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ザ・チャンバラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1274
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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301.  バーニー/みんなが愛した殺人者 《ネタバレ》 
ニュージェント夫人は典型的なイヤミババァであり、誰にとっても想像に難くない人柄であるため、その人物像についてはほとんど掘り下げず、他方、度を越した善人であり、事件の概要を聞いただけではその人となりをサッパリ想像できないバーニーの描写に尺のすべてを割いたという監督の取捨選択は絶妙。この要約により、コンパクトにして混乱の起きない構成となっています。 劇中ではバーニーについて金目当て説、ゲイ説、熟女好き説が提示されるものの、そのどれもが的を射ておらず、ガマンの限界を超えた善人が突発的に人を殺した事件として単純に捉えることが、もっともしっくりきます。 二人の関係性は、その当初には相互依存の機能を果たしていました。他人に善意を与えることを趣味とするバーニーにとっては、孤独な老人であるニュージェント夫人を幸せにしてあげることはやりがいのある目標だっただろうし(登山家が高い山に挑戦するようなもの)、他方、隣人や身内から孤立していた夫人にとっては、無償で世話を焼いてくれるバーニーは、世界で唯一、心を許せる相手でした。考えてみれば夫人も気の毒な人で、近づいてくるのは金目当ての人間ばかり。かわいいはずの孫ですら財産を狙う敵であり、気を抜けば身内からも足元をすくわれかねない状況で人生の大半を過ごしてきたのですから、結果、あのような猜疑心の塊となっても不思議ではありません。 しかし、二人の関係は破綻します。この事件の教訓は、世の中には善意の通じない相手がいるということと、善人の善意にも限界があるということです。夫人は、最初こそバーニーの善意に心打たれた様子だったものの、彼から受けた善意を自分自身の人間性を高めるための肥やしにしようとはせず、むしろ、使い勝手の良い使用人として彼を利用しはじめました。凝り固まった老人を変えることはできないということがバーニーの誤算であり、いつか変わってくれるだろうと信じてさらに善意を注いだ彼の対応が、夫人をさらに醜悪にしていきます。良かれと思ってやったことが、事態を余計に悪化させる原因となる。二人は、DV夫と被害者妻のような関係となっていたのです。そして、さすがのバーニーにも臨界点がやってきました。バーニーが夫人と適度に距離をとっていればこんな結果にはならなかったはずで、善意も度を越すと害悪になるという面白く、かつ、一般性のある事例として私は鑑賞しました。
[DVD(吹替)] 7点(2015-09-08 16:02:17)
302.  レインマン 《ネタバレ》 
昨日まで存在すら知らされていなかった兄に親の金融資産をすべて持って行かれ、さらにはチャーリーが触ればマジギレされていた父親の愛車で運転を教わっていたというレイモンドの思い出話に、チャーリーは憤ります。それは、アテにしていた遺産を相続できないという現実問題に加えて、父親との関係が悪かったチャーリーにとって、自分が得られなかった親の愛情がレイモンドに注がれていたのではないかという嫉妬心によるものですが、物語の後半において、二人は似た境遇であったことが明かされます。元々、レイモンドは実家で育てられていたものの、チャーリーの誕生により幼い弟を傷つける恐れが発生したことから、病院へと隔離されました。弟すらその存在を知らなかったという事実が示す通り、レイモンドという人物は半ば葬り去られており、父親が遺産のすべてを彼に相続させたのも、レイモンドが人生を終えるまでの面倒を赤の他人に見させるための前払金としての意味合いが強いものでした。二人とも、親から捨てられた子供だったのです。 その事実が判明して以降、レイモンドに対するチャーリーの態度が一気に軟化します。この辺りの導線の作り方は見事なものだと感心したのですが、一方でクライマックスは感動の押しつけが酷すぎて、少々うんざりさせられました。あれだけ自己中だったチャーリーが兄弟愛とヒューマニズムに目覚め、兄を引き取りたいと言って医者とケンカをするのですが、さすがにこれはやりすぎ。私にも自閉症の親戚がいるので多少は現実が見えていますが、自閉症患者と過ごしてあのような感情に至ることはまずありません。自閉症を患う身内がいると本当に大変で、愛情とか愛着以前の問題として、家族全員の日常生活に大きな支障が生じます。 当初の構想ではダスティン・ホフマンがチャーリー役で、ロバート・デ・ニーロかジャック・ニコルソンをレイモンド役にと考えられていたようなのですが(それはそれで見たいかも)、紆余曲折あってトム・クルーズが参加したことから、新境地開拓に挑むベテラン俳優と伸び盛りのアイドルスターの共演作となり、作品に幅ができました。怒鳴ってばかりで不快感を抱かれかねないチャーリーも、トムが演じたおかげでギリギリ観客から受け入れられる人物となっているし、現在あらためて見返すと、オスカーを受賞したホフマンよりもトムの活躍の方が目を引きました。
[DVD(吹替)] 7点(2015-08-11 01:39:42)
303.  テイラー・オブ・パナマ 《ネタバレ》 
左遷、それはサラリーマンがもっとも恐れるもののひとつです。本作の主人公は、上司の奥さんを寝取ったことで組織から睨まれ、地方支局へ左遷された凄腕(と思われる)スパイ。そのキャラ設定と言い、ピアース・ブロスナンの演技と言い、まんまジェームズ・ボンドなのですが、現実は『007』のようにはいかないというひねくれた展開が笑わせます。また、左遷先で思わぬ事実に遭遇して主人公が孤軍奮闘し、最後には組織や上司を見返すという展開がこの手の物語の定石ですが、現実はそれほど容易なものではありません。左遷先にはネタらしいネタなどそうそう転がっていなくて(だからこその左遷先)、本人に頑張ろうとする意欲があっても、結局はくすぶったまま謹慎期間をやり過ごすしかないのです。それが普通のサラリーマン。しかし本作の主人公はタダモノではなく、ネタがないなら自分で作ってしまえという切り返しに出ます。 もう一人の主人公は、虚言癖のある仕立て屋。ウソをつく時には一瞬、良心が咎めるものの、「つまらない現実を話すより、面白い作り話の方が相手は喜ぶ」と自分を納得させてウソにウソを重ねていきます。利己的な目的でのウソではない分、良心の呵責は少ないようです。実際、たいていの聞き手はこの男の話はウソであることを了解した上で会話を楽しんでおり、実害は少なかったと言えるのですが、ネタを求めるスパイに目を付けられ、ありもしない国際危機がでっち上げられたことから、ウソが現実を侵食しはじめます。仕立て屋も途中から「これはヤバイ」ということに気付くものの、借金を肩代わりしてもらったことの負い目もあって降りられない状況となっており、何の策も打てないまま事態はどんどん悪化。悪魔的なスパイに取り憑かれて右往左往する男の姿が滑稽であり、ジェフリー・ラッシュの小市民演技が光っています。 当事者全員が作り話だと認識し、現地を知っている者であれば誰も真に受けないようなウソが軍事侵攻にまでエスカレートしていく展開にはある種のカタルシスがありますが、一方で恐ろしさもあります。実際、初動段階で現地へ行って聞き取り調査をすればすぐにおかしいことが分かる程度のウソや事実誤認が国際問題にまで発展した事例はわが国周辺でも少なからず発生しており、フィクションだと言って笑ってもいられないところがあります。
[DVD(吹替)] 7点(2015-08-06 16:04:37)
304.  それでも夜は明ける 《ネタバレ》 
人種差別問題を扱った映画には、あまり傑作がありません。白人によるごめんなさい映画が多数を占め、歴史映画の皮を被りながらも、その内容は極端に惨い面ばかりを強調し、当時の一般的な社会情勢を描写できていないためです。この辺りの事情は、我が国において近現代史をまともに扱えた作品がない点と似ています。センシティブな問題であるがゆえに、製作者がどのポジションをとるのかに注目が集まってしまい、結果、事実関係が二の次になってしまうのです。 そこに来て本作ですが、アメリカ資本により製作された人種映画としては、過去最高の出来だったと思います。奴隷制度を抱えていた当時の社会をきちんと描けているのです。従来の作品群で私が疑問に感じていたのは、映画で描かれている通りの暗黒一色の人生ならば、黒人奴隷が反乱を起こして社会は大混乱するのではないかということでした。白人農場主と黒人奴隷の間には持ちつ持たれつの関係があったはずなのですが、何が何でも白人を悪にしなければならないという製作側の事情から、そうした描写がスッポリと抜け落ちてしまっていたのです。その点、本作は実際に奴隷生活を経験した黒人運動家による著作を原作とし、イギリス出身の黒人監督を起用、さらには脚本家にも黒人を入れるという念の入れようであり、アメリカ出身の白人監督がやれば「奴隷制度を肯定している」との批判を受けかねない描写にも果敢に挑んでいます。多くの農場主は財産として奴隷を大事に扱っていたこと、中には奴隷と主人という関係を超えた信頼関係を結ぶケースもあったことが、きちんと描かれています。また、同胞が理不尽な扱いを受けても、他の黒人奴隷は見て見ぬフリをしていたという黒人側の問題にも言及されており(最終的には、主人公も他の奴隷を見捨てて行く)、これにより当時のアメリカ社会が随分と理解しやすくなりました。感情的になりすぎないマックィーン監督の演出も、本作のアプローチには合っていたと思います。 気になったのは以下の2点。まずはブラピの登場場面。ヒーローの如く颯爽と現れ、長年主人公を捕え続けていた問題をいとも簡単に解決してしまうのですが、彼だけは現代の価値観で発言するため、作品から完全に浮いています。次は、12年という時間の重みを描けていない点。予算や撮影スケジュールに余裕がなかったとはいえ、経過時間を示す演出が皆無というのは良くありません。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2015-05-10 02:50:10)(良:3票)
305.  チョコレートドーナツ
良い映画すぎてヤバかったです。基本的にはモラルを語る映画なのですが、観客に対して大上段からお説教をするような押し付けがましさがない辺りが素晴らしいと感じました。それはアラン・カミング演じるお姉の性格と、要所要所で挿入される楽曲センスの良さによるものであり、こういう題材を堅苦しくしすぎることなく90分程度でさらりと見せられる監督の余裕が心地よかったです。また、何となくうまくいきそうな雰囲気を見せておきながら、最後の最後でバッドエンディングを持ってくるという段差の付け方もよく計算されており、本当によくできた映画だと感心しました。 問題に感じたのは、観客に実話だと勘違いさせるような演出がたまにあったこと。本作は「ゲイのカップルが障害児を育てたらしい」という都市伝説に着想を得た完全なるフィクションなのですが、さほど必然性がないのに舞台を70年代に設定したことや、妙にリアルな法廷劇から、実話であると錯覚してしまう人が少なからず出てしまうのではないかと思います。しかし、観客の人生観にまで影響を与えかねない映画だからこそ、実話か創作かの線引きをきっちりしておくことが、作り手側の良識ではないかと思います。本作は出来が良いだけに、その点は特に気になりました。
[DVD(吹替)] 7点(2015-05-05 01:28:50)
306.  ブルージャスミン 《ネタバレ》 
優雅な生活を失った元セレブがお金では測れない価値(家族の愛情、友情、貧しいながらも人間味ある生活etc…)に目覚め、人間的に成長してめでたし、めでたし。こんな話だろうと思って見始めたのですが、これがまったく違う内容で驚きました。。。 まず秀逸なのが主人公の設定。彼女は里子として育てられており、生粋のセレブではありません。底辺の惨めさを知っているがゆえに、二度と貧乏には戻りたくないという思いが強く、さらには、自分は自堕落な貧乏人達とは違うのだという強い自意識が、転落後の彼女から柔軟性を奪っています。これは理詰めで考えられたうまい設定だと思いました。また、話の構成も優れています。本作は時系列がシャッフルされ、転落前と転落後が交互に描かれるのですが、最後の最後に明かされる転落の真相により、軽いコメディだと思って見ていたこのドラマが、実は底抜けに暗い愛憎劇だったことが判明するのです。同時に、主人公は自意識過剰でちょっと迷惑な人どころではなく、本物のキ○ガイだったことに気付かされてゾっとするのです。これは怖かったですねぇ。クライマックスも一切の救いなし。良くも悪くも無神経な妹は復縁した彼氏との新生活に夢中で姉のことなど眼中にはないし、ようやく再会できた息子は「頼むから自分に近寄ってくれるな」と言って主人公を突き放します。この先、彼女は野垂れ死ぬしかないのです。なんという暗い結末。。。 上記のような緻密さの一方で、どうでもいい部分についてはかなり荒っぽい端折り方がなされていることも興味深かったです。「信号待ちをしている時にたまたま見かけた」「街で偶然に再会した」、こんな感じでガシガシと話が進められていき、映画全体をコンパクトに収めるための取捨選択が適切になされているのです。こういう潔さはベテラン監督ならでは。
[DVD(吹替)] 7点(2015-04-23 01:25:58)(良:1票)
307.  ホビット/決戦のゆくえ 《ネタバレ》 
IMAX-3Dにて鑑賞。HFR上映は人生初なのですが、映画館とは思えないほどのくっきり画像、カメラが動いても全然ブレない動画対応力の恩恵は凄かったです。通常上映とは比較にならないほど3D効果を高く感じるし、画面の動きがスムーズで目が疲れないので非常に快適。その反面、画がくっきりしすぎで大スクリーン特有のざらつきがなく、テレビを見ているようなノッペリ感があったことはちょっと残念でした。。。 内容は、冒頭からフルスロットル。前作では城の中を這い回っていたスマウグ様がついに空を飛び、街を焼き付くすというテンションの高い見せ場からスタートします。通常の映画であればクライマックス級の見せ場でお腹いっぱいになったところで、” The Battle of the Five Armies”のタイトル表示。このレベルの見せ場が、本作では本編開始前の肩慣らしだったのかと呆気にとられました。その後は見せ場に次ぐ見せ場。ず~っと戦ってます。シリーズを通じて、偉そうな事を言うだけで大した活躍を見せてこなかったガラドリエル、エルロンド、サルマンの3人がついに参戦し、尋常ではない実力を見せ付ける場面など、ファンサービスもきっちり心得ています。。。 そして、ついに始まるオーク軍との全面戦争のテンションの高さも相変わらずで、ドワーフ軍が陣形を整える場面のかっこよさ、エルフ軍が戦闘に参加するタイミングの絶妙さなど、ピージャク演出も絶好調。対するオーク軍も、『砂の惑星』みたいな巨大ワームを投入したり、ガンキャノンのような格好で投石器を撃つトロルが登場したりと、止むことのない創意工夫には頭の下がる思いがしました。。。 しかし、途中からピージャク演出も息切れを起こし、終盤の戦闘は単調になってしまいます。さらには、困った時の大鷲投入という本シリーズの悪癖は今回も健在。オークの第1軍と第2軍の挟み撃ちに遭って絶体絶命というところで、大鷲の群れが飛んできて敵の第2軍をあっという間に蹴散らしてしまうという世にもあんまりな展開にはコケそうになりました。キャラクターの戦力描写も不自然で、前作まではオークの小集団からコソコソ逃げ回っていたドワーフ達が、今回だけは完全武装の上に数でも圧倒するオーク軍を無双状態でなぎ倒すという光景には目を疑いました。なぜ、旅のはじまりからその実力を出さなかったんだと。
[映画館(字幕)] 7点(2014-12-14 00:49:27)(良:1票)
308.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
新兵が補充されてから経験する地獄の一日という、デビッド・エアーの代表作『トレーニング・デイ』と同様の構造をとり、主人公は『プライベート・ライアン』のアパム二等兵を彷彿とさせる文系キャラ。映画の土台部分は凡庸であり、そこに際立ったものはないのですが、本作はディティールの面で大きな成功を納めています。実物のティーガーを走らせるという映画史上初の試みを成功させただけでなく、ティーガーとシャーマンの戦力差をはっきり描写できたという点でも感心しました。分厚い装甲と圧倒的な火力、シャーマン3輌を相手にしても有利に戦いを進めるバケモノとしてティーガーが描かれており、そのインパクトは『プライベート・ライアン』をも凌駕しています。。。 戦場の描写もかつてないものでした。ベトナム戦争以降の戦争とは違い、第二次世界大戦は悪の帝国を倒した正義の戦争としてアメリカ国内では位置づけられてきましたが、実際には第二次世界大戦だって地獄でした。ただ、テレビ中継がない時代だったため、本当に酷い部分を一般国民に見せずに済んでいただけのこと。本作は、その”本当に酷い部分”を容赦なく観客に突きつけてきます。それはスピルバーグの残酷絵巻とはまた違うアプローチであり、兵士達のモラルが崩壊していたことを克明に描写します。捕虜となったドイツ兵をヘラヘラと笑いながらいたぶり、ドイツの一般国民に対して粗暴に振舞う。生きるか死ぬかの戦場に適応するためには、兵士たちは他者への共感を捨てねばならなかったことの結果がこうした所業なのですが、これら一連の描写には残酷絵巻を見るよりも辛いものがありました。。。 以上、中盤までの完成度は素晴らしく、このままいけば戦争映画史上屈指の傑作になるのではと期待したのですが、ラストの戦闘で見事にコケました。部下の命を何よりも大事にしていたウォーダディが、その部下を巻き込んでまで負け戦に挑もうとした理由がまず分からないし、いざ戦闘に入っても戦術がメチャクチャ。戦車に篭城するという作戦なのに、車外に体を出して機関銃をバリバリ撃つとかおかしいでしょ。弾薬は事前に車内に入れておくべきだし。ドイツ軍もドイツ軍で、兵士を大勢殺された後になってようやく対戦車砲を出してくるという謎のタイミング。ドイツ兵はバタバタと死ぬのに、主人公たちにはほとんど弾が当たらないというご都合主義もカックンでした。
[映画館(字幕)] 7点(2014-11-30 02:25:40)
309.  地獄の黙示録
戦場に適応しまくった歴戦の勇者が、一方で戦争への適正を持たない新兵達を引き連れて理不尽なミッションを遂行する物語。どっかで見たことあるなぁと思ったら、スピルバーグの『プライベート・ライアン』とまったく同じ話でした。ジョン・ミリアスによるオリジナル脚本、及びコッポラの当初の構想では、見せ場が連続する『プライベート・ライアン』ばりの大戦争映画になるはずだった本作ですが、あらゆることがスケジュール通りに進まず、撮りたいものが撮れないという状況から、哲学性を前面に押し出したこの形に落ち着いたのだとか。。。 メイキングドキュメンタリー『ハート・オブ・ダークネス』を見れば現場の混乱ぶりがよく分かるのですが、コッポラはこの状況でよくぞ最後までやりきったなと感心させられます。また、完成した映画にはそうした混乱がはっきりと反映されているのですが、それでも作品として一定の形に収められているという点に、コッポラの天才性が表れています。現場も映画も完全に破綻しているのです。ぶっ壊れて、どうやってもまとまらないところにまで追い込まれているのに、その破綻自体を映画の肥やしにしてしまっているという神業。スケジュール通りに撮られていれば出来の良い戦争映画止まりだったかもしれない本作に、芸術作品として数百年に及ぶであろう寿命を与えたものは、この破綻だったと思います。。。 ただ、これが面白いかと言われれば、それはまた別の話。凄い映画ではあるが、決して面白い映画ではありません。序盤のキルゴアパートをピークとし、その後どんどん盛り下がっていくという観客の生理に反した歪な構成。作品の要であるはずのカーツ登場以降の地獄のようなつまらなさ。役の存在意義がわからないのにやたら目立つデニス・ホッパーと、ウィラードの前任者という重要な役柄なのに完全に忘れ去られたスコット・グレン(当初の構想ではラスボス)。結局オチが付かず、なんとなくの雰囲気で逃げたラスト。見ていて眠くなりましたね。
[ブルーレイ(字幕)] 7点(2014-11-24 02:30:00)(良:1票)
310.  プリズナーズ
物語はいろんな方向へと広がっていくものの、最後の最後でピタリと整合するという、実に頭の良い脚本となっています。とはいえ、論理的な整合性とリアリティとはまた違うことで、よくよく考えてみればかなり無茶な話ではあるのですが、その辺は監督と俳優陣の力量でうまく誤魔化されています。少なくとも鑑賞中には余計な疑問を持たずに済んだという点に、監督の見事な手腕が集約されています。。。 演技面では、ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホールが各々得意とする役柄を演じているのですが、ひたすら泥臭いヒュー父さんが、優秀ではあるが飄々とした個性を持つジェイク刑事を生理的に受け付けず、それが警察全体への不信感にまで発展してあの凶行へと繋がっていくという一連の動線の作り方は素晴らしいと感じました。その俳優のパブリックイメージを利用して、ドラマ全体の説得力を高めているのです。他方、彼らとは対照的な役割を果たしているのがポール・ダノとメリッサ・レオ。あらゆる役柄を演じることのできる器用な二人は、善なのか悪なのか、被害者なのか加害者なのか分からない微妙な演技で観客を翻弄し続けます。こちらも良いキャスティングでした。
[DVD(吹替)] 7点(2014-10-04 23:40:19)
311.  ローン・サバイバー 《ネタバレ》 
海兵隊のかっこよさ、勇敢さを称える一方で、対するタリバンは地元住民からも嫌われる絶対悪として描かれているという、今時珍しいほどのアメリカ万歳映画でした。アフガン紛争開始から10年以上経つにも関わらず、いまだにタリバンが勢力を維持できているという事実こそが、彼らにも地元民からの一定の支持があることの証明になっているわけですが、そんな理屈などハリウッドの人々には大した問題ではなかったようです。『猿の惑星/新世紀』のような含蓄に富んだ戦争映画が作られる一方で、本作のような脳筋映画が堂々と作り出されているという点に、ハリウッドの幅広さを感じました。。。 ただし、政治的にはマズイ姿勢であっても、アクション映画としてはあながち間違っていないという点が、本作の面白いところ。中立性に配慮した戦争映画というものはかなりの確率でつまらなくなるのですが、一方で勧善懲悪という単純な図式にまで落とし込まれた本作には、どストレートな興奮が宿っています。この物語を彩るビジュアルの迫力も素晴らしく、アレな監督として知られていたピーター・バーグが、本作ではとんでもない実力を披露しています。戦闘シーンの迫力、見せ場としての面白さ、「実際の戦争はこんな風だったんだろう」と観客に信じ込ませるだけの説得力、そのすべてにおいて満点に近い見せ場を作り出せており、近代戦を描いた映画としては、『ブラックホーク・ダウン』に比肩するほどの完成度だと言えます。。。 俳優陣は、ベン・フォスターとエミール・ハーシュがほぼ完璧に役柄にハマっていた一方で、テイラー・キッチュの空気ぶりと、ウォルバーグの浮きっぷりが気になりました。キッチュは部隊のリーダー役であり、戦闘の発端となる羊飼いの処遇についての決断を下したり、戦闘開始後には自己犠牲を買って出たりと、なかなか美味しいパートを担っているのですが、にも関わらず退場後には物凄い勢いでその存在を忘れてしまいます。ウォルバーグは、単純に歳食いすぎで違和感しかありませんでした。リーダー役かと思っていたら、まさかの平隊員役。俳優としてのキャリアが違いすぎるフォスターやハーシュとバカ話をしている様がとても不自然でした。あと、『ブラックホーク・ダウン』でもシールズ隊員をやっていたエリック・バナが、本作では作戦責任者役で出ており、「この人も出世したんだなぁ」としみじみしました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-09-29 00:00:39)
312.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 
今やスタローンやセガールをも超え世界一の暴虐オヤジとなったリーアム・ニーソンが、アクション野郎・ジョエル・シルヴァーとのタッグで放つサスペンスアクション。1996年にシルヴァーが製作した『エグゼクティブ・デシジョン』とよく似たプロットなのですが、その後18年の間に同種の映画がいくつも作られたこともあって、脚本上の仕掛けはかなり高度に進化しています。次の展開はまるで予測できないし、犯人を当てることもほぼ不可能。それでいて、「そのオチはズルい!」と思わせるようなインチキもしておらず、なかなかよく練られた脚本だと思います。また、時に過剰となるシルヴァーのサービス精神も、本作では吉と出ています。ひとつのネタ、ひとつのシチュエーションに執着しすぎず目まぐるしく状況を変えていくことにより、観客に余計な推理をさせる時間を与えていないのです。ラストに思わぬスペクタクルがあったことも好印象でした。。。 さらに良かったのは、この企画にアクションもやれる演技派・ニーソンが加わったことであり、企画と俳優との間で見事な化学反応が起こっています。映画を振り返れば、主に事態を悪化させていたのは主人公の過剰な対応だったわけですが、ニーソンによる演技の説得力のおかげで、そのアラがほとんど目立っていません。また、乗客やパイロットから疑わしいと思われていた主人公が状況を反転させ、乗客を味方に付けるに至った演説場面でのニーソンの演技は非常に素晴らしく、脚本の要となる部分を演技で補強できているという点には感心させられました。。。 難を言えば、真犯人たちの動機や目的がさっぱり理解不能だったことでしょうか。また、彼らは爆破を控えた飛行機からパラシュートで脱出しようとしていましたが、戦闘機に追尾されている状況でパラシュート降下すれば、着地点で逮捕されて終わりでしょ。そもそも、旅客機にパラシュート降下可能なドアってありましたっけ?真犯人たちの言動にはまったく説得力がありませんでした。あと、爆発までの残り時間がデカデカと表示される時限爆弾はもうやめにしませんか?あんなバカみたいな見た目の爆弾を作る犯罪者やテロリストなんていないでしょ。
[映画館(字幕)] 7点(2014-09-22 01:17:25)(笑:1票)
313.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
IMAX-3Dにて鑑賞。舞台の高さや広さを活かしたアクションや、無数の戦闘機が入り乱れるドッグファイト等、3D効果を狙った見せ場が多く、3D料金を払う価値が充分にある映画でした。。。 この映画の構成は抜群に優れており、マーベル・シネマティック・ユニバースに属する現行10作品の中では、もっともよくまとまった作品だと思います。それぞれに複雑なバックボーンを持つヒーローが5人もいる。彼らは根っからの善人ではないため戦いに参加するだけの動機を与えてやる必要があるし、敵組織も味方となる勢力も一枚岩ではない。おまけに、どちらの勢力にも属さない謎の宇宙人までが登場する始末。これだけ複雑な情報を観客に伝えながら、抜群のタイミングで見せ場を入れつつ、主人公たちの友情物語も無難にまとめる。よくぞこれを2時間程度でやりきったものだと感心しました。。。 ジェームズ・ガンは『スクービードゥー』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』の脚本を手掛けた経験はあるものの、ハリウッド大作の監督を務めるのは本作が初。直球勝負の純粋娯楽作を撮った経験のない監督が本作をどう味付けするのかには関心があったのですが、クライマックスに向けて舞台を大きくしていくという見せ場の配分や、ピンチの中で味方の救援が駆けつけるタイミングの絶妙さなど、恐ろしく熟れた仕事ぶりを見せています。これだけ器用にやれる監督はそうはいません。。。 とはいえ、このバランスの良さが時にアダともなっています。善人ではなかった5人が正義に目覚めたり、友情を大切にしたりといった展開はハリウッドの王道すぎて、ドラマとしての面白みに欠けます。また、「毒を持って毒を制す」がコンセプトの企画ながら、主人公たちの悪の面が強調されていないことにも不満を覚えました。無味無臭の標準的な娯楽作に徹しすぎているのです。前作『スーパー!』ではヒーローものをバラバラに解体し、物凄く気味の悪い形で観客に提示してみせたジェームズ・ガンが、ここまで大人しいものを撮ってどうするんだという気にもなります。続編こそは、もっとヤンチャで、もっと挑発的なものを期待します。
[映画館(字幕)] 7点(2014-09-19 00:22:10)(良:1票)
314.  ラッシュ/プライドと友情 《ネタバレ》 
仲間とワイワイやりながら戦果を挙げていく天才タイプの戦士と、人を寄せ付けないほど技術や鍛錬にこだわる職人タイプの戦士(たいてい良家の出身)。矢吹丈vs力石徹、孫悟空vsベジータ、纏流子vs鬼龍院皐月、マーベリックvsアイスマンetc…古今東西、非常にありがちな構図なのですが、この陳腐とも言える素材を、本作は驚くほど面白いドラマとしてまとめています。カッコいいのはニキ・ラウダの生き方だが、共感できるのは凡人の感覚を残したジェームス・ハントの方であり、観客がどちらの人物にも感情移入できるよう調整された脚本が絶品です。本作の脚本を手掛けたのはピーター・モーガン。現代史における大事件にフォーカスし、その渦中にいた人々が当時何を感じていたのかを推測しながらドラマを組み立てることを得意とする脚本家であり、その手法には「映画としては面白いが、歴史の捏造に繋がるのではないか」との批判もあるのですが、本作ではニキ・ラウダが存命中だったこともあり、余計な批判を受けずに済んだようです。。。 ロン・ハワードによる演出も絶好調で、両主人公に対してほぼ均等に見せ場を与えて二つのドラマを丁寧に描写しつつも、上映時間を120分程度に収めてしまうという見事なバランス感覚を持った娯楽作として仕上げています。力点の見極め方が実に素晴らしいのです。歴史的に確定した事実を描く作品である以上、「レースでどちらが勝つか」にこだわっても仕方のない題材であるため、そうした対決の要素はほとんど切り捨てています。レースシーンの迫力は素晴らしいものの、そこを追いかけ過ぎていないのです。監督があくまで重視したのは正反対の生き方をする男たちの仕事観や人生観を描くことであり、邦題の「プライドと友情」という要素すら、それほど重くは扱われていません。そのためにスポーツ映画としてはやや弱くなっているのですが、男の生きざまを描いた作品としては、掛け値なしの傑作として仕上がっています。この辺りの大胆な取捨選択は、本当に見事だったと思います。また、KinKi Kidsによる吹替も悪くなかったですよ。特に堂本光一は、プロの声優と遜色ないほどうまかったです。 
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-08-23 00:39:19)(良:1票)
315.  MUD -マッド- 《ネタバレ》 
本作の紹介にあたっては『スタンド・バイ・ミー』がしばしば引き合いに出されますが、その含蓄の深さは名作『スタンド~』をも凌駕しています。まず、少年のひと夏の冒険物語があって、その周りに男女関係の難しさへの考察があって、さらにその外側には普遍的な人生哲学がある。噛めば噛むほど味の出る、多層構造の素晴らしいドラマです。。。 主人公・エリスの両親は離婚寸前の状態にあり、もし離婚すれば、住み慣れた家は取り壊されてしまう。傍から見ればボロ家であっても、エリスにとっては思い出の詰まった大事な我が家です。また、マッドの求めに応じてエリスは他人の敷地に放置されていたボートのエンジンを盗み出します。エリスにとっては盗んでも問題のないガラクタにしか見えなかったそのエンジンも、所有者にとっては大切な生活の糧であったことが後に判明します。人は、それぞれ大事なものを抱えて生きており、それは他人の価値観では測りきれない場合もあるのです。。。 しかし、大事なものに執着し続けると、その人は壊れてしまう。過去を捨てられなかったトムおじさんは変人となり、マッドは人殺しになりました。また、マッドへの復讐に固執しすぎた被害者の父親は、もう一人の息子までを失ってしまいました。人生を進めるためには、何かを捨てねばならないのです。ラスト、エリスは住み慣れた家の取り壊しを見届け、親友と父に別れを告げて、母の待つ知らない土地へと旅立ちます。エリスにとってはまったく不本意な展開ですが、到着した新居では近所の美少女に挨拶されて、ちょいとテンションが上がります。愛着ある古いものを捨てることは辛くて苦しいが、その先に待つ変化には良いことだって含まれているのです。。。 以上の趣旨は素晴らしいのですが、前作『テイク・シェルター』と同じく、この監督さんの演出はひとつひとつのシーンが微妙に長いため、全体としては間延びして感じられるのが難点でした。あと、絶対何かやらかすだろうと思ってた悪人顔のマイケル・シャノンが、最後まで何もしなかったという点にも、妙にガッカリさせられました笑。「人生とは何かを捨てることだ」というテーマの本作において、川底のゴミを拾うことで生計を立てる彼の役どころには何らかの意味があると思ったんですけどね。そして最後に、TSUTAYA傘下のアーススターエンターテイメントによるDVDの画質・音質は何とかならんもんですかね。 
[DVD(吹替)] 7点(2014-08-06 19:58:06)(良:1票)
316.  アメリカン・ハッスル 《ネタバレ》 
俳優達にオスカーを獲らせまくってるデヴィッド・O・ラッセル、本作でも俳優をうまく使いこなしています。精悍なイメージの強いクリスチャン・ベールをぶくぶくに太らせ、おまけにハゲ頭全開という衝撃的な冒頭で一気に観客の心を掴み、その後は華も実力もある俳優達を続々と登場させて、まったく目を飽きさせません。普通に考えれば、市長役はクリスチャン・ベール、詐欺師役はブラッドリー・クーパー、FBI捜査官はジェレミー・レナーだろと思うところですが、各俳優の得意とする役どころを微妙に外してきているのが本作のミソ。汚職政治家が人間的には物凄く良い奴だったり、詐欺師が良心の呵責に苦しんだり、ハミだし刑事を気取るFBI捜査官がお母さんと同居中だったりと、単純な善悪に縛られない人間の二面性が本作の大きな構成要素となっているため、各俳優のパブリックイメージを裏切ったキャスティングが見事に功を奏しているのです。この辺りのレイアウトのうまさには驚かされました。特にクリスチャン・ベールはハマり役。登場時には「なんだ、この汚いオヤジは」と思ったものの、2時間眺めているうちに、女性にモテて当然の良い男に見えてきてしまうのです。本来は二枚目というベールの個性が、抜群のサジ加減でキャラクターに反映されています。。。 また、突然のデ・ニーロ投入によって映画の空気をガラっと変えるという演出も素晴らしいと感じました。前半部分はややコミカルだったものの、デ・ニーロ演じるマフィアのボスの登場により、少しでも判断を誤れば殺されるという緊迫感あるサスペンスへと豹変するのです。ここ10年ほどは仕事を選ばなくなり、その存在にもはや何の有り難みも感じなくなっていた御大ですが、本作のように効果的な使い方をすれば、まだまだ光るものはあるようです。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-08-06 19:56:53)(良:2票)
317.  キック・アス ジャスティス・フォーエバー 《ネタバレ》 
前作はジャンル映画の傑作でした。子供が悪党を殺して回るというアメコミものの異常性を炙り出してジャンルの破壊活動を行いつつも、クライマックスでは空前のカタルシスを生み出してヒーローものとして王道の着地点に降り立つという離れ業をやってのけたのですから。第一作で完璧にまとまっていた話の続きを作るという点については期待よりも不安が大きかったのですが、案の定、本作の前半部分はグダグダでした。。。 前作において登場人物達の年齢ははっきりと言及されていませんでしたが、キックアスとレッドミスト(続編ではマザー・ファッカーと改名)は高校生、ヒットガールは小学生という設定だったように見受けました。一方、続編ではキックアスとヒットガールが同じ高校で勉強しており、成長したクロエ・グレース・モレッツに合わせてキャラクターの設定が操作されたらしい点にまず萎えました。前作でマフィアを壊滅させ、ヒーローとして覚醒したはずのキックアスが再び弱々しい存在に戻っていたり、前作のラストでキックアスへの復讐を誓ったはずのマザー・ファッカーが、本作でもキックアスへの復讐心を抱くに至る描写を加えられたりと、前作との重複が目立つ点もマイナスです。ストライプス大佐をはじめとした新キャラ達の印象も薄く、前半は二番煎じ以下の酷い出来でした。。。 しかし、マザー・ファッカーによるキックアスへの復讐が本格化する後半部分になると、映画は突如として息を吹き返します。ナイト・ビッチがレイプされたり、キックアスの父親が惨い殺され方をしたりと、物語は凄惨を極めます。ここに来て映画はアメコミものという領域を離れ、コテコテのバイオレンス映画と化すのです。マザーロシアが警官隊を返り討ちに遭わせる場面や、ヒットガールが囚われた主人公を救出するカーアクションなど、見せ場の出来も絶好調。前作と比較すると落ちる出来ではあるものの、アクション映画としては水準以上の作品だと感じました。
[ブルーレイ(吹替)] 7点(2014-08-04 01:22:13)
318.  ムカデ人間2
『1』のレビューでは、映画としての完成度の高さは評価するが、エログロへのこだわりが足りないと書きましたが、『2』は一転して容赦のないエログロ祭りとなっております。これはもはや、ホラー映画界の『エイリアン2』。文字通り出血大サービス状態であり、「いくらホラー映画でも、これ以上やってはいかんだろ」という壁を平気で越えてきます。当方、ホラー映画への免疫を持っているつもりですが、それでも本作は見てられませんでした。。。 『1』と『2』を両方見れば、『1』製作時点ですでに『2』の構想があったことは明らか。描写を控え目にした『1』で幅広い客層に本シリーズを周知させ、そして『2』でネジの飛びまくったスプラッターを見せる。この豹変ぶりには度肝を抜かれたし、トム・シックスなる監督の周到さにも感心させられました。イベントの仕掛け人としてはピカ一ではないでしょうか。また、『1』とはまったく違う作風ながら相変わらず映画のクォリティは高く、この監督の引き出しの多さにも驚かされました。モノクロ映像には『イレイザーヘッド』を思わせる何とも言えない薄気味の悪さがあって、そこにあるのは、ただスプラッターを見せるだけの単純な芸当ではありません。。。 作風の転換の一方で、無名俳優でキャストを固めることで不気味さを高めるという『1』のポリシーは本作にも引き継がれています。誰がどんな目に遭わされるのかわからないというサスペンスは健在だし、無名俳優から渾身の演技を引き出すという点では、本作は引き続き成功を収めています。そして本作最大の功績は、ハゲ・チビ・デブの三拍子揃った怪人マーティンを生み出したこと。「この俳優は、今までどこで何をしていたんだ」と思わず気になってしまうほどのアクの強さですが、『1』のハイター博士とはまた違ったベクトルで強力な悪役を生み出し、映画への出演経験のない無名俳優にここまでのインパクトを与えられる監督はそうそういません。現在製作中の『3』はホラーを離れ、政治的性質を帯びるとのことですが、もし『3』が監督の意図する方向性で成功を収めることができれば、本シリーズはカルト映画史上に残るだろうと思います。。。 絶賛の嵐となってしまいましたが、10年後には、トム・シックスは誰もが知る有名監督になっているのではないかと、私は結構本気で思っています。第2のサム・ライミはこいつで決まりです。
[DVD(吹替)] 7点(2014-07-22 22:36:40)(良:1票)
319.  ギフト(2000)
サム・ライミほど、自身のキャリア形成に熱心な監督はいないと言われています。特段ホラー映画が好きというわけでもないが、低予算でも観客から注目される可能性が高いということでデビュー作に『死霊のはらわた』をチョイス。同作のシリーズ化により10年かけて世界中の映画オタクに名を売ったところで、一流俳優がズラリと顔を揃えた『クィック&デッド』に挑戦。しかし、この挑戦が不発と見るや、『シンプル・プラン』を撮って「私には映画監督としての基礎的スキルがあります。決してキワモノ監督ではありません」ということをアピール。そして、ハリウッドへの再度の橋渡しのため、これまた実力派俳優が名を連ねた本作を作り上げ、『スパイダーマン』へと繋げたわけです。。。 本作は、ビリー・ボブ・ソーントンが無名時代に書いた脚本がベースとなっていますが、この脚本は超能力者の悲劇を中心に、田舎町での殺人事件や、家庭内暴力、幼児虐待といった複数のテーマがギューギューに詰め込まれており、もはや闇鍋状態。サム・ライミはこれを驚くほど丁寧に整理し、2時間以内で完結するコンパクトなドラマとしてまとめています。あまりに美しく片付けすぎて、主人公自身の家庭の物語や、DV夫に悩むDQNねえちゃんの話などは途中でどっかに行ってしまいますが、語り口が極めて洗練されているので、そのような欠点も鑑賞中には大して気になりません。人間ドラマとサスペンスが絶妙な比率で混ぜ合わされているし、音でビビらせるというホラー演出も随所で効果をあげており、2時間はきっちり楽しめる映画として仕上がっています。。。 ハリウッド進出して間もない頃のケイト・ブランシェットを中心とし、ジョヴァンニ・リビシとヒラリー・スワンクという実力派に脇を固めさせ、キアヌ・リーブスとケイティ・ホームズがそこに華を添える。完璧に計算されたキャスティングです。ブランシェットは後の大女優の風格と技術をこの時点で見せつけているし、リビシはすべてが良すぎます。こんなメンツに囲まれたキアヌはちょいと可哀そうですが、新境地開拓に熱心な姿には好感が持てました。『スパイダーマン』の編集長やメルおばさんも顔を出し、俳優を見ているだけでも楽しめる映画となっています。
[DVD(吹替)] 7点(2014-07-11 01:18:18)(良:2票)
320.  ノア 約束の舟 《ネタバレ》 
IMAXにて鑑賞。多くの大作映画の監督候補として名前が挙がりながらも降板や企画自体の頓挫が続き、今の今まで大作を手掛けることのなかったダーレン・アロノフスキー。そんな彼がついに挑んだ1億ドルバジェットの超大作ということでその出来には関心があったのですが、前半の堂々たるスペクタクルには目を見張りました。ハイライトである合戦シーンの熱量と勢いは特に素晴らしく、この監督はもっと多くの娯楽作を撮るべきだと思います。。。 問題となるのは後半部分。世界が飲み込まれた後の物語ですが、ここから映画は急激におかしくなっていきます。いや、前半からその兆候はありました。「人類が滅ぶ→この世から女がいなくなる→俺は一生童貞」ということに耐えられなくなったノアの次男・ハムが「彼女が欲しい」と言い出した辺りから違和感を覚えてはいたのですが、それでも、上記の通りの素晴らしいスペクタクルにより、その違和感はかき消されていました。しかし、船内での人間ドラマが中心にくる後半部分になると、前半で感じていた「この映画、なんかおかしいぞ」という感覚が、確信へと変わっていきます。洪水初日、溺れる何百万人の断末魔の叫びを聞きながらの食事という世界一飯が不味いシチュエーションにおいて、「お父さん、あの人たちを助けてあげませんか」という家族からのお願いをキッパリと断り、人類は滅びねばならないという話を長々と始めるノア。長男・セムの嫁さんの妊娠を聞き、怒り狂うノア。産まれてきた子供は殺すと言い出すノア。家族から距離を置き、アル中になるノア。完璧にキ○ガイとして描かれています。後半は、キ○ガイ親父に振り回される家族の物語という、いつものアロノフスキー映画になるのですが、この点をどう受け止めるかが本作の評価の分かれ目になるでしょう。私は面白い崩し方だと感じましたが。。。 もう一つ面白いと感じたのは監督の宗教観で、仏教的な輪廻転生を描いた『ファウンテン』を過去に撮りながら、今回は旧約聖書の物語を撮る。さらには、本作において進化論を匂わせる描写を何気なく挿入したり、堕落した人類の象徴であるはずのトバル・カインをやたらカッコよく描いていたりと、この監督の節操のなさには笑ってしまいます。宗教を、イカれたイメージをいくらでも挿入できる便利な素材としてしか認識しておらず、本人には信仰心の欠片もないのではないかと疑ってしまいます。
[映画館(字幕)] 7点(2014-06-15 02:34:10)(良:1票)
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