1. サマーフィルムにのって
「映画って、スクリーンを通して今と過去をつないでくれるんだと思う」映画を愛する主人公のセリフ。そして今は未来へとつながる。 映画とタイムループは相性が良い。SFで夢があって、必ず愛がある。そして映画そのものが、誰もがいつでも手に取って観ることが出来るタイムカプセルだから。 オタクの趣味を理解し合える仲間が周りに(一人でも)居ることの幸福。これは学校という同世代の者が集う小集団だからこそ容易に感じられる実は奇跡的なもの。社会ではこれが意外と難しい。だから学園ものはキラキラしてるんだ。 俳優はほぼ素人っぽくB級の域を超えられなかったが、その中で河合優実はやっぱり本物の臭いがした。 上映会で掛けられた完成品の編集と殺陣は、純粋にカッコ良かったと思う。そっちも観たかった。 ハチャメチャではあるが、映画愛にあふれた作品。「映像は5秒がトレンド、1分は長編」な未来は嫌だ。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-02-02 10:32:25) |
2. 女は二度決断する
《ネタバレ》 ダイアンクルーガー、本作に関して言えば、素晴らしい俳優。今まであまりご縁が無かったのであくまでも本作についてです。クールで芯が通った強い女性像は、ジョディフォスターを思わせる。似てはいないけど。 普通の幸せな家族が巻き込まれた悪夢のような事件。一生のうちに一番言われたくない言葉「DNA鑑定で身元の確認を。」もう泣き崩れるしかない。そして「あなたがちゃんとみてればあの子は…」これもきつい。 度々ドキュメンタリーのような撮り方の映像をはさみ、視聴者にまるで実話のように見せ、感情移入させる。 ネオナチやギリシャの極右団体など日本人にはあまりピンと来ないが、サムライのタトゥーを入れた主人公カティヤの魂の物語であることは痛いほど伝わった。 重たい題材を106分にまとめられたのは、全く無駄のないストーリーテリングだったから。多くの事は法廷で語られる形式をとり、犠牲になった家族の遺体など一切出さず、法廷での証言で聞かされる残酷な死因と現場の状況。それをただ黙って聞くしかないカティヤは、込み上げる悲しみと怒りで気が狂いそうになる。 凶器となった爆弾のことも法廷でレクチャー、彼女が元々エンジニア系が得意な点もさり気なく伝えられている。 彼女は決断したが、一度目は断念した。小鳥のせいか。 家族で行った海でのホームビデオを繰り返し見返すカティヤ。「ママもおいでよ」と言う夫と子供のセリフ。 事件以降ストレスで止まっていた生理が、来る。自分の信念と関係なく、時の経過は心と体を徐々に癒そうとしている。控訴して、このまま前向きに立ち直ることも出来るかもしれない、もう私は大丈夫かもしれないと正気を取り戻したうえでの「二度目の決断」だったんだと思う。誰も救われない、やるせない結末。それがテロなんだ。 [インターネット(字幕)] 9点(2025-01-30 18:17:50) |
3. リトル・ダンサー
《ネタバレ》 何て良い家族なんだろう。ハラスメントの塊のようなお父さん、粗暴で筋肉頭のようなお兄ちゃん、認知症のおばあちゃん。そこに思春期で反抗期の主人公ビリー。そりゃあフラストレーション溜まりまくるでしょう。 炭鉱は潰れ掛け、炭鉱夫のお父さんとお兄ちゃんはいつもイライラしている。みんなこのままじゃいけないって事を感じてる。 ビリーのがむしゃらな踊りに、現状打破の希望を感じたお父さん、もうここからは熱い絆、温かい家族。 ビリーの夢、それは家族みんなの夢。スト破りで屈辱的惨めな姿をみせるお父さんのカッコ良さ。お兄ちゃんとおばあちゃんが優しく見守る姿。 そして14年後、ビリーの雄姿をまだ観る前に泣き始めてしまうお父さんに、愛情の深さを見せられた。ブラボー。 [インターネット(字幕)] 10点(2025-01-26 13:50:12) |
4. そして、バトンは渡された
《ネタバレ》 原作を少し前に読んだので鑑賞。これはこれは。タイトルを拝借しただけの別物なのでは。原作の細かいところまで全てを憶えているわけではないが、全ての登場人物の印象がなんだかちょっとずつ違うような気がした。俳優さんの演技に問題があるわけではない。原作と全く同じものを求めているわけでもないのだが、根本的な所が違う気がした。軽いタッチで読みやすい原作の文章が表現しているのは、まさに軽やかに世の中を渡ってゆく優子ちゃんというキャラクターそのもので、みいみい泣く みいたん ではない。優子ちゃんは強い子とまでは言わないが、現実を認めるのがとても上手で湿っぽいところがない子だったと思う。梨花さんは梨花さんであって、ママではない。結婚式の前に実のお父さんの事を「水戸さん」と表現した箇所も違和感があった。それぞれの呼び名一つとっても、その人間関係、距離感に係わる大きな差異となる。 また、本作では「親めぐりの旅」がメインパートとなっているようで、そこに行くまでが雑と言うか、特に高校生活の部分は早瀬君に出会うためだけに描かれたようなもんで、友達や担任の先生はもはや存在が謎レベル。 バトンの受け渡し、という大枠はなぞられているが、梨花さん(ママ)の顛末が「実は昨日電話があって…」って、ここまでご都合主義とはむしろあっぱれ。 何度も言うが、俳優さんは悪くない。脚本の問題。 [インターネット(邦画)] 4点(2025-01-09 18:48:22) |
5. JAWS/ジョーズ2
《ネタバレ》 続編なので前作と比べてしまうのは当然だが、比べる対象があまりに偉大過ぎて可哀そう。冒頭でダイバーたちが沈没したオルカ号を発見した時、前作のエンディング曲がさりげなく流れた時は、演出のセンスの良さを感じたし、元々海恐怖症だったブロディ署長がサメ嫌悪からすっかり猜疑的になっていて、海水浴客から白い目で見られてしまう所は胸が痛んだりもした。署長の功績を知らないんかよ!ってなった。続編としては合格な滑り出しだと思う。 前作の戦友が登場しない分、今作はブロディ署長が単身でサメ退治に挑む流れを期待した。署長がこっそり銃弾にシアン化ナトリウムを仕込んだりしていたもんだから。しかしその銃弾は使われる事もなく、おっさんが奮闘するというワクワクドキドキアドベンチャーにはならなかったのは残念。ロイシャイダー、前作の撮影で懲りちゃったかな。 結局少年たちのヨットが襲われるシーンが長くそれがメインとなり、対象年齢若めのパニック映画となった。まあそれはそれで怖かったし楽しめたのだが。 ラスト、きちんとブロディ署長の活躍でサメは焼き魚になったし、全体的には面白かったけど、なんかそうじゃないんだよな感が残ったかな。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-12-24 16:14:21) |
6. ドライブ・マイ・カー
《ネタバレ》 村上春樹の短編小説がベースになっているとの事で、登場人物が皆淡々としているが、それがだんだん心地よくなってくるのが正に村上ワールド。そこにチェーホフの戯曲を前面に押し出すことによって、多分、原作は読んでいないのであくまでも多分、そのことで原作小説よりも主人公家福の苦悩がより深く表現されているのではないかと想像すると、本作は映画として大成功だったのではないかと思う。チェーホフのテキストを口にすると自分自身が引きずり出されると語る主人公。妻の死によって、罪悪感を含む喪失感を抱えることになった彼にとっては、自分自身を引きずり出す行為が必要だった。前に進むためには。専属ドライバーの女子も家福と同じ心の傷を持ち、車中でカセットテープを聞き共にチェーホフに触れることによって、同じく自分自身が引きずり出される感覚に陥ったのだろう。二人は決して恋仲なんかになるわけではなく、互いの傷を交換し、自分たちは大丈夫だと確認し合う。身近な人を亡くした時、そこに居るはずの場所がぽっかり空いてしまった時、「喪失感」という新たな感情が生まれ、それは空いてしまった場所を埋めるかのようにそこに居座る。言いたかった言葉、伝えたかった感情を向ける相手がいなくなると、その言葉や感情は宙ぶらりんとなり、喪失感と一緒に仲良くいつまでも残ってしまうのだろう。自分自身を引きずり出し、悲しみや辛さを認め、今世は絶えて生き抜くしかない。そんな人生観はとてつもなく切ないが、逆にあっけらかんとしていて物凄く前向きだ。ドライバー女子の最後の表情は、それまで見たことのない柔らかな微笑で、ああ前進したんだなと思える素敵なラストシーンになっている。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-12-19 18:33:16) |
7. ニュー・シネマ・パラダイス/3時間完全オリジナル版
《ネタバレ》 キスシーンをつなぎ合わせたフィルム映像に、師匠アルフレードの真意が全て込められていた。ことごとくキスシーンをカットして上映していた映画館を思い出し閉鎖された村であったことを再確認する。そしてまたその頃の映画愛が蘇る。 郷愁に惑わされるな。一度しかない自分の人生、いろんなものを観て、いろんな女と知り合って、広い視野を持って羽ばたけよ、て事だったんだな。怒りも吹っ飛ぶ深い愛のメッセージだった。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-12-12 15:47:29) |
8. レディ・バード
《ネタバレ》 故郷(田舎、ダサい)=母親(ウザい)。その呪縛から逃れるために、高校生は都会の大学に進学を希望する。そこで特段やりたい事があるわけでもないのに。これ凄くよく分かる。自分がまさにそれだったから。そして親元離れてその有難さに気づき、あろうことか郷土愛まで芽生え、パッとしないイケてない名前すら、自分の身の丈に合った程よい普通さにホッとする。心当たりあるわ~。 17歳とは、自分が思ってるより子供で、大人が思ってるより大人。そんな年頃だってのは全世界共通なのかもだけど、アメリカの土地勘や経済感覚はピンとこないので、そういう面が全て共感できるかって言うと難しい。でもそれは残念ながら観る側の問題なので仕方ないとする。 この世の終わりかと思うような身の回りの出来事も、自分はなんて不幸なんだろうと悲劇のヒロインに陥るときも、過ぎてしまえば何てことない。今は平凡な日常が送れている事をありがたく思う。そう言えば「有難い」とは、めったにない貴重なこと、って意味なんだな~としみじみ。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-12-09 14:25:22) |
9. カジノ
《ネタバレ》 ショッキングピンクのジャケットを着こなしキャデラックに乗り込む主人公サムは見るからに成功者。そして「信頼を重要視する」という自らのポリシーを発表した瞬間、爆炎で宙に舞う。これが本編を観る前の仕掛けになっていた。 些細な犯罪歴はあるものの、登場人物の中では唯一ギリギリセーフな男が、徹底した管理手腕を生かし、ギラギラに登りつめていくわけだが、ラストはああなっちゃうんだなと。悪女ジンジャーとの出会いから始まり、狂犬ニッキーとの腐れ縁、使えない従業員解雇、表向きの社長グリーンが訴えられ、ニッキーの素行の悪さからFBIが躍起になる。全ての出来事が数珠つながりとなってサムを追い込んでいく。 で、冒頭のシーンを裏切るように、ギリギリセーフなサムは奇跡的に助かり、アウトな人間たちは自滅していく。因果応報な実話は、スコセッシ監督らしい題材。 デニーロ、ジョーぺシ、シャロンストーン、「信頼」とは真逆の三人を演じたそれぞれが素晴らしい演技だった。 [映画館(字幕)] 8点(2024-12-06 14:22:37) |
10. グッドフェローズ
《ネタバレ》 カッコいい先輩をまねて処世術を身につけ、ボスに気に入られ、ちょっと頑張ったら10代の若造だって大金が稼げる。主人公ヘンリーが夢見たアメリカンドリームはマフィアの世界だった。その特殊な世界には独自のヒエラルキーなんかもあって、生粋のイタリア人でないと幹部になれないとか、中でもシチリアの血が上位で、アイリッシュやユダヤは後続だとか、この辺はおもしろい。 スコセッシは歴史をそのまま映像化する。事実として多くの鑑賞者に伝承し、そこに私情を挟まない。盗みと薬と殺しを職業としている男と、それに養われて贅沢な生活をする家族たち。こんな世界があるんだぜと。そもそもこんな世界のヤバい奴らに共感できるわけないし、できた奴はヤバい。マフィアに夢を見るな。夢を見るなら目を覚ませ。少なくともそんなメッセージはあったように思う。 あきれるほど散々悪事を働いといて、ヤバくなったら警察(善)に協力して、仲間(悪)を裏切る。マフィアに共感はしてないが、なぜかコイツが一番クズに感じる。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-11-22 13:54:09) |
11. スパイダーマン:スパイダーバース
《ネタバレ》 アニメの技術って凄い。MCUの実写作品に真っ向から勝負している。まあ実写映画と言っても大半はCGなので、アニメみたいなものだけど。もう全部これでいいじゃんというくらい映像は素晴らしい。で、そこにコミック寄りの表現が加わり、実写との差別化も出来てる。ただ多くの皆さんが言うとおり、主人公に魅力が無いというのは否めない。みんな大好きピーターパーカーを退けておいて跡継ぎがこの子?と物足りなさ、認めたくない気持ちが発動するのはごもっとも。しかしスパイダーマンというヒーローが目指すのは親愛なる隣人であるし、ピーターパーカーとはどこにでもいるごく普通の、無個性な少年の代名詞なのだから、この段階では問題ないと言える。そしてこの頼りない新人ヒーローを支えるのが、異次元でスパイダーマンとして活動している個性的なキャラクター達だからバランスが取れてるように思う。まさにマルチバースの考え方はアニメとも相性が良く、スパーダーマンノーウェイホームもしこたま感動させられたけど、こちらの方が先にやっていたんだな。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-11-19 10:58:38) |
12. ダイヤルMを廻せ!
《ネタバレ》 トニーという男は頭が切れる。そして執念深い。前科者の先輩なんて簡単に行動を操られ、殺人動機の手紙に指紋まで付けられて、はした金で言われたとおりに何の縁もない人妻を殺しに行っちゃう。冒頭で語られた完全犯罪は失敗するけど、推理小説家に全て筋書きを言い当てられてしまうところからが面白い。それまで全てを先導していた切れ者のつもりが、娯楽推理小説家がちゃちゃっと考えたチープなトリックのまんまで、結局4本の鍵に翻弄されボロを出す。でもこの男、絶対に狼狽しない。捕まるときも至ってスマート。これってヒッチコックの理想なのかな。頭の中で犯罪の計画を立て、美女を絞殺し(または殺させて自分はそれを見物)、殺される美女はもちろん大好きなグレースケリー嬢で、捕まるときはカッコ良く。なかなかの変態的紳士像ですね。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-11-12 18:13:48) |
13. キャリー(1976)
《ネタバレ》 短い作品だが、インパクトは物凄い。もう、インパクトしかない。浮き沈みが激しく、全体を色で表すと、グレー→ピンク→赤→黒。そしてホラーとしては悲し過ぎるが、それもまた大きなインパクト。それまで虐げられていた少女が、例え一時の幸せだとしても、施しに似たような幸せだったとしても、彼女にとっては生まれて初めて感じた幸せだった。これ以上ない程の満面の笑みをたたえていた絶頂の瞬間に、最悪な事が起こってしまうことは想像するだけでわかるように進むので、ただただ可哀そうで、迫るクライマックス(悪趣味な悪戯)までは胸が締め付けられる思い。一人の少女がここまでのバッドエンドを巻き起こすとは、母親の言う通りキャリーは悪魔だったのか、いやそうは思いたくない。首謀者数人以外はキャリーを認めて受け入れてくれた。その事実を知らないまま不幸のどん底のまま終わったのは、救いようがなく悲し過ぎる。生き残りのスーの気持ちを想うと、またやるせない。短いのにとてつもなく重たい作品。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-31 18:25:10) |
14. キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
《ネタバレ》 デカプリオがまだぎりぎり15歳の少年役が出来た頃の作品。父親を尊敬し、その父親が愛した女すなわち自分の母親を愛した素直な少年が、犯罪者に変貌するわけなのだが、端正な顔立ちとスマートな振舞で悪事を繰り返す彼を、ワクワクしながら観てしまう。実話だから、ウソだろ!?マジか!!の連続で、特に飛行機のトイレから消えたのは、どこまでが実話かは分からないが、笑っちゃうくらい驚くのは必至。やはりスピルバーグは人間好きな温かい監督だ。これがたぶん人間なんて所詮動物だと思ってるようなヨルゴス・ランティモスとか(撮るわけないけど)だったら物凄く怪しげになるのだろうし、真面目で几帳面なスコセッシだったら鋭く美しいドキュメンタリーにもなりそうだ。その場合トムハンクス演じた捜査官がダニエルデイルイスやリーアムニーソンだったら尚更にシリアスものだ。 実話が元の悪質な詐欺事件を、このような清々しいほどのヒューマンコメディにしてしまうのは、スピルバーグの成せる技だろう。そして実在の詐欺師フランクアバグネイルjr.本人が、稀代のエンターテイナーであったことにもよるだろう。犯罪は許されないが、彼のキャラクターについてだけを言えば、憎めない犯罪者だ。その後自分の才能を生かし、刑期を終えるまでFBIに協力して職員として働く、というのがまた良い。救いがあるラストってのはやっぱりいい。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-10-26 11:16:19) |
15. 12モンキーズ
《ネタバレ》 6人の科学者チームのシュールな佇まいや、かなり適当なタイムマシーンの描写など、テリーギリアムらしさを残しつつ、一見分かりにくい小ネタのように散りばめられたピースが、しっかり伏線として回収される。緻密な脚本に、意味不明なギリアムらしさをぶつければ、化学反応でこんなにまで素晴らしい作品になるのか。で最終的にウイルスはどうなったのだろうか、空港で銃撃戦を目撃した記憶力の高いジェームズコール少年はその後どんな罪を犯して囚人となったのか、彼は永遠にタイムループを繰り返す運命にあるのだろうか、考えれば考えるほど結末は無限に存在する。これやっぱり抜け出せない系のやつです。そしてブラピの演技、凄い。こんなに上手かったんだ。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-10-23 12:03:45)(良:1票) |
16. ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還
《ネタバレ》 今更ながら三作通して鑑賞させていただきました。長いし、スケールデカいし、大作です。映像凄い。奥行きのある広大な戦場、架空の動物たちの造形、美しい都の塔ミナス・ティリス、何処までも暗鬱な空気を放つモルドール、戦う者たちの猛々しく勇敢な表情。人間以外の複数の種族がそれぞれの地区を治めている世界観は説得力も持ち、絵本の中に入り込んでページをめくっているかのよう。ですが、脚本が面白くないっ、主要人物のエピソードが薄いっ、主人公フロドがしょうもないっ。良かったのは、ガンダルフがとにかく強いところ。アラゴルンの高潔さ。そして主役は完全にサムだった。 二作目は続きが気になったのでわくわく感を残して見終えることが出来ましたが、終わってしまえば、ふ~んという感じでした。ホビット庄に帰ってみれば、4人の雄姿を誰も知らないという所は、物語的に面白かった。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-10-16 17:38:18) |
17. ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
《ネタバレ》 たった一つの指輪をめぐっての大戦争。「これほどの悪行をののしる言葉は、エルフ語にもエント語にも人間の言葉にもない。」 この地に再び平和が戻ってくることはあるのだろうか。というくらい凄まじい戦闘風景。指輪の仲間が、死んだと思ったら生きていた~のパターンを繰り返し奮闘します。諦めないということがいかに難しく、だからこそその先にあるものは屈強で自信に満ち溢れています。彼らのタフでカッコ良く戦う姿を素直に応援しながら鑑賞しました。命を懸けてでも守るべきものがあるということ、それを戦争の理由として正当化しちゃあいけないけど、これはあくまでファンタジーの中のお話。しかしローハンでの悪化する戦況に、意図的のように挟まれる女子供たちの怯えた表情が、やはり戦争は恐ろしく、平和の逆を行く行為であるとのメッセージ(現実世界に向けての言い訳)を、かろうじて含ませているのでしょう。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-10-11 15:22:27) |
18. The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
《ネタバレ》 南北戦争下において、南部にある森の中の女学園。そこは園長をリーダーとして統率が取られていた。そこに若い男が迷い込んだら。その時自然界で生態系が崩れるかのような現象が起こった。それまで敬虔な集団として行動していた女たちが、それぞれに男に興味を抱き、色めき立ち、欲情を押さえきれなくなる。次に嫉妬やマウント、承認欲求など、女の悪い癖が目立ってくる。7人の女は大人から子供まで、小奇麗な身なりで上品な立ち居振る舞いをしているのだが、女の強い業やずる賢さ、意地汚さのようなものが内側から現れている。女優たちの演技と巧みなカメラワーク、暗い部屋にろうそくの炎などの演出がそれを表現している。 ある事が切っ掛けで狂暴化した男を前に、再び女たちは統率を取り男を排除する。外来種を排除し、自然界が元どおりに浄化されるように。 学園を取り囲む深い森は、外部からの侵入を許さない隔離された聖域のように、神秘的で美しかった。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-26 16:09:55) |
19. ウィリーズ・ワンダーランド
《ネタバレ》 無口な男が恐怖のテーマパークに迷い込んでしまったのは偶然と思いきや、実は男は過去の犠牲者の身内で、その復讐の為に体を鍛え、お掃除ノウハウを叩きこみ、不気味な動物ロボを倒すためだけの入念なバトルプランを練って、この地に舞い降りた戦士だった・・・のかと思ったら、思いっきり外した。私の要らぬ邪推は本当に無意味なものでして、シンプルにホラーコメディでした。予想は大体外れますので、どんなものを見せられても大抵楽しむことが出来ます。 律儀に休憩をはさみながら黙々とお掃除をして、何やら怪しい敵が出てきても顔色一つ変えず戦う。綺麗になった場内はその返り血ならぬ返り機械油と、若者たちのおびただしい流血で再び汚れ、それをまた黙々と掃除して休憩をとる。見事敵を倒し、パークが綺麗になった時の達成感と言ったら!この男は一体何者なんだ?ってそんな事考えちゃいけません。邪推です。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-05 17:40:30) |
20. せかいのおきく
「せかい」という言葉を知ってるか?「あっちの方に向かってゆけば必ず、こっちの方から戻って来る。そうゆうものです。」真木蔵人が演じる和尚はこう説明する。「世」は現在過去未来、時間を表し、「界」は東西南北上下、空間を表す言葉なんだそう。うん、和尚の言葉も何となく分かるような気がする。でっかいどんぶりの中に微生物のように生息する生物(人間)は、今も昔も生きるために活きている。物騒なことがあったり、小さい怒りや些細な悩みは毎日際限なく生まれ、人を好きになり、仲間とくだらない話をして、飯を喰うため仕事をする。何でもない毎日を送る主人公は「青春だなあ」と嬉しそうに繰り返し言う。他人の糞尿を運ぶ彼らの世界をモノクロで表した青春映画は、色と引き換えに、見えない「臭い」を画面から終始匂わせ、同じく見えない「青春=未来への希望」をふんだんに表現しようとしている。なかなか攻めた作品だったように思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2024-09-03 10:48:51) |