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1.  インファナル・アフェア 《ネタバレ》 
香港犯罪映画の傑作。警察と犯罪組織の間で互いに間諜を潜入させているという新奇な設定が興味を引く。潜入捜査官のヤンと組織から送りこまれたラウの対決が見どころ。どちらも優秀な警官で、その高度な応酬に見応えがある。 丁々発止と火花がちるような知能戦、ひりひりと肌を焼くような神経戦、紙一重の際どさで障害を乗り切る緊張感、裏切りや大物の死など予想できない展開、そして衝撃的な殺人場面…、緊張感が持続し、全編に渡り弛緩するところが無い。作品の価値を高めているのは、間者である両人の懊悩が恐いほど描けていることだ。組織のための道具ではなく、いつ正体が露見するかと怯え、不安を抱え生きている、恋人や婚約者のいる生の人間なのだ。ヤンは長年に渡る潜入捜査の緊張感から不眠が常態化し、精神を病んでいる。警察に戻ろうとするが、彼の正体を知っている上司は死に、ラウによって警察のデータベースから彼のデータは消去されてしまう。ラウはボスから「道は自分で選べ」と教えられていたが、選んだ道はボスを殺して、組織から足を洗うことだった。しかし、彼の正体をする別の人物が現れ、その人物も殺さなければならなかった。又、ヤンにより婚約者に正体は知られてしまった。勝者というものは無い。一度人としての道を踏み外してしまったら、生きている限り心の平安は得られない。生きながら無間地獄に落ちる。その恐ろしさが胸に迫るのだ。巧みと思う演出を上げる。ヤンとラウの接近遭遇だ。二人はお互いを知らないが、警察学校の同期であり、オーディオ店で一度顔を合わせている。環境が違えば、親友になれたかもしれないという演出だ。ヤンが映画館から出たラウを追跡するが、あと一歩のところで取逃がす。このようにして緊張を作りだしているのだ。ヤンの上司の警視が落下して車に激突するのは、あっと驚く演出だ。組織のキョンはヤンの正体を知ったにも関わらず庇う。組織の人間にも友情があるのだ。ボスもどこか憎めない。正義と悪という二元対立ではなく、犯罪者も人間として描いている。最後の想定外の展開とその衝撃度は計り知れない。 残念なのは、屋上に呼び出されたラウのすぐ後ろに拳銃を持ったヤンが現れる場面。どこに隠れていたのか。それとヤンがラウの正体を暴く録音を所有しているのなら、何故警察に提出しなかったのか。それによりヤンの身分が証明されるはずだ。
[映画館(字幕)] 9点(2015-01-14 04:15:47)
2.  イントゥ・ザ・ワイルド 《ネタバレ》 
世を儚み、文明社会と縁を切って、自然と共に暮らしたいと願う人はいるだろうが、実行する人は稀有である。それを敢行した人の実話なので貴重だ。彼は潔癖な性格だ。それは、車、身分証明書、お金、名前まで棄てて、過去と完全に決別した上で旅立ったことからも窺える。潔癖ゆえ、私生児たる出生の秘密と、家庭内不和がどうしても許せなかったのだろう。遁世の理由は「愛よりも金銭よりも信心よりも名声よりも公平さよりも真理を与えてくれ」という言葉が近く、真の人間たる姿を求道していたのだろう。 都会出の彼が、最初からアラスカ行を計画していたとは思えない。放浪しながら、もっと厳しい環境に身を置こうと、思いついたのだろう。「人生において必要なのは、実際の強さより強いと感じる心だ。一度は自分を試すこと。一度は太古の人間のような環境に身を置くこと。自分の頭と手しか頼れない苛酷な状況に一人で立ち向かうこと」 人を拒む厳寒の自然の中に身を置き、自然の恵みだけで生きるには、強靭な精神力が必要だ。彼は、世を捨てたのではなく、生きている証しとして自分の限界を試したかったのだろう。人間とは何かという真理を見つけたかったのだろう。彼は価値観の定まらない軽佻浮薄な若者ではなく、確固とした哲学を持っていた。だから出会う人達との間に交流と友情が生まれ、強烈な印象と影響を与えた。特に最後に出会った老人との交流は胸を打つ。老人は、若い頃に妻子を交通事故で失くした退役軍人だ。家族を喪失した老人と、家族を捨てた若者とが、お互いの身の上を話し合い、理解し合い、遂に、老人は若者に養子にならないかと申し出る。人間も捨てたもんじゃないと思わせてくれる。結果として彼が落命したのを理由に非難する気はない。自然との暮らしは死と紙一重なのだ。 「偽りの自分を抹殺すべく、最後の戦いに勝利して、精神の革命を成し遂げるのだ。これ以上文明に毒されないよう逃れて来た。たった一人で大地を歩く。荒野に姿を消すため」このような人はもう現れないのではないか。劇中彼をキリストになぞらえた人がいたが、宜なるかなである。勇気ある冒険をした彼を賞賛したい。遺憾なのは、彼が増水した河に沿って移動しなかったこと。実際四百m先に鉄道があったらしい。又、廃バスが無ければどうやって住処を確保する積りだったのか。移動手段を車や貨車に頼ったのはどうしてか。気になる点である。
[DVD(字幕)] 8点(2014-11-30 19:38:57)
3.  生きるべきか死ぬべきか 《ネタバレ》 
いきなりヒトラーの出現と劇中劇で始まり、観客を煙に巻く。 ハムレットの“To be or not to be”の台詞が始まると必ず席を立つ観客が居て、演者のヨーゼフが目を剥く。 ナチスの将校になりすましてスパイの教授と会ったと思ったら、今度はその教授になりすまして、本物のその将校に会う。 教授になりすましていると、教授の死体と対面させられ、機転を利かせて何とか脱出に成功する。 エアハルト大佐とシュルツとの無責任な罪のなすりつけあい。 ベニスの商人のシャイロックの台詞を空んじているが、役に恵まれない役者がナチス相手に大芝居を打ってみせる。 最初のヒトラーを演じた役者が、本物のヒトラーになりすます。 最後のオチもハムレット。 危機の連続、笑いの連続で、密度が濃く、まくしたてるような展開で、間延びが無いのが最大の取り柄だ。敵が情け容赦ないナチスなので、緊迫感もある。笑いに必要な、緊張と緩和のめりはりが利いている。よくまあ、これだけ考えたものだと感心する。性に関する下品な笑いが無く、上品で洗練されている。ただ、ナチスドイツによるポーランと進行という一大悲劇を笑いの舞台にしてよいのかと考えてしまう。第二次世界大戦中の製作なので事情は複雑だ。ヒトラーを笑い飛ばしたいという気持ちが昂じて、製作に至ったのだろう。劇中で実際に何人かが死ぬが、それは不要で、笑いに徹して、誰も死なない演出ならもっと楽しめたと思う。ヨーゼフの妻の浮気相手のソビンスキーをもっと可笑しな人物にして活躍させれば、もっと面白かったと思う。安心して観られる作品だ。
[DVD(字幕)] 8点(2014-11-28 17:22:19)
4.  E.T. 20周年アニバーサリー特別版 《ネタバレ》 
地球を調査しにきた宇宙人E.T.の一人が置き去りになる。E.T.を発見した少年は彼を家に匿う。E.T.は仲間と連絡をとり、迎えにきた宇宙船で帰ってゆく。たわいもない話である。それなのに感動するのは何故だろうか。それは少年の純真な心に打たれるからだろう。相手を信用する力だ。相手は正体不明の宇宙人である。大人であれば何より警戒心が先に立つ。例えE.T.と意思疎通が出来て、彼の境遇に同情したとしても、時間がたてば危険回避心理や売名心、義務感等から当局に通報してしまうだろう。しかし、少年は違った。もしE.T.が大人に見つかれば解剖されるであろうと予想できたからである。ここには演出の妙がある。少年の父は不在だ。愛人とメキシコに旅行中という設定で、少年の母は心を痛めている。ここに大人に対する不信感がある。家族を裏切る父、即ち大人は信用できない。加えて、少年が孤独であるということ。少年は年少なので兄とその友達から仲間はずれにされていて、妹はまだ幼い。多忙な母とは距離がある。少年は気が置けない親友を欲している。そこに少年と同じような境遇のE.T.と会遇する。二人の気脈が通じ合うのも当然だ。その心の通じ方も独特で、興味深い。脳波が一致してしまうのだ。離れていても、E.T.が酒に酔えば少年も酔うし、テレビで接吻場面を見れば少年も学級の女の子と接吻してしまう。そしてE.T.の危機を暗示する蛙の解剖の授業の演出。二人の相即不離の関係を表現して余りある。もう一つの感動する要素は「浮遊感」だ。自転車がぱっと浮いた瞬間、開放感を味わう。鬱積していたものが雲散霧消し、晴れやかな気分になるのだ。浮遊だけでこれだけの効果を上げるのは、見せ方が絶妙だからだ。浮くのは子供だけで、ここにも大人に対する対比がある。不満もある。E.T.が死んだとみせる演出は観客に危機感を煽る常套手段として許せるとして、E.T.が何故瀕死の重態に陥ったのかという説明がないののだ。川辺で倒れていたが、E.T.が水に弱いということはない。動物に襲われた気配もない。大事な点がすっぽりと抜け落ちている。E.T.が飛行能力を持つのなら、宇宙船に置き去りにされることはなかっただろうと考えるのは、“大人”の考察だろうか。純真だった子供の頃を思い出させてくれる貴重な映画で、その輝きは永遠だろう。「人を信じる意味」を自問したい。
[DVD(字幕)] 9点(2012-12-23 06:13:09)
5.  怒りの葡萄 《ネタバレ》 
「怒りの葡萄」は聖書の引用で、神が怒りをもって踏み潰す葡萄のこと。葡萄畑はイスラエルの家、神が喜んで植え付けた葡萄はユダヤ人を指す。甘い葡萄を待ち望んだのに、酸っぱい葡萄(争いばかりする人間)ができてしまった。この出来損ないの人間に対する神の怒りの比喩。刑務所帰りで、小作人の息子であるジョードが、一家で土地を追われ、移住したカリフォルニアでの悲惨な生活を通じて「怒りの葡萄」という神の視座を持つまでの成長を描く。ジョードに付き添い、導くのは元説教師ケーシー。彼は資本家と労働者の矛盾を指摘し、労働者の闘う術を教え、死をもって道を示した。彼の導きで、人の魂は大きな一つの魂の器の一部に過ぎず、万人の魂は一つだと悟るジェード。二人は洗礼者ヨハネとキリストだ。まだ何も分からないが、何が誤りで、それを正す方法を見つけるために旅立つジェードは、荒野を放浪する求道者キリストだ。神の視座を持つということは、踏みつけられる民衆側の視座を含め、あらゆる観点からの視座を持つこと。それは「俺は暗闇のどこにでもいる。母さんの見える所にいる。飢えて騒ぐ者がいればその中にいる。警官が人を殴っていればそこにいる。怒り叫ぶ人の中に、食事の用意ができて笑う子供たちの中に、人が自分の育てた物を食べ、自分の建てた家に住むようになれば、そこにいる。」という台詞につながる。彼は、真の”乳と蜜の流れる地”を目指して旅立つ。警察から追われる逃亡者としてではなく、希望を持った求道者として、世の不正を糺す先導者として。成長したのは他には母親。「女は男より変わり身が早い。男は不器用でいちいち立ち止まる。女は流れる川で渦や滝もある。あっても止まらずに流れる。それが女の生き方」と女性の力強さを自覚し、「金持ちは子供が弱いと死に絶える。でも民衆は違う。死なない。しぶとく生きていく。永遠に生きる」と民衆としての誇りを取り戻す。良い言葉だが、これには伏線(成長過程)があまりなく、唐突感が否めない。大恐慌と経済制度の変化の為に土地を追われた小作農民一家の困窮ぶり、零落ぶり、過酷な移住の旅、移住地での苛烈な現実が見所である。が、母親はふくよかすぎて貧農に見えない。又過酷さを見せつけるはずの「桃摘み」の重労働場面が省略されているのは誠に残念。「人間じゃない。人間があそこまで惨めになれるわけがない」とは見えず。出所するのを何故家族に伝えない?
[DVD(字幕)] 8点(2012-12-22 03:29:57)
6.  インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 《ネタバレ》 
”ジェット・コースター・ムービー”の代名詞的作品。連続して飛び出すびっくり箱のように観客を驚かすよう徹底して演出された映画で、その姿勢は潔い。走馬燈のように謎、危機、アクション、スペクタクル、笑いの連続で、観客に考える暇を与えない。内容はトンデモ魔術のB級だが、演技、撮影技術、美術、音楽が優れているので贅沢なA級娯楽作品に仕上がっている。◆冒頭まず銅鑼のアップ。意表をつくミュージカルで始まる。女が虎の口に引っ込むと奥で別の舞台が演じられ(客には見えない)、又虎の口から出てくるという人を食ったような演出。本作品の象徴だ。インディが登場し、マフィアと取引。コイン、ダイヤ、拳銃、毒薬、ヌルハチの骨のやり取りの結果死体2つ。銃弾飛び交う中、ダイヤと解毒剤を追いかけるインディと女。マフィアが機関銃をぶっ放すと二人は回転する銅鑼に隠れつつ窓からジャンプ。待ち受けた自動車に無事落下するが、運転主はなんと子供。カーアクションを経て、飛行機で脱出。一安心と思いきや、それはマフィアの飛行機。運転手がパラシュートで逃亡し、三人はありえないゴム・ボートで空から脱出。雪の急坂、崖、急流を乗り切り、やっと一息つく。着いた先がインドで、ここから本来の冒険開始。ここまで20分。クールなインディ、ダイヤに目がなく、よくわめく都会育ちの歌手、こまっしゃくれたインディの相棒の子供。何の説明もないが、アクション場面だけで、主人公3人のキャラを過不足なく紹介。インディと女は不仲で、これは恋愛の伏線。実に秀逸な導入部だ。 ◆女と子供が決して足手まといではなくフルに活躍するのが爽快。子供のやんちゃぶりと、二人の奇妙な恋愛進行を絡めながら冒険活劇が続くので飽きない。トロッコや吊り橋の場面は誰でも息をのむ。◆連続して意表を突き、驚かすのが特徴。例えば止らないトロッコを靴で踏んばってやっと止めたら、靴が燃えて「水、水」となったら洪水が押し寄せる。何とか岸壁の出口に逃れるが、今度は岩が穿たれる。アイデア目白押しだ。◆謎はサンカラ石。村を守る力があり、無くなると水が干上がる。5つ揃うと超常的な力を得ることが出来、悪者は邪教の布教に利用したいらしい。そのために埋められた2つを発掘するが、何故か子供に掘らせる不思議。結局2つは未発見、2つは川に落ち、一つを村に持ち帰り冒険終了。考古学者なのに調べようとしないインディに違和感。
[DVD(字幕)] 9点(2011-12-07 06:31:15)(良:1票)
7.  インソムニア 《ネタバレ》 
インソムニアは英語で不眠症の意味。ドーマーはフランス語で眠るの意味。そんなシャレを考えている暇があったら内容をちゃんと考えて欲しいものです。 ◆メインの事件は、女子高生が殴り殺された殺人事件。連続殺人や猟奇殺人でもないのに、何故ロスの名刑事が応援にアラスカまで出張するのか疑問です。この事件が面白くないので盛り上がりません。事件が単純すぎます。髪を洗い、爪を切るなどして証拠を消してからゴミ捨て場に放棄。被害者バッグは殺害現場に放置。動機は笑われたから殴った。証拠から犯人に至るのではなく、おびきよせる。推理要素が薄く、名刑事の出る幕はなさそうです。 ◆もう一つの事件は名刑事の証拠捏造に関係。殺人事件が発生し、名刑事は犯人が一目で判ったが証拠がない。そこで死体から血液を盗みだし、犯人の服につけた。でもね、死後5日以上も経っている死体から血液は採取できません。完全に凝固してますから。それはともかく、名刑事は内務捜査班の嫌疑を受ける。相棒刑事は名刑事の捏造を知っていて内務捜査に協力する予定。名刑事もそれを把握。でもね、秘密裡の捜査ですから、名刑事がそれを知る筈ないんですが。又そんな二人をどうして組ますのですか?ロス警察はアホですか。それもさておき霧の中名、刑事は相棒刑事を誤射してしまう。そして真相発覚を恐れ、またしても証拠捏造をする。 ◆そこへメイン事件の犯人から電話。目撃した証拠捏造を黙っていてやる代わりに、被害者の彼氏を犯人に仕立てよ、という取引です。眠れなくなる名刑事。取引の内容のテープは録音されているし、犯人は勝手に凶器の拳銃を彼氏の家に置くしで、結局冤罪逮捕される。しかし天網恢恢疎にして漏らさず。女刑事が名刑事の捏造の証拠の薬莢を発見。のこのこ犯人の家に出かけて監禁される。名刑事は全てを白日に曝す決意をして犯人の家へ。あとはご都合主義の展開。女刑事は造作なく脱出に成功。名刑事と犯人は相撃ち。女刑事が薬莢を捨てようとするのを名刑事は止めて「道を見失うな」◆道を失っているのは脚本だと思います。犯人が女刑事を監禁する必要がないでしょう。犯人のキャラの掘り下げ不足。性悪な極悪連続犯人で、将来も罪を重ねるような性格づけにしないとバランスが悪い。そして知能犯にすべき。悪人が狡知であればあるほど名刑事が光るというものです。あー、言いたいことが言えたので今日はぐっすり眠れそうです。
[ビデオ(字幕)] 6点(2011-09-19 17:05:29)
8.  生きる 《ネタバレ》 
脚本にブレがある。本筋はこうだ。己を殺して役所勤めに埋没し、本来の生き生きとした人生を送ってこなかった男が、癌宣告を受けて苦悩、煩悶し、その艱難辛苦の果てにようやく自分のやりたいこと、生き甲斐を発見する。人生を新しく生き始めた男は、市民のための公園づくりに奔走し、幾多の困難、障害を乗り越え、遂にこれを成し遂げ、 最後は幸福感に包まれながら、竣工した公園で寿命を全うする。脚本はこれに加えて、男のささやかな功績を横取りする上司の醜さ、上役の前では意見を言えない小役人ぶり、酒を飲まなければ本心が言えない小市民ぶり、非効率的な役所仕事に対する批判を展開する。全て蛇足であり、不要。それは男にとって無意味だから。男が役所批判をしたり、名誉を欲しているわけではないのは明白。男が余命をかけて完成させたものがささやかな公園であったといういうのは泣かせる。◆構成上の欠点がまだある。最大のものは再生役の女性が途中から出てこなくなる事。若さと無邪気さで、男を”再生”させた女性が男の死に水をとるという構成が自然だろう。ラストに親族にとって謎であった女性の正体が知れ、女が男が自らの癌を知っていたこと、最後は幸福に死んだことを語る展開にすれば、感動が数倍増すこと請合いだ。重要な役割をする女性が途中で消えるのは理解に苦しむ。ポスターでは公園で男と女性がブランコに乗っている。監督はわかっていた筈なのだ。男に遊びを教えるメフィストフェレス役で良い味を出していた無頼派作家も消えるには惜しいキャラだ。男が物語半ばで死んだり、男に同情する若い同僚が葬式シーンからしか登場しなかったり、物語がブツ切れてしまっている。又女性の正体が不明のまま終わるのは、男にとっても家族にとっても不幸、観客にとっては未消化。◆高踏的なナレーションは不要。「この男は生きていない」などと、説明されても困る。その内容を見せるのが映画の筈。演出意図や理屈を説明するような科白が混ざっているのも減点対象。ごく自然な言葉、態度、出来事で観客に分らせるのが良い映画。 この映画は少し頭でっかち。◆役所に対する偏見が強い。「何もしないことが仕事」「1時間で出来る仕事を1日かけてやる」などは言い過ぎ。◆演出は冴えわたり、映像マジックも垣間見れるだけに惜しい。
[DVD(邦画)] 8点(2011-07-24 05:55:11)(良:3票)
9.  IT/イット〈TVM〉 《ネタバレ》 
【IT】実態が無く、見る側の恐怖を具現化したもの。それでもナイフを渡すことくらいはできる。ピエロの姿で現れることが多い。特定の人物にのみ見える。池、小川、水路、下水道、水に関係するところに出現する事が多い。7人が特によく目撃するのは彼らが”弱虫”で怖がりだから。恐怖におびえた人間を食べて生きている。バラバラ殺人が多い。巣に捕えて、蓄えておくこともある。特定人(ヘンリー)に憑りついてその人を意のままに動かすことが出来る。その姿を見たことや記憶は徐々に薄れてゆく。ITの影響は町全体に及び、過去の忌まわしい事件も人々の記憶から失われている。正確に30年周期で出現。ITは実態が無いが、本体は存在する。本体は蜘蛛に似た化け物。【弱点】①団結に弱い。恐怖が薄れるから。②銀の弾に弱い。その人の思い込みによる事で、信じることができれば何でも効果がある。【大人の七人】①一人が監視役として残り、他は町を出た。町を出るとITの影響が薄れ、トラウマを克服し、再対決可能まで心の成長を促すため。②残った一人はITの影響で死の考えに憑りつかれ、10年前に自殺をしそうになった事がある。そのとき下水道で銀の弾を発見し、記憶を取り戻した。③全員独身か、結婚していても子供がいない。子供がいるとその子はITに憑りつかれてしまうため。無意識に回避している。④トラウマを克服できなかった一人は、恐怖から自殺。⑤子供の頃にはITに吸引器の酸が武器になったが、再対決では効かなかった。信じる心が足らなかったからだろう。⑥ベヴァリーは暴力的な父への恐怖を、暴力的な恋人と決別することで克服できた。⑦ビルは銀色の自転車でITから逃れることが出来たと信じていたので、最後自転車で恋人を正気に戻すことが出来た。【感想】スティーブン・キングの幼少体験が濃く投影された作品。子供たちの演技は文句なし。幼少時の原始的な恐怖、実態がつかめず徐々に迫ってくる恐怖が見事に描写できてる。大人になってからのキャラに魅力が無い。対決するために町に戻ってきたのに、どんちゃん騒ぎなどして、緊張感が途絶するのが残念。対決ムードになってない。対決するのは分っているのに、最後近くまで弱腰なのも欠点。化け物の造詣が平凡。対決もあっけなく終了。制作がCG技術が確立されていない時期なので仕方が無いか。余韻の残るエンディングは秀逸。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-30 03:39:29)(良:2票)
10.  イヴの総て 《ネタバレ》 
【イヴの計画】劇場に屯し、劇作家の妻に声をかけ、彼女のとりなしで女優マーゴに近づく。マーゴのツテで、女優としてデビューを図る。その後演出家か劇作家と結婚する。 【イヴの嘘と脅迫】夫が戦死などの同情をひく経歴はでたらめ。ビール会社の社長の愛人だった。劇作家の妻にガス欠の秘密(イヴを代理出演させるためのいたずら)をばらすと脅迫し、新作の主役をもらえるように依頼。公演前日隣人に「ナーバスになり公演をキャンセルする」と嘘の電話をかけてもらい劇作家を呼び出す。「劇作家からプロポーズされた」と批評家に嘘をつく。 【イヴの誤算】代理公演が成功したのち、つい口走った本音(マーゴ批判)が記事になり、マーゴ達から嫌われ、排除される。批評家は早くから嘘の経歴を見抜いており、誰とも結婚は許されず、彼の言いなりとなる。 【感想】イヴの罪と罰の物語。イヴは嘘と脅迫が功を奏して、あこがれの舞台スターになったが、批評家に嘘がばれ、彼の言いなりとなる。見どころはイヴが無垢な顔して、虚実取り混ぜ巧みに四人に取り入り、女優としてデビューに至るまでの経緯。徐々に虚飾がはがれてゆくところがサスペンスになっています。そのあとの四人との心理戦も見ごたえあり。 ◆ところで冷静に考えてみれば、イヴはあんな謀略を駆使する必要は無いと思いましたね。若くて、美貌で、何より実力があるのですから、普通にオーディション受ければ成功するでしょ。「音楽のような、火のような」演技で魅せればいい。だからこそ劇は大成功を収め、賞も戴けたわけです。実力も伴わないのに無理にスターにのし上がる話でないと成立しない話と思いましたよ。実力の世界なのだから、観客や批評家を唸らせる演技をした者がキラー(勝者)でしょう。誠意に欠ける嘘や行為があっても、実力があってスターになるのだから問題はないわけです。芸能界とはそういうものです。 ◆失望したのはイヴの演技の場面が全く無い事。話だけで終わらせている。オーディションの場面さえも省略。どこか空虚に感じました。裏話だけに終始しては本当の舞台は語れないでしょう。ピアノを弾かないピアニストと同じ。ところでスターを夢見る未婚女性が、結婚していたと嘘をつくかな? ◆名優ベティ・デイヴィスの演技はさすがです。実年齢以上に老けているのは残念ですが、泣いたり、叫んだり、怒ったり、甘えたり、見ていて楽しいです。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-27 18:20:37)
11.  インビジブル2 《ネタバレ》 
◆透明人間を兵器として考えた場合。ものを携帯できない。冬は寒くて外出できない。雨の日もだめ。足音がする、足跡が残る。ビデオカメラには映る。などで余り役に立ちそうにない。ケータイで連絡もできないし、銃も持てないのだ。だからさほど怖くはない。待ち伏せてインクでも大量に噴射すればOKだ。網でもよい。軍は何故それらを用意しなかったのだろうか?インクをかければただの素っ裸の男である。刑事も水鉄砲くらい用意すればいいのに。 ◆透明人間は悪ではない。人体実験に使われ、自らの生存をかけて緩衝材を求めているのだ。復讐に燃えて残忍になってしまったのは残念である。軍隊を悪として描き、透明人間の復讐に正当性をもたせればもっとましな映画になっただろう。無実の女刑事を殺してしまったことで、おかしな展開になった。透明人間が暴走しただけでは内容が薄い。この人物に感情移入できるような挿話が欲しかった。そうすれば観客は彼を血肉ある人物として認識できた。単なるモンスター映画で終わっている。そしてモンスターとして見れば魅力がないのだ。いくらでも膨らませる話を小さくしている。女博士を奪う話に終始するのはもったいない。最後は殺鼠剤とスコップ刺しの刑。ああ、あわれ。可哀そうとも、爽快とも感じない。透明人間という魅力的なキャラに頼り切っただけのB級映画に成り下がっている。モンスター映画でも人間を描かなければ感動を与えることはできない。 ◆透明人間はいきなりパーティ会場で暴れるが、これはいただけない。正体がばればれではないか?透明人間の知能指数の低いこともわかってしまう。他人のいないところで尋問をすべきだった。 ◆女博士を襲う前、隣の家に侵入していたが、あれは何のためだろうか?しかみ家の人(バカップル)に居ることがばればれではないか。この手の映画は、悪キャラが狡知を尽くしてこそ魅力あるのだ。 ◆刑事が透明人間になって、透明人間と対決するのはグッドアイデア。続編が作られそうな終わり方である。
[DVD(字幕)] 6点(2010-07-05 18:17:43)
12.  1リットルの涙 《ネタバレ》 
単に「難病もの」といってしまっては身も蓋もない。原因も不明で治療方もない難病と戦った少女の魂の日記が原作。そこには五体満足で当たり前に生活する人々には想像もできないような苦悩、葛藤があったはずです。少女が短命で終わったのは既知なので、興味本位的な観賞はできない。不幸といってこれほどの不幸もないだろう。思春期真っただ中の14歳で罹患。志望校に入学できても、高校一年生で養護学校に転校しなければならないほどの重症に。一生懸命勉強したのに大学進学も断念。「保健士の母のような人の役に立つ職業につきたい」という夢も潰えた。リハビリの先生との淡い恋もはかなく散った。「なぜ病気がわたしを選んだのか」「なぜ私にだけ不幸がふりかかるのか」、主人公の亜也は何度も自分の運命を呪ったのに違いありません。しかし絶望はしなかった。彼女が生きるあかしとして綴った日記を残してくれたおかげて、我々は彼女のことや、病気のこと、家族や友達、先生たちのことを知ることができる。ありがたいことです。さて映画の出来ですが、これは不出来です。こういった映画では、登場人物の感情の揺れをいかに表現するかが出来の善し悪しに関わってきます。演技も大切ですが、タメ、アップ、涙、音楽などの演出効果も重要です。つまり「ここぞ」という場面での「感動を与える演出」が必要なのですが、この作品ではそれが欠けています。脚本は悪くなく、母親の献身的な態度、心やさしくてくれた友達、尊敬する女医との交情、親切で情に熱いパン屋のおばさんなど、泣かせどころはたくさんありました。命をふりしぼるようなセリフひとつひとつに対応する演出方があったはずです。あまりにも淡々と流れていなかったでしょうか。監督の力量が問われるところですね。というわけで、残念ながら、いまひとつ感情移入できませんでした。難病の少女を演じきった女優さんには拍手です。
[DVD(邦画)] 6点(2010-05-07 19:01:41)
13.  一番美しく 《ネタバレ》 
昭和18年、14歳以上未婚女性を対象に勤労奉仕団体である女子挺身隊が創設。昭和19年には年齢が12歳に引き下げられ、強制動員となる。徴用期間は1年ほど。女学生も動員され、授業はほとんどなかった。多くは寮生活をしながら工場に通い、ときに3交代の過酷な勤務もあった。勤労奉仕といってもちゃんと給与は出た。昭和19年には既に食事事情が悪かったが、映画では省略されている。本土空襲が本格化する前のため、防空服や防空頭巾の着用はない。まだ国家としての威厳が保てており、ほとんどの国民が戦争の勝利を信じていた。女優を実際のニコン工場で働かせており、ドキュメンタリーとしては大変貴重で、そのぶん娯楽性は薄い。映画に出てくるスローガンや歌詞から軍需増産(戦意高揚)のための国策映画であることは明らか。人物の人間性はさほど表現されておらず、軍国主義の模範的な言動に終始する。イヤな人物は一人も登場せず、理想化されている。今日の観点から見れば、滑稽なほど生真面目だ。ただ当時の人はこの映画をみて素直に感動したと思う。そういう教育(洗脳)を受けていたこともあるが、感情移入する要素がふんだんに盛り込まれており、後の黒沢映画の豊穣さを予感させてくれる。映像も美しい。「一番美しく」は、自我を捨て、身を国家に尽す姿こそが最も美しいという意味だろうか。だが、一番美しい少女時代を犠牲にし、国のために捧げる彼女らの姿を憐憫のまなざしで表現しているともとれる。監督は戦後すぐに「わが青春に悔なし」という反戦映画を作っていることから、戦争には反対であっただろう。黒沢監督はただ映画を愛し、ひたすら映画に打ち込んできた、その結果がこの映画。当時は国策に準ずる内容でなければ、製作が許可されなかった事情を考慮すべきだろう。映画としての出来を云々するより、後に有名になる黒沢監督の手により、すぐれたセミドキュメンタリー風の映画が残されたことに感謝すべきなのかもしれない。    
[DVD(邦画)] 6点(2009-07-02 23:51:20)
14.  硫黄島からの手紙 《ネタバレ》 
憲兵は軍隊の警察で民事不介入。パン屋のパンを押収したり、街中で犬を射殺したりしません。パン屋が商売道具の釜を金属供出することもありません。国旗は夜は家にしまいます。しまわない方が非国民。赤紙の特別送達人に愛国婦人会がついてくることはありません。小銃をライフルとは言いません。兵士の懲罰で鞭打ちは無いでしょう。時代考証が甘いですな。硫黄島の戦いといえばいろいろと期待します。まず18キロの坑道。40~50度の地熱と硫黄ガスに阻まれて大変困難な作業でした。米兵上陸前島の形状が変ったとまで言われる大準備砲撃。油断して上陸した米兵を待っていた地獄の日本軍の集中攻撃。すり鉢山の攻防戦。爆弾抱えて戦車に突っ込む。玉砕を許さぬ籠城作戦がひと月に渡る。水はドラム缶に貯めた雨水(ぼうふらが湧く)。一日コップ一杯の配給、あとは夜露でしのぐ。食料は椰子の木の幹やアメリカ兵の残飯(大変なごちそう)。自決を主張する負傷兵達を何日も徹夜で説得して投降させた野口巌軍医。食料増産のために連れてこられた少年兵。全部カットされてました!日本の死者2万人、米の死傷者27000人の大激戦だったのにスケールダウン。一方的に日本がやられ、米兵は悪人ばかり。広すぎる洞窟と坑道にあぜん。初期段階での自決シーンに違和感あり。あれじゃ単なる馬鹿。島の戦略上の重要性は小学生でも認識していたので、「こんな島くれてやればいい」発言は無い。西が捕虜の手当てをしたのは史実。ラジオの子供の合唱も史実(歌う子供達を出せばよかったのに)。最後西郷がスコップもって飛び出してきたのには苦笑。栗林の拳銃を米兵が所持しているのを見て逆上するが、それって自分がそこに放置したんだよね。獅童はどうしてずっとあそこで寝ていたの?自分で戦車に近づかないとだめでしょ。戦車壕で待機するのが正解。飢え、汗、ひげ、疲労、不潔さ、死に対する恐怖などが希薄。ひたすら栗林と西を賛美する内容だが、知将栗林の頭脳的戦略はきちんと描かれていない。CGはしょぼかった。ちなみに硫黄島の飛行場はB-29ではなく、長距離護衛戦闘機P-51の基地として使用された。
[DVD(邦画)] 4点(2009-05-09 01:30:11)(良:4票)
15.  いま、会いにゆきます 《ネタバレ》 
タイムスリップものとは知りませんでした!ですから、最後に謎解きがあって伏線がびしびし決まるのはとても爽快でした。見事です。死んだ人が生き返ったら、もっと驚いて大騒ぎになるだろうとか、28歳と20歳とでは容貌がだいぶ違っているから不思議に思わないのか、とかいう無粋なつっこみはおいときましょう。巧は誠実で、かつ脳の病気のためあまり利口でないという設定が成功しています。ファンタジーにぴったしのキャラです。タイムスリップについて考察。澪は20歳のときに交通事故に会い、未来へタイムスリップします。そこは28歳で死亡して1年経った世界、仮想年齢29歳です。ショックで記憶を失いますが、巧の話で二人の恋愛を追体験してゆくことにより愛情が芽生えます。そこで自分の日記を発見しますが、そこには驚愕の事実が書かれていました。梅雨が去ったら元の世界に戻ることと、戻ってから死ぬまでの内容です。つまり元に戻った澪は自分の未来をすべて知っていることになります。しかしここで疑問が生じます。澪が「いま、会いにゆきます」と決意を日記に書いたのはタイムスリップした後です。その日記をタイムスリップした自分が読むのですから、少なくとも2度タイムスリップしなければならず、パラドックスですね。また肉体ごと未来へ飛んだのに、戻ったのは意識だけというご都合主義も。では何故タイムトリップしたのか?それは澪が巧を追いかけている途中の事故なので。愛のなせる業と解釈しましょう。このとき雨が降っていたのも雨の季節限定の再会と関係ありそうです。澪の初キスと初体験の相手は29歳の巧になりますが、もしこのとき妊娠していたらどうなったでしょう?できちゃった結婚の末、離婚、とはいきません。巧は何も知らないので、愛は得られなかったはずです。危ないところでしたね。気になったのは、巧が倒れたとき雨だったのに、その前の家に自転車で向かうシーンでは晴れていたこと。それと昼に行われた陸上の表彰式がなぜ夜なのかということ。あと委員長の権限で席を自由に決められましたか。高校生から死ぬまでの10年日記なのにたった一冊ですか。ともかく無駄の少ない、よく練られた脚本です。
[DVD(邦画)] 8点(2009-04-06 02:46:35)
16.  インクレディブル・ハルク(2008) 《ネタバレ》 
ハルクというキャラに魅力がない。変身前と変身後で顔が変わりすぎているので、物語につながりが感じられないのだ。ハルクになったときの動きが早すぎて重量感が伝わらないのが最大の欠点だろう。少しも恐怖を感じないのだ。この手の映画はいかに怖くみせるかが勝負どころなのに、アニメレベルで終わっている。どだいハルクを「やさ男」のノートンが演じるのが間違っているのだ。また、ブロンスキーの悪者ハルクはグロテスクすぎるだろう。 物語はいくつかの要素でできている。ハルクの変身と暴力性、ブルースの逃亡生活、将軍の横暴、ブルースとベティの恋、ハルクを抑制する研究、ブロンスキーの暴走、ハルク同士の対決。こう並べてみるとなかなか魅力的な要素がならんでいることがわかる。前回の”おとなしい”ものに比べるとアクション重視になっており、よく練られている方だと想う。だが少しづつ何かが足りないのだ。将軍がどうしてあのような行動をとるのかがよくわからない。悪者ならもっと悪人として描くべきた。ベティの父親という設定も生かしきれていない。恋愛部分も中途半端。ベッドシーンを途中でやめてしまうところはカットすべきだ。これがあるので二人が本当に愛し合っているかどうかわからなくなるのだ。ブロンスキーの暴走ぶりも無理がある。ハルクに最愛の人を殺されたというような設定にすれば重みがでただろう。一言で言えば、登場人物をもっと濃密にからませる工夫が必要なのだ。 ところでハルクの血を傷に吸収して変身しかけていたサムソン博士はどうなったっけ?
[DVD(字幕)] 6点(2009-03-10 00:17:15)
17.  インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 《ネタバレ》 
【謎解き】青年マット(M)がインディ(I)に助けを求める。Mの保護者オックス(O、Iの友人)はペルーでクリスタルスカルを発見、アケトー(古代文明黄金都市)に持って行くと手紙をよこし、消息を絶った。16世紀探検家オレリャーノはアケトーを探して行方不明。スカルをアケトーに戻すとパワーを得られるという伝承がある。Mの母親はOを探しにペルーへ。しかし共に攫われ、スカルを渡さなければ殺すと脅されている。Iは手紙の古代語を読み解きペルーへ。精神病院の床にOの描いた地図を発見。オレリャーノの墓の地図だった。墓に到着し、オレリャーノの遺体とスカル発見。スカルは戻された跡があった。拉致されイリヤ・アラマカに移動。Oと会うが正気を失っていた。Oが表意文字でアケトーの場所を示す。逃走して川を下り滝を落ちて入り口を発見。出口はピラミッドの上。オベリスクを破壊すると砂が落ちて石組細工の鍵が作動。内部に侵入。ゲートにスカルをかざすと開く。世界から集めた考古資料。13の宇宙人の骸骨。パワーとは知識のことだった。スカルを戻すと合体して肉化。巨大UFOで異次元へ。 【安直な部分】アメリカングラフティ無意味。核実験場から鉛の冷蔵庫で脱出。ロズウェルパートは本筋と無関係で不要。13の骸骨が合体して肉化。ベタな巨大宇宙船登場。敵がロシアKGB。敵ボスが女で超能力者。超能力もほとんど使わない。ロープ代わりの大蛇。ターザンごっこ。車が崖から墜ちる。滝の3段落ち。無関係なのに襲ってくる原住民。彼らに対するリスペクト無し、不用意に虐殺。空輸したバイクを使わない。伏線のナイフも肩透かし。 【感想】謎解きパートは良い。適度に複雑で謎解きもあざやか。雰囲気を盛り上げている。今更のロズウェルネタやUFO落ちはいただけない。骸骨が再生するのはやり過ぎ。脇キャラに問題がある。Oもマックもマリオンも年寄り。アクションが弾けない。Oは夢遊病状態、マックは二重スパイで金に執着、マリオンは強気で魅力的だがメタボ体型。Mは行動が無鉄砲で知性的ではなく、Iの息子に見えない。敵ボスが女というのも問題。Iは女性に優しいので合わない。知力に優れた男にすべき。◆新鮮味に欠けるものの、次から次へと飛び出す冒険アドベンチャー、アクションのアイデアに脱帽。軍隊蟻がツボだった。爽快感は魔宮の伝説に匹敵。帽子や鞭の使い方は秀逸。歴史的シリーズの続編として合格。
[DVD(字幕)] 9点(2009-01-30 19:52:09)
18.  1408号室 《ネタバレ》 
久しぶりに怖いホラー映画に出会いました。 古いホテルの一室に出る「邪悪なもの」という古典的スタイルを取りながら、 はらはらどきどきさせる映像・音響手法は見事です。 部屋に入るまでの導入部分も上手に演出されています。 大作感こそありませんが、佳作の小品として記憶に残りそうです。 部屋を脱出したと思っても、まだまだつづく無限ループにいるという設定が斬新です。 謎は謎のままに…、まさにキングの世界です。
[映画館(字幕)] 8点(2008-11-24 20:45:27)
19.  イーグル・アイ 《ネタバレ》 
コンピューター暴走ものですね。 あらゆるものにアクセスできる巨大軍用コンピュータが大統領を狙う。 大統領が飛行機に載っているときに操縦を狂わせたり、自動車に乗っているときに 無人爆撃機で攻撃させたり、部屋に閉じ込めて高電流を流し火事をおこさせるとか、 いろいろあると思うが、何故あんなまどろっこしい方法を採用したのか? 小型爆弾を盗み、子供のトランペットに仕込み、子供の楽団の予定を変えてホワイトハウスに招待し、子供が高いファの音を鳴らすのを待つ。 ボイスロックを解除するための双子の設定は面白かった。 テンポがよく、そこそこ見せてくれます。
[映画館(吹替)] 6点(2008-10-28 20:24:48)(良:1票)
20.  ICHI 《ネタバレ》 
獅童、竹内の悪役キャラがマンガに見えて怖くないのが最大の欠点。 演技が定型でオーバーアクションに陥っている。 十馬が万鬼を斬ったと思ったら、逆に斬られていて、傷つきながらも思ってくる万鬼を市が斬るというクライマックシーンは、底が浅い。 窪塚のキャラが与太者で、悪者にみえてしかたがない。 善人キャラにすればすっきりしたのに。 八州様とは、関八州見回り役同心のことと思うが、幕府を敵に廻して無事に済むわけがない。 市はサイコロの目を読むことができるんだったら、瞽女なんかする必要はないと思うが。 市の過去と十馬の過去を中心に据えた人間描写はよかったと思う。 ところで、渡辺えり子のシーンは何だったんだ!
[映画館(邦画)] 4点(2008-10-28 20:04:52)
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