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1.  それでも夜は明ける 《ネタバレ》 
昨年12月にアメリカ国内の映画館で見ました。小さな町の映画館でしたが、始まる前に映画館スタッフから「私たちにとってとても重要な作品です」という挨拶があり、上映。映画の内容は、原題どおりの、自由黒人から奴隷となった男性の12年間の奴隷生活を描きます。ドラマチックというよりも絵画的な映像が印象的ですが、つるし上げのシーンや最後のむち打ちのシーンなどでは「直視せよ」と言わんばかりの長回し。ラストで主人公は奴隷の身分から解放されますが、そんな彼を見つめるパッツィーをはじめとする他の奴隷たちの姿から、奴隷制という残酷な制度はその後もずっと続いていたのだということを痛感させ、何のカタルシスもありません。「それでも夜は明ける」という邦題からイメージするものに反して、この映画が描くのは、「希望」のような前向きな感情ですらなく、ただ「生きたい」とだけ願った、もっと原初的な欲求のようなものだと思います。見終わったあと、恐ろしいものを見たという気持ちだけが残りました。奴隷制はアメリカの歴史の暗部と言われますが、それが、醜いもの、酷いものであるということを最高の演技と映像技術でしっかりと描いた、もの凄い作品だと思います。オスカー作品賞受賞も納得です。
[映画館(字幕なし「原語」)] 10点(2014-03-05 09:06:34)
2.  時計じかけのオレンジ
凄い映画ですねえ。まさに「悪夢」のような140分間。深夜にみたのですが、観賞後の寝つきも最悪でした。あまのじゃくなところがあるワタシは、10点つけてる人のあまりの多さに、ややシニカルな視線で映画をみたつもりでしたが・・・この映画は確かに10点の価値がある! レトロでチープな近未来感が醸し出す非現実感と背筋が凍りつくようなリアルな内容。映像と音楽のシャワーで人格改造されるアレックスの姿なんて、人ごととは思えないような薄ら寒さを感じました。人間から思考を奪う映像の力を映像作家として批判するキューブリックの倒錯的な試みに、やっぱり魅了されてしまうというパラドックスに、恐怖とともに妙な心地よさを感じてしまう・・。ああ、ぼくは何が言いたいのだろう。
10点(2004-11-20 11:10:10)
3.  ファーザー 《ネタバレ》 
2021年のオスカー。逝ってしまったチャドウィック・ボーズマンの文字どおり「命を賭けた熱演」に男優賞をと思っていた自分は、アンソニー・ホプキンスの受賞にがっかりしたものでしたが、この作品を見れば・・・これは納得せざるをえない。昨年のローマ法王役もすごかったが、これは別格というか、「上手い」を通り越して「怖い」の領域に達している。人間が人間らしさを失う過程というのは、いくらでもデフォルメできるものであるけれども、これだけ「正常」とシームレスに「異常」が姿をあらわす過程を描いた作品は、ほかにはなかったのではないか。そして、ついヒューマンドラマとして描いてしまいそうな題材を、サスペンス風味たっぷりに緊張感溢れる脚本と演出で仕上げた監督の手腕にも脱帽。しかもこの監督が自分よりも年下だなんて、その「人間」に対する深い洞察には唸るばかり。「認知症を主観的に描く」という実験的な試みは見事に成功していると思います。100分に満たず、舞台もほぼアパートの部屋、登場人物も数名のミニマムな設定で、人間が(肉体的な意味というよりも精神的な意味で)その人生の終盤を迎えることを描ききった傑作です。いやあ、素晴らしかった。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-11-27 09:56:18)(良:4票)
4.  シャイニング(1980) 《ネタバレ》 
久々にこの映画を見ようと思ったのは、2020年に世界中に広がった新型コロナウィルスの感染拡大のため緊急事態宣言が発令され、外出自粛のなか家族でずーっと自宅にいる今見るには「最悪の映画」として、この映画が思い浮かんでしまったからです。後になってから思えば、そんなこともあったね、という出来事かもしれませんが、今の気分を記録する意味でもレビューを書いておきたいと思います。ただし、今回は一人で見ました。家族で見たら、本当にヤバい雰囲気になりそうなので。  さて、この作品、ヒッチコック以降のスリラー映画の文法を変えてしまった1本だと思います。当時流行していたオカルト風味を交えながらも、閉鎖的な環境と仕事に追い詰められ徐々に狂っていく夫と、「あなたの知らない世界」が見えてしまう息子、そして目玉を見開いて疑念をどんどん募らせていく奥さんという、閉鎖的な空間で誰も信用できない世界を見事に作り上げているところが素晴らしい。そして、なんてことはない日常のシーンにこそおどろおどろしいBGMを重ねる手法も、序盤〜中盤の(最近の忙しいホラーサスペンスを見慣れている人には退屈とも思える)遅いテンポの会話シーンを重ねて、最後に一気にサスペンスが炸裂する見事な切り替えも、今となってはあちこちに見られますが、当時はやっぱり「新鮮」でした。キューブリックの創造性には本当に驚かされます。身近な人がもっとも信用ならない閉鎖的空間の恐ろしさは、最近のDVやハラスメントの問題などを考えれば、ものすごい批評性を持っていたこともわかります。そして、まさに閉鎖的な空間にとどまらなくてはならない「今」だからこそ、その恐怖は何倍にもふくれあがり、いままでとは別種の「リアルさ」として体感できます。  とくに印象的だったのは、もはや最初から狂っているように見えるジャック・ニコルソン。最初にホテルの歴史を聞いたときの「私は大丈夫」という表情からして問題ありあり。でも彼はたぶんそのことを一番認めたくないから、「大丈夫」と言い切ってしまい、家族まで連れてきてしまう。その後も徐々におかしくなっているのに気づいているのに、それをなんとか抑え込もうとする。あの手この手で彼を狂気を巻き込もうとするホテルのお化け?たちも、彼の内的な葛藤の象徴なんだろう。そして、息子を抱き、大丈夫だと言いながらも、息子すら自分を信じていないことに気づいたあとの「絶対に傷つけない」という空虚な言葉。そうすると、ラストのあの出来損ないの蝋人形のような姿も、その葛藤から解放された姿にも見えてきます。  怖いものを見ても見ぬふりをしながら、徐々に最悪の方向にハマっていってしまう・・・40年前の映画ですから当然それを意図していたわけではないと思いますが、今、世界のあちこちで起きているであろう危機の一つの本質に迫っているのは、何よりも名作の証明なんだと思います。「パンデミック」映画が配信サイトなどでも人気のようですが、2020年の春、いま一番怖い、見たくない部分を見せられる映画として、そんな部分を見つめて自分を取り戻すための映画として、おすすめです。
[インターネット(字幕)] 9点(2020-04-15 18:05:46)(良:2票)
5.  ゼロ・グラビティ
突然宇宙空間に放り出された飛行士の予告編が印象的で公開直後の米国で鑑賞。宇宙空間のルールを忠実に再現し(部分的には?の部分もあるが)、キュアロン監督おなじみの長回しが効いていて、映像体験としても一見の価値あり。登場人物はサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの実質2人(あと声だけの管制官俳優エド・ハリス)だけですが、無駄をそぎ落としたシンプルなストーリーのなかにも主人公のドラマがちゃんと用意してあって映像だけの映画でもないのも魅力です。目立たないけど音楽もいい。それからカエル君! 『アバター』以降ごちゃごちゃした大味な大作が増えたこともあって、個人的には3D映画に否定的だったのだけれど、3Dであることによって映画としての質を高められるということを、はじめて実感させてくれました。そして、こういう映画をちゃんとヒットさせるのが映画の国の底力なんだなあと関心。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2013-11-02 04:38:26)(良:4票)
6.  2001年宇宙の旅
初見は映画館でのリバイバル。その後もDVDで何度か見ましたが、大画面TVを購入したので再見。この映画ほど宇宙への「畏怖」を感じさせる映像は、これ以前も以後も存在しないと思う。エイリアンやら巨大宇宙船やらモンスターやらなくても、未知なるもの、未知なる場所、未知なる出来事への恐怖で満たされている。そして、未知なるものを飼い慣らすための科学までもが、人間を裏切っていくことの恐怖。とくかく恐ろしい映画でした。すでにハリウッド的エンタメ映画の手法にズブズブに浸かってしまった私は、ゆったりとしたテンポには苦戦しましたが、この凄い映画をリアルタイムで「体験」できなかったのは残念です。
[映画館(字幕)] 9点(2009-04-02 11:29:13)
7.  ラブ・アクチュアリー
「何もここまで登場人物増やさなくても」「あれ?こいつ誰だっけ?」なんて思いながらも、終わる頃にはすっかりハマってました。ちょい太めの秘書を取り合う英・米大統領にせよ、アメリカでモテモテ話(どこかに落とし穴があると思ってずーっと警戒してたのにハッピーエンドかよ!?)にせよ、一歩間違えば「そんなのあるわけないじゃん」っていうエピソードもあって現実感はゼロなのに、見終わればシアワセな気分に浸っちゃうから不思議です。CGなんて使わなくったって、これだけの魔法を起こす力が映画にはあるのを再認識できたのがうれしい!
9点(2004-08-26 09:26:05)
8.  ダンサー・イン・ザ・ダーク
セルマは、ビョークにしかできない役でしたね。ラース・フォン・トリアーらしい徹底した「アンチ・アメリカ映画」なのに、最もアメリカ=ハリウッド的であるはずのミュージカル・シーンが、躍動感に溢れて、とにかく美しかった。見終わって、他人に薦める気にはとうていなれないけれど、自分のなかに、いろんな感情が溢れてくるのを、じっと味わいたくなる不思議な作品。
9点(2004-05-06 08:42:57)
9.  恋におちたシェイクスピア
出演者がみんな生き生きしていて、大好きな映画。グウィネスやジョセフ・ファインズはもちろん、仇役コリン・ファースや妖怪のようなジュディ・デンチも楽しそうだし、ベン・アフレックも存在感があった。音楽もいい。日本で映画見るときの残念なことは、日本公開前にオスカー受賞とかしちゃうと、ある程度、作品のイメージができちゃうことかもしれない。それが「ハク」になる場合もあるんだろうけど、この映画みたいに軽快なラブコメディの場合は、いわゆるアカデミー作品賞のイメージが重荷になっちゃったような気がする。肩の力を抜いて、楽しみたい作品です。
9点(2004-05-04 11:32:57)(良:2票)
10.  エイリアン2
「アクション映画監督」ジェームズ・キャメロンの脂の乗りきった時期の作品。パート1とパート2を全く別の種類の映画にしてしまうというアイデアもよかった。「今度は戦争だ!」のコピーどおり、最初から最後までスリル満点のアクション満載。また主人公以外の登場人物の「死にっぷり」も見事。
9点(2004-03-10 03:31:38)
11.  イニシェリン島の精霊 《ネタバレ》 
見始めたときはアイルランド英語に大苦戦で、英語字幕付きでも何言ってるかわからなかった。ただ、人間関係が見えてきて展開が動き出すと、不思議とだんだん慣れてきて、会話が生き生きしてくる。それでも見終わったときは、正直「変な映画を見た」という気分だったのに、あとになってからじわじわと響いてくる。個人対個人でも、国対国でもいい。これは、友好的だと思っていた関係がずるずると壊れていく状況を描いた寓話だっただろう。  「内戦」を背景に盛り込んだのもそういうことなのだと思う。「対立」とは何だろう? それは金や財産だったり、資源だったり、見栄だったり、いろいろなものが「原因」とされるのだけれど、本当のところはそれらは表面的なものに過ぎず、もっともっと突き詰めれば、「すれ違い」と「思い込み」とちょっとした「タイミングの悪さ」の産物なのかもしれない。観客の私たちは、パードリックとコリムが本当に仲が良かったときのことを知らない。二人は、仕事も趣味も(おそらく)それまで生きてきた道も異なっているけど、たまたまアイルランドの孤島のパブで親友になった。その邂逅は奇跡だったけれど、その日々は絶対に取り戻せない。  この映画を見て、絶対に取り戻せないであろう少し前の過去をつい思ってしまったのは私だけだろうか。そんな関係は、ロシアとウクライナのあいだにも、人種のあいだにも、男女のあいだにもあったのかもしれない。「なんでこうなっちゃったんだろう」というのは、なんとも人間的な問いだ。その問いの切実さと残酷さが、アイルランドの雄大な光景のもとで生きるちっぽけな二人の男の喧嘩に集約されていたように思う。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2023-03-09 16:56:51)
12.  ファーゴ 《ネタバレ》 
些末な動機で始まった犯罪があれよあれよという間に大惨劇に。これは仕事がうまくいってないときに見てはいけないヤツだったかもしれない(笑)。状況の悪化は底なしなのだ。ウィリアム・H・メイシーが演じきってみせるつまらない男の「器」の小ささ、プロっぽいのにいつも最悪の方向に向かってしまう悪人2人組+同僚、そんな狂った歯車を一人で飄々と解いてみせるフランシス・マクドーマンド、みんな素晴らしい。コーエン兄弟の作風は好みが分かれるとは思うが、90分という時間に悲劇と喜劇を圧縮して見せたという点ではやっぱり最高傑作だと思う。ラストにマクドーマンドがどうやって「あいつ」をパトカーに乗せたのか、ってことだけは謎だったのだけれど、案外マクドーマンドのあのペースには悪人たちもかなわないということなのかもしれない。あと、今年見た『ブレードランナー2049』を思わせるロジャー・ディーキンスの雪の遠景や、同じくド田舎を舞台にした『スリー・ビルボード』でマクドーマンドが見せた本作とは全く違ったアプローチなど、20年後の現代映画につながるあれこれを再発見できるのも楽しい。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-05-18 17:20:27)(良:1票)
13.  ブレードランナー 2049 《ネタバレ》 
公開終了間近に映画館で見られてよかった。ドゥニ・ヴィルヌーヴは『ボーダーライン』での絵作りがとても印象的だったので、期待通りのオリジナルな(でも前作ファンを怒らせない程度の共通項を持った)絵が満載で、定番の混沌とした都市だけでなく、冒頭の「農場」から、ラスヴェガスの廃墟、廃棄場、ラストの海から雪までどのシーンも美しい。この点では、2D字幕だったのが悔やまれる。本当はIMAXで見たかった。そして、この絵のなかで展開されるストーリーが本当に切ない。ライアン・ゴズリングはあまり好きな俳優ではないけど、彼にここまでどっぷり感情移入できるとは驚き。自身の存在を否定しながら生きてきた彼が、「自分は実は何者かであるんじゃないか」という思いを抱くことで生まれる残酷な物語。でも、その物語の顛末で「特別ではない生」を受け入れる姿は本当に美しい。遅いテンポもシーンへの没入感づくりという意味では正解。正直『ブレードランナー』1回目でこんなにエモーショナルな体験をするとは思ってもみなかった(前作で、「感動」できたのって何回目だったろう)。一方で、会話シーンなどの描き方にはやや不満あり。ウォレスの登場シーンは恥ずかしいくらいの過剰演出だし、デッカードとKの対話シーンは退屈。ただ、ジョイとラヴの登場シーンはテンポも演出もよかったので、単にヴィルヌーヴ監督(あるいは私)の趣味の問題かもしれない。いずれにせよ、失敗する姿しか浮かばなかったクレイジーなプロジェクトでここまでできればOKでしょう。十分に新しい映像体験だったと思います。
[映画館(字幕)] 8点(2018-01-05 15:48:53)
14.  オデッセイ(2015) 《ネタバレ》 
明るいノリの火星サバイバル&救出作戦。危機的状況のなかで、人類の知性の結晶としての「科学」、人間文化としての「音楽」、人間らしさが集約される「笑い」と「チームワーク」のすばらしさをこれでもかとポジティブに描いた快作。マット・デイモン扮する主人公ワトリーはたびたび窮地に立たされるけれど、そこを科学と音楽と何よりもユーモア(とくにポテト畑壊滅の絶望的状況から立ち直らせるクルーとのブラックジョークのやりとりは感動的ですらあります)によって乗り越えていく。人種・宗教・国境による分断が強調され、分断を煽る人間が「指導者」面をする今の社会に対する強烈なメッセージであったと思います。ただ、一方で、あのリドリー・スコットが、なぜ、いかにもハリウッド映画という感じのラストの群衆シーンをわざわざこの映画に挿入したのか。あれ、なくても十分に話は作れるはずなのに。わざと皮肉でやってるとしか思えない。ただ、これが「群衆の醜悪さ」を描いた皮肉であったとすれば、映画自体のメッセージとも矛盾する。それから、ワトリーの家族が一切登場しない件。彼は孤独な人間であるからこそ、火星の孤独にも耐えたことができたのかもしれないけれど、裏を返せば、本作は、ふつう人間の可能性を根源とされる「家族」や「愛情」を敢えて描かなかった「人間賛歌」であり、その意味するところは実は深くて重いようにも思える。というわけで、鑑賞中はふつうに楽しく前向きになれるのに、見終わって考えると、実はこの映画のメッセージはもっと恐ろしいものだったのではないのかと思えてくる。そういう意味でのリドリー・スコット印。健在です。
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2016-03-15 10:17:52)
15.  マッチポイント 《ネタバレ》 
ストーリーは、短いシーンのつなぎ合わせでトントン拍子に進んでいくので退屈はしません。贅沢で人がいいイギリス人大富豪一族(+とてもいい味を出している鈍感な刑事たち)と、狡猾なのか運がよいだけなのかよくわからないアイルランド人青年、そして自分の意志をはっきりと示すアメリカ人女性の対比が面白い。富や名声への執着をはっきりと示すわけでもなく、周りの人間の力でどんどん出世していく主人公が、唯一自分の意志をはっきりと見せるのが、ノラとの浮気だったというのもなかなか面白い。しかし、彼は最後には自分のつかんだものを守るために、自分が望んだものを葬る決意をする・・・。彼の自己中心的な考えは気持ちのいいものではないけれど、ラストショットの表情は、幸運な人生がかならずしも幸福な人生とは言い難いということをうまく表現していました。サスペンスとして見ても、指輪のシーンは少し考えれば予想できることだとは思うけど、見事にきまっています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2007-11-24 08:59:09)(良:1票)
16.  銀河ヒッチハイク・ガイド(2005)
いや~楽しかった。原作を知らないので正直言って細かい小ネタなどわからないものも多く、置いてきぼりをくったシーンも数知れず。でも全体を支配するユル~いノリがたまらない。とくにマーヴィン最高。アラン・リックマンの声もぴったり(少しトカゲヘッドを思い出してしまったけど、それもまた楽しい)。中盤以降の哲学系ネタも、「哲学なるもの」は本来くだらないものであるということを的確に表現してる。そのくだらないことに没頭するところに哲学の意味があるんだと言うことを、あらためて思い出させてくれたパロディ精神とアイロニー精神に拍手。英国系?コメディの真髄を楽しむことができました。欲をいえば、このくだらなさを、映画館という大スクリーンで、満場の観客と一緒に体験したかった! 日本では無理かなあ。
[DVD(字幕)] 8点(2006-07-23 10:45:00)
17.  フルメタル・ジャケット
前半の訓練シーンで、「これは10点か!?」と思ったけど、後半はやや失速気味でした。とはいえ、これも『プライベート・ライアン』や『ブラック・ホーク・ダウン』でさんざん「戦場リアリティ映画」を先に見てしまったからかもしれない。もし、公開当時にリアルタイムで見られたら(見られる年齢だっただけに残念)、もうちょっと印象も違ってたかな。ジョーカーの「born to kill」と書かれたヘルメットとピースマークのバッジは、「戦争」と「平和」の対比でもあり、同時に、これが実は、戦場では容易に両立してしまうのだということの象徴でもあったように思う。映像技術的には限界があったかもしれないが、批判的な精神に訴える「芯」を感じることができる貴重な作品。
8点(2004-12-20 01:45:35)
18.  博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか
全体を支配する緊迫感の割には、物語そのものがゆったりと展開しているので少し退屈もしますが、ブラックなジョークの切れ味はさすがです。事件のきっかけとなるリッパー将軍の抱える「恐怖」は、テロの恐怖を煽りながらいつのまにか思い通りの政策を実践している(そして再選してしまった)某国大統領をめぐるアレコレを彷彿させます。映画の内容そのものは冷戦時代の核抑止政策を皮肉ったものですが、そこで描かれる恐怖に支配される人間の姿は、現代でも色あせることはないでしょう。笑いながら背筋が凍る思いをするという貴重な体験を味合わせてくれます。それでも、満点からマイナス2点にしてしまったのは、肝心のストレンジラブ博士の役回りがよくわからなかったためですが、たぶん何度見ても新しい発見がある映画だと思います。というわけで、現段階の評価ということで8点です。
8点(2004-11-23 20:49:59)
19.  から騒ぎ
ケネス・ブラナーが監督として絶好調だった時代の勢いが感じられますね。豪華キャストみんなが楽しそうに演じていたのが印象的で、それを軽妙なコメディとしてまとめあげた演出にも感心。安心して楽しめる一本。
8点(2004-03-08 17:52:29)
20.  哀れなるものたち 《ネタバレ》 
前作『女王陛下のお気に入り』で免疫はできていたと思ってたヨルゴス・ランティモス作品ですが、今回もまた独特すぎるワンダーランド。前作では3人の女優の演技合戦が見物でしたが、今回はエマ・ストーンの独壇場。冒頭の赤ちゃん演技から終盤の難しい語彙も駆使する知力あふれる姿まで、やりたい放題という感じでした。それが女性の解放と自立という本作の主題とも見事に合致していて、彼女の表情や動き、ファッションを見ているだけでなんとも爽快な気分になるから不思議です。とくに、後半に彼女が「知」にめざめるきっかけが、「男」ではなく、本とシスターフッドであったというところは、とてもよかった。マッド・サイエンティストともいえるゴッドウィンがそれでも彼女と関係を築けていたのも、科学という知への執着があったから。また、船で出会った黒人青年とベラの会話もよかった。彼が現実の矛盾を象徴する「格差」をベラに見せつけることで、本作が単に性欲や性愛の話ではなく、私たちも生きる「世界」についての寓話であることが明らかになります。セックスのシーンばかりが話題になるのですが、実は「知」というものの可能性を描いたものとして受け取りました。  とはいえ個人的にはちょっと難点も。まあ、キャラの位置づけ上しょうがないのですが、マーク・ラファロ演じるダンカンにはもう少し奥行きがあってもよかったのではないかとは思いました。ダンカンと終盤に登場するある男性はまさに「有害な男性性」の象徴なのでしょうが、彼自身のなかにある理のようなものを浮き彫りにしてはじめて、「有害な男性性」と向き合えるのではないのかな、とも思いました。
[映画館(字幕)] 7点(2024-01-29 21:46:04)
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