1. グリーンブック
ひと悶着ある度に、トニーはどんな気持ちでいるのだろうか。 ドクはどんな想いでいるのだろうか。 最初は開いていたなんてものじゃない距離が、 実はゼロ距離だったのだということを、 トニーはもちろんドクも気づいていったのだろうと思う。 「南部に行くドクの勇気」とセリフにあったが、 それは片側だけの勇気ではないだろう。 凝り固まった四十肩のような、しかも痛みを増すような社会の中で たった二人は、されど二人は間違いなく同じになった。 他の映画だと、一方的である描写が多いとおもってしまう中で この映画は一方的では済まさない、痛快ではなくオデンのような染みた心の動きがある。 [インターネット(字幕)] 10点(2021-11-27 22:41:09) |
2. 毛皮のヴィーナス(2013)
ウツツ 女男、二人がおり、男は演じられる女を求めた。 そんな女が奇跡的に現れ、演技をテストするうちに、 果たしてそれが演技なのか現実なのかさまよい始める。 ここの描き方が秀逸で、夢なのかウツツなのか、 演技なのか誠実なのか。 滑稽なのは、最初はばかにしていた女が 目の前で見る魔にアフロディテになることであり、 男が自分が何者なのか失っていくところだ。 [インターネット(字幕)] 10点(2021-05-14 21:11:53) |
3. この世界の片隅に(2016)
純朴な色使いがリアルな日常をよく表現している。 (原爆投下時でない)空爆の描写も、 悲惨な現実というよりは、淡々と現実を壊していく様子が心へズキンとうったえてくる。 平凡な幸せ、というのがこの令和の時代と比べると違う形なのかもしれないが、 どことなく、懸命に生きる姿がむしろ、現代の私にとって正に幸せを掴もうとしているように見える。 コトリンゴさんの曲は美しく、繊細で脆く響く。 誰が、どこが、一概に悪いと言っているのではなく、 人の感情が生まれて、合わさって、 そうして遠いところに生まれた形の無い悪が、 一瞬の閃光で生まれた場所を破壊する。 感情移入してポロポロと泣くでなく、 行き場のない感情が溢れて、泣いてしまった。 [インターネット(邦画)] 10点(2019-12-16 23:48:20) |
4. ビッグ・フィッシュ
氷山の一角が嘘だと思うなら、 氷山のすべてを見ようとしてみよう。 嘘と思っていたものが、実はいかに澄んでいて、 通して遠くまで見えるか分かるから。 つくり話。 自分を過剰に良く見せるためではなく、 ただ人を幸せにしたいがためにする、話。 息子としては大人になるほどに、父の話は つくりものらしく、ホラに聞こえたのだろう。 だが実際に触れ合う人はどうだろう。 つくり話以上の思い出を父に、エドワード・ブルームに、 抱いているのではないか。 自分の経験してきたことを大きく話すことが出来ることは、 これから経験することを大きくすることの出来る人だ。 そんな彼が過ごして来た日々を 愛おしく思える、息子が気持ちになったときに、 感謝の水が降り注ぎ、自由に泳ぐ場所を父に与えた。 [インターネット(字幕)] 10点(2019-05-03 23:24:26) |
5. インターステラー
感動した。 感動した。 序盤はそこを描くかね。 描かないとこの感動はなかった。 思えば、次元を超越した概念はお化けなのかもしれない。 お化けはそこにいる、きっと帰ると信じてた。 そんなセリフは大人になったからだろ、ちょっとご都合主義かもしれないが、 破った約束を守りに帰ってくる、 そんな描写をした映画はあまりないのでは? [インターネット(字幕)] 10点(2019-01-01 22:53:15) |
6. グラン・トリノ
ぼんやりと見ても、真剣に見ても、ついつい考え込んでしまう。 どうやったらこんな画の中に生きることが出来るのだろう。 何年たっても、このような想いの食い違いだったり、 近場に災難を被ったりするのだろうけど。 人種、育ち方、本当の家族、自身の人生結論、 すべてがストーリーとして一つになって、 映画としてみられる。 これは自叙伝なのか、それとも。 少なくとも想像だけ、でつくることのできる映画ではないと想います。 [インターネット(字幕)] 10点(2017-02-15 23:05:07) |
7. イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
天才の一言でかたづけるには重い、 戦争を解決した英雄と賞賛するには悲しい、 哀しいと表するには偉大である。 クロスワードパズルを解くという、好奇心に溢れた思いが、 どこで同僚の兄以上に戦争に解読を活かすという狡さに変わったのだろう。 あるいは、パズルとはそういうものだろうか。 並び替え、普通ではないような途中経過(人生)の後に、 自身の答えがある。 チューリングマシン、その先に私は今、文を打っている。 [インターネット(字幕)] 10点(2017-02-13 22:16:24) |
8. ドラえもん のび太と鉄人兵団
そりゃあデカいロボットが自分の思い通りに動いたらワクワクするし、誰もいない鏡の世界で好きなものを好きなだけバーベキューできるなんていつかやってみたい。そんな現実から一番遠い世界で、ドラえもん史上最大級の戦闘があり、その中にはロボットや人間といった垣根を超えた人間性を感じたりもする。 もし私がロボット(や人間のボス)に詰問されて、人と交流し学んだ信念を貫けるかといわれると自信がない。 涙を流すロボットは私以上に人間らしいし、(これは皮肉でなく)ロボットではなく人間代表として戦うドラえもんという存在のたくましさと愛らしさを幼少期から見ながら育ってこれたことが私にとって大きな幸せです。 [DVD(邦画)] 10点(2014-12-19 17:27:46) |
9. ダークナイト(2008)
人生でもっとも衝撃をうけた作品。私のもっている善悪の区別がかき乱される。稚拙な表現ですが天使と悪魔が自分の中で争っている。その双方ともに自分である。そして、そのいずれかが欠けても自分ではなくなる。ゴッサムシティを巻き込むという壮大さを加味すると、これほどの物語になるのか。ジョーカーは恐ろしい、しかしいなくなった状態が想像できない。それは、第二、第三のジョーカーが生まれるからでなく、ジョーカーが今の自分の中にあるからだ。狂気とは、自分の善悪の葛藤のことをいうのかもしれない。 [映画館(字幕)] 10点(2013-08-02 04:11:35)(良:2票) |
10. mid90s ミッドナインティーズ
すべてが要る言葉で、すべてがいらない 人種、経済、家庭、べつにどの目線で見ても良いと思えた。 ただ全てを疑って、だからそれ以外は全て正しいとおもった 一人の少年の物語。 ただふざけている、ただ溺れているそんな描写だけでも 何か心をひっかいてくれるのだが、 シリアスに「弟が死んだ、そのときに仲間がそばにいてくれた。」 そんな一幕があり物語が引き締まる。 家族、とくに親が心配するのは当然。 だが、責任を持つのは子どもの過程か結果か。 結果、子どもが満足していたらどうか。 楽しそう。悲しそう。 怒っているな、喜んでいるな。 喜怒哀楽のそれぞれ大きな部分が詰まった名作。 [インターネット(字幕)] 9点(2022-04-20 23:40:06) |
11. 評決のとき
大好きです。 例えば 1 無口で話すのが苦手 → チャラ男(しゃべりまくる) 2 チャラ男で後からフォロー → 無口(無口) 1,2 の動き、どちらの動きが楽なのか。 黒人差別を極端に叫ぶのと 白人優位をやんわりと諭すのと。 そこに、公判のラストにお互い一石を投じる。 壱「白人のお前を利用してるんだよ。敵だから利用するんだ」 弐「このような仕打ち(黒人の娘に対する事実)を受けました。 あなた方の人種が」 ここで、1が無口なこと、2がチャラ男と書いたのは語弊がとてもあります。 しかし、近づくのに必要な熱量は 1と2の差と、壱と弐の差で表されるのではないか。 たった一つの名詞を変えるだけで、 差別 =>先入観 を先入観 => 自己反論反論 に変える稀有なパワー。 [インターネット(字幕)] 9点(2022-01-15 21:38:12) |
12. 拷問男
私はこの映画が好きだ。 当たり前、狂ったように悲しみ 壊れたように怒り、無になる。 その結果も人間である。 責めたとして誰が幸せになるわけではない。 真実は、人を救わない。 白昼夢に出てくる娘は 良心とか悪夢とかといった類ではない。 ただ一人の娘である。 心をかきむしられる、この映画が好きです。 [インターネット(字幕)] 9点(2021-12-26 00:50:32) |
13. 9人の翻訳家 囚われたベストセラー
翻訳、は一つの哲学。 自分の言語で世界を再構築する。 盗作はどうか。 作品をただ売名する行為はどうか。 世界を揺るがす作品をかけるから、 ささやかな復讐を果たせた? 復習のために翻訳できる人を集めた? そこに自分の作品を信じている部分があるからこそ、 人を動かせたのだろうと思う。 傑作。 可能ならば、彼の次の作品が描かれることを。 [インターネット(字幕)] 9点(2021-12-13 00:18:45) |
14. 男と女 人生最良の日々
ああ、これこそ映画だ。 逆ニュー・シネマ・パラダイス 現実は映画であり。 映画が現実。 語られる全ては映画のようで現実で。 台詞は50年のときを埋めるのではなく、 50年のときをなぞる。 空想した映像から覚めると 新たな入居者がきて映画について問うてくる。 2CVでスピードを出してドップラー効果の中でまどろみ 詩はとめどなく流れ出る。 死ぬ時は一緒でいてくれるか? [インターネット(字幕)] 9点(2021-12-05 23:49:03)(良:1票) |
15. 15時17分、パリ行き
イーストウッド作品の表現してきた、「誇り」「強さ」「尊厳」などといった明確なテーマでなく、 事実をこれ以上なく、魅力的に浮かび上がらせた作品。 それはまるで、人生を視力4.0 で見つめ直すような、 3人の過去、旅の道中、事件に至るまで、 楽しさ、苦しさ、仲の良さが身体の隅々まで染み渡る。 大切なこと、それは今を行動すること。 生きるために生きる、そんな感想です。 [DVD(字幕)] 9点(2020-09-05 14:04:00) |
16. レオン/完全版
殺し屋、孤独少女、二人とも純粋で、目一杯背伸びをしている。 ミルクしか飲まず、文字を読む学も無い殺し屋は 本当は殺し屋になどなりたくなかった。 孤独少女は、唯一の助けだった弟が殺されてしまい、 復讐をせざるを得なくなった。 二人がたまたま出会い、ともにミルクを飲み、 文字を教え、仕事を教え、 極めて日常的に距離が近づいていく。 また殺し屋として少女がパートナーとして成長していく様子、 この描き方が秀逸で感情移入させられる。 ラストシーンでは少し「グラン・トリノ」を彷彿とさせる。 純粋な気持ちから自己犠牲をはらうということに、 見返りを求めずに人のために生きて死ぬという生き様に、 私は心動かされてしまう。 [インターネット(字幕)] 9点(2019-05-03 09:20:55) |
17. ショーシャンクの空に
《ネタバレ》 住めば都、だなんて易しい言葉ではなく、 まさに住んでしまうと出られなくなる、 監獄というのはそういう場所。 エリートから一転、「無実の罪」で投獄されたデュフレーン。 長年の監獄暮らしによって、監獄の外の社会が怖いと感じる周囲の人々を目の当たりにしながら、 それでもまっすぐ、自分を保って獄中生活を続ける。 なんといっても描かれる人間の多様性と、「ここにいる奴らはみんな無実さ」というセリフのどことない滑稽さ、 社会に復帰して自死を選ぶという悲しさがある中で、 20年間希望をもって穴を掘り続けたデュフレーンの生き様はグッとくる。 そして友人というたった一つのの希望を与え、ブルックスとは違うシャバになったレッドとの再会。 この映画を見た後、空の青さ、木々の緑が濃く見える。 [インターネット(字幕)] 9点(2019-03-03 09:17:50) |
18. プリデスティネーション
《ネタバレ》 もしかして、と想像しながら鑑賞しその通りの展開となっても、 それでも心が締め付けられる。 自分を愛し、自分を生み、自分を殺す。 終着点は分かっている。 しかし、自分を愛するのだ。 自分が自分を分かるだけに。 タイムパラドクスというのは、繊細だ。 ゆえに一つ一つの行動の意味が大きく、 その描き方がこの映画はとても素晴らしいと思った。 [インターネット(字幕)] 9点(2019-01-04 23:36:46) |
19. ミリオンダラー・ベイビー
尊厳とは、生を戦うのではなく、生に対して戦うもの。 それは時に人の尊厳を傷つけ、人の尊厳をやわらげ、 癒やし壊す。 自他の尊厳の創生破壊を繰り返すうちに自分の尊厳が達せられ、 生に打ち勝ち、死に臨む。 ミリオンダラー・ベイビーをあえて35歳の誕生日に見て、 思うところは多くなくシンプルだった。 尊厳の貫き方、ほんの一瞬訪れるその時の生のために戦いつづけることだと。 [ビデオ(字幕)] 9点(2018-06-07 23:40:43) |
20. エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE
エンドが良い。 良いというのが不謹慎なら、 エンドがリアルである。 腐っていると大多数が思うも、 それを覆すことは、たった一人のエリート、偉大なる一人でも 不可能である。 しかし、風穴のような小さな違和感を腐ったシステムにあけ、 システムにより傷つけられた息子の復活に立ち会う。 どうしても直らない、しかし長い歴史を鑑みるのと同じ感覚で、 遠い未来に少し触れることが出来たような、 絶望と失望と、それでも捨てられないsaga。 [インターネット(字幕)] 9点(2018-04-27 23:42:03) |