1. 首(2023)
《ネタバレ》 原作未読。日本人ならほぼ誰でも知っていると思われる戦国武将たちと本能寺の変のたけし流解釈だったわけですが、さまざまな説がある話だし男色も描かれているので見る人を選びそうですね。「なるべく情報を入れずに観よう」というタイプの方は面を食らうかも知れません。私はそのタイプなので「そうきたか」と思いましたがオッサンが乳繰り合う絵面は見苦しかったな。有名所を使いまくってるしアドリブと思わせるシーンも多くカメラワークや演出もコントみたいなので余計滑稽にも見えた。なので信長の狂気っぷりも凄味を感じないしイマイチ弱かった気がする。あの最後は蘭丸に恋い焦がれていた弥助みたいな図式があれば良かった気もしますが面白い解釈だなと思いました。史実では消息一切不明ですけど不思議な存在でしたね弥助。 たけし秀吉は年を取り過ぎだし、両脇に手下を侍らせて陣取って『たけし城』みたいな緩い演技のボケツッコミのやり取りでコントみたいだったのが残念。たけしは良いと思ってるんでしょうけどこの手の演出は賛否両論でしょうね。よく関係者から「出演してくれと頼まれる」と語ってますが、もう主要キャラは厳しいし初期のシャマラン程度にモブキャラで良いんじゃないかなと思いました。 映像はキレイでロケーションが抜群だったし衣装デザインや美術は凄く良かったけど、そういうとこが気になりましたね。実在した戦国武将モノはそれぞれに思い入れのある人も多いでしょうし難しいですね。 [映画館(邦画)] 5点(2023-11-29 22:41:59) |
2. 翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜
《ネタバレ》 一言でいえば欲をかきすぎたな、と。原作は作者の魔夜峰央が転居した先の埼玉を独特のセンスでおちょくった作品でしたが、東京を頂点として関東のパワーバランスを上手く描いていたその原作を上手く料理し膨らませた前作と比べたらだいぶ落ちた感じ。 「阿久津はどうした?」とか関西人の粉もの好きっぷりや都会人を装いながら田舎出生なのを偽る行為を産地偽装などところどころ面白いし、甲子園のスコアボードの名前など小ネタも満載。さすが歌舞伎役者と思わせる片岡愛之助の大阪府知事の嘉祥寺、杏の滋賀解放戦線の桔梗などキャラも良い感じなんですけどね。大阪、京都、兵庫、奈良、和歌山、滋賀と次から次へネタを入れてたけど多すぎて散漫になってたな。素直に埼玉全員で乗り込んで滋賀と組んでvs大阪でも良かった気がしますね。そこに高飛車で我関せずな京都や神戸や奈良をひと嚙ませする程度の方がわかりやすかったかも。前作がまさかの大ヒットで作られた二匹目のドジョウでしたがちょっと厳しかった。ただまあ、関西の方々が喜んでくれたなら地方創生にはなるかも知れませんね。 [映画館(邦画)] 4点(2023-11-23 23:59:21) |
3. 君たちはどう生きるか(2023)
《ネタバレ》 予告も宣伝用の映像も画像もあらすじすらも出さず公開というのは思い切ったな、と。まあ昨今、異常なまでに事前に内容をバラしてしまう手法が多いので見ないようにするのが大変でしたが、それをしないで済んだので新鮮なまま触れられましたし良かったです。 舞台は戦時中で戦闘機の工場を経営する父と疎開する主人公眞人。そこで父の再婚相手で母の妹ナツコやお手伝いのばあや軍団に出会ったり、敷地内を探索していて大叔父が建てたという廃屋のを見つけたり。その日から不思議な体験をするようになり人の言葉を喋る謎の青鷺に導かれ下の異世界へ。 作画はとてもキレイだし流れからして「あー、ジブリだねえ」と思わせましたが下の世界に行ってから「これ駿の物語なんだな」と思いました。老いた宮崎駿である大叔父が「残された時間はわずかだ」と若い宮崎駿である眞人にジブリの世界を引き継がせようとする。しかし、眞人はそれを拒否しナツコたちと共に元の世界へ全力で帰る。「宮崎駿のジブリは終りだが俺は自分の人生を生きる!」ってとこでしょうかね。 観客へは庵野も似たようなことやってましたが下の世界の墓の門に刻まれていた「我ヲ學ブ者ハ死ス」という警告が効いてた気がする。いつまでも虚構に溺れてないで現実世界に戻り「君たちはどう生きるか」ってことか。でも、そういう見方をしなくてもエンタメとして十分楽しめるのは力量の凄さなんだろうな。まあこれで最後というのもどうなんだろう。もう一発行けるんじゃないのか宮崎駿82歳。 [映画館(吹替)] 7点(2023-07-19 23:05:07) |
4. シン・仮面ライダー
《ネタバレ》 原作はかなり前に読みました。ライダーは昭和以外見ていません。 冒頭のサイクロンに乗った二人を追いかけるダンプみたいな車両の追いかけっこの疾走感の無さを観て「あ、ヤバそう」と思ったままずーっと行った感じ。予算がないにしろ見せ方の工夫はもっと出来たと思うんですけどね。戦闘員を虐殺し、怒りや悲しみなど感情の高ぶりで浮かび上がる顔の手術跡があったり「今回のライダーは違うぞ」と思わせた風でいただけで、その後は忘れたかのようにアクションも殺陣も雑なCGやアップ多用のカット割りで何をしているか把握しづらいし、ライダーキックもクモオーグへの1発目以外は爽快感が感じられなかった(怪人が多すぎるのも難点だった気がする)。終盤のダブルライダーは場面があまりにも暗いしそれらのせいもあって盛り上がりに欠けました。マスク内で喋ってるからセリフはこもって聞き取りづらいし、頻繁にあるマスクの着脱(口元だけCG処理)も野暮ったさが増すだけでスタイリッシュさがなかった。池松壮亮は演技力あると思ってましたがどういう演出意図なのか棒のような喋りが気になったな。陰を感じさせるルリ子に浜辺美波はドハマリして美しかったし、本郷猛と一文字隼人の関係性も悪くなかったんですが、改造人間の悲哀や孤独さは尺の配分の悪さもあってイマイチ薄かった。情報機関の連中だけで処理させたサソリオーグの寒いテンションはハニーの悪夢を思い出しましたがセルフパロの自虐だったんでしょうかね。ロボット刑事が出てきたり石ノ森章太郎テイストも随所にあり「おっ」と思わせる匂わせはあるものの雑な作りでテンションはイマイチ上がらなかったです。ハビダット世界だの魂がどうとか言いだした辺りで「あー、いつも通りか」って思いました。 音楽の使い方もいまいちで、新マスクをかぶって走り去る最後の一文字隼人のところも『レッツゴー!! ライダーキック』を最初にかければグッと来たのになあ、と。まあ『シン・ゴジラ』の遺産は食い潰した感じですし庵野はそろそろアニメに戻った方がいいですね。 [映画館(邦画)] 4点(2023-03-18 15:35:18)(良:1票) |
5. ブレット・トレイン
《ネタバレ》 原作未読。メチャクチャな日本を舞台にしたおバカ映画ですね。『デッドプール2』のデヴィッド・リーチらしくテンポや編集が上手く、誇張された変な日本とジャンルの違うキャラが立ってる殺し屋達がハマっていてテンション高めで悪くなかったです。ライアン・レイノルズがカメオで出てたり真田広之は貫禄の殺陣を見せますが、ブラピは一味違う華があったな。「運が悪すぎる」と言いながら高い能力で対処し常に良い方へ転がる(転がす?)ブラピ演じるレディバグを始めとした殺し屋たちは全員良かったですが、狂言回しのような存在のミカンとレモンの殺し屋コンビが特に良い味出てましたね。音楽もノリが良い選曲がされていて(バージョンが『スクール・ウォーズ』と違ったのが惜しかったけど)オッサンにはお馴染みの麻倉未稀『HERO』がかかった時は口開けて見入っちゃいました。終点の京都へ向かって絡み合っていた物語が収束していきますがまだ先が見たかった感じ。 [映画館(字幕)] 6点(2022-09-01 23:03:14) |
6. シン・ウルトラマン
《ネタバレ》 平成ウルトラマンと呼ばれるモノや最近の作品は見ていないのでさっぱりわかりません。が、セブン辺りまではさんざん再放送もされていてそれらを見て育ったので記憶に残っていたようで、長い年月見てなくても音楽を聴いただけで「おっ!」、長澤まさみを巨大化させたりオリジナルを彷彿とさせるようなシーンがあると「おっ!」と反応してしまいました。まあ、洗礼を受けてきている中高年の日本男児はそんなもんですよねえ。なので冒頭のウルトラQネタから半分くらいまでは結構面白いなと思いつつ観てました。「怪獣」を「禍威獣」にしていたり「科特隊(科学特捜隊)」を「禍特対(禍威獣特設対策室専従班)」にしていたりネーミングも悪くなかったです。 ただ、ザラブ星人を八つ裂き光輪で倒したのは「おおっ!」と声を出してしましましたが、ウルトラマンの動きは力感もなく足音もなく迫力がなくて微妙でしたね。禍特対がらみの人間パートもキャラに魅力がないし政治絡みはありきたりだし、ところどころ端折り気味でワープしまくるし単調で退屈だった。ここら辺が東日本大震災をモチーフにニッポン対ゴジラで熱量がスゴかった『シン・ゴジラ』には遠く及ばなかったな。 あと、宇宙人ゾーフィネタを拾ったのか知りませんがゼットンの設定含めてどうなんだろと思いましたね。星を破壊し人類を滅亡させるためにあんな兵器を作っている光の国(星)って幻滅レベルですわ。しかも、デザインがダサくて萎えました。山本耕史演じる人間形態時の喋りは大物感があって良かったメフィラスもカッコ悪かったし、イジらないであのまま出せよと思いましたね。 監督は樋口で庵野は企画と脚本。どこからどこまで誰がどうしたのかわかりませんが、庵野が全てを仕切ってたらどうなったんだろうな、とは思いました。 [映画館(邦画)] 5点(2022-05-18 23:31:44)(良:1票) |
7. ホリック xxxHOLiC
《ネタバレ》 原作既読。蜷川実花は写真家だけあって写真を見る分には悪くないけど映像としてだとチープ感が凄い。HOLiCの世界観にマッチするかと思ったけど役者の問題もあってキツかった。予告編である程度は覚悟してましたがマルモロが出た瞬間に終わったと思いました。普通に子役でいいのに何を考えてあんなデカい子たちにしたんでしょうか。侑子も特撮ヒーローのオババ女王にしか見えないケバさだし(本堂で酒を失敬しようとしてるトコは笑いました)、実写ジョジョ(2017)でハマりそうと思っていたのに一番キツく見えた神木は今回も無理があった。百目鬼はアフレコしてるのか妙な低い声以外はそうでもなかったけど、ひまわりのティナも写真では良いけど映像になるとうーんって感じ。そんな中では女郎蜘蛛とオリジナルキャラの手下アカグモってのは割りと良かったかな。でも、原作とはまるで違うお話になってるのが一番の難点。四月一日はあんな陰キャでもないし自殺願望なんかないし、女郎蜘蛛編はもっと様々なキャラが関わって四月一日と百目鬼のお互いを思う気持ちが必然として描かれる良いエピソードだしね。まあ1本にまとめたかったんでしょうけど、ミセを引き継ぐまではやる必要がなかったし10年の構想にしてはお粗末だったし配役も合ってなかったな。WOWOWの杏×染谷の方がハマってる。ミセもチープだし音楽も安っぽいので原作が大好きな方は観ない方がいいと思いました(入場者特典でCLAMP描き下ろしポストカード貰えるのが悩みどころか)。前半に顔見世で終わった猫娘や座敷童子など魅力的なキャラが多く、映画より遥かに深いお話なので映画しか観てない方は原作の一読や出来の良かったアニメ版の視聴をオススメします。。 [映画館(邦画)] 4点(2022-05-04 23:12:13) |
8. 竜とそばかすの姫
《ネタバレ》 だいぶ前に特報を観ただけで記憶から消えており、冒頭の説明で「また仮想現実の世界か」と思いましたが、その世界Uに堂々と現れるベル(中村佳穂)の歌姫っぷりは圧巻で「millennium parade」という音楽家集団との楽曲はどれもパワーがあった。歌が持っている力は凄いなと改めて思いました。 そのベルの正体は田舎に住む朴訥な女子高生すず。幼い頃から歌うのが大好きだった彼女は母親の事故の後から心を閉ざし気味になり人前でうまく歌えなくなってしまった。その彼女をUの世界に誘ってくれたプロデューサーで親友ヒロちゃん、幼馴染しのぶ、みんなの人気者ルカちゃん、一人カヌー部カミシン、すずを優しく見守る合唱隊のお姉様方と現実パートは良さ気な雰囲気が抜群にあった。しかし、タイトルの竜が登場しベルが追い求めだす辺りから微妙な気配になりましたね。Uの世界を荒らしまくる竜と自警団とのバトルは顔見せと状況説明として良いとして、隠れ家に入った後は『美女と野獣』の焼き直しにしか見えないシーンが多いし、すずがなぜ竜に拘るのかも分からなかったな。その竜の正体や現状を知り現実でも救いに向かうトコや顛末など全てが希薄で中途半端にしか見えず、盛り込みすぎて収集つかなくなってしまった感じ。普通にトラウマで歌えなくなった少女が自分を取り戻すまでの青春物語で良かったのにな。自分の正体を探られるのを嫌がってるのに竜を探るし、終盤はブレてしのぶに持っていかれてしまうがすずを理解し見守り背中を押す役回りはヒロちゃんに任せた方がまとまった気がするし、取って付けたような児童虐待ネタは薄っぺらいし色々と残念。『おおかみこどもの雨と雪』以降、細田は一人で脚本を担当してますが補佐や手直しをしてくれる人と組んだ方が良いと思う。 シンガーソングライターが本業で声優初挑戦だったというすず/ベル役の中村佳穂、ヒロちゃん役の幾田りらはとても上手かった。ボーカルをやってるだけあって勘が良いのでしょうかね。「有名人を使わず声優を」とよく言われてますがこういう達者な人もいるから難しいトコですね。 [映画館(邦画)] 6点(2021-07-21 21:02:14)(良:1票) |
9. ゴジラvsコング
《ネタバレ》 ゴジラ相手なのでコングはある程度の機動性で勝負と思ってましたが、ゴジラも妙に俊敏だし簡単に吹っ飛ぶし軽く見えたのが残念かな。ワニガメ+ミズオオトカゲみたいでどうもこの造形と動きは好きになれない。 重厚な巨大生物感を感じたのはvs米軍のトコですね。尻尾の一撃で破壊される戦艦など「コレが観たかったんだよ」というワクワク感がありました。でも映像の進化でいろいろ作られてきたハリウッド怪獣モノも飽きが来たというか目が肥えたというか「結局は見せ方次第だよな」とつくづく思いましたね。地球の真ん中まで到達する熱線がメカゴジラにはあっさり撃ち負けたり、首根っこ押さえつけられて引きずり回されたり、コング待ちとはいえやたらゴジラがボッコボコにされてるのはどうかと思いました。歴代最強レベルの強さのメカゴジラに圧倒されて危うくムートーと同じ末路の上、コング復活からツープラトン攻撃を見せてくれるかと思えばちょっと腕に組み付いたくらいだしお礼参りも出来ず美味しい所はすべてコングに持っていかれた感じ。まあOPからして「あー、主役はコングなんだな」とは思いましたけどね。コレくらいの予算で日本の監督やスタッフで作ったらどうなっただろうな。あと、いなくても何の問題もなさそうな小栗旬は不憫な役と扱いでしたわ。英語頑張ってください。 [映画館(字幕)] 4点(2021-07-07 00:01:21) |
10. シン・エヴァンゲリオン劇場版:||
《ネタバレ》 概ね旧劇場版からさらに踏み込んだ補完版という感じでしたが、こういう落とし方が無難でしたかね。シンは贖罪と救済の内容になっていますが、自らを肯定したシンジと拒絶した理由を語ったミサトや内面を掘り下げたゲンドウとのシーンは何だかんだグッと来ましたね。エヴァの呪縛から解き放たれ大人になったシンジとマリが手を繋いで駆け出して行ったとこでウルウルきましたわ。鬱になったシンジくん(庵野)は「君がどこにいても必ず迎えに行くからね」と言い切る強いマリ(モヨたん)に救済されて立ち直り立派な大人になったなと。宇多田ヒカルの『One Last Kiss』もハマっていて清々しいラストでした。『Beautiful World』の別バージョンもかかりますが全てを見終わって歌詞を考えると一層良く思えましたね。 「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン」とシンジが言ってましたがエヴァからの卒業でもあり別れの言葉なんでしょう。震災や鬱がなければどんな物語になったんだろうとも思いますが、庵野の心象風景を描いたシリーズでしたねエヴァ。長い間お疲れさまでした。 [映画館(邦画)] 8点(2021-03-08 23:36:43) |
11. ソニック・ザ・ムービー
《ネタバレ》 生粋のセガ派です。ソニックもメガドライブ『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』からの付き合いです。冒頭の歴代ゲーム映像からのデカい『SEGA』のロゴには感慨深いものがありました。以前映画化された『ハウス・オブ・ザ・デッド(2003)』は寒気しかしませんでしたし、今回のソニックも映画化にあたりとんでもないデザインを発表された時はどうしようかと思いましたがファンの声を受け止めデザイン変更し、それなりになって戻ってきた姿を見て安堵しましたね。 吹き替えの人選に関していろいろと言う方もいますが、山寺キャリーはハイテンションでさすがの安定感だったし、新ソニックの中川大志も自由でヤンチャで茶目っ気のあるソニックにハマっていて全く違和感を感じず楽しめました。 今回はソニック始まりの物語的で憎めない悪役で宿敵Dr.エッグマン誕生の物語ともいえるし、小ネタもあるのでゲームファンも見て損はないかなと思います。アメリカでは『GENESIS(日本名メガドライブ)』のおかげで大人気のソニックですが『名探偵ピカチュウ』を超えるくらい大ヒットするだけあって、笑える珍道中ありホロっとするシーンありで家族そろって笑顔になれる一本になってましたね。続編があるようなので〇〇〇〇ソニックはその時にでも見せてくれたらいいな。 [映画館(吹替)] 7点(2020-12-06 21:32:25)(良:1票) |
12. 犬鳴村
《ネタバレ》 犬鳴村は都市伝説としていろいろな話を聞いたことがありますが、それらにどっかで聞いたことのある心霊ネタを付け加えて膨らませた感じですね。 犬鳴村に肝試しに入った地元名士の森田家長男とその彼女が祟りに触れたことから霊感のある妹が忌まわしい過去を解き明かしていくという流れ。その祟りに触れた彼女は不気味な童唄を歌いながら徘徊し小便を垂れ流したり壊れてしまい最後には無残な最期を遂げる。ここまでは田舎の血塗られた嫌な土地を感じさせ良かったんですが、主要キャストが出揃ってからは急にキャラが変わったり怪異が起きる条件やターゲットになる対象がよくわからなかったりで微妙でしたね。戦後で差別されてた犬食いの村にしろダム建設のために電力会社の連中が襲って殺し村ごとダムの底とかいう荒業も微妙だし、その村の血筋が森田家でなのはいいとしても獣姦みたいなのはいらなかったな。お化けが映写機を使って村の歴史を紹介したり「なんだこれは」という演出が多かった。トンネル内にあふれかえってる亡者をバックに犬憑きの少女が妙なダンスを長々としていてクドかったし、逃げるのに必死なはずの末弟の小学生がそれらをフラッシュライトで順番にライトアップしていたりどうしようかと思いました。そういう思いついた怪異現象を乱雑に入れてるだけで面白くなかったです。犬神の呪詛を使う村なのか食ってた犬に呪われてるのか中途半端だしもっとネタを絞ってシンプルに作った方がスッキリしたと思います。ただまあ主演の三吉彩花は雰囲気があって良い感じでしたし、他のキャストも悪くなかったですね。前作の『こどもつかい』よりはだいぶマシだと思います。 [映画館(邦画)] 4点(2020-02-12 00:03:08) |
13. ゴジラ キング・オブ・モンスターズ
《ネタバレ》 前作サンフランシスコでの惨劇被害者家族をメインに据えてましたが邪魔で仕方がなかったですね。夫婦は生体音を流して怪獣を操作出来るという不思議システムなオルカを開発した元モナーク幹部だそうですが、「人類は地球の寄生虫。怪獣を蘇らせ滅ぼす」という「どこのサノスだよ」的なマッドサイエンティストのような思想で環境テロリストとともに行動しギドラを目覚めさせる嫁。それを止めようとする旦那、「こんなのイヤ」と逃げる娘が怪獣バトルの合間にことごとく延々と繰り返すのでテンポが悪かったです。怪獣を操れる超兵器と言っていいくらいの能力を持つオルカはただの端末で誰も監視しておらず何度もかっぱらわれるザルっぷりだし、人類を滅ぼそうとしたくせに終盤は娘捜しに躍起になっているというブレっぷりでアホかと思いました。『死霊館シリーズ』で好演しているヴェラ・ファーミガでしたが残念な役回りでしたね。モナーク側もテロリスト側もキャラが豊富に出てるわりにキャラが立っておらず凡庸な人だらけ。そんな人間パートの中で渡辺謙はさすがだったかな。初代ゴジラと逆で長年研究してきた盟友ゴジラに人類生存の願いをこめ「さらば友よ」と身を捧げて復活させる道を選択した芹沢は良かったです(ただまあ核の扱いは相変わらずですし、なおかつ日本人に特攻させるのはどうかと思いましたけども)。 ゴジラの造形は背びれを初代のような形に修正してきましたが相変わらずでっぷりとしててダメでしたし、伊福部昭の曲をアレンジして使ってましたが変な合いの手が入っててスゴく萎えましたが、キングギドラの光線がギザギザだったり神々しいモスラの美しい羽ばたきがあったり飛翔で衝撃波がでるラドンがいたり、今回は逆な役回りでしたがオキシジェン・デストロイヤーを持ってきたりバーニングゴジラになったりとオマージュ満載だし、怪獣プロレスのバトルはとても良かったです。最後はギドラの首が出て来ましたが単独じゃとても敵いそうにないコングのために細胞を使って何を作るのかな。 [映画館(字幕)] 6点(2019-06-01 18:40:04) |
14. 貞子
《ネタバレ》 施設育ちの心理カウンセラー茉優と人気動画配信者になりたい大学生の弟の和馬に謎の少女と面白そうな雰囲気はありました。 茉優が常駐し担当している患者が寝泊まりしているらしい6階建ての総合病院はフロアにナースステーションすら無く、不審者(患者・倉橋)も出入り自由というザル警備。お茶の水女子大付属中かと思いました。その、かつて貞子にかかわり精神を病んだ倉橋は貞子なんかよりよっぽど怖くて良かったのですが、貞子のやり口が顔見せしてビビらせるだけだったり、常にダラダラしていたりと面白みに欠けましたね(ほふく前進は早かったです)。「お前は貞子の生まれ変わりだ!」と霊能力者の母親に虐待されていた少女はサイコキネシス持ちのようでしたが貞子との関係もハッキリしないままだし、ユーチューバーやSNS人気の時代を反映させたり間引された子供たちの話を入れたりしてますが、全てにおいて描写が薄く中途半端。ネット配信された動画を見て貞子の呪いが感染していくのわけでもないし小規模な話で終わっている。『撮ったら呪われる』というキャッチコピーも和馬の撮った動画の中に貞子がいただけだったし誇大広告みたいでしたね。面白く出来そうな要素はあるのにまとめるコトは出来なかったな。 最後には茉優が少女に「守る」と決意表明し勝利したと思ったら、なぜか急に病院の四人部屋でビクついていて精神が壊れた描写。記憶を失っていた少女は回復し巣立って行き、自分が貞子に連れて行かれるという落ちは積み上げた流れを無視していて唐突で違和感あったしベッタベタすぎてつまらなかったです。アレは台本になく「悲鳴がでるような最悪なものしたかった」と後から付け足したらしいですが、違う意味で最悪で中田秀夫は完全に終わってるなと改めて思いました。こんな終わり方なら少女に「ニヤリ」くらいさせ貞子と通じてることを匂わせた方がまだマシ。中盤辺りから演出も脚本も常にグダグダだし『貞子』もルールの無い何でもアリな存在になってしまったし名前を出さなければ別のホラー映画で通用しますね。そういえば池田エライザってよく知りませんでしたが藤田ニコルに見えてしょうがなかったな。 [映画館(邦画)] 3点(2019-05-25 13:50:24) |
15. 翔んで埼玉
《ネタバレ》 原作既読。的確かつ辛辣でありながら緻密で耽美な画とセンスの良い台詞回しで嫌みを感じない原作でしたが、深夜番組の紹介から火がついたとはいえまさか映画にまでなるとは思いませんでした。BLという言葉すらない時代からアッチ方面を書き続けてきた魔夜峰央でしたが、SF、オカルト、ミステリー、時代劇、そしてギャグとオールラウンダーでセンス抜群でしたので時代が追いついたのかな、と思いますね。 主演の二人である二階堂ふみは百美そのものだったしGACKTは浮世離れした雰囲気なので独特な魔夜峰央ワールドにハマってて違和感がなかったです。原作のその先を描いていて埼玉の長年の宿敵(?)である千葉を絡め東京を中心に関東近辺をネタにしたのは正解で魔夜一家勢揃いの冒頭からしてなかなか良かったです。埼玉の人は海が欲しくて茨城の大洗から海水を引こうとトンネルを掘ったら淡水が出たとか、それを掘っている埼玉の人々が千葉の人に捕まると体中の穴という穴に落花生を詰められて九十九里浜で地引き網を引かされるというくだりは場内大ウケで私も大笑いしました。関東近県じゃない方が観るとどうなのか分かりませんが、関東第3位争いしている同士が争いつつも結託して首都東京への怒りを爆発させるなんてバカバカしくて面白かったです。ディスるという言葉がありますが、愛があるイジりだしこういうノリの映画が許される時代になったんだなと思いました。埼玉と千葉の方は寛大な心で観てやってください。 [映画館(邦画)] 7点(2019-02-27 23:01:49) |
16. 来る
《ネタバレ》 原作未読。「あれ(ぼぎわん)」と呼んでいる化け物を軸にしつつ闇のあるドロドロした人間模様が表面化していく展開で、独特な色合いの映像センスとサブリミナルを入れた編集などを含め中島哲也らしいなという内容。イクメン気取りであちこちにイイ顔をしたがる割に空気が読めておらず、誰かしらをイラッとさせているうわべだけのペラ男秀樹役の妻夫木聡はこの手の役が本当に上手いですね。自己顕示欲旺盛で承認欲求のある現在の日本社会とその裏を見ているかのようでした。そのボンクラに振り回され育児ノイローゼになる妻の黒木華も疲れ切った母親であったり色気のある女性になったり様々な顔を見せていてさすがの演技力でしたがいままでで一番綺麗だった気がします。その嫁をはじめ秀樹の持ってる全てを奪おうとし秀樹亡き後は「あれ」も呼び込む津田役の青木崇高、そこら辺にいるオバちゃん体でありながら霊媒師の柴田理恵など達者な人が出てきたり、あらゆる人の声色を使い惑わせる「あれ」の攻撃や除霊に向かっていたオババ軍団がヤラれたりと展開も悪く無く割と面白かったです。 ただまあ政府高官ともやりとりし秘密裏に化け物退治をしているという強力な霊媒師設定の比嘉琴子は色々と見立てが甘い上にミスも多く、演じている松たか子の見た目も阿部知代アナウンサーみたいで「どうなんだコレ」って感じだったな。もったいぶってやっと出てきて仰々しい除霊の舞台設定をさせる割に仲間は全滅させちゃうし危うくヤラれそうになるし有能には見えなかった。途中で岡田准一演ずる野崎をワンパンで倒したトコだけはお祓いより体術の方が強そうだなと思って笑いました。原作からだいぶ改変してるらしいので気になった方は読んでみるのも良いかもしれないですね。 [映画館(邦画)] 6点(2018-12-08 17:21:29) |
17. カメラを止めるな!
《ネタバレ》 ようやく地元の方にも回ってきたので観てきました。全く予備知識も無く予告も観てなかったので「海外ホラーだとわずかな制作費でもの凄いヒットってよくあるな」とだけ思っていたら、まさか劇中劇の二部構成だとは思いませんでしたね。ワンカット37分の劇中劇の方で多少違和感を感じるシーンがあるなと感じてたら、それは生放送中のアクシデントでそれぞれのアドリブで回避していたり生放送なのを良いことに各自の思惑を果たしていたりと伏線回収は気持ち良いくらい笑えました。俳優さんはほぼ無名と言って良いくらいですが、大活躍だった日暮一家をはじめ全員キャラが立ってたしこれほどまでの熱量を感じさせた一体感は素晴らしいですね。脚本や編集を兼ねた監督の手腕も凄いと思います。やはり映画は予算をかけずともアイデア次第でどうにでも出来ますね。最後は各自の問題も解消して大団円でしたが、帰って行くお客さんはみんなニコニコ顔でした。 [映画館(邦画)] 8点(2018-09-03 22:11:38) |
18. ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―
米林宏昌監督のカニの兄弟(兄妹だとばかり思ってましたw)の物語「カニーニとカニーノ」、百瀬義之監督の食物アレルギーのある現代っ子の物語「サムライエッグ」、山下明彦監督の存在感のない男の孤独を描いた「透明人間」の3本からなるスタジオポノックの新しいプロジェクト「ポノック短編劇場」。ファンタジー、社会問題、最後は現代社会に疲れた人へのエールとバランスも悪く無かったですね。それぞれが勇気を出して踏み出していて「ちいさな英雄」というタイトルにぴったりな3本でした。特に誰にも見向きもされていない軽い存在の男の「透明人間」が良かったかな。木村カエラの歌はなかなか中毒性があるのでシリーズ化してずっと使い続けて欲しいですね。 [映画館(邦画)] 6点(2018-09-03 22:11:34)(良:1票) |
19. 未来のミライ
《ネタバレ》 甘えん坊の4歳児くんちゃんの家に生まれたばかりの赤ちゃんがやって来るコトから始まる物語。 両親の愛情を独占しチヤホヤされていた4歳児が、妹で赤ちゃんという強力なライバルが登場したために嫉妬してイライラしたり意地悪したりというのは可愛くもあり微笑ましかったな。子育てをしたことがある、いましている、というような人は面白く思えるかも知れないですね。その件で泣きながら樫の木がある中庭に降りると不思議な空間が現れ『元王子さま』としてくんちゃんと同じように大事に扱われていたという男、未来から来た妹だというミライちゃんが。「さあこれからどう展開していくのかな?樫の木がキモなのかな?」と思ったら、過去や未来に行き代々さまざまな出来事があり繋がっているから今の自分がある、空気読んで成長しろというだけの話で木にまつわる話もなく拍子抜け。さも「未来か来た妹との夏の大冒険ですよ?」体なタイトルと予告で不思議風を演出してますがうーんな感じでしたね。強引に成長を促されたためか未来のくんちゃんは目つきの悪いスネた兄ちゃんになってるしどうなんだろうと思いました。 くんちゃんを始めとした登場人物の心情は理解できるし作画は綺麗で演出も悪くない。青年時代の曾祖父さん関係はどれも良いしと根性出して補助輪無しの自転車を乗り出したり部分的には面白いんだけど、引き込まれる話ではなくミライちゃんがなぜ未来から来たのか?など謎も解明されないからカタルシスが無い。あまりにも内向的で家族への思い入れが強いため一般受けもしなそう。細田は前作『バケモノの子』から脚本も自分で書くようになりましたがあんまり向いてない気がしますね。 [映画館(字幕)] 5点(2018-07-21 22:41:29)(良:1票) |
20. ミスミソウ
《ネタバレ》 原作既読。東京から閉鎖的な田舎の中学校に転校し、陰湿な虐めをうけたあげく家族まで殺された少女の復讐劇。幽霊をぶん殴ったり面白い発想をするホラーギャグ漫画家だった押切蓮介が、ギャグが一切ない中学生のえげつなく救いのない殺し合いとはずいぶんと思い切ったのを描いたなあと当時思いましたね。映画はそこらを割と忠実にやっていたのでR18でもよかった気もします。 キャストは完璧と言って良いくらいハマっていて良く見つけてきたなと思いました。雪の舞い散る中で佇む野崎春花役の山田杏奈はまさに春花だったし、虐め首謀者小黒妙子役の大谷凜香は他者を付き従えるボス感があった。その妙子に虐められながらも愛憎入り交じった屈折した想いを抱えている佐山流美役の大塚れなは、歯止めが利かず徐々に暴走していくさまが上手かった。ただまあキャラの心情や各々が抱えている問題などバックボーンの描写が薄いなと思う場面も多々あったので原作を一読してみるのも良いと思いますね。春花の唯一の理解者っぽかった相場晄も幼少時から見てきた父親の母親へのDVが無いため単なるキレやすい子に見えたし、学生時代に虐めのトラウマのある南京子先生ももうちょっと尺を取って丁寧にやって欲しかったです。 ラストは原作とは改変して妙子だけ生き残り「罪の意識を抱えて生き続ける」というのはベタだったかな。妙子もまた春花への想いがあったワケで、あの終わり方だと百合な部分が強くなってしまった気がします。しかしまあ閉塞感のある田舎の雰囲気は出ていたし、そこに入り込んできた異分子の春花の存在から巻き起こる負の連鎖はエグかったな。 [映画館(邦画)] 6点(2018-04-09 21:55:38) |