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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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561.  宇宙刑事シャイダー NEXT GENERATION<OV> 《ネタバレ》 
昭和の東映TV特撮「宇宙刑事シャイダー」(1984-85)から30年ぶりの映像化ということになる。今回だけでも一応まとまった話ではあるが、前作の「宇宙刑事シャリバン NEXT GENERATION」(2014)の続きという意味もあるようで、ラストは前作を含めた二部作の総まとめとして、全てを動かしていた真の悪が姿を現す意外な展開になっている。 TV放送当時に本編をじっくり見た覚えはないが、最初から女宇宙刑事の蹴りが豪快だったりするのはもともとそういう番組だったのだろうとは思う。ただ主人公とヒロインがラブラブというまではいいとして、主人公が浮気性だったりキスシーンがあったり登場人物の衣服をはぎ取って肌を露わにするのは子ども向けとも思えないが、これはこの映画の対象層がこの当時で40代くらい?の人々だからということか。結果的に大人向けなのか何なのかよくわからない微妙な話になっているが、しかし昔も今も対象年齢から若干外れた世代の立場でも、それほど退屈せずに面白く見ることはできたので問題ない。終盤で「行こう、おしおきにな」と言ったところの宇宙刑事3人は最高に格好よかった。 そのほか出演者としてはヒロイン役女優のアクションが本格的なので驚く。また銀河連邦警察長官の娘で(つまり宇宙人だが)外人名前で日本風女子高生というわけのわからない重要人物役は山谷花純という人だが(後のモモニンジャー)、この人が敵に引っ張り回されて困った顔をするだけの役かと思ったら、終盤でちゃんと演技をする場があったので安心した。またついでに書くと今回登場の「不思議獣ピタピタ」というのがデザインとしても造形的にも良好だった。  ところで当時の本編を見た覚えはなくとも番組のテーマ曲は記憶に残っており、特にエンディングテーマの「おもしろいことが大好きで 悪いことは許せない」は印象的だが、今になってみるとこれが人の本来あるべき姿を端的に表現しているようで心に染みる。 あえて理屈をいえば、「おもしろいこと…」は個人の存立に関わるもので、自分という存在を自ら支えるための基盤をなすものである。また「悪いこと…」は見た通り、個人の社会への関わり方を示している。今回の物語中で、この二つはセットでなければならないことを端的に示した場面があったのは少し感動的だった。こういうところをしっかり押さえるのは子ども向けにも大人向けにも大事なことと思われる。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-15 19:22:52)
562.  フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ 《ネタバレ》 
前作「フランケンシュタイン対地底怪獣」(1965)に続くフランケンシュタイン第2作である。前作と異なり、同時上映の映画は明らかに子ども向けだったようなので、今回は普通に怪獣映画の扱いだったと思われる。 基本的な設定としては前作の経過を引き継いだ形だが、水野久美さんが共通の出演者というだけで、ほかは役者も登場人物の名前も違っており、ずれのある並行世界のようである。今回も日米合作とのことで、水野久美さんが洋モノ映画で見るような、感情で動いて面倒を起こすバカ女の役になっていたのは残念なことである。メイクもきついので可愛気がない。 また怪物の造形も、もさっとした着ぐるみになってしまってケモノの印象が増しており、これはキングコング対キングコングのつもりだろうかとも思う。羽田で人が食われたのは衝撃的だったが、前回は人間っぽかった怪人が、条件次第でいつ今回のようなケモノに変わるかわからないというのでは、やはり全部駆除しておいた方が無難ということになってしまう。劇中の科学者も研究材料が失われないようにとしか考えていなかったようで、前作に比べて人の心が失われた単なる怪獣映画のように見えた。かろうじて兄弟愛という点で、最初に兄が出現した時の、おれの弟に何をするんだ、という抗議の姿勢が印象に残った程度である。 ちなみにタコを最初に出すことにしたのは前回からの改善点ということかも知れない。今回も最後は海底火山の爆発というのが唐突だが、これは1952年の「明神礁」爆発が人々の記憶に残っていたからだと思われるので、その発想自体は理解できなくはない(「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」(1967)でも冒頭にニュース映像が出る)。  なお今回の見どころは何といっても陸上自衛隊の大活躍である。最初に何をするか明示してからの準備がかなり念入りに見えたが、その甲斐あって効果は絶大で、怪物が今にも死にそうなところまで追い詰めたのは前代未聞の大戦果である。ヘリコプターが身を挺しての遅延策も功を奏し、怪物が木をなぎ倒しながらひたすら逃げ回るのは痛快だった。日頃から不死身の大怪獣を相手に戦っている自衛隊がその気になれば、サル人間程度は容易に倒せるということである。今回初出の殺獣光線車の重量感がいい。 また人型の怪物がミニチュアセットの中で、その辺のものを蹴散らしながらドカドカ走って行くのは珍しい眺めだった。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-08 23:28:04)
563.  フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン) 《ネタバレ》 
大人向け映画と断言するほどでもないがまるきり子ども向けでもない。同時上映が若大将映画だったことからすれば「マタンゴ」(1963)並みの扱いということか。 全体構成としては日本の東西で別々の怪物が出現し、それぞれ勝手に移動して最後に富士山麓で出会う形になっており、海外公開が前提だからか各地の名所も映されている。ロードムービーというほどでもないが行く先々でさまざまな人々が登場し、岡山の田崎潤・佐原健二の組み合わせがほんのチョイ役だったというのがフェイント感を出していた。その後も「大怪獣バラン」(1958)の対潜哨戒機テーマに乗せて飛騨の白川郷まで追手が迫り、いろいろあってからイノシシが走り去ったところまでの流れが個人的には好きだ。  しかし問題なのがラストの締め方で、突然地面が陥没するというのも感心できたものではないが、海外版では突然のタコの出現のために怪人が次から次へと敵を求めるタイプに見えてしまっているのは非常によろしくない。 またテーマ的には、永遠の生命が果たして人間の幸福につながるのか、ということが問われていたようでもあり、実際にそういう生物が出て来た結果、必ずしも幸福ではない(「死んだ方がいいかも知れない」)という結論につながったようでもあるが半端である。またそれが原爆とどう関わるのかと思っていたが不明瞭なまま終わり、結果として広島から物語が始まった意味もよくわからなくなっていた。  そういうことで不足の点はあるが、しかし物語としては一本筋が通っていたようで、要はたとえ人が造った人間でも、人の心が通じるなら人間だ、というのが最終的な結論と思われる。当初、怪人は逃げてばかりでこんな奴が兵隊として使えるのかと思っていたが、しかし誰かを助けるために戦う決心をしてからは見違えるほど勇敢になり、生まれながらの兵士では全くないが確かに人間だ、ということを自ら証明していたようである。救出した男を仲間のもとに返してから、地底怪獣の叫び声の方へ向かおうとする姿は正直格好いい。顔に似合わずヒーローだったというしかない。 なお劇中の女性科学者は広島市内?の近代的アパートに住んでいたようだが、怪人が成長してみると部屋が2階だったことの意味がわかる。ここで怪人が見せた顔が何とも心細げで情けない表情で、それで観客としてもこの男に肩入れしてやらなければという気にさせられた。
[DVD(邦画)] 6点(2018-04-08 23:28:01)
564.  怪獣大戦争 《ネタバレ》 
まずは冒頭のマーチが勇ましい。 基本的には子ども向け映画だろうが保護者も退屈しないようにということか、男2人のユーモラスな会話とか女優2人の美の競演とかラブコメ風味とか悲恋物語(の断片)を入れてあり、大人が見るのが苦痛というわけでもなく、けっこう幅広い娯楽性を備えた映画になっている。伝統的日本人に比べて外人男の言動があっけらかんとしてドライで、真面目な顔で笑わすようなことを言うのがいい。 X星人は宇宙人でありながらもみな不気味なアジア人顔で、歩き方も特徴的だが特に統制官の手振りが印象に残る。大きな動きは地球人類にも理解できそうだが細かい指の動きなどは意味不明というしかなく、これはまさに異文化の所産というところである。最後の「未来に向かって脱出」という台詞は空虚な負け惜しみ以外の意味が感じられないが、自分が負け惜しみを言う時に真似したいという気にはなる。 映像面ではX星での照明の使い方が印象的で、統制官が意味不明のX星語(グスタrrr、タッ、ブツザッと聞こえる)をつぶやいてから暗転するのは好きな場面である。また、あまり格好いいとはいえない円盤が、湖から水煙を引いて飛び立つところの映像美が東宝特撮らしい。  出演者は豪華というかお馴染みの面々だが、沢井桂子さんという人は特撮方面では珍しい出演者も知れない(ほかには同年の「フランケンシュタイン対地底怪獣」、特撮TV番組「ウルトラQ」第8話)。劇中人物としては可憐で清純そうな女性で、公的な場ではうつむき加減で控え目だが、親しい相手にはそれなりに言いたいことを言っていたようで、態度の使い分けがしっかりしているのが奥ゆかしい。波川女史と2人並んだ場面では引いてしまっている感もあるが、波川女史の応対がこなれ過ぎていて怪しいのに対し、この人の清楚さが際立っているという言い方もできる。 ちなみに最近、水野久美さんの出る「ケアニン ~あなたでよかった~」(2017)という映画を見たが、この映画での「ああ、あの方ね」という台詞で、この女優らしさというのが当時から現在まで継承されていることを改めて確認した気がした。
[DVD(邦画)] 6点(2018-04-08 23:27:58)(良:1票)
565.  ちはやふる 結び 《ネタバレ》 
原作とアニメは見ていない。主演女優が好きで見たわけではないが、今回は優希美青さんが出ているから見たという面はある。 このシリーズは毎回そうだがどうも前半部分が見づらい。冒頭部分では流れるコメントとか志賀廣太郎氏が目障りだが、続いて今回もまた部活の勧誘風景があってイケメン探しの新入生とかが学園ラブコメの雰囲気を出している。恋する少女の企みが大変な結果につながったなどという少女マンガ的展開を好んで見ているわけではない(朝からわざわざ映画館まで行って)と言いたくなるが、それでもこれをクリアしなければ感動の後半部分を見られないので我慢するしかない。 前半部分のごたごたのせいで肝心の試合も危うい展開で、「ちは」を全員が取られるといった思いがけない場面もあるが、それでも最後は勝つという都合のよさも毎度のことに思われる。しかし、やはり試合場面での緊張感と躍動感、登場人物の言葉や行動には心を動かされるものがあり、最後は爆発的な喜びの感情がもたらされるという点が、このシリーズ最大の価値になっているように思われる。  ところで今回も終了直前までまた続編があるのではという気がしていたが、ラストでは一応の決着がついていたので安心した。よくわからないことが多いままで終わった印象だったが、原作自体がまだ連載中とのことで、これが妥当な締め方なのだろうとは思う。要は主人公が競技かるた部を創設する時点で言っていたことが実現するということで、観客としても納得できる未来が見えた感じだった。 結果的には映画三部作で見る限り、登場人物の恋愛感情(三角関係)が本筋というよりも、何かに一生懸命取り組むことが人生でどういう意味を持つのか、それを前提としていまこの時点で何をしなければならないのかを問う、非常にまともな青春物語になっている。かつ「上」「下」ではふらふらしているだけに見えた主人公の物語としてもちゃんと完結していたようである。  ちなみに大江奏さん(かなちゃん)は今回あまり目立った活躍がなく、最後はリタイアしてしまったのは残念だったが、恋するあまり大変なことをしでかした少女への対応など見ていると、この人の優しさと心の広さが表現されていたようで嬉しい。原作では巨乳という設定だったとのことだが、そうでなくても全然構わないので、この人にはずっとこの人でいてもらいたい。
[映画館(邦画)] 7点(2018-03-17 18:49:28)
566.  ケアニン ~あなたでよかった~ 《ネタバレ》 
水野久美さんがヒロイン役?の映画が上映されるというので見たが、FINAL WARSなどよりよほどいい出演作だった。この人を主人公が彼女扱い(今カノ)していたのは相手が誰でも同じではなく、やはりそもそもが美形の人だからこそそういう発想が出て来るのだと思われる。劇中では施設利用者の若い頃の写真を並べてその人の人生を思う場面があったが、水野さんの昔の写真を出せば皆さん恐れ入るのではないか。舞台挨拶の写真で見る限り、背筋も伸びてお元気そうで他人事ながら嬉しくなる。今後一層のご活躍を期待申し上げたい。  ところで自分としてはこの方面の仕事に関わったことがなく、この映画が実態をどの程度反映しているのかはわからないが、結果として現職の介護職員にエールを送り、またこの道を目指す若者を励まそうとする映画には見える。虐待はないのか、という友人からの問いを主人公が軽く受け流したのは若者らしい反応とも見えたが、あるいは他はどうでも自分は違う、というプライドを込めた対応とも取れる。 また自分には要介護の身内がおらず、こういう施設が理想なのかもわからないが、家庭的な対応の施設を見せることで家族に訴えかける部分もあったようである。ヒロイン?の息子のエピソードはかなり作為的に感じたが、この映画としてはぜひとも必要な登場人物だったのだろうし、終盤に至ればその息子も認知症との向き合い方を体得したということらしい。目の前にいるのが誰だかわからないだけで、人そのものの存在を忘れてしまったわけではないということである。 ほか全ての人にそれぞれの人生があり、最後まで人間として生きているのだといったことは、人間への敬意を忘れるなという意味で、介護の分野にとどまらない一般向けのメッセージにもなっているように思われる。  個別の場面では、個人的には序盤でオレンジの皮をむく場面に和まされたが、人物の動きを止めて観客の意識を集中させる場面も複数あり、軽薄に見えた登場人物の発言が重たく響くところもある。最後に用意されていた落ちも少々わざとらしいが悪くなく、この人らしいきれいな字で書いてあったのが泣けた。どうせ関係者が内輪で盛り上がるだけの映画だろうと思っていたらそういうことでもなく、役者のおかげもあって広く人々に訴える力のある映画になっている。自分としては水野久美さんに引かれて見た形だが、主演俳優の今後にも期待したい。
[映画館(邦画)] 8点(2018-03-17 18:49:25)
567.  君の膵臓をたべたい(2017) 《ネタバレ》 
原作は読んでいない。事前の印象としては、奇抜な名前で人目を引いておいてからベタに泣かせようという魂胆が見えるようでまるでライトノベルかと思ったが、実際見ても「膵臓をたべたい」という言葉が物語から自然に導かれたようには思われず、やはりタイトルが先で理屈を後付けした感じになっている。 その一方ではとにかくヒロインの笑顔の魅力が絶大で、どうせラノベ並みの通俗映画だろうと突き放そうとしても抵抗不可能である。というより実はもともとこの人が目当てで見たわけなので、最初に図書館で幻影が現れたところですでに感動してしまった(あまりにも可愛い)。この人なら多少の都合のよさも許容して行動人格全部を素直に受け入れてしまうので、これはキャスティングの大成功と思うしかない。スイパラでのやりとりは脱力するほど可笑しく、またお泊り旅行での楽しげな様子も嬉しくなるが、最初から病気とわかっているので笑いながらも心は痛む。 また全体的にも結構悪くないと思ったのは、主人公男女が互いに「膵臓をたべたい」と思うのがわからなくはなかったからである。特に男の方には個人的に共感してしまうところがあり、「お門違い」という表現を自分はしないが気持ちはわかるので、そんな奴でもちゃんと見ていてくれる相手がいるなら嬉しいだろうと思う。見た目から入るのではなく人として心を通わせるのが先、というのもいい話だが、ただしこの映画ではヒロインが超カワイイ系美少女で男もイケメンのため、外見優先でないという本来のコンセプトから外れてしまっているのが最大の問題点かも知れない。 何にせよ万人が自分のこととして見るような映画ではないだろうが、しかし12年後の図書委員と森下さん(笑顔がかわいい)の関係は一般人に少し近い雰囲気を出している。この2人にはぜひ仲良しになってもらいたいが、ただしそれならそれでちゃんと生きていてもらわなければ困るわけである。  [2018-04-17追記] 原作を読んだ。若年者向けの小説だが、だからこそ人の心を無遠慮に突き刺す(今さら言われたくない)言葉が盛りだくさんのように思われる。個人的には原作で主人公の母親が「私は嬉しい」と言ったところは映画にも入れてもらいたかった。 そのほか原作との比較で残念なのは、省略のせいでいろいろ半端になっていることと、やはり映画で付加した12年後の部分に不自然な点が多く、観客に突っ込みを入れられても仕方ない状態になっていることである(自分は寛容な性格なので見ないふりしたが)。そもそも12年も待たずにすぐ心を入れ替えてもらいたかったものだが、しかし12年後の図書委員と森下さん(演・三上紗弥)にだけは否定的になれない。この2人はかなりいい感じである。 ほか題名の意味に関しては、原作だと誰でも知っている慣用句で端的に言い表せるので誤解のしようがないが、映画では変に深読みを誘うよう改変されているのが好ましく思えない。ただし自分としては、映画を見た段階でも原作と同様に受け取った(その方が解釈として簡明なため)ので、制作側の小細工は自分に対しては無効だったということである。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-03-17 18:49:22)
568.  嘘八百 《ネタバレ》 
森川葵さんが出る映画は無理にでも見なければと思って見た直後に熱愛報道が出たりするので多少がっくり来るわけだが、その辺は「ええ大人なんやし」と思って納得するしかない(劇中の父親の気分で)。 題名を見るとあまりに素朴で古風なネーミングのため一体これはどういう客層向けなのかと思っていたが、実際見に行くと年齢層がかなり高く、20人くらいいた観客のうち自分だけが若造のように思うほどだった。ちなみに現代の堺市が舞台という映画は珍しいのではないか(NHKの「黄金の日日」は見たが)。もう少しご当地感を出してもよかったのではと思うが控え目だったようである。  ストーリーとしては要は騙し合いで、最後まで予断を許さない展開だろうとは思うので逆にそれほどの意外感もなく、またラストが変にごたごたした感じですっきりしない。コメディとしてもバカ笑いするようなものではなく、個人的にはかろうじて「生き写しやがな」というのが可笑しい程度だった。しかし単純な娯楽として見る分には支障なく、金の行方はともかくとしても、悪徳業界人には一矢報いてそれなりに前向きな感じで終わったので、見た後の気分としてはそれほど悪くなかった。 昔話になるが1969年のTV番組で、古美術商に贋作を強いられる陶工の出るエピソード(「呪いの壺」)を見たことがあるが、時代を超えて似たような設定が使われるからには本当にこれが業界の実態なのかという気もして、そういう世界と無縁な人生でよかったと思わせるものがある。ただこの映画でも当然ながら、ものの価値は自分の目で見て決めろ、と言っていたのだろうから、自分もそのようにしていかなければと思うところがないではなかった(例えば映画を見るにしても)。  ところで前に「花戦さ」(2017)という映画があったが、この映画でも中井貴一(織田信長)、佐々木蔵之介(前田利家)といった役者が出て、その上に利休の茶碗まで出て来るので姉妹企画かと思うが関係ないらしい。森川葵さんも両方に出ているが、これはそういう年長の役者が揃った中でも遜色ない若手女優という意味に解しておく。劇中人物としては特に好きになれなかったが、この人の持ち味が出ていて見せ場もあって結構いい役だったとは思う。ほか女優としては大阪の役者で鴨鈴女(かも すずめ)という人が出ており、特筆するほどの役柄では全くないが顔を知っているのでどうしても目についてしまった。
[映画館(邦画)] 6点(2018-03-11 21:28:10)
569.  ちはやふる 下の句 《ネタバレ》 
今回は序盤から福井関係のエピソードで盛り下がってしまう。肝心の主人公がよくわからない理由でさんざん勝手なことをしておいてから本番でも脱落してしまい、いよいよ対決と思えば今度はメンタルの問題かという感じで苛立たしい。さすがに後半は盛り返していたが、勝つときは髪を耳にかけるのであれば初めからすればいいだろうがとは思った。 ちなみに原宿限定タオルに対するクイーンの反応には全く笑えない(この顔では洒落になっていない)。  主人公にいいところがない一方、他のメンバーが各自最善を尽くしていたのは他人事ながら嬉しくなる。孤立主義だった男も、今ここにいる意味を他人に与えられるだけでなく、自ら自分の存在意義を見出すに至ったようで幸いだった。 またメンバーのつながりを得意札の共有で象徴させていたのは効果的である。皆が「ちは」の札を一斉に取る(1人だけ取れない)場面は前回もあったが、今回は飛んだ札がわざとらしくガラスにぶつかって、話に聞いていた かなちゃんと机くんが笑顔を交わすのが見えたというのが結構泣かせた。クライマックスでのハイタッチも少し感動的である。 ほか個別の場面として、この映画では主人公が本気になった時の目に強烈な印象があるわけだが、今回は子役の目にも少しドキッとさせられた。またかなちゃんはやはり手に優しさを込める人だということらしい。  ところで、いかにも作為的ながら観客にきっちりアピールする場面が多数用意されているのは映画として悪くない。原作を読んでいないのでわからないが、たとえ感動要素の多くを原作に拠っているのだとしても、それをちゃんと生かした映画ができているのだろうという気はした。また映像的には、特に主人公のイメージカラーらしい鮮やかな赤が印象的な映画になっている。 ここまでの間、主人公が本領発揮する場面は意外に少なく、それ以外の人々が存在感を高めていくのが中心だった気がするが、3月公開の「結び」はいよいよ主人公中心の物語になるのだろうと思っておく(過度の期待はしていないが)。
[ブルーレイ(邦画)] 6点(2018-01-07 14:58:10)(良:1票)
570.  ちはやふる 上の句 《ネタバレ》 
原作とアニメは見ていない。主演女優が好きで見たわけではない。 最初が部活の勧誘で始まるのでまたこれかという気になるが、続く序盤のマンガっぽさに呆れてしまい、これはそもそもマンガだからと自ら言い聞かせながら見ることになる。ただ「バカ」「カバ」とか「お母さん」とかは悪くない。 また本筋の展開では、最初は主人公を天才のように見せておきながら、その主人公を含めていきなりどん底まで落ち込んでしまい、その上に本番でも深刻なトラブルが発生していながら結局は優勝してしまうという流れが、ご都合主義とはいわないまでもあまり自然に感じられなかった。ちなみに主題歌はエンディングの雰囲気をぶち壊している。  一方ドラマ的には、若いのに運命の限界を感じていた男が、土壇場で一気に壁を突破したのが痛快で感動的だった。また孤立主義だった男が、今回とりあえず仲間の存在を認識できたというのも悪くない。やらないでも済むが頑張ってやればそれなりの成果が出て、結局やってよかったことになるといった経験則の表現にもなっている。 また何より大会の場面が圧巻で、特にチームの皆が一斉に手を振るのが流れの変化を象徴していたのは非常に印象的だった。ラストの対戦にも意外性があり、見る側としてもこれはやられた、という感がある。「瑞沢優勝」と言い切らないうちからの展開は感動的だった。 ほか歌の解釈ということに関しては、定説は定説として人それぞれの思いも別にあるということだったらしい。勝負では最初の何文字かしか問題にならないとしても、背景にある歌の全体像を認識することで文学的な世界が広がる様子も見せていた。  なお登場人物としては大江奏という人が、当初は奇矯な言動が多かったが、落ち着いて来ると優しい人柄が見えて来て、歌を詠む声もきれいで好きになった。意気消沈している男の肩をほかの男が次々に叩いてから、この人がそっと手を置いたところは少し泣ける。「“田子の浦”取りました」と言っている顔を見ると自分も嬉しくなった。 ちなみに男は誰が出ようが出まいが関心ないわけだが、ライバル役で出た清水尋也という役者は他のところで見たことのある清水尚弥の実弟だったらしく、雰囲気がかなり似ているので、序盤で兄が端役で出たのを見てから弟が出ると混乱した。
[ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-01-07 14:58:08)
571.  ホラーの天使 《ネタバレ》 
「葵わかな初主演映画」とのことで、朝ドラヒロインの初主演映画としては自慢にもならない感じだが、まあ若いうちはいろいろあるということか。また「くちびるに歌を」(2014)で主人公(本来の)だった恒松祐里、「先輩と彼女」(2015)で印象に残る水谷果穂といった人々が出ており、ほかにアイドル役で現役アイドルも2人出ているが、アイドル映画というより普通に若手女優の出る映画という感じである(男は無視)。 内容としては一般的なフェイクドキュメンタリーで、ほとんど全面的にPOVを取り入れている。映画撮影・漫才・アイドル合宿の3グループの話を並行させておいて最後に統合してみせる形になっており、終盤で一気にネタばらししているところもあるが、序盤でも真相を示唆するものが一部出ていたようなので、そういうものを探しながら謎解きの気分で見る趣向と思われる。  監督としてはとにかく怖い映画を作ろうとしたとのことだったが、純粋に怖い映画というより不快な映画という印象が強い。特に女子のやることが非常に気に障るので精神的に負荷がかかり、その上に突然バケモノが出てギャーギャー騒いで血が飛散するようなのを見せられてはやかまし過ぎて閉口する。前記の取っつきやすい謎解きを含め、主に若年者を面白がらせるホラーとしてはよくできているのだろうとは思ったが、ある程度年を取った立場としては付き合いきれないところもある。これがこの監督の作風と思えばいいのかも知れないが。 なお少しよかったのは人物造形で、特にアイドルの「ミク」はこの人物の本質的なところがよく出ていると思ったが、だからといって好きになれるキャラクターというわけでは全くない。題名の意味は結局わからなかったが、これはもしかすると出演者の誰かをそれぞれの好みで天使認定すればいいのだということか。主要人物として男も出てはいるが、若手女子しか印象に残らないのは間違いない。
[DVD(邦画)] 5点(2018-01-06 10:59:08)
572.  fuji_jukai.mov 《ネタバレ》 
昨年12月31日(6日前)に青木ケ原樹海の遺体映像を投稿したアメリカのユーチューバーが批判され、今年1月3日(3日前)に本人が謝罪したとの報道があったが、この映画は当然それより前の公開である。 吉本興業とTBSが共同制作した映画とのことで、TBS所属のディレクターが監督を担当し、吉本芸人も本人役で出演している。監督は本来バラエティのディレクターであって映画は「ど素人」だそうで、実際これは映画としてどうなのかという批評もありそうな感じだが、そこはあまり突っ込んでも仕方ない。 内容としては「スマホ系ドキュメントホラー映画」とのことだが、「90%リアル」とかいう説明を聞くと、カルト集団の部分だけでも1割を超えているのではないかと皮肉を言いたくなる(かつての上九一色村の教団施設になぞらえたにしても無理を感じる)。しかし現地関係者(レストラン店主、樹海探検家、寺の住職、民宿の女将)のインタビューはさすがに本物らしく真実味があり、それに比べて役者が演じる「樹海パトロール」は非常にウソっぽい。  見ていて非常に気に障ったのは主人公の同行者2人の行動様式である。自分としては人間扱いする気にもならない連中だったが、この映画の立場としては「子どもっぽい」という認識だったらしく、そういうクソガキのようなのに便利なツールを提供してしまっている現代社会への批判が込められていたようでもある。一方で主人公は心正しい人だったが、この人に対する世間からの綺麗事による非難を逸らすため、最後に悪人が「生まれ変わり」を果たす筋書きにしたのだろうと解釈した。 そういう物語面での不快さにかかわらず、風景映像の方は荘厳な美しさを感じさせ、またエンディングで現地関係者が樹海の自然の魅力を熱心に語っていたのも印象に残る。時々わざとらしく映っていたオーブのようなものは、人の霊魂というより自然界の精霊といった表現だったのかも知れない。樹海探検家の言葉として、樹海にある遺体の全てが自殺によるものとは限らないという見解も紹介されていたが、本来は他殺死体の隠匿場所でも呪われた場所でも無責任な動画投稿者やTV番組の悪ふざけの場でもなかったはずの樹海に、人間社会の暗黒面を投影するのはやめてもらいたいというのがこの映画の最終的なメッセージに思われた。 そのようなことで、意外に社会派っぽい気がしたのはTBSらしいといえるかどうか(バラエティのディレクターだが)。  出演者としては、自分が知っていたのは佐々木萌詠さんくらいのものだったが、今回はまたかなり変な役でどうも仕事を選ばない人らしい。ほとんど端役ながらも舞台挨拶にはきれいな格好でちゃっかり?出ていたのは意外だったが、女子高生役3人と並ぶと長身(公称168cm)で見栄えのする人である。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-06 10:59:05)
573.  ソラから来た転校生 《ネタバレ》 
監督の近藤勇一という人物は、劇場公開前提の映画としてはこれが初だそうだが各種映像製作には以前から携わってきたとのことで、過去には美少女タレントのPVドラマのようなものも撮っていたらしく、今回のこれもその延長と思えば納得する。ちなみに主な出演者2人は同じ監督のショートフィルム「ネコヤドのハルとアキ」(2012)と共通である。 この映画でも、とにかく劇中女子(高校生)をきれいに可愛らしく映しているのが最大の特徴と思われる。男子の出演は極限して女子ばかりが多数出ているが、これは芸能事務所(イトーカンパニー)の意向もあってのことか。自分としては特に劇中少女が天使の扮装をして、新体操のリボンで踊るところが美しいので非常に和んでしまった。これで上手いのかはわからないが、少なくとも溝口恵という人は実際に新体操の経験者とのことである。またガールズラブっぽい雰囲気も出していたが、物語的には人体の物的な存在感を確かめる行為ということになっていて、この辺はうまく意味づけをやっていると見えた。 周囲の人間関係も和やかで、敵対勢力がいないのでひたすら微笑ましい雰囲気になっている。なぜか校内に変な爺様が出没していたが、この人物もやはり元気のいい若手女子が見たくて来ていたのに違いない。女子高生側の反応もユーモラスで結構だった。  ドラマとしては青春ファンタジーのようなもので、争いから逃げて孤立するのでなく、人間同士の関係性の中にこそ生きる喜びが生まれることが表現されていたようである。劇中の天使が人間世界に受け入れられていく過程が微笑ましく、別れの寂しさとともに未来の希望も見えていて、青少年向けとは思うが少しキュンとするものを見た気がした。 ストーリーを進める原動力になっていたのは、父親を亡くして部活も怪我で断念したのに屈託なく笑う女子だったが、無理して健気にふるまうだけでなく、この人のいわば包容力が地上の天使の存在を表現していたようで、これは恐らく母親のおかげだったのだろうと後になってから思う。なお全体として展開が早すぎる気がするので、もう少し長く作ってもよかったのではと思った(60分くらいとか)。 ほか映像面では、何度も出る高空の飛行機雲が天使の飛行を表現していたらしいのが印象的だった。ロープウェーから糸電話というのには突っ込まないことにする。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-05 19:57:37)
574.  ネコヤドのハルとアキ 《ネタバレ》 
栃木県鹿沼市の映画である。「鹿沼に行きたくなるショートフィルム」というお題のもと、市の助成を受けて制作したものとのことで、映像ソフトとしては同じ監督(近藤勇一)の「ソラから来た転校生」のDVD特典として収録されているほか、監督の公式YouTubeチャンネルでも公開されている。主な出演者2人は「ソラから…」の2人と共通である。  まず題名のうち「ネコヤド」が意味不明だが、これは1999年に鹿沼市上材木町の裏通りのさらに狭い路地で開業した喫茶店の経営者が、現地の古い地名である「上材木町 字 根古屋」に因んで「根古屋路地」と命名したのがもとになっている。この人物が現地で2006年2月から月1回、フリーマーケットのように工芸品や食品などを持ち寄って販売する「ネコヤド大市」というイベントを始めて大人気になり、ここをチャレンジショップの場にして起業した人々が別の場所に出店したりして動きが拡大し、2012年3月にはより広域の「ネコヤド商店街」のイベントに発展したとのことで、地方都市活性化の成功事例として知られていたらしい。 この映画との関係でいえば、田植え体験の場面は2012年5月だろうが本編は早春のように見えるので、拡大版「ネコヤド商店街」の開催に合わせて撮影したものかと思われる。  内容としては、市の意図からすればあからさまに地元PR映画だったわけだが、引越しで地元を離れる少女が見納めに市内を回る、という理屈でわざとらしさがうまく低減されている。少女が使っていた8mmカメラ?は監督の昔の体験の再現と思われる。 物語は引越しで離ればなれになる親友それぞれの思いを描いており、残る少女の思いを代弁する“編みぐるみ”の声が切なく、また去る少女がどこに行っても親友との思い出ばかりだったというのが泣かせる。たまたま仲違いしていた2人を、最後の最後に「ネコヤド商店街」がつないでくれた形になっており、ラストの観覧車の中でのやりとりが微笑ましく嬉しい。 ほか劇中の“編みぐるみ”が動く視覚効果は面白い。自分の感覚では特に可愛いとも思わないが、うちの地元に住んでいる若手クリエーター(職業不詳)の作風を思わせるものがあって親近感はわく。どうも最近はこういうのが受けるらしい。
[DVD(邦画)] 6点(2018-01-05 19:57:35)
575.  A.I. love you アイラヴユー 《ネタバレ》 
吉本興業とフジテレビが共同制作した映画で、フジテレビ所属の演出家が監督を担当し、吉本芸人も役者として出演している。全編スマホで撮影したとのことで、それが観客にとってどういう利点があるかはわからないが、映像的に人工知能の視野をスマホのディスプレイ形状(横向き)で表現する意味はあると思われる。 人工知能の恋といえば近年では2013年製作のアメリカ映画の例があるようだが、それより低予算なりにコンパクトでわかりやすいファンタジーができており、物語としてもそれほど無理なく目標達成する形でまとめてある。劇中の若手シェフは本来テイクオフまでの加速装置でしかないはずなので、主人公がパリに行くのが正しいわけでもなく、そこを引き留める役目までを果たした人工知能はさすがの出来である。ただラストは少し不満で、口調が似ているまではいいとして一緒に食べようなどという申し出は不要だった。  この映画の見所といえば、個人的には何といっても主人公の人物像である。最初から表情や行動がユーモラスで、主演女優のファンとしては森川さんかわいい!!!とか言いたくなる気持ちに可笑しみが作用して終始ニヤついた顔で見ていたが、そのニヤついた状態をベースにして、場面によってはさらに泣けるとか嬉しくなるとか複合的な感情になっていくのが心地いい。会話の中でかなりの間が空いたりするがそれ自体を楽しむ作りになっており、特に終盤では視点を固定したまま一人芝居のようなことを延々と1カットで(12分56秒とのこと)続けていたが、その間も見る側としては息を詰めるようにして主人公の表情に見入っている状態だった。主演女優はもともと普通の少女も壊れた少女もカワイイ系の性悪女子も変人少女も真面目少女も姫君でも京娘でも26歳居酒屋勤務でも何でもありの役者だが、この映画でのこういう役はこの人ならではという気がする。 また珍しく男キャラへの共感度が高い映画になっており、別に斎藤工になり切っていたわけでもないが、人工知能の視野を通じて観客も主人公と対面している気分になって嬉しくなる。人工知能ほど頭が切れるなら、こういう女子を全力でサポートしてから見返りもなく消えるという、そういう一生もいいかも知れないという気になった。正直この人工知能がうらやましい。最期のいわゆる走馬灯も切ない。
[DVD(邦画)] 7点(2017-12-31 19:26:04)
576.  her 世界でひとつの彼女 《ネタバレ》 
人が作ったプログラムからいったん本物の人間のように進化して、そこからさらに別の超越的存在になっていく、という段階を踏む発想は、ほかにあったか知らないが個人的にはユニークに思われる。ただしその本物の人間の段階では妙に性欲がらみのことが重視されていたようで、まるでエロがなければ人間の本質に迫れないとでも思っているようなのはあまり納得しない。人類の活動力の根源は性欲だとかいう前提なのかも知れないが、それならOSなどでなく普通に人工知能搭載のラブドールにしておけばいいだろうとしか思えない。 それでも前半はほのぼのした笑いもあって結構いい雰囲気だったが、後に行くほど醒めてしまって終わり方だけを気にする状態になっていく。全編を通じて何らかの人間ドラマが展開されていたようでいて、結局最後まで何が言いたいのかはわからなかった。人類が特定の個体に特別の関係を求めようとすること自体が間違っているという想定だったのなら、ほとんど破滅的な近未来像ということになる。 どうも自分としては乗れない感じの話だったが、しかし主人公が比較的親しみやすいキャラクターだったのは安心できた。また大学時代からの友人も感じのいい人物で、この二人の関係は(非常に微妙だが)これからも大切にした方がいい。  なお余談として、舞台は一応ロサンゼルスということになっていたが(街頭の路線図、元妻の台詞、小包の宛名)、なぜか特定のアジア系住民が目立つのが近未来の姿のようである。劇中ニュースによればインドは併合されるらしいので警戒が必要だ。そのほか素朴な疑問として、いわゆる膝かっくんというのは世界的に分布しているものだったのか??
[DVD(字幕)] 4点(2017-12-31 19:26:01)(良:1票)
577.  ひかりをあててしぼる 《ネタバレ》 
2006年に渋谷で起こった殺人事件を題材にした映画とのことである。なぜかアメリカのホラー映画賞(最優秀作品賞と最優秀主演女優賞)をとったそうだが、普通一般のホラーとして見れば怖くも何ともないのでそういう見方はしない方がいい。 内容的には自分が見る限り、大変申し訳ないが何が言いたいのかわからない。実際の事件に合わせた展開に見えるが事件自体の映画化ではないらしい。また仮に普通の夫婦でも起こりうることを表現しようとしたのなら、まずは夫婦の相対関係の変化を地道に積み上げる形にしてもらいたかったところだが、特に序盤は実際の事件に合わせたエピソードが取ってつけたようで説得力に欠けている。第三者的に見る限りは何も感じ取れない話だったので、あとは個々の観客が、それぞれの事情に照らして見るべきところがあると思うかどうかの問題だと思われる。  出演者に関しては、夫役はこの役者としては普通の役どころに見えて特に驚きもなかったが、妻役の女優はこの人自体が見どころと思わずには済まない存在感を出している。この女優は近年では「渇き。」(2014)でも結構ハードな役をやっていたので、今回のこれもそういう流れの延長上と捉えるべきか。 観客側の立場としては、女優を見るからには主に表情とか声色とかを気にしているわけだが、しかし本人としては“身体の筋が見えるような(力のこもった?)動きが妻の怖さを表現している”というようなことが重要だったらしい。自分としても酒瓶を全力で振り下ろすのは思い切った感じでよかったと思うが、その後に細く長い手足で力技というのも強烈だったかも知れない。ボディラインが見える場面が多いので本当に細身の人だというのが印象づけられる(昔からそうだったが)。
[DVD(邦画)] 5点(2017-12-27 19:52:34)
578.  サイキックビジョン 邪願霊 ~狙われた美人キャスター~<OV> 《ネタバレ》 
題名が長いが、本編を見ると「邪願霊」だけが本来の題名のようなのでその他は無視でいい。 内容としては極めて安手で貧乏くさく見えるビデオである。劇中アイドル歌手はいかにも昭和っぽく、題名のキャスターの服装も昔風で見ていられない(こういうのが流行っていたのは確かだが嫌いだ)。少なくとも序盤は真面目に見るのが苦痛だったが、しかし本筋に入ると少し緊迫感も出るのでそこまで耐える必要がある。突然爆発が起きたところはさすがに驚いた。 またいろいろと後世の映画で見覚えのある要素が多く、現代邦画ホラーの元祖のような扱いをされているのも納得できる。劇中の出来事を見る限りは「女優霊」(1995)の直系の祖先のようで、劇中アイドルの扱いがよく似ているように思われる。また歌が原因になっていたのは、誰も知らないだろうが「録音霊」(2001)に受け継がれた形である。映像面でも、何かがたまたま映り込むのは今となってはよくあることだが、このビデオでは初回に少し目立つようにしてわかりやすくしていたのが親切だった。ほか特に、この時期にフェイクドキュメンタリーホラーはかなり新しい試みだったのではないか。 そういう意味で、邦画ホラーのファンなら教養として見ておくのもいいかも知れない。自分はファンでも何でもないので本来見る必要はなかったが、見てしまったので一応紹介だけはしておく。  ちなみにわざわざ書くべきことかとは思うが注意事項として、この話では芸能界の闇のようなものが背景になっているようだが、このビデオが製作されたのは実在のアイドルが自殺して社会的にも大きな影響があったとされる1986年の事件のすぐ後であり、当時はまだ日本国民のかなりの部分がそのことを鮮明に記憶していたはずである。当時を知る者としてはこれと無関係に製作されたとは思えないが、しかし劇中の出来事をこの事件に過度に重ねてしまうと故人への冒涜になってしまうのでやめるべきだと書いておく。 なおエンディングの後で、特別出演の水野晴郎氏が余興的にハリウッド怪談を語っていたのはいいとして、竹中直人が無意味に出たのは不快でしかない。これが最後に悪印象を残したので、点数をさらに落とすことにする。
[DVD(邦画)] 3点(2017-12-21 23:59:33)
579.  オーメン(1976) 《ネタバレ》 
恐らく自分の世代では知らない者のない映画と思われる。6月6日生まれの人ならほとんどダミアン呼ばわりされた経験があるのではないか。 内容に関しては、監督本人も「傑作だ」と言っているのでそうなのだろうが、しかし1976年の時点でどれだけ革新的だったのか、今となってはよくわからないのが残念である。ストーリー展開とか個別の出来事とかに既視感があって驚きがないが、それは他の映画でさんざん流用されたからか、あるいは大昔にこの映画で見たのを何となく憶えていたからか。ちなみに棒が落ちて来るのは最近見た「富江 アンリミテッド」(2011)にもあったので(笑)、いまだにグローバルな影響を及ぼしているとは思われる。 ほか不吉感のあるメインテーマ(Ave Satani)に関しては、曲自体はわざわざ作らなくてもカルミナ・ブラーナのO Fortunaそのままでよかったのではと思ったりしたが、歌詞の方は悪魔の映画ならではの不穏な感じに作ったようである。  一方で、今になってみるとどうも穏健すぎる作りに見えて少々退屈である(首が飛んだのを見ておいて何だが)。悪魔の子があまり邪悪に見えないのは意外だったが、終盤の物理的脅威がイヌと岸田今日子似の乳母だけだったのも盛り上がりに欠ける。 また個人的に不足に思ったのは、善なる神の意思がほとんど感じられないことである。少しくらい救いがあってもいいではないか、という意味もあるが、そもそもアンチキリストというのは正統なキリスト教あってこその対立勢力だろうから、本体に存在感がなくてアンチだけというのも変な気がした。ちなみに吹き曝し感のある丘に建つ教会の門前で悪魔の子が暴れた時に、結果として結婚式に悪影響がなかったらしいのは幸いだった(外の男がドアを閉めたところで安心した)。ここは神の恩寵があったのか、制作側のささやかな良心ということか。 なお余談だが、メギド(ハルマゲドン)というのはエルサレムの南ではなく北にあるのではないか?? 確かに直線距離で90キロ(60 miles)くらいのようだが。
[ブルーレイ(字幕)] 6点(2017-12-21 23:59:30)
580.  アイアン・メイデン 血の伯爵夫人バートリ 《ネタバレ》 
冒頭でEurimages(ユーリマージュ、「欧州評議会」の文化支援基金)とスロバキア共和国文化省・チェコ共和国文化省の名前がクレジットされる。物語の主な舞台であるチェイテ城は現在のスロバキアにあるので、スロバキアにとってはご当地映画的な扱いなのかも知れないが、主人公を含めた登場人物の多くはハンガリー人であるから郷土の偉人のような位置づけではないと思われる。チェコは何の義理があったのかわからない。 主人公のバートリ・エルジェーベト(1560~1614)は題名のとおり「血の伯爵夫人」と呼ばれており、今日では残虐な常習的殺人者として知られている。しかしこの映画はその固定観念をひっくり返すことを目的としていたようで、これまで主人公の悪業とされてきたことを取り上げて、誤解だとか曲解だとかそれなりの事情があったとかいう形で丁寧に言い訳している印象だった。まあ高位の貴族なので臣下や領民の全員を人道的に扱っていたわけでもないだろうが、少なくとも大量殺人をする人物ではないものとして表現されている。 物語としては、残虐行為抜きだと普通にヨーロッパ貴族の没落の話になるのでそれほどの面白味はなく、また時間が長い割にダイジェスト感があったりもして娯楽性が弱い気がする。加えて珍妙な発明をする人物がいたりするのは意味不明で、必然性のないものを無理に入れ込んだようで目障りだった。しかし個人的には最初のところで本物のチェイテ城を映した後に、時代を遡って過去の全体像が復元されていく映像を出していたのは好きだ。こういうのを見ると観光誘客の効果はあるかも知れないとは思う。また死体が運ばれて行った後に黒ネコがニャンと言いながら全速力で道を横切った、というような芸の細かさはある。  ところでこの主人公は流血を伴う残虐行為で知られたせいで、後世の吸血鬼カーミラ(1872年の小説「カーミラ」より)のモデルということになっている。主人公に痣があったのは史実というよりカーミラのほくろに似せたものと思われる。 同様に近代の吸血鬼イメージの元になったとされる人物としては、現在のルーマニアにいたワラキア公ヴラド3世(1431~1476)が吸血鬼ドラキュラ(1897年の小説「ドラキュラ」より)のモデルとして知られている。この人物も残虐行為が多かったとされており、実際に串刺し刑を多用したからこそ「串刺し公」と呼ばれたわけだが、それにしても対立勢力によるネガティブキャンペーンのせいで、殊更に極悪なイメージが後世に伝えられたという説もある。現在のルーマニアでは、オスマン帝国の侵攻に果敢に抵抗した英雄として肯定的評価がなされるようになっていると思うが、これに倣って?この映画でも、悪名高い「血の伯爵夫人」の名誉回復を試みる意図があったのかも知れない。 ただ残虐行為がなかったことにしてしまうと単に陰謀で破滅した未亡人ということになり、この人物に注目する理由自体がなくなってしまう気がするわけだが、しかしそういうこととは別に、事実を尊重する気のない集団が悪意をもって情報操作した場合に、それが歴史として定着してしまうことの恐ろしさを訴えたとすれば、日本人にとっても現代的な意義のある映画といえる。
[DVD(字幕)] 5点(2017-12-14 22:58:13)
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