41. スパイ・ミッション シリアの陰謀
モサド諜報員が主人公のスパイもの。ジョナサン・リース・マイヤーズが一本の線の上を歩いているかのようなヒリヒリした緊張感を醸し出しています。どんでん返しの結末はちょっと無理筋かなと思うもののジョン・ハートのキャリアラストパフォーマンスとなったラストシーンが心に残ります。 [DVD(字幕)] 8点(2019-10-22 04:19:30) |
42. ロープ 戦場の生命線
《ネタバレ》 ユーゴ紛争停戦時におけるNGO団体活動が描かれた秀作。虐殺はおろか一発の銃弾も飛ぶ事が無いにもかかわらず、牛の地雷・十数人の捕虜達・街並みの廃墟・首吊遺体・ぼったくり水販売といったシーンに無残さと人の卑しき心を見せつける脚本が見事。また、ボールの件でNGOと現地人の正義感の乖離は考えさせられる印象深さ。武器を持たず、天下無敵の突破力を見せる事もなく、徒労に終わっても、次の現場に立ち向かう皆様に頭が下がります。作品に華を添えている豪華キャストは彼等に敬意を込めての出演だったのでしょうか。神の思し召しのようなラストショットに救われます。もたつきを感じた展開が何とも惜しいところ。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-20 18:32:36) |
43. ゲティ家の身代金
緊急登板による9日間の追加撮影で金しか愛せない守銭奴ジャン・ポール・ゲティを表現したクリストファー・プラマーに拍手喝采。「巨大な敵と闘っている」ミシェル・ウィリアムズの好演も印象深い。今一つ華に欠けたマーク・ウォールバーグに代わってコリン・ファースをキャスティングして欲しかったなぁ。 [DVD(字幕)] 8点(2019-04-29 01:59:38) |
44. 天国でまた会おう
《ネタバレ》 ピエール・ルメートルによる原作を映画化。ゴンクール賞受賞、セザール賞13部門ノミネート・5部門受賞も伊達ではない秀作。 WW1で命からがら帰還したエドゥアールは戦闘で顎と声を失い、彼に命を救ってもらったアルベールは職と婚約者を失う。戦没者に対する敬意とは裏腹に帰還兵を「よくもおめおめと帰ってこれたものだ!」と嫌悪する社会で、手をとりあって詐欺を企てる二人の友情。エドゥアールと父親(政財界の実力者にして大富豪)の確執。ここに因縁の相手で業突く張りのプラデルが絡む。陰惨で辛気臭くなりがちな話をエドゥアールの思いを代弁する少女の存在が和らげてくれる。エドゥアールが被る数々の仮面の妖しげな美しさ以上に印象深いのが、父親の鉄仮面ぶり。タイトルの意味が分かったシーンに胸が潰れそうに。現実離れ感が強いラストに違和感があったものの目の離せない愛憎劇を堪能しました。 かなり脚色が加えられているそうで、原作を読むことにします。 [映画館(字幕)] 8点(2019-03-25 12:17:35) |
45. ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅
《ネタバレ》 レンタルした理由が今も思い出せないのですが、掘り出し物の逸品でした。絶品だった御年77歳ブルース・ダーン。ヨタヨタ、頑迷、寡黙、痴呆気味、威厳無しと良い所皆無のウディがデイビッドに「何か残してやりたかった」と語る姿に涙が止まらなかった。親としての思いを知る由もない周りの者達のおこぼれにあずかろうとせびる台詞「・・・・・筋を通せ!」真相を知っての掌返しの嘲り、それぞれの生々しさに腸が煮えくり返る。この部分の演出、演技は特筆もの。デイビッドの粋な孝行に「良かった」と思うと共に、自分が父親に何一つしてあげられなかった後悔が押し寄せる。 [DVD(吹替)] 8点(2019-02-04 16:54:06) |
46. アンコール!!
「年金ズ」の面々に、リタイアした勝ち組さんが自治体が支援するナントカ大学に入って優雅なお時間を過ごされているのが思い浮かびます。この方々が間違っても歌うことないヘビメタやセックスがどうたらは映画ならではでしょうが、アーサーならずとも「何じゃこりゃ」で白けます。冒頭のシーンで予想した通りの展開だったありきたりな物語。しかし、キャスティングが奇跡的でテレンス・スタンプとヴァネッサ・レッドグレイヴは鑑賞歴中でのベスト熟年カップル。皺くちゃになっても瞳の色は若かりし頃と同じで「血と怒りの河」「わが命つきるとも」の溢れ出ていた魅力そのままに齢を重ねた姿に感動しました。お二人に点数の全てを。 [インターネット(字幕)] 8点(2019-01-07 13:34:14) |
47. ヒトラーに屈しなかった国王
《ネタバレ》 ノルウェーの7人に1人が鑑賞したと言われる作品。 国王ホーコン7世はデンマーク王室の人間でノルウェーが国民投票で迎えた人物並びにナチスによる侵攻を初めて知る事に。 国家の一大事に、辞任しますという首相やナチス侵攻を手引きしたクヴィスリング(売国奴の代名詞として辞書に出ているそう)といった輩が居る中で、デンマーク人でありながら選んでくれたノルウェー国民の為にという国民ファーストの言動に心打たれると共に、国政に口出し出来ない国王に負担を強いる政治家の不甲斐なさが腹立たしい。 「父上のような国王にはなりません」面と向かって言い放つ皇太子との親子の本音の会話が印象深い。 駐在公使ブロイアーも国王に劣らぬ存在感で、実らなかった奮闘ぶりがやるせない。 ホーコン7世とヒトラー、共に国民に選ばれた人物でありながら、違いを見せつけられる秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-12-28 18:13:56) |
48. 美女と野獣(2017)
《ネタバレ》 苦手なミュージカル仕立ての他愛のないお伽噺に感動したのは目を瞠る映像美の賜物。惹かれて止まなかったのがルミエール、コグスワース、ポット夫人。それぞれの魂が抜ける描写に涙腺が危険水位に。沁み入る歌詞に決壊したエンディングシーンで知ったユアン・マクレガー、イアン・マッケラン、エマ・トンプソンに心底仰天。ディズニーの底力をまざまざと感じた作品。 [DVD(字幕)] 8点(2018-10-29 15:32:23)(良:1票) |
49. プーと大人になった僕
《ネタバレ》 仕事休みでふらりと劇場へ。「実写のプーさんか・・」是非観たい作品でなく何となく購入し鑑賞。苦手なユアン・マクレガーの好演に俳優としていい歳の重ね方をしているのに驚くやら感心するやら。仕事上での窮地における逆転劇に胸がすくのと同時に脚本の上質さに感嘆。大人になるという事は働く事、家族がいれば養う事、定年後も何かしら人様のお役に立つ事だと思います。何もしない事が美徳じゃなくて、近頃よく耳にするワークライフバランスの必要性をラストショットのプーとクリストファー・ロビンの後ろ姿から感じました。大人向けディズニー作品なかなかの良作。 [映画館(字幕)] 8点(2018-09-23 22:44:50) |
50. マンマ・ミーア!/ヒア・ウィー・ゴー
《ネタバレ》 41年前に購入して毎日聴いていた アルバム Arrival / ABBA 1曲目のWhen I Kissed The Teacher が物語の始まりで流れたのには参りました。いきなり大感激。 更に、Knowing Me, Knowing You My Love, My Life Why Did It Have To Be Me にも感無量に。 そして、Waterloo でピアノを弾いている後ろ姿がベニーに似ていると思ったらベニーその人だったのに大大大感激。 初のIMAXでの鑑賞も相まって酔いしれました。 映画用に改編されたのかもしれませんが歌詞と場面が合っていて歌に加えてストーリーもなかなかのものでした。 俳優では光り輝いていたリリー・ジェームズに拍手喝采。 オッチャン3人に10年の時の移ろいを味わいました。 [映画館(字幕)] 8点(2018-08-26 00:39:42)(良:3票) |
51. みかんの丘
ソビエト連邦から独立したジョージア(グルジア)とジョージアから独立を目指すアブハジア自治共和国のアブハジア紛争。自治共和国のエストニア人集落に2人だけ残る(他は戦乱を避けて帰国)木箱職人イヴォとミカン農家マルゴスは眼前での戦闘で生き残った二人を救出介抱する。片や義務感からのジョージア人ニカ、片や報奨金目当てでアブハジアに加勢する傭兵チェチェン人アハメド。4人が暮らした数日間の呉越同舟模様と結末の「エストニア人とジョージア人何が違う?」「何も違わない」がこの上なくやるせない。静かな語り口でありながら民族紛争の無情観を浮き彫りにさせる名作。 [DVD(字幕)] 8点(2018-07-12 14:17:38) |
52. イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
《ネタバレ》 ベネディクト・カンバーバッチ出演以外の知識無く、prime videoで適当に選んだ何の期待も無く観た作品が大当たり。 天才数学者に纏わる物語が見事に交通整理された三つの時系列でもって描かれた奥行きの深い作品。 第二次大戦時ドイツ軍の暗号解読に成功した勲章ものの功労者に対するヒトラー総統と大して違いのない国の仕打ちが余りにも酷い。チャーチルは何をやっとったんじゃ(怒) 収監よりホルモン治療を選び衰えてしまったチューリングがクリストファーと別れたくないと泣く姿に胸を衝かれる。非業の最期をテロップのみで示してくれた演出により、悔し涙が止まらない事態は避けられた。半世紀の時を経ての謝罪やら恩赦に、国としての取り返しのつかない損失を思い知ればいい。 主役はベネディクト・カンバーバッチ以外考えられず、一世一代の名演技に拍手喝采。 [インターネット(字幕)] 8点(2018-05-03 23:02:26) |
53. トランボ/ハリウッドに最も嫌われた男
《ネタバレ》 エドワード・G・ロビンソンが卑劣な(多分)圧力に屈してしまった姿が物凄い衝撃。信じられなくて悔しくて悲しくてやり切れない。公聴会での証言後ジョン・ウェイン(だったか)が「これで仕事の依頼が殺到するよ」と言うのに撃ち殺してやりたいと思った。トランボの不屈の精神に感嘆すると共に類い稀な才能と妻子の支えと偽名が使える脚本家であればこその復活劇。 エリア・カザンが出てこなかったのは何故か、一介のコラムニストがあそこまでふんぞり返っているのは何故か(ヘレン・ミレンのクソババアぶりがナイス)、トランボの政治信条は如何なるものだったのか。何を思ってこんな邦題をつけたのか。疑問がいっぱい。 トランボの受賞スピーチと聞き入るエディの姿に涙が溢れた。 どんな事があっても裏切りはアカン。裏切って苦しむ(のなら)裏切られるほうがマシやわなぁ。 わたしは、良心を今年の流行に合わせて切断するようなことはできません、と突っぱねたリリアン・ヘルマンのような者もいたのに。 ハァ~、知りたくなかったなぁ・・・ [DVD(字幕)] 8点(2018-04-23 02:12:19)(良:1票) |
54. シェイプ・オブ・ウォーター
《ネタバレ》 乳児に負った傷がもとで言葉を発せない女性とアマゾンから連れてこられた言葉を発せない半魚人の恋。互いが自分の事を分かってもらえる事の喜びが滲み出ており、半魚人の得も言われぬ美しい目が語る胸中が切なさをかきたてる。個人的に助演男優賞が相応しいと思ったマイケル・シャノン演ずる力だけが正義と信じているストリックランドが本作のキーパーソン。マイノリティに対するこの男の言動に「便所のような国」発言の大統領が思い浮かぶ。60年代東西冷戦と半魚人の関わりの掘り下げが浅いのが惜しいものの、ラストショットまで目の離せない、余韻の深い、記憶に留まる秀作でした。 [映画館(字幕)] 8点(2018-03-16 01:39:54) |
55. キングスマン: ゴールデン・サークル
《ネタバレ》 予備知識無しでの初日初回の鑑賞。お目当てコリン・ファースの回想シーンで胸がキューン。待ってましたの登場シーンの冴えないオッチャン姿にショボーン。 マーク・ストロングとの別れの場面(・・・Country roads take me home To the place I belong West Virginia mountain mamma Take me home country roads・・・・ 熱唱は本作一番の名場面で左隣の人と一緒に小声で歌いながら胸がジーン)後の活躍にウットリ。 特筆すべきはエルトン・ジョンでコリンと共にロボット犬と戦う姿に笑わされ、「今日は水曜日だろ」のWednesday night's Alright for fightingに懐かしさを覚えました。 折角出演してくれたジュリアン・ムーアの悪党としての淡白さが(大女優にはこれが精一杯か)惜しい。 コリン・ファースのファンの方には楽しめると思われる快作。 [映画館(字幕)] 8点(2018-01-05 16:46:17)(良:2票) |
56. 二ツ星の料理人
《ネタバレ》 ネズミを放ってミシェルの店を潰した報いを受け「死にたい」と取り乱すアダム。リースが作ってくれたオムレツは腹にも胸にも沁みたでしょう。味わって食する(ヒトの特権)者に料理を提供する超一流の料理人に欠けていたものに気付いた今後に希望が持てる結末の余韻を味わいました。 [インターネット(字幕)] 8点(2017-08-18 13:56:57) |
57. アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場
《ネタバレ》 会議室で起きている事件の中で決断に尻込みするリーダーの有り様が生々しく描かれており、手に汗握る展開に見入りました。80人を護る為に蔑にされた1人の命。事実を捻じ曲げた大佐の行為に正義と善の違いを痛感します。 [DVD(字幕)] 8点(2017-07-24 13:20:12) |
58. 手紙は憶えている
《ネタバレ》 「オットー・ヴァリッシュは君だ」まさに青天の霹靂でありました。マックスの深謀遠慮は憎悪が生きる糧となっていたようで胸の詰まる結末でした。痴呆症のヨタヨタの老人を演ずる矍鑠としたクリストファー・プラマーの衰えぬ役者魂に喝采を送ります。 [DVD(字幕)] 8点(2017-05-30 00:55:59) |
59. リスボンに誘われて
身投げを救った女性のコートにあった本とリスボン行きの乗車券。女医との出会いのもととなった自転車事故。「まるで映画のような話」を地で行く展開。1冊の本が繋ぐ瑞々しい過去とほろ苦さを噛み締める現在の模様が丹念に描かれている。仕事を放り出しての探索で彼我の差に落胆を抱えたまま帰郷しようとするプラットホーム。ラストシーンが深い余韻を残す。 [DVD(字幕)] 8点(2017-05-22 10:42:47)(良:1票) |
60. ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ
《ネタバレ》 「奇蹟がくれた数式」を彷彿させる内容で、カリスマ編集者マックス・パーキンズと夭折の天才作家トマス・ウルフの交流が描かれています。ベストセラーが世に送り出される過程で編集者の役割が如何に大きなものかを認識させられます。奔放な作家と冷静沈着な編集者の言葉を削るせめぎ合いは実に見応えがありました。また、仕事に没頭する二人が片や妻に寂しい思いをさせ、片や愛人に嫉妬させているのに現実味を感じます。息子の様に思って接していたという年齢差は感じられなかったものの、紳士のニューヨーカーを演ずる英国紳士コリン・ファースは安定感抜群でまさにはまり役、絶品でありました。対するジュード・ロウは迸る情熱と未熟さを好演しており劣らぬ存在感でした。曲折を経た末のラストシーンで帽子を脱いで涙するパーキンズに、本作のキャッチコピー「傷一つ残らないなら真の友情とは言えない」が重なります。 [DVD(字幕)] 8点(2017-04-28 00:36:30)(良:1票) |