1201. ブラインド・フィアー
《ネタバレ》 真実を伝えるためならどんな危険をかえりみない勇敢な戦場カメラマン、サラ。政情不安に揺れるアフガニスタンで取材中だった彼女はある日、テロリストの自爆攻撃に遭う。なんとか一命は取り留めたものの病院のベッドで目覚めてみると、彼女は自分が視力を完全に失ってしまったことを知るのだった――。3年後、当然のように引退を余儀なくされ、以来金融トレーダーである恋人と1匹の猫と共に豪奢なペントハウスの一室で平穏な生活を送っていたサラ。大晦日、そんな彼女がいつものように買い物から帰ってくると、そこには血の海に沈む恋人の死体とある〝もの〟を捜し求める凶悪な殺人犯が待ち構えていたのだった……。完全なる暗闇の世界に生きる盲目の女性と目的のためなら手段をいとわない冷酷な殺人犯との息詰まるような攻防を描いたサスペンス。冒頭、鼻歌を歌いながら自室のリビングでくつろぐ主人公サラ、そこに床に転がる血だらけの彼氏の死体が映り込むのに盲目の彼女は何も気付かず買ってきた物を冷蔵庫にしまいだす、そして背後には誰とも知れない男の影が……。というスリリングなシーンで、「お?もしかしてこれって面白いかも」と思わせる本作、でもその後の展開ははこれまで凡百のサスペンス映画で散々見尽くしてきたような凡庸な展開が。うーん、これで脚本がしっかりしていればまだ見られたものになっただろうに、まあ見事なまでにこちらの期待値を下回ってゆきます。捕まえた主人公が盲目だからって「何、寒い?いいだろう。今、ロープを解いてやるから自分で服を着ろ。あ、俺はあっちで電話してるから」ってこの犯人アホですか(笑)。案の定、次のシーンでは主人公に殴られて逃げられちゃってるし…。それに、後半の隠されたダイヤを巡る緊迫?の心理戦も無理やり話を引き伸ばした感が半端ない。挙句、ラストシーンでの「13階のベランダから落とされたあの黒猫ちゃんも無事に生きていたんだよ。だって猫って運動神経いいしさ。びっくりした?あはは…」って感じの、動物愛護団体&猫好きな観客への配慮に満ちた黒猫さん再登場…。ま、簡単に言うと「つまんねー映画!」でした。終わり。 [DVD(字幕)] 3点(2014-12-28 21:10:46) |
1202. 恋するリベラーチェ
《ネタバレ》 なぜ君を愛するのか。それは君が君だからではなく、君といる時の自分が好きだから――。70年代から80年代にかけて、天才の名を欲しいままにした実在のカリスマ・ピアニスト、リベラーチェ。常にきらびやかでゴージャスな衣装を身に纏い、絢爛豪華なリサイタルで人々を魅了する彼には、誰にも言えない幾つもの秘密があったのだった。一つは生粋のゲイであること、一つはカツラであること…。そんな彼にひょんなことから気に入られたバイセクシャルの美しい青年スコットは、彼からの猛アプローチにより、専属秘書という名目で住み込みで働くことになるのだった。リベラーチェの豪邸で、まるでペットのように何不自由ない生活を送ることになったスコット。だが、長い時間を共に過ごしていくうちに彼らの愛とプライドと憎しみは複雑に交錯してゆく…。実在した天才ピアニストの赤裸々な私生活を、ソダーバーグ監督がマイケル・ダグラス&マット・デイモン主演でゴージャスに映画化した男と男のラブストーリー。いやー、まさかこんなにもM・ダグラスとM・デイモンの濃厚なキスシーンどころか、けっこう激しいラブシーンまで見せてくれるとは…。べつにゲイの方に特別な偏見とかは持っていないのだけど、生粋のノン気である僕としては、ここまで野郎たちのケツを見せられると正直「う、うおぇぇ~~」ってなっちゃいました(笑)。あんまりよく知らないのですが、前作の「マジック・マイク」といい、今作といい、ソダーバーグってもしかしてゲイなの?とはいえ、そういうのを抜きにしても、これって(実話を基にしたから仕方ないのかも知れませんが)あまりにもオーソドックス過ぎやしません?男同士という特異な関係を取り除いたら、後には今まで散々作られてきたスーパースターの内幕を描いた凡百の伝記映画と大して変わらないと僕は思うんですけどね~。それに、リベラーチェの絢爛豪華なピアノコンサートシーンがもっと観れると思っていたのに、冒頭と後半にちょびっとだけって…。うーん、物足りん!生来の女好きで、しかもセックス依存症と診断されかつて病院に入院した事もある伝説のセックスマシーン・マイケルダグラス、彼がゲロ覚悟(?)でマット・デイモンとチュッチュチュッチュし、あまつさえ後ろから激しく突き上げられ恍惚の表情を浮かべちゃうハゲのゲイ役を見事に演じきったその役者魂っぷりに+1点っす! [DVD(字幕)] 5点(2014-12-26 18:30:19)(笑:1票) |
1203. ミスター・ノーバディ
《ネタバレ》 西暦2092年2月9日、人類最後の死ぬ運命にある人間“ミスター・ノーバディ(誰でもない男)”が118歳に――。科学技術の飛躍的な進歩により、全人類がそれまでの悲劇に満ちた〝死〟という宿命から解放された未来社会。そこでは誰もが当然のように永遠の命を享受していた。そんな科学技術の恩恵を受けることなくたった今老衰で死のうとしている、ある老人がいる。彼の名はニモ・ノーバディ。これまでの人生は一切謎に包まれていた。そんな彼の歩んできた人生を探るため、医師からの高度な催眠術と記者によるインタビューが行われる。そこで明らかとなったのは、〝人生の重要な岐路で色んな選択をしたこと、あるいは選択しなかったこと〟で様々に枝分かれしていった、彼の重層的で複雑な人生経験だった……。これまでにない独創的な映像で描かれるのは、そんな一人の男のあり得たであろう数々の人生を重層的に描き出すパラレルワールドSF作品でありました。9歳の時、ニモはまず離婚した両親のどちらに付いていくかという重大な選択を迫られます。母に付いていった彼と、父の元に残った彼、当然のようにどちらの人生にも良い所もあれば悪い部分もある。さらには同級生の誘いを受けるか断るか、好きな女の子に勇気を出してラブレターを渡すか諦めるか…。そのようにして十数通りもの彼の人生がまるで群像劇のように描かれるさまは、まるで昔懐かしのゲームブックを読んでいるような感覚でした(途中で間違った選択をしたら殺し屋に殺されたり、事故に遭って植物人間になっちゃったりというバッドエンドを迎えちゃうトコなんかいかにもゲームブック!)。ただ、1本の映画として観るとどうなんですかね、これ。さすがにちょっと設定に無理あり過ぎやしません?物語として思いっ切り破綻しているように僕は思うんですけど。『エターナル・サンシャイン』や『バタフライ・エフェクト』という優れた作品の良いトコどりしようとかなりの大風呂敷を拡げてみたものの、上手く纏め切れなかったような印象を持ってしまいました(だって、あの強引な力技ラストなんて夢オチとあんま変わんないよ~)。確かに、唯一無二の独創的な世界観を見事に構築した作品であることは認めますけど、肝心のお話の方には僕はさっぱり嵌まれませんでした。うーん、5点。ごめんちゃい!! [DVD(字幕)] 5点(2014-12-20 22:10:22) |
1204. セイフ ヘイヴン
《ネタバレ》 「久し振りです、あの時は助けてくれてありがとう。落ち着いたら連絡する約束だったわね。おかげで私は今、安全な場所に居るわ。心配掛けてごめんなさい。でも、ここは本当に良いところなの」――。第一級殺人事件の容疑者として、警察から追われる身となったケイティ。刑事の決死の追跡をなんとか逃れた彼女は、高速バスへと乗り込み、アメリカ南部の小さな港町へと辿り着く。身分を隠し何もかもを捨ててそんな小さな港町で新たな生活を営むことになったケイティは、そこで男手一つで幼い2人の子供を育てる雑貨店店主アレックスと出逢う。数年前に妻を癌で亡くしたという彼に次第に心惹かれていくケイティだったが、執念深い刑事の捜査網がそんな彼女の幸せな日々を次第に追い詰めてゆく……。これまで、市井の中に生きる様々な人々の人生の一瞬のきらめきを瑞々しく切り取ってきたラッセ・ハルストレム監督の最新作は、そんな恋愛小説の新たな名手と称される作家のベストセラーを原作とした大人のラブストーリーでした。小さなヨットが美しい波間に揺れる静かな港町を背景に、色んな困難を抱えながらも常に前向きに生きる純朴な田舎の人々や大人社会に翻弄される何も知らない無垢な子供たち、そして現れる女を暴力で支配しようという自己中心的な男…。もうまさにハルストレム節と言ってもいいようなそんな個性豊かな魅力に満ちた田舎の人々をセンス溢れる映像で描き出す手腕は今回も安定感抜群でした。さすがにちょっぴりマンネリ気味な感はなきにしもあらずだけど、主人公ケイティが殺人事件の容疑者というミステリアスな設定が良いアクセントとなっていて素直に面白かったです。スタイル抜群のそんな超美人な彼女が、胸元ざっくり開いたTシャツ&短パン姿でチャリンコこいでるとこなんか健康的なエロティシズムが炸裂してて劇中のアレックス同様、僕のハートもイチコロでした(笑)。ただ…、最後のあのまさかのオチは自分的にはちょっぴり蛇足感があったけど(あの唐突な夢のお告げはそういうことだったのですね!)。うーん、自分としては最後までリアル路線で貫き通して欲しかったかな~。それでも、理不尽な現実に翻弄される男と女の切ないラブストーリーとして充分魅力ある作品に仕上がっていたと思います。うん、7点! [DVD(字幕)] 7点(2014-12-17 23:56:06)(良:1票) |
1205. LIFE!(2013)
《ネタバレ》 超有名雑誌『ライフ』を発行する出版社に勤めながらもネガ管理室という地味な部署でこつこつと地道に仕事を続けてきたサラリーマンのウォルターは、ことあるごとに空想世界へと逃避する冴えない独身男。ある日、そんな彼の会社が経営危機に陥り伝統あるライフも休刊することになってしまう。途方に暮れるウォルターの元に、ずっと雑誌の表紙写真を撮り続けてきた世界をまたに駆ける伝説の写真家から、「これは俺の最高傑作だ。これこそ“ライフ(人生)”。まさに伝統あるライフ誌の最後の表紙を飾るにふさわしい」というメッセージと共に数枚の写真が届けられる。誰かの親指、海に浮かぶ小さな漁船、なんだか分からない謎の写真……。だが、すぐに彼は重要な事実に気づくのだった。「あれ、肝心のそのネガだけ入ってない!」。負け続きのこれまでの自分の人生を変えるため、そして想いを寄せるシングルマザーの同僚の気を惹くために、ウォルターはその孤高の写真家を追って広大な世界へと旅立ってゆく――。決して勝ち組とは言えない人生を送ってきた冴えない中年男のそんな人生を変える大冒険をコミカルに描いたヒューマン・ストーリー。うーん、確かにその狙いは分かるのだけど、生まれつき心根がひん曲がった生来のひねくれ者である僕にとってはまったく共感出来ない内容でしたね、これ。「人生は幾つになっても再チャレンジできる!」「チャレンジしないで後悔するより、チャレンジしてから後悔する方が良いに決まってる!」「どんなに地味な人生を送っている平凡な人でもいつかは光り輝く日が来る!!」「だから人生って素晴らしい!!!」と言わんばかりの暑っっっ苦しいメッセージの押し付けに途中からゲンナリしちゃいました。その予告編を見て、駄目中年男の妄想力が大暴走しちゃうハチャメチャコメディだと思って鑑賞した自分としては、完全に肩透かし。要は、こういう明日も前向きに生きていこうと思えるようなド直球の人生賛歌を素直に楽しめる程の心の美しさを僕が持ち合わせていなかったということなのでしょう。すんません、ひねくれ者で!4点! [DVD(字幕)] 4点(2014-12-13 00:11:06) |
1206. 大統領の執事の涙
《ネタバレ》 アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、ニクソン、フォード、カーター、レーガン――。約30年にわたり、そんな7人の名だたる大統領に仕えた、ホワイトハウスの実在の執事セシル・ゲインズの物語を黒人の人種差別との戦いの歴史の中に描き出す社会派ドラマ。物語は、主人公セシルが幼少のころ、まだ黒人が奴隷と変わらない扱いを受けていた今世紀初頭の農場の描写から始まります。その後彼がひょんなことからホワイトハウスで勤めるようになると、社会ではキング牧師やマルコムXといった黒人運動家たちも台頭する。セシルがホワイトハウスで着実にキャリアを積んでゆく中、彼らが起こした公民権運動は道半ばで暗殺や暴力で中断されることに。それでも彼らの“ソウル”を受け継ぐ者たち(主人公セシルの息子もその一人)が地道に活動を続けて、やがて自らの権利を獲得してゆく様を重層的に描き出したところはなかなか見応えありました。この監督らしい、個性豊かな黒人たちをソウルフルに描き出す手腕は今作でも健在。歴代大統領たちとのエピソードも、ちょっとあっさりし過ぎな感もあったけど、豪華な役者陣の熱演もあり素直に良かったと思います。ただ、本作の胆となるだろう、執事としての職務と黒人としてのアイデンティティとの狭間で揺れ動く主人公というテーマがいまいち深く描かれていなかったのが残念。白人に母をレイプされ、父親までも殺され、さらには2人の息子まで奪われそうになる主人公。ここまで理不尽な目に遭いながらもそれでも職務を優先した彼の、抑えきれない魂の雄叫びみたいなものを僕はもっと観たかった。強大な苦難に立ち向かうマイノリティたちの普遍的なドラマとして充分見応えある作品に仕上がっていただけに、惜しい。本作品で全黒人たちの希望の星のように描かれ、あまつさえこれを観て涙を流したと喧伝されるオバマ大統領。彼が就任中、白人警官による17歳の黒人少年射殺事件に端を発する全米規模の大暴動になんら有効な手立てを打ち立てられなかったことを思い返すと、人種差別という病理の根深さに気が滅入る思いです。でもいつか、肌の色など関係なしに全ての人々が平等に暮らせる日がやって来ることを――たとえそれが恐ろしく困難なことだとしても、僕は願ってやみません。 [DVD(字幕)] 6点(2014-12-12 12:35:33) |
1207. ノア 約束の舟
《ネタバレ》 ダーレン・アロノフスキー監督が巨額の予算を投入して描き出す、旧約聖書中のノアの箱舟の物語を元にした壮大なるスペクタクル巨編。現代ハリウッドの第一線で活躍する監督たちの中でも、僕がその次作を心待ちにする数少ない傑出した才能の持ち主であるアロノフスキー監督。彼のそんな待望の最新作なのですが、これがこれまでの素晴らしいフィルモグラフィーの中で僕が唯一「これはさすがに失敗作やろ~」と言わざるをえない『ファウンテン』という作品を髣髴とさせる問題作でありました。うーん、確かに唯一無二の壮大なる世界観や哲学的で難解なストーリーなどはまぁある一定の水準に達してはいるのだけど、観終わってすぐの率直な感想は、「とはいえ、さして面白くはないよね、これ」でした。旧約聖書はずっと昔に所謂「モーセ五書」だけは読んだのだけど、ノアの箱舟ってこんな話でしたっけ?なんだか神の意思なら我が子をも殺すアブラハム(確かそんな名前だったと思うけど自信なしッッ)の物語とごちゃ混ぜにしているような印象が?まあ、そんなことはどうでもよくなるくらい映画としてみれば普通に退屈でした。特に、画的にも地味な前半1時間はまだ箱舟出来ていないのに、僕の意識が睡魔という名の荒波に漕ぎ出しそうになっちゃったし(ZzzZzz…)。大洪水が起きてからの後半はちょっぴり盛り返したものの、その結末があらかじめ分かっている展開にやはりのめり込めず…。監督、世間では失敗作と評される『ファウンテン』のリベンジをしたかったのかも知れないけど、完全に返り討ちでしたね、これ。うーん、こういうのはこれでもう終わりにして、次は『レスラー』や『ブラックスワン』といった、人間の心の闇や弱さを鮮やかに照射してみせる傑作をまた撮っちゃってください!期待して待ってるよ~ん☆追記・この後、監督はやはり聖書をテーマとした問題作『マザー!』を撮って無事撃沈(笑)。世間からどれだけ悪評を得ようとそれでもやりたいんだったら、僕はもう止めません……。 [DVD(字幕)] 5点(2014-12-11 19:52:35) |
1208. 美しい人(2005)
《ネタバレ》 罪を犯し、刑務所に服役中の37歳の女性サンドラは、幼い娘との面会だけを希望に生きていた。夫と共にこれから幸せになろうという妊娠中の人妻ダイアナは、ある日の買い物中に偶然かつての恋人と再会する。父との深い確執を抱える黒人女性ホリーは、そんな父親と決着をつけるために意を決して実家へと帰ってくる。自己中心的な夫と一緒に金持ちの友人宅を訪れたソニアは、その日も案の定大喧嘩となってしまう。愛が冷め切った両親と暮らすティーンエイジャー・サマンサは、自分の将来について悩みを抱えていた。元夫の新たな妻が自殺してしまったローナは、色々と葛藤を抱えながらも葬儀会場を訪れる。不倫相手と共に小さなモーテルの一室へとやって来た中年女性ルースは、隣室の女性が警察に逮捕されるのを目撃してしまう。乳癌を患い、今まさに乳房の切除手術を受けようとしているカミールは、押しよせる不安に押し潰されそうになっていた。そして、祖母と共に死んだ母親のお墓参りにやって来た幼い少女マギー、彼女は人の生と死というものを少しずつ理解しようとしていく――。9人の様々な女性たちのそんな苦悩に満ちた十数分のドラマを美しい映像でもって切り取ったオムニバス作品。なかなか豪華な役者陣を揃え、そんな短い作品を全て編集なしのワンカットで撮るという、カメラ畑出身のこの監督らしい意欲作でありました。確かに緻密に考え抜かれたであろう流れるようなカメラワークはとても素晴らしかったです!若干パンチに欠けるとはいえ、それぞれのお話も人生の悲哀と喜びを瑞々しく切り取っていて素直に良かったと思います。ただ、個人的にあまり好きになれないお話が何個かあって(特に、妻の葬儀会場なのに再会した元嫁に縒りを戻してと縋りついちゃうウザいヘタレ男の話!)、そこがちょっとマイナスでした。それに、アマンダ・セイフライトの胸の谷間を強調したカメラアングルは、男としてはもちろん嬉しいのだけど、今作のテーマには完全にそぐわなかったですね。総じて、映像が美しい映画ではあったけれど、いまいち共感出来る部分が少ないオムニバス作品でありました。 [DVD(字幕)] 6点(2014-12-08 22:09:55) |
1209. ザ・コール [緊急通報指令室]
《ネタバレ》 911。それはアメリカにおける、緊急通報システム。日夜、多種多様な人々からの様々な緊急連絡に対応してきた優秀なオペレーターであるジョーダンはある日、とある少女からの悲痛なSOSを受ける。今まさに猟奇殺人犯に捕まろうとしている少女の切実な叫びに、受話器越しに必死に対応するジョーダンだったが、彼女の致命的なミスにより、少女は数日後に遺体となって発見されるのだった――。6ヶ月後、以来現場から退き教官として後輩の育成にあたっていたジョーダンだったが、またしても幼い少女の誘拐事件が発生してしまう。犯人の車のトランクから携帯電話で必死に助けを求めてくるケイシーと名乗る被害少女。いてもたってもいられなくなったジョーダンは、そんなケイシーの命を救うため、再び現場へと復帰すると受話器越しに様々なアドバイスを与えてゆくのだったが……。猟奇殺人犯に拉致された少女と911のオペレーターとの電話越しの遣り取りをスピーディに描くサスペンス・スリラー。90分という適度な尺、小気味よく進む娯楽に徹したストーリー、相変わらずお美しいハル・ベリーの華のある熱演…。まあ、犯人があまりにも頭悪すぎ(死んだと思ってトランクに閉じ込めた被害者の男が実は生きていたって、犯人、脈ぐらい確認しろよー!てか、最初からケイシーを縛っといたら良かったじゃん!笑)ってところがちょっぴり失笑でしたけど、ツボを押さえたエンタメ作品としてはなかなか良かったんじゃないでしょうか。でも、それも中盤まで。ずっと受話器越しの遣り取りのみで被害者を救出すると思われた主人公が、何故かそんな司令室を飛び出して犯人のアジトへと乗り込んでいくって、おいおい(笑)。しかもそこから思いっ切り、『羊たちの沈黙(劣化版)』になっちゃってるし~。挙句の果てに、もうここまでベタでいくなら最後までベタで通してほしかったのに、奇を衒ったような変てこなラストシーンを迎えちゃいます。いやー、いろいろと残念賞な作品でありました。ハル・ベリーの相変わらずスタイル抜群のナイスバディと、反対に誘拐された少女の妙にエロいムチムチ・ランジェリー姿に+1点! [DVD(字幕)] 6点(2014-12-06 00:41:23) |
1210. インターステラー
《ネタバレ》 僕のこよなく愛する『インセプション』という傑作を撮ったクリストファー・ノーラン監督の最新作にして3時間に迫るSF大作ということで、久し振りにわざわざ映画館へ――。結論を言うと、無茶苦茶面白かったです。圧倒的なスケールで描かれる壮大な世界観、イマジネーションが奔流のように迸るスタイリッシュで洗練された美麗な映像、哲学的で難解なお話なのにそれを微塵も感じさせない考え抜かれたストーリーテリング……。特に、あの1時間経つと地球時間では7年もの年月が過ぎる水の惑星から帰ってきた主人公が、あの僅かな時間で既に27年も経っていたと知ったときの絶望感といったら凄まじかった。地球時間と宇宙時間のずれを見事に対比させることで、今まで誰も見たことのないような壮大なアクションシーンを創り上げたところなんか、さすが『インセプション』のクリストファー・ノーラン!ブラックホールを越え、予想だにしなかった世界へと迷い込んだ主人公が知る驚愕の真実には度肝を抜かれました。そして、最後に彼が娘との約束を果たすシーンは切なくてちょっぴり泣きそうになっちゃったし。そんな綺麗な円環を閉じながらも、物語は新たな旅立ちの余韻を残す希望に満ちたラストシーンを迎えます。ただただ圧倒されてしばらく席から立ち上がれませんでした。最近、この世界は結局唯物論であり、人間はDNAを運ぶための単なる容れ物にすぎないのではないか。愛だの神だの幸せだといった概念は、所詮は人間が作り出した生きるための勝手な理由付けなのだろうという虚無的な考えに捉われがちな僕なのですが、人間はそんな絶望を乗り越えうる素晴らしい観念(想像力)を持っているということをあらためて教わったような気がします。僕はこの作品から生きる希望のようなものをほんの少し得られました。個人的な好みで言えば『インセプション』の方に軍配が上がるけれど、こちらも映画史にその名を燦然と刻むだろう傑作と言っていい。 [DVD(字幕)] 9点(2014-12-01 22:40:05) |
1211. 愛する人
《ネタバレ》 「深いお付き合いをするまえに、あなたに話しておきたいことがあるの。私、14歳のときに妊娠して女の子を産んだの。もちろん育てることは出来ず、その子はすぐに養子に出されたわ。以来37年間、一度も会ってないし何処に居るかも分からない。そう、生きているのか死んでいるのかすらも……。でも私、ずっとその子のことを考えて生きてきたわ。私にとって、その一度も会ったことのない子供が生きる支えだった」――。娘を捨てたという十字架を背負いずっと独身で生きてきた気難しい初老の女性カレン。生まれたその日に母に捨てられたというトラウマを抱えずっと独りで生きてきた女性弁護士エリザベス。子供が欲しい一心で養子縁組をしようと奮闘する子供を産めない身体である若い人妻ルーシー。都会の片隅で鬱屈した想いを抱えながら生きる、そんな3人の女性たちの愛と葛藤と救済のドラマを終始淡々と描いた静かなる群像劇。登場人物に特別な人は誰もおらず、皆自分の心の弱さから他人を傷つけたり傷つけられたり、時に自分が何のために生きているのかすら分からなくなりながら、それでも誰もが〝親であり子である〟人々の姿を優しい目線でもって描き出すこの監督の手腕は素直に素晴らしい。主要登場人物のみならず、さらっと描かれる脇役たちのエピソードもそれぞれ印象的で心地良い余韻を残してくれます。この一向にドラマティックでもない普通の人々の地味なお話をただ淡々と描きながらも、最後まで惹き込ませる編集の力は凄いですね。優れた作家が優れた文体でもって物語を語るのと同じように、優れた映画監督は優れた編集力でもって物語を紡ぐということを再認識させられました。母と子とは、必ずしもお互いを幸せにすることは出来ないのかも知れない、それでも母になろうとする女たちの凛とした姿に静かな感動を覚えます。特に、ナオミ・ワッツ演じる孤独な弁護士エリザベスの辿る哀しい運命には涙せずにはいられませんでした。なかなかの良作だったと思います。この美しい作品を少しでも多くの人に観てもらい、児童虐待や育児放棄といった痛ましいニュースが世の中から少しでも減ることを祈ってやみません。 [DVD(字幕)] 8点(2014-11-29 21:30:50) |
1212. 縞模様のパジャマの少年
《ネタバレ》 ホロコーストという未曾有の狂気が嵐のように拡がり始めた第二次大戦中のヨーロッパ大陸。立派なドイツ軍軍人である父と共に平穏な生活を送る8歳の少年ブルーノは今回、父の転勤によってドイツ郊外へと引っ越すことに。家族と共に新たな地で新生活を営もうとするブルーノ。だが、そこはユダヤ人という〝劣等民族〟を数多く収容する絶滅工場の隣地に建つ官舎だった――。何も知らない無垢な少年であるブルーノは、そこで常に〝縞模様のパジャマ〟を着て有刺鉄線の向こうで暮らす同い年の少年シュムールと出会うのだった。有刺鉄線越しにケーキやボールの遣り取りを交わし、次第に友情を育んでゆく彼ら。だが、過酷な現実がそんなブルーノとシュムールを呑み込んでいく……。20世紀において人類のもっとも愚かな過ちであるホロコーストという悲劇を、8歳の少年の純粋な目を通して描き出すヒューマンストーリー。政治的な背景を徹底的に排除し、何も知らない子供でもそんな悲劇的な史実を理解できるように何度も練られたであろう分かりやすい脚本の力もあり、最後まで引き込まれて観ることが出来ました。主人公ブルーノを演じた少年のナチュラルな演技も巧く、おかげでラストの衝撃の結末にも心を揺さぶられました。うん、素晴らしい良作であった……と、言いたいところなのだけど、観終わって冷静に考えてみると、この衝撃のラストを撮りたいがあまり、脚本の粗が目立つところが玉に瑕でしたね、これ。やっぱりあんなに簡単に収容所に入れちゃあかんでしょ。それに後半10分の展開が急ぎすぎで説得力に欠けます。もっと時間が長くなってもいいので、ブルーノが何度も収容所に進入して冒険を繰り返していたという展開にした方が、2人の友情ももっと深く描けただろうし、衝撃のラストももっと嫌な余韻を――それこそ誰もがもう二度とこんな悲劇を繰り返さないと心から思えるほどの最悪な余韻を残せたであろうに。惜しい。とはいえ、何も知らない子供にも分かりやすくホロコーストの残虐性を描いたドラマとして、なかなか良く出来ていたと思います。多くの子供たちに本作を観てもらい、『アンネの日記』や『ライフ・イズ・ビューティフル』といったさらなる素晴らしい作品を手にとるきっかけになってくれればと切に願います。 [DVD(字幕)] 6点(2014-11-25 20:22:08) |
1213. 最愛の大地
《ネタバレ》 1992年、ボスニア・ヘルツェゴビナ。画家の卵である若き女性アイラと軍部隊将校である青年ダニエルは、仲の良い恋人同士としてささやかながらも幸せな日々を過ごしていた。だが、突如として民族紛争が勃発。ムスリムであるアイラとセルビア人であるダニエルは、そんな時代のうねりに巻き込まれ図らずも敵同士となってしまう――。収容所に投獄されたアイラは、日夜男たちからの理不尽な暴力とレイプに耐える屈辱的な日々を過ごすことに。かつての恋人を救うため、ダニエルはそんな彼女を軍専属の画家として雇うのだった。束の間の平穏を享受する2人。だが、泥沼化する紛争と民族浄化の嵐の中で、彼らの精神は次第に壊れ始めていく……。国連親善大使でもあるアンジェリーナ・ジョリーが初メガホンを取って描き出すのは、第二次大戦以降最大の人道危機とも呼ばれたボスニア紛争によって、運命を翻弄されるそんな恋人たちの悲劇を描いた重厚な人間ドラマでした。有名俳優は一切起用せず、最後までドラマティックな音楽も流さず、ただひたすら理不尽な現実に翻弄される市井の人々を淡々と追うことで、戦争がいかに人間性を破壊していくかを冷徹に見つめた彼女のそのストイックな姿勢には感服するものがあります。ただ、誤解を怖れずに言うと、そんな圧倒的な現実に対して肝心の物語が弱い。僕が映画に求めるものは、この世界は残酷で理不尽な暴力に満ち溢れていて人間は何処までも愚かで人生とは生きるに値しないのかも知れない、それでも生きていたいと思わせる何らかの〝言葉〟。あるいはラース・フォン・トリアーのように「この世は生きるに値しない」という絶望的な〝言葉〟でもいい、監督が極限まで考え抜いて絞り出した答えがそれなら僕は真摯に受け止めます。対してこの作品には、そんな心に響く〝言葉〟が乏しかった。これでは、遠くない過去に起こった――そして今でも世界の何処かで起こっているだろう残酷な現実をただ再現しただけに過ぎません。今も何処かで声にならない悲鳴を発し続けているだろう社会的弱者を少しでも救いたいというその思想には好感がもてるものの、今作を観るかぎり彼女に映画監督としての才能は乏しいと言わざるをえません。 [DVD(字幕)] 5点(2014-11-22 21:29:35) |
1214. ブラック・スネーク・モーン
《ネタバレ》 うだるような熱気が立ち込める、アメリカ南部のとある田舎町。実の弟に妻を寝取られ、以来独りぼっちの寂しい生活を余儀なくされた中年男性ラズ。ある日の朝、彼は顔をボコボコに殴られ道端に捨てられた半裸の若い女性レイを発見するのだった。面倒事を恐れたラズは、思わず彼女を自宅へと連れ帰ってしまう。だが、ラズはこの時知らなかった。彼女は町の男どもに「あいつは近くにあれば木とでもヤってるよ」と噂されるほどのセックス依存症のビッチだったのだ――。「人間は皆、神が世に送り出した宝物」という価値観を信条とする堅物のラズは、そんな彼女を立ち直らせたいと思うあまり、とある計画を思いつく。それは彼女を鋼鉄の鎖へと繋ぎ自宅のリビングへと監禁すると自分の理想とする貞淑な女性へと調教させようというもはや犯罪と言ってもいいものだった。やがて目を覚ましたレイは、自分の置かれたあり得ない状況に愕然とする……。男と見れば誰にでも股を開くようなビッチという汚れ役に体当たりで挑んだクリスティーナ・リッチと、ちょっぴり(いや、かなり?笑)イカれた保守的キリスト教徒を怪演してみせたサミュエル・L・ジャクソン。2人が初競演を果たしたという本作は、鋼鉄の鎖に繋がれ監禁された若い女性と彼女を調教しようという中年男性の緊迫の密室劇というかなりぶっ飛んだ設定のエロティック・バイオレンス・人間ドラマでした。いやー、今まで見過ごしていたことを後悔しちゃうくらい、普通に面白かったですね、これ。冒頭からタランティーノやロドリゲスの影響を色濃く受けたであろう、乾いた映像と格好良い音楽とアクの強いキャラクターたちとわけ分からんヘンテコなストーリー展開にめっちゃ惹き込まれました。てか、サミュエル・L・ジャクソン、あんた、自分では正義感からしてることなのかも知れないけど、これってれっきとした犯罪ですからー!近くに住んでたら一度はお相手してもらいたいロリビッチなクリスティーナ・リッチちゃんも、そんな変態オヤジに調教されてくうちに次第に心を開きそれまでの自分の人生を悔い改めていくっておいおい(笑)。そんな2人の倫理観のぶっ飛び具合がサイコーに楽しかったです。ただ…、レイが鎖から解き放たれる中盤からが失速して、後半はなんだか普通のヒューマンドラマとなってしまったところがちょっぴり残念ではありましたけれども。とはいえこの全編を覆うアクの強~い濃ゆ~い汗臭~い我が道を行く唯一無二の世界観は充分堪能出来ました。うん、面白かった!7点! [DVD(字幕)] 7点(2014-11-20 00:51:17) |
1215. 50/50 フィフティ・フィフティ(2011)
《ネタバレ》 「母さん、落ち着いて聞いてくれ。実は僕、癌なんだ。2日前に分かった。でも、大丈夫。ネット情報だけど5年後の生存確率は50%、カジノなら楽勝の勝率だよ、きっと生き残ってみせるさ」――。ラジオ局に勤める働き盛りの27歳の青年アダムは、愛する彼女や友人たちと充実した日々を送っていた。だが、ある日彼は、医師から重度の癌を患っていることを知らされるのだった。突然のことに、もちろん動揺を隠せないアダム。それでも彼は、周りの心優しい友人や恋人、セラピストの励ましを糧に、持ち前の楽観的な性格からなんとか前向きに生きようと試みる。施設から捨て犬を引き取ってみたり、思い切ってスキンヘッドになってみたり、自虐ネタで女の子をナンパしてみたり…。だが、そんな気丈に振舞うアダムも、とうとう癌という病と真剣に向き合わざるを得なくなってしまう……。若手脚本家が実際に体験したそんな重い事実を、反対に終始軽いタッチで描いた闘病物語。うん、評判どおりなかなか良かったですね、これ。まるでポップアイドルグループのPVのようなセンス溢れる映像と軽快な音楽でこんな暗いお話を、ちゃんと現実の理不尽さを直視しながらも最後まで小気味よく見せきるこの監督と脚本家の手腕は素直に素晴らしいと思います。若い女性カウンセラーとの恋愛描写もちょっぴりご都合主義っぽかったけれど、医師と患者との間で揺れ動く彼女のいじらしい姿にはけっこう胸キュンでした~。反対に、あの浮気しちゃう主人公の彼女のいかにもビッチって感じの描き方は、脚本家の相当の私怨が込められてますね(笑)。なんだか、同じくゴードン・レヴィット主演の男目線ラブストーリーの佳品『(500)日のサマー』を思い出しちゃいました。総じて、世に溢れ返る薄っぺらいお涙頂戴の闘病物語とは一線を画する、軽さと重さの間を絶妙のバランス感覚で描いた人間ドラマの秀作であったと思います。ただ…、主人公の親友であるカイルがあまりにもデリカシーのないやつ(こいつ、ホントに女とHすることしか考えてねーんじゃないのって何度も突っ込んじゃったし!笑)で、いまいち僕の好きになれないタイプのキャラクターだったんで、そこだけちょっぴりマイナスっす。 [DVD(字幕)] 6点(2014-11-17 18:01:49)(良:1票) |
1216. フローズン・グラウンド
《ネタバレ》 「奴は、羊を狙う狼のように次の娘に迫っている。そして犯し、必ず殺す。娘たちには一刻の猶予もない。だから、部長、捜査令状をくれ、今すぐに」――。1983年、アラスカ州。何人もの娼婦が誘拐され残虐な方法で殺されて死体となって発見されるという猟奇殺人事件が多発していた。そんな中、監禁されていた17歳の少女シンディが自力で脱出し警察署に保護される。彼女の証言を元に、すぐに容疑者としてハンセンという男が浮かび上がるのだが、有力な証拠は見つからなかった。そんな困難な事件を担当することになった、正義感の強いハルコム刑事。捜査を進めていくうちにハンセンが犯人であるという確信を得ていく彼だったが、まるで蛇のように狡猾な犯人はするりするりとそんな捜査の手を潜り抜けてゆく。やがて、とうとうシンディの元にも再び犯人の魔の手が迫るのだった…。実際にあった事件を基に、刑事と猟奇殺人犯、そして社会から疎外され孤独に生きてきた娼婦の決死の攻防をスリリングに描いたサイコ・サスペンス。最近、あまりにもトホホな作品への出演が相次いでいるニコラス・ケイジ&ジョン・キューザックという二大トホホ俳優が競演といういうことで、あまり期待せずに観たのだけど、結果はやっぱり「トホホ…」でしたね、これ。実話を基にしたから仕方ないのかもしれませんが、とにかくストーリーが分かりづらい!容疑者であるハンセンが普段何をしている人で家族関係がどうで心にどんな闇を抱えているのかさっぱり分からないから、こういう猟奇殺人モノに不可欠な要素“身も凍るような恐怖”が一切感じられず不満爆発!事実を追うだけなら単にドキュメンタリーや再現VTRを見ればいいのだし、少なくとも映画という芸術表現でもって人様からお金を貰おうとするのなら、映画として最低限のクオリティは確保してほしい。最後に表示される、実際に殺された少女たちもこれでは浮かばれないでしょうね。 [DVD(字幕)] 4点(2014-11-14 00:38:19) |
1217. オーガストウォーズ
《ネタバレ》 それはたった一度の過ちだった――。2008年、次第に悪化するロシアとの緊張から不穏な空気が漂う小国グルジア。ロシア軍兵士である夫と離婚し、シングルマザーとして最愛の一人息子と暮らすクセーニアは、彼氏である会社社長と結婚を巡る重大な局面を迎えていた。だが、息子チョーマは極度の空想壁により、いつも面倒ばかりを起こす問題児だった。「たった一日だけなら…」と、彼氏との婚前旅行のために、チョーマを元夫が赴任するグルジアのロシア軍駐屯地へと預けることにしたクセーニア。それが、親子の絆を断ち切るほどの過ちになるとも知らずに…。グルジア紛争という実際にあった戦争を基に、決死の覚悟で愛する息子を追い求める母親のドラマを、憧れのヒーローである巨大ロボットを夢見る少年の虚実入り混じる視線を絡めて描き出す軍事アクション。予告編のそのごりごりのロボットものっぽい内容を見て、きっとこれは「ロシア版トランスフォーマー」なんだろうなーと、昔からそんなロボット系が苦手な僕はずっと敬遠してきた本作なのですが、実際のグルジア紛争を背景にしているということに興味を惹かれて今回鑑賞してみました。冒頭から、そんな巨大ロボットは主人公である少年の空想の中だけにしか出てこず、あとはずっとリアルな戦場描写が延々と続き、「あれ?これってもしかして僕のこよなく愛する『パンズ・ラビリンス』のロシア・少年・ロボットバージョンなの?!」と否が応にもテンション上がっちゃいました。でもね~、そんな何の力もない少年が目の前の理不尽で残酷な現実にただ想像力のみで立ち向かうという設定が活きてくるのは後半15分だけってバランス悪すぎじゃないっすか、これ。これでは、この魅力的な設定がなんだか蛇足となってしまった感じがして僕はいまいち乗り切れませんでした。それに、ロシア軍全面協力だから仕方ないかも知れませんが後半の臆面もないロシア軍礼賛描写にも辟易です(激しい銃撃戦の後に、クセーニアが発する「これで給料幾ら貰ってるの?」という問いに、ロシア兵が「大した額は貰っちゃいねえ」と答えるというクサい演出にはちょっぴり失笑)。でもまあ、ハリウッドも似たようなことしてるからおあいこかな(笑)。結論。あくまでリアルな戦争アクションにしたかったのか、想像力豊かな子供の目で描くファンタジーにしたかったのか、僕にとってはなんとも中途半端な印象の強い作品でありました。 [DVD(字幕)] 4点(2014-11-11 19:13:14) |
1218. オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主
《ネタバレ》 「僕の名前はオッド・トーマス。何処にでも居る、いたって普通のフリーターだ。セレブでもないし、その子供や恋人ってわけでもない。でもここだけの話、僕の生活はほんの少し変わっているんだ」――。死者の霊が見えるという特殊能力を持った青年“オッド(奇妙な)・トーマス”。持ち前の正義感から、彼はそんな能力を活かして日々未解決殺人事件を解決へと導いたり、悪しき霊の仕業と思しき現象を封じ込めたりと人知れず世のため人のため尽力している。幼馴染みの超可愛い彼女ストーミーともラブラブ、とっても充実した毎日を過ごしていた。だがある日、彼は血の匂いに惹き寄せられる死神ボダッハが大量発生したことを知るのだった。きっとこれは大変なことが起ころうとしているに違いない!その日からオッドとストーミーは、死神たちが引き起こす恐ろしい大量殺人計画へと巻き込まれてゆく……。これまで肩の凝らない良質のエンタメ映画をいくつも撮ってきたスティーブン・ソマーズ監督が新たに挑んだのは、そんなシンプルなストーリーの青春ホラーアクションでした。冒頭から、この監督らしい小気味の良いスピーディーな展開と軽快でノリのいい音楽、死神や霊たちの適度なグロ描写、そして主人公オッドの青臭~いモノローグでぐいぐい引っ張る二転三転するストーリー等々なかなか面白かったですね、これ。まあ、ベタっちゃあベタですけど、この手の中2病的青春映画には珍しく主人公が初めから妄想力爆発なぐらい超リア充なとこはけっこう新鮮だったかも。特に、オッドの彼女ストーミーを演じた女の子が滅茶苦茶可愛いくてしかも性格もスタイルも抜群(そのホットパンツから覗くすらりと伸びた両脚なんてもう100点!!)で、そんな彼女とますますリア充爆発しちゃうクライマックスなんか観ていてちょっぴり(かなり?笑)腹立つくらいだったのだけど、最後の意表を突くラストシーンには完全にやられちゃいました。まさか、こうくるとは……。うーん、切ない!!というわけで、ちゃんとツボを押さえた楽しいアクション映画でありながら、最後は意外にも切ない余韻を残してくれる良質のエンタメ作品であったと思います。うん、7点! [DVD(字幕)] 7点(2014-11-09 00:43:13) |
1219. ムード・インディゴ うたかたの日々
《ネタバレ》 フランス、パリ。蓄えられた豊富な財産で悠々自適な生活を送るコランの家には、不思議なものが溢れかえっていた。蛇口を捻ればは水の変わりにうなぎが飛び出し、呼び鈴を鳴らせばベルから足が生えて部屋中を這い回り、小さなネズミ人間がそこらじゅうを闊歩する……。でも、それはちっとも不思議なことじゃない。何故ならパリ全体がそんな摩訶不思議な現象で溢れているのだから――。ある日、そんなコランは友人のパーティーで出会った美しい女性クロエと瞬く間に恋に落ちるのだった。様々な困難を乗り越えてやがて結ばれる2人。だが、クロエの肺に睡蓮の種が迷い込んだことからそんな幸せいっぱいの彼らの生活に暗い影が忍び込む……。マジカルでポップ、独創的でシュール、そんな唯一無二の摩訶不思議な映像で描き出される、ストーリー自体はいたってシンプルなラブストーリー。僕のこよなく愛する『エターナル・サンシャイン』を撮ったミシェル・ゴンドリー監督が新たに挑んだのは、いかにも彼らしい冒険心に満ちた前衛的作品でありました。うーん、この監督の作品って観れば観るほどやっぱり「エターナル~」は奇跡の一品だったんじゃないかと思っていたのですが、本作を鑑賞して残念ながら僕の疑念は確信へと変わっちゃいました。何が駄目かって、この全編を彩るまるで監督が自分のセンスをひけらかすような映像の数々に必然性が一切感じられないこと。たとえば「エターナル~」では、そのシュールな世界観は脳内記憶消去というプロセスの中で主人公が見る観念的世界を映像化したという大前提があったからこそ素晴らしい作品となりえていたのです。ところが本作、その基本となる前提が成立していないから一向に作品世界に入り込めません。それに監督の独り善がりとも思える、意味不明な映像も多数あって僕はちょっぴりイライラさせられちゃいました。例えるならアリスの出てこない不思議の国の物語を延々と見せられただけ。観客が感情移入できる登場人物が一人も出てこない、なんとも締まりの悪い作品でありました。ミシェル・ゴンドリー監督、前衛的な作風へとアグレッシブに挑戦するのもいいけれど、今度はちゃんと中身のある充実した作品も撮ってもらいたいものです。あなたはかつて、『エターナル・サンシャイン』という傑作を創った人なのだから。 [DVD(字幕)] 4点(2014-11-07 21:18:57) |
1220. グリフィン家のウエディングノート
《ネタバレ》 女にだらしない禁酒中の家長をはじめとするグリフィン家には、彼に負けず劣らず個性的なメンツばかりがそろっていた。そんなグリフィン家の子供の一人が結婚することになり、相手方の両親をも含めて豪華なディナーの席を設けたのだったが、様々な問題を抱えた家族が一堂に会したものだから、さあ大変。果たして、グリフィン家は無事に結婚式を披くことが出来るのか?豪華な役者陣をそろえて、そんなグリフィン家の騒動を軽妙なタッチで描くファミリー・ドラマ。普段はこういういかにもぬるそうな作品ってほとんど観ないのだけど、ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムス、スーザン・サランドンを初めとするもう本当に豪華な役者陣の競演に惹かれて、今回鑑賞してみました。結果は…、「やっぱ、観なくてもよかったな…(笑)」。とにかく登場人物がやたらと多いのに、僕の理解力が乏しいせいか、それともこの映画の見せ方がお粗末なだけなのか、これが誰で誰とどういう関係で誰との愛憎に悩んでいるのか、最後までさっっっぱり頭に入ってきませんでした。それにやたらと下品な下ネタが多いのにも辟易っす。松茸やらキャビアやら松坂牛やら超豪華な食材を集めたのに、調理法が分からずそれをただ鍋で煮込んだだけの酷い代物を、ただ小奇麗に盛り付けただけの料理を食べさせられたような、そんな残念な映画でありました。余談だけど、本作でのロビン・ウィリアムズさん。ちゃんと演技はしているものの、いかにも精彩がなく目付きも虚ろでその後の自死を予感させる鬱状態が垣間見えてなかなか痛々しかったですね。彼の遺作が、こんなつまらない映画となってしまったことがつくづく残念でなりません。ご冥福をお祈りします。 [DVD(字幕)] 3点(2014-11-03 12:54:20)(良:1票) |