1. ファーザー
名優アンソニー・ホプキンスの演技を楽しもうと思って観始めたら意外にも(失礼か)ストーリーも面白くて大満足。老い、認知症がテーマながら観る者を一気に引き込むエンタメ性を持ち合わせている。「メメント」を思い出したが、主人公視点だからアンソニー(役名)と同じ混乱を体験できるようになっていて、その構成の巧さに舌を巻いた。そして圧巻のパフォーマンスを見せてくれたアンソニー・ホプキンス。83歳でのアカデミー賞受賞おめでとうございます。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-03-31 19:32:11) |
2. コーダ あいのうた
フランスのオリジナル版は未見(というかそもそもリメイクと知らなかった)。主人公ルビーは家族で唯一の健聴者。これまで両親・兄の耳となり口となってきた。ルビーは大好きな歌で生きていきたいと思っているが、家族を助けるため夢を諦めるべきだろうか? 簡単ではない問題だけに重たい空気になってしまうが、適度な笑い(主に下ネタ)と、ルビーの美しい歌声がこれを和らげてくれた。主演のエミリア・ジョーンズは歌手ではないようだが、役にしっかり説得力を持たせていてあっぱれと言う他ない。終盤の展開はまあベタではあるけど、手話で気持ちをぶつけ合う兄貴とのシーンなんかはやっぱり泣けた。家族愛に溢れる素敵な映画。V先生もナイスなキャラだね。 [映画館(字幕)] 7点(2022-01-31 23:31:30)(良:1票) |
3. 燃ゆる女の肖像
《ネタバレ》 ヨーロッパの映画らしく静かで気品がある。しかし燃え盛るような熱いものも感じた。主人公はマリアンヌとエロイーズ、二人の女性。画家のマリアンヌはエロイーズの肖像画を描くことになる。これは現代で言うお見合い写真なのだが、エロイーズはそもそも結婚に後ろ向き。以前雇った画家には一切顔を見せなかったという。その轍を踏まぬため、正体を明かさず、散歩のときなどによく観察して描くよう、エロイーズの母から言われている。ここから二人の関係が始まる。肖像画を描くためにエロイーズを目に焼き付けていくマリアンヌ、そして彼女の視線を感じ続けるエロイーズ。モデルを引き受けてからは互いにそのような状態になり、二人を結び付ける。良いキスシーンがある映画は良い映画だ(テキトー)。ラストシーン、エロイーズはマリアンヌを決して見ない。一方、自分が見られていることは分かっている。エロイーズは涙を流しながらも最後は笑うのだ。それぞれの道を歩んでも、あの日々の記憶が消えることはない。切なくも美しい映画であった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-10-11 23:39:21) |
4. 家族を想うとき
この映画は社会問題を扱ってはいるが、決して実話ベースではないので終盤にやりすぎ感を抱いてしまった。踏んだり蹴ったりにも程があるだろうと…。まあ、そう思っちゃうくらい主人公にシンパシーを感じていたとも言えるが。ハイライトは妹ちゃんの告白シーンだろうなあ… 本当につらかった。兄ちゃん頼むからしっかりしてくれよ!。劇中の言葉を借りるが「何かが間違ってる」、そんな世の中をしっかり描いて、問題提起する。「わたしは、ダニエル・ブレイク」に続きケン・ローチ監督の熱い思いを感じる映画なのは確かだ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-05-23 23:41:41) |
5. ニキータ
幸せを手にしたかと思うと、現実に引き戻され、心をズタズタにされる主人公ニキータ。最後くらいはスカッとしたかったけど、なんとも言えない結末だった…。リュック・ベッソンは30そこらでこんな渋い映画を撮ってたんだなー。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-02-28 21:15:55) |
6. 女神の見えざる手
《ネタバレ》 凄い… どんな環境で育てば彼女のような人間が出来上がるんだ? 是非スローンの過去を描いた映画を一本作ってほしい。そんなことを思うほど強烈なキャラクターだった。いわゆるアンチヒーローにカテゴライズされ、こちらとしては応援する義理はないんだけど、最後の逆転劇は実に痛快だった。「私、失敗しないので」in USAかな。楽しませてもらいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-10-23 00:14:47) |
7. わたしは、ダニエル・ブレイク
是枝監督の「万引き家族」がパルムドールに輝くというビッグニュースが入ってきたその日に2年前の同受賞作「わたしは、ダニエル・ブレイク」を鑑賞。ドキュメンタリーではないので当然誇張もあるだろうが、これを観たイギリスの公務員は何を思うのだろう? 長年真面目に働き、税金を納めてきた主人公に対するあまりに冷たい仕打ち。普通なら自分のことでいっぱいいっぱいになるはずだが、ある母子家庭のことを気にかけ、親身に接するダニエル。その人柄が映画に温かみを与えていた。(特に前半は)淡々としていて、映画としてどうかな?とも思ったけど、終わってみればやっぱり佳作として記憶に残る。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-05-20 23:06:41) |
8. ネオン・デーモン
アート系の映画はイコール退屈というイメージがあり避けてきたけど、これは見やすく、気がつけば中盤だったんで、そのまま最後まで見ることに。ラストがキ〇ガイじみてて嫌悪感が生まれたために点数こそ高くないが、それまでは十分に楽しめた。緊張感が保たれていて、退屈させないように作られてるし、妙なノスタルジック(「2001年宇宙の旅」とか、あの時代)や、エロス、そして嫉妬や傲慢といった感情のせめぎ合いが面白い。エル・ファニングは撮影時17歳?だから結構頑張ってる方。キアヌ・リーヴスの無駄遣いは今考えても「?」だが、映画は一見の価値あり。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-01-15 20:32:12) |
9. シンプル・プラン
恐怖。見つけてしまったが最後。ネコババすれば犯罪、しなければ後悔し続ける。大金を手にした後を思い描くと、今の暮らしが途端に嫌になるのが恐ろしいところ。計画の失敗を阻むものは、新たに罪を犯してでも排除する…。良心の呵責と欲の間で揺れ動き、やがて破滅へと向かっていく姿は滑稽であり、不快であり、恐ろしく、また人間臭い。こういう映画の採点は難しいなぁ…6点で。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-09-18 21:04:31)(良:2票) |
10. 裸足の季節
《ネタバレ》 カンヌやらで絶賛されたらしいんで観てみたが「う~ん」って感じ。主に映像面で光るものがあったのは確かだが…。これ、犯罪者とその被害者という関係性ならば、最後のイスタンブールはもっと美しく映っただろう。自殺者まで出たのに、相変わらずの叔父さんを見て、もはやお国柄、宗教、風習等は関係なくなった。一人のキ○ガイとその犠牲者たる姉妹5人の物語に過ぎない。四女と末っ子の最後はともかく、叔父さんはこれからも何事もなかったかのように暮らし続けるんだろうなと思うと結構不愉快。無くなって初めて気づく勧善懲悪のありがたさか。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2017-05-26 00:05:03) |
11. 最強のふたり
私は気が小さく、人の顔色をうかがって…というタイプなのでドリスの言動には若干ヒヤヒヤした。いつ怒鳴られるんだろうって。でもフィリップはむしろそれが嬉しいんだね。年齢差や人種の違い、障がい者と健常者、雇用主と被雇用者…と様々な立場を超えて二人は真の友人であった。美しい物語を見せてもらいました。しかし、この作品がフランス映画史に残る大ヒットになったのは不思議といえば不思議。フランスの映画事情は知らないが、少なくとも新しい感じはしなかった。他になにか決め手があったのかな? [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-02-10 18:38:22) |
12. パリ、テキサス
美しい。といっても息を呑む圧倒的な美ではなく、日常にある美が印象的に映し出されている。外国の風景ではあるが、自分の人生の一場面と何度も重なってきた。音楽とともに哀愁をまとって、心に染みてくるTHE名画。本当に素晴らしい。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2015-09-06 20:00:30) |
13. グランド・イリュージョン
《ネタバレ》 フードを被ってた奴が4人のマジシャンをチームにして、でっかいこと(犯罪)をしでかす話。でもこの「フォー・ホースメン」はあまり魅力的ではなかった。その分、目立ったのが彼らを追うディラン刑事。銭形警部を思い起こさせる華麗な逃げられっぷりが面白可笑しく、こちらメインと考えればそれなりに楽しい映画だったかなと。で、黒幕の正体についてはどんでん返しが用意されてる訳だけど、これはイマイチ。演出面で。なにも「ユージュアル~」レベルを期待してる訳じゃないけど、もうちょっとゾクゾクしたかったなー。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-01-21 18:05:12) |
14. 月世界旅行
着色版を鑑賞。表現したかった世界をより直接的に感じられたので良かったと思う。正直、内容は無いよう…って感じだけど、さすがにこれをただの映画として扱うのは不可能。歴史的価値を考慮してこの点にしたけど、そもそも採点という行為自体がおこがましいのかもしれない。世界初のSF映画に敬礼。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 7点(2014-11-11 19:34:33) |
15. 別離(2011)
凄い…。宗教的な面も上手く取り入れ、活かしてはいるが、柱は普遍的なテーマであり、世界中の映画祭で高く評価された事実がそれを表している。人は皆、時に嘘をつきながら生きてきた。その嘘によってむしろ事態が悪化したり、誰かを傷つけ罪悪感に苛まれたり、正直に言えなかったことを悔いたり…。ここまで深刻ではないにせよ、身に覚えがある感覚。だから多くの人がこの映画に引き付けられるのだろう。こんな人間ドラマが見たかった。ありがとう監督。そして俳優たち。素晴らしい映画です。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2014-04-17 17:33:54)(良:1票) |
16. スウィッチ
《ネタバレ》 冤罪を晴らすための逃亡劇。まあ、定番ネタですな。なんと追う刑事がエリック・カントナ。俳優になったとは聞いていたけど、演技も板に付いていて違和感無かった(フランス語が分かるわけじゃないけど)。全体としてスピード感もあり、同類のハリウッド映画と比較しても見劣りしないクオリティ。後は事件の真相次第で評価が決まってくる訳だけど、ここは残念だった。「恨む相手を間違ってますよ」「一人で生きていけるんだから昔のことは忘れて楽しく生きたらいいじゃない?」 そんなツッコミを入れながら観ていたけど、終わる頃に思い出した。犯人は病気だったんだ。Q、なぜ彼女に復讐するの?→A、精神を病んでいるから。Q、なぜこれほど手の込んだことをするの?→A、精神を病んでいるから。これで片付けざるを得ないってのがこっちとしては面白くないんだ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-03-02 21:13:15) |
17. 灼熱の魂
《ネタバレ》 驚きを与えてくれる映画は好きだ。痛快などんでん返しはもちろん、多少後味が悪くとも衝撃の展開であれば満足することが多かった。(例えば「セブン」とか)。しかし、この映画の「真実」に対する嫌悪感は「驚き」などでは打ち消せなかった。ちょっとやりすぎでは?…。このブルーな気持ちをどうにかしてほしい…。と言いつつ一応6点。簡単に割り切れる映画ではないんだな。いやはや困った。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2014-02-03 18:15:20) |
18. アーティスト
まあまあだったけど、これを観て「本物のサイレント映画を観よう!」とは残念ながら思えない。トーキー移行期のハリウッドが舞台で、特徴はなんと言ってもその時代の映画っぽく見せていることだが、その珍しさだけで1時間40分フルに楽しめるかと言ったらなかなか厳しいところもある。見せ方の問題で、中身はごく普通のラブストーリーだから…。自分はサイレント映画といえばチャップリンの映画を少し観ているくらいだが、チャップリンの映画はトーキー映画にはない良さを持っていたから、贔屓目無しに現代の映画とも張り合えた。しかしこの映画の場合、サイレントならではの面白さはそれほど追求していないと思う。別に喋ってもいいんじゃない?って感じ。皮肉なことにサイレント映画が淘汰された理由を浮かび上がらせてしまったのかもしれないな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-08-01 18:06:24) |
19. ユナイテッド93
《ネタバレ》 あの日、ユナイテッド航空93便で何が起きたのか。ドキュメンタリータッチ、ほぼリアルタイム、有名俳優が出演しておらず、主人公も設けていない、といった特徴があり、これには少々不安もあったが、ちゃんと映画らしい映画になっていた。ハイジャック後の機内にはドラマがあり、乗客の蜂起には胸が熱くなる。黙って死を待つよりは当然戦うだろうから特別な事とは思わないが、逆に言えば他人事とも思えなくて…。もちろんフィクションとは違う重さや残酷さはある。最後どうなるかは知っていたものの、ラストシーンの後はしばし動けなかったほどだ。あれから10年以上経って細かいことは忘れかけていたから、これは観て良かった。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2013-07-17 22:32:47) |
20. あるいは裏切りという名の犬
《ネタバレ》 初めは人間関係などが分かりづらくて、ついていけてるか不安だったけど、ヴリンクスが嵌められたあたりから面白くなってきた。ライバル同士の刑事がそれぞれ窮地に陥る波乱の展開。引き込まれる。ただ「7年後」の物足りなさは残念。1時間50分の映画だけど、ヴリンクスの出所時点で1時間20分、苦情係に飛ばされたエヴからカミーユの話を聞いた時にはすでに1時間30分が経過していて、いよいよ始まる復讐も、時間に追われているような感じで落ち着かなかった。もしも同じボリュームの復讐編が用意されていたなら、この映画は伝説になっていたかもしれない。まあ、伏線の回収にはなっていて悪くはないのだけど、やはりあっけないと感じる部分はある。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-06-07 17:42:04) |