561. 血を吸う粘土
《ネタバレ》 著名な特殊メイクアーティストが監督・脚本を務めたホラー映画である。主要キャストとして、講談社主催「ミスiD2017」のグランプリと受賞者の計4人が出ているのでアイドルホラーとしての性質もあったらしく、うち藤田恵名という人は主題歌「私だけがいない世界」も歌っている。ほか講師役の女優と監督は夫婦とのことである。 見た感じでは、いま映っているものが何を表現しているのかよくわからないところが多く、また一つの場面がしつこく続き、その間の一本調子の悲鳴がやかましい。全体構成としても何回危機を繰り返せば気が済むのかという感じで(早く家を出ろ)、やっとここまで来たかと思ったらまだ10分も残っていると思うところもあったが、まあ最後の展開を見ればそういうことかとは思った。ドラマ的には登場人物の悲痛な思いが表現された場面もあったが、残念ながら自分としてはそれほど同調できなかった。 なお何で粘土ホラーなのかは不明だが、監督がやりたかったからというのなら別に言うことはない。人の顔をちぎって潰すとか、粘土化した人物の顔を直接バーナーで乾燥させたりするのは素材を生かした趣向かも知れない。また終盤でクレイアニメーションを使うとか、土人形がハロウィンのように見えるところもあった。 ところで劇中の学校は美術大学向けの予備校という設定だったようで、その背景に監督の怨念があるというのはわかったが(本人が言っている)、どうも劇中人物がトーキョーにこだわる理由が不明で、行きたければ行けばいいだろうがとしか思えない。監督の出身地とされている神奈川県藤沢市は、本物の地方人の立場からすればほとんど東京も同然であり(首都圏という意味で)、誰の思いを代弁しているのかわからなかったが、ただもしかすると本物の地方人というよりは、首都圏の周縁部から都心部を眺めているイメージなのかという気もした。ラストの遠望ではそういう劇中世界が端的に表現されていたようでもあり、いまだに東京のシンボルが東京タワー?というのは古風な世界観だが、これは奥多摩から上京して東京タワーを目指した「モスラ」(1961)の再現を意図したものかも知れない。最後は土人形というよりイモムシ+「デビルマン」の某キャラクターのようなものになっていたようである。 以上のようなことで、独創的というか独特なところが多いが、絶賛ともいかないのでそれなりの点数にしておく。 [DVD(邦画)] 5点(2018-09-01 16:26:47) |
562. ブリード 血を吸う子供<OV>
《ネタバレ》 SFホラーとでもいうべきものだろうが、ジャンルとしてはそうだろうというだけで、これがSFといえるわけではない(科学的な説明はない)。またホラーというのが怖いものでなければならないとすればホラーでもない。 基本設定としては「光る眼」のような感じで、違うのは明らかに地球人の仕業だということと、「子供」が吸血鬼の性質を持っていることだが、しかし何で吸血鬼でなければならないと制作側が思ったかは不明である(本当は「スペースバンパイア」(1985)のようなのがやりたかったのか)。またそこに、当時まだ本気にされていたのか「百匹目の猿」も絡めているが、これがストーリーの本質に関わるものとも思われず、単にたまたま知っていたことを盛り込んだだけのようでもある。 物語的にも特に心を動かされるものはなく、これからもまた同じことが繰り返されるというオチだったのかも知れないが、それで戦慄とか悲哀とか何かを感じるわけでもない。最後になぜか尻を出して素っ裸で走って行ったのがいたが、こういうのを見せられてこれはどういう意味かと真面目に考える人間など日本国民の何%いると思うのか。どうも小理屈と技術だけで作って志も心もない製作物という印象だった。 なお唯一よかった点としては、川上麻衣子という人の頬がふっくらして、この時点でもかわいく見えることだった(顔つき自体は今も同じだろうが)。 [DVD(邦画)] 2点(2018-09-01 16:26:44) |
563. 血を吸うカメラ
《ネタバレ》 最初の街娼が2ポンドで、次の卑猥な写真が4ポンド10(シリング)だったのは、生の実物よりも映像化した方が商品価値が上がるという意味に取れなくはない(素材の質や感染症のリスクは関係するだろうが)。またグラビアのモデルが殴られた跡を消してくれと頼んでいたことからしても、序盤では写真(や映画)の特性や効用を表現しようとしていたように見える。 また劇中映画の現場では、コメディがなければと劇中監督が宣言した後、実際にかなり笑わせる出来事が頻発する(さりげなく持つ、主演女優が逃げた、あれは監督だ)。序盤で出ていた映画会社の社長?の言動も含め、何か映画というものを茶化してみせていたかのようでもあるが、そういったことがどのように全体のテーマに関わっていたのかはわからなかった。 最終的に本筋だったのは、幼少時の心の傷が原因で異常な性的嗜好を持ってしまった男の話だったらしい。その話題自体は現在では珍しいともいえないが、しかしこの映画ではヒロインが最後まで主人公に対する好意を失わなかったのがかなり都合のいい設定に思われる(母性本能をくすぐる男だったのか)。またヒロインの母親までが主人公に更生の機会を与え、それで本人も一度はその気になっていたというのは、基本的なところで人の本性が善なることを信頼した映画に見えた。この映画は公開当時、メディアから袋叩きにされて「映画界の恥」とか言われたそうだが、これほど良心的な映画にそう言うのであれば、大衆の欲求通りに俗悪映画を作って恥じない現代の映画業界など廃絶せよと言わなければならなくなる。 ちなみに主人公が熱意をもって取り組んでいた映像作品に関しては、なるほど殺人事件をドキュメンタリーとして撮ったものはなかっただろうとは思ったが、これが今後の新たな可能性を示したものとして捉えることもできない(関係者インタビューでは単純に「スナッフフィルム」と言っていた)。いろいろ思うところはないでもなかったが、結局全貌が見えた気がしないままで終わる映画だった。 ほかキャストに関して、主演のカールハインツ・ベームは有名な指揮者のカール・ベームの実子だそうで、劇中の姿だけではわからなかったが、関係者インタビューで2005年当時の顔を見るとなるほど雰囲気は似ているかとは思った。またヒロイン役の人は美形とは全くいえない容貌だが、なかなか愛嬌のある女優さんで好きになった。 [DVD(字幕)] 5点(2018-09-01 16:26:41) |
564. 血を吸う薔薇
《ネタバレ》 少し間が開いているが、「血を吸う人形」(1970)と「血を吸う眼」(1971)に続くシリーズ第3作である。 今回の吸血鬼は前回のように家系に受け継がれるものでなく、「不死身の魔性の者」が約200年前(江戸時代)から時代を越えて生き続けてきたようで、小説のドラキュラに近いイメージになっている。ただし同じ外見でいると怪しまれるからか、別人の顔の皮を自分の顔に張り付けて姿を変えていくということらしい(わかりにくいが)。フランス文学の男もそういうことを言っていたが、もう少しスマートにできなかったかとは思う。 また前回同様に、日本で本物の吸血鬼を出すからには外人が発端でなければと思ったようで、台詞では「この先の漁港」に外人が漂着したと言っていた。しかし冒頭で出た駅が国鉄(当時)小海線の甲斐小泉駅で、学園の住所が長野県で、背景に八ヶ岳(多分)が見えている場所でさすがに漁港はないだろうと思った。 なお今回の顕著な特徴として、血を吸うときに毎度オッパイにかみつくというのは許しがたい習性である。全裸にされてしまう人もいたりして、今回はエロさが売りになっていたらしい。成人男子がそれ目当てで見るほどではないが小学生には見せられない。 物語としては寮付きの女子短期大学が舞台で、序盤で女子学生3人がテニスをしていたりしてそれなりのキャピキャピ感(※まだ死語ではない)を出している。しかし単なる賑やかしで出ていたわけでもなく、この中から後に正統派ヒロインと邪悪なヒロインが出るので重要人物ということになる。3人の中で、外見的に好きなタイプの人が邪悪な方に転じてしまうのは残念だった。 今回は地元の伝承という形で吸血鬼の誕生哀話が語られるなどの趣向もあり、途中まではそれなりに面白く見ていられたが、役割のよくわからない登場人物が多いなど納得のいかない点も結構ある。シリーズ恒例になった医師(演・田中邦衛)は、全体の擬洋風で世間離れした雰囲気を和風居酒屋などで中和していると思ったが、途中でいなくなってしまったのが拍子抜けだった。 ほか特に終盤の展開がかなりしつこく感じられ、日本を代表する吸血鬼役者の演技も、今回早くもマンネリ化したように思われた。最終的にはそれほど大満足ということもなく終わったのは残念だったかも知れない。 [DVD(邦画)] 5点(2018-08-25 17:22:26) |
565. 呪いの館 血を吸う眼
《ネタバレ》 「血を吸う人形」(1970)に続くシリーズ第2作である。個人的な記憶として、この映画が地元で上映されていたときに街中にあった立て看板を見て怖くなり、それ以来、この題名と岸田森氏の顔が忘れられなくなってしまったことがある。その時は当然見なかったが、その後のDVDの普及のおかげで、耐性ができてからの状態で見られたのは幸いだった。ちなみにDVDで予告編を見ていたら最後に「お待ちしています」とキャプションが出たのは笑った(行きたくない)。 内容としては第1作より本格的な吸血鬼映画になっており、最初に棺が送られて来たのがいかにもそれらしい。終盤で主人公男女が能登半島に出かけたのは小説「吸血鬼ドラキュラ」を真似たもののようで、つまり能登は日本のトランシルバニアということになる。東欧の伝承にある吸血鬼なら、家系に伝わるというより何らかの条件に合った個人が死後になるものだろうが、この映画では家系という要因と、死んでから蘇るという特性を組み合わせた形にしてある。また日本に西洋風の吸血鬼が出る理由に関しては、要は日本在住の外国人だったという適当な理由付けでごまかしている。 吸血鬼が好色というのは普通のことだろうが、この映画では何と5歳の少女に目をつけて、年頃になるまで待つならまだしも(それも執念深いが)5歳のままで「花嫁」というのがとんでもない幼女趣味で、こんなケダモノは早目に滅ぼしておかなければ駄目だと思わされる。この吸血鬼がクールな容貌ながら、終盤でステンドグラスか何かを破って出て来たところとか、断末魔のわめき声はものすごい迫力で唖然としてしまった。ここはさすがの岸田森氏といったところである。 そのほか姉妹間の確執を絡めたのは物語に一定の深みを加えており、またその姉妹の間で翻弄されそうな位置にいる男が極めて理性的で、一貫して恋人たる姉の方を信頼しているのは頼もしく見えた。この男が医師であり、ヒロインとともに吸血鬼退治に尽力する役割だったのも基本を押さえている。また鏡に写らなかったので気づいたのでなく鏡に写らなかったので気づかなかったとか、死んでいた男の手が机に張り付いていて半端に剥がれたといった細かい見どころもあった。 ちなみに劇中の台詞で、戦後にイギリスで吸血鬼が処刑されたと言っていたのはロンドンの吸血鬼として知られた事件だろうが、これは吸血鬼だから処刑されたのではなく、連続殺人犯だったから普通に死刑になっただけのようである。 [DVD(邦画)] 6点(2018-08-25 17:22:23) |
566. 幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形
《ネタバレ》 東宝の「血を吸う」シリーズの第1作である。この後、「血を吸う眼」(1971)、「血を吸う薔薇」(1974)と第3作まで続く。 古めかしい洋館に吸血鬼のようなものが出る古風な怪奇映画だが、吸血鬼映画のようでいて本物の吸血鬼は出て来ない。本来、吸血鬼というのは土葬が主流の欧米でこそ成り立つ話だろうが、この映画でもその点はわかった上で適当な理屈で埋めたことにしている。また最後はキリスト教に頼らないで滅ぼすためにどうするか考えたとのことで、結果的にはかなり無理のある展開になってしまっているが、日本で吸血鬼映画をやろうとするといろいろ困難が生じることはわかる。結局は吸血鬼でも何でもなくなっているが、腐敗なし、吸血なしの“不死者”の状態ではある。 ちなみに中盤で出た医師は、役者が特撮TV番組「ミラーマン」(1971-72)の博士役と同じだったこともあり、この人物がヴァン・ヘルシング教授の役どころなのかと期待したがそうでもなかった。しかし第2作、第3作でも医師が出るので、吸血鬼映画には医師の登場が必須と思われていたのかも知れない。 内容は、大人が見れば当然それほど怖いものではなく、中盤で役場職員が昔語りをしたところとか、終盤でヒロインが怯えてドタバタするなど笑わせるところもある。しかしクライマックスで相手が一瞬で距離をつめて来た場面は、劇場で見ればかなりドッキリだったろうと想像される。ここで衣服が切れていたのは芸が細かい。そのほか中盤で出ていた南方で死んだ兵隊の話は、本当に出征した誰か(この映画の関係者など)の体験談だったかのように聞こえて、かえってこういうのは少し背筋が寒かった。 またこの映画で注目されるのは女優陣である。松尾嘉代という人の若い頃(当時26~27歳くらいか)の姿は記憶になかったが、この映画を見るとかなり愛嬌のある人で、びっくりした顔など表情の変化に目を引かれるほか、当時の流行だろうがミニスカートだったのが何気に色っぽい。また小林夕岐子さんは意外に出番が少なかったが、美貌の吸血鬼顔に凄味があり、題名の「人形」とは主にこの人の容貌の形容と解される。ご本人もぜひやりたいとの意向だったと聞けば他人事ながら嬉しくなる(DVDのコメンタリーでも出演)。その母親役の女優(南風洋子)も、艶消ししたようでいながらそこはかとない色気を見せていた。 [DVD(邦画)] 5点(2018-08-25 17:22:20) |
567. 人狼ゲーム インフェルノ
《ネタバレ》 連続TVドラマに続く劇場版だが、ドラマ版を見てからの間に早くも忘れてしまい、武田玲奈さんと上野優華さん以外は誰が誰だかわからなくなっている。恒例の自己紹介もないためわかりにくいが、少しずつおさらいをするので一応思い出す。 話としては前回の続きだが、やはり高校の同じクラスから欠員補充したため学校から持ち込まれた対立関係ばかりが目立ち、純粋な生き残りゲームとしての性格は薄れているように見える。しかし逆にその学校からの対立を軸にして、人狼ゲームの場で展開する愛憎ドラマと思うこともできなくはなく、結果として、ミステリー調だったTV版よりも人間ドラマとしての充実感は出ていたかも知れない。 主人公は真面目な人なので今回また誰も死なない方法を提案し、一度は成功したようだがあとには続かず、結局主人公の学級委員長的正義は通用しない世界になっている。半端な友情を切り捨ててからもあくまで正しさを志向していたようだが、あまりに理不尽に正義を否定された腹いせからか「私情」を目の敵にし始めたようにも見える。最後の判断など別にそうでなくてもよかったはずで、ここはどうやら私情絶対主義へのダメージを優先したらしい。映画のキャッチコピーは「勝者こそ正義。」なので結論としてはそうなのだろうが、しかし自分の立場としては、“カワイイは正義”と同レベルで武田玲奈さんは正義と思って主人公の行動を支持していたので(私情だが)、もしそういう人物が劇中にいたら主人公はどうなっていたかということは思った。 ほか警察側のドラマはほとんど進展しておらず、一方で以前使った施設に警察が入ったことで、かつて古畑星夏さんが上って行った階段も(「ラヴァーズ」ラスト)もう使えないことになってしまった。今後どうするかは原作者を含めて検討しているのだろうが、続けるのなら運営側の男が無惨に滅びるタイプの結末を用意しておいてもらわないと納得できない(「何人殺してきたと思ってんの!」が本来の正義)。 なおキャストとしては今回も最初から最後まで武田玲奈さんが見どころで、また上野優華さんも相変わらずの役どころだったが、小倉優香・都丸紗也華の両人も別映画で見ていたことに今回は気付いた(千里山女子の部長/イースターバニー)。どうもこの手の映画ばかり見ていると覚える若手女子の数が増えて来る。皆さん悲鳴がリアルだった。 [DVD(邦画)] 6点(2018-08-19 09:29:13) |
568. 映画 「咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A」
《ネタバレ》 マンガもアニメも見たことがなく麻雀も知らないままで本編劇場版に続いて見た。本編と同じくアニメ版あっての実写化ながら、もとからのファンに叩かれていないらしいのはうまく作ってあるのだろうと思われる。 今回は、主演の人さえ知らないからには他の誰も知らないだろうと思っていたらそうでもなく、奈良の部長でもっさりして一番可愛くない人物が「女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。」(2015)の「美少女」の人だったのは意外だった。また福岡の先鋒は「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(2015)でシロニンジャーをやっていた矢野優花という人だが、今回はかなりくせのある人物役で同じ人には全く見えず、こういう人々は出ている場所で違う顔を見せるのだということを思い知らされた。当然だが。 そのほか恒松祐里さんは当然知っており、今回はずいぶん可愛い役をやっている。しかし西東京のエースは、顔は妹に似ているが全く可愛げのない人物のため存在意義が感じられない。本編の登場人物としてはその妹も一瞬出ていたようだが、個人的には鶴賀学園の大将とステルスモモが顔見せしていたのが嬉しい。清澄のおっぱいさんがわざと胸を目立たせる場面があったりもした。 内容としては原作またはアニメ準拠なのかも知れないが、今回は登場人物がわりと普通の女子高生に見えなくもなく、かえって長野県がいかに変人ばかりだったかと思わされる。しかしやはり個性的な人物が目立っており、特に北大阪はボーイッシュなのとかおばさんっぽいのとかいろいろで面白い。また特殊能力のある人々も多いようで、そんなオカルトありえませんというのが原則通用しない世界だったようだが、映像面でアクセントをつけるのには役立っている。ほか奈良は別として、福岡と大阪は方言にこだわりがあったらしいのが印象的だった。 準決勝では先鋒戦に力が入っており、やっていることはよくわからないながらもとにかく感動的だというのはわからせられる。また大将戦では膝枕エピソードが効いていて、どうせ最後は西東京が勝って長野と姉妹決戦だろうとは思うわけだが、北大阪や福岡にも負けさせたくない思いは募った(主に両校の先鋒の印象から)。 こういうサイドストーリーを発展させるタイプのコンテンツを見ると、実際の競技の世界でも、勝敗の別なくそれぞれのチームにそれぞれのドラマがあることを改めて知らされる気がして悪くないと思った。 [追記]見てから少し経った時点で一番心に残っているのは花田煌という人物だった。こいつはえらい。 [2018/10/7追記]主演の桜田ひよりという人は知らなかったが、美少女タレントでもアイドルでもなく子役時代から演技の実績のある人だったらしい。知らなくて失礼しました。 [2018/12/23追記]エンディング後の追加場面は、最後に改めて全ての発端の時点(5年前)まで遡ってみせたものらしい。TVドラマ版にもない場面なのでなかなか感慨深い。 [DVD(邦画)] 7点(2018-08-19 09:29:10) |
569. 68歳の新入社員<TVM>
《ネタバレ》 2018/6/18にフジテレビ系で放送されたTVドラマである。「68歳の新入社員」が40歳年下の女性の上司を助けて働く話で、オリジナル脚本とのことだが2015年のアメリカ映画との類似性が指摘されている。 題名の割に、どちらかというと若い女性の活躍を応援する方に重点が置かれているようで、パートナーの性格付けなどいかにもな感じである。部下を侮辱されるのが許せないのは人として悪くないが、その割に、明らかに年上の部下に対して敬語を使わず呼び捨てにまでしていたのは気に入らない。まるで学生感覚か体育会系かという印象だったが、若いとかえってこうなるというつもりだったのか。 一方の新入社員は、会社に戻ってみると極めて常識的な組織人だったのが拍子抜けだった。死ぬまで働けという最近の風潮に乗せられた形だが、結局は仕事するしか能のない人間で終わったらしく、昔よく言われた“亭主元気で留守がいい”という感じなのも進歩がないが、この世代がそうだということならまあ仕方ない。過去にこだわることなく柔軟な姿勢で人の役に立とうとすること自体は悪くない。 ストーリーとしては当然ハッピーエンドだが、“転”のところで社内の嫌がらせを極端なほどエスカレートさせておいて、最後は結局“ほんとはみんないい人”パターンに持ち込んだのは面白くない。例えば今回は「引き分け上等」にして、これからも戦いは続くという方が個人的には好きだが、単発のTVドラマであればこういう締め方が正解なのかも知れない。ただ最後まで見ていて主人公の人格設定とか話し方とか顔とかが嫌になって来たのと、新入社員の妻がいちいち全部口に出して解説するのがやかましく、基本的にTVドラマというのが自分には向いてないのかという気はした。 なおキャストとしては、金澤美穂さんは出番が少ないがショートヘアがかわいく見えて大変よかった。また今でいえば超イケメン俳優だった草刈正雄氏が年齢なりの人物を演じているのはさすがである。 [DVD(邦画)] 5点(2018-08-15 23:46:01) |
570. ソ満国境 15歳の夏
《ネタバレ》 「文部科学省選定 少年向き」とのことで大変ご立派な映画らしい。これは平成27年6月に、文部科学省の「教育映像等審査制度」によって「教育上価値が高く、学校教育又は社会教育に広く利用されることが適当と認められるもの」として選定されたという意味であり、「少年向き」とはあるが男女兼用と思っておく(当然だ)。公開は2015年(H27)8月1日だが撮影は2012年11月とのことで、中学生役のうち最年長の金澤美穂さんは満18歳、最年少の清水尋也は満13歳ということになる。ちなみにその清水尋也の実兄の清水尚弥も新京の中学生役で(哀れっぽい感じで)出ている。 まず題名の出来事は同名の原作本(劇中に実物が出ている)に基づくものであり、脚色はあるにしてもこの通りに受け取るべきものと思われる。文部科学省がこれを「選定」したのは懺悔なのか、あるいは陸軍のせいだから関係ないと思っているのか。原作者は主に官僚の無責任体質に批判的だったようで、正すべきところは正していくのは当然である。 また劇中の満州パートでは、昔の素朴な日中友好・熱烈歓迎の時代を懐かしむような雰囲気があり、現地ガイド役の青年の善人顔などはいかにもそれらしい。日本と他国の関係(日中・日朝)に関して両論併記的に語っているところがあったのは、両者の間に立って融和を図る意図だったかも知れない。また民族に関係なく、いいことも悪いことも含めて「人間とはそういうもの」というのは妥当な認識だろうとは思う。 終盤に至るとなぜか原発災害の話題に移行するが、これを満州の出来事と関連付けて語るのには無理を感じる。確かに状況は似ており、当事者の立場として無責任だと言いたくなるのも同じだろうが、さすがに昔の軍隊と同じことを原発事故当時の政府が(今はなき民主党政権だが)意図的にやっていたとまでは思われず、何を問題にすべきかという点でずれがある。また故郷の喪失という点も共通ということらしいが、原発事故がなければよかったというのはその通りとして、戦争に負けなければ満州国も存続して日本人も住んでいられたはずと言いたいのか(または、そのように受け取られてもいいのか)。どうも気分的に言いくるめようとしているだけのようで気に入らない。 まあ文科省選定の教育映画でもあり、今の中学生に自分自身で考えてもらいたいというのが本来の趣旨だろうとは思うが、この映画のどこが変かを考えない限りは単純な「戦争ダメ」「原発ダメ」以上のものは出て来そうになく、要はそういう教育映画なのだろうと思うしかない。さらに最後に出ていた結婚の話はやりすぎで、これでいったい何を考えろというのかわからない。全国の少年少女はともかく当事者の身になれば、せいぜい台詞にあった「今からわかんない」という話にしかならないだろうが、そこをわざわざ指摘してみせるのは、それこそ言うだけ言って終わりの無責任体質に見える。 なお余談として、かつて満州に住んでいた身内にこの映画を見せたところ、“甘っちょろいが中学生向け映画なら仕方ない”とのことだった。実体験もないのに何を偉そうに言うかという気はするが、日頃からこの問題に関心のある人間の率直な感想としてはそうだったということである。あまり見せた甲斐はないようだった。 [DVD(邦画)] 5点(2018-08-15 23:45:58) |
571. 恋につきもの
《ネタバレ》 東京芸大大学院映像研究科の卒業制作とのことで、監督3人が同じ作家のマンガを原作にしたオムニバスになっている。以下[ ]内は点数。 「いばらのばら」 もう少しまともに作ってもらいたい。石はもっとキラキラしていなければならないだろうし紙袋も唐突で、映像に出しておきながら意味不明のまま放置というのは最悪だ。見ている間じゅう原作はどうなっているのか気になって仕方なかった。最後に出たのはサボテンの花か(題名からすると違うだろうが)。[2] 「豆腐の家」 中盤まではかなり怖かったが種明かししてから少し気が抜けた。しかし最後まで少し心に痛みが残る(やはりちゃんと食べた方がいい)。勤め先の対応が良心的なので安心したが、これで本人も若干前に進むことができたと思っていいのかどうか。なお主演女優(谷口蘭)はモデルが本業だそうだがかなりいい雰囲気で、特に泣き声が印象的だった。[6] 「恋につきもの」 心霊ラブストーリー。主演女優(趣里)は水谷豊・伊藤蘭夫妻の娘とのことで個性的な風貌に目を引かれる。この人をずっと見ていたかったが途中であまり顔が出なくなるのは残念だ(男の役者が代わる)。話としては最もストレートで娯楽性が高いが、最後の一言はわざわざ言うほどのことかという感じだった。[6] 以上、最初のだけは呆れたがほかは見られるものになっており、映画独自の雰囲気も出している。(性的な)マイノリティというところが共通のようで、その点で共感できるところはあまりないが、共感できなければ見られないということもない。なお「絶叫学級」(2013)で印象に残る松本花奈という人が出ているが、この映画ではどちらかというと普通に(普通でない)美少女に見える。そのほか最近有名な伊藤沙莉という人も出ているが役として面白くない(前記)。 [DVD(邦画)] 5点(2018-08-11 17:12:38) |
572. 恋谷橋
《ネタバレ》 鳥取県の三朝(みささ)温泉のご当地映画である。島根県の映画は見たことがあるが鳥取県のは初めて見た(というのは間違いで「妖怪大戦争」(2005)は見たことがある)。 題名を見ただけだと「恋空」(2007)とか「君の名は」(1953)とか演歌のカラオケ映像とかを思わせて引いてしまうが、これは現地に実際にある橋だそうで仕方ない。その恋谷橋も映っていなくはないようだが、一番出るのは主人公の実家と温泉本通りの間を結ぶ「三朝橋」で、次が足湯のある「かじか橋」なので題名とはずれがある。 映像的には結構風情があって賑わいもある温泉街のように映っており、ご当地映画らしく見所とか名物も積極的に紹介しているようだが(なぜか「ヌード」が目立つ)、足湯などはいいとして、ちょっとそこまでという感じでいきなり砂丘というのは行きすぎだったかも知れない。なお「山陰KAMIあかり」というのは隣の倉吉市で実際にやっているイベントのようで、劇中でも因州和紙というのが出ていたのでここは因幡でなく伯耆ではないかと思ったが、その点は地元でもあまりこだわりはないらしい。 物語としてはいわゆるメロドラマでもなくさらりとした感じにできており、地方の若い人々に対して一度出てからまた戻れというような、現代の情勢からしてあまり無理のない話になっている(出る気がなくても無理に出していた)。町のためにではなく「自分のために」と言っていたのも人間の行動原理の基本を押さえている。 少し気に入らなかったのは、せっかく若い連中が始めたイベントを喧嘩でぶち壊しにしてしまったことである。その後のストーリー展開につながるのはわかるにしても、見る側としては初回のイベントなので成功してもらいたい/一般のお客を落胆させたくない、という思いがあったわけで、ここは観客の気持ちを無視して制作上の都合を通してしまったように見える(一応のフォローはしていたようだが)。 もう一つ、これは絶対悪いといえるかわからないが、「河原風呂」という周囲から丸見えのような感じの露天風呂で、真昼間に女児と男児が素っ裸で入浴(混浴)している場面があり、子どもとはいえ今どきこんな撮影をしていいのかと動揺してしまって、その場面で出た開湯の由来譚が頭に入らなかった。見ている側が気にしなければそれまでだろうが。 だいたい以上のような感想だが、特に主演女優に思い入れがあるわけでもないので点数はほどほどにしておく。 [DVD(邦画)] 4点(2018-08-11 17:12:36) |
573. チェリーボーイズ
《ネタバレ》 同名マンガの映画化とのことだが読んだことはない。内容は題名の通りで、中高生ならまだしも25歳というのが共感の条件をかなり外している。 登場人物を見て笑う映画のようだが自分としてはバカな連中の出る映画が嫌いなので可笑しくもなく、何でこんなのを見てしまったかと後悔しながら耐えていた。最初に笑ったのは全体の2/3くらいのところで、パチンコ店女子従業員の表情をあまりにじっくり見せられたのでちょっと吹き出してしまった(こんなに可愛いのにこれまで何もなかったわけがない)。また終盤で見せた池田エライザ嬢の呆れ顔も可笑しかったので、女優の顔を見ている方が面白いのかと思ったが、最後のオチがあまりに馬鹿馬鹿しいのでついに笑わされてしまった。 男はみな一様にバカなのかと思えば実際は三者三様で、うち2人は酒屋の男に最後まで付き合う動機はなかったはずだが、それでもついて行ってやったのは友情の証とでも思うしかない。ラストはわずかな前進を見せて終わったようでもあり、それでよくやった、頑張れと言ってやりたくなったわけでもないが、まあ結果的にはそれなりの物語ができていたようではある。自分としては「映画 みんな!エスパーだよ!」(2015)とどっちがマシかと比べてしまったが、大して変わらなかったということで点数は同じにしておく。主要キャストの役者ぶりには感動した。 ※なお「強制性交等」は犯罪です(刑法第177条)。未遂も罰せられます(同第180条)。劇中の公務員は懲戒免職になります。 [DVD(邦画)] 5点(2018-08-04 13:57:01) |
574. 舟を編む
《ネタバレ》 何となくいい映画のように見えるが不満な点も多い。 基本的には不器用すぎて生きづらい人生になりそうだった主人公が、幸運なめぐり合わせと相応の自己変革を経て、社会生活と私生活で自分の居場所と役割を固めていった話と取れる。まことに都合のいい話で羨ましい。 社会生活の面では、主人公が特に見込まれて自分の特性に合った仕事につくことができ、またその仕事を通じた能力開発が促された上での成功だったようである。何十年も同じ仕事で済むなら幸せだろうが、しかしその仕事がまるで周囲に偏見を持たれるもののように描写されていたのは共感を削ぐところがある。この映画では年代を1995年(Windows95の発売の年?)から2010年までと特定し、その間の情報化の進展を背景にした物語にしていたようだが、それなら最後は主人公が自らデジタル辞書(大辞林web版のような)を提案するくらいの発展性は見せてもらいたかった。それでこそ当初からの「今を生きる辞書」の実現になり、同時に昔ながらの古臭い仕事という印象の払拭にもつながったと思われる。 また私生活の面では、男女の役割や関係の変化を背景に、主人公の特性に合った配偶者が得られたことが語られていたように見えなくもない。しかし前半の展開が都合良すぎなのはまあいいとして、結局最後まで話が深まらなかったようで印象に残らない。そもそも主人公のような変人が宮崎あおい級のカワイイ系女子と一緒になるのなら、女子の方もよほど個性的なところを見せておかなければ釣り合いが取れないわけで、今どき単に板前志望の女性というだけでは弱い。また終盤に至っても、パートナーがわざわざ作ってくれた雑煮を食わないで放置していたというのは最悪だ。互いの仕事を尊重し合う関係はできていたのかも知れないが、最低限の思いやりも返せないのではいつ破綻するかと気が気でなかった。逆に最後を「面白い」で済ませたのが安易に思われる。 なお映画の後に原作も読んだが、それほど妙な改変もなく誠実に映画化しようとしたらしいことはわかる。ただ「迎えにきてくれたんだ」のところは、原作では言われた方がキュンとする感じだったが、映画では印象が弱まっていて残念だった。映画独自のよかった点として、手紙が読めないといって本気で怒っていた様子は好きだ。また辞書編集部OBが書いた「ダサい」の用例が、まさに「今を生きる」表現だったことを如実に示した台詞があったのは面白かった。 [DVD(邦画)] 6点(2018-08-04 13:56:58) |
575. 劇場版コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-
《ネタバレ》 日頃TVを見ないので知らなかったが、3シーズン10年にわたるTVドラマの劇場版ということである。 一見の客として見たところでは、TVドラマっぽい出演者が忙しく立ち回って飽きさせない作りになっている。本筋に関わる話としては主に医師と看護師の結婚話、及び外国へ派遣されるのが誰かの2つで、あとはゲスト出演者や出動場面に起因するエピソードが5個くらい入っている。本筋ドラマが個別エピソードに影響を及ぼしたり、個別エピソードが主要人物の心を変えたりして関連付けができており、またTVドラマ風ではあるが各種の感動場面もある。最後はこの場を去っていった人々も、救急医療で経験を積んだことが別の場所(外科、産婦人科)で生かされたということらしい。 個別エピソードのうち、序盤から衝撃的だったのががん患者の話で、肌は結構若々しく見えるのに突然大吐血したりするのが非常に痛々しい。また11歳で家出した男のエピソードは、小さくまとまりすぎて小噺のようでもあるが、なかなかうまくできた話ではあったと思う。 登場人物では、レギュラーで感じがよかったのは緋山という医師で、本質的なことを真っすぐに言うので人に信頼されるということかと思った。また、すらりと背の高い冴島という看護師(公称169cm)も有能そうで好印象だ(好きだ)が、この人の相手が身長162cm(公称)の男だというのは不満である(役者に恨みはない)。まあその辺は本編ですでに確定していたのだろうから仕方ない。ちなみにキスシーンはなかった。 ほか出演者としては、今回ゲスト出演の山谷花純という人は前から知っていたが、地が可愛いのに普通に可愛い役をやることがあまりない人で、これは本人の役者志向が強いからだろうと思っている(今回は本当に丸坊主にしたらしい)。また馬場ふみかという人は、以前にろくでもない映画でろくでもない役をやっていたのしか見たことがなかったが、最近はこういうまともな役で頑張っていたのだなと少し感心した。ちなみに新木優子さんは今回それほど活躍がなかった感じである。 なお気に入らない点としては主役の男が格好つけ過ぎだということと、重傷者が多数いる中で私的事情でしゃべり始める奴がいることである。脇で黙々と仕事しながらそういうしょうもない話を聞かされている木更津市の消防隊員などはご苦労様なことで、こういう人々が救助活動を地味に支えているのだなという感慨があった。 [映画館(邦画)] 6点(2018-07-28 17:28:19) |
576. 寄生獣 完結編
《ネタバレ》 前回に続いて普通に面白かったが後半は少しバタバタした感があり、また物語の面でも特に切ないとか愛しいとかいう感情が湧くほどではなかった。しかし唐突な交合場面はけっこう痛々しい印象で、これを見た橋本愛ファンの反応は内心どうだったのかとは思った。ちなみに自分としては、いまだに大森南朋と新井浩文の区別がつかないので同じ映画に出すのはやめてもらいたいと思ったが、同じ映画に出ていることでかえって違いが目立ってわかりやすかったということはある。 以下余談として、前回から気になっていたことのうち、まず前回冒頭のナレーションに対応するものとしては市長の大演説が目立っていたが、環境テロリストの自己正当化の主張などまともに相手にしていられるかという感じで説得力どころでない。こういう糾弾型の主張はいまだに時々やっているが、聞かされる方はたまったものではない(やかましい怒鳴るな)。 また犬の件に関しては、要は共生の観念につながっていたようだが、どうもペットと散歩するとか添い寝する程度のイメージしかないようで正直落胆した。クマとかコモドオオトカゲが相手では寄り添いづらいだろうが、そもそも人類の身体を乗っ取らなければ生存できない生物など、自分のこととして考えれば誰も存在を容認できないはずである(奇特な志願者がいれば別)。 最終的には、人類が他の生物と折り合いをつけながらそれぞれに生きる、という現実的なあり方が一応示されていたと取れなくもないが、やはり通常の野生動物と同列に扱えない架空の生物を使って、人間と自然の共生にまで結び付けるには無理が出ている。原作の方は結構まともな内容だったとすれば、やはり映画では表現できていないことが多いのではないかと想像するが、これを見て何を書くかと一応考える機会にはなったといえなくもない。 [DVD(邦画)] 5点(2018-07-28 17:28:17) |
577. 寄生獣
《ネタバレ》 原作が有名なのは知っていたが読んだことはない。この映画を見る限り普通に面白い話にはなっている。 映像面でいえば、以前に「海賊とよばれた男」(2016)というのを見た時は(三丁目は見ていない)、かつて実在していたものを現に存在しているように見せられたので驚いたが、この映画ではマンガを立体化して実写映像と違和感なくすり合わせした感じなので、それ自体で感動というほどでもない。 また出演者に関して、個人的には深津絵里、橋本愛といった女優を好きだと思ったことがないので主要キャストに関しては不満足である。主人公の同級生役で出ていた山谷花純という人は前から知っていたので注目していたが、最後に二つになってしまったのは残念だ(原作では死なないはずではなかったのか)。ほかどうでもいいことだが、東出昌大という役者は身長が高すぎだ。 以下余談として、原作は1988年からの発表とのことだが、この映画でも冒頭からしていかにも20世紀の青臭い環境論が鼻につく。それほど人類による環境負荷を嫌うのなら、半分とか1/100とか言わず絶滅させてしまえばいいだろうがと思うわけで、何をどうしようという観念もなく声高にアピール(自己主張)して終わりの昭和臭さを感じる。何なら先進国が温室効果ガスを削減する代わりに途上国には人口を削減してもらうかといった皮肉も言いたくなる。 また犬に関することでは、生きた犬も死んだ犬も同じく尊重すべきと思うのは構わないが、そういうことをいえばヘビもカラスもカマドウマもコウガイビルも全部同じように扱わなくていいのかと言いたい。愛護動物を前面に出した方が一般にはわかりやすいとしても、地球環境問題を尖った形で取り上げる割に、生物多様性という面では大して考えていない状態のように見えた。 まあ続編があることがわかっているのでここで突っ込んでも仕方ない。 [DVD(邦画)] 5点(2018-07-28 17:28:14) |
578. 女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。 後編:出る!
《ネタバレ》 前編に続けて気楽に見た(DVDが1枚なわけだが)。 今回も主人公は相変わらずだが、本職がドラマーの人が何でこんな映画にキャスティングされているのかという疑問がますます膨らんでいく。オバサン(ババアとも言われていた)にしても自分などよりはるかに若いわけだが、劇中中学生がダンスに馴染んでいることへの感慨を述べていたあたりは自分としても同感で、こういう点は当時20代後半の人々でも世代ギャップを感じているということか(劇中人物は26、脚本家は25、ちなみに演者は29)。生徒も一通り紹介が終わっているので馴染みが出て来て、一応みなさん個性的なので顔もだいたい憶える。 今回は前編の導入部を受けて、これまで少しずつ名前を出して来ていた文化祭への動きが加速する。便所アーティストが発案したライブペインティングを軸にして雑多な登場人物が一つの流れにまとまり、その中で、中学時代の記憶に縛られた主人公が中学生のおかげで解放されるというドラマが展開する(それほど感動したわけでもない)。今回も結構笑う場面が多く、特に便所アートを毀損した犯人が隠れていたのは爆笑した。またその首謀者が次第に形勢不利になり、孤立無援で追い詰められて最後は開き直っていたのは柔軟でしたたかで微妙に感心した。 そのほか前編でも最後に一つ出ていたが、別室で撮ったスピンオフのような小エピソードが入っていたのは結構好きだ。冒頭のパンの話は、時間の流れが本編と全く違う世界で何が始まったのかと思わされる。3秒ルールというのは当然知っているだろうから、それをこの場で適用するかどうか判断する即応力が問われているのだと思われる。また中盤の原宿訪問練習のエピソードも、ラストの一言に失笑を催すので嫌いでない。 [DVD(邦画)] 6点(2018-07-20 19:59:14) |
579. 女子の事件は大抵、トイレで起こるのだ。 前編:入る?
《ネタバレ》 あまり真剣に見るものでもないだろうから気楽に見た。 出演者については知らない人ばかりだが、主人公を自称するオバサンは、風貌の見せ方はともかくナレーションなどは結構かわいい声なので和む。また生徒の方は人数が多いが、絵に描いたような美少女ばかりでないのが現実に寄せた感じもある。当初は若さだけで圧倒的な優位に立っていたように見えた連中も、まつげの件とかメイクとかで次第にボロが出るので相対化されていく。 この前編ではキャラクター紹介のようなエピソードが連続し、笑うところも多いので結構面白く見ていられる。個別エピソードでは第1話で“キセル”に誘う場面が、よく言われる“ぶぶ漬け”の話を思わせるものがあったが、古都と違ってドライで開けっ広げなのが誠実ともいえるので嫌いでない。こういうのが中学生女子の実態かというと自分は知らないが、予告編のキャプションに出ていた「あるあ……ねーよwww」というあたりが妥当な見解なのだろうとは思う。 各エピソードに笑わされながらも少しずつラストにつながるネタが出て来るので、後編への期待が一応高まらなくもない。 なおこの前編で感心したのは、第2話に出た「桃山新聞」の中身がかなり濃いことだった。ストーリーに直接関わる記事のほかにも、東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事にまつわる陰謀論が紹介されており、地下要塞の話までは現実にも語られているようだが、( ) 付きで「お菓子倉庫」と書かれていたのはこの映画らしいアレンジか。またトップ記事の「中央線沿線の魅力」は個人的に好みの内容なので本気になって読んだが、これを本当に中学生が書いたとすれば非常に優秀で有能な人物で、この学校の教育水準や生徒についても評価を改めなければならなくなる(DQNネームのサンリオペアも含め)。 [DVD(邦画)] 6点(2018-07-20 19:59:11) |
580. 劇場版 私立バカレア高校
《ネタバレ》 まりやぎという人が出ているので見たが、そもそもAKBというものに全く関心がなかったので(1回だけ総選挙でチーム8の人に投票したことがあるが)、ヒロイン役を含めてほとんど誰の顔も知らない。かろうじてみおりんという人は外見が特徴的(小顔)なのでわかったのと、見ているうちに高身長なのが光宗薫という人だというのも薄々わかって来た(同年の「女子カメラ」というのを見たことがある)。 しかし今になってみると、ここに出ているAKBのメンバーは既にほとんど卒業してしまっているようで、世の変転は激しいともいえるがそれでもAKB自体は不滅だともいえる。そういう面で一定の感慨を覚える映画ではあった。 ちなみに石井杏奈という人の顔も見えたがこれが映画初出演とのことで、その後はE-girlsに所属して各種映画にも出ているので知らない人でもない。 中身に関しては、意外にもというか当然だろうがストーリーはちゃんとできており、男連中の話の方が主軸になって、そこに女子の物語がからんで来る感じに見えた。男女それぞれのファンが見に行く前提だったはずだが、どうせ数的には女子中高生が多いのだろうから、男の友情とかアクション(暴力沙汰)でとにかく盛り上げるように作ったのかも知れない。女子の方はお嬢様というだけでなく知能程度も高かったようで、ヒロインに関していえば、こういうしょうもないお話からも一定の人生訓を学び取る賢明さを備えた人物のようだった。最後の「自分でみつける」というあたりはうまく感動的にまとめてある。 TVシリーズは見ていなかったが(当然だが)それでも劇中の回想場面から、それなりの積み重ねがあった上に今があることがわかり、また「大嫌い」というのがいわば(2人限定の?)キーワードだったらしいのも知られる。この手の企画を毛嫌いせず、大らかに受け入れようとする気にさえなれば、娯楽として見る分には支障がない映画だった。 ちなみにヒロイン役の人は、周囲が全員アイドルであるのにその中でちゃんと特別の美少女として目立っていたのに感心したので、そのうち「劇場霊」(2015)でも見るかという気にはなった(特に期待はしない)。 [DVD(邦画)] 5点(2018-07-20 19:59:09) |