1041. マングラー
時々、ホラー映画なんかのあらすじを読んで、どうしてこんなネタで映画を一本作れるんだろう、と不思議に思うこと(だから要らぬ関心を持ってしまうこと)がありますけれども、本作もそういった種類の作品ですね。何しろ、洗濯したシーツをプレスする機械が、人間を襲うんだってさ。こんなネタで映画を一本撮ってしまおうという、勇気と厚かましさ。「地獄のデビルトラック」のスティーブン・キングが原作で、「悪魔の沼」のトビー・フーパーが監督。と聞けば、もはや付ける薬もないというか。 こういう作品を見てると、世の中ちょっとスティーブン・キングに甘すぎないかい?という疑問が湧いてくると同時に、世の中ちょっとトビー・フーパーに厳しすぎないかい?という疑問については引っ込めざるを得なくなる訳ですが、それはともかく。 プレス機が襲ってくる、というよりはコレ、劣悪な環境がもたらす労働災害なのであって、中には「これこそプロレタリアート映画だ!」というヒトもいるかもしれません。人々を威圧するような巨大プレス機と、日々、危険と隣り合わせの作業に従事させられている従業員たち。ただ、このプレス機、もっと非人間的に容赦なくガッチャンガッチャンやってくれると、「蟹工船」にでも何にでもなったかも知れませんが、実際に映画に登場するのは、いかにも時代がかったレトロっぽいプレス機。人間の尊厳自体を圧殺するような迫力は無くって、むしろ、どこか懐かしさを伴った不気味さ、なんですね。やっぱりあくまでこれはホラーです。 で、こんなネタで映画になるのかと言えば、洗濯工場のロバート・イングランド社長がやたら不気味だったり、なぜかドサクサに紛れて冷蔵庫まで人間を襲ったり、と、よくわからんながらもしっかりホラーやってて、10分もあれば充分かと思われたネタが、気がついたらそれなりに膨らんでて。 で、いよいよ、「プレス機が人間を襲う」という看板に偽りなしのクライマックスへと突入。 とにかく、製造業の経営者の皆さんは、本作を観て、自社工場の安全性についてもう一度確認されたし。 [DVD(字幕)] 7点(2019-08-16 21:16:26) |
1042. 交渉人 真下正義
「踊る大捜査線」の本シリーズ2作に続く、スピンオフですが、前作2作では舞台としてお台場が想定されていたのに対し、こちらは東京都心部そのものが舞台。犯人に操られた試験車両が、地下鉄の路線を暴走する(この試験車両の風貌を見てると、なんでラピートがこんなところを走ってるの?とか思っちゃうのですが)。その謎の犯人に立ち向かうは、交渉人サンタマリア。 という訳で、パニック映画の要素を取り込んでいて、よくこんな撮影をやったもんだ、と感心させられます。地下鉄の構内・線路のさまざまな光景が登場し、エキストラもタップリ動員して、圧巻です。 主人公のサンタマリアは犯人との交渉役なもんで、基本的にはコントロール室で犯人とボソボソしゃべるだけですが、代わりに寺島進が街に出て暴走し、笑いとスリルを提供してくれます。 ヒッチコックを模倣したような後半の展開の先には、楽しくもバカバカしい顛末があり、しかしここでようやく主人公も、事件が起きている「現場」へと向かうことになる。少し苦味のある、大団円。 前2作よりも、楽しめました。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-08-15 18:38:09) |
1043. ブレイクアウト(2011)
妻、娘と大邸宅で暮らすニコラス・ケイジのもとに強盗団が押し入り、ダイヤを出せ、金を出せと彼を脅す。とっとと出せばいいものを、なんやかんやと言い逃れするもんで、オハナシはズルズルと延びて、気がついたら本作はワン・シチュエーションもののサスペンス映画になってました、という趣向。犯人グループ側も難ありのメンバーを抱えている上に、この家族も家族3人それぞれ、叩けば何かと埃が出るもんだから、事件は迷走。犯人たちも困るけれど、ニコラスケイジ一家も困っちゃう。両者痛み分け。 まあ、この困難さえ乗り越えられたら、家族3人、また仲良くやっていけそうだよね、という大変に前向きなオハナシのような気もしてきますが。 という訳で、そもそもこんな面倒な家に強盗に入るヤツが悪い、というのが結論ではありますが、事件の迷走ぶりが、面倒くさいんだけど楽しめて、コンパクトにまとまっているのも魅力的です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-08-15 18:03:53) |
1044. ブレイクアウト(1975)
冴えないオッサンの見本みたいなロバート・デュバルが刑務所に入れられたもんで、その脱獄を我らがブロンソンが請け負う、というオハナシ。特に難攻不落の刑務所という訳でもなく、田舎のノンビリとした雰囲気です。一応、デュバルが刑務所に放り込まれた経緯にはウラがあって、それなりに危険なミッションなのですが、あくまでノンビリ。 で、最初に立てた作戦はというと、ランディ・クエイドが女装して刑務所に入り込み、ロバート・デュバルと接触しよう、なんていう、ほぼあり得ない作戦。そりゃ無理でしょ。とは言えこの頃のランディはまだちょっと、デニス・クエイドの面影(?)もありますが、それでも無理です無理。やる気あるのかよ。 で、あえなく失敗した後、ようやく本気の作戦になるのですが、これもまあ、ノンビリしてます。ノンビリはしてるけれど、ヘリを使った大胆な作戦。ブロンソンの操縦がヘタクソなもんで、大胆さもひとしお。それにしても、自動車、ヘリ、飛行機が並んで走るシーンが妙にカッチョいい。 この映画を見てよくわかるのは、田舎の刑務所をノンビリ脱獄するには、缶ビールが必須! ってことですな。一緒に呑みたくなること請け合い。 [DVD(字幕)] 8点(2019-08-15 17:14:50) |
1045. アルキメデスの大戦
《ネタバレ》 映画冒頭に大和の最期を描き、そこから時代を遡って大和建造に関わる物語を描く、という構成。本来はこの作品の物語の「外」にある大和轟沈のエピソードを、冒頭で我々に見せるのは、ひとつにはスペクタクルシーンの提供、ハッキリ言うとサービスなんでしょうけれど、この構成が成功したと言えるかどうか。そりゃま、確かに我々もその迫力を、ハッキリ言うと楽しむ訳ですが。 ただ、将来訪れる日本の敗北と、この大和の最期とは、物語の上で重ねられている訳だから、それを見せるシーンとしては、あまりに駆け足で、バランスが悪いような気もします。その最大の特徴である「巨大さ」が充分描かれる前に、どこか模型のような機械的な動きで横転し、爆発する大和。 ヤマトつながりで言うと、10年近く前の大失敗(?)を少し思い出してしまうのですが・・・。 と、それはさておき、時代が遡って本編の物語が始まると、もう菅田将暉の独壇場。エキセントリックな言動とオーバーアクション気味の演技で、物語をグイグイ引っ張ります。物事を何でも「美しい!」とか「美しくない!」とか評している姿は、仮面ライダーWのフィリップ役でしきりに「興味深い!」とか言ってたのを彷彿とさせたり。 脇を固めるベテラン勢は控えめの演技で、橋爪功は多少オーバーでコミカルに敵役を演じてますが、舘ひろしの山本五十六も一歩引いた感じ(それでも人柄を表すために、しばしば彼が披露したという逆立ちエピソードなどは盛り込まれてますが)。あくまで熱い菅田将暉と、おそらく同じくらいの熱さを内に秘めた柄本佑を中心に据えて、若い役者さんに存分に表現してもらう、この点は間違いなく本作の魅力となってます。 熱い言動の一方で、図面にじっと見入る菅田将暉の視線。彼の視線、彼の横顔が我々を惹きつけますが、一方、映画の終盤で、敵役である田中泯が、君と自分は同種の人間だ、などといって横顔を見せると、確かにそこには同種の横顔、同種の視線がある。 静かな、しかし圧倒的な説得力を持つクライマックスだと思います。たとえ冒頭シーンが無かったとしても。 [映画館(邦画)] 7点(2019-08-15 07:24:10) |
1046. ファンハウス/惨劇の館
冒頭にいきなり殺人鬼登場か、という場面がありますけれど、もちろんこれは単なるカマシ(少年のイタズラ)で、これが何かの伏線になっているのかというと、全くなっていないというのがもう実に開き直った感じで。この少年、何かやらかしてくれるんじゃないか、と期待してしまうのですが、そりゃ期待する方が悪い、トビー・フーパー作品ですから。 という訳で、やっぱりというか何というか、脈絡のあまり感じられない内容です。そう、ここはまさに期待通り。 前半はカップル2組が訪れた見世物小屋のオドロオドロしさが描かれて、興味のない人にとってはどうでもいいシーンが延々と続くことになるのですが、興味のある人にとってはそれなりに不気味さが堪能できる、いかにも乱歩ワールドな感じです。 で、無意味にウロチョロしていたフランケン君が、後半、物語の主役に躍り出てくる。ついに起こる惨劇。って言ってもコレ、実際は、不幸にして起こってしまった実に不幸な事件、なもんで、コワがっていいのやら同情してよいのやら。 お化け屋敷で襲われる、惨劇が発生する。ってのがすでに何だか、すべてがもともと作り物っぽくウソくさく見えちゃう、という副作用を抱えているのですが、作品のチープさとはよくマッチしてます。何より、クライマックスのこのしつこさ、ってのは、『悪魔のいけにえ』の面目躍如、といった感じもいたします。 特殊メイクの怪人物より、奇妙な仕掛け人形たちの方が、いい味出してますね。 [DVD(字幕)] 6点(2019-08-13 11:22:50) |
1047. 沈黙の戦艦
露骨に『ダイ・ハード』の二番煎じなんですが、早くも出涸らしの印象。この上もなく薄味です。 高層ビルならぬ戦艦ミズーリが武装集団に乗っ取られて大勢が人質に取られ、主人公が孤軍奮闘、敵に立ち向かう。爆発からは飛び降りて逃げる、なんてところまでしっかり『ダイ・ハード』を踏襲している訳ですが。でも『ダイ・ハード』が開始早々から登場人物たちの人間関係を緊迫感を持って描き、上々の滑り出しだったのに比べると(タカギ社長にまで見せ場を準備する周到さ)、本作の冒頭のヌルさはちょっとヒドいんでは。ダラダラとしたヌルい展開から唐突に事件が発生する、という意外性を狙ったのかも知れないけれど、主人公を含め登場人物の一人として我々の関心を引くことがないまま事件に突入し、艦長なんてもう、存在感ゼロ以下と言っていいくらい。 中盤は戦艦の中の攻防戦、だけど、通常我々がその中を知ることができない戦艦を舞台にした以上は、その舞台設定の面白さをもっと出して欲しいところですが(『ダイ・ハード』ではエレベーターシャフト、ダクト、工事中の階、いろいろありましたね)、本作には印象的な場面なんかロクすっぽ出てこなくって、適当なセットで撮影したようなシーンばかり。 セガールの格闘技系アクションがもうひとつの見どころで、これはまあ、まだ痩せてる当時のセガールだし、それなりにしっかり動いてますけれど、相手が武装集団ですから、素手で戦うシチュエーションにも限界が。後半はあまりセガールが活躍し切れていないような。 同僚たちが大勢、人質になっているのを後目に、さっき知り合ったばかりのプレイメイトの身だけを必死に守ろうとするセガール。同僚の何人かが敵に殺害されたのに、最後はうれしそうにプレイメイトとチューするセガール。こういうケーハクさだけは、『ダイ・ハード』には無かった本作の良いところかな、という気もいたします。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2019-08-10 14:54:14) |
1048. 多羅尾伴内
多羅尾伴内こと藤村大造が終盤に、謎解きと言ってよいのかどうなのか、事件の真相について何やら総括めいた事(被害者がどうの、加害者がどうの、というヤツ)をのたまうのを聴くと、「大して面白い事件でもないように思ったけど、なるほど、そういう捉え方もあるのか」と、ちょっと感心してしまいました。確かに、誰が真の黒幕なのか、二転三転、なかなかよく練られたミステリであったことに気づかされます。でも逆に言うと、せっかくの練られたオハナシなのに、イマイチその面白さが観てて伝わらないんです。 まあ、アキラがギター爪弾きながら「昔の名前で出ています」を熱唱するなど、中盤はストーリーと関係ない歌謡ショー状態。もともとそんなにミステリとしての完成度を追求した作品でもないんでしょう、アキラの変装、アクション、猟奇性といったものが盛り込まれてさえいれば、それで良し、といったところ。 それにしては全体的に大人しい印象に、収まってしまってますが。 [DVD(邦画)] 6点(2019-08-10 14:17:16) |
1049. THE GREY 凍える太陽
冒頭、主人公がボソボソと湿っぽい独白が続いて、一体コレはどういうオハナシなんだよ、ちっともラチがあかんわい、と思おうかとした矢先、唐突に主人公の乗った飛行機が事故を起こし、雪山でのサバイバルに突入。埒が明かないどころか、むしろ性急過ぎる印象。もうちょっと前フリがあってもよろしいかと。 で、外は猛吹雪。よくこんな撮影したな、と思わせるものはありますが、よほど撮影が大変だったのかどうなのか(?)、意外に見栄えがしないのが残念。この後、物語は襲ってくる狼との戦いとなるのですが、この辺りの描写も画面をゴチャゴチャさせて、いかにもゴマカしました、という風に見えてしまうのがますます残念です。そういうゴマカシっぽい描写はその後もあちこちに見られ、さらには、主人公の人となりがあまり描かれていない分、物語にも厚みが生まれず、どうにも淡泊な感じがしてしまいます。 ただ、その路線を最後まで貫いたおかげ、といってよいのかどうかわかりませんが、終盤が近づくにつれて独特の詩情のようなものが生まれてきて、「この物語、最後はどうなってしまうんだろう」というのとは違った着地点にもってきたのは、何だかウマイことやったな、と。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-08-04 21:51:48) |
1050. 男はつらいよ 寅次郎心の旅路
当時のウィーン市長が寅さんのファンだったもんで、ラブコールをいただいて実現した、『男はつらいよ』シリーズの海外進出。ではあるのですが。 残念ながら、寅さんを海外に連れ出す、という設定を無理やり作り出すだけでもう限界、という印象。あとは大した起伏もなく、すみません、以前観てた時は、途中で居眠りしちゃったんです。 だいたい、肝心の寅さんがヒマそうにしてるし。途中から、寅さんが遠い異国で連れ(柄本明)とはぐれてしまう、という展開になり、本来ならこれは大事件でいくらでも盛り上げようがあるだろうに、どういう訳か、本作の物語は妙に大人しいんです。寅さんは竹下景子に何となくフラフラついていくだけ。一応彼女はマドンナ役だから、寅さんは彼女にホレてる、ということになるんでしょうが、それすらもハッキリしない。一方の、騒動の発端である柄本明も、独自にウィーンを楽しんで、寅さんの物語にはロクにからまないし。 無為に時間だけが過ぎてゆき、なんとなくそれぞれがバラバラに納得して、物語が終わってしまう。 あと、第三の男のパロディなんかも出てきますけれど、別に面白くも何ともないですしね。これを言っちゃあオシマイなんですけれど、男はつらいよシリーズの根本的な欠陥というのは、コメディなのに山田洋次カントクにお笑いのセンスがない、ということに尽きるんじゃないでしょうか(あ~あ、言っちゃった)。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2019-08-04 18:16:15) |
1051. 片腕マシンガール
「プラネット・テラー」は片足マシンガールだったけど、こちらは失った片腕にマシンガン取り付けて。 で、どうなるかといえば、マシンガンをチェーンソーに付け替えたら、アッという間に「キャプテンスーパーマーケット」に早変わり。 女子高生が制服のまま戦うカッコよさ、ってのは「キル・ビル」を思い出すけれど、栗山千明がふりまわしてた鉄球よりもさらに凶悪な武器を、本作では主人公ではなく敵役のヤクザの親分が振り回してます。これ、いわゆるアレですよ、「空とぶギロチン」です。 で、親分の奥さんは奥さんで、さらにさらに凶悪な殺人兵器・ドリルブラを披露してくれるのですが、見ててふと、「鉄男」のドリル〇〇〇を思い出してしまいました。 結局、本作には一番近いのは一体何なのか、ってことになりますが、ずいぶん昔、ワハハ本舗か何かのネタで「手首切って噴き出る血で水芸」ってのがありませんでしたっけか。そういうイメージです。まあ、噴き出ること噴き出ること。豪快に血をぶちまけてます。 ここまでくると、もはや「痛そう」ってのは、無いんですね。花火みたいなもんです。もちろん血が噴き出た本人は悲鳴を上げるけれど、花火には「音」も必要ですから。「音」があるから、花火は一層の迫力が出るんです。 という訳で、過去のいろんなモノをちょっとずつパクって、残酷描写で味付けしてみました、というような作品ではあるのですが、でも、決してそれだけにとどまらないのです。いちいちアクションがズバリとキマって、いちいち見得を切って、とにかく、カッコいい。異常なほどに、カッコいい。いや、異常なのは残酷描写の方ですが。でも、せっかくなら、眉をひそめずに映画を楽しむよりは、眉をひそめて楽しんだ方が、より楽しいでしょう、と。 いや、本当にそうだと思います。こんな映画でまさかと思うほど楽しんで、まさかと思うほど映画が短く感じらえ、まさかと思うほど、充実したのでした。やっぱり一番近いのは、昭和のダサカッコよさ、じゃないでしょうか、これは。 [DVD(邦画)] 8点(2019-08-04 17:43:33)(良:1票) |
1052. 弾丸刑事(デカ) 怒りの奪還
悪の組織と戦う一匹狼(でもないか)の刑事が、孫を誘拐され、人質奪還に挑む。という、邦題がすでにストーリーのすべてを語りつくしているような作品です。あとはもう、ダニー・トレホのいかつい顔を鑑賞するだけ、ってなところ。何しろ、現代の特殊メイク技術をもってしても再現できないといわれている顔ですから(誰がそんな事を)。 で、せっかくこんな「カタギではありません」という顔してるんだから、もっと暴走してくれることを期待しちゃうんですが、この顔にしちゃあ、意外にマトモ。まあ、孫がいるってんだから、爺さんにしちゃ暴れてる方ですけれども。ただそもそもこの映画、おカネをかけた形跡がどこにも見られないもんで、正直、地味です。製作にロバート・ロドリゲスが名前を連ねてるんですが、このおカネのかかって無さ。ダニー・トレホ繋がりで名前を貸しただけなのか、それともシブチンを貫いて第2のロジャー・コーマンを狙っているのか。 ちょっとだけ「マチェーテ」を引きずっていて、本作では敵がナタを持ってて、ダニー・トレホに容易く銃殺され、バカにされる、という展開。ますますフツーで、ますます地味ですね。 それにしても最近の映画、血というものがやたらドス黒く描写されてて、これが「リアル」ってことになるのかもしれないけれど、何だかバッチい感じがしちゃいますね。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2019-08-03 09:48:05) |
1053. この世界の片隅に(2016)
最近も吉村昭の「戦艦武蔵」を読んでたら、この巨大戦艦を建造するという計画が極秘中の極秘なもんで、造船所の方を見てたというだけで一般人が片っ端から連行されてしまった、みたいな話が出てきて、巨大戦艦建造という一大プロジェクトの前には、個々の人間の運命なんて芥子粒みたいなものなんですけれども(そしてその膨大なエネルギーが注がれたプロジェクトの、果敢無い顛末)。 で、本作でもやっぱり、主人公がうっかり港の絵を描いてしまったばかりにどえらく叱られる場面がありますけれども、本作から受ける印象って、真逆なんですよね。戦時下だろうが何だろうが、あくまで市井の人々が中心にいて、その一人であるにすぎない主人公の姿が描かれる。その喜怒哀楽こそが、重大事件な訳で。戦時下には戦時下の暮らしがあって、「たくましく生きている」と単純には言えない、つらさ、恐ろしさとも向き合わなければいけないんだけど、やっぱり生きている以上は、生活していくしかない。そのとめどなく続いていく日常、ってのは、やっぱりこれは「たくましさ」なんだよなあ、と。 でも、かけがえのないものを失う悲しさ。物語の前半に登場する「指さし」の仕草が、印象的で。 [DVD(邦画)] 9点(2019-08-01 22:00:28) |
1054. 万引き家族
色んなものを安く売ってくれているスーパーマーケットというところが、私は大好きなもんで、万引きなんかされては困るんですけどね。しかもこんな子供に万引きさせるなんて、もう、ドン引きしてしまいます。←結局、コレが言いたかっただけなのか。 それはともかく、この家族。「店においてあるものはまだ誰のものでもないもの」「万引きも店がツブれない程度ならいいんじゃない」という、迷惑といえば実に迷惑なことを仰る訳ですが、とりあえずそういう考え方らしい。で、その考え方に立つとして、では、「まだ誰のモノでもない“幸せ”」が道に落ちていたなら、それは持って帰ってもよいのではないか。これはそんなオハナシですね。持って帰っちゃっても他の誰も困らない“幸せ”。それ自身が持って帰ってもらうことを望んでいるような“幸せ”。 だけど、よその子を黙って連れて帰っちゃあ、アウトな訳です。本作においても、万引きという明らかな犯罪行為からの流れで描かれていて、間違いなくアウトな訳です。だけど。 だけど一方では、「ささやかな“幸せ”」からの流れとしても、それが描かれている。テキトーで、ささやかで、でもかけがえがなくって、なのに果敢無くて。だから、切ないんですね。 カップ麺を食べる、というささやかな幸せ。でも映画とかでカップ麺を実に美味そうに食ってるシーンを見ると、羨ましさを通りすぎて、何だか腹が立ってくるのは、どうしたことか。まあ、自分も後で食べればいいだけの話なんですけれども。 まんぷく姐さんとリリー・フランキーが愛し合うシーンの、ささやかな幸せ。股間のおでん君が映らないように、気をつけましょう。って大きなお世話。 [地上波(邦画)] 7点(2019-07-30 21:28:14) |
1055. インシディアス
怪奇現象が続発する家に調査にやってくるおっさん二人組が素晴らしくポンコツで、こういうヒトを見てるとつい『ポルターガイスト』なんかを思い出したりもするのですが、本作では残念ながら、突然自分の顔をむしり始めるあの素晴らしく意味不明な行動を取ってくれたりはしなくって、そういうところがこのおっさんたちの良くも悪くもポンコツなところなのですが。 そういったところからもわかるように、本作、ビックリドッキリなシーンの連続で我々をビックリドッキリさせつつも、残酷シーンに頼っておらず、その辺りは好感が持てます。いや、好感ってのもヘンな話で、恐怖映画らしいヤな感じを充分に味わわせてくれる作品です。 で、この怪奇現象に悩まされている家族の中で、実はこの人がキーパーソンだったのか、とわかってみると、なかなか周到に伏線が張られていたことにも気づきます。よくできています。 で、大いに楽しんでおきながら、ここで贅沢な事を言ってしまうのですが、こういう怪奇映画に対して、「よくできてるなあ」と感心させられてて、いいのかなあ、という気も。感心はするけれど、理屈が目立ってしまって、あまりゾッとはさせられない。もっと理不尽で意味不明でもいいと思うのだけど。 それより、ところどころで姿を現すオバケたちの描かれ方が、どうにも『シャイニング』のパロディぽくって、音楽までかつてのペンデレツキ作品を模倣したようなテイストでわざわざ『シャイニング』っぽさをアピールしており、こういったあたりも本作、ちょっと「作り物」っぽい感じがしてしまうんですけどね。 ま、『ポルターガイスト』みたいじゃないからダメだとか、『シャイニング』みたいだからダメだとか言うのも、実に理不尽なハナシなんですけどね(笑)。怪奇映画たるもの、こんな理不尽な感想を上回るような理不尽さを、ぜひ。 [DVD(字幕)] 7点(2019-07-29 21:28:37)(良:1票) |
1056. ユージュアル・ネイバー
冒頭の少年野球での事故のシーンから、家に閉じこもっている病弱な車いすの少年のエピソード、馴染みのない土地で祖父母と暮らすことになった少女のエピソードへと、断片的に提示されて、開始早々から油断ならない独特の雰囲気。やがて少女は、たまたま訪れた家の部屋の中にいた病弱少年と知り合うのですが、観てるコチラも身構えているもんで、ああ、きっと、「これらの登場人物たちの誰かは、実在しないのでした、幽霊なのでした」とかいうパターンだったりするんじゃないのー、とか、適当なことを考えるのですが、さにあらず。それよりもずっとおぞましい真実が、やがて明らかになっていくのでした。 少女を毛嫌いするかのごとく、少年から遠ざけようとする、彼の母親。訪問することを禁止された以上は、禁止を破るのが散文の散文たる所以ですから、そこにサスペンスが生まれる訳ですが、やがて意外な事実が明らかとなり、サスペンスの度合いも急上昇。さらに、その「意外な真相」が二重底になっていることに気づかされ、感心しつつもサスペンスは最高潮。なかなか心憎い構成になっています。 原題はThe Harvest。庭のトウモロコシに関係するのかと思いきや・・・。 それにしてもピーター・フォンダ。年老いてなお、カタギには見えませんな(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-07-27 07:52:03) |
1057. 座頭市あばれ凧
いつも誰かに命を狙われている座頭市、今回もいきなり銃撃を受けて負傷。それが縁となって、川渡しを仕切る親分のもとに居候することに。 坊主頭にズングリ姿の勝新が居候しているのを見てると、なんだかドラえもんみたいに見えてきちゃうんですけどね。 例によって例のごとく、ガツガツとモノを食らう座頭市の健啖ぶりが、圧巻です。白ご飯だろうと何だろうと、ドラ焼きのごとく食って食って食いまくる、このバイタリティ。 でまあ、居候生活が平穏に続く訳もなく、座頭市の前にはいつも事件が待ち受ける。縄張り争いの果てに、ついに血で血を洗う惨劇へとなだれ込むことになるのですが、恩人の復讐に立ち上がる座頭市、明るい場所でも充分強いのに、視界の効かない暗闇では、もはや鬼神のような強さ。あの「暗くなるまで待って」ってのはもしかして座頭市をヒントに作った舞台&映画なんですかね(多分違うと思う)。それはともかく、暗がりの中で、刃先に蝋燭の炎を載せた仕込み杖を振り回すと、それにともなって照明を切り替え、まさに光の乱舞ともいうべき殺陣を展開してみせてくれます・・・。 とは言え、このクライマックスを除くと、もうひとつ中身が薄い気もしなくもないんですけどね。 あの、急に川に入って、急に水に潜って、ユルユルと敵を切りまくる、水中殺陣のシーンだけは、何がしたかったのかよくわかりませぬ。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2019-07-24 20:07:40) |
1058. 緋牡丹博徒 鉄火場列伝
これまた、人物配置が実にお見事で、印象的な登場人物たちを巧みに絡み合わせて、そりゃもう面白くならない訳がない、というもの。 緋牡丹お竜を取り巻くは、カタギになって藍の小作人たちの権利を守る労働組合委員長(?)になった待田京介。少女を連れた渡世人・鶴田浩二。敵役もそれぞれにワルさの度合いが異なりそれぞれに魅力的だけど、何と言ってもアヤシイのが、ピストル片手に上から下まで真っ白のスーツ姿の丹波哲郎。もうちょっと足が長くてスマートだったらもっとサマになってたんですけどね。こういった個性的で魅力的な登場人物たちが惜しげもなく投入され、物語の中に的確にハメこまれて、これじゃもう、熊虎親分の出番は無いでしょ、と言いたくなるくらいなのですが、そうはいくかと熊虎親分もとってつけたような大活躍を見せてくれます。 ここまでくると、もし登場人物を誰かひとり削らないといけないとしたら、緋牡丹お竜を削るしかないんじゃないか、と。 いや、もちろん彼女にも見せ場は準備されていて、カタギの立場を貫こうとする待田京介との関係とか、賭場シーンで見得を切って見せるところとか、いろいろあるんですけどね。しかしクライマックスの立ち回りにおける彼女の活躍もやや抑え気味。祭りの終わった阿波の地から、静かに姿を消していく。そんな印象です。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2019-07-23 20:41:02) |
1059. 北海ハイジャック
北海の石油プラットフォームに爆弾が仕掛けられ、武装グループが大金を要求。それに立ち向かうは、ロジャー・ムーア率いる精鋭部隊。とくればもう、ナンボでも見どころ盛り上げどころを入れられそうなもんですけれども。よくもまあ、ここまで地味に仕上げたもんです。 そもそも精鋭部隊には見えないオッサン集団、である上に、冒頭のチンタラ訓練シーン以外は、終盤まで出番がなく(終盤も大して活躍しない)、親分のロジャー・ムーアだけが、ひたすらエラそうにふんぞり返ってるだけ。その姿は、「推理もしない安楽椅子探偵」とでもいいますか。 しかし、ノーマン・ベイツが(じゃないけど)占領したエスター号の操舵室のシーンなんか、これこそスタジオで適当に撮影しても何とかなりそうなもんなんですけど、どうやら、本当に大揺れしてる船の上で撮影したみたいな臨場感。こういう部分は、いいですねえ。さらに嵐も加わってきたりなんかして。 最後まで地味一直線、かと思いきや、ラストで苦し紛れの危機一髪ハラハラシーンを準備しており、おいおい誰がいまさらこんな演出でハラハラするかよ、と言いたくなる気持ちもあるのですが、「ここでハラハラしないと、他にハラハラするところ、無いヨ」と言われている気がして(「酒井くにお・とおる」とか「テント」とかのネタですね、これは)、一応、ハラハラしておくのでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-07-22 20:38:27) |
1060. 俺たちに明日はない
《ネタバレ》 『明日に向かって撃て!』と本作を比べる必然性は何にもないんだけど(でもつい連想する)、アチラは「山の映画」で、コチラは「平地の映画」、これだけでもすでに、コチラに分が無い。ってのは言いがかりだとしても、あまり魅力的な光景は登場しません。「川」が目を引くぐらい。基本的に、主役2人にスポットが当たってて、それも、陽気な音楽に乗って田舎でチョコマカとミニ強盗やってるイメージ。仲間も兄夫婦と、頼りない男一名だけで、どれもこれも小人物ばかり(兄の妻とボニーとの間にはつまらないケンカが続く)。この映画ではむしろ、スペクタクル感というものは排除されています。 しかしいくら陽気でコミカルな音楽をBGMに流そうと、人を殺めた彼らは次第に追い詰められていき、ボニーの詠む詩にも彼らの悲劇的な最期が暗示されることになります。 冒頭、ボニーとクライドが唐突に出会って物語が始まったように、ラストも唐突に二人の死で幕を下ろし、観る者に鮮烈な印象を残しはするのですが、どこか「それだけ」という印象も無いでは無く。なんだか、起伏が乏しいんです。 その、前後の唐突さと、不思議な起伏の無さが、本作を独特のものとしている、と言えなくもないですが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-07-14 12:45:16) |