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プロフィール
コメント数 404
性別 男性
ホームページ http://onomichi.exblog.jp/
年齢 55歳
自己紹介 作品を観ることは個人的な体験ですが、それをレビューし、文章にすることには普遍さを求めようと思っています。但し、作品を悪し様にすることはしません。作品に対しては、その恣意性の中から多様性を汲み取るようにし、常に中立であり、素直でありたいと思っています。

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1.  男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 《ネタバレ》 
マドンナは竹下景子。  彼女は清楚で可憐で、、、と言えば吉永小百合に近いイメージだけど、博のセリフを借りれば、「美しさの中に知性を秘めたとでも言いますか」、、、で、やっぱりお嫁さんにしたいタイプ。内容もシリーズ中で人気のある作品だけあって、見応え十分。  やはり最後の柴又駅のシーンが素晴らしい。竹下景子が寅さんの袖を掴み、その顔を潤んだ瞳でじっと見る。その視線に答えられない寅さん。これはシリーズ最高のラブシーンではないかと僕は思う。別れの後に「・・・という御粗末さ」とつぶやく寅さんのドテラの後姿が寂しい。あと10年若かったらなぁと。そんなラブシーンの始まりを予感してすっと脇に引くさくらの所作も彼女の複雑な感情が見え隠れしてなんとも言えない味がある。  初期の頃とは違う落ち着いたとらやの雰囲気も良し。下條正巳のおいちゃんはあまり人気がないのだけど、でしゃばらない味わいはそれはそれで良し。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-29 23:26:15)(良:2票)
2.  男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 《ネタバレ》 
マドンナはいしだあゆみ。  寅さんの悲恋物語。ドタバタもなく、いつもの寅さんとは全く違う雰囲気だったけど、本作は、ある意味で寅さんとは何者か、実はどういう人物なのかということをしみじみと感じさせる素晴らしい一篇であった。寅さんは女性から本気で求められると、受け身になって、すっと自らを引いてしまう。そして自分を「駄目な男だ」と言って一人涙を流す。恋に恋して、恋できない臆病者。それが寅さんなのか。寅さんの流した涙を思い、12歳の満男と同じように悲しくて僕も泣いた。寅さん、あなたはただひたすら優しすぎるのだ。そういう愛があってもいいじゃないか。寅さんが満男に言う。「お前もいつかは恋をするのだろうな。可哀相に」 すると満男が答える。「僕、恋なんかしないよ」と。(10年後の自分に聞かせてあげたいセリフだ)  この回に津嘉山正種がいしだあゆみの元カレで登場する。津嘉山と言えば、オープニングでのドタバタ劇専門でずっと登場していたが、ついに本編昇格かと。彼はその後、『真実一路』でも部長役で登場している。その後のOPドタバタはアパッチけんが引き継いでいる。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-29 23:26:04)(良:1票)
3.  男はつらいよ 寅次郎紙風船 《ネタバレ》 
マドンナは音無美紀子。  夢のシーンに続き、寅さんの小学校の同窓会の場面から始まる。同級生でいじられ役の東八郎が寅さんに逆切れするシーンが切なくて良い。そして、旅先では家出少女の岸本加世子にテキヤ仲間の小沢昭一。テキヤの女房役、音無美紀子は少し翳りのある美しさが光る。この回好きかも。  寅さん、音無さんとの旅先での別れの後、彼女と所帯を持つという決意を抱き、会社の就職試験まで受けるのだけど、結局最後は自分から身を引いてしまう。このパターンは『ハイビスカスの花』『あじさいの恋』や『口笛を吹く寅次郎』などこの時期の寅さんによく観られる。今回も音無さんがとらやの帰り道に寅さんにそれとなく気持ちを確かめるのだけど、寅さんはその気持ちを分かっていながら、答えられない。あれほどとらやの面々に所帯を持つという決意を語っておきながら、いざとなったら何故?って思うのだけど、それが寅さんなのね。音無さんとの2つの別れのシーンはとてもぐっときた。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-29 23:18:40)
4.  男はつらいよ 寅次郎かもめ歌 《ネタバレ》 
マドンナは伊藤蘭。  キャンディーズ解散から2年後の作品である。彼女は、田舎の無教養で少しはすっぱだけど、純朴で熱意ある少女をうまく演じている。とにかく可愛らしい。今回の寅さんは、マドンナの父親役といったところ。いつもの恋騒動はないのだけど、伊藤蘭のことが可愛くて心配で仕方がないという父親のような寅さんの思いが泣かせる。そんな若いマドンナとの交流は『奮闘編』を思い出させる。  そして、伊藤蘭の通う定時制高校の教室でも人気者となる寅さん。最後に寅さんが勉強を志し学校に受験願書を出していたことをさくらが知らされるシーンには泣けた。その願書の寅さんの写真がすごくいいのだ。願書によれば、寅さんが生まれたのは昭和15年11月29日、御年40歳とのこと。(演じる渥美清が昭和3年生まれ) と騙されてしまうところだが、確か寅さんは15歳で家を飛び出し、20数年ぶりに葛飾柴又に帰郷したのが第1作。とすれば、その時37-8歳。(2作目でも38年前に産み落とされたと言っていた) 本作はそれから10年後なので、47-8歳のはず。寅さんは永遠の40歳という話もあるけど、その設定はあまりにも無理があるよ。(サザエさんじゃあるまいし。。。ん? 似たようなものか?)
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-29 23:18:33)
5.  男はつらいよ 寅次郎頑張れ! 《ネタバレ》 
マドンナは藤村志保。  この回の主役は、中村雅俊と大竹しのぶの若いカップルだろう。2人は配線工と食堂の女給。山田監督らしいブルーカラーな取り合わせだなぁと。寅さんは14作目に続き恋愛指南役である。こういう役回りはこの後結構増えてくるのだが、今回はその先駆けといっていいだろう。寅さんのデート指南はディテールに富んでいて、最高に面白かった。基本はいつも同じで、言葉ではなく、目で物語るというアレであるが、結局のところ中村雅俊はその通りにしていないところが笑えた。中村雅俊にはエラそうに言うのだけど、いざ自分が藤村志保に対して同じ境遇になった時には全然なっていないというのはいつものパターンである。  中村雅俊と大竹しのぶのカップルが初々しくて、溌剌としていて、純朴で、とてもよかった。大竹しのぶには泣かされたなぁ。キリシタンの島、平戸の風景もよかった。最後は大空小百合にも会えたし。この回は傑作!
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 23:31:41)
6.  男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け 《ネタバレ》 
マドンナは太地喜和子。  彼女の可愛らしさが光る。愛しい彼女の金銭トラブルを解決しようと奮闘する寅さん。思いは必死だけど、金のない寅さんにはどうしようもできない。これはつらい。でも最後に押し掛けた画家先生に思いが通じて、なんとかお金が工面できることに。こういう伏線があったのね。人徳は大事。寅さんの男気と優しさに感動した一篇。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 23:31:32)(良:1票)
7.  男はつらいよ 寅次郎相合い傘 《ネタバレ》 
マドンナは2回目の浅丘ルリ子。  シリーズでは1,2を争う人気作である。メロン騒動が寅さんのドタバタ劇の中でも秀逸だけど、やっぱり最後の寅さんとリリーが結婚かという場面で、じわっと盛り上がって、すうっと引いてしまう心の機微には悲しくてグッときた。  船越英二を含めた男女3人の旅模様はとても楽しかった。寅さんとリリーは計4作で共演することになるが、本作が2人の若さと勢いがあって、一番いい。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 23:22:00)
8.  男はつらいよ 寅次郎恋やつれ 《ネタバレ》 
マドンナは2回目の吉永小百合。  9作目の柴又慕情の続きということで。今回も恋愛という点では寅さん最初からアウトオブ眼中。焦点は吉永小百合演じる歌子の自立と父親(宮口精二)との和解である。そこに主に絡んでくるのは、寅さんではなく、今回はさくらと博である。この二人が本作品の立役者だろう。茶の間でのいわゆる「幸福談義」では博の言葉が光る。このころになると、博は監督である山田洋次の代弁者ともいえる存在で、今回のお題「幸福とはなにか?」を理屈っぽく答える博に山田洋次の思いが重なるのである。(その対極は理屈ではない寅さんなのだろうけど) 最後のとらやでの歌子と父親の和解のシーンは泣けた。シリーズで一番泣けるシーンだったかもしれない。あの宮口精二を泣かせるのだから、もうしょうがないね。  冒頭に、寅さんがタコ社長とさくらを連れ立ってお嫁さんにしたいという女性に会いに行き、超速で振られてしまうのだけど、その相手が宮沢保のお母さん(『金八先生パート1』)というのが少しツボだった。  松村達雄のおいちゃんはこの作品で最後。今回もなかなかいい味を出していて(パチンコ好きのちょっとやくざなおいちゃん)、ちょうどこなれてきたって感じだと思うのだけど、彼はおいちゃん以外の役でこの後も結構活躍することになるので、このあたりが潮時だったのかな。彼はおいちゃんをうまく演じていたけど、おいちゃんそのものにはならなかったのだな。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 23:21:54)(良:1票)
9.  男はつらいよ 寅次郎恋歌 《ネタバレ》 
マドンナは池内淳子。  これは傑作。泣けたなぁ。最後の縁側のシーン。池内淳子親子を思いやる寅さん。自分では彼女を幸せにできないと自ら身を引くところはこれまでと違う落ち着いた味わい。再登場の志村喬が最後に博夫婦に会いに行くところも良かった。志村喬の寅さんへの説教「りんどうの花」。これを受け売りにする寅さんの口上が笑わせる。  本作で初代おいちゃん森川信が最後の出演となるのだが、まさか本当に死んでしまうとは思っていなかったのだろう。作品のいろんなところでおいちゃんの死を暗示させるセリフが多かったような気がする。「ばかだね~」「俺しらねぇよ」「まくら、さくら」など、最高です。寅さんの「きっちゃてんでこーしー」ってのも笑ったなぁ。寅さんと森川信の最後のドタバタ騒動。さくらの「母さん」の歌も泣けた。  寅さんの人柄をあらわす旅一座との交流もあって、見せ場てんこ盛りの一作。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 22:56:23)(良:2票)
10.  男はつらいよ 奮闘篇 《ネタバレ》 
マドンナは榊原るみ。  彼女が演じる知恵おくれの薄幸の少女は、チャップリンの『街の灯』を思い起こさせる。特に寅さんが榊原るみを沼津駅で見送る場面は涙なしに観られない。寅さんの心情の暖かさを感じる。もちろん最後は振られてしまうので、『街の灯』とは全く違うラストなのだけど。。。  ドタバタ劇の「おなら騒動」も最高に笑えたなぁ。森川信のおいちゃんのとぼけた味わいも最高。この時期の寅さんにハズレなし。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 22:56:13)
11.  男はつらいよ 《ネタバレ》 
いやー、泣いた。笑った。楽しんだ。  車寅次郎の20年ぶりの葛飾柴又への帰郷から始まる寅さんシリーズ(映画)『男はつらいよ』第1作目。渥美清の寅さんが若い! 登場早々、祭に飛び入り参加して纏(まとい)を手に威勢よく踊りまくるのだけど、これがなかなかカッコいいのだ。テキ屋の売の口上も最高にキマっている。倍賞千恵子のさくらちゃんはとても可憐だし、前田吟の博も精悍だ。 寅さんと博の船上での張り合いはなかなか緊張感のあるシーン。会話がすれ違いつつ、何故か噛み合うという絶妙さが楽しく、寅さんの純情な男気と気風の良さがよく分かるシーンでもある。博は、職工ながら大学教授の父親を持つ理知的な人物で、尚且つ腕っぷしの強さを秘めているという、若き前田吟がなかなか役に合っている。(最後の涙も感動的だった)  寅さんのおせっかいが逆に功を奏して、さくらちゃんと博がめでたく結婚し、その結婚式に博の父親、志村喬が現れる。家を飛び出した博とは8年ぶりの再会、そして披露宴の最後に挨拶。志村喬の朴訥としたスピーチに寅さんと博同様に僕も号泣;; ここはシリーズ屈指の名シーンだろう。この披露宴で、御前様の笠智衆と博の父親役の志村喬が同じ画面の中にいるのです。それだけで感動的なのだなぁ。  ちなみにシリーズ初のマドンナは光本幸子。寅さんがメロメロになる御前様のお嬢様で、少し地味だけど、品があってよかったよ。
[DVD(邦画)] 10点(2012-04-28 22:49:42)(良:1票)
12.  狼たちの午後 《ネタバレ》 
シドニー・ルメットは「正義」を希求した社会派監督であると共に、社会生活の中で打ちのめされた人々のカッコ悪い生き様や、反社会的な行為に引きずられながらもそのようにしか生きられなかった人々のヒーローでもアンチヒーローでもない有り様を執拗に描く監督です。『狼たちの午後』はその代表作と言えるでしょう。この作品のアル・パチーノは銀行強盗を犯し、マスコミから反社会的な象徴に祭り上げられるアンチヒーローでありながら、はっきり言ってあまりカッコよくない。銀行強盗を題材にした緊迫感溢れる心理劇か、バイオレンスアクションか、あるいは、アル・パチーノにゴッド・ファーザーばりの冷徹な役回りを期待すると完全に肩透かしを食います。邦題の過剰さがそのようなイメージを無駄に喚起させるのも罪作りと言えます。  シドニー・ルメットは、銀行強盗という非日常的光景の中にも人間的なためらいや怖れ、怯え、恥ずかしさなど、社会との関係性によってくるくると変わる犯人たちの達成感や挫折感を描きます。自分が社会の中でどう見られているのか、その視線を常に意識し、錯覚し、観念する。それは、ほとんどコメディのようです。役者としてはまさに「狼たち」とも言えるゴッドファーザーのコンビ、アル・パチーノとジョン・カザールがコミカルな犯人役を大仰に演じるという違和感にこそ、この映画の面白さがあるのだと僕は思います。
[ビデオ(字幕)] 10点(2011-05-31 22:14:38)(良:1票)
13.  OK牧場の決斗
そのスタイリッシュさ、躍動感、ドラマ性において、西部劇の頂点に立つ作品だと思います。時代を経ても色褪せない。それこそスタージェス作品の素晴らしさ。もちろん映画化された『OK牧場の決闘』の中で一番好きです。決闘シーンも最高でした。
10点(2003-05-03 01:40:04)
14.  オッペンハイマー 《ネタバレ》 
『オッペンハイマー』は知性についての物語でもある。  オッペンハイマーは高い学識を持った科学者である。量子力学を学び、早くからブラックホールの存在を思考し、その生成条件を理論化、中性子星の質量限界についての計算式を発見する。その功績から、マンハッタン計画の責任者に抜擢され、グループを率いて原子爆弾の製作を実現する。計画の中で多くの人々と社会的関係を築き、複数の女性を愛し、家族を得る。ユダヤ人として、科学者として、彼は彼の正義に基づきロス・アラモスに帝国を築く。しかし、彼は優しく、弱い人間でもあった。詩人にして、文学的、芸術的思考の持ち主でもあった。そういう視線で捉えれば、帝国の内実も見えてくる。戦後、原子爆弾が広島、長崎に投下されたことについて、彼は何を見ていたか、さらに赤狩りの嵐にどう立ち向かったか?  オッペンハイマーの視点、そしてサリエリ(『アマデウス』)的なスクローズの視点。科学者(知性)と元靴売りの政治家(反知性)の対比。知性は「物自体」を正しく把握し、大衆を正しい道に導く。それが西洋的な形而上学の考え方。オッペンハイマー、アインシュタインもスピノザ的な神の信奉者であり、科学こそが知性であり、その手段であると信じていた。彼らにとっての知性こそ、社会性の基盤であった。  しかし、現代は、知性受難の時代。西洋的な形而上学は、相対主義の中でその価値と歴史を見失う。ゲーデルの不完全性定理は数学の、ハイゼンベルクの不確定性原理は科学のインテグリティを根本のところで否定する。現代において、科学は純粋に科学として取り扱われず、反知性、政治家や大衆は、科学者を奈落へと突き落とす。知性は彼を救わない。  私は、映画を観ている間、オッペンハイマーと共に、その時制の揺れと共に、ずっと揺れ、揺さぶられた。映画とは、新たな視点による歴史の追体験でもある。知性を揺さぶる文学的視線である。それにより、私自身を直視させられ、そして私は揺れるのである。社会は揺れるのである。  『オッペンハイマー』は素晴らしい文芸映画である。それは「私」に落下するが故に、私的な解釈を許す。そう、文芸作品とはそういう視線のものであると私は思っています。
[映画館(字幕)] 9点(2024-04-29 11:44:57)
15.  男はつらいよ 拝啓車寅次郎様 《ネタバレ》 
マドンナはかたせ梨乃。  46作と47作はゴクミが出ないゴクミシリーズ。満男の旅と旅先での出会いが物語の中心となる。今回の舞台は琵琶湖の畔、長浜である。考えてみれば、『男はつらいよ』とは、第1作目で満男が生まれ、彼の成長と共にあった。1969年。それは僕の生まれた年でもあり、彼の成長と共に画面に映し出される時代の風景は、僕と共にあったものでもある。だから僕はこのシリーズが好きなのかも。  46作以降の寅さんは動きが緩慢で表情も硬く、常に眉間にしわを寄せている姿はまるで生き仏のよう。しかし、彼の培ってきた魂はしっかりと満男に受け継がれていることが最後のシーンで分かるのである。満男の最後の独白。彼が最近、寅さんに似てきたと言われていることに対して、「他人の悲しさや寂しさがよく理解できる人間」だから彼は伯父さんを認めるのだと言う。満男は世間よりも寅さんに心を寄せる。彼は成長しつつも、世間に染まりきらない、ある意味で「常識」の象徴たる博やさくらと対立する人間(寅さんと同様)として描かれているのだと僕には感じられた。  ゴクミ不在のゴクミシリーズはなかなかいい。牧瀬里穂も可愛かった。。。
[DVD(邦画)] 9点(2012-04-30 23:44:14)
16.  男はつらいよ 寅次郎の縁談 《ネタバレ》 
マドンナは2回目の松坂慶子。  ゴクミシリーズもゴクミは不在。今回、家を飛び出すのは就職試験に落ちて自分に自信を失ってしまった満男である。但し、自分に自信を失ったという見方はあくまで博やさくらの親側からのものであり、満男としては、伯父の寅さんの生き方を常に見てきたことで、自分の目の前にせまるサラリーマン人生に疑問を持っていたことが根本にある。(当時の感覚としてそれは僕にもよく分かる。サラリーマンとして定職に就くというのは一種の喪失感として捉えられていたから。)  今回は満男も瀬戸内海の琴島で人から頼られる経験をし、ちょっとした恋(浮気?)もあり、人間として成長する。そして、柴又に帰ってくる。話だけからすると、島での満男は都会から来た「まれ人」であり、結局は都会という現実に帰っていくわけで、あくまで現実は都会の側にあるという風に見えるかもしれない。しかし、今回のドラマの白眉なところは、島の人々の生活をリアルに描いたことにあるのだと僕は感じた。生き生きとした島の生活があり、それは満男にとっても夢ではない、確かな手ごたえのあるものとして受け止められたはずである。生きるということそのものの対象として、山田洋次監督はそのリアリティをしっかりと伝えようとしている。
[DVD(邦画)] 9点(2012-04-30 23:44:11)
17.  男はつらいよ ぼくの伯父さん 《ネタバレ》 
マドンナは壇ふみ(なのかな?)  『男はつらいよ』もいよいよ満男と泉を中心にしたいわゆるゴクミシリーズに突入。満男もいつの間にか高校卒業。成長したなぁと言っても、この作品もう20年以上前なのね。(当時『男はつらいよ』は中高年向けの正月映画だと思って全く観る気もしなかったなぁと感慨しきり。。) 満男は僕と同世代。この作品の頃、僕は大学生で、彼と同じように無様な青春を謳歌しておりました。愚かだったなぁ。全くもって愚か。思い起こせば恥ずかしきことの数々。そんな自身の歴史を反省しつつ、満男に感情移入しておりました。ただ、満男と博の場面で、どちらかというと博の方に気持ちが寄り添うのは、僕自身が今や高校生の子供を持つ父親だからだろうな。  寅さんも昔みたいな元気はないけど、まだまだ気持ちは若い。老成しつつ、少年のような清い心を持ちつづけているところが寅さんの魅力。その言葉はひたすら誠実なのです。会うは別れの始めか。。。時代はバブルだけど、とらやにそんな雰囲気はないなぁ。
[DVD(邦画)] 9点(2012-04-30 23:30:48)
18.  男はつらいよ 寅次郎物語 《ネタバレ》 
マドンナは秋吉久美子。  前作に続き、後期の傑作。このころになると、寅さんというのは作品の主人公というよりも、ひとつの「舞台装置」と言ってもいい存在となる。その舞台で、秋吉久美子や五月みどりの息子たち登場人物が何か心暖かいものを得て、人として快復していくのである。  最後の満男と寅さんの会話。満男「おじさん、人間ってさ」 寅さん「人間?人間どうした?」 満男「人間は何のために生きているのかな?」 寅さん「うん、まぁ、難しいこと聞くなぁ。えー、何ていうかな、ほら、あぁ生まれてきてよかったなぁって思うことが何べんかあるじゃない。ね、その為に人間生きているんじゃないのか?」 満男「ふ~ん」(納得したようなしていないような微妙な表情) 寅さん「そのうちお前にもそういう時が来るよ。うん?まぁ、がんばれ、な!」(と満男の肩をポンと叩き、一人駅に向かう悠然とした後姿) その後のシーンで寅さんが「人間は何のために生きているのか」と仲間の一人に尤もらしく問うという、いつもの受け売りパターンがあり、ついに満男からもパクるのかと。でも、いいシーンだなぁ。
[DVD(邦画)] 9点(2012-04-29 23:38:20)
19.  男はつらいよ 知床慕情 《ネタバレ》 
マドンナは2回目の竹下景子。  そして彼女の父親役に三船敏郎。本作は三船の晩年の傑作と言っていいだろう。やもめの獣医役。いかにも「男は黙ってサッポロビール」って感じの役柄なのだが、最後に勇気の告白をやらせちゃう。そうきたか。山田さん。その相手が淡路恵子というのは黒澤へのオマージュなのだろう。
[DVD(邦画)] 9点(2012-04-29 23:38:18)
20.  男はつらいよ 寅次郎真実一路 《ネタバレ》 
マドンナは2回目の大原麗子。  彼女には不幸な役がよく似合う。(『居酒屋兆治』しかり) 今回もエリート証券マンの夫が仕事と家族を捨てて失踪してしまう。(前回は離婚直後の女性でした) エリートサラリーマンの失踪と言えば、管理社会からの逃避を扱った名作『寅次郎相合い傘』の船越英二と同じパターンだが、今回は残された側からの視点というところが違う。  寅さん曰く、「毎晩必ず残業だ。早くて10時、遅くて家に帰るのが真夜中の12時から1時だ。ひと言も口をきかず、ずーっと風呂に入る。ごろんと寝る」 タコ社長「厳しいねぇ」 寅さん「あー、もったいない」 博「何でですか?」 寅さん「鈍いやつだな。あんな綺麗な奥さんがいながら、旦那はろくにその顔を見る時間がないということなんだぞ」 その後、寅さんが髪結いの亭主のごとく、綺麗な奥さんを眺めて暮らすという男の理想をのたまうのであるが、それは全員に否定されてしまう。綺麗なものを愛でて暮らす。それは確かに理想であり、夢ではあるけれども、結局は経済を度外視した夢想家の発想である。それが寅さんの口から出るところがミソなのだな。  今回のラストシーンは久々に泣けた。名作である。
[DVD(邦画)] 9点(2012-04-29 23:33:02)(良:1票)
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