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エリア加算さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 67
性別 男性
自己紹介 琴線に触れる映画は人間としてのリアリティが描かれているかどうか。作品として大事なのは哀切さは容易に撮れるが、それが痛切であるかどうか。

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1.  灼熱の魂 《ネタバレ》 
結末を知って結構すごい話だなと感動したが、「オイディプス王」を現代の中東に舞台に移した翻案版と言われてみれば、なるほどと。 そう考えると西洋の古典は強いなと感心。だが、話のつくりはよくできていて、翻案版だからと言って貶めるつもりは全然ない。若干娘の探索がご都合主義的にうまくいきすぎているような気もするが、それを超えてこの母親の一生はなんだったんだろうと深く嘆息させるストーリに脱帽。若き日の母親がテロリスト側につく動機となったバスの襲撃シーン。幼い子だけでも助けようと母親の振りをしたが結局女の子は射殺されるという痛ましい場面。これは本当に内戦が続く中東の現実を語る上でリアリティを与える悲惨なシーンであり非常に深甚な場面だったと思う。遠い中東では宗教紛争と難民流入による民族紛争などが絡み合って人々がこのように傷付け合い苦しんでいるだなと改めて身につまされ、平和ボケしている日本人としては色々と考えさせられるいい映画だったと思う。初期にこんな映画を撮っていたヴィルヌーヴはやっぱすごいね。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-04-15 18:23:32)
2.  ラブ & ドラッグ 《ネタバレ》 
これは難しい映画ですね。単純にテーマを一つでいいところを二つ盛り込んで無理やり着地させている感じ。セールスマンのサクセスストーリーと恋愛物を。多分企画としてはバイアグラのNO.1セールスマンの映画だったのをラブロマンスを入れようとプロデューサーが無理やり難病物のそれとをくっつけたんだと思う。最初の方のセールマンになってから奮闘する部分なんてテンポよくて本当に面白いなと思った。原作をうまく脚色しているのが透けて見えるくらい。でも、確かにこれだけだとメガヒットするような映画にはならないだろうなとも思う。ただ、ロマンスパートも結局ありきたりでそんなに胸を打つほどでもない。でも、足したんだから良くない?と思うかもしれないけど、エドワード・ズウィックだからこれくらいうまく融合させているけど、それでも見終わった後、なんか中途半端感しか残らない。どちっかに絞った方が良かったんじゃないって。でも一つに絞ると弱くなるし・・これがいろいろこねくり回して一番最上の形だったんだろうなというのは非常に理解できる作品。ある意味エドワード・ズウィックの演出力のすごさがよくわかる作品。
[インターネット(字幕)] 6点(2022-07-16 18:04:39)
3.  ロープ 戦場の生命線 《ネタバレ》 
今まであまり題材にされないような国際NGO団体の日常をを描いたニッチな映画。タッチが小説の短編的な感じで、2日間にわたりユーゴ紛争地域の現地の人々と団体職員との非日常的な日常を描く。登場人物もお話の定型で理想に燃える新入り、すれからっしのベテラン、そこに女癖の悪いおじさん職員が前に遊んだ彼女が組織の査察官として現地を視察し、そこで痴話喧嘩が燃え上がるというもの。作品の大枠としては昔の日本映画、川島雄三あたりが小説を映画化したような娯楽作品だが、技が効いているのはユーゴ紛争の悲惨さをさりげなく現地の人々の日常から透かして見せること。NGO職員と現地人との距離感の取り方も実際ああなんだろうし、現地の少年や現地人通訳のセリフを通して過酷な現実とそれを百パーセント解決できない自分たち、もしくは国連軍の無力感をいい具合に浮かび上がらせている。また先進国からあえて紛争地帯で国際支援活動に勤しむある意味母国では社会不適合者であるNGO職員の姿もリアリティがあってよい。惜しむらくは無駄なシーンが結構あって、もっと編集でテンポよくできたのではと感じる。それでも、ほのぼのしたブラックコメディの中にまじめに国連軍や国際NGO活動の難しい現実をリアルに提示した良品だと思う。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-01-20 18:01:36)
4.  ウルフ・オブ・ウォールストリート 《ネタバレ》 
脚本が素晴らしい。ダレることなく一気に見ることができた。スコセッシは歳を取ってもまだどんどんうまくなっているように感じる。 「ディパーテッド」よりこっちの方が圧倒的に完成度が高いし、単純に面白かった。この後全くテイストの違う「沈黙」も撮っているし。本人も70過ぎても撮るごとに進化していることに充足を感じているのでは?皆さんが言っているように己の欲望に忠実に邁進している人物たちをなんのためらいもなく真っ直ぐに描いているので、本当に清々しい。ただ、ウォール街の人間って本当にあんなにラリッてるの?というのが率直な疑問。個人的にはトンでいるのに必死にカウンタックを運転して家に帰るのがリアリティーがあって面白かった。あれは実話か脚色か?ちょっと思ったのは、この人間の下世話な欲望を余すことなく描いている感じが私淑している今村昌平っぽさを今回は出したかったのかなぁと。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-08-28 22:00:38)
5.  女神の見えざる手 《ネタバレ》 
すごく面白かった。ストーリ展開にしっかり起伏をつけていて、一切ダレることなく見ることができた。主人公の目的のためには手段を選ばない非情さを存分に描いているが、特に事務所の同僚が銃殺されかけて仲違いさせるのとそのやり方の蹉跌も描くことで最後のドンデン返しを活かすプロットは見事。「ロボ・ローチ」はホンマかいなって突っ込みたくなるけど、まぁいいでしょう。決して万人受けするテーマではないけど、ハウス・オブ・カードを楽しめる人にはお勧めできます。あと男娼が法廷で偽証するのも主人公のパワーを無理なく感じさせて、なんかリアリティがあってよかった。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-02-20 22:32:58)
6.  ザ・マスター 《ネタバレ》 
あらすじを見て結構自分好みの題材で期待していたんだけど、実際は想像していたよりこじんまりとしたお話でした。面白くない。ただ面白くはないけど内容は素晴らしいと思う。2時間近くおっさん二人の濃厚な関係性を描くだけ。最後のエンディングを迎えて、あぁ、これはフレディの魂の救済に向かう彷徨をを描きたかったのだなということが分かった。おそらくだけど最初の内は新興宗教という設定も物語上は機能はしているが撮っているうちに孤独な男の救いがどうすれば得られるのかという監督の思いが強く前面に出てしまった様な気がする。フィリップ・シーモア・ホフマンの教祖様っぷりもすばらしいのだが、やはりフレディという主役の人物造形がリアルでそれを見事に演じきったホアキン・フェニックスの演技が素晴らしかった。銀獅子賞受賞と聞いてなるほどねとは思う。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-02-11 23:19:34)
7.  ヴィンセントが教えてくれたこと 《ネタバレ》 
不良ジジイと少年の心の交流というよくあるフォーマット。二人の関係性の描写は無駄なくよく描けていて、特にビル・マーレイがダメジジイぶりをリアリティたっぷりに好演していて見心地は悪くはない。ただ、このジジイの善人性を出すために認知症の妻のところに足しげく通うという愛妻家エピソードが傷になっている。だったら、なんでそんな愛妻家が売春婦との間に子供まで作る?いや、別に遊ぶだけなら人間だもの、それぐらいの矛盾というかスケベさがあるのは認めるけど、妊娠までさせちゃったら立派な背徳じゃない?そこらへんの設定がかなりイケていない。あと、最後の聖人の発表会も感動させようという安易な演出で非常に作品を安っぽくさせてしまいかなりガッカリ。ここはしんどいけど、ビターなリアリティある締め方にしてもらいたかった。具体案が出せなくて申し訳ないけど。それでもナラティブは丁寧で安定しているので、5.5をおまけして繰り上げで6かな。
[インターネット(字幕)] 6点(2021-01-17 21:35:23)
8.  ザ・ファイター 《ネタバレ》 
レビュー見て、意外とボクシングシーンのリアリティーで点数を下げている人が結構いるのが意外でした。はっきり言ってこれはボクシング映画ではないでしょ。作品のモチーフからすれば、まぁ、もっと本物っぽく撮ってもいいのかもしれないけど、デヴィッド・O・ラッセルなら必要ないと考えてもおかしくない。テーマである家族の切れそうで切れない絆を若干カリカチュアした演出だが、手堅くまとめている。ストーリの運びは優等生的で親子関係、恋人関係の葛藤もちゃんと描写し、文句のつけるところはない。ただ、この監督の特徴かもしれないけど、あまりにも手堅くまとめすぎて、展開も読めるし、こじんまりとしちゃってる感が強い。エンディングは思ったより盛り上げてくれたので、想定を少し上回ったので1点プラスしようかなとも考えたけど、この人頭がいいからそこまで計算しているかもしれず、理に勝ちすぎて心揺さぶるまでのパワーを持った作品とまでは言い難いのでこの点で。それでも登場人物の感情の動きをちゃんと設計図通り組み立てられる能力は監督としてはけなすべきものではなく、決して嫌いではないです、デヴィッド・O・ラッセル。
[インターネット(字幕)] 7点(2021-01-09 23:02:34)
9.  天気の子 《ネタバレ》 
この監督の持ち味であるリアルな背景描写もあって、まぁファンタジーとして途中まではそんなに違和感なく見ることは出来た。晴れ女のバイトもやめてそろそろ物語に行き詰まりを感じるころに警察の捜査が入って来て、お、ギアチェンジが始まるな、更にリアリティの強度を上げてきてなかなかやるじゃないか、と思っていたら、主人公「一緒に逃げよう!」はぁ~?って感じ。そもそも家出の理由もわからないし、なぜそこまでする必要があるのかも理解できない。作者の都合としか感じられない点でもうダメ。さらに最初の方から善意の人ばっかしで、うすうす何かに似ているなぁと思っていたら、真面目に観るのを投げ出した後半からはジブリ映画の既視感しかない。警察があんなに間抜けに逃がすのとか、都合よくバイクで二ケツして逃亡するとか空に昇って二人一緒に落ちてくる画とか、皆さん感じませんでした?あと天気のために自分の命を削るとか世界を変えるとか他のレビューアーの方が言ってるように自意識が肥大化しているまさに中二病の言説のオンパレードだし、というかこれを作品としてリリースしていること自体結構まずいような気がする。周りの制作陣で誰か諫める人はいなかったのかしら?農工大入学とか妙にリアリティーを重視しているところでみんないけると思いこまされたのかしら。あとエンディングも前作のデジャブのように思えたのは俺だけ?「君の名は。」が結構よかっただけにこの落差は結構衝撃でした。
[地上波(邦画)] 4点(2021-01-04 00:32:04)
10.  SPY/スパイ 《ネタバレ》 
面白い映画。英語でいうinterestingとfunnyの二つの意味で。最初の面白さはメリッサ・マッカーシーみたいなタイプをスパイ映画の主役に持ってくる斬新さ。二つ目の面白さは単純にコメディーとしての。ずっと見ていて突っ込みをしていたのはCIAの内勤職員がこんなにスーパーエージェント然として戦えるか?というそれ1点のみ。この監督って漫画チックに撮る傾向があるけど、そこそこ見入ってしまうクオリティーがあるので、文句をいいながらも結局は許せてしまう。それでも職場の友人まで現場に送り込むのはやりすぎだし、独身ハイミス二人の友人関係を前面に出すのはあまり脚本的に成功しているようには思えない。でも、なんかメリッサ・マッカーシーが最後にモテモテになるのも決して無理筋でなく、本当に魅力的に見えるのもやはりポール・フェイグが主演女優を魅力的に撮れる監督としての力量があるのだと思う。この人の作品って、何度も言っちゃうけど、文句言いながらもなんか結構許せてしまう、不思議なエンタメ職人監督です。
[地上波(字幕)] 7点(2020-12-29 23:27:21)
11.  ボーダーライン(2015) 《ネタバレ》 
リアル一辺倒で大変すばらしかった。リアルでなかったのはエミリー・ブラントが捜査官の割には華奢すぎるのとデル・トロが一人で宿敵のボスのところにたどり着けるのがちょっとご都合主義かなというところぐらい。この作戦の全貌もすごいといえばすごい。毒をもって毒を制す。コロンビアの組織とアレハンドロという毒を使用してコントロールできる毒で麻薬組織を支配するアメリカの覇権主義。途中でワクチンの例えも使っているし。脚本のテイラー・シェリダンはそういう自国の汚さを告発しているのかも。「ウインド・リバー」を撮っているぐらいだから。それにしてもデル・トロとジョシュ・ブローリンはしっかりハマっていました。その中でもやっぱりデル・トロの存在感は光っていましたね。役柄もおいしいいい役だしね。それにしても麻薬組織っていうのは映画の題材にどれだけ貢献しているのやら・・。悲しい事実だけど。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-11-28 22:22:59)
12.  シンプル・フェイバー 《ネタバレ》 
他のレビューアの方が言っている通りテレビの2時間ドラマに限りなく近い映画、しかも非常にきわどいところでドラマに流れずに保っているという感じ。ただ主役二人のキャスティングはばっちりハマっていた。でも、背の高さまで差をつけているのはカリカチュアが過ぎてちょっとドラマ感が強いような・・。また、ステファニーが謎解きをてきぱき進めていくのもちょっとご都合主義的だし、最後にエミリーが車に轢かれるのも、漫画チック。それでも、映画らしく凝っているところもあり、双子というタネ明かしも言われればなんだかもしれないけど、よく練っているし、エミリーとステファニーそれぞれが秘密を明かす場面、供述は嘘だが、映像では真実を流すのをそれぞれ配置しているのも演出の意気込みを感じるし、途中でステファニーの悪女の部分を初めて観客に漏らすやり方など後半の相手をハメて勝つ伏線にも繋げているし、一概にけなすことはできないクオリティーはあるともいえる。結果としては鑑賞後、ステファニーが魅力的な主役と映った、まぁ面白い映画だったのでは。決して2時間ドラマに堕さずに。
[インターネット(字幕)] 6点(2020-11-23 22:41:30)
13.  ウインド・リバー 《ネタバレ》 
雪に閉ざされた先住民居住地の諦念と絶望ぶりがよく描かれています。実話か設定かはわかりませんが主人公が先住民女性と結婚し、娘が同様の悲劇に遭っているというのもリアリティがあります。FBI捜査官を外界の視点、異文化の顕在化として機能させ、かつバディとして事件に絡んでいくのも映画の王道です。最初から最後のヤマ場の銃撃戦、主犯の死亡までも変に盛り上げず淡々と描く一定のナラティブも雪山というロケーションと合致し、非常に引き締まっていて好感が持てます。テーマの先住民女性に対するレイプ被害の告発とサスペンスが程よく調和し、アメリカの陰の現実描写とエンターテイメントを両立させたいい映画だと思います。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-11-23 22:10:29)
14.  モリーズ・ゲーム 《ネタバレ》 
実話ベースということであまり盛り上がりはないのもしようがないかなと途中までは見ていました。ナラティブは手堅く、ダレずに見ていられたので7点くらいかなと思っていましたが、なんと、アイススケート場以降のシーンで予想を裏切れましたね。実は親子の確執と和解をサブテーマとしていたとは。そこから一挙に伏線を回収するという超圧縮展開。弁護士が主人公の弁護を引き受けた理由とさらにもう一つの父と娘の確執をそこでさらにサラッと描く。うーん、やるなぁ。そしてドンデン返しとハッピーエンド?と最後のシーンもまた、しっかり伏線回収と回想がシンクロしているという高度なテクニック。素晴らしい脚本です。というか監督がもともと「ア・フュー・グッドメン」の脚本家だったから当たり前か。こんなに見ている間と見終わった後の評価がガラッと変わった映画は初めて。すごい得した気分。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-09-26 22:32:06)
15.  バーニング 劇場版 《ネタバレ》 
うーん、一言いえるのは前の方も言っていたように村上春樹の小説を借りずにイ・チャンドン独自の世界観の作品を見たかったなというのに尽きるかな。やっぱりスケールが小さくなってるんですよね。そもそも元ネタも短編で謎を謎のままで放り出してるような作品だし。もちろん映画のクオリティは高いし、あの小説をここまで昇華しているのはさすがですし、ただイ・チャンドン基準で考えると・・物足りない。元ネタを借りて韓国の格差社会を若者の失恋・蹉跌・嫉妬を通して詩情豊かにそれこそ元ネタよりも文学的に描いている。並みの監督基準からみれば文句なく5ツ星ですよ。「パラサイト」が盛り盛りにブラックコメディ的に格差社会を描いたのと対照的だけどね。でも、イ・チャンドン基準だとね・・・。はぁ~残念。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-09-22 22:16:25)
16.  ドラゴン・タトゥーの女 《ネタバレ》 
本家版は見てないですが、世界観は保たれているような気がします。物語とロケ地、色彩を含め合っていたと思います。原作未読ですがミカエルとリズベットの合流までがちょっと引っ張りすぎなような気がします。また、最後にリズベットにツンデレ感を出すのも何か少し違和感を感じました。ストーリーはそれなりに面白く見られたので、満足感はあるのですが、「ゴーン・ガール」を見てからこっちを見たので、少し評価が辛めになってしまいました。あとオープニングの「移民の歌」は物語の雰囲気に全く合っていないと思います。MV自体は格好良くて好きだけど。
[インターネット(字幕)] 7点(2020-09-21 22:31:45)
17.  20センチュリー・ウーマン 《ネタバレ》 
2000年代にこういう映画が作られるのも面白い。70年代のあるアメリカ市井を理解する一助になった。きっと監督が自分の体験をフィルムに焼き付けたかったのだろう。非常に丁寧な脚本だと思う。離婚率が70年代から今の日本以上だったアメリカ人にとって親というものは非常にとらえにくいものだったのかも。ひとり親であっても変に構えず単純に子供に対して愛情を注いであげれば(特に時間と手間をかける)思想が偏っていてもまっすぐに育つのだろうなという思いを強くした。コミューンやウーマンリブが猖獗を極めたアメリカで特に周囲にそれがモロあった家庭に育ち思春期を迎えた若者にとってはなかなかしんどい環境だろうなと同情もする。最初から中盤までは確かに盛り上がりに欠けたが、最後にドラマを持ってきて、一挙に未来からの回想でエンディングを迎えるありきたりの演出ではあったが、結果としてテンポ配分は良かったと思う。当時の米国のパンクムーブメントにマッチョ/軟弱のカテゴリーがあり、トーキング・ヘッズが軟弱一派にされるというのもトリビアで面白かった。
[地上波(字幕)] 7点(2020-09-21 22:13:49)(良:1票)
18.  わたしは、ダニエル・ブレイク 《ネタバレ》 
ケン・ローチ円熟の技。社会派だけどいわゆる彼が「社会派」監督で終わらないのはちゃんと告発だけでなくドラマを撮っているから。英国の福祉制度をリアルに描いているし、役人も機械的な人もいれば人情を持った人もいることをちゃんと等しく描いている。声高に告発をしているだけでなくリアルさを徹底しているからより凄みを増す。そしてこの映画が素晴らしいのは、ダニエルとケイティ家族の交流をしっかりと描いているから。出会いから別れまでも全く自然だし、隣人の黒人青年とかの交流もリアルだし。悲惨な中で弱者同士が互いに助け合うやさしさ、心の温かさ。それと社会制度の冷酷さの対比がよりドラマ性と告発性を相互に際立ださせる構造になっている。今の日本人監督には力量的に正面切ってリアルとドラマを共存させたこういう映画は絶対撮れないと思う。人間が幼稚だから多分ファンタジーに逃げてしまうだろう。一番笑った好きな場面はダニエルが役所の壁にスプレーで落書きをしたのを誉めたおじさんの発言のところ。ああいう市井のイギリス人もマジでいそう。あと見ていて一つ思ったのは日本の行政は英国よりも優しいなということ。デジタル弱者をバッサリ切り捨てずに紙での申請をいまだに認めているからね。だからマイナンバーカードが普及しないのよね。
[地上波(字幕)] 9点(2020-09-19 21:50:28)
19.  MUD -マッド- 《ネタバレ》 
久々に重層的にドラマを噛み合わせ、回収していくいい映画を見ました。まず何がいいって、アメリカの地方都市の底辺の人々の生活をリアルに舞台設定しているところがいい。ボートハウスに住む主人公なんてめったにないじゃん。そして、少年の家庭と日常の閉塞感もきっとこの町では普通にあるのだろうし、そうしたなかで、ロビンソン・クルソー張りの生活をしているマッドとの交流。これも本当にあるように信じ込まさせられるのも監督の力量。そこから冒険譚へと物語は進んでいく。主人公エリスがマッドに怒りを爆発させるところなど非常に説得力があるし、ドラマとしての十分な推進力を持っており、終盤への流れに繋げていく演出は全く自然で、見事。最終的にほろ苦い少年の成長とマッドの逃亡をリリカルに描いて終わらすエンディングもちゃんと作品の情緒を保持して非常に素晴らしい。こういう都市部だけでないアメリカの一地方のリアルな生活を垣間見せてくれたことと、それに見合ったドラマをちゃんと提供してくれた監督に感謝。ただ唯一違和感を感じたのは主人公ちょっと暴力的すぎないか?彼の鬱屈さを表現したかったのかもしれないけど、そこだけはなんか浮いていたような気がするんだよね。あくまで個人的な感覚だけど。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-09-06 22:37:15)
20.  プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命 《ネタバレ》 
なんか残念な映画ですね。話は悪くないですが、構成がよくない。親子2代の話が2本分にして見せられているような感覚になってしまう。ルークとエイブリーの親子2代にわたる宿命を描きたいのならもっと脚本を練り上げないと。あと、エイブリーが名誉の負傷後の警察内部の不正に立ち向かう部分をもっと刈り込んでも良かったのでは。あそこが妙に盛り上がってしまって子供たちの代の宿命の部分が薄らいだような気がするんですね。あと演出のテンポも今一つよくない。ライアン・ゴズリングとデイン・デハーンが頑張ってました。ライアンはこの映画でカミさんと知り合ったんでしょうね。
[インターネット(字幕)] 5点(2020-09-06 19:27:06)
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