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タケノコさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 575
性別 男性
年齢 50歳
自己紹介 管理人さま、レビュアーのみなさま、いつもお世話になっております。

タケノコと申します。

みなさまのレビューをとても楽しみにしています。
( まるで映画のように、感動し、笑い、ときに泣きます )

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21.  街の上で 《ネタバレ》 
やはり、今泉監督はご自身で脚本を書いたオリジナルの恋愛群像劇が絶対にいい、うん。 今回は恋愛トークはもちろん、特に、あっと驚く脚本と人間相関図が秀逸だ。あの主要な面々がバッタリ出くわすあの修羅場の何と楽しいこと。笑っちゃいけないところだから、なおさら笑えるという (笑) またご自身の脚本だけあって、キャスティングも完璧。おそらくあて書きだろうお二人、若葉竜也はもちろんのこと、有名人の成田凌は実にハマり役だったように思う。女優たちも、本当に下北を歩いていそうな (古着通の) 女性たちばかりで、さすが監督はよくわかっていらっしゃる。(ここは、プラダやヴィトン持ってサングラスを頭に乗せた女が歩く街ではない) そして、今回のテーマはズバリ、「成就できなかった "想い" たちよ、永遠に」。 それは、彼の映画出演カットのエピソードからわかるように、お蔵入りした演技や映像フィルムにも向けられています。思えば、出演シーンのお蔵入りは失恋とよく似ている。相手に一方的に「NG」をもらって、その映画やその人の人生から立ち去るしかないから。でも、その後に城定さんが田辺さんにフォローした言葉を私は忘れません。「私には映っていたよ」(だったかな?) それはつまり、成功した本編と同等の価値がある、と思ってよろしいでしょうか? 今泉監督。いいんですね、ありがとうございます (泣) これで、今までの失恋とお蔵入りによって傷ついた私の心たちは安らかに成仏できそうです。
[映画館(邦画)] 8点(2021-04-12 23:14:22)(良:2票)
22.  家へ帰ろう 《ネタバレ》 
ホロコーストの映画だけど、凄惨な描写を生々しく見せることなく、そこは老人アブラハムの語りによって我々に想像させる、という手法を取っています。 その老人が懐古するかつての家族たちは、楽しそうに歌って踊って、誰もが幸せそうだった。そして、まどろみの中で夢見た遠い記憶、幼き日の妹が語る「お星さま」のエピソードは愛らしくて、幻想的だった。しかし、この家族たちがあんなにも悲惨な運命を迎えるとは、戦争とはなんと悲しいことだ・・。 兄と妹、ユダヤ系の老人とドイツ人女性、そしてアブラハムとその親友。それぞれの愛情、和解、友情の証であるだろう、心に残る抱擁が印象的な映画でもありました。 最後の再会は涙を禁じ得ないが、そのすぐ横では何も知らない子供たちが平和そうに遊んでいる光景には、70年という時の流れをまざまざと感じた。ここにきて、「ドイツでは、戦争 (ホロコースト) を知らない年代もその責任を背負って生きている」という彼女の言葉を思い出す。 悲惨な歴史、その心の痛み、時間による風化と癒し、そして時が経っても変わらないもの、伝えていくべきこと。 その片鱗をたった少しでも感じとることができたこと、それだけでもこの映画を観てよかったと思う。
[DVD(字幕)] 8点(2021-03-20 22:27:50)(良:1票)
23.  勝手にふるえてろ 《ネタバレ》 
なんとなく予想はしていたが、、いい歳した男たちが大勢集まってふるえすぎだわ、このサイトは (笑) しかし、私もみなさんと同じく?、性別も年齢も全くかすりもしない松岡茉優のヨシカに最後までくぎ付けになってしまった、という実に興味深い映画だった。 そして、もちろん本作はそんな彼女の魅力が全開でしたが、渡辺大知が思いのほかよかった。ちょっとずれてるしイケメンではないが、恋には一途で気のいいヤツ、を好演していたように思う。「イチ」は他の俳優でもハマりそうだが、「二」はそうはいかない。「二」が彼で本当によかった、と思ってる。 絶滅した動物たちとの対比だろうか、特に珍しくもない動物たち、でも今をキラキラと生きる動物たちが登場しましたね、よこはま動物園ズーラシア。「動物園デートが登場する恋愛映画 (邦画) に駄作なし」(←これ、私の勝手な持論) ・・というわけで、動物園デートの邦画傑作選が勝手にまた一つ増えました。 また、妄想することと歌うこと、その意外な相性の良さを映画で改めて実感した、という意味で「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を思い出してしまった。(ストーリーとしては似ても似つかないけど) 9点も考えましたが、当サイトの高評価で期待値を上げすぎてしまったこともあり、もう一震え (ひとふるえ) だけ欲しかったということで。
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2020-12-11 13:13:34)(良:1票)
24.  オーバー・フェンス 《ネタバレ》 
チャラい感じの恋愛映画と思って敬遠していたが、とてもよい映画だった。 とにかく、函館という街がいい。坂道、人けのない漁港、海の向こう側に見える寂れた工場群、、実に映画映えする風景だ。 登場人物たちもいい。特に近年のオダギリジョーは、本当にいい演技をみせてくれる。軽口の叩き方とか、すごく好きだ。蒼井優はちょっとオーバーだったけど、静かな映画のいいアクセントになっていたように思う。あの鳥の求愛ダンス、うちに秘めた弱さと寂しさを隠すための "虚勢" のようにも見えたが? どうでもいいような若者たちとの合コンの場面に、いい台詞があった。 「20代のうちにたくさん笑ってろ。40代にもなればもう笑えなくなるから」 白岩のこの台詞、心にガツーンときた。もちろん、俺も今まさに彼と同じ年代ということもある。確かに、最近は笑うことも少なくなった。でも、ただそれだけじゃない。この映画のメッセージは、フェンスの中とか外とか、そんなことは関係ない、ということがわかったからだ。 これは職業訓練校という極めて閉鎖的な舞台であり、正しい人生を一歩だけ外れた者たちの物語、と思って少しだけ上から目線で観ていた。 ・・全然、違った。これはぼんやりと目的もなく生きている人全てに対するお説教であり、その背中を押してくれる応援歌だ。 大きな成功ではなくて、自分にとっての起死回生のでっかいホームラン、何とか打ってみたい、、そんな気にさせてくれる映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2020-11-09 18:14:45)(良:1票)
25.  手紙は憶えている 《ネタバレ》 
物語半ば、ゼヴの奏でるピアノの美しい旋律。 でも、その姿は上流階級者の風格が確かにあって、かつてアウシュビッツに収容されていたユダヤ人には見えないというか、、とにかく違和感を覚えました。このあたりから、彼自身の、まさかの正体を疑ってしまったのです。だから、個人的にはどんでん返しとは言えるような驚きはなかった。 しかし、それが低評価の材料にはならないほど、本作は人間たちのドラマに感動し、心を打たれるものがありました。理由の一つとして、かつてトラップ大佐を演じてナチスに反旗を翻したクリストファー・プラマーと、まるで使命のようにヒトラーを演じたブルーノ・ガンツという、この歴史にゆかりの深い名優が演じたことが大きいと思う。 これは、最後まで生き残ったナチスの残党二人が、自らその歴史に終止符を打った、という物語。(と思いたい) 「だから彼ら (ナチスの戦犯者たち) を追うことは、もう終わりにしてほしい」 名優二人は、そんな願いを役に込めたような気がしてならない。
[DVD(字幕)] 8点(2020-05-31 22:44:24)
26.  パラサイト 半地下の家族 《ネタバレ》 
もともと、犯罪を生業とするような家族だったのね。半地下の家族が苦しい貧乏生活のなかで、悩み悩んだあげくに、こういった犯罪行為に染まっていく物語、と勝手に思っていたので、楽しそうに金持ち一家に "寄生" していく様子を、半ば呆気に取られて観ておりました。前半の展開は (不謹慎な) 笑いを交えたコメディタッチ、でも後半は展開が激変して、期待通りのポン・ジュノ節が楽しめます。秘密の地下室に住む男とか、白昼の惨劇などはとにかく正気の沙汰じゃなくて、いかにもポン・ジュノらしい。そして、「殺人の追憶」や「母なる証明」あたりの重苦しい雰囲気はなくて、作りとしては血みどろのブラックコメディ。何となくですが、初期の園子温監督を思い出しました。映画全体としては、とにかく階段や坂が登場します。古今東西に映画においては、富裕層は高台で貧困層ほど低地という描写はセオリーであって、それを意図しただけの高低差かしら? と思っていましたが、もう一つとても重要な役割を担っておりました。それは雨です。アタリマエですが、降りしきる雨が下へ下へと流れていくんです。高台に住む金持ちや半地下の家族だろうが関係なく、彼らが流した血と汗と "臭い" も全て一緒くたに混ざり合って、汚物と一緒に側溝に洗い流していきます。それはまるで、都会 (という格差社会) にこびりついた垢を浄化するように。
[映画館(字幕)] 8点(2020-01-11 17:41:48)
27.  鬼灯さん家のアネキ 《ネタバレ》 
主演は前野朋哉くんと言って、「桐島、部活やめるってよ」の映画オタク役で意外と印象に残っておりました。なので心に誓って、谷桃子さんのナイスバディに食指が動いたわけではありません。(スミマセン、嘘です) しかし今回の吾朗役は完璧にハマっていますね。抜擢した今泉監督、ナイス。商業的にはもう少しイケメン (オタク風の) でいきたいですが、あえてそうしないところに私は監督の信念を感じましたよ。今回気になったのは、盗撮ネタ。実は過去の作品にもありますね。なぜか盗撮にやたら執着する今泉監督、そして監督が描く盗撮にはあるルールがあることに気づいてしまった私。それは、盗撮者が好きな人個人に向けて仕掛けていること。犯人が、愛に悩み、苦しみ、迷った末の過ちとしての盗撮なんです。だから、学校や公園のトイレに無差別的に仕掛ける盗撮とは明らかに異なります。もう一つ、仕掛けたヤツは必ずバレる → 開き直る (or反省する) → 謝る → 和解する。 だって最後まで隠し通したら顔見知りだろうが絶対に犯罪だから (笑) ちょっとおかしな方向に話がそれてきたので、ここで話題を変えよう。好きなシーンは、部屋の中でテントを張って語らうところ。個人的に登山が好きなこともありますが、とてもロマンチックでしたね。それにしても題名は彼らの苗字なだけですが、やたらと意味深。鬼灯、ほおずき、その花は綺麗でとても風情があります。そして漢字で書いても音で読んでもどこか情緒的で、なんと毒性もあるそうな。だから "鬼灯さん家のアネキ" って、いろんな想像してしまって意味もなくドキドキしますね。(俺だけか?) と、とにかく・・今泉監督は初期の作品にハズレなし! 以上。
[DVD(邦画)] 8点(2019-11-13 00:02:56)(良:2票)
28.  しゃぼん玉 《ネタバレ》 
乃南アサ氏の原作は、何年も前に読んでございますが、細部をかなり忘れていて、今回の映画が初見のようになりました。 始め、青年 (林遣都クン) は鬼のような形相で、悪いことをたくさんしますが、どこかしら人の優しさを知らずに育った (粗暴な) 野良犬のようなところがありました。 そんな彼が、流れ着いた宮崎県の山奥 (椎葉村) の風景と人の優しさに癒され、憑物が1枚1枚剥がれていくように人間らしく表情が宿っていく、、。 村で過ごした彼が、人生で初めて知ったもの。 スマの優しさ。 シゲ爺の厳しさ。 人を好きになること。 人の心を知って、人として成長して、人として罪を償って、また村に帰る彼の姿に大きな感動を覚えました。 本作は少年院や刑務所で上映されているようですが、確かにこの映画には、罪人を更生させるだけの「力」があると思います。 「ぼう、ぼーう」 彼をそう呼ぶ市原悦子さんの声がどこまでも優しかったです。 山でおむすびがころころ転がった場面では、私は日本昔ばなし「おむすびころりん」を思い出し、今にも彼女のナレーションが聞こえてきそうでした。
[DVD(邦画)] 8点(2019-11-05 17:23:35)
29.  ジョーカー 《ネタバレ》 
これは大傑作だ。でもとても反社会的で、おかしな影響受けそうなちょっと怖い映画。白状するが、彼と同じく "名もなき群衆" の一人として血が騒いだわ。 でも、この映画を観て感想を冷静にコメントしてるうちは大丈夫。ジョーカー、カッコイイ!! などと、騒いでいるうちも、まあ大丈夫だろう。そうそう、ヤツが階段を降りながら踊るシーン、、これにはカッコ良すぎて、しびれた!! ヤツと同じようにピエロのメイクしたり、笑い方を真似したり、独り部屋で鏡に映った自分に話しかけるようになったら、、これはマジであぶないかもね。 ・・って、なんかやっぱり、コメント書いてるだけでも「タクシードライバー」そっくりだ (笑) もちろん、「キング・オブ・コメディ」のリスペクトでもあるし、久しぶりにデ・ニーロが刺激的な役をやってくれて往年のファンとしては嬉しかったね。 その余韻に浸る私に向かって、会社の部下(男性・20代前半)はしれっと言ってくれた。「ホアキン・フェニックスかっこよかった!! マーレー役の人は何て言う俳優ですか!?」 ・・・。 ったく、ズッコケさせてくれるぜ。 とても時代を感じたが、、でもこれを機にあの二作を知ってくれたら、オジサンは嬉しいよ。 昔のデ・ニーロ、カッコ良すぎてちびるなよ。
[映画館(字幕)] 8点(2019-10-22 22:56:51)(良:1票)
30.  恋は雨上がりのように 《ネタバレ》 
小松菜奈さんの魅力についてはもう語りつくされておりますので、強いて言うなら、陸上競技者、それも単なる一部員ではなく、人を惹きつける短距離界のスター候補生、といった観点から、これは完璧なキャスティングではないかと。多くは書きませんが、競技場のトラックを颯爽と駆け抜ける橘あきら、、その姿を観た方ならわかるはず。 かたや、羨ましい店長の近藤正己は45歳、公開当時の大泉洋も45歳、ついでに、私は44歳。(ちくしょーめが このやろめ なんだこの差はこんちくしょうめ) そんな店長の良さについてはもう語りつくされておりますので、強いて言うなら、(またかい) 私が好きな彼の優しい気遣いについてコメントを。彼の、「息子に走りを教えてやってほしい」はタテマエ。その本音としては、あきらが再び走り出す、本当の意味での「キッカケ」を与えたかったのですね。 何度でも観たくなる終わり方は、雨上がりに覗いた晴れ間のように、一片の曇りもなく、キレイに爽やかに。 そして、小松菜奈という女優としては、これが青春映画のゴールになるだろうか。 私の中でも大好きな女優が、その「青春」という通過点を、颯爽と、自信に満ち溢れたその姿を残して、駆け抜けていきました。
[ブルーレイ(邦画)] 8点(2019-10-12 17:33:02)
31.  サッドティー 《ネタバレ》 
冒頭、まさかの競歩に不意をつかれる。ぐるぐるグルグル、いつまでやるんかい、、と見ていたらまさか鳥たちにね、、(笑) この予想通りいかない感じ、いいね~。好きなんだよなあ。男たちの恋。ボンさんは妄想がすぎるし、早稲田は早稲田通りのように一方通行だし、朝日はまるで競歩のように止まることを知らない。彼らはストーカー予備軍の黒い三連星だが、今泉監督は優しいから、こいつらは少しピントがずれてるだけ、と言っている。次、女たち。夏 (イチゴ) は男を見る目なさすぎだし、夕子はやや浮気性な感じだし、棚子は売り物の洋服着て微笑んだりとか思わせぶりにもほどがある。人が誰を好きになろうが勝手だし本作は男女全ての恋に肯定的ですが、DV男だけは例外。彼の行為は肯定のしようがなく犯罪的行為なので、唯一マトモに顔を捉えられていませんね。本作のテーマである恋愛観とはそう、、例えるなら柏木のヘアスタイルのようなもの。誰がどこから見ても滑稽だけど、それおかしいよとは言いにくいもの。そもそも、本人の主観的なこだわりだから、他人に「それ間違ってる」とか言われる筋合いもないしね。
[DVD(邦画)] 8点(2019-05-02 19:55:08)(良:1票)
32.  ヘレディタリー 継承 《ネタバレ》 
これはヤバい、本当に怖い、、。さらに嬉しいことに、平日レイトショー、ガラガラの映画館で貸し切り状態だ (泣) 個人的には好みであるクラシックなオカルトホラーの雰囲気があり、心理的にじわじわとくる恐怖、総毛立つ怖さを久しぶりに実感しました。監督の演出しだいで陳腐になるか大化けするかのジャンルと思っていますが、僕は (古き良き名作と同様に) 後者に転んだように思う。 伝統的にみて「家」 が怖いのは常套だし、実はストーリーはありがちです。だから本作は母親 (T・コレット) の演技力につきる、と思う。僕が本作で最高の恐怖を感じたのは、チャーリーに憑依された彼女の顔、声、そのしぐさです。そして、家族で食事中に取り乱した彼女の表情。 ホラー映画の良し悪しは主演女優の演技力にかかっている、と言っても過言ではありません。エクソシストのE・バースティン、オーメンのL・レミック、シャイニングのS・デュバルしかり。 ホラー映画の歴史は、(ただでさえ) 怖い顔した女優たちの絶叫演技が支えてきた歴史。T・コレットは見事に受け継ぎました。ホラー映画史を彩る名女優たちの神髄を余すところなく、文字通り "継承" したと言えよう・・!!
[映画館(字幕)] 8点(2018-12-05 18:10:27)(良:4票)
33.  女神の見えざる手 《ネタバレ》 
これはとても観応えのある脚本でした。登場人物たちの洪水のようなセリフの応酬に圧倒されて、あっという間の2時間が過ぎてゆきました。エリザベス・スローンという女は強烈だった。彼女は頭脳を武器に国の巨悪と戦う、まさにワンダー " キャリア " ウーマン。その人間性や手段はともかくとして、私は彼女を羨望の眼差しで観ていたことを白状しよう。1つだけ気になった点があります。それは彼女の過去や生い立ちが一切語られていないこと。だからその信念の源は不透明だが、実はエズメのように銃にまつわる壮絶な過去を背負っていたのではないか、と思うことにします。映画としては、やはり原題通り天才ロビイストである彼女を堪能するべきで、必ずしも銃社会の問題に固執した物語ではないと思いました。 (クライマックスでは銃うんぬんはどうでもよくなってるし) そして、観終えてみれば納得の邦題も秀逸だったように思う。それは人間たちをチェスの駒のように自在に操った彼女の見えざる手であり、彼女が張り巡らせた壮大な罠でもある。でも実は彼女自身を導いて突き動かし続けた力こそ、" 女神の見えざる手 " かもしれません。
[映画館(字幕)] 8点(2017-12-07 22:12:17)(良:1票)
34.  ドリーム 《ネタバレ》 
冒頭における三人の愉快なやり取りから察するように、黒人差別をテーマにしながらも、そこまでの重苦しさはなく軽快なタッチで描かれています。(さじ加減は数年前の「ヘルプ 心がつなぐストーリー」に近い感じ) 三人の職場における差別や苦境はしっかりと描きつつ、でも私生活では三人揃って明るく笑い飛ばすという、映画全体のバランス(明暗の緩急)に長けていたように思います。なお私は数学音痴なので、ロケット軌道計算や着水地点解析の難易度がどれほどかは想像もつきませんが、キャサリンが数学の地球代表であるすごさは伝わってきました(笑) 脇役も総じてよかったですが、特にK・コスナーは絶品でした。90年頃の全盛期からキャリア低迷もありましたが、その苦労と経験がいい感じでにじみ出ていて、むしろ昔よりいい役者になったように思います。(今の彼で主演映画が観てみたい、と心から思いました) 有人宇宙飛行「マーキュリー計画」という大きな歴史。その歴史の主役はロケットでもコンピュータでもなく、"人間たち"であり、男も女も白人も黒人も(ポジションも)関係なく、担った全員が主役であったことを実感します。同じ題材を取り扱った「ライトスタッフ」と比べても面白いかもしれません。興味深いのは題材は同じでも全く別の映画になっていて、人間を軸にその姿を変える映画の無限の可能性を感じました。誠実に丁寧に作られた、本当に胸のすく映画でした。しばらくはいい夢が見れそうです。
[映画館(字幕)] 8点(2017-10-01 18:51:37)
35.  散歩する侵略者 《ネタバレ》 
返り血を浴びた侵略者が、車が飛び交う道路のど真ん中を悠々と"散歩"する。次々と激突して横転する車を後に、女は一瞬冷たく微笑んだ・・。この強烈なオープニングにまずやられました。黒沢清監督の映画としては大胆なSFであり、同時に今回はコメディ色が濃いのも特徴。特に、賢いのか間抜けなのか、最後までつかめない長谷川博己の"宇宙人"キャラが秀逸で、桜井と天野少年の絡みは可笑しくて仕方がなかった。(監督の映画でこんなに笑ったのは記憶にありません) なぜか、「CURE」の役所広司と萩原聖人の全くかみ合わない会話を思い出しました。概念を吸い取られた人間の変わりようも笑いを以て描いているが、実はこれこそ最もたるホラーでしょう。突然ぐにゃっとなってしまって、姿はそのままだがもうすでに心は抜き取られてる・・。怖い怖い。真治が愛の概念を吸い取ろうとして、脳内変換オーバーフローによって失敗し、鳴海は(その時点では)無事だった。これは素直に、愛は計り知れない、という解釈をしたい。まあ、それほど深淵なその言葉の概念を、牧師さんはまるで安全標語のスローガンのように棒読みしたわけですが・・(笑) 夫婦、岸辺、不安げな空の色、戦慄の中にも懐かしさ漂う音楽。監督ご自身が強いこだわりのあるモチーフを踏襲しつつ、(同時にファンが期待しているもの、と言える) 見たことがない世界をまた魅せてくれた。毎回思うのですが、監督の思考回路は一体どうなっているのか。その頭の中にある、「映画」という概念を覗いてみたいところです。
[映画館(邦画)] 8点(2017-09-12 00:36:12)(良:1票)
36.  幼な子われらに生まれ 《ネタバレ》 
浅野忠信と言えば、「私の男」「岸辺の旅」「淵に立つ」といった、不気味な役どころが最近はすっかり定着していましたが、今回は一転してマイホームパパという (笑) でも久しぶりに、普通の人を演じる浅野忠信を堪能できました。 本作の映像、それは古びた8ミリカメラで撮影したようなくすんだ色合いで、その空気はどこか懐かしい感じがしました。音楽をじゃんじゃん鳴らすこともなく、静かで抑制のきいた演出も私好みでした。 物語を通して、根っからの悪人は登場しません。唯一、クドカンは小悪党のようでしたが、最終的には意外と愛すべき魅力的なキャラになっていて、人物の描き方にはとても好感が持てました。彼は最後、既にプレゼントの「ぬいぐるみ」を買っておりました。それはつまり、娘さんが来ないことを承知の上で待合せ場所に来た、ということ。本当に娘と会うつもりであったなら、二人で一緒に買いに行こうとするはずですから。彼も、元父親として最低限の義理を果たそうとする真人間であった、ということです。 話変わって、本作は信と妻の元夫、信と元妻の夫、この関係に注目したい。信の結婚が一度失敗したことにより、奇しくもつながった人間関係です。でも彼らの間には、一度は同じ家族の父親であった連帯感が芽生えたのか、デパートの屋上や病室の場面では不思議な「絆」が感じられて、少なからず心が熱くなりました。 "家族を守る使命" という襷 (タスキ) を、ある親が転んで落としそうになった。その親はもう疲れていて、起き上がって走ることはできない。でも誰かがその襷を受け取って走り、やがて本当の親になり、いつしかその家族の絆はもう少し大きく広がった。これはそういったお話。 はっきり言って、彼らと彼らを支えた妻たちの姿を前にして、離婚とか生みの親とか育ての親とか、どうでもよくなりました。"われら" とは、決して血のつながりだけではないはず。だから新しい命に、「生まれてくる君よ、大家族へようこそ」と声を大にして言いたい・・!!
[映画館(邦画)] 8点(2017-08-28 22:32:35)(良:1票)
37.  淵に立つ 《ネタバレ》 
黒沢清監督の映画で感じる死(あの世)のにおい、デヴィッド・リンチの映画にあるような理屈の通じない不条理さ、をこの映画に感じます。オルガンの音色、はためく白いカーテン、四人で並んで収まる写真。本来ならば心地良さを感じさせるはずの"それ"は、むしろ不気味で不安や緊張を煽ります。終始、神経質な眼光の古舘寛治もよかったが、やはり登場した時から不吉そのもので、あの世の使いを連想させる浅野忠信の八坂がよい。タイトルと同じ色使いの彼の服装、それは白を基調にしていて、時折本性の"赤"が顔を出す時、不吉な何かが起きる。四人は、やがて八坂に導かれるように川へ。その川は三途の川、八坂はその水先案内人。ここは生と死のはざま、あの世とこの世の境目、四人(死人)でその淵に立つ。
[映画館(邦画)] 8点(2017-06-17 23:08:19)
38.  光(河瀬直美監督作品) 《ネタバレ》 
美佐子が目の不自由な方たちを前に、音声ガイドの試写会をしている場面などは、まるでドキュメンタリー映画のような見せ方で、淡々と物語は進んでいく。中森と美佐子の出会い、それは彼の叱咤に始まり、河瀨監督らしくカメラをきっかけにして、やがて打ち解けていき、いつしか深い信頼関係で結ばれていく。重苦しい題材の中にも、微笑ましい食事の場面などが存在し、抜け目なく二人の"喜怒哀楽"は描かれている。老いとその先に待つ死、しだいに見えなくなるこの世界の風景。誰にとっても、生きていくことは苦しくて、ときには立ち止まりたくなる。だが、俳優重三は、待つよりは険しい坂を登ることを自ら選んだ。「大丈夫だから。俺がそこに行くから。」この中森の言葉は、前進する覚悟をしたという、美佐子への誓いも含まれているだろう。その二人を祝福する、燃えるような夕陽。その先に何が待とうとも、生きることを恐れずにただ前進すること。一人では苦しくて険しいその道に、愛が力強く寄り添う時、そこに初めて希望という"光"が射す。
[映画館(邦画)] 8点(2017-06-15 21:29:03)
39.  20センチュリー・ウーマン
本作はマイク・ミルズ監督の宝箱。1970年代のサンタバーバラ、映画、洋服、音楽、車、女の子、母、、きっと彼が好きなもの (好きだったもの) を全部集めて、それを映画にしたんだろうね。もちろん、 "この映画を大好きだった母さんに捧げます" のメッセージを添えて。ものすごい大作を作る監督は、ただ漠然とすごいと思う。でもマイク・ミルズ監督は、ちょっと違う。すごいじゃなくて、心から羨ましいと思う。だって、どう考えても羨ましいじゃない? 自分の人生の宝物集めて、こんな素敵な映画作っちゃうなんてさ・・!
[映画館(字幕)] 8点(2017-06-11 21:12:31)(良:1票)
40.  メッセージ 《ネタバレ》 
大筋はかつての名作「コンタクト」を彷彿させます。ストーリーもさることながら、特にロケーション設定がそっくりなので、A・アダムスの姿に懐かしいJ・フォスターの勇姿が思い出されて仕方がなかったです。そしてホアキン・フェニックス、まさかのサプライズ出演! と思ったらこっちは別の人でしたね (よく似ていること笑) 様々な解釈ができるとても欲張りな映画でしたが、その分多次元的な "メッセージ" に溢れた映画ではあると思いました。それは普遍的な家族へ "愛" であり、国や人種を越えた地球上の同胞に呼びかける "友好心" であり、もちろん未知なる地球外生命体に対する "知的探究心" でもある。物語の中で時間の概念がなくなり、過去・現在・未来の位置感覚が曖昧になるということ。白状するが、その時点で私の凡庸な頭脳では物語の全容理解が難しく。宇宙人の足、このイカ型の造形は娘ハンナのおもちゃを連想させるが、それならなぜルイーズ以外の者たちにも同じ造形に見えたの? などなど考えれば考えるほど、物語全ての整合はかなり複雑です。でもどうせ言語というツールに乏しい話だし、それならいっそのこと難解すぎる宇宙人のメッセージも含めて、この映画は人それぞれの解釈・想像力で楽しみたいところ。狭くて逼迫した宇宙船の中の緊張感から一転、広大な大高原の中で抱擁し合うラストの場面、これは対比が効いていてあまりにも美しい。始めから終わりまで途切れることなく、こんなにも想像力を刺激してやまない映画に出会えたことに心から感謝したい。
[映画館(字幕)] 8点(2017-05-24 23:46:51)(良:1票)
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