321. 春にして君を想う
《ネタバレ》 人工物からして見当たらないアイスランドの茫漠とした風景、その中を頼りなく、しかし決して止まらずに、走らずに、確実に歩き続ける主人公2人、必要最低限の凝縮された会話、そこから醸し出される年季の入った信頼感。細かいことをいう前に、この作品はその珠玉のような世界を提示できた時点で成功です。重要な場面でもさらっと流れているので見ているときには注意が必要ですが、ラストの埋葬の場面にはすべてを結実させて昇華させる強力なインパクトがあります。陰影を強調した撮り方も作品世界に適合しており、印象的です。 [DVD(字幕)] 7点(2009-01-09 01:06:19) |
322. ジャッキー・ブラウン
タランティーノならではのダラダラした会話術はなかなか心地よいのだが、その点を取り払うと、骨格はありがちなコン・ゲーム系でしかなく、作品としてのスリリングさはそんなにあるとはいえない。俳優陣では、ロバート・フォスターとブリジット・フォンダは意外なほどこの雰囲気にはまっているが、キートンとデ・ニーロは本領発揮の場面がなく、無駄遣いだった気がする。 [DVD(字幕)] 6点(2009-01-04 04:08:27) |
323. Kids Return キッズ・リターン
《ネタバレ》 余計な演技をさせずに地道な日常生活の描写を積み重ねているのと、ボクシングのシーン(練習含む)をきっちりと撮っているところには好感が持てる。大事件が起こりそうで起こらない、またポイントとなる部分も最低限の説明だけであるのが、登場人物の心理を暗に表現しているようで印象的。ただ、主人公2人の部分はきちんと骨があってドラマにもなっているのに比べ、サブの漫才師とかタクシー運転手の部分が、全然機能してないのですよね。本筋と絡んでもいないし。 [DVD(邦画)] 5点(2009-01-01 03:34:39) |
324. サルサ!
《ネタバレ》 普段は耳にしないサルサ・ミュージックがたくさん聴けるのはいいのですが、肝心のストーリーが、ベタを通り越して「陳腐」です。音楽でごまかしきれないほどの粗さが目につきます。冒頭のピアノのシーンと、ラストのライブシーンのそれぞれの迫力で何とか印象が保っている感じ。室内部分でのカメラの揺れも気になりました。 [DVD(字幕)] 5点(2008-12-31 01:51:17) |
325. グリフターズ/詐欺師たち
せっかくの詐欺師トリオなのに、こんなに盛り上がりないまま終わってしまうとは・・・。アンジェリカ・ヒューストンのじわっとした存在感が、軽快さを削いで、かえって裏目に出てしまった気がする。 [DVD(字幕)] 4点(2008-11-21 04:30:02) |
326. セレナ
《ネタバレ》 何よりも、大量のエキストラの動員、各楽曲のほぼフルコーラスでの使用など、ライブシーンをきちんと再現しようという大きな努力があるのがよい。主人公はステージ上でこそ最も輝いていたわけで、そのイメージをありのままに映し出そうという誠実で真摯な姿勢は、必ず見る側の共感を呼ぶのです。ステージ部分に比べて私生活の部分は、描写が通り一遍で人間性の探究にまでは至っていないという気はしますが、基本のところがしっかりと押さえられているので、作品としての印象は良いです。対象に対する愛情を感じます。最後は一足飛びに記録映像が入ってきてちょっと驚きますが、あのシーンはスタッフたちも悲しさのあまり作ることができなかったんでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2008-10-31 02:58:46) |
327. 楽園の瑕
同じようなシーンと同じようなやりとりの繰り返しにしか見えず、誰が何をしようとしているのかさっぱり分かりませんでした。画像がやたら暗めなのも、何か意味があったの? [DVD(字幕)] 3点(2008-10-15 21:58:09) |
328. 真夜中のサバナ
ジョン・キューザックとイーストウッドなんて全然合わないんじゃないかと思って見始めたら、まったくそのとおりでした。彼はやはり、ひねくれた役とか裏がある役とか性格が歪んでいる役とかの方が合ってますよ。ケビン・スペイシーもそれは同じ。そもそも、法廷サスペンスを軸にしようとしている割には突然わけのわからない描写があったりして、作品として何が表現したかったのかもよく分かりません。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2008-10-06 02:35:17) |
329. アモーレス・ペロス
《ネタバレ》 3つの話はもうちょっと絡み合うかと思っていたのですが・・・(2番目の話で2回かかってくる無言電話なんて、絶対後で裏側のエピソードが出てくると予想していた)。しかし、やたら忙しいカメラで目を回らせつつも、一つ一つのシーンに不気味なほどの迫力とインパクトを与える手腕はなかなかのもの。映画としての重量感があります。 [DVD(字幕)] 7点(2008-10-05 02:49:30) |
330. リアリティ・バイツ
終始ダラダラうじうじイライラしている登場人物たちには、見ているこっちの方がイライラしてしまうのだが、後で考えるとそのダラダラしたところが印象に残っているという困った作品。しかし、青春のうじうじを表現するからこそ、表現そのものまでうじうじになってはいけないと思うけどな・・・。当時FMで嫌というほどかかりまくっていた"Stay (I Missed You)"に5点。 [DVD(字幕)] 5点(2008-10-03 03:10:20) |
331. クイズ・ショウ
何よりも、要の2人のジョン・タトゥーロとロブ・モローの個性が薄いのが痛い。レイフ・ファインズと比べても、キャラクターの方向性というものがほとんど見えません。枠組自体は地味で、しかも実話であればひねりようもないのだから、この辺がしっかりしていないと楽しみようがないのです。類作の先例の「ネットワーク」や「ブロードキャスト・ニュース」と比較すると、何が足りないのかがよく分かります。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-09-30 03:50:34) |
332. グリーン・カード
《ネタバレ》 切なさと可笑しさがほどよくブレンドされた好作品ラブコメでした。必要に迫られてとはいえお互いの過去や日常をさらけ出し合い、それに伴って2人の感情が動いていく過程が(構図としては単純とはいえ)見る側を引き込みます。余韻のあるラストもキュートですね。あの後2人がどうなったのかを考えるのも楽しい。また、各場面の表現の焦点を絞ったピーター・ウィアーの的確な演出も強力です。 [DVD(字幕)] 9点(2008-09-21 01:18:58)(良:1票) |
333. コキーユ ~貝殻~
《ネタバレ》 98年製作とは言われないと分からないほどの単純朴訥な作品。ロマンスの描写は最も重要な一瞬の部分にとどめ、それ以上深追いしていないのが、作品の純度を高めている。だから、心の中に誰もが持っている郷愁感が湧き起こってくるのです。台詞が説明台詞ばかりだとか、ラストの締め方が強引だとか欠点はいろいろあるのですが、ハイキングから朝の温泉に至るまでの各シーンの美しさで許します。点数も甘め。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2008-09-09 03:56:02) |
334. 日蔭のふたり
ストーリーはかなり凝っているので、じっくりと時間をかけて表現すればひたれる世界になったのであろうが、2時間に押し込んでしまったために、あまりにも慌ただしく必要最小限の描写になったのは残念だった。なので、ただ2人がくっついたり離れたりしているだけという印象を受けます。やりとりの間に出てくる言葉だけではなく、それを裏付ける2人の「生活」をきっちりと追ってほしいところでした。それでも、(例のシーン以外にも)印象的な場面はいろいろあったので+1点。 [DVD(字幕)] 6点(2008-08-29 03:57:03) |
335. 乙女の祈り
空想シーンがあまりにも色も雰囲気もベタベタしすぎで、幻想性のかけらも感じられませんでした。おまけに主人公2人自体に謎めいた雰囲気が全然なくて、単なるファンタジーオタクのアホ高校生じゃないですか。これは期待はずれです。それにしても、この不細工+ギャーギャーうるさいウィンスレットからは、後の名女優の姿はまったく予想できませんね。 [DVD(字幕)] 4点(2008-08-28 03:46:11) |
336. ゴッドファーザー PART Ⅲ
《ネタバレ》 魅力的なキャラクターが減ってしまっているのはやはり大きなマイナス。いや、減ったとしても、それを補う次の人物がいればよいのですが、アンディ・ガルシア1人に全部それを振ってしまったのは、やはり荷が重かったと思います。ソフィア・コッポラについては、本人の責任というよりも、本来あまり前に出るべきではないメアリーというキャラに大きく重きを置いてしまった構成力不足(もしくは親馬鹿)の問題(これまでのダイアン・キートンやタリア・シャイアの効果的な使い方とは対照的)。ラストの娘撃たれる→主人公絶叫なんて、あまりにもありがちな締め方すぎて悲しくなりました。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2008-08-28 03:40:42) |
337. ウォーターワールド
どう見てもB級アホ作品の設定なのに、こんなにごてごてとデコレーション(だけ)で塗り立ててどうするの。このセンスのなさがすべてです。俳優陣に揃いも揃ってここまでやる気が感じられない作品も珍しい。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2008-08-21 04:07:24) |
338. 小さな贈りもの
《ネタバレ》 ネタ一発というか、最初のところで大体予想できるとおりの展開なのですが、確実な作りでテンポも良いので、安心して楽しめます。引取先候補の女性2人の露骨でない対比はなかなか新鮮でした。追っかけ役のマシュー・マコノヒーが何となくうるさいだけで、活用し切れてなかったのがちょっと残念かな。それにしても、象ってほかの動物に比べて動きや表情の幅が小さいように見えて、表現対象としては難しいのではないかと思うのですが、あれだけいろいろ表せるんですね。 [DVD(字幕)] 7点(2008-08-07 05:01:37) |
339. ジェイコブス・ラダー(1990)
《ネタバレ》 オチの手前まではそれ自体が錯乱映像みたいな脈絡のない展開が延々続いていただけで、オチがどうであろうがその時点で大幅減点。比較されるであろう幽霊ものと比べると、ラストに至るまでの部分でほとんど工夫がないのが難点です(「あちらの方」は、例えオチの手前で終了させたとしても独立して作品として成立するくらいの作り込みを行っていました)。ブレイクする前の初々しいマコーレー君に3点。 [DVD(字幕)] 3点(2008-08-05 02:12:28)(良:1票) |
340. 愛が微笑む時
《ネタバレ》 前半の凝った前置きに比べ、話が動き出してからは予想通り一直線という感じなのですが、登場人物がいい人たちばかりなので、清々しい気分で一気に見通せます。特に、幽霊役の女優2人の素朴なキャラクターの表現がいいですね。着地部分はもう少し引っ張ってほしかった気もするけど、まあいいか。それと、こういう作品でもB・B・キング本人(とバンド)をいきなり登場させてしまうこだわり方は評価したい。 [DVD(字幕)] 8点(2008-06-30 03:00:44) |