1. ライリー・ノース
《ネタバレ》 安定ど真ん中の復讐モノ。ヒロイン強い強い。バンバンと敵をぶっとばしてくれて「観る者をスカッとさせる」というこの手の映画の目的をみごとに果たしてくれます。 なんたって敵であるギャングが極悪。それに加担する判事や汚職警官も現れる。ライリーに非は全くないので彼女が復讐鬼になるという説得力がはんぱなくごもっとも。客としてはひたすらライリー頑張れ!です。 ジェニファー・ガーナー、良かったです。アクションも演技力もなかなか。ライリー・ノースその人の造形も良くて、行きがかりに出会ったアル中父親に暴力的に説教をかますシーンには喝采しました。 それと、冒頭の意地悪ママのことをなおざりにしない脚本には瞠目しました笑。もはや戦闘力のレベルが違うってのに、きっちり仕返しするのね。良いと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2024-09-24 22:55:12) |
2. ライトハウス
《ネタバレ》 狭くて暗い画の中にべったり塗り込められたタールのような重たい狂気。灯台が舞台だけど明るさは1ワットもないので気が滅入る。 神話や絵画のメタファーが多くて、その辺の解説はネットを参照すれば「ああそうか」となるけれど分からずに観てても迫力に押されてあっという間の109分であります。 ウィレム・デフォー、あんな声だっけ。かっと見開いた特徴的な目で彼だと分かるものの、そこにいるのはトーマス・ウェイクという横暴で口の悪すぎなイカれ爺なのだった。すぐキレて若者に怒鳴り散らすその長広舌の文学的なこと。このじいさん、それなりに教養あんのとちゃうか。くそ長い呪いの台詞をまばたきもせずに言い切るデフォー。あまりの迫力にイーフレイムの怒りは引っ込み、「わかったよあんたのメシ美味いよ」と収めるシマツ。笑っていいんだかなんだか。 なんせ二人とも狂っていると思われるので劇中ずっと“正しい状況”を判断しかねる状態に置かれてしまうのだ。 巷間いろいろな説があるけど、わたしは「冒頭から嘘つきイーフレイムの目線に付き合わされていた」説に一票。ウェイク爺さんはヤバい奴だけど実のところもっとヤバいのはイーフレイムの方だったのでは。 そもそも語り手がイーフレイム自身なのだから、「勤勉に仕事をこなし、貯金に励む」その姿が怪しく見えてくる。ウェイク爺さんがつけてた日誌が真実なんだろうな。 それにしても難解。21世紀のホラーの境地は偏差値が高いなあ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-05-31 23:02:36) |
3. ライトスタッフ
《ネタバレ》 宇宙開発黎明期のアメリカ。フロンティア・スピリット旺盛な男たちのドラマはガッツに溢れてて元気いっぱい。英雄を求める世間と、それにちゃんと応えようと張り切る飛行士たち。数年時代が下っての月面着陸ミッションを描いた「ファーストマン」では任務が命がけの悲壮感に変換されていて、時代が変わるとずいぶんとテイストが変わるものだなあと思いました。 5~6名ほどのメインキャラクターは各々個性的に描き分けられていて(その奥様も)、競争心や連帯感などが程よい塩梅に散りばめられて観易いドラマに仕上がっています。 ソ連への対抗心丸出しではっちゃきになるホワイトハウス高官らのドタバタは完全に喜劇。ジョンソン副大統領がめちゃくちゃ笑。 一方、NASAとは別のところですでに人類の偉業を成し遂げていた一団がいたのだよ、という二本骨のシナリオにもなっているのですね。 わたしは寡聞にしてチャック・イェーガー氏のことはこの映画で初めて知ることになり、新しい感動を覚えました。華々しい米国のロケット技術、そこに至るまで万人の各地での努力・功績があったことをちゃんと織り込んだ脚本には品格を感じます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2024-03-15 21:23:05) |
4. ランブルフィッシュ
《ネタバレ》 なんというか、青春の苦悩を描いている「ぽくて」、深「そう」で、繊細な「感じ」がする。けど、そんな大層な出来でもないような気もする。評価に困る「ぼんやりした」映画だけど、雰囲気が抜群に良いのですな。なので心に残る。 一体何が素敵なのかしら。一躍スターダムに上ったマット・ディロンが眩しいからか、秘密主義っぽいミッキー・ロークがそれほど深遠なキャラでないとバレる前だったからか、それともモノクロの映像が80年代の技術で美しく撮れているせいかしら。 尺が短めなのは大抵の場合歓迎なのだけど、この映画に関して言えばカリスマ兄の心を映すエピソードや飲んだくれの愛すべきデニス・ホッパー親父の話をもう二つ三つ入れてストーリーに厚みを持たせてくれれば傑作の域に入ったのでは、と思う。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-10-10 22:45:38) |
5. ライフ・イットセルフ 未来に続く物語
《ネタバレ》 ちょっとこの映画のメッセージがよくわからない・・。「人生は信用できない語り手」=人生何が起こるかわからない 辛いことがあっても立ち上がって愛を見つけろ、とラスト感動的な音楽でもって締めてましたけど。 「人生くじけるな」というテーマを三世代にわたって繋ごうという試みが上手くいってないと思う。それぞれの世代でドラマが独立してるもん。 オスカー・アイザックとオリヴィア・ワイルドの夫婦は普通に可哀想すぎないですか。娘がバスの目撃少年と結婚したからってオスカーの苦しみがあの世で晴れるんだろうか。幼少で両親に死なれて養父に虐待され、あげく妊娠中に事故死したオリヴィアが浮かばれるんだろうか。冒頭からこんなひどい話をこしらえて救済もせずに放り投げる制作の感性がわからない。 今の自分の命を繋いでくれた先代のことを想うべきと言うのならオリヴィアの娘はもっとじいちゃんを大切に扱うべきだよ。 バンデラスはらしくない聖人ぶりだし、スペインの父親は妻子への責任を放棄してどっか行っちゃうし。手紙だけくれってバンデラスに言付けしてた日には「はああ?」と思いました。 ホント「?」があちこちに湧いて感動もへったくれもなかった。 ああー、あとS・L・ジャクソンをチョイ役で使うのもよしてほしい。あの人は存在感が激強だから、あと引いちゃって妙な余韻だけ残るのよ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-09-26 22:50:45) |
6. ラッシュ/プライドと友情
《ネタバレ》 F1レーサーなんて‶ふつうの人”では務まらないわけで。命を懸けるほどにマシンを愛し、生死の際に身を置くことに喜びすら覚える人種なのだろうと思っていた。 だからレース界隈って人間ドラマもアクの強いものになるだろうと予想して観てみました。ちょっと意外なことに、盛り過ぎず実話に則して描かれている感じでした。 伝説の二人を演じたダニエル・ブリュールとクリス・ヘムズワースが良いですよね。豪快で軽やかなジェームス・ハントと実直型のニキ・ラウダ。お二方に当てるにベストなキャスティングでした。 破天荒型のハントの方が危なっかしくて見てる分には断然魅力的。しかし皮肉なことに事故に遭ったのはラウダなのでした。火傷痕を残したラウダに無礼極まる質問を放った記者をぶっ飛ばしたハントには拍手を送ります。 命を削る場で切磋してきた者同士、心の底で通じ合うものがあったと窺える終盤のシーンは感動必至。もっとも、エンドに流れる親しそうなショットやwikiを見る限り、けっこう仲良かったらしいですね。良き。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-08-18 23:16:59) |
7. ライダーズ・オブ・ジャスティス
アナス・トーマス・イェンセンが贈る「かん違い世直し」奇譚。 理不尽な辛い目に遭うと人は因果を求めたくなる、これって洋の東西を問わないのですね。エストニアのタリンで女の子が青い自転車を欲しがったことから始まるデンマーク住みの家族の悲劇。 たしかに繋がってはいる。けれど、今生きてる我々の現在はなにがしかの結果であり、流れの途中でもあるのだから振り返って遡っても意味はないよ、キリが無いよと軽やかに言ってのける監督のセンスを大いに支持したい。 人物らがクセありな面子ぞろいで、いかにもイェンセン。傷心の父娘の前に現れるは三馬鹿(と言いたくもなる)トリオのおっさん。彼らの純度の高い阿呆力がじわじわと観てる方にも浸食してきます。いや、みんな傷ついててけっこうボロボロなんだけども。今作では飛びぬけて乱暴者のマッツも彼らの悪意なき天然に浄化されてゆくよう。 後に一人加えての、ラストのクリスマスシーンは奇跡的なまでに幸福な画でしたね。ああ、自転車タリンに渡ったんだ・・。思うところはあるけれど、まあいいでしょう。デンマークの6人が今幸せなのだから。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-08-13 23:08:41) |
8. ライフ(2017)
《ネタバレ》 かなり立派なSF作品だとは思うんですけども。重量級の役者陣はきちんと個性のある演技をしているし、映像技術は一級レベル。無重力のステーションの中を空を切って移動する画など、ほんとに宇宙空間でロケしたかのようで心躍る映像体験であります。 クリオネ型の火星由来エイリアンの気色悪さも出色の出来。壁に沿って移動する時なんかピタピタと音がして、その質感のリアルたるや。(もっとも大きくなってからは、かのギーガーエイリアンほどのインパクトはないけれど) SFスリラーとして評価するなら及第点だと思うのですが、致命的なことにこの映画至る所が「観たことある」なのです。限定空間に入り込んだ凶悪異生物、防疫にこだわる検疫官、望みを託した船外作業の失敗、救命艇での脱出・・。このプロットで思い当たる作品て、複数挙げられますよね。 例えば「宇宙服の冷却材ってヘルメット内に漏れ出すんだ?」といった細かい演出の工夫はあるけれど、お話そのものが過去作の焼き直しなので新たな楽しさをもたらしてくれるものではないのでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-06-12 18:45:44) |
9. RUN/ラン
《ネタバレ》 予備知識なしだったので、「ハンディキャップを負った我が子を健気に育てるシングルマザー」のハートフルな話と想定してしまったのです。や、震えましたよね。ほぼほぼホラーでしたわ。 ちょっとづつ「?変だなこの母親」との思いが強くなります。その不信感が主人公クレアとシンクロするような演出になっていて巧い。 高校を卒業しようという娘にスマホも与えない。大学からの合否通知を「まずあなたに渡すね」と言ってるわりには、郵便物が届いていると見るや車のドアも閉めずに郵便受けに突進してる。 クロエがパソコンのネットが遮断されていると気づいた時のその背後に浮かぶ母親の暗い寝室といったら、この演出には叫びそうになっちゃった。 中盤以降はクロエのサバイバル劇へと展開します。オチも含めて前半の不穏な空気感より数段パワーダウンしてしまうのは否めませんが、母親役のサラ・ポールソンの病的なまでの毒親ぷりは一見に値しますしクロエ役のキーラ・アレンも素朴で好感度高く、応援したくなります。車椅子の操作が上手いなあ、流れるような動作だなあと思いましたら、ご本人が日常車椅子を使用している女優さんだったとは。そう思って観ると、這って移動するシーンはこちらもより身体に力が入ってしまいますね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-04-01 18:20:55) |
10. ラスト・クリスマス(2019)
《ネタバレ》 ネタバレ!注意 「臓器提供者とのロマンス」って40年前くらいの少女漫画でけっこう目にしたプロットでした。その後ぱったり見かけなくなったのは、題材のナイーブさゆえ扱いづらくなったからだろうか。だから本作を観たときはあまりの懐かしさにうわあ、って声が出ました。心臓移植の伏線は張っていたけど、すっかり忘れていた展開式がこの21世紀に使われるとは。 懐かしさは置いとくとして、お話の方はまあ普通。この二人にノレるかどうか、ですよね。個人的にヘンリーの顔がタイプじゃないので私はノリ切れず。セオリーどおり女の子は成長を見せるし、脇のエマ・トンプソンがきっちり固めるし(巧すぎてやや浮く)で及第点といったところ。 あの華美なクリスマス・ショップがすごく素敵だけれど、時期を過ぎたらどう衣替えするのかとても興味ありです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-03-30 22:12:16) |
11. ラン・ハイド・ファイト
《ネタバレ》 閉じ込められた場でテロリストと闘う孤立無援の主人公、まさしくダイ・ハードな今作はB・ウィリスおじさんではなくて女子高生。構成も演出もキャラの造形力も本家の五割減くらいです。 悪玉の方が一向に仕掛けてこないので中だるみがひどい。べらべらと空疎な台詞ばかりの犯人側リーダーのアイツ、ネットで自己配信することだけが目的だったのかな結局。あと、女教師の上半身を裸にさせただけ。 ヒロインが必死に食堂外の生徒を避難させようと奮闘するけれど、犯人側が学校全部を制圧しようという動きに乏しいのでちっとも緊張しません。ラストの爆発もけっこう小規模だったなあ。というかああいう場合って車のエンジンかけたらドカーンっていくのかと思ったんですが。セオリーじゃん。 教師らが怪我した女子生徒にリーダーシップを丸投げしている寒さもさることながら、やはり学校での銃乱射事件てのは現実に起きている社会問題なのだから娯楽作品にしてしまうのはデリカシー欠け過ぎなのではと感じました。大企業ビルにプロがテロを仕掛けるのとは訳が違う。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-02-02 23:23:04) |
12. LION/ライオン 〜25年目のただいま〜
《ネタバレ》 テレビの情報番組で15分もあれば紹介できる(実際見たことあるような)内容を2時間近くにふくらますのは脚本家も苦労したことでしょう。ドラマチックなのは近年急速に発達したIT技術で何万キロも離れた故郷を見つけ出すことに成功した、というくだりだけですもん。先進国ではたいていの人の日常は淡々と過ぎていくものです。ちょっと面倒な義弟がいたとしてもドラマにするほどのことではない。 どちらかというと前半のインドの混沌の方が圧倒的で、スラムドッグミリオネア再びといった描写には言葉も失います。孤児が道端で寝ていても大人は無関心で通り過ぎていく。あまつさえ犯罪者集団まで現れる。サルーが行政の保護下に入るまで何度もギリギリ犯罪者の手から逃れる場面があって、そんなインド社会の刹那なことにショックが強かったためオーストラリアで成人してからの後半は物語として完全にピークダウンした感がありました。構成としてあまり上手くいってないんじゃないかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-18 23:35:20) |
13. ライド・ライク・ア・ガール
《ネタバレ》 一人の人間の生涯を映画にするのってけっこう難しいですよね。起きた事柄を時系列ごとに並べただけでは‶他人事のイベント”を見せられる客は飽きてしまうし、無理に盛り上げようとして嘘になってもまたいけないわけで。 メルボルン杯で優勝した初の女性騎手のライフストーリーの本作は構成、演出とも平凡な印象を受けてしまいました。 ヒロインの勝気な性格はT・パーマーを通してよく伝わりますし、女だというだけで受けるセクハラや居心地の悪さといった逆境の描写は胸が痛みました。 でももっと映画構文としての山場があっても良かったのではないでしょうか。選手生命を脅かすほどの大怪我からの復帰劇しかり、優勝したレースのシーンしかり。そこ、映画のキモなのになあともどかしく思いました。馬が走る、それだけで画になる素材なのですから過去作品に倣ってもう少しわくわくさせてほしかったです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-01-11 23:23:34) |
14. ラスト・ワルツ
《ネタバレ》 ちょっと勘違いしていました。‶ジャージー・ボーイズ”のような、一バンドの解散に至るドラマかと思っていたのですが。 完全なるファイナル・コンサートの記録でした。合間にインタビューを挟んではいるものの、これはザ・バンドに思い入れのある層にのみ向けた映像作品です。 残念ながらこのバンドについては(耳なじみのある曲はちらほらあるものの)ほぼ一見さんに近い立場で鑑賞しましたから「ああ、間違ったなあ」と途中からずっと思ってました。 スコセッシの名前にもミスリードされてしまったというのもあるな。 点のつけようもないのですが、若い頃のE・クラプトンやロン・ウッドを見られたということで中間点を。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-05-20 22:57:59) |
15. ラースと、その彼女
《ネタバレ》 ラースが意気揚々とビアンカを兄夫婦に紹介した時はこれはヤバい、とわたしも夫妻同様大いに焦ったのですが、ストーリーはほとんどファンタジーのような優しさと親切で展開しました。 街の人たちがほぼ皆ビアンカを「そういうこと」として受け入れ、助けてくれる。まあ、ラースが迫害される(こっちの方が現実的)のを見るよりはこちらも心が安らぐのでやや現実離れした話でもアリかな。 甘々な話ではあるけれど、兄夫婦のショックや戸惑いといった感情描写なんかはとてもリアル。特に優しい義姉が唯一爆発したシーンは心に残ります。「皆気を使っているのに。だってビアンカは大人なんだから」ここ、よく「人形」と言わずにこらえましたねえ。お義姉さん、エライ。 ちょっと注文をつけるとするなら、ラースが人々にこうも受け入れられるほどの‶善良なやつ”として好かれているという描写が前段のうちにもっと欲しかったです。ぱっと見陰気なコミュ障、で切り捨てられかねないキャラクターですから。あと、人形を搬送するのに難を示さない救急車てのもなんかびっくりするなあ。そこそこ大きめな街だったように思ったのですが。もっと小さい村単位の話なら、隅々までビアンカの話が行き渡っていても無理はないかなと思いますけども。いや、些末なコトですね・・。 ライアン・ゴズリングには驚きました。これまで彼の役は「イケてる自信家」的な仕事しか観ていなかったので。彼の器用なことには目からウロコです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2020-10-12 22:56:03) |
16. ラスト・ターゲット(2010)
とても寡黙なので観る者が細部を想像力で補わなければならないストーリーは親切ではないのですが、話の流れを追うより画の余韻を味わうべき作品です。元カメラマンという肩書も納得の監督の美的センスが1シーン1シーンに反映され、女優の裸体の美しさや机の前にただ座っているだけのG・クルーニーのショットすら西洋絵画のようです。 小高い丘に石造りの建物が並ぶイタリアはカステル・デル・モンテのロケーション力は抜群ですし、銃を改造あるいは組み立てる時の手さばきは熟練の技術の粋とも言え、もう「画のチカラ」で引っ張ってくれます。 ただキャスティング。ジョージ・クルーニーは評価しづらいです。どこまでもヨーロピアンな香りの本作に、いつも歯痛をかかえていそうな単なる仏頂面のクルーニー。もともと表情に奥行きの無い表層タイプの彼はあからさまに「アメリカ人」なのですが、考えてみれば原題はThe Americanですし、ここはクルーニーで正解なのかな。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2020-09-29 22:57:58) |
17. ラブ・アゲイン
《ネタバレ》 実力派俳優らの面目躍如といったところでしょうか。皆キャラクターの飲み込みが良くて演技がうるさくない。台詞の一つ一つも自然で好きです。個々の事案があらなんと一つに繋がったガーデンパーティへの流れは鮮やかでした。(エマ・ストーンの件はノー伏線だったのでちょっとズルイかなあとは思うけど) でもちょっと注文つけたくなるのは、群像劇の宿命ではあるけど個々の気持ちをなぞる時間が足りないこと。特にジュリアン・ムーア。この人離婚を言い出したわりには全然腹も気持ちも据わってないんですね。別れる、と決意した以上はもっと夫に愛想をつかしているはずだしケヴィン・ベーコンにもっと入れ込んでていいのでは。むしろベーコンいいじゃないすか、とすら私は思う。ケヴィン殴られ損・・なんかすっきりしないわあ。 それにしてもオジサンに黄色地のボーダーポロは洋の東西問わずキツイですね。なぜあんなデザインを紳士向けに作るのか。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-09-26 16:07:26)(良:1票) |
18. ラヂオの時間
《ネタバレ》 場が職場であれ町内会の会合であれ学級会であったとしても、人が集まると異論噴出して調整不可、なんてこと誰でも経験あるんじゃないですかね。ラジオドラマ制作現場で勃発するそんな「あるある」。笑いました。「ああー分かるわー○○が気の毒」「○○が折れろよ」等、観る者等しく共感を誘う見事な脚本です。(○○には観る人によって違う人物が入るでしょう)。 誇張されたトラブルの数々は次々と畳み掛けるように発生し、役名変更を発端にどこまで展開できるのかが見どころでありますが、シナリオから音響までこうもたくさんバラエティに富むとは、三谷氏の才気に感嘆しました。 ごたついた現場で光り輝くのは現状をせめてベターに着地させようとする者。ここで一番尊いのはラストの花火を見事に演出した警備員のおひょいさんでしょうな。あ、「客」としての存在である渡辺謙も大事なキャラクターですね。外からの評価が、最後にスタッフにもたらされたのです。あまり平均的な感想とは思えないですけどね笑。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-05-20 17:58:53) |
19. ラッキーナンバー7
《ネタバレ》 サスペンスが好き、でも勘は悪いという(つまり私だが)タイプはとても楽しめると思います。いやーわかんなかったな。前半までのJ・ハートネットの善良ぽさにまんまと騙された、とも言えるし L・リューが彼女らしくない普通の女子を演ってるのが違和感だったのでスパイかも、と思ったり あげくB・ウィリスの不思議な佇まいに人外の存在かもしれない(彼の別作品が影響した)とお門違いに勘ぐったりで、それら全部外しても楽しかったな。 伏線に嘘や無理やり感がないんですよね。筋としては極めてシンプルだから。言われてみれば大して込み入ってない話なんだけど逆再生のように組み立てたことで謎がいっぱいあるように見える。よくある作りではあるけど、目まぐるしく挿入されてきた過去映像もとりこぼさず説明してくれる丁寧さは観客に親切だし、ずらーっと並ぶ重鎮演者の顔ぶれはいやでも重厚感漂わすし、良かったですよこれ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-05-16 23:35:59)(良:1票) |
20. ラ・ラ・ランド
《ネタバレ》 苦手なミュージカル。でも案外アレルギー反応無く観ることができました。エマ・ストーンとライアン・ゴズリングのダンスが程よく素人ぽいのが良かった。プロダンサーばりのキレの良い動きがいきなり入るとお話が途切れてしまう感じがいつもしていたので。 エマ・ストーンは数年前よりカエル顔化が進んでいるのが気になりますがやっぱり可愛いですし、夢追う人のためのファンタジーといった趣のお話は素直でしんみりと共感を誘う演出も巧いです。ミアの脳内での「こういう未来もあったのでは」シーンなどはちょっと竹内まりやぽい常套しみじみ手段。さすが。しみじみしました。(5年てのはちょっと短い気もするけど) [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-12-17 16:08:33) |