161. ゆれる
信用と懐疑、羨望と嫉妬、そして真実と嘘。二人の兄弟を引き裂いたのは一人の女性の死を期に初めて露呈した互いの胸の内だったわけだが、果たして偽ることは罪なのか。時には自分を偽ることでしか保てない人間関係もあるし、逆に真実が誰かを傷付けることだってある。真実と嘘の間で翻弄され、時に喜び時に悲しみ、揺さぶり続けるのが人間。あの壮絶なラストに僕は思わずそんなことを考えてしまいました。 [映画館(邦画)] 9点(2006-10-28 12:14:29) |
162. 樹の海
《ネタバレ》 あ、これってオムニバスだったんだ。どうりで各エピソードがほとんどつながらないわけだ。ただどう考えても井川遥のエピソードはいらなかったような…。なんかあの話だけ浮いてる感じがするし、自殺を図る意図もよく分からないし(これ以外の話の主人公は皆「自殺する本人」ではなく「自殺した人orしようとした人に関わった人」なわけだから)。各エピソード共クセ者ぞろいで退屈することなく楽しめましたが、やはり本作最大の功労者は彼でしょうね。そう、死体の田中さん。 [DVD(邦画)] 5点(2006-10-28 11:54:40) |
163. 父と暮せば
こりゃあ完全に舞台劇ですね(一寸法師のシーンなんてモロにスポットライト当ててるし)。主演二人の演技が抜群だったので退屈はしなかったけどそれでもちょっと間延びしてるなぁと感じる部分もあったりしたし、もう少し浅野忠信が話に絡んでいたらまた違っていたかも。ちなみに僕は広島生活が長かったんで広島弁は特に問題なかったけど、それ以外の地域の人って大丈夫だったんでしょうか?(劇中頻繁に出てくる「えっと」って言葉は「多い・たくさん」って意味です。決して台詞を噛んでるわけじゃありませんのであしからず) [DVD(邦画)] 7点(2006-10-28 11:44:42) |
164. ユージュアル・サスペクツ
観終わった直後は「面白ぇ!」って思ったんだけど、エンドロールを観ながら内容を回想しているうちにだんだんと疑問が噴出。サスペンスってのはある一定のルールの範囲内で展開されるからこそ面白いのであって、不必要にそれを破ると「巧妙な仕掛け」はただの「インチキ」にしかならない。で、あの結末をみる限りこの映画はやや後者寄り。嘘は大いに結構だがそれも度が過ぎると話は別である。これなら最後まで絶妙な匙加減で走り切った『ソウ/SAW』の方が一枚上手です。 [DVD(字幕)] 7点(2006-10-15 10:48:39) |
165. ロープ
フィリップのあからさまな動揺や、死体の入った箱を開けようとするのを何故か阻止しようとする怪しい行動は見受けられるものの、殺人を示唆するような決定的な証拠はどこにも見当たらなかった。そうなるとルーパード教授は一体どこで事件を解くカギを見つけたのだろう(ロープを持って引き返してきた以上、彼は殺し方まで暴いていたことになる)。観客は殺しの過程を二人の犯人と共に目撃しているからいいが、同時に教授が謎を解く過程を見せてくれないと、どうしてもラストの展開が唐突に映ってしまう。ワンカット撮りというアイディアは面白かったけど、そのヘンが若干消化不良でした。 [DVD(字幕)] 6点(2006-10-08 18:59:39) |
166. コアラ課長
《ネタバレ》 『いかレスラー』の洗礼を受けた後で鑑賞したから笑ってられますけど、この監督がこういう映画を作る人だという予備知識ナシでいきなり観るのは危険。オープニングの歌で確実に頭をヤラレます、要注意。それはともかく、まだ『いかレスラー』はギリギリ物語が「分かる範疇」にありましたが、この『コアラ課長』に至ってはそれすら振り切って大暴走。終盤のバトルまで来ると、もうそれまでのストーリー展開など全く無意味。その破壊っぷりはある意味『DEAD OR ALIVE』に匹敵しています。もはや殺人事件の真相など脇に置いといて、その場その場で起こる奇妙奇天烈な現象の数々にすかさずツッコミを入れることに専念すべきでしょう。つうか事件の真相なんかより、こういう映画に出資をする人がいて、しかもそれが劇場で公開されてしまってることの方がよっぽど謎だ。でもキライじゃないです、これ。 [DVD(邦画)] 5点(2006-09-09 13:16:15) |
167. 空中庭園
最初の一時間はとにかく退屈。何度観るのを中断しようと思ったことか。なんせ京橋家をはじめとする登場人物の誰にも感情移入できないし、行動理由も理解できない。それに家族に隠し事をしないってそんなに素晴らしいことだろうか? 朝っぱらから親が子供に自分たちのラブホ体験話を包み隠さず話すなんて行為は正直でもなんでもなく、永作博美の言うようにただ恥も外聞もないだけ。そんな上っ面の平穏を保とうとしたっていつか崩壊するのは当たり前。あんな風になったってただ「こいつらアホや」と思うだけ。全く意味不明。よってとりあえず、小泉今日子の見事なフォーク捌き(?)に4点。 [DVD(邦画)] 4点(2006-09-07 21:36:49) |
168. ヒトラー 最期の12日間
ユダヤ人に関する描写がバッサリと切られているところに違和感がないわけではないんですが、逆にそこまで描き出すととてもじゃないが上映時間が足りない。これはある意味正しい選択だったようにも思います。ヒトラーがあのタイミングでいなくなってしまうことからも想像できるように、この映画は第三帝国の崩壊を前にしたヒトラーだけではなく、彼を取り巻く様々な人間達が何を思いどう行動したかに迫ったドラマ。戦争責任という点では、昨今の日本の社会状況を考えるうえでも何かしらのきっかけになる貴重な作品でした。 [DVD(字幕)] 8点(2006-09-07 21:27:27) |
169. クラッシュ(2004)
最初はよくある白人と黒人との人種差別問題の映画かと思っていたが、とてもそんな単純な物語ではなかった。そこにはメキシコ人やトルコ人、中国人もいる。車を盗む奴もいれば他人を傷つける奴もいる。人を殺す奴もいる。逆に人を助ける奴もいる。いや、誰かを傷つける「時」もあれば助ける「時」もあるというべきか。「人間」という生き物の不可解さを約2時間ほどの間垣間見せてくれる名作だと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2006-09-02 17:49:34) |
170. グエムル/漢江の怪物
《ネタバレ》 怪物の出現ポイントが大きな河。隠れ家が下水溝。決戦の舞台が橋。絶えず降りしきる雨。そして米軍の存在。この映画のネタの7割は『WX?機動警察パトレイバー』と『GODZILLA』が起源じゃないでしょうか。グエムル自体、廃棄物13号そっくりだし。物語の主軸に怪獣映画の定番ともいえる科学者や軍人、政治家を一切配さず、ただ一家族が奮闘するストーリーにしたのはなかなか斬新でしたが、その反動というか政府や軍の対応が非常におマヌケに映り、全体的に緊張感に欠けていたように思います。でもパク一家のキャラはみんなよかったので決定的な破綻には至ってないのが幸いです。特に、脱出したら冷たいビールが飲みたいと呟くヒョンソの表情が忘れられない。だからこそあのラストは「?」。よって-1点。 [映画館(字幕)] 6点(2006-09-02 17:29:16) |
171. ミュンヘン
黒の「9」月に「11」人の暗殺ターゲット。そしてラストに浮かび上がるあの建造物。1972年のミュンヘン事件から始まった物語の終着点がWTCだった事が象徴するように、これは単なる34年前の事件の一断片ではない。まさに現在進行形の物語なのである。根深い民族の対立、見えない妥協点、その解決策としての暴力。それらの止むことのないうねりがやがては「○○のための報復」から「報復のための報復」へと変化していく。そして悲しいことに、ミュンヘン事件も9.11もまた、出発点でもなければ終着点でもない。いつ終わるとも知れない報復の連鎖の通過点に過ぎないのである。 [DVD(字幕)] 7点(2006-08-26 08:13:41) |
172. 時をかける少女(2006)
《ネタバレ》 前評判に違わぬ傑作。僕的には本年度のベストはほぼこれで決まりだと思います。魅力的なキャラクター、ぐいぐい引き込まれるストーリー展開、そして感動のラスト。どれをとってもここまで素晴らしい作品はアニメ/実写の区別関係なくなかなかお目にかかれない。短い上映時間ながらうまくまとめていると思います。ラストの怒濤の展開に対しても、例えば「千昭は漢字が苦手」だという何気ない台詞がキチンと伏線になっているなど、実に抜かりがない。敢えて苦言するなら、あの絵が千昭にとってどれだけ大切なものだったのかがいまいちよくわからなかったことぐらい。それ以外は文句ナシ。いやぁ、この炎天下の中を電車を乗り継いでまで観に出かけた甲斐があったってモンだ。ちなみに僕が観に行った映画館は昼過ぎの時点で午後の上映3回分のチケットが完売、立ち見すら捌ききれない状態でした。なんとか上映規模を拡大できないもんですかね。現在大ヒット上映中の某戦記アニメの上映館、50館ほど分けてくれないかな…なんて。 [映画館(邦画)] 8点(2006-08-20 18:13:54) |
173. 運命じゃない人
久々の大当たり映画! 皆さんおっしゃるとおり脚本の完成度がズバ抜けてます。このホンが完成した段階でこの映画の成功は半ば約束されたようなもの。勿論、そのホンを見事に形にした出演者とスタッフに拍手! 最高の映画をありがとう! もう何を書いてもネタバレになりそうなんで敢えて感想は書きませんが最後に一言。これからDVDを借りて観ようと思っている方は、本編を観る前に絶対に予告編を観ないように! きっと衝撃度が全然違います。 [DVD(邦画)] 10点(2006-08-15 23:22:52)(良:1票) |
174. いつか読書する日
《ネタバレ》 おお、ラジオでスワンが歌ってる…なんて話はおいといて(爆)。認知症の老人、児童虐待、そして在宅介護と画面のあちこちから死の匂いがプンプン漂う作品であり、それ相応のラストを向かえるわけですが、主演の田中裕子の溌剌とした雰囲気のおかげで映画全体があまり湿っぽくなくてよかったです。ただ、僕としては高梨の妻がとった行動がどうもスッキリしなかった。普通に考えればあれはキューピット役を演じたというよりはいらんお節介でしょう。いくら死期が近いからってあんな手紙書くかなぁ? そしてその手紙に見事突き動かされる50歳の男女。う~ん、二十代半ばの僕には分からん世界やなぁ、と思いつつ7点。 [DVD(邦画)] 7点(2006-08-14 22:47:42) |
175. ロッキー
ロッキーってもっと無口でクールな男を想像していたので、冗談を言いまくったりわめき散らしたりする様子はちょっと意外でした。肝心のチャンピオンとの試合がわりとアッサリしていたのも意外。ま、この映画の場合、試合に勝つことよりも「そこ」に至るまでの過程に比重を置いていたようなので、特に肩すかし感はなかったです。とにかく、気合い入りまくりのロッキーとガッチリ脇を固める『ゴッドファーザー』組(?)の面々に7点。 [DVD(字幕)] 7点(2006-08-13 22:40:03) |
176. シザーハンズ
終わってみたらエドワード以上に、自分のことしか考えてない町の住民たちこそが「異形」の存在に思えてくる(特に噂話に敏感なオバさん集団はホントに怖い…)というブラックなお伽噺。それはそれでいいんだけど、唯一納得いかなかったのがヒロインのキム。よく考えたら不法侵入騒ぎの時に彼女が真実を話していたらあんなことにはならなかったんでは? しかも結局最後は全部ジムに泥をかぶせて自分だけおいしいところ持っていきやがったし。初登場シーンからラストに至るまで彼女のエドワードに対する想いが描かれる場面がほとんどなかったので、ラスト十数分の展開にはお口アングリ状態でした。それだけが心残りです。ところでエドワードが刻んでいたあのデカイ氷柱、一体どっから持ってきたんだろう? [DVD(字幕)] 7点(2006-08-12 21:56:55) |
177. ゲド戦記
《ネタバレ》 よくも悪くも「これぞここ最近のジブリ」といったところでしょうか。相変わらず音楽や映像は素晴らしいんだけど(特に今回はCGが控えめで好感)、物語本編がやっぱり消化不良。思考や行動理由がまるで定まらない登場人物達、肝心な部分の描写不足、やたらと説明口調な台詞、そのくせ一見意味ありげに思えて実は全く空疎な主張の数々…。特にテルーの正体には思わず座席からずり落ちそうになりました。とはいえ、同じ失敗作でも個人的にはやる気ゼロのやっつけ仕事にしか思えなかった『ハウル』よりは幾分愛すべき失敗作だと思ってます。吾朗監督の次回作に期待。正味の評価は4点だけど、思わぬ形での『シュナの旅』映像化に+1点で5点。 [映画館(邦画)] 5点(2006-07-29 15:17:53) |
178. キッド(1921)
5歳になった少年ももちろん素晴らしいのですが、その前の赤ちゃん時代もまた素晴らしいです。チャップリンのとなりに吊るされた揺りかごの中でミルクを飲む赤ちゃんの目をみはるような演技力(?)もまた忘れ難い。ホントにいい表情と仕草してます。ラストはちょっと呆気なかったですね。「ここからどうなる?」って身構えていたところでプツッと終ってしまったので。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-07-27 20:43:58) |
179. 担え銃
戦争モノということでつい『独裁者』あたりを思い出してしまいますが、これはこれで楽しめる作品。水没する塹壕も木の変装もラストの逃亡劇も十分楽しいのだが、やはりあのオチがあって全てがより輝いてくるように思えます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-07-27 20:38:55) |
180. チャップリンの冒険
ストーリーらしいストーリーもなく、ひたすら動きの面白さだけで見せていく名作。少し前に『独裁者』とか『殺人狂時代』の様なメッセージ性の強い作品を立て続けに観ていたので、この作品にはいい意味で裏切られた感じです。でももう少しオチに何か欲しかった気もする。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-07-27 20:31:24) |