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鱗歌さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 3957
性別 男性
年齢 53歳

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1041.  砂上の法廷 《ネタバレ》 
原題はThe Whole Truthで、その真相はというとまあ正直、予想通り、ってなトコではあるのですが、それでもなお、裁判シーンと回想シーンをうまく交えて、最後までしっかりと引っ張って行ってくれます。父親殺しの疑いで逮捕された青年は、何も語ろうとせず、その一家と交流のあった弁護士が彼の弁護を引き受けるも、裁判の行方は絶望的。その弁護士をキアヌ・リーヴスが演じておりますが、青年とキアヌ・リーヴスとの間の緊張関係の一方で、もうひとり、若手女性弁護士がそこに絡んできて、別に彼女がとてつもないことをやらかす訳も何でもないんですけれども、彼女の視点が映画に加わることで、ドラマに膨らみを持たせています。 で、陪審員制度の難しさと限界。弁護士は制度を利用しようとし、でも時には弁護士自身が利用されることもあり・・・。という訳で、そもそもThe Whole Truthって何だろう、そう呼べるものが、そもそも存在するんだろうか、というオハナシ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-06-30 16:28:16)
1042.  死刑台のエレベーター(1958) 《ネタバレ》 
多分、初めて観たのは高校のころ、NHK教育の世界名画劇場ですね~。何だ、この映画は、と。何の説明もなく、いきなり殺人事件が起こり、いきなり犯人がエレベーターに閉じ込められる。さてどうやって、ここから脱出するか。もうこれだけでワクワク。なのに夜が明けると、あっさりエレベーターから出られちゃったよ、ってのが、さらにオドロキ。 冒頭のジャンヌ・モローの顔のドアップからして、「普通」じゃないですね。自殺を偽装した完全犯罪、でもロープかけっぱなしなのを忘れてないかい?と思ってたら、やっぱり忘れてて、どれだけお粗末な作戦なんだよ、と言いたくなるのですが、それもこれも主人公を早々にエレベーターに閉じ込めるため。主人公が動けなくなった分、周囲の人間たちが勝手に動き出す。行き当たりばったりの一夜が、ジャズの雰囲気に実にマッチしてます。タクシードライバー以上にタクシードライバーな、夜の雰囲気。 一方で主人公がエレベーターから脱出を試みて悪戦苦闘する面白さ。エレベーター映画というジャンルがあるなら(多分ないけど)本作をその嚆矢と考えてもよいのでは。『ダイ・ハード』も『マトリックス』も『デモンズ2』も「地震列島』も、皆、本作から生まれたんだよきっと。 で、朝が来て主人公は難なく脱出、だけど勝手に動き回ってた連中が、実はすでに彼の外堀を埋めてしまっていましたとさ、というオナハシ。ラストの提示の仕方も、ちょいと残酷で、ちょいとシャレてます。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2019-06-30 15:59:49)
1043.  五人の軍隊
『野獣暁に死す』に何ゆえ、仲代達矢が一匹混じってしまったのか、何が目的なのか、これはもう永遠の謎、ということにしておくのですけれども、本作に“大霊界”が出演していることに関しては、どうやらこちらは日本人役らしいし(日本刀持ってるけどなぜか得意技はナイフ投げ。その名も大霊界。じゃなかった、サムライ)、007にも出演した国際スター(?)だし、ま、いいか、と、こちらもそういうことにしておきます。 七人の侍以降、十一人の侍とか十三人の刺客とか十七人の忍者とか2000人の狂人とか、人数がインフレを起こす一方なのですが、正味、5人もいれば充分でしょ、という本作。“大霊界”を含む冴えないオッサン5人が、砂金強奪のため列車強盗をたくらむ。 冴えないとはいえ5人のオッサンたち、それなりに特技・特徴があり、まるでスパイ大作戦ですよこれは。と思うのも道理、5人組のリーダーは、まさにフェルプス君その人なのでした。 で、彼らが狙うその列車。厳重に警備されている上に、なんとなんと、巨大大砲まで搭載しているんですよね~。って言ったって、大砲なんか積んでても、たいして強盗除けにはなりませんけれども。 で、本作の面白いところは、その列車強盗大作戦のなりゆきが、結構丁寧に、というか、事細かに描かれるんですね。何をやろうとしているのかよくわからないけれど、彼らの細かい動きにワクワクさせられ、最後に、ああそういう作戦だったのか、と思わせる。 作戦には思わぬ障害がつきもので、途中、“大霊界”が誤って転落してしまう。別に作戦に影響ないんじゃないの、と思っちゃうのですが、緊迫した音楽が「これは一大事なんですよ」と我々におしえてくれる(音楽はモリコーネ)。ああ、じゃあ大変なんだ、どうしよう、と思ってたら、そこから“大霊界”が走る、走る。延々と走った挙句、列車に追いついて、無事、戦列復帰。ああ、なんというヒネリの無さ。この転落エピソード、必要なのか? でも、こういった描写のしつこさが、本作のいいところ、魅力ですね。ということにしておきます。 ラストはちょっと、中途半端にヒネっていて。どうです、面白いでしょ、と我々に訴えかけてくる(脚本にはダリオ・アルジェントが名を連ねてます)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-06-30 15:13:39)
1044.  次郎長三国志(1963)
駆け出し時代の次郎長ひとりのもとに、ひとりまたひとり、子分志願者がやってきて、五人ばかり集まったところで唐突に終わってしまう。ってのは、シリーズものだからしょうがないんでしょうけど、テンポのいい展開に、松方弘樹、山城新伍、津川雅彦といった当時の若手たちの姿も初々しく(ラストでは一瞬、長門裕之)、賑やかで楽しい作品です。まあ、映画の半分くらいは、子分第一号の鬼吉を演じる山城新伍のショートコント集にみたいになっちゃってますが。 「ワルい人」ってのがほとんど出てこないんですが、次郎長をとりまく連中がポンコツばかりなもんで、それなりに事件が起こり(トホホな事件も含め)、小気味よい演出がそれを捌いていく。寛美さんのネチっこい演技もここでは嫌味になっておらず、物語をうまく盛り上げています。 ・・・鶴田浩二のことに何も触れなくてよかったんだろうか?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-06-23 17:09:40)
1045.  グリーン・デスティニー
2000年代前半、本作と、チャン・イーモウの例の2作、大きなインパクトがありました。本作はその皮切りで、正直、観る前には少しバカにしてた部分があったもんで(ごめんね)、初めて観た際は、より一層、感動してしまったのでした。 人間、ワイヤーに吊るされるとこんな動きができるのか、いや、ワイヤーに吊るされてもなお、こんな動きができるのか。いや、まあ、その前にワンチャイシリーズなんてのもありましたけど、リーリンチェイなんてあれはもはや人間の動きじゃないからね。いずれにせよ、重力の制約を超えた、一種の舞とも言えるような幻想性。これがあるから、チャン・ツィイーが水中に飛び込むシーンのスピード感(このヒトなら何でもできそう)と緊張感(水中ではワイヤの力が借りられない)にも繋がるし、ラストのちょっと苦しい(?)合成映像にも「マ、いいか!」という気持ちにさせてくれて、感動を損なわない。 ストーリーとしては、中盤に長い回想シーンを挿入するなどの多層性をもたせた上で、脇役たちにもうまくスポットを当ててます。何となくみんな不幸になっていっちゃってるようなオハナシですが。
[DVD(字幕)] 9点(2019-06-23 10:57:17)
1046.  踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!
学生時代に東京に住んでた私が、関西に戻るってんで、最後に友人とぶらりと訪れたのがお台場。96年ごろ。それはそれはもう、何もありませんでした。まさに隔世の感。 この「踊る大捜査線」って、お台場の発展とリンクして成長してきた、いやもしかしたらお台場を「育てる」のに一役買ったとも言えるかもしれないドラマなワケですよね。この映画版第2作も、「賑やかながらもまだまだ発展を続けるお台場」、ってのが、物語の舞台としてうまく生かされています。 第1作同様、いくつかの事件が並行して描かれるも、今回は中心となる事件以外は小ネタになってて、その分、メインの事件はかなり大がかりに描かれ、なかなか気合いが入ってます。上述の舞台設定もあって、楽しませてくれます。 ただ、どうも尻すぼみになってしまうのは、もともとそういう狙いなんですかねえ、でもちょっと物足りない。 いかりや長さんは、最晩年の姿。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-06-23 05:28:30)
1047.  ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディー
この映画を観ても、主人公のジョージ・M・コーハンというヒトの何がどうエラいのか、サッパリわからん、ってところが、いいじゃないですか。 こまっしゃくれた少年時代から、大人になってもあまり進歩がなく、無理に良く言えばいつまでも若々しい、そんな主人公をジェームズ・キャグニーが演じていて、ちょいワルな表情が妙に愛嬌を感じさせます。進歩がどうこうよりも、舞台興行の世界に徒手空拳、立ち向かっていく、みたいな姿が、我々を惹きつける・・・のですが、映画自体はそんなこともそっちのけで、ミュージカルシーンを脈絡なく積み重ねるようなところがあって、しかもこれといって馴染みのある曲が出てくるワケでもないので、ますますこの主人公がよくわからなくなる。 その、よくわかんない中で、挿入されるエピソードがキラリと光ります。妻に捧げた「メアリー」という歌を取られちゃう場面、そんな大したエピソードじゃないんだけど、主人公の申し訳なさそうな様子とか、それに対する妻の姿とか、本当にイイんですね。 ミュージカル俳優としてのジェームズ・キャグニー、自信満々にダンスを演じていて堂々たるものですが、アステアあたりの超人的な動きというほどではなく、それがまた妙にこの映画の主人公像にマッチしてます。 ところで本作、戦時中の製作ということもあってアメリカ万歳的な面も多々感じさせ(それにしては主人公像が地味であるところがユニークですが)、劇中でも、これぞアメリカ!という曲がジャンジャン流れます。なのに、そのうちの一曲が、なぜかイギリス国歌?・・・これは、このメロディ、アメリカでは別の歌詞がつけられた愛国ソングだったら。チャールズ・アイヴズの「アメリカ変奏曲」も、このメロディに基づく変奏曲でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-06-22 08:54:14)
1048.  大脱獄(1970) 《ネタバレ》 
砂漠の真ん中にある監獄に集められた、この上もなく薄汚いオッサンたちが、邦題が「大脱獄」ってんだから脱獄するんでしょうが、待てど暮らせど一向に脱獄しない、まあ、そんな映画です。 主人公のカーク・ダグラスが、ここではマッチョなイメージではなく、メガネをかけて飄々としたキャラクターで、それなりにいい味は出してるんですけれども。でも薄汚いオッサンのひとりには、違いない。加えて、ムダにオバチャンのヌードが出てきたりするもんだから、画ヅラの冴えないこと冴えないこと。監獄もボロボロで、ここまでくるとかえって、およそ脱獄する気も起こらんわな。まあ一応、厳重に見張っているらしいんだけど。 で、終盤、ようやくというか唐突にというか、脱獄する・・・というかもうワケの分からん大騒ぎとなって、この辺まで来ると、この映画、マトモに物語を追いかけてはいけなくって、もしかすると一種の寓話か何かなんだろうか、と思えてくる。音楽は底抜けに明るくってコメディタッチ、だけどやたら人が死にまくり、これはきっと何かの喩え話みたいなもんなんだろう、と思うんだけど、そう思うとさらに意味がわからなくなってくる。 単なるハチャメチャなオハナシで、それ以上でも以下でもないのかも知れませぬ。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2019-06-17 21:04:12)
1049.  踊る大捜査線 THE MOVIE
この映画版第1作、ずいぶん久しぶりに観ました。テレビドラマの放送も今は昔、距離をおいて今回観られたことで、結構楽しめた部分ってのもあります(それにしても自分はいつから、そして何故、こんなにテレビドラマというものを忌避するようになったのか)。 3つの事件を並行して描く必然性が薄いとか(事件同士をもうちょっとうまく噛み合わせられないものか)、権威の矛盾を描くのにギバちゃんのシカメッ面に頼り過ぎだろうとか、いかりや長さんボソボソ声でセリフ聞き取りにくいとか、いろいろ思うところもあるのですが。 (最後の件に関しては逆に、ドリフ全盛期のいかりや長さんはどうして、あんなに饒舌なイメージでもって「司会進行役」をやりたがったんだろうか、とも思ったりして。) だけど、すでにテレビドラマの方でキャラが充分に練り上げられている、ということなんでしょう、迷いなく登場人物たちが各々の魅力を発揮していて、こういう部分は一種の強みですね。それに加えて、この役に小泉今日子を起用しよう、なんていうブッ飛んだ発想。ちゃんとその責任を取りますとばかり、見事にエキセントリックな存在として我々に印象づけるように彼女を撮っており、これは大成功でした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-06-15 11:21:38)
1050.  ぼくのエリ 200歳の少女 《ネタバレ》 
いや~、何と言っても、少年の白パン一丁姿。これほどまでに「無防備」を感じさせるものはありません。 で、その少年が、ある少女と知り合う。この少女とは、色んな意味で決して結ばれることはないんだけど、だからこその、この愛。痛々しいんです。実際、少女は少年の前で血まみれになってみせる。 題材的にも「血」というものが何度も画面に登場するのですが、必ずしもホラー作品としての残酷描写をそこにのみ求めていないのが、いいですね。猫が襲ってくる、あるいは突然体が炎上するショックシーンの、うまさ。 少女は身寄りを失い、一方の少年はイジメに立ち向かう。だけどクライマックスでは、水着姿の少年はやっぱり無防備で、やっぱり少女に救われる。救われるけれどもちろん「ああよかった」というシーンではなくって、これこそが運命の残酷さ、というべきもの。 切ない映画でした。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-06-15 10:22:59)(良:1票)
1051.  主水之介三番勝負
劇中のどれとどれとどれが合わせて「三番勝負」なのか、よくわからん、というか、まあそれはどうでもいいのですが、例によって例のごとく橋蔵スマイルがまぶしい本作。 剣術指南役をめぐる争いから、師匠が闇討ちにあうんですが、橋蔵演じる主水之介は破門の身。次の師範代に指名された里見浩太朗のとりなしもあって、橋蔵は破門を解かれるものの、里見浩太朗もまた敵の凶刃に倒れ、右腕を失ってしまう。という訳で、橋蔵と里見浩太朗のキラキラ感あふれる友情エピソードとか、ライバル・天知茂のシブさと焦燥感の二面性、はたまた近衛十四郎サマの浮世離れしまくった剣豪ぶり、もう見どころ満点です。こんな言い方をしても信じてもらえないかもしれませんが(笑)。 回想シーンが妙に前衛的な演出だったりして、時代劇が妙なエリアへとハマりかけている雰囲気も味わうことができますが、まあ主人公がスマイル橋蔵なので大きく逸脱することはありません。このヒト、煩悩の塊みたいな感じで、とても剣豪には見えないけど。 その一方で、天知茂の存在を食ってしまう(ストーリー上の都合、という部分もありますが)のが十四郎サマ。このヒトはどうしていつも、「さっき、ひとっ風呂浴びてきました」みたいなサッパリした表情をしているのでしょうか。 ラストは橋蔵vs十四郎の一騎打ち。このシーン、ちょっとマカロニウェスタン風味が入ってますけれど、こちらも65年の映画ですから、実は時代をホンの少し、先取りしていたのかも。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-06-09 11:10:45)
1052.  ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
もちろん、あの東宝怪獣たちが最新のCGで再現されてるのを観りゃあ、とりあえず「うわぁ~」とテンション上がっちゃうのですが、その一方で、「何だか、最近の映画でよく見るタイプのCGモンスターと大差なくなちゃったなあ」とも。妙な既視感が。 かつてのキングギドラって、まったく無表情の3本の首が、機械的かつテキトーにカクカク動いてたのがかえって不気味で、味があったんだなあ、と改めて気づかされます。ああいうローテク感ばかりは、CGではなかなか出せないし、出して欲しくもありませんが(スパイキッズ3みたいな例も、あるといえばありますが)。 うん、まあ、でも、やっぱりカッチョいいよねえ・・・。 2014年ゴジラでは、いかにモンスターの存在をデカく見せるか、多くの工夫が凝らされていて、その点では本作は2014年には及ばない印象。2作目ということもあってインパクトも薄れてます。でもカッチョよい。 問題は人間たちのドラマ部分。別にゴジラ映画で人間ドラマなど期待してはいないけど、それにしたって、登場人物たちの存在感の無さ。動かない、何もしない。せめて、乗り物を乗り換えたんだったら、映画の中で乗り換えろよ、と言いたくなっちゃう。映画の登場人物ってのは、歩くなり走るなり、メシを食うなり、ハナクソほじるなり、何でもいいから映画の中で「動作」を見せてこそ我々も感情移入できるんであって。 およそ、お飾りにも、なってません。
[映画館(吹替)] 6点(2019-06-08 04:21:52)(良:1票)
1053.  エクスポーズ 暗闇の迷宮
同僚を殺害された刑事の捜査のオハナシと、幻想世界を目撃する女性のオナハシが、交互に描かれて、両者は互いに関連しあっているのですが、映画の中で描かれる範囲においてはなかなか交わらない。で、実は、両方のオハナシの間には、ある残酷で醜悪な現実が横たわっていた、ということが示されて物語はいったん、幕を閉じます。 2つの物語は、英語の世界、スペイン語の世界として断絶され、互いに相手を受け入れることを拒絶する。そしてそれぞれの物語の中ではいくつかのエピソードが織り込まれ、「醜悪な現実」の一端が顔を覗かせてもいるのですが、それにしても、このラストの、残酷なこと。 「映画を観終わってスッキリしないと気が済まない」という人には到底オススメできませんが、この観終わっての余韻、かなりのものがあります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-06-02 09:24:58)
1054.  遠い喇叭 《ネタバレ》 
主人公の若造の少尉が、ダレきった部隊をビシビシやるのですけれども、その若造自身も、いささか下半身にユルいところがあって、どうなのよ、と。その一方で、砦の外にはアパッチ族がいて、凄惨きわまりない虐殺を繰り返している、ってのに。 という、何だか妙な不安感が背景にあるんですね。物語の骨格は、先住民の残虐行為に対する危機感、そしてついに全面対決、ってな流れではあるんですけど、そこに至るまでには様々な人物が登場して、様々なエピソードがあって、どこかモヤモヤした感じもあって。 で、クライマックスではアパッチとの死闘が、これでもかと描かれる。モヤモヤを吹き飛ばすような一大闘争絵巻。 戦闘の後、主人公は和平の交渉に向かうんですが、残虐行為を繰り返す恐るべき存在だったアパッチ族も、実は白人に対する不信感があっての敵対行為であったことがわかってくる。無事、和平は成立。 と思いきや、上からの命令で、主人公はその和平を裏切るハメになってしまう。ああ、なんというモヤモヤ。 という訳で、このモヤモヤ感が、本作の特長で、やりきれない不条理感をよく出しているんですけどね。なのに、映画のラストで唐突な「ツジツマ合わせ」が行われちゃう。妙なハッピーエンド。なんでしょうね、この終わり方は。 「ラストだけが妙にモヤモヤしていない」という事実にこそ、最大のモヤモヤを感じてしまうのですが。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-05-27 20:59:15)
1055.  昭和おんな博徒 《ネタバレ》 
大映の江波杏子と、同じく大映に島流しにしたのに(?)帰ってきちゃった松方弘樹とで、任侠モノ。という、東映の苦しい事情が見え隠れする任侠映画末期の一本ですが、このキャスティングが、どういう訳だかピタリとハマってしまうのです。 とにかく主演の江波杏子が、魅力的ですね~。女の脆い弱さと、女のしなやかな強さとを、見事に表現してます。一見、冷たい表情にも見えるのですが、ちょうど能面が角度によって異なる表情を表すように、不思議な陰影を見せる。 一方の松方弘樹は、と言えば、どんなにガンバっても貫録が無くって、一見、物足りない印象なんですが、観てるとこれもまた妙に役にハマってくる。江波杏子を心ならずも、しかし結果的に任侠の道へと引きこんでしまう存在。しかも彼女が映画を通じて第一級の侠客となるためには、物語上、彼は死なねばならず、彼女の肥やしとならなきゃいかんワケで、ちょうど、この頃の彼のお坊っちゃん顔の持つ果敢無さと、絶妙にマッチしてます。 もちろん彼が舞台から去っても、ちゃんと天知茂という後釜がいるから大丈夫。彼のエキスも吸い取ってますますパワーアップする女主人公。それにしてもこの、天知茂の眉間のシワの深いこと深いこと。どうやったらあそこまで眉間にシワが寄るのか。これはもう、「シワ芸」と呼んでもよいでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2019-05-26 05:08:52)
1056.  ゴジラ FINAL WARS
84年ゴジラよりも前の一連のゴジラ作品総まとめ。といった感じで、怪獣出るわ出るわ、戦うわ戦うわ。 かなりオフザケモードなので、拒絶反応もあろうかと思いますが、そうは言ったって、同じく「総まとめ」作品である『宇宙怪獣ガメラ』と比べりゃ、はるかにマシでしょうに。え、あんなのと比べるようになったらオシマイですか・・・。 オフザケではあるけれど、はたまた今の目で見ると(いや当時の目でも)物足りないCGなんかもあるけれど、この、バトルに次ぐバトル、相当な数のミニチュアセットも準備して、ひたすら戦う、ひたすら壊す、バトルの物量作戦。怪獣同士が戦ってナンボでしょう、という昭和ゴジラ魂はしっかり感じることができます。これを「退行だ」といわれりゃ、そうかもしれないけれど、まあ、ファイナルと銘打ったお祭りですから。 でも最後と銘打ったのに、結局「新(シン)~」というタイトルでまた作っちゃうってのは、どうなんでしょうね。この分で行くと、この後またシリーズ再開して、タイトルも「ゴジラは生きていた」とか「ゴジラNYへ行く」とか「ゴジラの命日」とかになっちゃうんでしょうかね。 それはともかく、私は結構楽しませてもらったんですけど、一方で色々と、つまらぬことではあるのですが思うところもあって。その昔、ショー・コスギがニンジャ映画でブレークした頃にインタビューで「息子のケインにはアクション・スターとして英才教育をしている。だから誰もケインにかなう訳がないんです」みたいなコトを言ってたんですけど、で、本作などでもその身体能力を伺うことはできるんですけど、その能力をフルに発揮するには、相応のアクションができる相手役がいないとやっぱり難しいなあ、と。松岡クンも頑張ってはいるんですけど、ねえ。 一方で船木誠勝は、妙に強そうというか、少なくともあのヒクソン戦の時よりは強そうに見えるけど(それにしても、もしあそこでスタンディングで様子を伺わずにグラウンド戦に飛び込んでいたら・・・)。 あと、この映画、せっかく「格闘枠」みたいなのがあってソチラ方面のヒトたちが何人も出てるのに・・・本来ならここで呼ばれるのは、佐竹雅明こそが適任者のハズだったんですけどねえ。不幸というか、色んな意味で残念ですよねえ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-05-25 13:27:57)
1057.  48時間
コレ、好きなんですよね~。テレビの洋画番組で頻繁に放送されてました。 捜査を通じて、白人と黒人の間に理解と友情が芽生えて・・・と言うと『夜の大捜査線』の80年代版、みたいですけれど、あの優等生顔のシドニー・ポワチエに対し、こちらは口八丁手八丁のチンピラ風、エディ・マーフィですから、もうほとんど真逆なんですね。 『夜の大捜査線』での黒人主人公は、町にそぐわない異邦人としての扱いを受けるけれど、コチラの作品では、すでに白人刑事の上司が黒人だったりする。犯人の一人も先住民だし、映画の舞台としてチャイナタウンも登場する。人種のルツボ改め人種のサラダボール、などと言いますけれど、本作の中では、多様な民族と文化がゴチャゴチャ入り混じり隣り合って存在してます。 だから、白人ばかりの店でエディ・マーフィが邪険されることもあれば、黒人ばかりの店でニック・ノルティが白い目で見られたりもする。しかしそもそも、この主人公ふたりともが、社会一般からズレてる鼻つまみ者みたいな存在なもんで、このふたりが動けば何かと騒動のもとになるし、そうやって既存の秩序に楔を打ち込んでみせるのが、本作の楽しいところ。 上述の、白人の店でエディ・マーフィが邪険に扱われる場面。やおらグラスを投げつけ、ガラスの割れる大きな音に、店内の喧騒が静まり返る、そのインパクト。 あるいは大勢の人々が行きかう地下鉄構内で、突如鳴り響く銃声。銃声とともに、それまで緊張感を煽っていたBGMがいったん止まる、ってのも印象的。当然っちゃあ当然なのかもしれないけれど、ゲリラ撮影じゃなくって、背景を歩いていた大勢の人々は、エキストラなんですよね。そのエキストラたちが醸し出していた整然とした空気が、一気に崩れてパニックとなる、これもなかなかのインパクト。 そして、本作の代名詞ともいうべきあの、バス相手の無謀かつ非常識極まりないカーチェイス。これも強烈な印象で、我々の脳裏に楔のごとく突き刺さってきます。 ラストの犯人との対決。蒸気がモヤモヤ漂うアヤシゲな雰囲気の中、最後まで「非常識」を貫いて見せるニック・ノルティ。無茶無茶な行動が、カッコいいシーンをさらにカッコよく見せ、キャラの魅力と雰囲気とアクションが見事にマッチした、魅力あふれる作品です。
[CS・衛星(字幕)] 10点(2019-05-25 12:50:07)
1058.  ザ・シークレット・サービス
80年代以降、「イーストウッド監督作品ではないイーストウッド主演作」ってのが、そこそこ貴重な存在だったりする訳ですが、本作もその一本。監督はあのペーターゼンで(「あの」というのは「あのUボートの」という意味であって、今もって他に代表作を挙げにくいのです、このヒトは)、主演俳優自身が監督してないことが幸いしたのかどうなのか、いかにも「イーストウッドの溢れんばかりの魅力を、この主人公にバッチリ投影して撮ってやるぜ」みたいな感じなんですね。ジジイなんですけれども、背筋を伸ばして貫録があり、ピアノをさらりと弾いて見せたり、同僚の女性警護官とネンゴロな関係になってみせたり、ジジイはジジイでも、なかなか色気のあるジイサンとして描かれてます。まあ、もし本作を自分で監督してても、厚かましく色気たっぷりに描いていたのかもしれませんけれども。 しかしジジイはジジイ。観てるこちらとしても「おい、ジジイ。現役復帰はいいけれど、ホントに動けるのかよ」と言いたくなる。動けるのか、動けないのか?そこが見どころ。 で、まずは、走りながら息切れするところをしっかり見せつけて、「撮影中に斃れるんじゃないか」と我々をヒヤヒヤさせてくれるのですが(演技ですよ、演技!)、ジョン・マルコヴィッチに対する追跡劇などでは、自ら体を張ってるところなんかも見せてくれて、おお、ジジイ、ちゃんと動けるじゃないか、と。はい、すみません、ワタシなんかより余程、動けてます。 そんなこんなで、いよいよ犯人が大統領を狙うクライマックス。この緊迫した空気がいいですね。厳重な警備がカッコよくって、その警備をかいくぐる犯人がカッコよくって、その犯人に対峙するジジイがますますカッコいい。シビレます。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2019-05-25 12:05:57)(笑:1票)
1059.  バーニング
レザーフェイスのチェーンソーを、通販でお馴染み高枝切りバサミに持ち替え(いや、普通の植木バサミですな)、13金ジェイソンよろしくキャンプの若者を惨殺しまくる、要するにパクリ精神のみで作られた激安ホラーの一本。ではあるのですが、我々の世代にとっては、当時の宣伝のインパクトゆえ、スプラッタ映画のスタンダードともなっている作品であります。後に、新13日の金曜日では同様の凶器が登場し、ホラー映画界、パクリパクられ、持ちつ持たれつ。 実際に作品を観れば、殺人鬼の名前が「バンボロ」ではないことに気づくのですが、それでも当時の宣伝ゆえ、日本では永久に「バンボロ」と呼ばれ続けることになるんでしょうなあ。 で、本作なんですけれども、イイ感じにクラシカルで、なかなか殺人鬼が姿を現さずに徐々に恐怖を盛り上げる・・・と言いたいところですが、いやこれがホントにムダに、引っ張る、引っ張る。ムッツリスケベ男の覗き事件だの何だの、つまらんカマシばかりがこうも繰り返されるのでは、正直、ダレてきます。キャンプの若者がムダに多いのも、実にムダ。 前半は殺人事件がほとんど発生せず、さんざん待たされた挙句に、後半ようやくバンボロの活躍が始まるのですが、その頃には観てるコチラも、「今更出てこなくってもいいわい!」という荒んだ気持ちにもなろうってもんです。そんな我々の気持ちを知ってか知らずか、ズバズバと植木を剪定するかのごとく豪快に人間を切り刻みまくるバンボロ。斬られる人間が植木に見えてくる。 で、なぜか挿入される、あの宣伝でお馴染みの、植木バサミを振りかざすシルエット。あ、ごめん、正しくは「ギロチンバサミ」でしたっけ。 最後までイマイチ存在感を示せないまま、クライマックスでは凶器をガスバーナーに変更してしまい、刃物でなくっちゃ迫力も半減、いや10分の1以下。これではなかなか、シリーズ化という訳には。シリーズ化したそうな終わり方でしたけれども。さよなら、バンボロ。 ああ、バンボロじゃないんだっけ・・・。
[DVD(字幕)] 3点(2019-05-21 22:48:21)
1060.  ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2
本作に至り、ヴォルデモート卿はすっかり、神秘性のカケラもない鼻が低いだけの単なるオッサンと化してしまいました。これならきっとハリー・ポッターでも勝てるだろ、と観てて思っちゃうのですが、ラストの一騎打ち、どちらが勝つかはネタバレになるので書きません。 ついにホグワーツに襲い掛かるヴォルデモート卿ご一行様との攻防戦が見どころ、のハズなんですけれど、まあこれが、盛り上がんないですねえ。襲ってくる連中がショボいってのは置いておくとしても、まず襲撃を待ち受ける内部の不安を描いて、緊張感を高めて、攻防戦があって、ついに侵略される・・・という段階を踏まない一本調子なもんで、ただのドタバタになっちゃってます。 燃えゆく競技場の描写なども、あんなもんでいいんですかねえ。なんか、哀しみみたいなもんは、無いんですかねえ。禁欲的と言えなくもないですが。 いよいよラストの対決。頑張れ、ヴォルデモート!
[DVD(吹替)] 5点(2019-05-11 12:29:34)
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