501. 醜聞(1950)
《ネタバレ》 三船と志村喬の絶妙のコンビ。 黒澤さんの映画の大黒柱だ。 今の日本映画は、人間の微妙な綾を描こうとするが、 黒澤さんは、ドラマツルギーを成り立たせるために、 分かりやすいキャラ設定で挑む。 だから人間賛歌の物語も、分かりやすく面白い。 今の時代、こんな分かりやすいキャラではバカにされるかもしれないが、 それでも黒澤さんだけの芸当にしてしまうのは惜しい。 [DVD(邦画)] 7点(2020-06-02 09:32:48) |
502. フォー・ウェディング
《ネタバレ》 結婚式が映画の冒頭にてくる映画は多い。 「ディアハンター」「ゴッドファーザー」「悪い奴ほどよく眠る」等々 しかし全編、結婚式のシーンという面白い着眼点。 皆さん、お盛んなんですね~~ 結局、モテ過ぎの男女が結婚という選択肢をとらず、 「結婚」するという話。 エンディングの皆のその後が描かれてるときの マクダゥエルの素直な表情が良かった。 [ビデオ(字幕)] 6点(2020-06-01 10:12:31) |
503. どん底(1957)
《ネタバレ》 黒澤さんはホント、一流の不良でもあるんだな~ 物語の構成が相変わらず凄い。 前半、長屋からほとんどカメラは出ることなく、 登場人物の紹介をしてしまう。これが絶妙! そして後半、次々不幸が出てくるんだけど、 したり顔のおじいさんが、サッと逃げるとこが面白い。 ラスト、長屋の連中の酒飲んでの乱痴気騒ぎ。 これが囃しになってて、見応えある。 黒澤さん、凄いっす! [DVD(邦画)] 8点(2020-05-29 12:40:41) |
504. 生きものの記録
《ネタバレ》 タイトルで損をしているが、さすが黒澤明!面白い! 水爆の放射能は、誰もが怖いだろう。 令和の今は、原発の放射能が怖くない人はいないでしょう。 しかし、皆、忘れたふりをして、目の前の問題に夢中になっている。 この老人は、ちょっと異常にデリケートで、有能であるがために、具体策まで考えて、それを強行しようとする。 ブラジル行がそれだ。 それを周りの人は、禁治産者という法的に判断できぬ人、現実が分からぬ人として、 なんとかしようとする。 確かにわがままな老人の世迷言の一つかもしれない。 しかし、最後に孫をおんぶして、老人の見舞いに来る女性には、 そこには愛があったと思えていたのだろう。 さすが、黒澤節! [DVD(邦画)] 7点(2020-05-28 02:10:07) |
505. 神々のたそがれ
《ネタバレ》 唾を吐きかけたい映画だった。 なんでこの映画が2015年のキネマ旬報ベストテンに入ってんだろ? とにかく苦痛でも最後まで観ないと映画の良し悪しは分からない。 我慢して観続けたが、それでもペレストロイカ以降、民主化、自由の意味をはき違えたロシア文化人の 世迷言のような映画としか思えなかった。 人間性のかけらもない映画。 異星の話というが、そのデザインはクリエイティブでも何でもない。 ホドロフスキーとか、ギレルモデルトロなどに憧れたんだろうか? ロシアSFでは「キンザザ」の不思議感はまだ面白いが・・ 思いっきり深読みして、大戦中カティンの森事件などを起こした ロシア・ソビエトの自国文化否定の意味があったのだろうか? それでもこんな映画を観せられるロシア人が気の毒だ。 [DVD(字幕)] 3点(2020-05-23 23:32:46) |
506. 天国と地獄
《ネタバレ》 凄いなぁ、黒澤監督は・・ 最初、会社の経営権をめぐる場面で、三船演じる権藤が自分がしっかりしてて、 頭のいい、喧嘩の強い人物だと描く。 そこで、誘拐事件。しかも自分の子どもと間違えて、運転手の子どもが・・ ここで権藤がどう動くか。見せ場はそこである。 そして権藤が魅力的な男だと分かる。 (三船を黒澤さんが捕まえて離さないのも分かる) それから警察の捜査で話を見せていく。 犯人が絞られていくとこは圧巻である。 警察もまた、権藤の魅力に引っ張られてか、この犯人をただでは 捕まえないと、魅力的に描かれる。 犯人の山崎努。 この男は徹底して悪である。 2時間の映画なので、この犯人像を深堀り出来る余裕はなかったろう。 それでも十分、娯楽映画として完璧である。 黒澤さんの映画は、とにかく飽きさせない。 最後まであっという間である。 人間を描いてる映画ではないが、娯楽映画とは何かを考えさせられる。 [DVD(邦画)] 8点(2020-05-23 12:05:44) |
507. 愚行録
《ネタバレ》 「蜜蜂と遠雷」の監督作なので、観ました。 正直、驚きました。 どんな作品でも、シャープに創り上げられる監督なんですね。 「メッセージ」を創ったドゥニヴィルヌーブが「プリズナーズ」を創ったように・・ 複雑なサスペンスを見事に創りました。 理系出身の映画学校卒の期待の星です。 全く観たことない日本映画を創りそうな予感がします。 でも本作は、鑑賞後の後味の悪さにこの点数です。 [DVD(邦画)] 6点(2020-05-19 02:07:51) |
508. わが青春に悔なし
《ネタバレ》 黒澤監督は、原節子に容赦しないよね~。 小津さんみたいに大事に扱わない。 確かに戦争に負けたから、欧米の「自由」の種がこの国に植えられた。 だから当時の世相に逆らった主人公の彼の立ち位置も、映画の筋としては成り立つ。 (もちろん戦争は大反対。映画の筋だけ追った場合のはなし) だが、彼の姿勢は反対のための反対じゃなかったか? そこが彼と一緒になった原節子の情緒不安定さにつながる。 しかし、彼は急死した。 残された嫁の原節子は彼の信念と結婚したのだ。 それがあるから自分を支えることができたのだ。 黒澤監督がアメリカかぶれかもしれないという意見もある。 が、後の傑作が、やはり黒澤監督の偉大さを証明している。 万歳!黒澤さ~ん! [DVD(邦画)] 7点(2020-05-14 00:24:41) |
509. 野良犬(1949)
《ネタバレ》 イイですよね~ 新米刑事とベテラン刑事の仕事の違いで前半、観せるんですよね。 そして後半、一緒に犯人を追いつめていく。 ところが、ベテランの方が凶弾に倒れる。(亡くならないですけど・・) そして、新米刑事が自分の拳銃に最後、銃口を向けられる。 もうこんな筋書き、完璧すぎでしょ! 黒澤明は本当に凄すぎ! [DVD(邦画)] 9点(2020-05-10 23:37:40) |
510. ファンダンゴ
《ネタバレ》 最高! 映画ってこんなんだよなぁ・・ 言葉はいらないっていうか・・ 何度も観たいなぁ・・ でも何故だろう・・ケビンの哀しさにドロンがかぶって「冒険者たち」を思い出した。 それにしてもアメリカ人、大自然相手に遊び過ぎだぞ! [ビデオ(字幕)] 10点(2020-04-25 14:53:47)(良:1票) |
511. ミュージック・オブ・ハート
《ネタバレ》 皆言ってますけど、「天使にラブソング」のヴァイオリン版かと思いながら、 観てました。 どの頃からだろう・・もう泣けて泣けて・・ ラストの音楽家たちの友情にも泣けて・・ それにしてもメリルストリープがカーネギーに負けない貫禄だったなぁ・・ [ビデオ(字幕)] 7点(2020-04-25 11:51:55) |
512. アンセイン ~狂気の真実~
《ネタバレ》 手慣れたソダーバーグの演出により、主人公の性格が 難しい設定を、難なく裁いて、最後まで見せる。 サイコサスペンスですね。 ちゃんとサイコな悪役がいるので、分かりやすい話でした。 これが主人公も精神的に不安定なところを膨らまして、 サスペンスにせず、ヒューマンドラマにすれば、見応えが あったのではないでしょうか? ソダーバーグならできると思います。 映画会社の意向に従ううちに、こんなサイコサスペンスに なってしまったのかも、と思ってしまいました。 [DVD(字幕)] 7点(2020-04-19 20:53:06) |
513. イカリエ‐XB1
《ネタバレ》 チェコの映画。1963年の映画。 2001年(68)やソラリス(72)よりも前である。 スタートレックのヒントになった映画でもある。 チェコの国立映画学校出身の人材が60年代より活躍はじめる。 チェコヌーヴェルバーグである。 この映画もそのひとつである。 ストーリーは宇宙に人類以外の生命体があり、ダークスターやなぞの星雲の 宇宙の未知の脅威より、イカリエを救ってくれることで、新たな生命体との 遭遇を果たすという話である。 最後のその生命体の惑星の都市は、まるで広島の焼け跡のようであったことは、 僕の考えすぎか・・ [DVD(字幕)] 7点(2020-04-19 20:51:17) |
514. 鈴木家の嘘
《ネタバレ》 自殺の核心にせまる映画ではない。 一人のひきこもり青年が、風俗で知り合った女性に悩み、 結果、自殺したことに、その家の家族の取り乱しぶりが 描かれる。とってもヒューマンな映画だ。 悲劇から始まり、笑いもいれて、とても完成度の高い映画だ。 これは人間は想像を絶する悲しみに遭遇すると、 心が凍り、本当のことを話せなくなるという寓話でもある。 家族全員、嘘をつく。 一番嘘をついていたのは、原日出子で、自分に嘘をついて、 記憶がなくなったとこだ。 映画後半は、涙がとまらなかった。 この涙はなんだろう? 家族の絆がたしかにある家の、最後の踏ん張りのようであったからか? 好きな場面は、岸部一徳の風俗店へのなぐりこみ、そして悪態をつく 風俗店の人がちゃんとイブちゃんの居場所を知らせてくれるという 人間のこころが感じられたところだ。 とても見応えある作品だった。 [DVD(邦画)] 8点(2020-04-19 20:45:57)(良:1票) |
515. COLD WAR あの歌、2つの心
《ネタバレ》 愛にしか生きられなかった歌手の女性。 しかし戦争は彼女の愛した男のアイデンティティを壊してしまう。 彼はポーランドからフランスへと亡命したのだ。 そして彼は自分を見失う。 そんな彼に彼女も自分を見失う。 ラスト、二人は「永遠の愛」をよりどころに自死する。 この映画は愛の賛歌ではない。 戦争が生んだ絶望だ。 [DVD(字幕)] 7点(2020-04-11 23:07:33) |
516. 蜜蜂と遠雷
《ネタバレ》 面白かった! どこまでもどこまでもエッジの効いてる天才たちに 生活者の音楽が敗れたのが悔しかった。 でも彼らの音楽は鳥肌が立つ。 う~む、俺もオーケストラの生演奏でも聴きに行ってみようかな♪ [DVD(邦画)] 9点(2020-04-10 01:05:48) |
517. 早春(1956)
《ネタバレ》 東京物語の後に創られた名場面が多い本編。 甘えた声の金魚が岸恵子だというのに驚き。 不倫をテーマにさらりと描いてみせる小津監督。 コメディ風ホームドラマを撮るイメージがあるが、 結構、当時の社会問題にきりこんでいくんだね。 でも小津監督だから、ドロドロしない。 [ビデオ(邦画)] 7点(2020-04-06 09:50:47) |
518. 眠る男
《ネタバレ》 これは「魂」について描いた映画だと思う。 体の不調ではなく、寝たきりの人間がふっと魂が抜けて、あの世に行く。 それがこの映画のクライマックスだ。 荼毘にふされた後、村で能が演じられる。 能は現実と幻想のやりとりを演じたもので、 死の世界から現世へと語りかけてくるのが特徴とこの映画で言っている。 眠っている時間、風呂に入ってボ~としてる時間、それらは魂はどこにいるのか? 島を訪れた女性に、島の人間が思いを寄せたら、その女性は島から抜け出せなくなるのは何故か? 魂の問題がポツポツと語られる。 ネット万能の現代でも、魂は科学ではよく分かってない。 力まない映画で「魂」を語っているのが鬼才小栗康平のなせる技であろう。 [ビデオ(邦画)] 7点(2020-04-05 18:15:32) |
519. 廃市
《ネタバレ》 大林監督が、日本を舞台にして、あの名作「旅情」に挑む。 向こうがベニスなら、こっちは柳川だ! まさに甲乙つけがたい決闘であった。 どっちの作品も良い。 ささやかな心の交流を大事にする日本的な心情。 それが姉夫婦のズレに響くとき、東京からお坊ちゃんがやってくる。 柳川の堀の水の音の中、女性の泣く声。 果たしてあのすすり泣きは誰であったか? サスペンス的に話を引っ張る大林監督の話術の見事さ。 夏の終わりとともに思い出は消え・・なかったんですねぇ(笑) 最後の船頭の尾身くんの一言で、廃市はまた新たな活力を引き寄せることになるのです。 素晴らしい!傑作! [ビデオ(邦画)] 8点(2020-04-04 23:12:51) |
520. 続・忍びの者
《ネタバレ》 光秀の信長への謀反は、信長が憎い伊賀の忍者が 後ろで画策していた、という流れは面白い。 ゴエモンとマキのラブストーリーが縦軸で、歴史の大事件が横軸な形であるが、 雑賀衆が石田三成に敗れて、マキが死んでから後は、ドラマとしては落ち着かない。 がしかし、非常に歴史好きにはてんこ盛りの内容のようで、雑賀衆の鉄砲隊など勉強になる。 家康側についた忍者、霧隠才蔵が要所要所で顔を出し、 もう既にシリーズ化への準備が始まっている。 さぁ、ゴエモンの釜茹でに向かう場面で終わるのだが、これからどう 第3作へと続くのか、興味深い。 [ビデオ(邦画)] 7点(2020-03-29 20:32:11) |