称の部屋や、冒頭、岸恵子と宮口精二がはいる喫茶室など、セットを味わえる映画だった。戸田は以後も小林作品(『怪談』!)や大島渚作品(『儀式』!)で、重厚なセットの記憶を日本映画史に残していく。音楽が小林作品で初めての武満徹、本格的なジャズであった。
[映画館(邦画)] 7点(2008-10-07 12:19:37)(良:1票)
749.  洗濯機は俺にまかせろ 《ネタバレ》 
東京の商店街は西の練馬や中野にもあるのに、とかく東部が映画の舞台になりがちなのは、きっと土手があるからに違いない。葛飾区と言っても、寅さんの江戸川のほうではなく、荒川のほう。大売り出しの回覧板がまわってくる密度の高さがある一方、ちょっと行方不明になれる土手がある。土手はサックスの練習場にもなる。土手があるだけで、話も風景も広がりやすい。青春もの。洗濯機という機械自体、何か内側でウンウン唸っていて、時に煙を出したりして、青春っぽい、やや夢薄れて中古になったり。冨田靖子が酔っ払って帰ってきて、寝っころがって「牛乳、牛乳」とリズム付けて繰り返すとこと、菅井きんが「ここでポックリいけたらいいんですけどね」と言ったあと静かになってしまうとこが好き。
[映画館(邦画)] 6点(2008-10-06 12:10:02)
750.  どこまでもいこう 《ネタバレ》 
画面ではまだ何も起こっていないが、何かを待っている時間の緊張がしばしば描かれる。たとえば冒頭のヤクルト奪取のとことか、公園での逃走。悪い報告をする前の先生のためらいも含めていい。こういう待機の時間の緊張がいい映画だ。これがあって走るシーンが生きてくる。花火も似たようなものだな、点火からしゅるしゅるまでの間。爆弾紙飛行機も。女の子たちがときどき一輪車で軽やかに通過するのが、緊張して待機したり走ったりしている男の子たちといい対照。拾った金を川岸で山分けしている写真が、マスコミによって「ミズスマシがいた」というホノボノ記事になるのがおかしかった。
[映画館(邦画)] 7点(2008-10-04 12:15:52)(良:2票)
751.  はつ恋(2000) 《ネタバレ》 
田中麗奈は『夕凪の街 桜の国』でも、親の過去を探ってたが、そういえば昔っからそういうことやってる娘だった。こっちは母親。この映画の真の主役は母の原田美枝子の方で、病気と真摯に対峙し、泰然と死の準備を進めていく芯のある女性。それだけなら、まあ原田なら似合った役どころで特別印象に残らなかっただろうけど、初恋の人真田が病床のベッドに訪れたとき、スッピンの顔を恥じらい、枕で隠すとこが白眉。毅然とした外面のなかに潜んでいた柔らかい内面が、一瞬姿を現わすとこがよかった。あくまでこれは中年の物語、その過去の青春を現在の青春が探検するために、奥ゆきが出た。
[映画館(邦画)] 6点(2008-10-02 12:10:52)
752.  どら平太
30年前だっら誰が演じることになったんだろう、と考え、しかし考えつかず、役所の貴重さを改めて思った。柔剛あわせ持つキャラクター。でもやはりこの監督は女性映画の人で、たとえ浅野ゆう子でも、彼女が出てくると崑らしさがパーッと出る。遊びみたいなシーンだけど、岸田今日子の女博徒もおかしかった。活劇映画としては、も一つ駄目押しの見せ場がほしいところだなあ。ま、どら平太のサワヤカさの方に主眼が置かれているのだろう。宇崎竜童と片岡鶴太郎は、配役をちょいとひっくり返しているような面白味。
[映画館(邦画)] 6点(2008-09-29 10:45:20)
753.  悪い奴ほどよく眠る 《ネタバレ》 
冒頭の結婚式シーンはサスペンスのお手本ですな。まず記者団の闖入で波立てる。ひそひそ声、コロスとしての記者団と本舞台での演劇としての儀式。びっこの花嫁の入場、三橋達也の「殺す」という凶々しい言葉がはいるスピーチと、驚きをつなげながら、影の演出者である三船は一切しゃべらない。そしてとどめのケーキ入場まで、ほとんど完璧と言っていい。次の見せ場は、釜足の葬儀の場で志村のホンネのテープを流すところか。組織が個人を切り捨てる残酷、『酔いどれ天使』で、三船が親分の声を聞くマージャンの場の再現でもある。あと西村晃を追い詰めたりしてきびきび進むんだけど、後半主人公の内面の苦悩、香川への愛とかが出てくると、ちょっとネバついてしまう。彼の人間性を描いたがために、サスペンスとしてはモタついてしまう。でもこのスカッといくだけで押し切れないところが、良くも悪くも黒澤さんの姿勢で、明治人の求道精神と言うか、これはやっぱりこれで良いのだ、と思いたい。香川の善意が主人公を窮地に至らしめるってのは、次の『用心棒』なんかでも繰り返されるモチーフだな。森雅之がエプロン着けてバーベキューやってる良き家庭人の姿を見せるあたりの怖さもいい。
[映画館(邦画)] 8点(2008-09-25 12:16:55)
754.  歓呼の町
どこに行っても日の丸の下ということで同じじゃないですか、だからみんな明るく疎開しましょう、という戦中の時局PR用映画。疎開を渋る四家族が「心を入れ替えて」疎開に応じるまでの話、あくまで庶民レベルで進行する。シーンが変わるときに人物の出入りを重ねて、スムーズに群像劇を進行していくあたりの手腕が見どころか。いいところのお嬢さんさえ郵便配達をして働いている時局だから、わがままはいけない、というあたりの論理に日本人は弱いんだ。事故死という犠牲者が出ても、だからこそ頑張ろう、になっちゃう。安部徹が、洟をかんでは顔を拭こうとするのを若妻が嫌がる、なんてスケッチが木下らしいと思ったが、脚本にはタッチしていなかった。町会長の勝見庸太郎って『秀子の車掌さん』の社長の人か、この役者さんいいなあ。
[映画館(邦画)] 6点(2008-09-19 12:18:56)
755.  犯人に告ぐ 《ネタバレ》 
警察内部のドロドロが織り込まれるのにもちょっと飽きてきて、それも新しい切り口があるのならいいけど、定型の俗物ぶり。まあそのせいで主人公が、時代劇で言えば素浪人のニヒルな風貌を帯びることにはなるが、こっちも定型っぽい。ともかく犯罪も捜査もマスメディア抜きでは成り立ち得ない時代になりつつある、ってなリアリティはあった。無数の誰かに見てもらうことが前提で悪心も起これば、その無数の誰かを引き込ませられなければ捜査も難しくなる時代。各警察署は見てくれのいい刑事をメディア用に雇わねばならなくなる。テレビが警察を超えた権力者になりつつあるな、と思わせたところが、この映画の手柄だ。ある日、警察が掌紋を採取しにまわって来たら、私なんか悪いことしてなくてもつい逃げちゃって、容疑濃厚のリストに入れられちゃう、絶対。
[DVD(邦画)] 6点(2008-09-18 12:13:48)
756.  惜春鳥 《ネタバレ》 
佐田啓二、川津祐介という二人の人生の敗者が故郷に帰還するところから始まり、それぞれが故郷に受け入れられずに終わるという話だ。木下における「地方」は、けっして単純な理想郷ではない。地方ならではの跡継ぎ問題もあれば、工場で赤旗振ってる若者もいて(元士族を誇りとする笠智衆は気に食わない)、地方にも都会と同じように、安保闘争前夜の政治の季節が近づいている。ロケにいささか会津名所めぐり的なところがあって緊張を欠くが、ラスト、びっこ(脚の不自由な人)の青年が駅に駆けていく木下お得意の長い横移動は素晴らしい。木下映画では身体障害者の登場の頻度が高いような気がする、『永遠の人』にもびっこ、『カルメン故郷に帰る』『二十四の瞳』の盲人、戦傷者であることが多く、あまり弱者弱者した描き方でないところに特徴がありそうだが、ひとつ頭に入れておく注意点としとこう。
[映画館(邦画)] 6点(2008-09-13 12:15:07)
757.  今年の恋
ジャズを聞きながら勉強する高校生の田村正和は開けた横浜、それが友人の家である東京の料亭の古風な感じと対比される。またその彼ら若い世代とそのちょっと上の岡田茉莉子の世代との対比もある。ラストは京都で除夜の鐘を聞くという正月映画らしい流れだが、岡田が日本髪を結って特急に乗っているのが、ちょっと驚きだった。東京オリンピック前だと、正月ならそういう髪で娘(オールドミスになりかけといった微妙なところ)が特急に乗ってても不自然ではなかったのだな。でもたぶん田村正和の世代になると、ヘンだろう。またそれぞれの家に、東山千栄子、若水ヤエ子の婆やなり女中なりがいるのも時代か。こういう軽いスケッチ風の作品のほうが、時代を、その中の微妙な世代の違いも含めて、濃く残してくれる。
[映画館(邦画)] 7点(2008-09-12 12:12:38)
758.  
たぶん木下の最も短い作品。顔のアップを多用し、時には口元のみと、未来の劇画を思わせる構図。小沢の“いかにも”の歪んだ笑いには閉口させられる。別にどうというシーンではないのだけれど、流しの歌の場に変な緊張があった。敗戦直後の人々の顔、何ら楽しそうでなく歌う人々、ただ一つのコードだけを繰り返すギター、すごく時代を感じた。オールロケ作品の強みか。すべて戦争のせいなんだと言う小沢。そこに昼火事が起こる。あたかも戦争の空襲のように再現される。二階から投げ落とされるフトン。こういう場で人を裏切ってはいけない、それは許されない悪だ、という信念のようなもの、戦争はもうまっぴらだが、あの悪い時代をともにやり過ごしてきた者同士の連帯意識は、これからも忘れないでやっていこうじゃないか、といった強いメッセージが感じられた。腐れ縁の男女の演出なら成瀬のほうが断然うまいけど、こういう素朴なメッセージが入る木下の生真面目さも、嫌いじゃないのだ。
[映画館(邦画)] 6点(2008-09-11 12:16:09)
759.  壁男 《ネタバレ》 
ホラーの棚にあったけど、ホラーを期待して見るとがっかりする。一本の映画としても盛り上がりに欠けるが、でもなんか面白そうなとこの周辺を回ってはいるんだ。なんで小野真弓なんだよ、と誰もが思うだろうけど、いかにもテレビメディア的な人ってことでの起用で、これは理解してやりたい。テレビは非日常的なことを連日取り上げることによって、一番日常的な光景を作り上げている。それぞれの家庭が部屋の壁を厚くして閉じ籠もり、必要以上になれなれしく語りかけてくるテレビのレポーターに向かい合っている。私たちの日常生活はメディアと壁に挟まれて営まれてるんだなあ、という発見。なんか映画はそこらへんを巡ってはいるのだけど、も一つ焦点を結んではくれなかった。レポーターへの親しみが狂おしいまでに高まる青年もいれば、ノーマン・ベイツのお母さんみたいのもいて。
[DVD(邦画)] 6点(2008-09-10 12:13:33)
760.  春の夢(1960) 《ネタバレ》 
ちょっとまず物語の設定を聞いてください。「焼き芋屋の笠智衆が豪邸でイモ買ってもらったかわりに、女中の十朱幸代にソファを動かす手伝いをさせられ、そこで脳溢血で倒れる。応接間の真ん中で一週間絶対安静と医者の佐野周二は言う。おりしもこの宅の主、小沢栄太郎の毛はえ薬会社はストに突入し慌ただしく、禿げ頭の重役やガードマンのやくざが出入りし、外ではデモのシュプレヒコールが渦巻いている。一方、金を腹巻きに溜め込んでいるという噂の笠の看病をしようと彼の隣人の貧乏人たちが大挙押しかけ、家の娘岡田茉莉子は貧乏画家との駆け落ちの準備中、息子川津祐介は哲学青年でたえずブツブツ呟きながら半ズボンで家の中を徘徊している…」。どうです、面白そうでしょ。ほんと、この人のコメディはいいなあ。これだけ豪華なキャストで正月映画用の軽いコメディを製作できた黄金時代がうらやましい。久我美子にオールドミスの三枚目をやらせるなんて。舞台は豪邸内に限ってるけど、金持ちばかりを笑うのではなく、倒れたじいさんにたかる貧乏人も笑ってる。東山千栄子の部屋で笠智衆が倒れるなんて『東京物語』をひっくり返したパロディみたいだけど、たぶん話の骨格に「桜の園」を意識したので、東山の起用となったのでしょう。喜劇作家木下を代表できる一本だと思う。部屋の隅にポッとピンクや緑のライトが入るのは、次の『笛吹川』につながっていく試みか。
[映画館(邦画)] 8点(2008-09-06 12:20:09)
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