1. 12人の怒れる男/評決の行方(1997)<TVM>
一場物なのに飽きさせない展開。面白い。「顔の無い」被告を通じて「名も無い」陪審員たちの深層が浮き彫りにされていく!これはある意味『二重の謎解き』だ。被告の罪の有無と陪審の人間性の立証。挑むは我等がグランパ、ジャック・レモン。一見温厚なれど、その洞察力はナイフの如く鋭いコロンボ系。後半のレモン翁の台詞「被告人は貴方の息子じゃない!」には心底シビれた。そして最後に『第三の謎』が残される。決して解けない謎、即ち「全ての陪審の素性を手に取るように晒していった翁自身の素性は如何なるものだったのか?」。傑作の宿命ゆえか、映画である必然性が薄いのが唯一の欠点か。【吹替版の評価】 9点(2003-06-23 19:46:38) |
2. マトリックス
竹本健治『腐蝕』、岡嶋二人『クラインの壷』、村上春樹『世界の終わりとハードボ(以下略)』等々、虚実入り乱れ系物語は文学では枚挙に暇が無いが、映画では『終わらない物語』以来のスキマ分野か。ウロボロス/クライン構造など、ともすればカルトに流れかねない実験性を敢えて排したであろうこの大作に、このテの世界大好きっこサンとしてまずは惜しみない拍手を贈りたい。しかも何処かMMOゲームっぽいし、洋PVっぽいし、フィッシュバーンがKarateやってるし…とにかくキャッチー(底浅)なバカ騒ぎなのだ。こういうの大好き。 7点(2003-06-22 23:12:43)(良:1票) |
3. グリーンマイル
天使(コフィー)にとって下界は住むに耐えざる地獄というワケか…。コフィーの発言によって「地獄の住人」にされてしまった我々は、縋るべき蜘蛛の糸を求め作中をさまようが、物語は終始死の雰囲気を纏い、生への絶望感が払拭されることはない。正すべき襟を持つ手は力無くしな垂れ、もはや餓鬼として責苦を受ける所存。観る者を暗くさせるだけじゃあイケナイって… 5点(2003-06-22 23:05:04) |
4. コンタクト
地に足が着いたSFなだけに、浮世離れした日本の描写が悔やまれる。大概のお馬鹿ジパングには「冷笑」で対処してきたが、今作だけは別。興奮の常時接続がいきなりコネロスを食らった感じだ。しかしそれは作品に対する怒りにはならず「自分が日本人じゃなかったら気にせず楽しめたのに」と何故か自虐的な反応をしてしまうあたりに、この作品の偉大さが見え隠れ。 8点(2003-06-22 23:01:05) |
5. ゲーム(1997)
現代版『スクルージ』という印象。オチ一発の花火映画なのだが、仕掛けどうこう以前に「性格矯正物語」として楽しめた。例えサービスであっても、自分の為にこれだけ多くの人間が動いてくれたら、どんなにか爽快なことだろう。もし自分だったらどんなゲームが展開されるのだろうか、などと夢想させてくれる怖くてエキサイティングなファンタジー。 7点(2003-06-05 23:43:50) |
6. ジングル・オール・ザ・ウェイ
スタローンがコメディ廃業宣言したのは解る。苦労人顔にコメディは不向きだから。だけどシュワ氏には是非ともこの路線を続けて欲しい。でかい図体を持て余して東奔西走する様は笑い無くして直視できない。これは個人的見解だが、「二度見」をさせたらシュワの右に出るコメディアンは居ないと思う。 7点(2003-06-05 23:40:10) |
7. HANA-BI
ゲージュツの自閉性が遺憾なく発揮されている作品。映画は絵画と違うんだから、まず物語で楽しませるのがスジってもんでしょ。カット割りや構図分析などは、その作品が気に入ってからじっくりすればいい。相変わらずの展開に、監督曰く「オイラのは痛い(だから何?って感じの)」暴力描写を散りばめれば客がついて来ると思ったら大間違い。辟易しているところに、「車内トランプ」や「薬師寺銃殺」のゲージュツ的構図を見せられても鼻白むだけ。もっと「堅気」の側に降りてきてよ。 3点(2003-06-05 23:37:27) |
8. ドグラ・マグラ(1988)
気になる…桂枝雀は夢野久作を読んだのだろうか… 5点(2003-06-05 23:01:30) |
9. スターシップ・トゥルーパーズ
主人公リコの痛快な馬鹿っぷりに爆笑。算数できないわ、上官に指示されて好きでもない女を抱くわ、謎の生還を果たすわ、さしたる戦果といえば巨大蟻一匹殺しただけなのに部隊長にまで出世するわ(上官死亡による心太式出世)…一方、こういった意思無き歯車達のツリー構造こそが軍隊であり、時折挿入される戦意高揚プロパガンダのリアルが、笑いで緩んだ頬をキュッと引き締めてくれたりもした。創り手の真意はどうであれ、こういう観せ方もあるんだなあ、と拍手。 8点(2003-06-05 22:58:35)(良:1票) |
10. 耳をすませば(1995)
着地スレスレの遊覧飛行。現実と幻想の境界線をフワフワと傘で飛んでいるような浮揚感が味わえる上質のメルヘン。創作の醍醐味を味わっていればなお良し。 8点(2003-06-05 22:52:41) |
11. ザ・セル
設定は筒井康隆『パプリカ』に酷似。こういうのは嫌いじゃないが、沈鬱たる幼児期の原体験と、モード全開の意識世界とのギャップが激し過ぎ。まるでグロ宝塚。もっとゆらゆらと澱んだ意識世界へのダイブを期待していただけに、何か重いテーマをお祭り騒ぎで解剖している現場に立ち会わされたような気分になり、恐怖と共に興味も減退。 5点(2003-06-05 22:49:50) |
12. 紅の豚
格好悪いけど格好良い。このダサ格好良さこそハードボイルドの核。台詞のひとつひとつが我が琴線を掻き鳴らし、遂には『さくらんぼの実る頃』を聴くだけでパブロフ的涙目に。この忸怩たるロマンチズム。「馬鹿/エゴイスト/泣き虫」と誹られてもヤメラレナイ。フィオの(ナウシカを引き摺った)見てくれに難あるも、補って余りある素晴らしい映画。 9点(2003-06-05 22:47:28) |
13. シックス・センス
『クライングゲーム』然り、オチ一発に賭けた「花火映画」は嫌いじゃない。一発勝負なだけに反復性が薄く、そこに重きを置いている身としては中々評価してあげられないのだが。この手の物語は欧米では珍しいのかもしれないが、何故か周囲に「よく見える人」が一人は居る日本においては、それほど驚く仕掛けでもないだろう。上質な『世にも奇妙な物語』クラスか。でもまあアリだと思う。 6点(2003-06-05 22:45:47) |
14. 許されざる者(1992)
真の「許されざるもの」は、憎しみ/悲しみ/欲望/愛…これら情動に翻弄され続ける人間の業、或いは人間そのものではあるまいか。割り切れないことは世の中に数多くある。本作は特に責任の所在が不明瞭な我が国にとってのマスト・アイテム。因みに、TV版は「カウボーイの贖罪(馬を酒場に納める)」シーンがカットされた為、唯のショボイ復讐劇に堕してしまった。これこそ「許されざる」行為だ。 8点(2003-06-05 22:43:05) |
15. 恋はデジャ・ブ
「心無い男」を演じさせたら右に出るものが無いビル・マーレー、ついに異次元矯正所送りに。企みや絶望や自己欺瞞を乗り越えて、ついに無償の愛を手に入れましたね。一期一会とはいうけれど、鑑賞後、すれ違う人々の幸せを願わずにはいられない素敵な作品。たいへんよくできました。 8点(2003-06-05 22:41:24) |
16. オー・ブラザー!
着想は良いのにモチーフに拘り過ぎた為か、幻想的にも現実的にもなりきれていない、単なるズッコケ三人組のサクセス・ストーリー。突発的な歌劇テイストも気になるし、ブツ切りの挿話もなんだか。クルーニーのアザトさが際立ち、ホリー・ハンターは役不足。「南部のほのぼの牧歌的テイストが好き!」というトム・ソーヤerな諸氏限定か。 4点(2003-06-03 22:44:47)(良:2票) |
17. ブレードランナー
人造人間ロイと主人公デッカードが対峙するラストシーン…殺された仲間の為に涙を流しながらデッカードを追うロイ。右手には死(壊死した細胞)を、左手には生(への渇望=鳩)を湛えている。そしてラストは雨と共に…鳩は放たれ、奴隷としての業と共にロイの命は天へと帰す。生への執着こそが人間の資質であり、必死に生き延びようとするデッカードは、延命を願うレプリカントと何ら変わらない。それを伝える為の追跡劇だったが、それは同時に、無目的に仲間を殺してきたデッカードに向けたロイの最上の復讐劇ででもあったのではないか。皮肉にも、デッカードの命を救ったのは、ロイの右手(死)なのだ。哀しく歪んだロイの人物像は、その表情と共に映画史上稀に見る複雑な『悪役』となった。【最終版の評価】 8点(2003-06-03 22:39:06) |
18. バーバー
終始燻り続けるカタルシス。思うに『リボウスキ』以来、この辺がコーエン兄弟のアベレージか。綺麗な白黒と、それに映えるビリー・ボブは、さすがにそれ(だけ)が評価されているだけのことはある。が、白黒にした理由に「雰囲気作り」以上のものを見出すことができず、むしろ、その高過ぎる完成度が醸し出す「格式」に監督特有の「突破力」が負けてしまった感あり。DVD版のコメンタリーでも、その「遠慮」ぶりが如実に伺われ「やはり…」と嘆かざるを得ない。期待するが故に作品に望むハードルは高い…酷かなあ。しかし、このままではそろそろ「自己模倣!」の烽火が上がりそうで…が、頑張れッ… 6点(2003-05-30 01:22:56) |
19. 2001年宇宙の旅
古典的カルトSF。赤青黄色の宇宙服に、999の車内然のカラフル制御パネル。そこかしこに当時のモード臭が漂い時代を感じさせる。決定的なのは、役者の台詞回し。コロコロと転がす様に、抑揚無く早口で喋るスタイルは60年代そのまま。いちいち長いカットは、HALの暴走時(短いカット割り)で狂気を演出するのに役立つくらいで、それ以外は冗長且つ「この映像を観ろ」的尊大さを感じるだけ。確かに、宇宙空間での陰影の付け方や済んだ空気感など、映像には目を見張るものがあるが、それは「古典の再読」として観察的に観直されるべきものであって、間違っても本作を『2003年』の現代においてなお「色褪せない傑作!」などと口角泡飛ばして他人に薦めてはイケナイ。 4点(2003-05-26 02:35:55) |
20. ビッグ・リボウスキ
空飛ぶ敷物/ボロ車の一生/財布の中の猥画/ポメラニアン/彼女の小指/ボーリング/ピンを倒す音だけのカセット/心臓麻痺/牛乳に小切手/鉄の肺/従業員サダム/ガターに落ちて/TIMEの鏡/ベトナム戦争/ニヒリスト/ジョンソン/デュード/ウォルター/ドニー/散骨…全てがツボにはまった。ありがとう笑いの針灸師、コーエン兄弟。 注)針灸だから効く人と効かない人がいます。 10点(2003-05-25 02:37:03) |