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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1922
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語 《ネタバレ》 
児童文学で有名なロアルド・ダールの短編小説を、独自の世界観で一部で熱狂的なファンを持つウェス・アンダーソン監督が映画化。ロアルド・ダールの小説は一遍も読んだことはないのですが、『チャーリーとチョコレート工場』や『魔女がいっぱい』など映画化された作品はどれも皮肉と毒が効いてて個人的には好きなんです。でも、監督であるウェス・アンダーソンは昔から合わない監督の1人。なんだかこの人の自分のセンスをやたらとひけらかすような作風が僕、個人的に嫌いなんです。で、好きな原作者と嫌いな監督のコラボレーションである本作、いったいどちらが勝つんだろうと今回鑑賞してみました。結果は……、嫌いが勝ちました(笑)。しかもかなり大勝。パステルカラーで撮られたいかにも「どうだい、俺ってセンスあるだろ」と言わんばかりのメルヘン世界観も好きになれないし、登場人物がカメラ目線でやたら早口で捲し立てるのも何言ってるか分かんないし、なんか説教されてるみたいで癪に障る。自分は終始イライラしながら観てました。こればっかりは好みの問題なので如何ともしがたい。ちなみに姉妹編である他3作(『白鳥』『ネズミ捕りの男』『毒』)も鑑賞済みで、この感想は4作纏めてのものです。
[インターネット(字幕)] 4点(2024-05-10 08:54:03)
2.  ベネデッタ 《ネタバレ》 
ペストの脅威にさらされる17世紀イタリアのとある修道院を舞台に、聖痕を受け聖者とされたある一人の修道女ベネデッタの数奇な運命を赤裸々に描いた歴史サスペンス。監督はそのどぎついエログロ描写で常にスキャンダラスな話題を振りまいてきた巨匠ポール・バーホーベン。と言う訳で、長年彼の大ファンである自分としては、けっこう期待して今回鑑賞。そんな僕の高まった期待をまったく裏切らない完成度の高い作品でしたね、これ。主人公ベネデッタはこの時代には最大のタブーとされていた、いわゆるレズビアン。そんな彼女がお気にの侍女を自らの寝室に囲んで夜な夜な破廉恥行為に耽るなんて、もはや日活ロマンポルノ(古い!)のノリ。母親から貰った木彫りの聖母マリア像の下半身を削って、震えないバ〇ブにしちゃうとかどんな発想やねん(笑)。夢に現れた磔のイエス様と裸と裸で身体を合わせちゃうなんて不謹慎にもほどがある!でも、そんなかなりお下劣一歩手前?な内容なのに、それでもちゃんと芸術作品として成立しているのが凄い。とにかく画がどれもキレイでお話の展開にも一切無駄がなく、なにより物語として明確な主題が首尾一貫して通っているのが素晴らしいですね。これは、キリスト教的倫理観でがんじがらめに縛られた窮屈な時代に、自由に生きようと願いそして実行したある少女の物語。聖痕が全て彼女の自作自演であったのかや、宗教的な葛藤、そして最愛の人バルトロメアとの愛と嫉妬と欲望が渦巻く関係性など、観終わった後にいろいろと考察したくなるところなどなかなか深い。カトリック教会上層部や地元有力者などに振り回される修道院長や、いかにも俗物でございと言わんばかりのローマ教皇大使など印象的な人物が多く登場するのもこの作品の魅力の一つ。最後、なにもかもを捨てて街を飛び出した2人が素っ裸で燃え上がる街並みを見上げるシーンなど、エロを通り越して神々しくさえありました。そして2人が下したそれぞれの決断……。歴史の巨大なうねりの中で必死に自分らしく生きようともがいたある女性の生涯を、極めて変態チックに描いたポール・バーホーベンの秀作でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2024-03-23 10:17:19)
3.  ベルファスト 《ネタバレ》 
1969年、政情不安に揺れる北アイルランド、ベルファストを舞台に、貧しいながらも家族とともに逞しく生きていた少年の日常をモノクロームで描いた青春ドラマ。メガホンを取るのは、俳優や監督として長年ハリウッドの第一線で活躍してきたベテラン、ケネス・ブラナー。彼の自伝的作品ということなんですけど、最近、こーゆーベテラン勢の間には自らの過去をモノクロで描くという手法が流行ってるんですかね。アルフォンソ・キュアロンが『ローマ』でオスカーを取って以来、この手の作品はいくつか鑑賞してきましたけど、確かにこのノスタルジックな雰囲気は観ていて心地良いですね~。家族の為に必死に頑張るお父さん、時に厳しいけれどいつもは優しいお母さん、ずっと温かく見守ってくれていたおじいさんとおばあさん、そしてほのかな恋心を抱いていたクラスメイトの女の子……。純粋無垢だった子供の頃を懐かしく思い出すこの感じ、けっこう嫌いじゃないです。まあそれだけと言えばそれだけなんですけどね。そこに北アイルランド紛争をアクセントとして盛り込んでいるとはいえ、そこまで踏み込んでいないので普通に治安の悪い下町の風景といった感じです。最後まで安心して観ていられたけれど、知り合いの「昔は良かった」話を延々聞かされているような印象も拭えない。ここらへん、キュアロンの『ローマ』の方が、深みや普遍性といった点で軍配が上がります。映像や音楽は味があって良かったんですけどね。
[DVD(字幕)] 6点(2023-06-05 05:43:44)
4.  ベイビーティース 《ネタバレ》 
難病を患い過酷な闘病生活を送る16歳の少女と孤独な不良少年の青春の日々を瑞々しく描いたラブストーリー。監督が、長編デビュー作となる本作で幾つもの賞を受賞したということで今回鑑賞してみました。とにかくこの監督のセンスの良さに尽きると思います。ほとんど音楽も使わず映像も終始ブレブレな手持ち撮影、そして登場人物もごく限られているのに最後まで観客の心を捉えて離さないこの品の良いセンスは大変グッド。それぞれのエピソードを小さな章のように見せる演出や等身大の登場人物たちが織りなす繊細な心理描写もなかなかに素晴らしい。ただ、本作の評価の分かれ目となりそうなのが、この余りにもベタすぎる脚本でしょう。これまで何百本と撮られてきた難病ものラブストーリーをなぞっただけで、正直、捻りがなさすぎる。最後もお涙頂戴の悲恋で終わってしまいます。抜群にセンスの良い映像だとか、抒情性溢れる語り口など、この監督の才能は確かだと思うので次作に期待ってところですね。
[DVD(字幕)] 6点(2022-08-11 02:11:57)
5.  ペンギンが教えてくれたこと 《ネタバレ》 
海外旅行中のタイで事故に遭い、下半身不随の障碍を負ってしまった母親とその家族の苦難の日々を実話を元に描いたヒューマン・ドラマ。3人のかわいい盛りの子供たちにも恵まれ順風満帆の人生を送っていたのにいきなり、そんな失意のどん底へと落とされてしまう母親を演じるのはベテラン女優ナオミ・ワッツ。タイトルにペンギンとありますが本作にペンギンは一切出てこず、実際はペンギンと名付けられた小さなカササギが物語の鍵となります。内容は、そんな小さな一羽の鳥がこの壊れかけた家族の絆を再生してゆくという、まあ率直に言ってベタなもの。物語の前半、不慮の事故により一生車椅子生活を強いられることになってしまったこの母親のあまりにも自己中心的な姿に、僕はちょっと観たのを後悔してしまうくらい腹が立ってしまいました。いやいや確かにしんどいのは分かるけれどもあなたより大変な思いをしている人はごまんといるし、自分を献身的に支えてくれる夫も居るし何より3人のかわいい子供たちも居るのに、何をそんな自分が世界で一番かわいそうみたいな態度取ってんだよ!っていう、ね。そう思わせるほどナオミ・ワッツの演技力が素晴らしいんでしょうけれども。まあ「子供がトイレで吐いてるのに自分はもう駆けつけることも出来ない、母親として私もう終わってる」という言葉には、確かに心動かされるものがありましたけれど。でも、その家族の元へと迷い込んだカササギとの交流を通じてこの主人公が次第に前向きな気持ちを取り戻してゆくというのは、実話ということもあってなかなか惹き込まれて観ることが出来ました。娘を思うあまり主人公に酷い言葉をはいてしまう母親の造形も何ともリアル。そして最後、色んなものを抱えながらもそれでも前を向いて生きてゆこうと決意する家族の姿には、素直にエールを送りたい気持ちにさせますね。ただ、最後にテロップで表示される「この母親はその後、カヤックで世界大会に出場し、障害者サーフィンで2度優勝した」との事実にはビックリ!え、そっちをメインで描くべきやったんじゃないの?(笑)。ここまでベタで行くなら、ペンギンとのエピソードはあくまでサブに抑えて、この失意のどん底にいた主人公がカヤックやサーフィンで世界へと羽ばたくというお話にした方がより面白くなったと思うんですけど……。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-12-12 02:49:13)
6.  ペイン・アンド・グローリー 《ネタバレ》 
かつて天才の名を欲しいままにしたものの、今や初老を迎え、様々な持病や抑鬱により長いスランプへと陥ったとある映画監督。痛みを抑えるためにヘロインへと溺れる彼は、幼いころ母と過ごした貧しき日々へと思いを馳せる。苦しい生活を余儀なくされながらも母はいつも自分へと惜しみない愛情を注いでくれた。そんな過去の思い出だけが生きる慰めだった彼にある日、過去の自分の代表作を再上映したいという話が舞い込むのだった。主演を務めた俳優と一緒に舞台挨拶もしてほしいと頼まれた彼は、久しぶりにその主演俳優の元へと訪れる。だが、その俳優とは作品での演技プランを巡り大喧嘩をした挙句、以来決別したままだった。ともにわだかまりを抱えたまま再会を果たした二人。映画へと惜しみない情熱を注いだころの話を交わすうちに、彼は再び作品を撮ってみたいという思いに駆られてゆく――。唯一無二の作風で今やスペインの巨匠となったペドロ・アルモドバルが自らの半生を基に描いた自伝的作品。冒頭から展開される、赤を基調とした情熱的で美しい画の力はもはやアルモドバル・ブランドとも呼ぶべき唯一無二のもの。そこへ彼の作品の常連でもあるペネロペ・クルスが美しい母親役で登場するものだから、もうそれだけで抜群の安定感で瞬く間に作品世界へとどっぷり浸かっている自分がいました。不穏な旋律を奏でる音楽もただただ素晴らしいとしか言いようがありません。ただ、肝心のお話の方は、さすがにマンネリ感が否めないかな。優しい母への思慕、何人もの美しい女たち、そして同性愛への目覚め……、彼の過去の名作で何度も繰り返されたエピソードはどれも既視感満載で、自分的にはもう少し新しい要素が欲しかった。その一つとなりそうだったのが、最後に明かされる回想シーンの真実。実はメタ・フィクションだったというのは意表を突くものでしたが、それが作品として充分活かされていたかというと正直微妙。アルモドバルもさすがに老いには勝てなかったということですかね。『トーク・トゥ・ハー』や『私が生きる肌』のような変態映画監督の面目躍如といった作品を次作には望みたいものです。日本の変態大作家・谷崎潤一郎が老年になっても『鍵』や『瘋癲老人日記』といった変態老人文学の名作をものしたことを思うとまだまだ十分やれるはず。アルモドバル、期待して待っております。
[DVD(字幕)] 6点(2021-05-14 02:35:48)
7.  ペット・セメタリー(2019) 《ネタバレ》 
そこは太古より、邪悪で禍々しい力が宿る場所――。都会の喧騒を逃れ、のどかな田舎町へと越してきたクリード家。可愛い盛りの二人の子供たち、愛する妻、そしてペットの猫と共に充実した日々を送っていた夫のルイスだったが、彼にはたった一つだけ気掛かりなことがあった。それは毎日家の前を猛スピードで通り過ぎる幾台ものトラック。不安を感じながらも新生活を始めた数日後、恐れていた事態が起こってしまう。娘のエリーが可愛がる猫がトラックに轢かれ、無残な死体となって発見されたのだ。エリーのことを思い途方に暮れる彼に、隣に暮らす老人が驚きの事実を教えてくれる。なんと森の奥深くにある神聖な〝ペットの共同墓地〟へとその死体を埋めると、次の日、何事もなかったように帰ってくるというのだ。半信半疑ながらも言われるまま、猫の死体を埋めたルイス。すると、ちゃんと次の日、猫は生きて帰ってきたのだった。だが、何処かおかしい。見た目は変わらないが、以前とは何かが違う。戸惑う彼を更なる悲劇が襲う。今度は愛する娘のエリーが、暴走トラックの犠牲となってしまったのだ。「どうして娘がこんな目に…」。嘆き悲しむ彼の脳裏に過ったのは、そのペット霊園の恐るべき力だった……。かつて何かのインタビューで、自分の書いたものの中でもっともおぞましい小説と言わしめたスティーブン・キングの初期の代表作を再映画化したという本作を今回鑑賞してみました。ちなみに僕は原作小説も映画の方も遥か昔に鑑賞済み。どちらも感想としては、愛する者の甦りという設定こそ秀逸だったものの、お話としてはどちらも普通という印象でした。なんか原作は、スティーブン・キングの悪い面が若干強めに出ちゃった感が強く、良くも悪くもサービス精神過剰なんですよね。この邪悪な力を使ってでも愛する者を甦らせたいというテーマ一本に絞れば良いものを、主人公が救えなかった患者の幽霊が何故か何度も出てきたり、妻の死んだ姉のエピソードが何度も繰り返されたりと明らかに詰め込み過ぎでした。本作も基本的にはそんな変わらず、やはり一本の映画としては散漫で引っ張りすぎな印象が否めません。中盤まで、「もうええからはよ死体を埋めに行けよー!」って何度も思っちゃったし。んでも後半、死んだ娘が生き返ってからはホラー映画のセオリーはちゃんと押さえられていたので僕はぼちぼち楽しめたかな。今回、死ぬのは長男から長女にしたのはナイスな変更だったんじゃないですかね。この子がなかなか頑張っていて、顔を歪ませながら包丁を持って襲ってくるとこはけっこう怖かった。あのたどたどしい喋り方もなんともヤな感じで大変グッド。という訳で、僕はまぁぼちぼち楽しめましたです、はい。
[DVD(字幕)] 6点(2021-04-23 23:31:29)
8.  ベル・カント とらわれのアリア 《ネタバレ》 
1996年、政情不安に揺れる南米のとある小国。まだまだ発展途上のこの国で、商談のために訪れた大手企業の幹部ホソカワは、その夜、副大統領の官邸で開かれたパーティーへと胸を高鳴らせながら出席した。何故なら、昔から大ファンであるオペラ歌手のロクサーヌ・コスも招かれ、彼女の奇跡のような歌声が聴けるからだ。宴も佳境に入り、舞台に立った彼女の美しい旋律に聞き惚れていた矢先、思いもよらぬ事態が巻き起こる――。なんと大統領の政策に反発する左翼ゲリラが密かに官邸へと侵入し、瞬く間に館を占拠してしまったのだ。多くの人質の命と引き換えに仲間の釈放を要求する犯人グループ。だが、政府は簡単には要求に応じる気配を見せない。事態は膠着状態に陥り、ホソカワやロクサーヌ・コスをはじめとする人質たちは、長い拘留生活を余儀なくされることに。すると、犯人や人質たちの心境に思いもよらぬ変化が訪れて……。多くの日本人にとっては今だ記憶に新しいペルーでの大使館占拠事件。左翼ゲリラによって、多数の民間人が何か月にもわたり監禁状態に置かれた挙句、軍による強行突入によって多数の犠牲者を出したというこの悲劇をモデルにした本作、日本人としてはいたく興味を惹かれ今回鑑賞してみました。まあやりたいことは分かるんですよ、これ。犯人グループと人質が長らく生活を共にすることによって、いつしか友情に近い関係を育んでしまうという、いわゆる「ストックホルム症候群」。ただ、物語の見せ方と言うか演出があまりにお粗末で、非常に残念な出来になってしまってます。まず、犯人グループがこの建物を占拠する冒頭部。観客の心を摑むためのとても重要なシーンなのに、あっさりと何のとっかかりもないまま終わっちゃいます。その後人質たちと犯人グループもけっこう簡単に打ち解けちゃって、気付いたらもう和気藹々。いやいや、ここらへんもっと丁寧に描くべきでしょう。おかげで渡辺謙演じる主人公とジュリアン・ムーア演じるオペラ歌手の恋愛要素がなんとも薄っぺらく、加瀬亮演じる通訳とゲリラの少女の恋愛に至っては取って付けたようでさっぱり心に響かない。いくらでも面白くなりそうな題材で、しかもこんなにも魅力的な俳優陣を揃えておきながら、この体たらく。監督には猛省を促したいところ。最後の強行突入によって次々と射殺されてゆくゲリラたちにはなかなか悲愴感が漂っていて、彼らにいつしかシンパシーを感じていた人質たちの複雑な思いもうまく表せていただけに、なんとも勿体ない出来の作品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2020-12-29 02:30:41)
9.  ヘルボーイ(2019) 《ネタバレ》 
あの地獄のスーパーダークヒーロー、ヘルボーイが帰ってきた!!ギレルモ版前2作の大ファンの自分としては、こりゃ観ないわけにはいきますまい。監督は、その拘り抜いた独自の世界観は素晴らしかったもののお話の方がかなり残念だった『ドゥームズデイ』のニール・マーシャル。いやー、この人の細部にまで徹底的に拘ったであろう唯一無二の世界観は今回も大変素晴らしかったですねぇ~~。何処までもダークでグロテスクなのに、何処かコミカルなこの感じ、めっちゃツボでした。冒頭、悪役の魔女がアーサー王にバラバラにされ、箱に入れられて各地に埋められるシーンからもう摑みはばっちり。特に中盤に出てくる、ヘルボーイを捕える魔女バーバ・ヤーガのあの超絶気持ち悪いフォルムは出色の完成度!!こいつとヘルボーイがキスするとこなんて、数ある映画のキスシーンの中でも屈指の気持ち悪さを誇ってました(笑)。地獄から復活した魔物どもが無茶苦茶するクライマックスもグロさマックスでサイコーでしたし。まあストーリーの方は相変わらずしっちゃかめっちゃかでもう訳分かんなかったですけど。でも、このヘルボーイ君が出てくるとそんなに気にならずに観ていられるから不思議です。それだけこのヘルボーイ君のキャラが立ってるってことですね。うん、面白かった!7点!!
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-14 15:55:38)
10.  ベン・イズ・バック 《ネタバレ》 
クリスマスイブを迎えたその日、幼い子供たちとともに楽しい祭日を祝っていたバーンズ一家。だが、そんな順風満帆な家族の元に何の前触れもなく長男ベンが帰ってくる。母親であるホリーは満面の笑顔で彼を迎え入れるのだが、ベンの妹であるアイヴィーや義理の父親はあからさまな拒絶反応を示すのだった。何故なら彼はかつて、医者に処方された鎮痛剤のせいで依存症となり、クスリ欲しさに売人となって家族に散々迷惑をかけたから――。「今まですまなかった。でも、俺はもうすっかり真人間になったんだ」。そんなベンの言葉とホリーの説得もあり、家族は渋々一日だけならと彼を受け入れることに。だが、過去の酷い行いは彼を簡単には許してくれない。外出から帰ってきた家族は、家の中が滅茶苦茶に荒らされ、しかも愛犬が居なくなってしまったことを知る。哀しみに沈む家族のため、ベンは母親とともに家を飛び出すのだった。彼のせいで依存症となり命を落としてしまった娘の両親、彼にクスリを横流ししていた教師、そして売人時代の危険な仲間たち。犬を連れ去ったのは、果たして誰なのか?ベンは家族のために自らの過去と向き合おうとするのだが…。かつて些細なきっかけで麻薬中毒となった長男と彼を献身的に支えようともがく母親との特別な一日を描いたヒューマン・ドラマ。ジュリア・ロバーツがそんな母親役を熱演しているということで今回鑑賞してみたのですが、いやはや、これがよく出来た脚本の力が光る佳品に仕上がっておりました。本当にたった一日の出来事しか描かれていないのですが、それでもここにはこの母子の良い時も悪い時も含めた濃密な時間がちゃんと存在している。安易に回想シーンに逃げることも出来ただろうに敢えてそうしなかったのには、監督の覚悟を感じる。きっと過去に何度も裏切られ、そして酷く傷つけあったこともあったのだろう。それでも息子を必死で信じようとする母親の深い愛情に、僕は終始心を揺さぶられっぱなしでした。物語の後半、母子は連れ去られた愛犬の行方を捜して街を奔走するのですが、ここら辺のサスペンスの描き方も巧い。居なくなった息子の行き先を知るために、麻薬中毒のホームレスに敢えて麻薬を渡すシーンは、この問題の根深さを炙りだすことに成功している。そして、タイトルの二重の意味を浮かび上がらせる秀逸なラスト。哀切極まりないメッセージに、僕は思わず涙してしまいました。お薦めです。
[DVD(字幕)] 8点(2020-08-18 02:09:07)
11.  ベルベット・バズソー 血塗られたギャラリー 《ネタバレ》 
ヴェトリル・ディーズ――。それは自宅のアパートの一室で孤独死した老人の名前。十数年も病院の用務員として真面目に働き、友人や恋人も作らず、平凡な一市民として孤独の中に生きてきた彼。だが彼の死後、自宅からその生涯を費やして描き続けたであろう幾多の〝作品〟が発見される。正確な技法に唯一無二の大胆な発想で描かれたその油絵の数々は、専門家の目から見ても傑作と言っていいクオリティを誇っていた。「彼の名は、現代アートの歴史を塗り替えることになるだろう」。噂を聞きつけた画廊のオーナーやディーラー、それに美術評論家や現代アートの作家たちがこぞって彼の作品を手に入れようと動き始める。だが、彼の作品を手に入れた者たちは、次々と謎の死を遂げるようになるのだった。果たして彼の傑作に隠された衝撃の真実とは?生涯を無名のままで過ごした謎の画家ディーズ、彼が遺したという傑作絵画を巡って欲望に取り憑かれた人々の呪われた運命を描くサスペンス・スリラー。監督と主演を務めるのは、ダン・ギルロイとジェイク・ギレンホール。パパラッチの実態をリアルに描いた傑作サスペンス『ナイトクローラー』を撮ったコンビの新作ということで、今回かなり期待して鑑賞してみました。うーん、僕の期待が高すぎたのか、正直微妙な出来でしたね、これ。現代アートの世界に生きるセレブたちのその虚飾に塗れた実態を描くという内容に、「ああ、これは何年か前にカンヌでグランプリを取った『ザ・スクエア 思いやりの聖域』のような、美術界の内幕をシニカルな笑いとともに暴いたブラック・コメディなんだろうな」と思いながら観ていました。いわゆるヘンリー・ダーガーのようなアウトサイダー・アーティストを巡って、真の芸術とは何かを問う、みたいな。でも、途中でまさかのオカルト・ホラーな展開に!それまでのシリアスな内容から、いきなり人体発火や猿の化け物が出てくるというぶっ飛び具合。いやいや、さすがにこれは物語としてのバランスが悪すぎますわ~。前半と後半で全く別の映画を観ているような感覚に陥っちゃいました。たくさん出てくる登場人物たちの相関関係も分かりづらく、おまけに誰も彼も魅力に乏しいのもマイナス・ポイント。現代アートをテーマにしたホラー描写もどれも一定の美的センスは感じるものの、そこまで怖くありませんし。うーん、人間ドラマとしてもオカルト・ホラーとしてもなんとも中途半端な出来でありました。
[インターネット(字幕)] 4点(2020-06-07 00:40:04)
12.  ペイシェント・セブン 《ネタバレ》 
舞台はアメリカ郊外に佇む、とある精神科病院。重度の患者のみが収容されるという閉鎖病棟に、高名な精神科医が診察にやってくるところから物語は始まる。新しい著書の取材のために、ここに収容されている七人の重症患者たちのインタビューを行いたいというのだ。さっそく彼に指定された患者たちが一人ずつ連れてこられることに。ビデオカメラの前で自らの経験を語り始める、様々な病を抱えた精神病患者たち。その内容は、どれもにわかには信じがたい驚くべきものだった……。とある精神科病棟で語られる患者たち驚愕の回想を次々と描きだすサスペンス・ホラー。一応、一本の映画という体裁は取っていますが、これは幾つもの短編を集めたオムニバス・ホラーと言っていいと思います。患者たちの回想という形式で描かれるそれぞれのお話も、サイコ・スリラーからゾンビもの、悪霊憑きやヴァンパイアとバラエティ豊かで見ていて飽きさせません。まあ逆に統一感がないと言われるかも知れませんけどね。以下それぞれのお話の感想。①妄想に支配された母親に襲われる娘のお話。母親が妄想で見る怪物がけっこう気持ち悪くてグッド。②ハロウィンの夜に死体を持って歩きまわる猟奇殺人鬼のお話。殺人鬼の冷酷さと周りの浮かれキャラとのギャップが面白い。③ゾンビに支配された街で出会った男女のお話。女を助けた理由が実はゾンビ化した彼女の餌にするためだったというオチはありがち。④シャベルが欲しい女の子のお話。あらゆる方法でシャベルを手に入れようとする理由が…、いまいちよく分からない。⑤悪魔に取り憑かれた女の子のお話。主人公姉妹が可愛い。⑥社会に潜伏する吸血鬼を密かに退治するヴァンパイアハンターのお話。この中二病感が痛々しい。⑦またもやゾンビに支配された世界で逃避行をする親子のお話。率直に言ってありがち。んで、最後の大オチは主人公の精神科医も実は長年収監されていた患者だったという、これまたありがちなもの。と、まあそれぞれのお話自体は、何処かで何度も見たようなよくある話ばかりなのですが、全体的にそこそこ演出のキレもよく、映像もそこそこセンスあるんで最後まで普通に見ていられます。総評。暇潰しに観る分には、ぼちぼち楽しめるんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 6点(2020-01-01 01:01:24)
13.  ベロニカとの記憶 《ネタバレ》 
ナルシスト爺さんが語る、自分に都合のいい思い出話映画。正直、この爺さんの自己中偏屈ぶりが最後まで癪に障り、全然楽しめませんでした。シャーロット・ランプリング演じる現在のベロニカの気品に満ちた老婦人っぷりに+1点。
[DVD(字幕)] 4点(2019-08-16 23:54:54)
14.  ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 《ネタバレ》 
ベトナム戦争当時、前線を視察した政府職員が作成したとされる最高機密文書、いわゆるペンタゴン・ペーパーズ。時の政権を揺るがすほどの内容が記されたその文書を巡り、安定した経営か新聞記者としての矜持か、ぎりぎりの選択を迫られることになった記者や社主の葛藤を描いた社会派ドラマ。監督はもはや言うまでもないレジェンド監督スティーブン・スピルバーグ、主演も長年ハリウッドの第一線で活躍し続けるベテラン俳優コンビ、トム・ハンクス&メリル・ストリープ。実話を基にして描かれたという本作、手堅い演出とベテラン勢の安定した演技力でなかなか見応えのある仕上がりになっていたと思います。株式公開による安定経営か、もしかしたら会社存続の危機に陥るかも知れないがそれでも真実の公開か、アメリカの歴史を揺るがした事件を丹念に描いたドラマは抜群の安定力でした。ただ、あまりにも王道過ぎて、若干物足りなく感じてしまったのも事実。もう少し捻りのある展開があればもっと良かったんですけど、これは好みの問題なのかな。面白かったですけど、まあそこまでって感じですかね。
[DVD(字幕)] 6点(2019-07-23 23:13:54)
15.  ヘイト・ユー・ギブ 《ネタバレ》 
貧しい黒人たちが多く住む貧困地区で生まれ育った、何処にでもいるような平凡な女の子、スター。両親の方針から裕福な白人が数多く在籍する私立校へと進学した彼女は、恵まれた白人の子たちに囲まれ、イケメンの白人彼氏とも超ラブラブ、自分が黒人であることなんてすっかり忘れて充実した日々を過ごしていた。そんな折、地元で開かれたとあるパーティで初恋の男の子と再会したスターは、彼の車で一緒に帰ることに。懐かしさから途中で車を停めて、いろんな思い出話に盛り上がる二人。そこにやって来る1台のパトカー。職務質問をしてきた白人警官は、何もしていない彼をまるで犯罪者同然に扱い、反発した彼との間で不穏な空気が流れ始める。すると突発的に白人警官が発砲し、スターの初恋の相手は呆気なく帰らぬ人になってしまうのだった――。当然のようにすぐ捕まると思われたその白人警官は、なんと停職という軽い処分だけで無罪放免になってしまうかもしれなかった。その事実を知り愕然としたスターは、彼のために少しずつ行動を起こすことを決意する…。それまで充実した毎日を過ごしていた平凡なティーンエイジャーが、アメリカに根深く残る人種差別という現実へと静かに立ち向かう姿を描いた社会派青春ドラマ。実際に起きた事件を基にして制作されたという本作、現代のアメリカが抱える闇をあくまでティーンエイジャーの視点から描いたそのスタンスはいいと思います。黒人社会に根深く残る差別意識がより対立を激化させているところなどもきちんと描かれており、そのフェアなスタイルにも好感が持てます。ただ、原作がアメリカのティーンエイジャーを対象としたヤングアダルト小説ということもあり、主人公の恋愛ドラマが非常に甘っちょろいのが本作の評価の分かれるところ。特に全面的に主人公を愛してくれる白人彼氏の存在はどうなんでしょうね。大人が見たら大多数の人が恐らく鼻で笑っちゃうかも。あと、ここまで大風呂敷を拡げたテーマを収束させるラストがけっこう放り投げっぱなしなのもいかがなものか。白人警官は結局無罪放免のままで問題は何も解決していないのに、家族は無事に平和になりイケメン彼氏ともまた超ラブラブに戻りましたとさ、なんてのはちょっと甘すぎやしませんか。あくまでティーンエイジャーの視点から社会問題を描いたその姿勢は良かっただけに、ラストが惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2019-07-18 21:11:55)
16.  ヘレディタリー 継承 《ネタバレ》 
祖母の死をきっかけに理屈では説明できないような悲劇に次々と襲われる、ある一家の恐怖を描いたモダン・ホラー。何の予備知識もなく今回鑑賞してみたのですが、これがまぁ近年稀に見るいやぁぁぁ~~~~~なお話でしたね。冒頭のミニチュアハウスの一室へとカメラがクローズアップしてゆき、そのまま普通の部屋となって家族が登場するというシーンからもう不穏な空気が漂っています。そうして始まる祖母の葬儀。この家族、娘である夫婦もその子供である孫たちもみな何処かおかしいんですよ。特にずっと不機嫌な顔をした孫の女の子!言っちゃ悪いけど、よくこんな気持ち悪い子供を見つけてきましたね(笑)。この子がグロテスクな絵を描いたりおかしな言動を繰り返したり、挙句、死んだハトの首をハサミで切り落とすシーンを見て、「あ、なるほど。この子が悪魔か何かに取り憑かれてて、これからいろいろと暴れまわるわけね」と思ったら、まさかの兄貴による首チョンバ(笑)。そのまま兄貴は現実逃避でベッドにふて寝、母親狂気の大ヒステリー、とどめは道に転がる蠅だらけの女の子の首……。いやー、この映画、観る者の予想をバシバシ裏切ってきますわ~。そのままテンションを一ミリたりとも落とすことなく、映画はどんどんと恐怖のどん底へと突っ走ってゆきます。特にヒステリックな狂気へとただただ暴走する母親の怖いこと、怖いこと。娘の首チョンバシーンをミニチュアで再現するなんて悪趣味以外の何者でもありませんわ。唯一まともだったお父ちゃんがもう不憫すぎます。最後はちょっとオカルトに流れすぎちゃった感がなきにしもあらずだけど、僕は充分大満足。久々にこんな禍々しい映画と出会ってしまいましたわ。監督は、本作が長編デビュー作となるアリ・アスター。うん、今から次作を楽しみにしとこっと。
[DVD(字幕)] 8点(2019-07-09 22:41:39)
17.  ベイビー・ドライバー 《ネタバレ》 
逃がし屋ベイビーの爽快なカーチェイスをひたすら楽しむ作品。ストーリーなんてあってなきが如しですけど、このキレッキレの編集とノリのいい音楽との見事なまでの融合は一見の価値あり。何も考えずに二時間弱、爽快に楽しめました。てかベイビー、もうちょっと変装しようぜ(笑)。
[DVD(字幕)] 7点(2018-06-01 10:21:07)
18.  ペイ・ザ・ゴースト ハロウィンの生贄 《ネタバレ》 
幽霊に借りを払って――。ハロウィンの夜、七歳になる一人息子がそんな言葉だけを残して忽然とその姿を消した。警察による懸命な捜査にも関わらず、犯人どころか少年の痕跡すら発見することも出来ないまま、ただ月日だけが流れていく。父親である大学教授のマイクは当然諦めることも出来ず、私生活を犠牲にして懸命に息子の行方を追い続けるのだった。だが、何も手掛かりを得られることなく息子が失踪してからもうすぐ一年の月日が過ぎようとしていたそんなある日、マイクの回りで不可思議な現象が起こり始める。居なくなったはずの息子の声が何処かから聞こえてきたり、息子が最後に持っていた玩具がいつの間にか机に置かれていたり、何かを訴えかけるような息子の幻が見えたり…。「きっとあの子が何かを伝えたがっている!」。改めて調査したマイクはやがて衝撃の事実を知ることになる。自分の息子以外にもハロウィンの夜に失踪した子供たちは何人もいて、そのほぼ全ては二度と見つからなかったという事実を。いったい息子は何処に消えてしまったのか?最後に呟いた謎の言葉の本当の意味とは?そして、息子は無事に両親の元へと帰ってくることが出来るのか?ハロウィンの夜に居なくなった子供を追って不可解な世界へと迷い込むことになる父親の恐怖を描いたホラー作品。毎度おなじみニコラス・ケイジ主演のB級感満載のそんな本作、あまり期待せずに今回も鑑賞してみました。まあ正直微妙でしたね、これ。とにかくお話のテンポが悪く、息子が失踪する以外これといった事件も起きないままだらだらと展開していくので途中の中だるみ感が半端ないです。その合間に何度も怖がらせイベントが発生するのですが、これがまた今までホラー映画で何度も何度も見せられてきたようなベタなものばかりで、古臭いったらありゃしない。また脚本も雑。途中で急に現れて何もすることなく唐突に死んじゃうあの霊媒師はいったい何のために出てきたのでしょうか。最後のオチもありがちなよくあるもので面白くもなんともありません。そして、本作の最大の欠陥はホラー映画なのに全然怖くないってとこかな(笑)。
[DVD(字幕)] 4点(2017-11-08 13:17:47)
19.  ベン・ハー(2016) 《ネタバレ》 
オリジナルはどちらも未見。まあ可もなく不可もなくといった感じですかね。オリジナルを観ていればもっと別の見方もあるのかもしれませんが。
[DVD(字幕)] 6点(2017-09-18 22:59:26)
20.  ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ 《ネタバレ》 
今世紀初頭、幾つものベストセラーを世に送り出したものの若くして急逝した作家、トマス・ウルフ。本作は、そんな悲劇の作家と二人三脚で作品を作り上げた著名な編集者マックス・パーキンズの姿を実話を基にして描いたヒューマン・ドラマだ。恥ずかしながらトマス・ウルフという作家の名はかろうじて知っていたものの、作品はこれまで一つも読んだことはない。当然ながらパーキンズという編集者の存在も本作を観るまで知らなかった。だが、彼が手掛けた著名な作家たち――アーネスト・ヘミングウェイやスコット・フィッツジェラルドは僕が今でも敬愛する偉大な芸術家たちであり、トマス・ウルフという人間的にはとても誉められたものではない偏屈で傲慢な作家との関係性を大きくクローズアップしているとは言え、それでも前記の偉大な作家たちとの交流も間接的に描いているため、最後まで興味深く観ることが出来た。ここで描かれているのは、作家と編集者の微妙な関係性だ。時に協力者であり、時に厳しい指摘もする教師であり、時にはドライなビジネス・パートナーであり、そして時にはお互いの私生活に深く関わる友人でもある。彼らが長い時間をかけて、お互いの信念や人生をぶつけ合い時に反発しあい時に協力しあいながら一つの作品を世に送り出す過程が非常に丁寧に描かれていてなかなか面白かった。有り余る才能を有しながら私生活では自由奔放なトマス・ウルフ役を好演したジュード・ロウをはじめ、彼の生活をより一層不安定なものにする情緒不安定な彼女役を演じたニコール・キッドマン、常に冷静沈着な英国紳士を演じさせたら右に出る者のいないコリン・ファースとキャストもどれも嵌まっている。時代を築き上げた創作者たちの苦悩や矜持をノスタルジックな映像の中に描いた佳品と言っていいだろう。ただ、残念だったのは後半の明らかに唐突感の否めない急ぎ足な展開。実話を基にしたのかもしれないが、それでも見せ方が唐突に過ぎる。トマス・ウルフが病に倒れそして病床で手紙を書くという重要な流れがあまりにもあっさりと描かれ過ぎているため、いまいち心に残らないのだ。このエピソードをこそ最も力を入れて描くべきだったのに、惜しい。
[DVD(字幕)] 6点(2017-08-20 23:39:23)(良:1票)
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