1. 第9地区
《ネタバレ》 SF・アクション・サスペンス・ヒューマンドラマ・社会問題をすべてぶちこんで、「南アフリカの難民キャンプに収容された宇宙人」という驚異のアイディアでまとめて、娯楽として成立させてしまった手腕がすばらしい。役者もいい。さらに、UFOの造形やストーリーなども、B級感漂うありきたりのものなのにもかかわらず、全体を通してみれば、なぜだか今までにない新しいものを観た、という感じすらもする。その理由はたぶん、そういう「全部入り」映画の新味に加えて、差別をテーマにした今までの映画との違いもあるように思える。というのは、従来の映画が、実際にあった差別・真実をドキュメンタリーに提示し、だから、ややもすれば歴史的な背景を知らなければ理解できなかったりしたのに対し、この映画で描かれた「差別」(?)は、まったく想像上のできごとだから、それゆえに、「差別」というコンセプトが、シンプルかつダイレクトな形に整理されていると感じたのだ。もっといえば、「差別」というテーマは、そこまでこなれていて、ありきたりで、記号化されたものだ、ということが、同じようにありきたりなUFOやロボットやストーリーと並列に提示されることで、明らかにされた、というべきかも知れない。一応断っておくが、私は「差別なんてテーマは、ありきたりのものだからとるに足らない」などと言うつもりはない。むしろその逆である。部分の「新しさ」より、全体のそれが重要だ。「ありきたりの寄せ集め」映画でも、私たちは感動したり面白いと感じることができる、そういうことをこの映画は示した、と言いたいのだ。ところで、レビューをみると、この映画と「アバター」との共通点を指摘する方が多い。実は「アバター」をみていない私が言及するのも気が引けるけれど、まさに「部分」である3Dをメイン売りとし、差別をオーソドックスに扱う「アバター」と、どこがいいのか答えに困り、差別をマンガ的記号とする「第9地区」では、そういう点で決定的に違うもののように思えるのだが(アバターが悪いと言ってるわけじゃない。映画として異なるアプローチということ。念のため) [映画館(字幕)] 9点(2010-05-08 09:28:52)(良:1票) |
2. ニュー・シネマ・パラダイス
《ネタバレ》 盲目になったアルフレードは,トトに対し不可解なほどに"過去を振り返るな"という趣旨の発言を繰り返しますが,その真意が明らかにされるラストシーンが実に見事です。街や人は時と共に移ろうが,"変わりようのないもの"もある。それは愛だ。愛によって生まれる命のリレーこそ,ずっと変わらず,太古の昔から連綿と繋がってきた,人間の営みだ。だから過去を振り返るな。前を向いて歩け。トトよ「これから」を生きるのだ....という彼のメッセージが心を打ちます。皮肉にも,盲目のアルフレードにこそ,愛のフィルムがしっかりと見えていたのですね....。正直言って,若いころはこの映画の良さがわからず,以来ずっと「現代が忘れてしまったものが昔はあった。昔はよかった。」式の懐古趣味映画と捉えていました。しかし,それから20年経って,それなりに生きてきて,トトと同世代となってみてはじめて,この作品の良さ,人間賛歌のテーマを味わうことが出来るようになりました。単なる懐古趣味とは一線を画するものと思います..音楽もいいし...本当にいい映画だなあ..。 [CS・衛星(字幕)] 10点(2010-02-24 18:06:01) |
3. ハゲタカ
ストーリーに難があったり,冗長なところもありますが,TVシリーズに流れていた「苦いぜ・・・生きるってこんなに苦しいものか」みたいな空気感は味わえました。それにしても玉山鉄二。よかったですね。いい役者ですね。魂の欠落感を,カネで埋めようとする男の焦り・哀れさ・悲しさが伝わってくる熱演だったと思います。 [映画館(邦画)] 6点(2010-02-23 18:02:26) |
4. グラン・トリノ
きっと,この作品はイーストウッドの遺書なのでしょう。アメリカンスピリットの象徴たるグラントリノを引き継ぐ者は,アメリカ出身・白人でなくとも,血がつながっていなくても構わない。イーストウッド評価で「魂のあるヤツ」が,後継者ってわけですね。ラストシーンの独唱。役柄を超えて,イーストウッド本人が「俺のバトンを受け取ったか?後はよろしく。じゃあな」って言ってるように聞こえて,ちょっと寂しかったですね。 [映画館(字幕)] 7点(2010-02-23 17:37:50)(良:1票) |
5. アフタースクール
上手い落語のよう。アラを探すのは野暮ってもの。 [映画館(邦画)] 8点(2009-02-17 09:24:17)(良:2票) |
6. ぐるりのこと。
妻が好き夫が好き子供が好き母が好き父が好き兄が好き妹が好き同僚が好き絵が好き人間が好き・・・孤独の連帯があり、絶望に希望がある。ひとはひとを大切に想う。「そうしなければならない」からではなく、「好き」だから。これから何人のひとを好きになれるのだろう。カナオや翔子のようになれるだろうか。 [映画館(字幕)] 9点(2009-02-15 09:54:00) |
7. ハッピーフライト(2008)
コダマさん,なつこさんとほぼ同じ意見。配役もいいし,それなりに面白かったけれども矢口監督ならもっとできるはず。 [映画館(字幕)] 7点(2008-11-27 09:41:07) |
8. おくりびと
《ネタバレ》 小林秀雄の「秩序なく泣いては、人と悲しみを分かつことができない。人に悲しみをよく感じて貰うことができないからだ。悲しみの中にあって、悲しみを救う工夫が礼なのだ。」という言葉を思い出した。時代や宗教、風土、文化によってさまざまな葬祭の形があっても、「礼」についてはどんな葬祭も共通だ。この映画の納棺師たちはそれを知っている。「礼」はとても大切なものだからとても大事に取り扱う。だから列席者は悲しみを分かつことができるのだ。だからこの映画の観客も悲しみを感じることができるのだ。この映画はよくできた作品だし、着想も面白く素直に楽しめる。ただ、劇中で広末涼子演じる妻が「穢らわしい!」と叫ぶところでは、驚くとともにかなり引いた。「へえそんなふうに感じる人がいるのか」という驚きと、「穢らわしい!」なんて時代錯誤的なセリフ(を発する心性)に引いた。そこまで嫌か? [映画館(邦画)] 8点(2008-09-27 04:17:27) |
9. クライマーズ・ハイ(2008)
山をめぐる死と生を共通項として,「夏,昭和,濃いキャラ,喧騒と熱気,迫力,対立,スピード」という要素と,「静寂,孤独,現代,枯れたキャラ,融和,スロー」といった反対要素のコントラストで描くという狙いはわかるのですが,監督の演出や気合が空回りしている部分,不親切な箇所,不要と思われるエピソードなどが散見され,そこで観るほうの勢いというか集中力が落ちてしまうのが気にかかりました。ただ,役者さんの演技をはじめ全体としては良く,最後まで見せきる強烈なパワーを持った作品だと思いました。面白かったです。 [映画館(字幕)] 8点(2008-08-08 11:49:16) |
10. アメリカン・ギャングスター
良かったです。埃っぽさやイナタさ,むわーっとした甘くネットリした空気とか,下品でゴージャスで暴力的で,それでいて都会的で,ダルいなかにもテンションのある,猥雑で活気に溢れた70年代ニューヨークの空気感がダイレクトに伝わってきました。クロい雰囲気が大好きな私としては楽しかったです。リドリー・スコットはストーリーを見せるのはあまり上手くないですが,その世界の空気感みたいなものを表現することが巧みなひとだと改めて思いました。 [映画館(字幕)] 7点(2008-07-20 10:55:17) |
11. インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
全体的に若さがないというか古臭い感じがしました。ハリソン・フォードが歳食ったせいというだけではなく,スピルバーグもやはり老いには勝てないのかなと。宮崎駿が歳食ってポニョに行ったように,スピルバーグも「崖の上のジョーズ」とかそういうのを作ってほしいです。 [映画館(字幕)] 5点(2008-07-20 10:34:59) |
12. ラスベガスをぶっつぶせ
《ネタバレ》 そこそこ面白かったです。ラスベガスに染まっていくにつれ,主人公の男の子がだんだん垢抜ける様子を,アイビーのJ・PRESSからヒューゴ・ボスに変えて表現する演出がありましたが,どちらもスポンサーなのでしょうに,野暮ったい時代の主人公を担当したJ・PRESSは器が大きいと思いました。 [映画館(字幕)] 6点(2008-07-20 10:04:10) |
13. ボーン・アルティメイタム
ボーンは疾走する。ただひたすらに、自分のために他人のために全力で疾走する。ボーンは絶対止まらない。ボーンはいつでもそうだったし、今作もやはりそうだった。単純だけれど、作品として、この単純さを維持するのは案外むずかしいことだったのではないかと私は思う。素晴らしい。 [映画館(字幕)] 9点(2007-11-24 02:26:32) |
14. パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
疲れた [映画館(字幕)] 4点(2007-06-03 22:59:04) |
15. ブラッド・ダイヤモンド
ファンの皆様にとっては,いまさらなにをとお思いでしょうが,とにかくディカプリオが素晴らしい。正直あまりそんなに好きな役者ではありませんでしたが,「ディパーテッド」やこの「ブラッド~」での彼を見て,かなり見直しました。銃を構え,硝煙煙る市街を疾走するディカプリオ。容赦無く敵を撃ち殺すディカプリオ。とってつけたようなラブシーンは一切無し。ハードでほろ苦いな男の味わいの中にも,ほのかに香る甘さといい,ダーティになり過ぎない絶妙のバランス感といい....。救いようの無いテーマを扱ったこの映画では,そんな彼のオリジナルキャラが非常に効いていたと思います。また同時に彼の役者としての新境地を切り開く意欲と,作品選びの上手さにも感銘を受けました。 [映画館(字幕)] 8点(2007-05-17 11:03:36) |
16. ホリデイ
《ネタバレ》 とっても楽しくラブリーな映画。都合の良い設定と話の流れだけれども,ありきたりにならないのは監督と役者の器量のおかげ。古き良き時代の映画・音楽へのリスペクトが垣間見えるのも好感がもてます。自分にとっては「ラブ・アクチュアリー」以来のロマンチック・ラブコメディーでしたが,「ラブ~」に劣らず暖かくハッピーになれる作品でした。いやあ,やっぱりクリスマス映画はいいですねえ。私大好きですクリスマス映画。理屈抜きでハッピーになれるし,気持ちがあったかくなる。もう一度繰り返しますが,私クリスマス映画大ーー好きです。現実は確かに厳しいですけど,こういう話があっていいじゃないですかって照れもなく言ってみせるのが好きですね。最近個人的にとてつもなくヘコむことが重なって起こっていたので,大げさかも知れないけど救われた気持ちになりました。観にいって本当に良かった。ハッピー・クリスマス!ジュード・ロウがカッコ良く,ケイト・ウィンスレットがとても可愛い(もちろん娘2人と,あの「テント」もね)のでファンは必見です。 [映画館(字幕)] 8点(2007-04-01 01:35:52)(良:2票) |
17. ドリームガールズ(2006)
《ネタバレ》 4人の個性をソウルフルに披露する"Fake Your Way to The Top"から,弾む恋心を歌う"Love You I Do",エディ・マーフィの歌唱力で聞かせる"I Want You Baby",ミュージカルライクで物語の伏線ともなる"Family",タイトルソング"DreamGirls",マーヴィン・ゲイ風メッセージ・ソング"Patience",エフィが再生を誓うバラード"I Am Changing",ビヨンセの熱唱"Listen"と,好曲連発の怒涛の中盤は,ソウル(風?)好きなら堪らない。特に,“And I Am Telling You I'm Not Going”では,ジェニファー・ハドソンの大熱唱(やや暑苦しいが)に胸を打たれる。しかし楽曲に比べ,ドラマがややありきたりで中だるみ感もあり,総じて強い印象を残す映画とは言えないのが残念だった。ジェニファー・ハドソンは評判どおりの貫禄だが,それよりもディーナ役のビヨンセが個人的には良い印象。美人で性格が良く努力家,しかもディスティニーズチャイルドのリードだったビヨンセに,ディーナはまさにピッタリの適役だったと思う。 [映画館(字幕)] 7点(2007-03-21 22:54:43) |
18. ファイナル・デッドコースター
皆さんも書いているように,1と2に比べて明らかにスケールダウンの気合が入っていない作り。邦題も意味がわからない。1は傑作B級だと思うけど,本作は単なるB級。残念。 [DVD(吹替)] 4点(2007-03-11 09:20:57) |
19. それでもボクはやってない
《ネタバレ》 周防監督が満を持して発表した,まさに渾身の一作。痴漢という「微罪」から,日本の司法の構造的問題点に深く切り込むというアイディアも素晴らしいし,「無実の人を罰するべきでない」というテーマへの,最初から最後まで全く揺るぎのない視点も素晴らしいし,これらを支える小細工無しのてらいのない脚本と演出,芸達者な役者陣の抑えの利いた演技も素晴らしい。「娯楽性が無い」という向きもあるようだが,私はそうは思わなかった。最初の裁判官が,裁判官事務室で修習生に心得を説く場面。彼の背後の机に将棋雑誌があったのをご記憶だろうか?裁判官の人となりを表す小道具として,特に他意なくおかれていたものだろうけれど,よく考えてみれば「考えるだけ」の娯楽が将棋というものである。「もし自分が,被告/被害者/裁判官の立場ならどう行動するだろう」と自分が考え始めたのなら(そして物語に没入して2時間強を過ごしたのなら),泣いたり笑ったりのわかりやすいカタストロフィなどがなくても,「娯楽作」と言ってよいのではないだろうか?ベテラン,主役は別として,他にも最初の裁判官を演じた正名僕蔵,新人弁護士役の瀬戸朝香,取調べ刑事役の大森南朋が強く印象に残った。丁寧に作りこまれ,作り手の志も感じる傑作で,満点と行きたいところだが,民事専門弁護士の益岡 徹,マンション管理人竹中直人のシーンが不用かつ甘さと冗長さを感じたので残念ながら-1点。 [映画館(邦画)] 9点(2007-03-03 03:18:31)(良:2票) |
20. ナースのお仕事 ザ・ムービー
TVつけて,「あ,"ナースのお仕事スペシャル"やってるんだ~」と思って最後まで観た。放映から4日後,TVガイドをめくっていたら,これが実は「ナースのお仕事 ザ・ムービー」という映画だったことを知って驚愕。夫婦ともども大変驚いた。いやあ東京は怖いところだ。 [地上波(邦画)] 4点(2007-02-15 00:04:09)(笑:1票) |