361. ショーシャンクの空に
《ネタバレ》 最初に見たときは、ナレーションがしつこいとかところどころやたら都合が良いとかいう点が気になっていました。しかし、この映画ってキリスト作品なんだな、と分かってからは、気にならなくなりました。レッドは福音者の立場なのですから、語り続けないといけないのですね。また、理不尽な目に遭わされ続けながら最後に理想郷に到達するアンディは、神の子だというわけです。●と思っていたのですが、さらに再見して、もしかしてアンディってイエスではなく、むしろユダの隠喩では?と思うようになりました。冒頭で所長は自身が神の使いであるかのごとき宣言をし、所長室にも聖書の言葉を飾っていますが、主人公は(中身や行動は悪徳とはいえ)その所長に報復し、聖書をくり抜いて脱獄用具も隠しています。屋上のシーンは、囚人の数は12人であり、それに含まれるアンディはイエスではありえません。そしてアンディは会計が職業ですが、ユダは12使徒の中で金入れを預かる会計担当でした。●そして、そんなこととは別次元で、作品を美しくまとめているのが撮影と美術の腕であり、特に、役者の表情や人物配置や全体光景まできっちり撮りきっているカメラの技術は特筆すべきといえます。また、何気ないシーンでのエキストラの動きが美しく、そこだけでぞくぞくします。 [映画館(字幕)] 7点(2003-12-31 02:51:54)(笑:1票) (良:2票) |
362. ハイスクール白書/優等生ギャルに気をつけろ!
「高校の生徒会長選」という、常人なら映画の主題にすることなど考えもしないようなことをここまで真面目に仰々しく取り立てるセンスが素晴らしい。しかしその中にも、皮肉と示唆を織り交ぜ、人生をも考えさせるほろ苦い裏青春映画にまで作品を高めています。これであのしつこいナレーションを5分の1くらいに削って、邦題をきちんと考えておいてくれればねえ・・・。 [DVD(字幕)] 7点(2003-12-29 20:58:33) |
363. ボーイズ・ドント・クライ
話の展開の唐突さ、心理描写の不足、障害自体に対する突っ込みの甘さなど、技術的な穴はいろいろあります。しかし、ラストも含めて、作品としてのインパクトは絶大なものがあります。主人公を、聖人君子としてではなく、むしろすぐに遊び回りたがる困った人物として描いているのが、逆に説得力を強めています。 [DVD(字幕)] 7点(2003-12-28 02:09:05)(良:1票) |
364. 花嫁はエイリアン
《ネタバレ》 後で思い出すだけでも幸せな気分になってくるほどの、本当に楽しいラブ・コメディです。あのキスシーンやベッドシーンは、映画史上に残ってしかるべきでしょう(笑)。一方で、事故(?)のシーンなんて完全にお約束なんですけど、そういうのもこの種の作品には絶対に必要なのです。●実はジュリエット・ルイスの映画デビュー作としても重要。 [DVD(字幕)] 7点(2003-12-24 00:17:24)(良:1票) |
365. グリーンマイル
やっと分かった。これって、ポンテオ・ピラトとキリストの物語だったのね。映ってないシーンでも、確実に一番奥の独房にいる空気をじわっと感じさせるマイケル・クラーク・ダンカンの存在感が素晴らしい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2003-11-24 17:48:34) |
366. ファンダンゴ
《ネタバレ》 青春時期の、ふわふわと浮ついた感じ、現実逃避、無駄な熱さ、友情といった要素を的確に捉えきった好作品です。おそらく、年をとった人ほど感動できる作品でしょう。祭りの後のそこはかとない虚しさを感じさせるラストも良いです。 [DVD(字幕)] 7点(2003-11-06 01:55:17)(良:1票) |
367. 愛と哀しみの果て
重量感ずっしりのド級のメロドラマ。作品のほとんどは、主人公二人+道化的邪魔者の夫の3人がああだこうだとやりとりしているだけです。これで中途半端な内容だったら目も当てられないのですが、それをアフリカの大自然を徹底的に押し出してもっともらしく仰々しく創り上げてしまったのが凄い。一つの究極の作品でしょう。 [DVD(字幕)] 7点(2003-10-30 03:17:11) |
368. チョコレート(2001)
波乱も何もない淡々とした進行が、主人公2人の倦怠感、喪失感をそのまま表しているのが良い。だからこそ、2人の波長が共鳴していることが伝わってくる。恋に落ちているはずなのにハラハラもドキドキもありませんが、彼らの目には、世界はこのように映っているはずです。邦題も秀逸です。 [DVD(字幕)] 7点(2003-10-20 00:22:23) |
369. ミッドナイト・ラン
冒頭の5分間で、最小限の描写で必要な情報をすべて提示する手際の良さに恐れ入る。速すぎず遅すぎない全体のテンポ配分も絶妙。まさに職人芸を感じさせる映画。 [DVD(字幕)] 7点(2003-08-25 03:23:25) |
370. ザ・プロデューサー
制作者たちは作っていて嫌気がささなかったのだろうか、というくらい、人の心の負の部分を徹底して表現した映画(笑)。過去と現在が並行して進行し、ストーリーがもつれながら自然に冒頭に戻っていく、という構成が好みです。 7点(2003-08-20 02:56:16) |
371. ザ・フライ
《ネタバレ》 装置が開いたらいきなり蠅男登場!ではなく、徐々に崩壊が訪れるところは良かったです。砂糖とか筋肉とか何気ないところで変化を積み重ね、終盤に向けて加速し、最後もうだうだ引っ張らずばっさり終わらせるというテンポ配分も絶妙。ただし、最初の主人公はもっとまともな一般社会人の設定にした方が、後半の悲劇性が増したはず。あれではもともと蠅男の一歩手前です(・・・)。 [DVD(字幕)] 7点(2003-08-04 02:34:49) |
372. ヒート
《ネタバレ》 最初に見たときは、平坦で異様に長いという感想しかなかったのです。しかし、数回見て良さが分かりました。全体に特徴的なのは、「ちょっとした手がかりで瞬時に状況を判断して行動する」という演出が多用されていること。僅かな物音で仕事を中止するデニーロ。銀行前で車に乗る寸前、視界の端の動きで即座に銃撃に対応するヴァル・キルマー。アシュレイ・ジャッドの一瞬の手の動きだけですべてを察知するヴァル・キルマー。騒ぎの中で道端に止まっている車を見ただけで、デニーロの存在に勘づくパチーノ。そういった地道な(それでいて格好良い)積み重ねがあるからこそ、カフェ対決や街中の銃撃戦などのメインの場面も光ってきます。そうそう、港湾の倉庫地でデニーロの作戦を(そして実力も)看破するパチーノというのも忘れがたいですね。これこそがプロの闘いです。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2003-07-07 02:58:57) |
373. アマデウス
主演の2人の対比があまりにも強烈で、それだけでこの作品は成功しています。音楽の才能以外はすべてが駄目人間のモーツァルトが神に選ばれるという理不尽さ、そしてそれに対する葛藤と嫉妬に苛まれる健全な一般人のサリエリという主題が、冒頭から終幕までの全体から表現されています。ストーリーの流れはやや明確性を欠いているような気がしますが、そんなことはどうでもいいです。それにしても、モーツァルトの、日常生活でのアホ丸出しぶりと、オペラ指揮のときの神々しさのギャップは強烈でした。 7点(2003-07-07 02:57:08)(良:1票) |
374. ゴッドファーザー
《ネタバレ》 冷静に考えれば、内容的にはどうということもない話。マフィアがクーデター的な逆襲に遭って、二代目が才覚を発揮して無事に乗り切りました、というだけのことであるし、特段ひねった行動や作戦があるわけでもない。しかし、各キャラクターの徹底した作り込みと人格設定研究だけでこれだけのものが作れることを呈示したという点において、この作品は後続にとっての一つの模範とされるべきである。また、男優陣の猛者連が注目されがちであるが、その中において、自分の立ち位置をきちんと意識した演技を行ったダイアン・キートンとタリア・シャイアの紅2点の存在意義も認識されるべきだろう。 [映画館(字幕)] 7点(2003-06-15 22:49:35) |
375. アポロ13
それほど古くない時期の実話であり、記録の類も大量に残っているんだろうから、性質上、作り手としての創作の余地が少なく、むしろ映画の素材としては難しい対象となるはずなのだが、そんな制約された条件の中でも工夫してスリリングさを維持していると思う。それにしても、本来はトム・ハンクスと並んで当初からレギュラーメンバーという栄光のポジションだったにも関わらず、代役で出てきたケビン・ベーコンはもちろん、地上組のシニーズやエド・ハリスにも見せ場を全部持っていかれ、作中で何をしていたかまったく記憶に残っていないビル・パクストン・・・私はあなたが大好きだ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2003-05-25 00:03:25)(笑:1票) |
376. クルーシブル
《ネタバレ》 これまでに見たすべての映画の中で、一番救いがなく後味の悪い作品。脚本や美術関係の頑張りによって映画としての出来はいいというのが、かえってタチが悪い。また、わずかな動きですべてを表現するジョアン・アレンの演技が素晴らしく、それがさらに作品の不条理性を増幅しています。なお、この作品に描かれているようなことは、決して昔話ではなく、「現在の」日本の刑事裁判でも、原理としてはこれと大差のないことが実際に行われています。「アビゲイルの無実はなぜ疑わない!」というプロクターの台詞を、何人かの人に捧げたい。 [DVD(字幕)] 7点(2003-05-24 03:35:32) |
377. ランブリング・ローズ
純真で素直なのか間が抜けているだけなのか分からないローズの設定が面白い。また、ローズを取り巻く一家の人達が、それぞれ微妙に中心線からずれているのに、みんな愛すべき存在なのも面白い。つまり、単純な初恋物語ではないからいいのです。よく見ると、序盤のラブシーン(?)が後の重要な場面の伏線になっていたりとか、各場面がきちんと焦点を絞っていて無駄な部分がばっさり切られていたりとか、それぞれの台詞回しがほどよい程度に仰々しかったりとか、脚本も十分に練られています。映像も綺麗です。 [DVD(字幕)] 7点(2003-05-22 01:45:31)(良:1票) |
378. バック・トゥ・ザ・フューチャー
素材自体は極めて古典的で、むしろ一歩誤ったら陳腐にすらなりうるものであるが、ここまで面白い作品になった原因は、脚本の面白さに尽きる。1つ1つの場面設定、台詞に対する気遣いが十分であり、また至るところに小ネタが挿入されていて、観客を飽きさせない。また、速すぎず遅すぎず、ごく自然に盛り上がりながら終幕に至れるテンポも絶妙。エンターテインメント以外には要素のない作品ではあるが、ここまできっちりとやられたら、お見事です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2003-05-19 20:24:34)(良:1票) |
379. 恋は嵐のように
《ネタバレ》 危うくダサさの側に転びそうになりながら、ぎりぎり最後まで1本のラブロマンスとして成り立っています。よく見るとなかなかの名場面がいくつもありますし、ラストの大風の中でバルコニーの花嫁を見上げるシーンなどは、映像的にもインパクトがあります。また、最後のぎりぎりのところまで、どちらの結論になっても矛盾しないように考えて作ってあるのにも好感を持ちました。 [DVD(字幕)] 7点(2003-05-18 02:53:38) |
380. グラディエーター
よく見ると、馬車軍との対決でとっさに団結して危機を回避して勝利するところ以外、ドラマらしいドラマは何もないんだよね。しかし、一歩誤ったら巨大なハリボテになりそうな脚本の薄さを救っているのは、1つは、コンプレックス丸出しのウジウジ皇帝ぶりを見事に表現してみせたホアキン・フェニックスの巧演。もう1つは、皇帝姉のコニー・ニールセンという絶妙なキャスティング。適度に疲れた感じの微妙な色気と気品があって、この作品の人物設定にぴったりなのです。 [DVD(字幕)] 7点(2003-05-13 01:48:55) |