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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  エクスペンダブルズ2
矛盾もあれば中弛みもある、映画としての完成度は7点くらいかもしれませんが、ある特定の人種にとっては『アラビアのロレンス』クラスの大傑作に仕上がっています。もちろん私もドンピシャの世代であり、本作には数年ぶりの10点を付けさせていただきました。このキャストを見てグッとくるものを感じた方には是非とも映画館に直行していただきたい作品です。絶対に期待は裏切りませんから。。。 本作は基本的に前作の路線を引き継いでいるのですが、そのパワーアップの加減は『T1』→『T2』をも超える程であり、前作で感じたモヤモヤ(敵が弱すぎる、大物がほとんど動いていない)は解消されてお釣りがきます。今回の悪役はなんとヴァンダム。「俺が俺が」のアクション俳優の中でもとりわけ我の強いヴァンダムが悪役を引き受けたというだけでも驚きですが、その上さらにスタローンとヴァンダムがサシで勝負するという究極のカードまでが準備されています。驚きのカードはそれだけではありません。ピンチに陥るとチャック・ノリスやシュワルツェネッガーがフラっと助けに現れ、クライマックスではスタ・シュワ・ウィリスが横一戦に並んでマシンガンを乱射し、ノリスがその援護を買って出るという夢のような見せ場が待っています。シュワとウィリスがお互いの名台詞を交換したり、ノリスが自分についての噂話を茶化してみたりと遊びも利いており、笑って興奮して大変でした。。。 そんなレジェンド世代の頑張りの一方で、現役世代も負けてはいません。クートゥアとクルーズはコメディリリーフとしてエンターテイメントの幅を広げているし、ラングレンもMIT卒という自身の経歴をネタにして笑いをとります。元アスリートのステイサムは惚れ惚れとする程の美しいアクションを披露しており、彼とスコット・アドキンスによるナイフ戦は、大御所によるファンサービスの意味合いが強い本作において、数少ないガチンコの見せ場となっています。。。 とにかく本作はアクションバカにとっては至福の作品であり、この企画でやるべきことは完璧にやりきっています。もし、今回の大ヒットを受けて『3』が製作されるとなれば、それこそイーストウッドを引っ張り出すくらいのサプライズが必要になるでしょう。
[映画館(字幕)] 10点(2012-10-21 00:20:43)(良:3票)
2.  エターナル・サンシャイン 《ネタバレ》 
極めて特殊な設定ですが、その中身は非常に単純。①感情は記憶を超えうるのか?、②ラブラブだったふたりが別れに至るまで。この映画がテーマにしているのはこの2点だけです。①については、恋愛感情とは巡り合わせで起こるものなのか(=偶然)、それともまったく違うシチュエーションで出会っても恋愛感情は起こるものなのか(=運命)という問いかけですが、本作の出した答えはYes。ジョエルとクレメンタイン、メアリーとミュージワック博士の2組のカップルが記憶消去を体験しますが、どちらも記憶消去の後にもう一度恋愛感情を抱きます。ですが恋愛が一度失敗に終わっていることを知ると、メアリーは博士との報われない恋愛を終わらせることを決め、一方ジョエルとクレメンタインはお互いの欠点を認識し、自分がそれを許容できなかった事実を受け止めつつも、また恋愛しようと決めるのです。ジョエルとクレメンタインの決断はいかにも映画的なきれいごとのような気もしますが(あんな告白テープを聞かされて付き合う気になりますか、普通)、その根拠となる②が非常に秀逸なのです。ジョエルとクレメンタインの恋愛は私たちの身の回りにも転がってるような本当に普通のもので、だからこそふたりの葛藤には誰もが身につまされる思いをさせられます。私は彼女と鑑賞したのですが、ふたりがケンカする場面になると自分まで気まずい思いがしたし、一方ラブラブの場面では妙に照れくさかった。それほど恋愛というものがよく描けているんだと思います。感情が記号のように並んでるだけの映画や、ありえない主人公の泣けるラブストーリーなんかではこんな気持ち味わえません。その描写において、時間を逆行させるという掟破りが尋常ではない効果を発揮しています。お互いの欠点がどうしてもガマンできなくてケンカを繰り返しているところからはじまり、ラブラブだった頃へと戻っていくという驚天動地の脚本。あれだけ罵ってた相手が自分にとってかけがえのない存在だったのだと再認識する過程が押し付けがましくなく本当に自然でした。さらにこの映画、幼少時代へのノスタルジーまで盛り込んでみせます。どこまで凄いんだと感心しっぱなしでした。ともすれば難解となる脚本をわかりやすく、かつ刺激的なビジュアルでまとめてみせた演出もさすがで、芸術的にも感情的にも得るものの非常に大きい作品だと思います。
[DVD(吹替)] 9点(2007-02-13 02:25:02)(良:2票)
3.  X-MEN:ファイナル ディシジョン 《ネタバレ》 
これは面白かったです!ブライアン・シンガー監督がスーパーマンに乗り換えたことを受け、急遽ブレット・ラトナー(スーパーマンの監督をクビにされた人)に監督が決まった時にはイヤな予感がしたのですが、この交代が完全に良い方向へ作用していました。ブライアン・シンガーの良い点は極めて徹底した世界観の構築にあり、見せ場ひとつにもこだわりまくってマンガ映画にも知的であなどれない風格を持たせるという才能を持っていますが、その反面素直に楽しめる娯楽作を作ることには不向きなところがあります。X-MEN2やスーパーマン・リターンズなどを見るにつけても、目を見張るような素晴らしいシーンが多くある一方で、最後まで観客のテンションを維持する見せ方ができていませんでした。そこに来て、卒なく娯楽作を作れるもののこだわりのない演出しかしないという対照的な才能を持ったブレット・ラトナーという監督の当番は、「良く出来てるけどいまいち面白くない」というこのシリーズの欠点を完全に補っていました。前作まででブライアン・シンガーが世界観の構築を細かく細かくやっていたおかげで、本作はとにかく戦って戦って戦いまくってればそれで良し。細かいことにはこだわらないブレット・ラトナーの大味采配のおかげで、大決戦が次々とテンポ良く見せられていき、本当に気持ちのいい娯楽作に仕上がっていました。サイクロプスやミスティーク、果てはプロフェッサーXまで、シリーズで主役を張っていたキャラクター達を「おいおい、いいのか?」と思うぐらいアッサリと切り捨て、ぞろぞろ登場する新キャラ達の紹介も最小限にとどめ、すべてをクライマックスの大決戦へ向けてテキパキと話をまとめていくのは薄味監督ならではの巧さでした。マグニートー軍団の襲撃を受け陥落寸前のアルカトラズに「X-MEN参上!」と言わんばかりにウルバリン達が駆けつけ、それぞれが一番かっこいい顔をしてファイティングポーズを決める場面は、まさにマンガ映画の真骨頂。アメコミ映画はいろいろ作られていますが、こういうストレートにマンガ的な演出をしたのはこれがはじめてだと思います。バットマン・ビギンズのようにヒーローにもリアリティを持たせることを重視する傾向が主流となっていますが、こういうバカバカしくもかっこいいシーンを見せてこそのマンガ映画だと私は思います。
[映画館(字幕)] 9点(2006-10-22 19:09:54)(笑:1票) (良:4票)
4.  エスケープ・フロム・L.A.
なんていい映画なんでしょう。結構お金もかかってるのに、精神年齢のヤングな男子しか喜ばない映画作りに入魂してくれるんですよ。すっごくいい肉が手に入ったのに、結局カレーに使っちゃいましたって清々しさを感じます。何かにつけて愛だ感動だと入れようとする客寄せの潮流は完全無視、デートのやつは見に来るなという男子校チックな潔さもたまらんです。スネーク同様、無意味に世間を逆恨みしようぜ!同志達。あと、黒コートはネオよりもスネークが先!こちらの優良なかっこよさもリスペクトです。
9点(2004-06-10 08:30:55)(笑:2票) (良:4票)
5.  エリート・スクワッド(2007) 《ネタバレ》 
最近、テレビドラマの『ナルコス』にハマってしまい、ジョゼ・パジーリャ監督作品を後追いして本作に辿り着きました。ベルリン映画祭金熊賞受賞作品にして、本国ブラジルでは子供たちがBOPEごっこをするほどの国民映画となったという評価はダテではなく、社会性と娯楽性が高いレベルでブレンドされた名作として仕上がっています。 手のつけようのないほど凶悪なギャング、私腹を肥やすことのみに精を出して公僕としての機能を失った警察、違法行為に手を染める市民と、各自が好き放題をしてメチャクチャな状態となっているリオデジャネイロにおいて、唯一、高い規律と目的意識を持って行動しているのが特殊警察作戦大隊BOPEです。BOPEは「ボッピ」と読むらしく、えらい可愛らしい名前の特殊部隊があるもんだと思ったのですが、その実態はわが目を疑うほどの壮絶さです。『フルメタル・ジャケット』や『GIジェーン』をも超えるしごきで入隊の儀式を済ませると、治安組織というよりもむしろクライムファイターのような振る舞いで街の悪人たちを成敗して回ります。女子供だろうが容赦なく拷問して必要な情報を聞き出し、犯罪者を見かければとりあえず射殺。生け捕りにした犯罪者には容赦のない暴行を加え、仲間を殺った悪人はその場で処刑と、「逮捕→裁判→投獄」という一般的な司法制度をまったく意に介さないリアル・ジャッジドレッドな集団なのですが、これが実在する部隊であり、本作の脚本には元BOPE隊員が参加しているという点で二度驚かされます。 こうして振る舞いのみを書き出すとBOPEは悪者であるかのような印象を受けるのですが、本作は前半にてリオの現状がいかに腐っているかを描きだすため、そのカウンターとしてBOPEほどの極端な暴力装置が必要であることを観客に納得させてしまいます。この辺りの構成は実に見事だと思いました。BOPEが全力でギャングを潰しにかかる終盤の爽快感はなかなかのものであり、本作はエンターテイメントとしても非常に優れているのです。 唯一不満だったのは、「遊び人」と呼ばれる大学生がしれっと生き延びたこと。この人物は、表面上は慈善活動を目的とする左翼系サークルを主催しているのですが、同じく表面上は貧困層の支援を目的とするNGOを介してスラムを仕切るギャングとのコネクションを持ち、キャンパス内に麻薬を持ち込んで利益を得ているクズ野郎です。ギャング達にはギャングにならざるを得なかった不幸な生い立ちがあるのですが、一方でこいつは恵まれた環境でぬくぬくと育ちながら、ロクな覚悟もなく軽い気持ちで悪事に手を染めるという、一番同情できないタイプの悪人。こいつのせいでネトは死んだのですが、マチアスが真剣に尋問してもヘラヘラと受け答えをするような腐った性根を持っており、ギャングの世界がいかに怖いかを思い知ってからエライ殺され方をして欲しいところでした。
[インターネット(字幕)] 8点(2016-05-23 17:34:05)
6.  エクスペンダブルズ3 ワールドミッション
こちらの打ち手を知り尽くしている敵が相手では勝ち目がないと、従来メンバーを切って若手隊員をリクルートするスタ隊長。ここからエクスペンダブルズは新たな局面に入るのかと思いきや、大した作戦もなく敵陣に攻め入って力技でターゲットを落とすという、代わり映えのしない戦いぶりだったことにはガッカリさせられました。案の定、メル・ギブソンによる返り討ちに遭い、若手隊員を人質にとられるスタ隊長。その後、スタ隊長は従来メンバーとともに再度出撃し、またしてもノープランで敵陣に足を踏み入れては敵の猛攻撃にさらされるという、ものすごく頭の悪い展開を迎えます。同じ失敗を何度繰り返すんだよ、スタさん。こんなことだったら、世代交代絡みのエピソードは一切落としてしまって、いつもの仲間と大暴れする様で2時間引っ張ればよかったのではないか思います。。。 そんな感じでお話の方はシリーズ最低とも言えるほどのグダグダ加減だったのですが、物量にモノ言わせたクライマックスの大戦闘シーンで、映画は息を吹き返します。大勢のキャストに均等に見せ場を割り当てるという見事な演出に、突拍子もないほどの火薬の量。10人の傭兵が小国の軍隊を相手に戦闘を繰り広げ、勝利するというバカバカしい内容なのですが、アクション俳優達の筋肉とカリスマ性によって道理など引っ込んでしまい、見せ場のコラージュのみで画面を持たせてしまうのです。純粋に破壊を楽しめるアクション映画は久しぶりでした。そもそも、シルベスター・スタローンとハリソン・フォードが組んで、メル・ギブソンを倒すという構図自体が素晴らしすぎます。『2』を劇場で鑑賞した時、これ以上の豪華キャストは実現できないだろうと思ったのですが、本作では『2』を軽く超えるほどの顔ぶれを揃えてきたのですから、スタローンの人脈とキャスティングセンスには恐れ入ります。。。 キャストの平均年齢は恐ろしく高く、画面に映る顔はどれもこれもしわっしわ。しかし、一人一人がとても輝いていて良い表情をしていることが好印象です。作り手と観客との間の、良い意味での馴れ合いこそが、本作最大の味なのです。
[映画館(字幕)] 8点(2014-11-04 00:21:38)(良:1票)
7.  エンダーのゲーム 《ネタバレ》 
原作未読。少年が主人公のSFということで「どうせ宇宙のハリー・ポッターだろう」と勘違いして映画館へは行かなかったのですが、後にブルーレイで鑑賞して、これは大スクリーンで見とけばよかったと激しく後悔した力作でした。。。 登場人物の大半は少年少女なのですが、子供らしい天真爛漫さを持つ者は皆無であり、それどころか、主人公が関わるのは陰湿なイジメをやってくる嫌な連中ばかり。当の主人公にしても、優秀なのはわかるが可愛げゼロで世渡りが異常にヘタクソ、通常の娯楽作に登場する子供達とはかなり趣が異なります(本作の登場人物達は『新世紀エヴァンゲリオン』に相当な影響を与えたとか)。そんな子供達が『フルメタル・ジャケット』ばりの厳しい訓練に挑む様には、かなり異様なものがありました。異様と言えば大人代表であるグラッフ大佐も同じくで、主人公の才能を見抜き、軍人としての育ての親となる一方で、後に人間のクズのような男であったことが判明するキャラクターであり、こちらも一筋縄ではいきません。この役に父性の塊のようなハリソン・フォードをキャスティングすることで、善悪という価値基準の脆さが実にうまく表現できている点には感心しました。。。 本作には含蓄あるセリフが多いのですが、中でも私が心を打たれたのは、イジメっこをボコボコに殴り、蹴り倒した理由を聞かれた主人公の回答で、「もし圧勝であれば程々のところで手を引いたが、あの場合はギリギリの勝利だったため、二度と攻撃する気を起こさせないよう、徹底的に相手を痛めつけた」と言うのです。これこそが多くの自衛戦争の真相だし、21世紀のアメリカが手を染め、泥沼に嵌った対テロ戦争のホンネです。1億ドルバジェットの娯楽作を装いながらも、こういう深いテーマをズバっと突いてくる本作の姿勢には感銘を受けました。。。 残念だったのは、主人公の背景の描写が不足していたこと。原作によると、舞台となる世界では人口抑制政策がとられており、3人以上の子供を持つことは禁止されているのですが、主人公の家庭については長男が天才児だったことから3人目までの出産が特別に許可されており、その結果生まれたのがエンダーだったとか。エンダーが周囲から厳しい視線を受けることや、彼が常に思い悩んだ顔をしているのはこの背景に起因するものなのですが、映画版ではその説明がないために、ドラマの通りがやや悪くなっています。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2014-08-17 00:05:03)(良:1票)
8.  X-MEN:ファースト・ジェネレーション
創作上のヒーロー達が、実は近現代史の裏側で暗躍していたという着眼点はまんま『ウォッチメン』ですが、ひたすら暗くて説教臭かった『ウォッチメン』と比較すると、本作には適度な笑いとスリルがあり、クライマックスには大掛かりな見せ場もあって、娯楽作としては抜群のバランス感覚を保っています。。。 2006年の『ファイナル・デシジョン』にてシリーズは一旦終了したものの、2009年の『ウルヴァリン』が結構な興行成績を叩き出したことから、「やっぱりX-MENは儲かる」ということでのシリーズ再開。とはいえ、『ファイナル・デシジョン』があらゆる設定や物語を豪快にひっくり返したことから(私は好きですが)、単純な続編は不可能ということで、シリーズの仕切り直しとして製作されたのが本作でした。『バットマン・ビギンズ』や『アメイジング・スパイダーマン』等を見ればわかる通り、仕切り直しの作品は大抵がオリジナルシリーズとの差別化に精出し、あっと驚くような設定変更を仕込んでくるものなのですが、一方で本作は、旧シリーズとの連続性を意識し、それらを作品に取り込んでいこうとする姿勢が好印象でした。新シリーズの一作目であるが、旧シリーズの存在も無駄にはしていない。そうした器用な作りとしたことが、2014年の『フューチャー&パスト』にも繋がっていくわけです。。。 主要キャラクターの生い立ちや、世界情勢、ミュータントの生きづらさ等、多くの要素をぶち込みながらも、本作の流れは驚く程スムーズです。真面目一筋のブライアン・シンガーと、単純娯楽に徹するブレット・ラトナーの良い所を掛け合わせたかのようなマシュー・ヴォーンの柔軟な演出には感心しっぱなしでした。オタク臭いチマチマとした辻褄合わせをやりながらも、クライマックスでは延々30分に及ぶ大スペクタクルをしっかりと見せる。そして、ラストでは相思相愛ながらも袂を分けたプロフェッサーとマグニートーの濃厚な友情まで。娯楽作としては文句のつけようがありません。役者の選び方も見事なもので、変なヘルメットを被って偉そうなことを言わねばならないという悶絶級に難しい役柄には、ケビン・ベーコンとマイケル・ファスベンダーという演技力とカリスマ性を併せ持つ俳優を当ててくる辺りの手堅さを見せています。
[映画館(字幕)] 8点(2014-06-04 23:40:01)(良:2票)
9.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q 《ネタバレ》 
『破』の衝撃のラストから3年もお預けを喰った末の『Q』です。この3年でパンパンに膨らんだ期待を胸に映画館へと足を運んだのですが、その期待に応えるだけのものを出してきたスタッフのみなさんの手腕と才能には恐れ入りました。作品としての完成度も然ることながら、思わぬ形で観客を驚かせるというイベント作りにも長けているのです。本作はネタが割れると楽しみが半減してしまう作品でもあり、初日に鑑賞できた私は幸運でした。。。 【注!ここからネタバレします】 97年の旧劇場版は当初、春に25話と26話のリメイクを、夏に完全新作をという触れ込みとなっていました。しかし製作スケジュールの遅れによって例の形に落ち着いたわけですが、それから15年を経過した現在になって、あの夏に観るはずだった完全新作を目にすることになるとは思ってもみませんでした。リアルタイムでエヴァを鑑賞してきた私のような人間にとって、本作は悲願とも言える内容となっているのです。この点に目をつけてきた庵野氏の鋭さには恐れ入りました。。。 これまでは無理矢理エヴァに乗せられてきたシンジが、今回は「乗るな、何もするな」と冷たく突き放される。このつかみの時点で心を持っていかれました。ネルフは分裂し、エヴァvsエヴァの戦争が開始されるという構図には血が沸いたし、音楽と渾然一体となった素晴らしいアクションの数々には目を奪われました。ハリウッド大作でもここまで見せるものは少なく、エヴァは世界レベルでも最先端を行く娯楽作であることを再認識させられました。ただし問題もあります。【ロカホリ】さんが指摘されている通りドラマ部分が前作『破』と整合していないし、ネルフとヴィレ以外の人類の姿がまったく描かれていないため、彼らが一体何を守りたくて戦っているのかという点もわかりづらくなっています。しかし、それらは些細な問題だと感じさせられてしまうほど、この『Q』には圧倒的なパワーがあったこともまた事実。上記の問題点については完結編を観るまで保留とさせていただき、今回は高評価を下したいと思います。
[映画館(邦画)] 8点(2012-11-18 01:24:09)(良:2票)
10.  英雄の証明(2011) 《ネタバレ》 
シェイクスピア原作の映像化作品は現代風のアレンジを加えるものが主流という中で、本作は悲劇『コリオレイナス』をほぼ忠実に映像化した異色作。鑑賞前には「どうせ企画倒れのくだらん文芸作品になるだろう」と高を括っていたのですが、これがあまりに面白くてブったまげました。原作における着眼点や切り口の鋭さ、ジョン・ローガンによる見事な脚色、余計なことをせず王道に徹した演出、これらすべてが吉と出たようです。。。 物語は、民主主義の欠陥を鋭く追及するという興味深い内容となっています。ローマに対する忠誠心、確かな実行力、外敵に対する勝負強さを兼ね備えたコリオレイナスは執政官に相応しい人物ではあるのですが、彼はポピュリズムに負けて国を追放されます。彼の足を引っ張るのは、その一挙手一投足をヒステリックに騒ぎ立てるプロ市民と、コリオレイナスにリーダーになられては困るとプロ市民の行動を焚き付ける野党議員たち。優秀なリーダーが責任を負わぬ素人によって糾弾され、権力の座を追われるという構図は現代日本においてもしばしば観察されるものであり(経済・外交面で着実に成果をあげていた麻生総理が、マスコミと民主党による異常なネガティブキャンペーンによって引きずり降ろされたのは記憶に新しいところ)、人類というのは何百年経っても進歩がないのだなぁと実感させられました。。。 後半はコリオレイナスとオーフディアスという正反対のタイプのリーダーによるドラマとなるのですが、こちらも興味深い内容となっています。どこまでも一本気なコリオレイナスに対し、オーフディアスは優秀な軍人であると同時に政治家としての柔軟性も兼ね備えています。コリオレイナスが領内に姿を現した時、軍人としてのオーフディアスは生涯の宿敵を抹殺しようとするものの、政治家としての狡猾な一面がコリオレイナスを利用せよと囁きます。オーフディアスは時に汚い手も辞さない人物なのですが、どこまでも美学にこだわるコリオレイナスはそんな彼の正体を読み切れず、軍人としての高潔さを理解してくれる相手だと勘違いして新たな悲劇を生み出すわけです。
[DVD(吹替)] 8点(2012-09-29 23:55:59)
11.  エドtv
前年公開の「トゥルーマン・ショー」の二番煎じとみなされて興業的にも批評的にも大失敗、ロン・ハワードの黒歴史と化している本作ですが、私は「トゥルーマン・ショー」よりも遥かに面白く鑑賞できました。本作では「トゥルーマン・ショー」に欠けていた点がほぼ完璧に補正されていて、メディア批判の映画としては超一級だと思います。。。 「トゥルーマン・ショー」の最大の欠点とは”「トゥルーマン・ショー」が面白い番組に見えない”という点でしたが、これに対し本作は①トゥルーマンを無理に拘束せずともテレビに出たがる人間はいくらでもいる、②視聴者が興味を持つのはハプニングとスキャンダル(清廉潔白なトゥルーマンのドラマなど面白くも何ともない)、この2点を徹底して深掘りすることで、「もしこんな番組をやっていれば、恐らく人気が出るだろう」という説得力を持たせることに成功しています。最初は「くだらない」と言っていた視聴者達が番組に対して徐々に関心を抱き始め、大人気番組へ成長していくという丁寧な描写はロン・ハワードならでは。次々と繰り出される"バラエティあるある"には笑わされるし、同時に考えさせられます。またエドが反撃に転じるクライマックスには適度なカタルシスがあり、脚本も演出も驚くほどしっかりしています。。。 三十路でフリーターのダメ人間だが、誰からも愛される可愛げを振りまくエド役にマシュー・マコノヒーは適任でしたが、このキャスティングも当時としてはかなりの意外性がありました。というのも、マコノヒーは弁護士(「評決のとき」「アミスタッド」)、神学者(「コンタクト」)等専らアカデミックな役柄を得意としており、ダメ人間を演じることは珍しかったからです。しかし本作は彼の個性を引き出すことに成功し、以後のマコノヒーは気の良いチャラ男を演じることが多くなりました。本作はキャスティング面でも成功を収めていたというわけです。
[DVD(吹替)] 8点(2012-06-25 01:18:06)(良:1票)
12.  エニイ・ギブン・サンデー
オリバー・ストーン監督とあってはアメフト界の内幕を暴くような作品になるのかと思いきや、なんと直球勝負のスポ根映画でした(DVDジャケットに書いてあった「大逆転の謀略!!」なんてものは一切出てきません)。21世紀に入ってからはすっかり腕前の鈍った感のあるストーンですが、本作では圧倒的な演出力を披露。そのビジュアルはアメフトの迫力を見事に表現しているし、2時間31分の長丁場にも関わらず中弛みなしの熱い熱いドラマは見ごたえ十分です。私はアメフトのルールにそれほど詳しくないのですが、そんな私でも十分に楽しめる仕上がりになっているのですから、余程よく出来た映画なのでしょう。選手達の一挙手一投足がスローモーションで映し出され、「この一撃で勝つ!」というみんなの思いがボールに託されるラスト10秒はスポーツ映画の定番ですが、そんなお決まりのクライマックスをこの映画は血がたぎるような名場面にしてみせます。この辺りの演出の巧さは本当に突出しています。キャスティングも見事なもので、アル・パチーノやジェームズ・ウッズといった定評あるベテランをいとも簡単に使いこなしてみせる一方で、映画への出演経験のほとんどなかったジェイミー・フォックスを物語の中心に据え、10年以上キャリアが低迷し忘れ去られていたデニス・クェイドを掘り起こし、当時はお人形さん扱いだったキャメロン・ディアスに演技力が要求される役を任せています。キャメロン・ディアスについては、すべての出演作中本作がもっとも彼女を美人に撮影しているし、同時に「こんなに演技力あったの?」と驚かされました。俳優の魅力や才能を引き出すことも監督の重要な仕事だとすれば、本作でのオリバー・ストーンの仕事は百点満点だったと思います。
[DVD(吹替)] 8点(2010-05-26 21:40:15)
13.  X-MEN2
第一作公開時、よく出来てはいるが物足りなさの残る仕上がりへの批難は、娯楽作の経験のないブライアン・シンガーに集中しました。あんな生真面目なのじゃなく、面白い映画を撮れる人間に監督させるべきではなかったかと。しかしシンガー、第二作ではやってくれました。冒頭から見せ場の連続。第一作で技術的な経験を積んだことから映像表現を自在に操る術を学び、SFX満載、超能力を操るミュータント達の戦いを想像力の限りを尽くして描きます。火薬満載だが知性を感じさせる見せ場作りはさすがシンガー。他の監督ではここまでのものは作れなかったでしょう。また脚本レベルの完成度も高く、学園を襲撃されたウルヴァリンの反撃、暴力の限りを受けたマグニートーの脱獄と、虐げられるミュータントが、忍従を重ねた末にその特殊能力を発揮して反撃をするという構図のアクションには燃えに燃えましたとも。ストライカーという共通の敵の登場でX-MENとブラザーフッド(と言ってもマグニートーとミスティークの二人だけですが…)が手を組んで闘うというモロ少年マンガの展開にも、やはり燃えてしまいます。難を言えば、ブライアン・シンガーの悪い癖で後半のバトルが冗長になりすぎたことでしょうか。この人は非常に丁寧に作品を作る監督なのですが、やりすぎて観客の生理を無視してしまう傾向があります。後半ももっとコンパクトで畳み掛けるような展開にすれば充実したアクション大作になったと思うのですが、いかんせん長い。あと、X-MENのリーダーでありながら何の役にも立たないサイクロプスと、ミュータントの指導者でありながら敵の手に落ちて足を引っ張るプロフェッサーの扱いは、さすがにどうなんでしょう。「3」ではあんなことになってしまうし。「1」の後で売れっ子になったヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、イアン・マッケランの見せ場を増やすために、彼らの役回りが悪くなったようにも感じます。
[映画館(字幕)] 8点(2009-09-10 21:00:46)(良:3票)
14.  X-メン
09年現在まで続くアメコミ実写化ブームの最初の作品であり、本作の成功が後続の企画達の大きな原動力となったという意味で、かなりの重要作です。現在あらためて見返すと、公開時に感じた以上に脚本・ビジュアルともに緻密に作り込まれていることに驚かされます。コミックを実写化する上での最大の問題である、二次元のキャラなら特に問題ないが、いざ生身の役者にやらせるとおかしなことを、どこまで原作に忠実にやるべきなのか?本作に先駆ける「スーパーマン」は怒涛のSFXを売りにすることで、「バットマン」はティム・バートンの独特の世界観を提示することで、この難題からうまく逃げてきました。しかし本作はハリウッドではじめてこの課題に真正面から挑み、かつ成功させており、ある意味で後続作達のガイドライン的な役割を果たしています。ウルヴァリンをはじめとした奇妙奇天烈なルックスのキャラ達を驚くほど原作に忠実に再現。シリアスな世界観の中にあって、あの強烈なルックスのキャラ達を観客に受け入れられるようにまとめているのですから、ブライアン・シンガーは驚異的な仕事をしています。彼らの登場のタイミングや、その能力の表現が細かいところまでよく考えられていて、特に映画の冒頭をマグニートーの少年時代とし、ユダヤ人収容所での悲劇的な物語を頭に持ってきたことは、これはどういう映画であるかを観客にガン!と提示する意味でかなり効果的でした。さすがに擁護しがたいようなおかしな要素は笑いにしていて(変なニックネームのキャラ達を紹介されたウルヴァリンが、プロフェッサーXに向かって「で、あんたは"車イス"?」、コスチュームを渡されて「本当にこれで人前に出るのか?」)、脚本は非常に柔軟です。自由の女神の土産物屋を舞台としたラストのバトルにはさすがに物足りなさがありましたが、技術的にテスト段階にあった作品だけに、下手に大風呂敷広げて失敗するよりも出来る範囲で小さくおさめたことに、制作陣の真摯な姿勢がよく出ています。これについてはアクション大作となった「2」できっちり答えを出しており、シリーズ化のために作品を破綻させないことを重視した第一作の判断は、今となっては好意的に評価すべきでしょう。
[DVD(吹替)] 8点(2009-09-10 18:14:12)(良:3票)
15.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 《ネタバレ》 
【激しくネタバレしています】 テレビシリーズにおいては、毎回使徒を殲滅する爽快なアクションや学園ものとしての明るい面が強調されたパートに当たり、またシリーズ中最大の盛り上がりとなった最強の使徒との戦闘→初号機の覚醒もあって、かなりおいしい部分に当たるのがこの「破」です。というわけで初っ端から見せ場の連続、「序」を見てしまっているのでビジュアルへの驚きは薄くなりましたが、意表を突くような使徒のデザインや(時計の針みたいなやつまで登場)、細かいところまでこだわり抜いたアクション、音楽と渾然一体となったキレのいいカットにはやはり大興奮なのです。ハリウッド大作でもここまで見せるものは少なく、日本はやはりアニメの国なんだなぁと実感しました。本作より新劇場版はオリジナルとは異なる展開となりますが、かと言ってまったく新しいことをやるのではなく、オリジナルにあったパーツを組み替えることで意味合いを変えていくという、いかにもファンを喜ばせる遊びをやっているのはさすがです。そうして中盤まではテレビ版を踏襲した作りとしていただけに、テレビとは大きく変わったクライマックスの戦闘にはかなり驚かされました。使徒がエヴァを捕食するというテレビと逆の関係になっていたり、「覚醒」が「ビーストモード」としてエヴァのオペレーションに組み込まれていたり(しかも今回はエヴァが負ける)、極めつけは旧シリーズのクライマックスだった初号機の神格化及びサードインパクトがここで発生しており、「おいおい、もうはじまっちゃったか」とかなり意表を突かれました。さらにシンジとレイの行動原理を明確にお互いへの愛情としたため、前回の気の重くなるようなサードインパクトから一転、えらく前向きで力強い意志をもったサードインパクトとなっています。今回はシンジとレイの成長が大きな鍵となっていますが、一方でシンジをレイに持って行かれ、加持さんも心の恋人ではないアスカの冷遇ぶりはお気の毒でした。また新キャラであるマイは主要な登場人物にほとんど絡んでおらず、オリジナルに比べて微妙となったアスカ、立ち位置のはっきりしないマイ、登場のタイミングが大きく変わったカヲルが今後どのような形で話に絡んでくるのか、「Q」も見逃せない終わり方となっています。今回のように2年も空けることなく、できれば半年以内にでも見せてくれれば嬉しいんですけどね。
[映画館(邦画)] 8点(2009-07-01 22:30:10)(良:2票)
16.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序
キャラも話も見せ場も大きな変更はなく、新しいものは特にないのに、舐めるほどオリジナルを見ていた人間を納得させるだけの映画にしているのですから、エヴァという素材がいかに強力であるか、また新劇場版がいかに優れた娯楽作であるかがわかります。時間的にはかなり端折られているにも関わらず話の要点は外しておらず、また駆け足感もさほど感じない要約の絶妙さ、一方でエヴァの特徴である意味深なセリフや内面描写、「謎」への振りは、劇場での鑑賞でも消化できる程度の適度な密度に抑えていたりと、ストーリーテリングのレベルは相当なものだと思います。オリジナルを製作している時点において、監督たちのエヴァに対する理解は必ずしも統一されていなかったということですが(その混乱が、見る側にいくつもの解釈の余地を与える奥深さにつながっていましたが)、エンターテイメント志向の今回は話をまとめるつもりで作っているようで、極度に混乱させるような展開はなくなって見やすい作品となっています。編集は冴えに冴えており、ヤシマ作戦においてシンジがトリガーを引く瞬間に向けてドラマやアクションがきれいに収斂されており、実写でもここまで盛り上げる編集は滅多にないなぁと感心しました。そして、やっぱり凄いのがビジュアルの強化です。おおまかな流れは変わっていないものの、気の利いた追加や修正により驚くほどかっこよくなっています。最大の変更点は、シンジ、レイ以外にも使徒と戦っている人々の描写を充実させたことで、ヤシマ作戦に向け、大破した初号機を急ピッチで修理したり、シンジに陽電子砲を撃たせるため日本中のインフラが動員される描写が入ったことで、作戦の規模や重要性がより際立ちました。14才にしてこれだけのミッションを背負わされるのですから、「乗りたくない」というシンジの気持ちも理解できます。また要塞都市たる第三新東京市の防衛システムの描写が大幅に増えており、使途vs従来兵器は怪獣映画のようなひとつの見せ場となっています。細かい点では、エヴァ出撃シーンでのオペレーションをいくつか増やしており、ロボットものの重要な見せ場である「発進」が格段にかっこよくなっています。当初は必ずしも好意的には受け止められていなかった新劇場版ですが、公開されるや多くの人を振り向かせたパワーはさすがのものです。
[映画館(邦画)] 8点(2009-07-01 20:26:54)
17.  エイリアン3/完全版
多くの監督・脚本家が関わりながらも一向に作品がまとまらず、ニュージーランド出身のヴィンセント・ウォードがようやく監督に就任するもあまりに突飛なアイデアの数々にスタジオや現場もついていけなくなって降板。巨大セットを組み、人材も集め、公開日も決定している中、監督・脚本がないという異常事態で呼ばれたのがフィンチャーだっただけに、完成した作品には製作時の混乱がよく表れています。ハゲ頭に同じような格好の囚人は誰が誰だか区別がつきませんが、あれは脚本未完成のまま撮影に突入したため、ひとりひとりの個性やエピソードが固まっていないことから必然的に生じた混乱でしょう(同一人物とは思えないほど性格がコロコロ変わるキャラクターも何人かいます)。また、見せ場の少ない本作において作品の要となるべきはクライマックスのアクションですが、薄暗い廊下を囚人が走り回っているだけという地味なもので、しかも作戦の概要や位置関係がよくわからないので、作戦が成功しているのか失敗しているのかすらよくわからないというグダグダぶり。挙句、作品の完成度に疑問を持ったスタジオによってズタズタにカットされ、さらにまとまりの悪くなった状態でエイリアン3は世に出されてしまいました。スタジオによる干渉を受ける前の形であるこの完全版は劇場版に比べて出来がかなり向上していますが、やはり前述した根本的な問題点を抱えたままなので、完成度の高い作品とは言えません。しかし、結果的に不完全な形になってしまったものの、この作品が目指した深遠なドラマは注目に値するものです。「2」を継承した娯楽大作にするのが観客受けを簡単かつ確実に狙える路線だったはずですが、そうした安直な方法に走らず、あくまでSFとしての斬新さやドラマ性を追及した製作陣の姿勢は評価に値します。また、天才監督デビッド・フィンチャーの才能が、「セブン」や「ファイト・クラブ」にはない面白い形で発揮されています。「地獄の黙示録」がそうであったように、作品が不完全であることの味が漂っているのです。寝てても面白い映画を撮れる天才監督が、極限まで追い込まれて作った作品に漂う狙っては出せない味。エイリアン3にはそれがあるので捨てがたい。なので「2」と同じ8点をつけました。
[DVD(吹替)] 8点(2008-06-23 01:43:28)
18.  エイリアン2/完全版
「コナンPART2」にシュワルツェネッガーを持っていかれ「ターミネーター」の撮影が1年近く中断した際、お母さんから仕送りしてもらわないと食うにも困っていたキャメロンがバイトで執筆を引き受けたのがエイリアンの続編とランボーの続編だったということですが、当時から傑作の誉れ高かった「エイリアン」をここまで自分流にアレンジしてしまう若手は怖いもの知らずというかタダモノではないというか、やはりキャメロンは普通ではありません。リドリー・スコットは続編の依頼があればぜひ引き受けようと思っていたそうですが、この脚本があまりに目を引いたためか監督はそのままキャメロンに決定し、リドリー・スコットには声すらかからなかったとのことです。密室スリラーから戦争アクションという大転換は今から見ても斬新ですが、大味に見えて第一作との連続性が十分に保たれているのは巧いところ。リプリーが収容されてからLV426へ戻るまでの過程が丁寧で、ここが第1作との橋渡しの役割を果たしているので、人間がエイリアンを殺しまくるという前作とまるで逆のことがはじまっても違和感はありません。また、機械や重火器の描写を得意とするキャメロンのおかげで宇宙海兵隊がきちんと強そうに見えるので、殺されまくるエイリアンが必要以上に弱く感じられることも避けられています。SFオンチ、機械オンチの監督ではこうはいかなかったでしょう。クライマックスにおいては【舞台の爆破→ギリギリの脱出→しつこく船に紛れ込んでいたエイリアン→宇宙への放出】と第1作と同じ展開のアップグレード版となっており、あれは意図的なオマージュでしょう。監督3作目(「殺人魚フライングキラー」は撮影3日目でクビになったので実質2作目ですが)にしてキャメロンの演出はとにかく冴えまくっています。見せ場の連続と評価される本作ですが、実際の見せ場は◆海兵隊とエイリアンの初コンタクト、◆立て籠った拠点へのエイリアンの襲撃、◆ニュートの救出、◆クィーンvsローダーの4つだけで、海兵隊がはじめて発砲するのは本編開始から75分地点。意外にも見せ場は少ないのですが、まったく弛まない緊張感と「アクションまだ?」と微塵も感じさせないドラマパートの充実により、2時間35分すべてに渡ってえらいものを見せられた気分にさせるのです。わんこそばのように見せ場を流し込むだけの昨今のアクション映画とはまるで作りが違います。
[DVD(吹替)] 8点(2008-06-22 19:00:34)(良:4票)
19.  エージェント・ウルトラ 《ネタバレ》 
本サイトでの平均点は最悪に近い上に、IMDBスコアも6.1と世界的に評判の悪い作品のようなのですが、私はなかなか楽しめました。映画とは自分の目で見るまで分からないものです。 風変わりな主人公が実は殺人マシーンで、徐々に記憶を取り戻しながら追っ手と戦うというお話はメル・ギブソン主演の『陰謀のセオリー』とまったく同じであり、さらにはブラックコメディという味付けも共通しており、MKウルトラ計画を扱った作品には特有のテンプレートでもあるのかと思ったのですが、アクションができるというイメージがまったくないジェシー・アイゼンバーグに殺人マシーン役をやらせた点が本作の新機軸であり、それまでなよなよしていた主人公にスイッチが入ると敵が瞬殺されるという描写にはなかなかのカタルシスがありました。 また、敵が同情の余地のまったくないアホであるという点でも主人公を応援したくなったし、このアホが田舎町を封鎖した上で十数人の殺人マシーンを投入して町全体を戦場に変えるという舞台設定にも燃えるものがあり、90分程度の中規模アクションとしては合格点だったと思います。 ただし、殺人スキルでは主人公が他を圧倒しており、彼と互角の勝負ができる敵がいなかったという点が、バトルアクションとしてはちょっと残念でした。ハントに最初に投入され、噛ませ犬的な役回りかと思われたラファがラスボスだったという展開には脱力させられたし、覚醒後の主人公がミッションを遂行するエンディングがまさかのアニメーション処理だった点でも、「え、見せてくれないの…」とガッカリでした。
[インターネット(吹替)] 7点(2017-11-17 18:49:28)(良:1票)
20.  エクス・マキナ(2015) 《ネタバレ》 
つい最近も経産省が国会答弁をAIに作らせる実験を開始したというニュースがあって、AIはかなりホットなテーマと言えるのですが、ことSF映画においては随分昔からの定番ネタでもあります。映画に登場するAIキャラには大きく2種類あって、ひとつは暴走して人間に危害を加えちゃう系。『2001年宇宙の旅』のHAL9000、『地球爆破作戦』のコロッサス、『ターミネーター』のスカイネットがこれに当たります。もうひとつは、人間と同じ自我や感情を持っているのに機械扱いされて可哀想系。『ブレードランナー』のロイ・バッティや『A.I.』のデイビッドがこれに当たります。本作が面白いのは、AVAは人間に似た姿に作られていることから観客に可哀想系AIを連想させるものの、実は危害を加えちゃう系でしたというオチの作り方であり、定番ネタの折衷に成功しています(裏を返せば、本作は世間で言われているほど斬新な内容ではなく、伝統的によくあるネタの見せ方を変えているだけとも言えるのですが)。 さすがはアレックス・ガーランドの作品だけあって物語は緻密に考えられており、サスペンスとしての大ネタもきちんと仕込まれています。ケイレブが呼ばれた目的はチューリングテストではなかったという話のひっくり返し方は特に面白いと感じました。人間と遜色ないレベルのAIはキョウコ以前のモデルで既に完成しており、社長はAIと接触した人間側の反応を見ようとしていたのです。 この社長の人物造形も理詰めでよく考えられています。社長はムキムキに体を鍛えており、さらには格闘技の特訓までやっているのですが、オチまで見ればAIの抵抗に備えてのものであることが分かります。また、キョウコは社長の理想像を投影したモデルと考えられますが、キョウコが言葉を発することができない仕様にされていることから考えると、研究開発過程において社長もまたキョウコに愛着や同情心を抱いたために何度か危険な目に遭わされてきたということが推測されます。社長は自分自身と同じ失敗を他人も犯すのかどうかを見るために被験者としてケイレブを選び、ケイレブの理想像を投影してAVAを作ったのです。 そんな理想の女性像を映像化するにあたっては、誰からも文句のつかない美貌を持つ女優さんをキャスティングする必要がありましたが、そんな要望に完璧に応えてみせたアリシア・ヴィキャンデルの美しさには本当に驚かされました。さらにはただのお人形さんにはならず、抜群の演技力、人を超えた雰囲気、必要な時にちゃんと脱ぐ女優魂も見せており、あらゆる点でこの人は突出していると思います。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2017-01-07 23:28:19)(良:1票)
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