1. カールじいさんの空飛ぶ家
《ネタバレ》 なんかもったいないというか、練り込みが足りない印象。序盤はむしろすばらしいのだが、エリーが亡くなってしまうことで前半と後半とが寸断される印象があって前半の余韻をつなげられない。何も死ななくてもよかった気がする。寝たきりでもなんでもいいから生きていて一緒に飛んで行った方がよかった。それとあちこちに矛盾とまでは言わないが、次から次へと疑問が浮かんできてしまう。たとえばあんな方法で家を移動させられる(しかも老人が独力で一夜にして完成できる)のなら、何もお金なぞ貯めずさっさとあの方法で飛んでいけばよかったじゃないかとか、あんな優秀な(だよね?)冒険家が何十年も狙っている鳥が簡単にカールじいさんの仲間になってしまうのはなんなのかとか、そもそもあれだけの犬がいるのになぜそれまで捕まえられずにいたのかとか、あんな仰天するべき発明(犬がしゃべるだけでなくあそこまで従順になるとは!)をしているのなら鳥にこだわらなくたってとっとと帰還して「鳥は無理だったがすごい発明がある!」といってもいいぐらいではないのかとか、あとラッセル周辺の人間関係もよくわからないし(暗示されているのかもしれないが暗示にとどまっている)、そもそも唐突に東洋系の男の子が出てくる理由もわからない(多様化への忖度??)。エリーの少女時代が無茶苦茶印象強く魅力的なので、ラッセルではなく子供のときのエリーそっくりの女の子が出てきて‥‥という方が前半と後半をつなげられるしずっと面白かったような気がする。いっそのこと風船のアイディアも子供発案ということにしてもいい。だって子供っぽい発想だと思うし、風船でものを飛ばすのも子供時代のエリーがやっていたことだったはず。もとい、視点を冒険家に移してみると彼にとっては挫折の原因となった鳥を捕まえるのは全くもっともな理由があると思うし、何も殺そうというわけではないのだから(「生け捕り」とはっきり言っている)あそこまで邪魔する理由があるのかどうか、むしろ二人は協力してもよかったのでは? と思えるし、それまでの友好的な態度が一変していきなり命まで狙うような感じなのも唐突すぎる。そんなふうに決裂する前に話し合うとか自分の苦労を説明してわかってもらおうとするとか、まだやり方があった気がする。他にはいくら浮いてるからといっても家を老人一人で簡単に引っ張っていくのも(科学的にどうなのか知らないが)違和感があるし、とにかく練り込みが足らず間に合わせましたという印象が強い作品。エリーの子供時代がとても魅力的なだけにとてももったいないと思う。自分が脚本を書くならさっきも書いたようにラッセルではなくエリーそっくりの子供を登場させ、エリー自身は生きているが寝たきり状態(ほぼ意識なし)にさせたまま登場させるがなぜか子供エリーは年老いたエリーには近づかず話しかけもせず、家を飛ばすアイディアは子供エリーの発案か、または風船で遊んでいるところをみてカールじいさんが気がつくかして家を飛ばし、あとはほぼそのまま踏襲するとして、ラストは「約束の地」についたときに意識不明だったエリーが奇跡的に目を醒ましておじいさん大喜び(おじいさんが十字を切ると意識が戻るみたいな設定にしてもいい)、ところが子供エリーはそれと同時に忽然と姿を消してしまっていて「あの子はなんだったのか‥‥まさか‥‥」と愕然とするおじいさん‥‥でおしまい、みたいな筋書きを考えてみた(笑)。 [インターネット(字幕)] 6点(2025-02-12 07:10:51) |
2. 東京物語
《ネタバレ》 この年になって人生で初の小津作品の鑑賞だったと付け加えておく。そしてとても複雑な気持ちにさせられた。画面はとても美しく、詩的であるとすら思えたが、話の頂点がどうにもこうにも心にひっかかってならなかった。一応「8点」をつけてはいるが、正直何点をつけたらよいのかよくわからない。 年老いた両親は子供にとっては厄介者になっていた。親への愛情がないわけではないのだが(後に長女は母の容態をきいて慟哭している)、特に物語の前半では長男長女は露骨に親を邪魔者扱いする。哀れな両親はあちこち追い立てられる。だが次男の嫁の紀子だけは義理の両親にかいがいしく接する。最後に父が「自分の子供より、いわば他人のあんたの方が、余程よくしてくれた」と感嘆するぐらいに、である。だがそう言われた紀子は激しく泣き出す。しかもその涙はその賛辞に対する感涙では全くなく、自分の中の矛盾をずばりと指摘されたような罪悪感を伴った涙なのである。これがなんともこちらの心を複雑にさせた。 なぜ紀子は自分を「ずるい」というのだろうか? 恐らくは本音の部分でもう夫を忘れつつあり、新しい人生を歩みたいと漠然と思っているのに、その本心を隠しながら亡き夫の両親に尽くす自分の矛盾をわかっていて「ずるい」と言っているのだろう。本心を隠して両親をもてなしたのはいわば演技であり芝居である。今風に言えばいい子ぶりでありご機嫌とりである。少なくとも紀子自身は自分をそんなふうに思っている。だからそんな自分の「ずるい」親切をありがたがって心の底から自分の幸せを願ってくれる父親の言葉に耐えきれずに泣いたのだろう。‥‥とまぁそんなふうな解釈は一応成り立つと思うのだが、根本的な疑問として「どうしてそこまでしなければならないのか」という考えが自分から消えない。 「古き良き日本人を描いたものだ」という意見もあるが、その割には特に長女は繊細さのかけらもないような人物として描かれていて、対比させる意味だとしても極端すぎる。さらに紀子は長男長女を非難する末娘には「嫌だけど仕方がないこと」といって二人をかばうのである。しかも「自分も二人と同じ」とまで付け加えている。義理の両親にあれだけ尽くしたのに、邪険にした長男長女と自分は同じだと言っていることになる。余りにも八方美人すぎるとは言えないだろうか。「昔の古き良き日本人」は、果たして本当にこんな姿なのだろうか。仮にこの作品の数十年後を想像してみると、「何かを待っている」とはいうものの紀子は年老いるまで結局再婚はせず、寂しい心のまま笑みを絶やさず慎ましく、それでいて内心そういう自分に本当は腹を立てているという姿が想像される。もしそうならそれは余りにも鬱屈した人生だし、救いがなさすぎる。それとも形見の時計に紀子は何かを誓って生まれ変わることができたのだろうか。そう解釈する向きもあるようだが、私にはそう断定できる根拠は感じられなかった。 「そもそも主人公は老夫婦であり、紀子ではない」のだろうか。視点を老夫婦に移してみると、彼らこそ心穏やかな人格者であり、長男長女についても立腹するわけでもなく「すべてをそのまま受け入れる」達観した感がある。特に父は苦楽を共にした妻の死にもまるで動揺せず涙一つ見せず(悲しくないわけではないと思う)「もっとやさしくしてやればよかった」とつぶやく。こちらの方がまだ「昔の古きよき日本人」と言われれば納得できるかもしれない。実際家族の死などは、結局のところ受け入れるしかないことが多いからだ。だが正直、行き過ぎている感は拭えない。何年も経過した後ならともかく、亡くなるということを聞かされた直後に「そうか、もういかんのか」と淡々と語るのは並の達観ではない。普通なら絶句するとか、涙を堪えるとか、そういう姿を見せるものではなかろうか(それまで死ぬということは予想もしていなかったことがセリフから伺えるので、余計そう思われる)。紀子ともども、ありえないような作り物のような人物だなという印象が拭えない。そう考えると詩的に思えた人物の撮り方(常に人物が正面で語りかけるような撮り方)も、さらに「作り物じみた」錯覚を起こさせる。 年老いた親とそれぞれの人生を歩む子のどうしようもない亀裂が見る人の心を打つのだろうか。だがそれを描きたいのなら紀子は不要だ。両親を邪険にする長男長女とそれに憤る末娘だけが出てくればいい。紀子が出てくる以上、紀子はこの映画が描く人間関係において救世主的な、ある意味人間愛の権化のように描かれなければならないはずなのに、そしてその通りの行動を紀子は示して父を感嘆させているのに、肝心の本人がそれを「ずるい」と言っているのはどうにもこうにもこちらを当惑させる。すべては見るものが想像するしかないのだろうか……。(セリフ引用はすべて趣意) [インターネット(邦画)] 8点(2024-08-16 23:22:52) |
3. コララインとボタンの魔女
《ネタバレ》 アマゾンビデオにて観賞。「クリスマスの前の悪夢」はまるで面白くなかったが、あれと比べればこちらの方はずっと面白い。筋書きは見えるけれども映像がきれいだし楽しめる。日本語吹き替えではコラライン役がよろしくない。もっと年下で子供っぽいはずなのに、女子高校生ぐらいに聞こえてしまう。大体なぜ素人を使うのか。もっと声も自在に出せる芸達者な人がいるだろうに…。逆にすばらしかったのは父親の歌。この歌が気に入って原語でも聞いてみたが声がやせていて美しくない。この吹き替えの方が上出来だ。それと本作は子供(小学校低学年)と見たのだが、飽きっぽいうちの子供が最初から最後まで言葉を発さないほど集中してずーっとみていた。感想は「怖かった」のみ。「面白かった?」と聞いても「怖かった」としか答えなかった。確かに「ボタンの目」など、大人でも一瞬ぎょっとさせられる場面がところどころにある。子供には大変怖い映画なのかもしれない。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-02-05 04:32:03) |
4. アウトブレイク
《ネタバレ》 うーん‥‥。なんかとても古くさい映画を見た気分だった。一番いけないのは「いかにも作り物のお話」としか思えなかったこと。感染爆発から国民を守れという主題だけでなく離婚した夫婦の関係とか過去の隠蔽話もからめてくるのだがいちいちわずらわしく嘘くさく「作り物」くさく思える。役者の演技もあんまり感心しないし、ヘリコプターで追跡をかわして逃げるところなどもそれだけとれば緊張感があるのだが、それは「感染爆発」のような目に見えない敵が襲ってくるどうしようもない恐怖とは別種の緊張感であって何かちぐはぐな、そぐわない印象を受けてしまう。全体的に感染爆発がちっとも怖く思えないのも減点。恐らく詰め込みすぎたんだろう。そのせいで全体的に薄っぺらな印象を受けたのだと思う。 [インターネット(字幕)] 4点(2024-02-04 11:31:15) |
5. M3GAN ミーガン
《ネタバレ》 面白かった。この手のものは大体「最後はロボットが暴走して終わり」と相場が決まっていて、この作品もその通りだったのだがそれにもかかわらず楽しめた。しかも「怖い」一点張りではなく、特にお披露目のときに泣きだしたケイティに対するミーガンの対応は圧巻で、ホラー映画であることを忘れてしまうほど感動的だ。だがこの後物語はホラー調を強め、ケイティを守るためとは言え凄まじい殺戮が始まる。ミーガンを地面に叩きつけ馬乗りになり「お前、ミーガンをレイ○する気かよ!」と焦らせたあの超クソガキを成敗する場面での立ち上がり方や四つんばいで走るところ(同じく少女型AIロボットを主人公とした「わたしはあい」という漫画に同じような描写がある!)など実に不気味だ(でもスカッとした人も多かったはず:汗)。だが終盤は少し暴走に歯止めがきかなくなりすぎた感じで、エレベーターでの殺戮などやりすぎのようにも思われた(ケイティに関係ない‥‥よね?)。最後の最後まで見応えがあったがこれぐらいよい出来ならば次回作は「最後に暴走して終わり」という毎度毎度のオチ自体をぶち破るような斬新な作品を期待したい。あと「21世紀」にしては少々進みすぎた技術であるようにも思われたが、さて‥‥。あとね‥‥どうでもいいけどなぜ柵が壊れたままで犬が通れるようになってるの? あれ直しておけばケイティも噛まれなかったし、つまり犬もおばはんも死ななくて済んだよね? [インターネット(字幕)] 9点(2024-02-02 00:24:01) |
6. オリエント急行殺人事件(2017)
《ネタバレ》 超有名な作品だけれども個人的には「生まれて初めて鑑賞した」ことを最初に白状しておく。これまでの人生でこの話を原作・ドラマ・映画等で鑑賞したことは一度もない。トリックだけは中学生か高校生ぐらいのとき何かで読んだので「乗客全員が犯人」なのは知っていた。さて一番驚いたのは乗客がたった11人だったってこと。私は「オリエント急行」と聞いてすし詰めの新幹線(または豪華なシベリア鉄道)みたいなものを想像していたので「乗客数十名(以上)が全員犯人って、なんだそりゃ?」とずっと腑に落ちないままで生きてきたのである(笑)。急行列車の乗客全員で11人なんて、飯田線じゃあるまいしそんなこと誰が想像できようか?? だからもしネタを知らずに見ていたら、結構面白かっただろうなぁ‥‥とも思えない微妙な作品だった。映像は最近のものだから美しいけど、根本的な面白さを感じられなかった。恐らくポアロ(というよりあの髭)に違和感があったんだろう。あるいはスーシェのポアロに馴れすぎてしまっているのかも知れない(スーシェ版のオリエントも未見だけど)。最後に「自分を撃て」というのは迫力があったが、結局捕まえるつもりがないのならそんなことに命をかける必要もないわけでよく考えると無用のお芝居であったというしかない。次のナイルも私は人生で未見なので(犯人もネタも全く何にも知らない)純粋に楽しめるとよいのだが。豪華なわりにあまり面白くなかったというのが正直なところ。 [インターネット(字幕)] 5点(2023-09-16 02:33:57) |
7. ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬
《ネタバレ》 普通に面白かった。ローワン=アトキンソンも年取ったが相変わらず笑わせてくれる。それにちょっとかっこいい(笑)。ただ第一作ほどメチャクチャでもない。それとゴルフ場であのおばさんが二度もし損じたのはちょっと意味がよくわからなかった(特に二度目)。あと「女王にあんなことして大丈夫か」という感想があったけど、Mrビーンでは女王を頭突きで昏倒させたり(爆笑)、皇太子の写真を首チョンパしたりしている(笑)。ここは素直に懐が深いイギリスがうらやましい。日本でこんなことしたら、アホな右翼が怒りだすだけだろう。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-08-25 05:36:20) |
8. エスター ファースト・キル
《ネタバレ》 なんと前作から10年以上経過しての続編。しかも前作でエスターが死んでいる都合上、時間的には前作よりも前のお話‥‥しかも、同じ役者さん? そんなの無理ありすぎだろうという疑問の方が先にきてしまった。身長も162㎝というし、どうやって子供になりすますのかと思ったが後ろから撮影しているのはほとんど影武者の子役さん(?)を使ったものだと思われる。が、ところどころはっきり「本人」が映っている場面もあり、そこがもしかするとこの映画で一番ぎょっとくる場面だったかもしれない。話は「どこが最初の殺人なんだよ」といいたくなるぐらいで軽く二人ぐらい朝飯前に殺してから別人になりすましてアメリカの家族に引き取られていくわけだが、前作の「衝撃の事実」がすべて明らかになっているから前作のような緊張感はないし、案外犠牲者が少なく(汗)あっけなく終わってしまう感じだった(時間が短いせいもある)。母と息子の正体が明らかになったときはさすがに驚いたが(でももう少し見せ方、正体の明かし方に工夫があっていいように思う)、しかしそれによってエスターが「襲われる側」になってしまうわけで焦点がややぼやけてしまう気もした。最後の火事もすごい燃え方だがとってつけたような印象が強い。前作のエスターには「エスターが死なずに堂々と立ち去る」別の終わり方もあったようで、そちらを選んでおけば「その後」が堂々と製作できることになるからそっちの方がよかったんじゃないかと思える。総じて前作には及ばない(が、同じ点数にした)。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-08-22 01:45:33) |
9. KUBO/クボ 二本の弦の秘密
《ネタバレ》 大変美しい映画。親子愛(特に母が子を思う気持ち)のようなものが大変強く伝わってきて、ところどころ涙なしには見られなかった。ただ「クボ」はどうしても名字なので、子供の名前としては変に感じてしまう。スタッフに日本語のできる人はいなかったのか? それと月の帝が実は善良な村の老人であった(しかも村人たちがその存在を記憶していた)というのは伏線も何もなく唐突すぎて意味がわからない。彼らの一族(?)はかぐや姫でいう月の人間のような、地上とは隔絶した存在ではなかったのか。父母は死んでしまったので、普通に考えればこの後クボはこの老人と生きていくことになるだろうなどという考えがよぎったりするとさらに違和感が増す。最後の灯籠流しは感動的だがみせ方にもう少し工夫があるとよかった。子供よりも親に受ける映画だと思う。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-08-22 01:43:05) |
10. シン・ウルトラマン
どういうわけか、私の目にはウルトラマン(かっこよかった)と怪獣(なぜ変な当て字…?)と、それにたくさんの大根しか見えなかった。よくしゃべる大根だな、と思って見ていた。一緒に見ていた子供が映画開始から15分ほど経って「お父さんが日本の映画好きじゃないって言ってた理由がよくわかった」と言った。二人して笑いあった。 [インターネット(邦画)] 5点(2022-11-19 12:24:53)(良:2票) |
11. カウントダウン(2019)
《ネタバレ》 なんかもう、すげぇくだらねぇ。やっぱりキリスト教のカケラも信じていない人間(自分)には、こういうのは無理だ。結末だけが気になって見続けたけど、うまい具合に呪いを回避したな、とは思った。でも最後(また携帯に登録されるとこ)なんてギャグみたいで笑うしかなかった。チャッキーだとあんまり気にならないんだけど、その差は何かなぁと思うに「なぜこの人たちが呪いにかかったのか」という肝心な点が抜けていることに気がついた。91歳まで生きる人もいればあと3日で死ぬ人もいる(しかもそれが目茶苦茶多い)。その差はなんなんだ? という点がすっぽり抜け落ちているから面白くないんだろう。 [インターネット(字幕)] 3点(2022-09-29 10:07:00) |
12. グリーンランド -地球最後の2日間-
《ネタバレ》 うーん。いろいろおかしな点があって怖さが半減してしまった。人々が暴れ出したり利己的な行動に出るのは「ウォーキングデッド」みたいな感じでいいんだがたとえば子供の病歴をあっさり打ち明けてしまうのは余りにも不用心だと思われたし、安易に家族が離れてしまうのもあんな極限状態で軽すぎる行動だなと思われた(息子を奪われたのは仕方ないが)。ところどころで善意の塊のような「優しすぎる」人物が存在しているのも「ウォーキングデッド」的な世界観をぶち壊すだけだし緊張感をも壊してしまう(「私の家族は選ばれていません」という冷淡な軍人はよかった)。さらに何より一番違和感があったのはヘルシンキだのなんだのと世界各地にシェルターが結局点在していたことで、何もグリーンランドだけじゃなかったのかと気付かされること。西欧吹っ飛んだんじゃないの? それにシェルターでの9ヶ月間だって「ウォーキングデッド」的な展開なら何事もなく平穏に避難生活を送れるわけがないのであって、閉塞感やら減る一方の食料や男女の争い奪い合いとかで苛烈な争いが起きていて死者もたくさん出ていてもいいはずなのに全く何事もなかったかのように「9ヶ月後」がすぐにやってきて、しかも「恐竜を絶滅させた隕石よりすさまじい」隕石が襲ったというのに地上の嵐はすっかり去りました、陽光も差していてさぁもう安全ですみたいな感じになるのも奇妙(せめて地球の人口がどれぐらい減ったのかぐらい伝えてもいい)でしかない。避難するまでが物凄く長い映画だが、逆にさっさと避難してその避難所での9ヶ月が本当の地獄でしたみたいな感じの描き方の方が面白かったんじゃないかと思わせる。 [インターネット(字幕)] 3点(2022-09-28 09:58:07) |
13. シェフ 三ツ星フードトラック始めました
《ネタバレ》 本当に「可もなく不可もなく」という感じの「おいしそうだけどあまりおいしそうに見えない」食べ物系映画。ツイッターが物語に絡んでくるところはいかにも現代風なのだが、シェフはまるで「頑固一徹オヤジ」みたいな昔気質な人で、よくこんな人がアメリカのドラマに出てくるけど「ほんとにこんなオッサンいるのかな?」と思わないでもない。矛盾を感じるのは、このシェフ大変に子煩悩であるにもかかわらず、おまけに元妻も「よくもまぁこんな美人がこんなオヤジと結婚してくれたね」というぐらいに美しいのに、ええ年こいて若い女とできてしまって離婚してしまっているという設定(元妻とは「友達でいよう」ということで離婚し別居するのだが、その辺があまりドロドロしていないのが少し奇妙ですらある。女房も遊んでばかりの女なのだろうか?)。少なくとも「子供にこんなもの見せたくない」とかいう堅物オヤジがすることではないと思う。そういうオヤジは、女房一筋という方が嘘でもぴったりくる。キングヒルが他に女つくってたら興ざめじゃないか。父親が大好きな設定の子役が上出来なので、尚更そう思わせる。 [インターネット(吹替)] 6点(2022-09-10 13:53:50) |
14. チャップリンの独裁者
《ネタバレ》 チャップリンはヒトラーと同年同月生まれで(4日しか誕生日が違わない)身長までほぼ同じだったという。本人に扮するというアイディアはそこから出てきたのかどうか知らないが、床屋との一人二役というアイディアは秀逸である。さすがにチャップリンだから笑わせる場面が多くて、いきなり敵陣に一人で侵入してしまう場面、飛行機で水を飲むシーン、デタラメなドイツ語の演説(笑)、ハンガリー舞曲第五番などなど思い返すだけでも笑える。かなり肥満した部下やこれまたお調子もののムッソリーニ(ナパローニ)と合わせてコントばかりなのだが、冷酷な部下(ゲッベルスがモデルだろう)の存在がうまく引き締めている。 が、もちろん本作は単なるコメディではなく、いささかその後の展開を考えると物語的には破綻していると思われる最後の演説が核心となる。どうしてもチャップリンはああいいたかったのだ。全世界に向かって。そして母に向かって(ハンナはチャップリンの母の名前である)。そのメッセージは極めて率直でわかりやすいので、それをどう受け取るかは、あえて論評する必要はないだろう。……ただ、チャップリン亡き後数十年経過した2010年現在いまだ世界は悲惨である。インドや中国など内面に大きな問題を抱えた国が勃興しているのはよいことでは全くない。なぜならどこかで決着をつけねばならず、その決着には流血も予想されるからだ。またルワンダ虐殺をみてもいかに我々が白人中心の人種差別から逃れられないかがよくわかる。安っぽいヒューマニズムで満足することは、もはや我々には不可能なのだ。誤解のないように書いておくと、私はチャップリンが安っぽいと言っているのではない。それを我々が安っぽく解釈してはならぬと言いたいのだ。なおチャップリンは「もしナチスの実態を知っていれば、こんな作品は作らなかった」と言っているそうだが、それを差し引いてもこれをつくった勇気はやはり称賛に値すると思う。この作品以降、チャップリンはアメリカ追放までアメリカの一部の勢力ににらまれ続けることになる。追加:上記投稿からなんと12年が経過した(ここも長寿ですねほんと)。そして「2022年現在いまだ世界は悲惨である」と付け加えなければならない。露宇戦争(勝手に命名した)は戦火の止む気配がなく原発までもが攻撃の対象となる危険も出てきた。世界は二分され、10年前に「問題を抱えた国」と指摘したインドや中国はロシア側につき、このまま第三次世界大戦に突入するという意見すらある。国内もコロナで疲弊し、ロシア制裁からくる影響を受けじり貧となっている最中に元総理が凶弾に倒れ、その後で政治とカルトとのありえない関係が明るみとなり、移民が増え格差が広がり凶悪犯罪が増えつつある。日本は、世界は本当にどうなるのだろうか(2022年9月10日)。 [DVD(字幕)] 9点(2022-09-10 04:44:43)(良:1票) |
15. 千と千尋の神隠し
意味不明。わからん。もっともたとえばムーミンだって初めてみりゃ「わけわからん」話だと思うけど、何度も何度も見ているから大体のことはわかるようになる。これもそれぐらい繰り返してみれば違和感も消えるのだろうが、映画ってそこまでみないので不可解な印象しか残らない。また「初期のジブリとは違う」という理由で評価が低い向きもあるけど、その「初期のジブリ」(ナウシカ・ラピュタ)からして「ごくごくごくごく普通のアニメ」にしか思えないのでジブリ人気がわからない。だがジブリ人気は日本だけではなく、世界的なものだ。どうも世界中の人を共感させる何か、が自分には欠けているらしい。別に残念とも思わないけど。 [映画館(邦画)] 2点(2022-09-10 04:17:42) |
16. アース
《ネタバレ》 小学校低学年~ぐらいの子供と一緒に鑑賞するのにこれ以上のものはない。もちろんこれは繰り返してみるものであって、一度だけではもったいない。動物の名前や生態を覚え込むぐらい繰り返し見れば、理科の点数も上がる(保証しないけど)。「アリのままに生きる」という下品な映画など、絶対見せない方がよい。ま、子供に「つまらん」と言われれば、それだけだけど。 [インターネット(吹替)] 9点(2022-09-10 04:09:11) |
17. ファースト・マン
《ネタバレ》 人類史上かなり大きな出来事を可能な限り思い入れを排除して色をつけず淡々と描いた作品。一言でいうと地味だがそれがよい。 一つにはいわゆる「宇宙もの映画」というと大抵の場合遊園地の絶叫もののような恐怖を観客に与えるのが使命というかお約束的なところがあって、それにいろいろと「争い」「葛藤」など緊張感を高める要素がありつつも結局「感動的な」結末にたどり着くというのが常態化しているので、このように淡々と描かれていると却って新鮮な感じがするし、あくまで事実を下敷きにした物語としても真実味が増す(どれぐらい史実に近いのかは調べてみないと判定できないけれども)。主役の表情を押し殺した演技もよい(仲間が亡くなった時ですら取り乱して叫んだりしない)。最後に二人が一言も会話せず終わるところもよい。山ほど語ることはあったろうに。……一つだけちょっとだけ気になったのは、火災の場面。最後爆発があるとき外からのカメラに変わって少し煙が出てくるという演出はアニメなどで余りにもよくみかけるため(タイム〇〇〇とか)ちょっと気になった。船内で爆発して終わった方がよかった(と思うが、アメリカ人がタイム〇〇〇知ってるわけではなし……)。 [インターネット(吹替)] 8点(2022-09-10 03:13:07) |
18. 映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021
《ネタバレ》 なんか全然盛り上がらずに終わってしまった感じ。一応は大統領のあの演説が山なんだろうけど、そんなに感動しないし「もっとドラえもんたちに頼ったらいいのに」という疑問がずっと続くのも減点。あとどうしてビッグライト使わないの? あったよね?? さらに「夏期講習だから」って理由で消える出来杉が不憫でならない。いいかげんに冒険に行かせてやれよ! [インターネット(邦画)] 4点(2022-08-18 01:52:38) |
19. ムーンフォール
「無重力」と同じような話かなと思ったが、あれよりも緊張感がなく明らかにつまらなかった。評価できるのは余計なラブシーンなどが一切なかったこと(最近の風潮かな?)。それとやはり「白人と黒人が同等、アジア系は女性がつまみのように使用される」という感じで、これも最近の風潮だろう。 [インターネット(字幕)] 5点(2022-08-08 07:06:57) |
20. いぬやしき
《ネタバレ》 原作は結構はまって読んだ。アニメも見た上での感想。時間が短いのでところどころ省略があるのは仕方ないと思うが、問題は二人の対決。かなり趣を変えており、また隕石の衝突がないのでそこで話が終わっている。だから獅子神が「実は生きていた」描写が解決されずに終わってしまう(むしろない方がよかったのではないか)。それにビルから助け出された娘が感謝して泣くのではなく、機械化した父に疑念の目を向けるのもあまりいただけない。公園での衝突の際の宇宙人の会話がないのは仕方ないのかもしれないが、せめてもう少し「宇宙人が何かしている」ぐらいには見せるべきだと思うし、獅子神の「バン」は、本当にただ「バン」というだけなので迫力がない。一番原作と似てるなと思ったのは「2ちゃん大量殺人事件」(仮称)の「1」。そっくり(笑)。原作はあまりにも殺人描写が多いが、それに耐えられる人は読んでみると面白いかもしれない。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-09-22 13:51:08) |